説明

雰囲気制御によるセラミックの着色

(a)セラミック含有粉末からボディーを作る工程;(b)前記ボディーを所望の形状に成形する工程;及び(c)成形したボディーを、1種類以上の着色剤を含む雰囲気粉末の近傍で焼成する工程、を含む、着色された完全高密度セラミック体の形成方法。(a)セラミック含有粉末からボディーを作る工程;(b)前記ボディーを所望の形状に成形する工程;(c)成形したボディーを、該セラミック体の変色を促進する1種類以上の不純物を含む焼成雰囲気中に置く工程;(d)前記セラミック体を、雰囲気粉末と隣接させる工程;及び(e)前記成形したボディーを、雰囲気粉末の近傍で焼成する工程、を含み、ここで、前記雰囲気粉末が、1種類以上の不純物のバリアー及びゲッターの少なくとも1つとして機能する、変色しない完全高密度セラミック体の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2006年8月18日に出願した米国仮特許出願第60/838,375号(この文献の内容は参照により本明細書中に組み入れられる)に基づき、パリ条約第4条の規定に基づく優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、セラミック材料の着色に有用な技術及び装置に関する。特定の局面では、本発明は、デンタルセラミック材料の着色に有用な技術及び装置に関する。また、本発明は、焼成したままの状態のセラミックの色彩の安定化及び/又はその退色予防に有用な技術及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の議論において、特定の構造及び/又は方法が参照される。しかしながら、以下の参照は、これらの構造及び/又は方法が、先行技術を構成することを容認するものとして理解されるべきではない。出願人は、このような構造及び/又は方法が、先行技術として見なされないことを実証する権利を保持する。
【0004】
ジルコニア系材料等のセラミックは、高強度のフレームワーク(単一ユニットないし複数ユニットのブリッジ)を有する歯科用補綴材料として浮上してきた。しかしながら、このような材料は、多くの場合は、強い白色を示し、従って、最終修復物の美観は、そのままの色彩では許容できるものではない。
【0005】
最終的な歯科用修復物は、患者の歯の色とマッチすべきであり、即ち、「歯の色」をしていなければならない。ヒトの歯の色は、ほぼ白色の明るい色から薄茶色までの範囲にあると考えられ、非常に特殊な色空間を占める。この色空間は、広く用いられるCIE(Commission Internationale de l’Eclariage)L,a,b規約により説明可能であり、これによれば、色は、3次元のデカルト座標系により表される。L又は「値」は、輝度又は明度の測度であり、垂直軸上に表される。a及びbの座標は、色度の指標・基準であり、水平方向の座標上に表され、aが正の場合には赤色、aが負の場合には緑色、bが正の場合には黄色、そしてbが負の場合には青色を表すことになる。米国特許第6,030,209号明細書(この文献の内容は参照により本明細書中に組み入れられる)には、Vita Zahnfabrik製のVita Lumen(登録商標)色調ガイドシステムが表示する歯の色のCIE L,a,b色座標が示されている(即ち、歯の色の色空間が示されている)。本明細書で用いる場合、「歯色」又は「歯様色」とは、この色空間の範囲内にあるか又はこの色空間に酷似するCIE L,a,b色座標を意味するものとして理解される。
【0006】
現状では、ジルコニア等のデンタルセラミックの真っ白な色に対処する主な方法としては、2種類の市販の方法がある。1つの方法では、焼結したフレームワークに染色層又はライナーを付着させて白色のセラミックが「隠される」。他方の方法では、焼結前の状態で、着色液に浸漬するか又は着色液でペイントすることにより、シェーディングを施す。染色/ライナーにより着色することは、更なる製造工程に相当し、半透明性を低下させることになるので好ましくない。着色液でシェーディングを施すことは、余分な浸漬工程又はペインティング工程を必要とし、焼結前に乾燥を行うために余分な時間も要するために好ましくない。
【0007】
米国特許第6,713,421号明細書には、酸化物Fe、Er及びMnOからなる群から選択される0.2−1.5重量%の着色添加剤で着色された焼結前のジルコニアブランクが記載されていると考えられる。このブランクは、CAD/CAMプロセスにより義歯に加工されることが意図されている。仏国特許第2,787,366号明細書とCales等(“Colored Zirconia Ceramics for Dental Applications,” Bioceramics Vol. 11, R. Z. LeGeros 及び J. R. LeGeros編; Proceedings of the 11th International Symposium on Ceramics in Medicine; York, NY; Nov. 1998)では、多数の着色剤が確認されていると考えられ、Fe、CeO及びBiの組合せを用いることである程度のVitaシェードの実現に成功したことが報告されている。Bushan等(S. Bushan, R. Pober 及び R. Giordano, “Coloration of Partially Stabilized Zirconia,” Abstract 1775, Journal of Dental Research, Vol. 84, Special Issue A, 2005)には、着色カチオンを含む種々の溶液により、部分的に安定化したジルコニアを着色する研究が記載されていると思われる。米国特許第5,219,805号明細書には、Fe、Er及びPr11の組合せを用いたデンタルブラケットに用いるための安定化ジルコニアの着色法が開示されている。米国特許第5,656,564号明細書には、Er及びPr11の組合せを用いたジルコニアの着色法が記載されていると思われる。米国特許第5,011,403号明細書には、セラミックスリップに添加され、それぞれ硫酸と酢酸の水溶液の状態でFe、Ni及びMnの組合せを用いたジルコニアの着色法が記載されていると思われる。米国特許第6,709,694号明細書には、焼結前のセラミックに塗布される金属イオン着色液又は金属錯体着色液を用いた浸漬、ペイント又はスプレー、これに続いて焼結を行って半透明の着色デンタルセラミックを形成することにより、焼結前のジルコニアを着色するための溶液の使用が記載されていると思われる。このイオン又は錯体は、希土類元素又はII及びVIII亜族に属し、作用時間が2時間未満であり、焼結前のジルコニアの最大直径及び高さがそれぞれ10mm及び7mmである。上記で確認した全ての文献は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【0008】
