説明

零陵香抽出物を有効成分として含有する代謝性疾患の予防及び治療用組成物

本発明は、薬用植物である零陵香(Lysimachiae Foenum-Graeci Herba)抽出物を有効成分として含有する、代謝性疾患の予防及び治療のための原料、機能性食品、生薬剤に関する。本発明による零陵香抽出物は、血糖数値、中性脂肪及びコレステロール数値を減少させ、ASTとALT数値、肝脂肪を減少させる活性を有するため、糖尿病、高血圧、脂肪肝、心血管疾患及び高脂血症などを含む各種代謝性疾患の予防または治療、及び肝保護剤として極めて有用に活用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、零陵香(Lysimachiae Foenum-Graeci Herba)抽出物を有効性分として含有する代謝性疾患の予防及び治療剤に関し、より詳しくは、血糖数値、中性脂肪及びコレステロール数値を減少させ、ASTとALTの数値、及び肝の脂肪を減少させて糖尿病、高血圧、脂肪肝、心血管疾患及び高脂血症などを含む各種代謝性疾患の予防及び治療剤と、肝保護剤としての原料、機能性食品、生薬剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の経済発展に伴なう生活水準の向上により、衛生環境が改善されインスタント飲食物の頻繁な摂取、肉食中心の食生活への変化は、体内における熱量エネルギーの過多蓄積を誘発する。しかし、かかる現代人の食生活の変化に、運動不足による熱量エネルギー消耗の減少まで加えられ、肥満人口が急増している。
【0003】
このように体内に過多蓄積された熱量エネルギーは、肥満だけでなく様々な形態の疾病として発現され、糖尿病、高脂血症、脂肪肝などを含む代謝性疾患及び代謝症候群(メタボリック シンドローム)がそれである。
【0004】
糖尿病とは、遺伝的且つ環境的要因により発病される全身的な代謝疾患の一種であって、体内にインシュリンの絶対的又は相対的な不足から引き起こされる疾病で、血中糖濃度が非正常的に高くなった状態を言う。糖尿病の合併症には、低血糖症、ケトン酸症、高滲透圧性昏睡、大血管合併症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経病症、糖尿病性辰症などがある。
【0005】
高脂血症とは、高コレステロール症と高中性脂肪症の両方を含み、コレステロール(240mg/dl以上)と中性脂肪(200mg/dl以上)が正常範囲以上に増加した状態を意味し、脂タンパクと脂質代謝障害により発病する。高脂血症は、遺伝的異常によって発病する一次性高脂血症と、糖尿病などの他の疾病や薬物によって発病する二次性高脂血症とに大別される。特別な症状が現れるのではないが、かかる血中コレステロールや中性脂肪の増加は、動脈硬化、高血圧、心血管系疾患などの原因となるため、問題視されている。
【0006】
脂肪肝は、肝細胞中に脂肪が蓄積された状態をいい、蓄積された脂肪それ自体は肝細胞に対して多くの毒性はないため、酷くない場合は症状がない場合が多く、肝機能も正常であるか、やや低下することが大分である。しかし、脂肪肝が酷くなり肝細胞中の脂肪の塊が大きくなると、核を含む肝細胞の機能が低下する。つまり、細胞中の蓄積された脂肪が肝細胞間の微細血管やリンパ腺を圧迫し、肝内の血液やリンパ液の循環に障害を生じさせる結果、肝細胞には酸素及び栄養が十分に供給されず、肝機能の低下につながる。
【0007】
心血管疾患は、心臓及び血管系に異常が生じたことをいい、心臓疾患、大動脈などの中心血管及び下部器官と組織の末梢血管の疾患を含む。具体的に、心血管疾患には心臓疾患と血管疾患が含まれ、心不全、
高血圧性心臓疾患、不整脈、 弁膜疾患、先天性心臓疾患、心筋症などが主な心臓疾患に属し、血管疾患には脳卒中、末梢血管疾患などが含まれる。
【0008】
かかる疾病は、血中コレステロールの増加による血管硬化因子の上乗、LDL酸化による血管内壁の破壊、血栓生成による血流の悪化などにより発病し、高脂血症、血管硬化などにより更に悪化され得る。つまり、血液中の脂質代謝及び血中脂質濃度が心血管疾患の発病及びその進行に多くの影響を及ぼす。具体的に、心血管疾患は、LDL酸化を防止しLDLコレステロールの数値を低下させると共に、HDLコレステロールの数値は高めて血管硬化の要因を低くすることで改善させることができる。
【0009】
即ち、血中コレステロールを低下させることにより、高脂血症及び血液機能の異常による各種の心血管系疾患の発病を源泉的に予防することができる。また、LDLの過酸化による血管内皮細胞の破壊、及びこれによる血栓生成などを引き起こせる主な原因となる活性酸素を抑制することにより、血栓溶解、血小板凝集活性及び過度な血液凝固の傾向を抑制する場合、動脈硬化、高血圧、虚血性心臓疾患、脳卒中などの血管循環器系疾患を効果的に予防及び改善し、心血管疾患を改善できる。
【0010】
代謝症候群とは、高脂血症、高血圧、糖代謝異常、肥満などの危険因子が共に現れる症候群を称する。最近世界保健機構と米国国立保健研究院の心・肺・血液研究所が制定した成人治療プログラムIII(Adult Treatment Program III:ATP III)を通して代謝症候群又はインシュリン抵抗性症候群(Insulin resistance syndrome)と公式命名された。
【0011】