また、テクニカルジルコニア(technical zirconia)の着色も報告されている。例えば、Erの添加によるジルコニアのピンク色の着色法の開発が、以下の文献に記載されている:(i)P. Duran, P. Recio, J. R. Jurado, C. Pascual 及び C. Moure, “Preparation, Sintering, and Properties of Translucent Er−Doped Tetragonal Zirconia,” J. Am. Ceram. Soc., vol. 72, no. 11, pp. 2088−93, 1989;及び (ii)M. Yashima, T. Nagotome, T. Noma, N. Ishizawa, Y. Suzuki 及び M. Yoshimura, “Effect of Dopant Species on Tetragonal (t’)−to−Monoclinic Phase Transformation of Arc−Melted ZrO−RO1.5 (R=Sm, Y, Er, and Sc) in Water at 200℃ and 100MPa Pressure,” J. Am. Ceram. Soc., no. 78, no. 8, pp. 2229−93, 1989。日本国特許第2,145,475号公報に明確に記載されるように、イットリア−安定化ジルコニアにCoO、Fe及びCrの組合せを添加すると、最終焼結したジルコニア体に青色が施される。日本国特許第5,043,316号公報に明確に記載されるように、イットリア−安定化ジルコニアにNiO及びCrを添加すると、紫がかった色の焼結体が得られることが実証されている。上記で確認した全ての文献は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【0009】
上記の着色剤の添加は、殆どの場合、強度及び破壊靱性等の機械的特性だけでなく、等方性収縮率や最終焼結密度にも負の影響を及ぼす恐れがある。これは、以下のような多数の理由により起こる可能性がある:(1)添加剤による正方相の過度の安定の結果として「変形靱性」が低下し、これによって強靱化が起こるのに必要な準安定正方相から単斜相への変形が阻害される;(2)着色添加剤により結晶粒が大きく成長しすぎた場合に生じる自発的な微小ひび割れが形成し、これによって強度を喪失する;そして(3)着色添加剤により微小構造中に強度を制限する気孔が形成され、これによって強度を喪失する。最後に理由は、Ce塩を用いて着色した3YTZP材料の275±67MPaまでの顕著な強度喪失の要因としてShah等(K. C. Shah, I. Denry 及び J. A. Holloway, “Physical Properties of Cerium− Doped Tetragonal Zirconia,” Abstract 0080, Journal of Dental Research, Vol. 85, Special Issue A, 2006)で考えられている。ジルコニア焼結成形体内での大きな気孔の形成及び結晶粒の成長の問題は、近年において、Omichi 及び Takei(N. Omichi 及び T. Takei, “Colored Zirconia Sintered Compact and its Production Process,” 日本国特許出願公開2005−289721号公報, 2005年10月20日)で認識されている。
【0010】
従って、溶液(液体)を用いた技術による染色/ライナー又は着色に要するような更なる加工工程を行うことなく、そして得られる高密度セラミック原料の物理的特性を有意に損なうことなく、所望の色彩を有するセラミック材料を提供することが有益となるであろう。
【0011】
多くの場合、焼結したままのセラミック材料の色彩は、特定の条件又は環境に曝された場合に不安定性を示す場合がある。例えば、焼結したままのジルコニアフレームワークの色彩は、フレームワークに陶材をオーバーレイして最終修復物を得るために必要な後の焼成工程に付した場合に、安定ではなくなる恐れがある。典型的には、ジルコニアフレームワーク用のオーバーレイ陶材は、およそ35torrの減圧下で、750−1065℃の温度で、焼成されるか又はプレス加工される。これらの条件は、ジルコニアを焼結する際の雰囲気と比べて還元的である。例えば、Romer等(H. Romer, K.−D. Luther 及び W. Asmus, “Colored Zirconia,” Cryst. Res. Technol., 29, 6, 787−794 (1994))に例示されるように、ジルコニアの色彩は、還元的条件に曝すことで影響を受ける場合があるので、フレームワークの色彩は安定でない場合がある。例えば、Romer等は、種々のドーパントで着色された12モル%のイットリア安定化ジルコニア結晶について、1100℃で酸化的条件対還元的条件に暴露した後の色彩変化について論文発表している:バナジウムでは黄色から赤茶色、クロムでは緑色から茶色、マンガンではバイオレットから淡いオレンジ色、鉄では緑色から黄色、コバルトではバイオレットからバイオレットブルー、ニッケルでは無色から黄色である。色の変化の根本的理由は、ジルコニアの熱力学的酸素空孔濃度の変化であり、これは焼成に使われる雰囲気の酸素ポテンシャルに決定されるものと理解されている。電荷補償の理由に基づき、上記によって着色ドーパントの原子価の変化と、従って、ジルコニアの色彩の変化がもたらされる可能性がある。酸素拡散率が本質的に高いため、ジルコニアでは特に迅速に変化がもたらされる可能性がある。陶材のオーバーレイ工程において、修復物の内部が露出され、減圧焼成条件により変色しやすくなる。これに加え、陶材の酸素ポテンシャルは、空気の酸素ポテンシャルとは異なることが予想されるが、同様の理由により、色彩変化に寄与する可能性がある。ジルコニウムの酸素空孔濃度の変化は、電荷補償のための発色団イオンの原子価の変化、及び/又は発色団イオンと配位結合した酸素イオンの数の変化により、変色を起こさせると推測される。
【0012】
従って、例えば、最終的な歯科用修復物を作製するために必要な、後に続く加工工程における歯科用品の色彩安定性など、特定の条件又は環境に付した場合にも安定な色彩を有するセラミック材料を提供することは、非常に有益性が高いものとなるだろう。
【0013】
比較的少量の着色成分の添加によっても着色されるというジルコニア等のセラミックの特性により、焼結時に反応炉のチャンバー内の不純物に非意図的に曝されることにより、変色する事故が生じる可能性がある。このような不純物は、加熱成分、反応炉の付属品など、種々の原因から生じる恐れがあり、また長い時間をかけて反応炉内に蓄積する恐れもある。例えば、ジルコニアフレームワークは、定期的に、焼結で黄色に変色する場合があり、この問題は二ケイ化モリブデン加熱成分の腐食に伴うものである。従って、白色となるはずであったフレームワークは、しばしば廃棄する必要がある。この問題の解決法としては、反応炉を良好な換気の下で高温で運転してサガー(sagger)を複数回空焼きする方法があり、そうすると加熱成分の上に特徴的なガラス様ケイ素保護層を再生し、加熱成分を腐食から防ぐ効果を有する。腐敗した加熱成分が、焼結サイクル時に多大な蒸気圧を生じてジルコニアフレームワークに入り込み、黄色く変色させる不純物の供給源であると考えられる。加熱成分上にケイ素保護層を作り出すことにより、有害な変色性不純物の供給源を効果的に密封し、恐らくは、反応炉のライニング及び付属品に含まれる不純物を除去及び/又は中和することによって、後の焼結においてもフレームワークが変色しなくなるのであろうが、それでもやはり、オペレーターは、残念なことに、フレームワークの一部を犠牲にして、時間と費用を費やさなければならない。変色性不純物の供給源や、この不純物がいかにしてジルコニア内に入るのかということを抜きにしても、この様な変色を回避する方法を得ることは有用であろう。
【0014】
従って、焼結環境に含まれる成分により導入されるか又は焼結環境中に存在する不純物による材料の変色を起こさない、ホワイトジルコニアフレームワーク等のセラミック材料の焼結方法を提供することは有用であろう。
【0015】
イットリア−安定化ジルコニアは、耐加水分解性又は熱水劣化もしくは低温分解としても知られる加水分解に対する耐性が、所望のレベルよりも低い場合がある。加水分解とは、長時間水に曝されることによる自発的な正方相から単斜相への変形を特徴とする。典型的には、高密度の焼結体の表面において温暖な水性環境に長時間曝された後に起こり、機械的特性を減じる可能性があるので、歯科学的用途には望ましいものではない。これは、よく知られていることだが、3モル%のイットリア−安定化ジルコニア(3YSZ)に0.1−0.4重量%の量のアルミニウム(酸化型、Al)を添加すると、耐加水分解性が向上する。幾つかの市販されているアルミナ混合3YSZ粉末が市販されているが、通常アルミナを含まない物よりも高価である。また、利用可能なアルミナ混合3YSZセラミックの加水分解安定性は、アルミナ含有量を増やすことにより向上させることができる。
【0016】
従って、焼結時にセラミックにアルミニウムを導入するセラミック体の焼結方法を提供することは有用であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、随意に、従来技術に伴う上記の欠点の1つ以上に取り組むことが可能な技術及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の1つの任意の局面によれば、焼結工程により同時に着色されるセラミックブロック又はセラミックブランクであって、所望により、CAD/CAM技術によって高強度の着色デンタルフレームワークへと加工が可能なセラミックブロック又はセラミックブランクが提供される。上記の加工は、上記で参照する焼結工程の前に行ってもよい。「ブロック」及び「ブランク」という用語は、本発明の製品のジオメトリーを制限することを意図するものではない。本発明との関連においては、いずれの適切なCAD/CAM技術を用いてもよい。例えば、このような技術は、米国特許第7,011,522号明細書(この文献の内容は参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる)に記載されている。
【0019】
ある局面では、本発明は、歯科用品の形成方法であって、(a)セラミック含有粉末からボディーを作る工程;(b)前記ボディーを歯科用品に応じた形状に成形する工程;及び(c)成形したボディーを、1種類以上の着色剤を含む雰囲気粉末の近傍で焼成する工程、を含む方法を提供する。
【0020】
また、別の局面では、本発明は、(a)セラミック含有粉末からボディーを作る工程;(b)前記ボディーを所望の形状に成形する工程;及び(c)成形したボディーを、1種類以上の着色剤を含む雰囲気粉末の近傍で焼成する工程、を含む、着色された完全高密度セラミック体の形成方法を提供する。
【0021】
更なる局面では、本発明は、最終的な歯科用修復物を作製するために必要な後に続く加工工程における歯科用品の色彩安定性など、特定の条件又は環境に付した場合にも安定な色彩を焼結したままの状態の製品に施す雰囲気粉末を提供する。
【0022】
別の局面では、雰囲気粉末は、焼成したままの状態のセラミックの加水分解安定性を向上させるような雰囲気を焼結時に生じるように、前記雰囲気粉末を調製することが可能である。
【0023】
別の局面では、本発明は、着色剤を含まず、反応炉チャンバー内の着色性不純物に対する保護バリアー及び/又はこれらの「ゲッター」として機能する雰囲気粉末を提供するものであり、それによって焼結時のセラミック体の不所望な変色を防ぐ。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の局面に従って行った焼結技術の略図である。
【図2】本発明の第2の局面に従って行った焼結技術の略図である。
【図3】本発明の更なる局面に従って行った焼結技術の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
特定の局面では、本発明は、焼結工程において、その場所で、ジルコニアデンタルフレームワーク等のセラミック材料を着色する方法を提供する。この方法の1つの利点として、染色/ライナーによる着色又は溶液(液体)技術による着色に関連する工程が排除され、加工時間が短縮されることが挙げられる。本発明の方法では、セラミック系雰囲気粉末の存在下でセラミック材料を焼結して着色することを要する場合がある。この雰囲気粉末は、少なくとも1種類の着色剤を含んでいてもよい。この着色剤は、遊離若しくは溶解した状態の元素であってもよく、前記元素の化合物であってもよい。雰囲気粉末は、着色剤を含まないセラミック粉末を少なくとも1種類含んでいてもよい。あらゆる適切なセラミック粉末が予期される。雰囲気粉末のセラミック粉末成分の非限定的な例としては、セラミック酸化物粉末、イットリア及びMgO安定化ジルコニア粉末等が挙げられる。この雰囲気粉末には、別種の着色粉末の組合せ又は混合物が含まれる場合もある。着色粉末は、セラミック粉末との組み合わせで着色剤を含む。従って、本発明の更なる態様では、雰囲気粉末は、少なくとも、含有する着色剤が互いに異なる着色粉末の組合せを含む。例えば、雰囲気粉末は、少なくとも第1の着色剤と第2の着色粉末からなる混合物を含んでいてもよい。第1の着色粉末は、第1のセラミック粉末との組み合わせで第1の着色剤を含み、第2の着色粉末は、第2のセラミック粉末との組み合わせで第2の着色剤を含む。第1及び第2の着色剤は、互いに異なるものである。第1及び第2のセラミック粉末は、同じであっても異なっていてもよい。雰囲気粉末は、上記で言及した2種類の着色粉末に加えて、別の混合物を含む場合もある。更に、第1及び第2の着色粉末は、上記で言及した第1及び第2の着色剤及びセラミック粉末とは別の着色剤及び/又はセラミック粉末を含んでいてもよい。
【0026】
少なくとも1種類の着色剤は、以下から選択できる:(a)合成元素又は放射性元素を除くランタニド系列の元素及びその化合物、(b)合成元素又は放射性元素を除く周期表の5属〜11属及びその化合物、並びに(c)Ti又はSc及びその化合物。ランタニド系列としては、以下が挙げられる:ランタン;セリウム;プラセオジム;ネオジム;サマリウム;ユウロピウム;ガドリニウム;テルビウム;ジスプロシウム;ホルミウム;エルビウム;ツリウム;イッテルビウム;及びルテチウム。周期5属〜11属については、以下が挙げられる: バナジウム;ニオブ;タンタル;クロム;モリブデン;タングステン;マンガン;レニウム;ボーリウム;鉄;ルテニウム;オスミウム;コバルト;ロジウム;イリジウム;ニッケル;パラジウム;白金;銅;銀;及び金。本発明の更なる態様では、雰囲気粉末は、上記から選択される複数の異なる着色剤を含んでいてもよい。本発明の特定の態様では、前記雰囲気粉末は、セラミック体の高密度化に用いる焼成温度に相当する高温にさらした際に、相当な着色剤の蒸気圧を生じるように調製される。
【0027】
雰囲気粉末に含まれる少なくとも1種類の着色剤の濃度は、いずれかの適切なレベル、例えば、0.0001〜50重量%(着色剤の元素形態で表示)等とすることができる。
【0028】
更なる特定の態様では、本発明を実施することにより、MgO安定化ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア又はアルミナ強化ジルコニア(ATZ)から作製したセラミック体を着色できる。着色すべき具体的なセラミックの種類には関係なく、加工は、所望の場合に結合剤を含んでいてもよいセラミック粉末を用いて開始することができる。この粉末又は粉末と結合剤の混合物は、プレス加工やキャスティング等の適切な技術により成形できる。所望の場合、この未完成の成型体は、強度を付与し、そして/又は結合剤材料を除去できるように焼成してもよいが、完全な高密度化を得るには至らない。この未完成の成型体は、ブランク又はブロックの形態にあってもよいが、いずれかの特定のジオメトリーに限定されるものではない。この未完成の成型体は、本明細書に記載する種類のCAD/CAM技術など、いずれかの適切な技術により機械加工してもよい。成形後、この製品は、続いて最終密度にまで焼結される。
【0029】
別の態様では、本発明は、陶材の焼成及び/又はプレス加工条件など、後の環境又は加工条件に対して、焼結したままの状態の製品の色彩を安定化させる雰囲気粉末を提供する。これは、得られる酸素活性が、酸素空孔濃度を、陶材焼成及び/又はプレス加工条件に実現される濃度と同程度のレベルに設定するように、前記雰囲気粉末の組成を調節することにより達成される。所望の酸素空孔濃度を達成するための1つの方法として、焼結時に焼成したままの状態のセラミックの加水分解安定性を向上させる雰囲気を生じるように雰囲気粉末を調製することが挙げられる。また、所望の酸素空孔濃度を達成するための1つの方法として、必要な酸素分圧を生じる酸化物から雰囲気粉末を調製することが挙げられる。例えば、酸化物CaZrOは、ZrOよりも高い酸素蒸気圧を有することが知られている。従って、CaZrOの雰囲気粉末は、雰囲気粉末がZrOである場合と比べて、酸素空孔濃度が低い焼結ジルコニアを生じることが予測される。また、所望の酸素空孔濃度を達成するための別の方法としては、酸素蒸気圧の異なる酸化物を共に混ぜることが挙げられる。例えば、CaZrOとZrOの混合物は、純粋な状態のCaZrOとZrOの蒸気圧の中間の蒸気圧を有するので、この場合、焼結ジルコニアの酸素空孔濃度は、CaZrOとZrOの雰囲気粉末に実現される酸素空孔濃度の中間のものとなると予測できる。雰囲気粉末酸化物の選択を支配する主な制限要素は、製品を焼結すべき焼結温度よりも融点が高いことであり、即ち、融点が約1500℃を超えることである。従って、酸素空孔濃度は、陶材焼成/プレス加工条件において変化すべきではなく、これによって色彩が安定化される。色彩の変化は、例えば、陶材がオーバーレイされ、その後、陶材がストリップされたセラミック製品のCIE L,a,b座標を、焼成したままの状態のセラミック製品の座標と比較することにより定量化することができる。この場合、色彩の変化量ΔEは、以下の式に従って計算される:
ΔE=((L−Laf+(a−aaf+(b−baf1/2
ここで、下付きの「s」及び「af」は、それぞれ、ストリップされた表面と焼成したままの状態の表面を示す。特定の態様では、ΔEは、約6未満となるはずである。更なる態様では、ΔEは、約3未満となるはずである。
【0030】
別の態様では、雰囲気粉末が、焼成したままの状態のセラミックの加水分解安定性を向上させるような雰囲気を焼結時に生じるように、前記雰囲気粉末を調製することができる。例として、セラミックへのアルミニウムの取り込みを促進するような雰囲気中で焼成を行うと、加水分解安定性が向上する。従って、本発明の特定の態様では、雰囲気粉末の組成は、アルミニウム又はその化合物を含むように調製できる。
【0031】
さらに別の局面では、本発明を実施することにより、例えばホワイトジルコニア等のセラミック体が、焼結時に反応炉チャンバーに含まれる着色性不純物によっても確実に変色しないようにすることができる。これは、着色剤を含まない雰囲気粉末を、変色性不純物からの保護バリアー及び/又は前記不純物の「ゲッター」として用いることにより、少なくとも部分的に達成される。
【0032】
本発明の上記に代わる態様では、焼結すべき製品は、数多くの代替技術、例えば、ゲルキャスティング、スリップキャスティング、フリーズキャスティング、電気泳動塗装、射出成形又はラピッドプロトタイピング(自由形状造形法(solid freeform fabrication)としても知られる)などにより形成又は成形可能である。「ラピッドプロトタイピング」とは材料を複雑な形状に加工するネットシェイプマニュファクチャリング(net−shape manufacturing)の一般的用語であり、ステレオリソグラフィー、フォトステレオリソグラフィー(photo−stereolithography)、デジタルライトプロセッシング(DLP)、選択領域レーザー蒸着(selective area laser deposition)、選択的レーザー焼結(SLS)、電気泳動塗装(EPD)、ロボキャスティング、溶融堆積モデリング(FDM)、積層オブジェクト製造(LOM)又は3−Dプリンティング等が含まれるが、これらについては、米国特許出願公開公報第2005/0023710号明細書(この文献の内容は参照により本明細書中に組み入れられる)により詳細に記載されている。
【0033】
種々の歯科用品が、意図されている。本発明の原理に従って形成される歯科用品の例としては、以下のものが挙げられる:歯科修復物用の支持体若しくはフレームワーク;コーピング;ポンティック;義歯;保隙装置;歯牙交換装置;歯列矯正維持装置;義歯;ポストジャケット(post jacket);ファセット;スプリント;シリンダー;ピン;コネクター;歯冠;部分歯冠;被覆冠;アンレー;インレー;ブリッジ;固定部分義歯;メリーランドブリッジ;インプラントアバットメント;又は完全インプラント。
【0034】
本発明の原理に沿って行われる焼成方法は、多種多様な技術によって実施可能である。例えば、本発明に従って行われる焼成方法は、開放容器又は密閉容器内で、(i)着色すべきセラミック体を前記雰囲気粉末に埋めること、(ii)着色すべきセラミック体を前記雰囲気粉末で覆うこと、又は(iii)着色すべきセラミック体を密閉した又は開放された容器内で前記粉末と隣接させること、のいずれかにより行うことができる。上記の技術のいずれか及び全ては、焼成プレート上又は随意にカバーされているか若しくは閉じられていてもよい適切な密閉容器(例えば、るつぼ)内で、着色すべきセラミック材料と雰囲気粉末を焼成することを要する。本発明の特定の態様による焼成は、マイクロ波加熱技術を用いて行うこともできる。
【0035】
第1の選択肢の例を図1に示す。この図に示すように、所望によりフレームワーク又は補綴物10等の歯科用品の形態にあってもよい着色対象セラミック材料は、少なくとも1種類の着色剤を含むセラミック系雰囲気粉末12に埋められる。ここで用いる場合、「埋める」という用語は、歯科用品を覆う粉末の量が、該歯科用品の輪郭又は外面が認知できないか又は見えない程度の量であることを意味する。または、雰囲気粉末は、歯科用品の表面の全て又は一部が、雰囲気粉末12と接触するように加えてもよい。フレームワーク又は補綴物10及び雰囲気粉末12は、焼成工程において、適切な容器又は密閉容器、例えば、るつぼ14等に収容される。所望により、焼成工程において、少なくとも1種類の着色剤が、歯科用フレームワーク又は補綴物10中へ分散することを促進するため、るつぼ14の上に蓋16を被せてもよい。
【0036】
図2は、上で述べた第2の選択肢を例示している。図2に示すように、所望によりフレームワーク又は補綴物10等の歯科用品の形態にあってもよい着色対象セラミック材料は、少なくとも1種類の着色剤を含むセラミック系雰囲気粉末12の層で覆われている。ここで用いる場合、「層で覆われる」とは、歯科用品を覆う粉末の量が、該歯科用品の輪郭又は外面が依然として見えるか又は認知できる程度の量であることを意味する。または、雰囲気粉末は、歯科用品の表面の一部又は全てが、雰囲気粉末と接触するように加えてもよい。フレームワーク又は補綴物10及び雰囲気粉末12は、焼成工程において、適切な容器又はるつぼ14等に収容される。所望により、るつぼ14の上に蓋16を被せてもよい。
【0037】
図3は、上で述べた第3の選択肢を例示している。図3に示すように、フレームワーク又は補綴物10等の歯科用品の形態にあってもよい着色対象セラミック材料は、るつぼ14等の容器又は密閉容器内に置かれ、少なくとも1種類の着色剤を含む雰囲気粉末12が、歯科用フレームワーク又は補綴物10に隣接するように提供されるが、所望の場合には、焼成工程において、歯科用フレームワーク又は補綴物10を取り囲むように提供されてもよい。所望により、るつぼ14の上に蓋16を被せてもよい。
【0038】
前記粉末の効果は、1種類以上の着色剤の雰囲気を生じさせることであり、この着色剤は、焼結時にセラミックフレームワーク中に浸透していき、それによって着色を施す。雰囲気粉末から機械加工されたボディーへの1種類以上の着色剤の浸透は、選択肢(i)及び(ii)の場合のように、固相輸送、表面輸送及び気相輸送の1つ又は組み合わせにより行うことが可能であり、又は選択肢(iii)の場合のように、気相輸送だけによって行うこともできる。施されるシェードは、雰囲気粉末に含まれる着色剤の組合せ/濃度(即ち、粉末の化学組成)により調節可能である。焼結温度は、約1150℃〜1700℃となるであろう。反応炉から取り出したセラミックは、半透明で着色された状態で現れる。また、この焼結された材料は、良好な物理的特性を有する。例えば、着色された焼結セラミックは、密度が99%を超え、約0.2〜1.5μmの粒径を有し、平均曲げ強度が、800MPaを超える(ISO 6872:歯科用セラミックに従って行われる3点曲げテスト)。施されたシェードは、ジルコニア陶材系にオーバーレイして、最終修復物として臨床に適した歯の色を有するシェードを達成するのに適している。
【実施例】
【0039】
本発明と関連する可能性のある特定の原理及び利点は、以下の実施例に含まれる具体的な態様を参照することにより、更に詳細に説明される。これらの実施例は、本発明の原理を例示するものであり、必ずしも本発明の範囲を限定するものではないことが理解されなければならない。試験した試料は、MoSi耐性加熱反応炉である、DT−31−SBL−9912−Y550−00型反応炉(Deltech Inc.、デンバー、コロラド州)内で焼結させた。色彩は、必要に応じて、歯科医療実務の有資格者による肉眼観察と白色の背景上でColorTec−PSM(商標)分光光度計(ColorTec(商標)、クリントン、ニュー ジャージー州)を用いた測定により評価した。色彩のパラメーターは、D65/10°照明基準を参照して解析した。焼成後の密度は、アルキメデス法により測定した。
【0040】
実施例1:
表1に示すように、8モル%のMgO安定化酸化ジルコニウム(MSZ−8、第一稀元素化学工業、大阪、日本)を異なる比率で、(V,Zr)O黄色バデレアイト色素(C−464EZ、Ferro Corp、ワシントン、ペンシルベニア州)と混合した。次に、市販のジルコニア粉末TZ−3YB−E(東ソー)から作製して予備焼結したジルコニアディスク(直径27mm × 厚さ2.75mm)をアルミナ性焼成プレート上に置き、このディスクの上面と横周囲面(底面を除く:図2に例示)が覆われるようにMSZ−8粉末とC−464EZ粉末で覆った。本明細書で用いる場合、「事前焼結した」とは、結合剤材料を取り除き、所望の場合には、完全に高密度化した状態よりも低い密度にまで、少なくとも部分的にボディーを高密度化させるように部分的にボディーが焼成されていることを意味する。次いで、このアンサンブルを、以下のスケジュールに沿って、粉末で覆われていない1種類の「コントロール」ディスクと共に焼成した:4℃/分で周囲温度から1500℃へ加熱して、この温度で2時間維持;4℃/分で1500℃から周囲温度へ冷却。雰囲気粉末を取り除き、色彩を記録した。特筆すべきことに、雰囲気粉末と接触していたディスク面のみが着色され、他方の面は白色のままであった。これらの結果は、C−464EZ粉末から得られたバナジウムで施した着色の場合と一致する。結果を表1に示す。これらの結果は、雰囲気粉末によりジルコニアに黄色が施されることを示している。更に、これらの結果は、黄色の強度が、雰囲気粉末の組成、特にMSZ−8:C−464EZ比(即ち、セラミック粉末:着色剤比)により調節可能であることを示している。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例2:
実施例1に記載するMSZ−8粉末とC−464EZ粉末を95:5の重量比で混合した。市販のジルコニア粉末TZ−3YB−E(東ソー)から作製して予備焼結したジルコニアディスク(直径27mm × 厚さ2.75mm)を、直径7.8cm × 高さ2.7のアルミナ製るつぼ中の前記95:5混合物中に埋め、焼成前にアルミナ製の蓋で覆った。次いで、このアンサンブルを、以下のスケジュールに沿って焼成した:4℃/分で周囲温度から1500℃へ加熱して、この温度で2時間維持;4℃/分で1500℃から周囲温度へ冷却。結果は、表2に示されており、表面全体が淡黄色の高密度ジルコニア部分が達成可能なことが実証されている。これらの結果は、C−464EZ粉末から得られたバナジウムで施した着色の場合と一致する。
【0043】
【表2】

【0044】
実施例3:
MSZ−8粉末とC−464EZ粉末を95:5の重量比で混合した。予備焼結したTZ−3YB−E(東ソー)ジルコニアディスクを直径7.8cm × 高さ2.7のるつぼ内の中央部に置き、前記95:5混合物をその周囲に配置し(ディスクとは接触しない;図3に例示)、そして焼成前にるつぼにアルミナ製の蓋を被せた。このアンサンブルを、以下のスケジュールに沿って焼成した:4℃/分で周囲温度から1500℃へ加熱して、この温度で2時間維持;4℃/分で1500℃から周囲温度へ冷却。結果は、表3に示されており、この技術により、雰囲気粉末に晒された表面において黄色に着色された高密度ジルコニア部分が達成可能なことが実証されている。これらの結果は、主にC−464EZ粉末から得られたバナジウムで施した着色の場合と一致する。
【0045】
【表3】

【0046】
実施例4:
TZP粉末のTZ−3Y−E(Tosoh USA, Inc.、グローブ シティ、オハイオ州)に0〜0.15重量%のPr(III)及びCr(III)を添加する。これは、前記粉末と必要量の酢酸Pr(III)水和物及び塩化Cr(III)六水和物との水性スラリーを調製することにより行う。次に、このスラリーを完成させ、200メッシュのナイロン製ふるいを通してふるい分けする。特定のシェードが得られるように粉末のPr及びCrの含有量を選択する。事前焼結済TZ−3Y−Eから機械加工した3−ユニットブリッジをアルミナ製るつぼ内の前記粉末に埋め、このるつぼにアルミナ製の蓋を被せた。このアンサンブルを、以下のスケジュールに沿って焼成した:4℃/分で周囲温度から1500℃へ加熱して、この温度で2時間維持;4℃/分で1500℃から周囲温度へ冷却。結果:密度が6.05g/cc以上で、ジルコニア陶材系にオーバーレイして、VITAシェードA3、A3.5及びA4を得るのに適したシェードを有する半透明な3−ユニットブリッジ。
【0047】
実施例5:
最初に適量の塩化鉄(III)(無水物、98%、Alfa Aesar)を蒸留水に溶解し、スパチュラを用いてこの溶液をTZ−3YB−E粉末と混合し(溶液:ジルコニア=25:8(重量比))、この湿った粉末を乾燥させ、最後に250メッシュ(55μm)スクリーンを用いてふるい分けすることにより、種々の濃度のFe添加雰囲気粉末(表4)を調製した。予備焼結したTZ−3YB−Eジルコニアディスク(直径〜27mm × 厚さ2mm)をアルミナ製るつぼ内に置き、厚さ〜2mmの個々の雰囲気粉末の層で覆い、以下のスケジュールに沿って焼成した:4℃/分で周囲温度から1500℃へ加熱して、この温度で2時間維持;4℃/分で1500℃から周囲温度へ冷却。雰囲気粉末を直ちに除去すると、その下から着色されたジルコニア表面が現れた。この表面の着色は、驚くほど均一なものであった。更に、着色は、〜100μmまでの表層部分に限定されており、これより下層のジルコニアは、白色のままであった。このディスク試料を、白色のコア側から厚さ0.5mmまで切片化して、色彩を評価した。結果は、表4にまとめられており、この技術により、表面が黄色がかった色から赤茶色の高密度ジルコニアを得ることができることを示している。特筆すべきことに、粉末1及び2は、それぞれ、淡黄色と赤茶っぽい黄色色彩を呈し、これらは「歯の様な」色であった。より具体的に言うならば、実験1及び2では、それぞれ、焼結後のままの状態でCercon(登録商標)系の色彩(DeguDent GmbH)及びVITA着色液体シェードLL1(VITA、Zahnfabrik H. Rauter GmbH & Co.)に類似する色彩が得られた。後者は、製造元の指示に従って調製し、0.5mmの厚さに切片化し、次いで、Fe添加試料との比較を行った。
【0048】
【表4】

【0049】
実施例6:
表4の雰囲気粉末1及び3を、表5に示すような種々の比率で組合せ、Retsch model MM2ミキサーミルで15分間かけて混合した。次にこの粉末を用いて、実施例5に示すようにジルコニアを着色した。結果を表5にまとめられており、この技術により、表面が黄色がかった色から赤茶色の高密度ジルコニアを得ることができることを示している。実施例5では、表面の着色は驚くほど均一であった。
【0050】
【表5】

【0051】
実施例7:
D−250(商標)3Dスキャナー(3Shape A/S、コペンハーゲン、デンマーク)を用いて、シングルユニットブリッジ試料及び3−ユニットブリッジ試料のモデルをスキャンして、3Dデジタルモデルを作成し、これをSTLファイルで保存する。これらのファイルを用い、デジタルCADソフトウェアのDentalDesigner(商標)(3Shape A/S、コペンハーゲン、デンマーク)を用いて対応するフレームワークをデザインする。この3DモデルをSTLファイルとして保存する。これらのファイルを、適切な拡大率で3Dデジタルモデルを拡大する能力を有する市販のCAM装置に移す。CAMソフトウェアにインプットされた約1.243の拡大率を用いると、予備焼結されたブロックは、特大のシングルユニットブリッジフレームワーク及び3−ユニットブリッジフレームワークに機械加工される。機械加工されたままの状態のフレームワークを粉末#1(表4)で覆い、実施例5と同様に焼結する。得られる焼結済みのフレームワークは、高密度(約6.05g/cc)で半透明あり、均一に着色され、Cercon(登録商標)系の色彩と同様のシェードを有する。開始モデル上への焼結したままの状態のフレームワークの適合性は、許容可能なものと判断される。これは、焼結工程における等方性の収縮を示すものである。焼結したままの状態のフレームワークをNoritake Cerabien CZR陶材(Noritake Company, Inc.、フェアローン、ニュー ジャージー州)でオーバーレイすると、最終的なVITAクラシックシェードA2が得られる。開始モデル上への最終修復物の適合性は、許容可能なものと判断される。シェードとフィット適合性は、歯科医療実務の有資格者により評価される。
【0052】
実施例8:
二ケイ化モリブデン加熱成分からケイ素保護層を腐食させて剥がすような条件で焼結反応炉を運転した。実施例1と同様に予備焼結ジルコニアディスクを予備焼結し、次いで、前記反応炉内で実施例1のスケジュールで焼結を行った。ディスクは、以下の3種類の配置にあった:(i)コントロール(アルミナ製焼成プレート上に露出した状態で静置)、(ii)蓋の閉じたるつぼの内部、(iii)蓋の閉じたるつぼ内部でTZ−3YSジルコニア粉末に包埋。るつぼは、実施例2に記載するものであった。結果を表6にまとめる。腐食していない成分を含む反応炉を用いた場合、コントロールは、焼結後に白色を呈することに留意すべきである。これらの結果は、蓋の閉じたるつぼ内に入れるか又は蓋の閉じたるつぼ内で高純度のジルコニア粉末に埋めることにより、反応炉チャンバーから取り出される焼結対象製品の変色が防がれることを示している。
【0053】
【表6】

【0054】
成分、構成物質、反応条件の量を表す全ての数値及び明細書で用いられる全ての数値は、全ての状況において「約」という用語に修飾されているものと理解すべきである。説明される数値範囲やパラメーター、本明細書に提示される主題の広い範囲は、近似的なものであるが、説明される数値は、可能な限り正確に表示されている。しかしながら、いずれの数値も、例えば個々の測定技術に起因する、標準偏差に見られるような一定のエラーを本質的に含んでいる可能性もある。
【0055】
本発明は好ましい態様と関連して説明されているが、当業者であれば、添付する請求項に定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、具体的に記載されていない付加、削除、変更及び置換を施すことが可能なことを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)セラミック含有粉末からボディーを作る工程;
(b)前記ボディーを所望の形状に成形する工程;及び
(c)成形したボディーを、1種類以上の着色剤を含む雰囲気粉末の近傍で焼成する工程、
を含む、着色された完全高密度セラミック体の形成方法。
【請求項2】
前記ボディーが、予備焼結されたブロックを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記セラミック体が、歯科用品を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記歯科用品が、歯科修復物用の支持体若しくはフレームワーク;コーピング;ポンティック;義歯;保隙装置;歯牙交換装置;歯列矯正維持装置;義歯;ポストジャケット;ファセット;スプリント;シリンダー;ピン;コネクター;歯冠;部分歯冠;被覆冠;アンレー;インレー;ブリッジ;固定部分義歯;メリーランドブリッジ;インプラントアバットメント;又はインプラント全体を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記セラミックが、ジルコニアを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ジルコニアが、MgO安定化ジルコニアを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ジルコニアが、イットリア安定化正方相ジルコニア又はアルミナ強化ジルコニアを含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記セラミック含有粉末が、結合剤を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)が、プレス加工又はキャスティングを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)が、CAD/CAM加工を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)及び(b)が、ゲルキャスティング、スリップキャスティング、フリーズキャスティング、電気泳動塗装、射出成形、ラピッドプロトタイピング、圧縮、押し出し形成、プレス加工、一軸加圧成形、冷間静水圧プレス、遠心鋳造、重力鋳造、圧力鋳造又は射出成形を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)が、(i)前記成形したボディーを前記雰囲気粉末に埋めること、(ii)前記成形したボディーを前記雰囲気粉末で覆うこと、又は(iii)前記成形したボディーを前記粉末と隣接して静置させること、を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記歯科用品が、歯の色彩と関連したCIE L,a,b色空間領域に含まれるCIE L,a,b色座標を有する、請求項3記載の方法。
【請求項14】
得られる酸素活性が、前記セラミック体の焼結したままの状態での酸素空孔濃度を、後の加工の条件用に実現される酸素濃度と同程度のレベルに設定するように、前記雰囲気粉末が調製される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記の後の加工条件が、前記セラミック体上にオーバーレイ陶材を塗布すること、及び約10−100torrの減圧下で約750℃〜約1065℃の温度で約1時間焼成することを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
セラミック体の焼結したままの状態の色彩から後の加工を経た後の色彩にかけての色彩の変化量ΔEが、CIE L,a,bによる測定において、約6未満である、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記色彩の変化量ΔEが、約3未満である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記雰囲気粉末によって、前記セラミック体の酸素空孔濃度が、前記オーバーレイ陶材の焼成時に実現される濃度と同程度のレベルに設定されることにより、変色に対する耐性が付与される、請求項14記載の方法。
【請求項19】
前記雰囲気粉末が、前記歯科用品の加水分解安定性を向上させるような雰囲気を焼結時に生じるように、前記雰囲気粉末を調製することを含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記雰囲気粉末が、アルミニウム又はその化合物を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
工程(c)が、密封容器内で前記成形したボディーを焼成することを更に含む、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
焼成前に、前記密封容器上に蓋を置くことを更に含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記1種類以上の着色剤が、(i)合成元素又は放射性元素を除くランタニド系列、(ii)合成元素又は放射性元素を除く周期表の5属〜11属、及び(iii)Ti又はSc、から選択される1種類以上の元素又は化合物を含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記1種類以上の着色剤が、元素形態で表した場合に、約0.0001〜約50重量%の濃度で存在する、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記1種類以上の着色剤が、酸化型である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
工程(c)が、(i)固体拡散、(ii)表面輸送、(iii)気相輸送、又は(iv)これらの組合せによる、成形したボディーへの着色することを含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記成形したボディーが、約1150℃〜約1700℃の温度で焼成される、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記焼成が、マイクロ波エネルギーを用いて行われる、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記ボディーの焼成前に事前焼結を行うことを更に含む、請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
(a)セラミック含有粉末からボディーを作る工程;
(b)前記ボディーを所望の形状に成形する工程;
(c)成形したボディーを、該セラミック体の変色を促進する1種類以上の不純物を含む焼成雰囲気中に置く工程;
(d)前記セラミック体を、雰囲気粉末と隣接させて静置する工程;及び
(e)前記成形したボディーを、雰囲気粉末の近傍で焼成する工程、
を含み、ここで、前記雰囲気粉末が、1種類以上の不純物のバリアー及びゲッターの少なくとも1つとして機能する、変色していない完全高密度セラミック体の形成方法。
【請求項31】
前記雰囲気粉末が、着色剤を含まない、請求項30記載の方法。
【請求項32】
工程(d)が、(i)前記成形したボディーを前記雰囲気粉末に埋めること、(ii)前記形成したボディーを前記雰囲気粉末で覆うこと、又は(iii)前記成形したボディーを前記粉末と隣接して静置させること、を含む、請求項30又は31記載の方法。
【請求項33】
前記1種類以上の不純物が、モリブデン及び二ケイ化モリブデンの少なくとも1種類を含む、請求項30〜32のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−501450(P2010−501450A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524692(P2009−524692)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/018262
【国際公開番号】WO2008/021495
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(507114680)ペントロン・セラミックス・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】PENTRON CERAMICS, INC.
【Fターム(参考)】