2001年公表された米国NCEP(National Cholesterol Education Program)のATP IIIによると、ある患者が、(1)ウエストが男性40インチ(102cm)、女性35インチ(88cm)以上である腹部肥満、(2)中性脂肪(triglycerides)150mg/dL以上、(3)HDLコレステロールが男性40mg/dL、女性50mg/dL以下、(4)血圧130/85mmHg以上、(5)空腹血糖(fasting glucose)110mg/dL以上のような5つの危険因子のうち3つ以上を有している場合に代謝症候群と判定される。東洋人の場合、ウエストが男性90cm、女性80cm以上である時に腹部肥満に該当するよう数値が多少調整され、この規定を適用する時、韓国人は全人口の25%程度が代謝症候群の症状を示しているという最近の研究報告もある。インシュリン抵抗性とは、インシュリンが体内で正常的に分泌されているにも拘らず、これらによる“ブドウ糖を細胞内へ供給する作用”がきちんと行なわれない現状をいい、血液中のブドウ糖は細胞内へ入れず高血糖の状勢を示し、細胞は細胞なりにブドウ糖の不足により正常機能を果たせない結果、代謝症候群の症状を示すようになる。現在まで代謝症候群の治療のための薬物は開発されておらず、ただ糖尿病、高脂血症及び高血圧の治療薬物を用いた代謝症候群の治療を試みているが、薬物としての限界を抱えている。現在使用可能な薬物には、糖尿病治療剤として用いられるメトホルミン(metformin)、TZD(thiazolidinediones)系列の薬物、グルコシダーゼ阻害剤(glucosidase inhibitors)、dual PPARγ/α agonist、そしてDDP(Dipeptidyl peptidase)IV inhibitorsが代謝症候群の治療薬物として期待されている。これらとともに、血圧治療剤及び高脂血症治療剤の標的であるapoA-I isoformと関連ペプチド、CETP(Cholesterol ester transport protein)阻害剤などが注目を浴びている。
【0012】
本発明では、上記言及した糖尿、高脂血症、脂肪肝及びこれらによって発病すると知られている動脈硬化、高血圧、心血管疾患、並びにこれらが同時多発的に発生する大使症候群を総称して“代謝性疾患”と命名する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、血液内グルコース、中性脂肪、コレステロール、肝酵素数値(AST/ALT)及び肝脂肪の減少に効能のある薬物である零陵香(Lysimach iae Foenum-Graeci Herba)抽出物を有効成分として含有する代謝性疾患の予防及び治療剤と、肝保護剤としての原料、機能性食品、化粧品、生薬剤を提供することにある。
【0014】
本発明は、零陵香(Lysimachiae Foenum-Graeci Herba)から収得した代謝性疾患の指標数値(血液内グルコース、中性脂肪、コレステロール、肝酵素数値)及び肝組織内の脂肪減少効能を有する抽出物であることをその特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による零陵香(Lysimachiae Foenum-Graeci Herba)抽出物を製造するにあたって、
(1)零陵香の全草又は葉を乾燥粉砕する段階;
(2)上記(1)で収得した零陵香の重量を基準に、5〜50倍の有機溶媒を加えて溶媒抽出する段階;及び
(3)有機溶媒抽出溶液をろ過紙を用いてろ過した後、40℃以下の温度で減圧濃縮する段階;を含む、零陵香から、代謝性疾患の指標数値(血液内グルコース、中性脂肪、コレステロール、肝酵素数値)及び肝組織内の脂肪減少効能を有する抽出物を分離する方法を提供する。
【0016】
上記有機溶媒は炭素数1乃至4の低級アルコールを含む。
【0017】
上記方法で提供される本発明の零陵香抽出物は、代謝性疾患の指標数値(血液内グルコース、中性脂肪、コレステロール、肝酵素数値)及び肝組織内脂肪の減少に優れた効果があるので、代謝性疾患の予防及び治療剤の原料、機能性食品、化粧品、及び生薬剤等に使われることができる。
【0018】
一具体例で、本発明の抽出物を投与し、代謝性疾患の指標数値(血液内グルコース、中性脂肪、コレステロール、肝酵素数値)及び肝組織内における脂肪減少の効能を観察した。
【0019】
本発明の組成物は、組成物総重量に対して上記抽出物を0.1〜50重量%含む。本発明の零陵香抽出物を含む組成物は、通常の方法による適切な担体、賦形剤または希釈剤を更に含むことができる。本発明の組成物に添加可能な担体、賦形剤及び希釈剤には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、アモルファスセルロース、ポリビニールピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油が挙げられる。本発明による抽出物を含む組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾールなどの経口剤型、外用剤、坐剤または滅菌注射溶液の形に剤形化して使われることができる。詳しくは、製剤化する場合は普通使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調剤できる。経口投与のための固形製剤には錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は上記抽出物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)、ラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調剤できる。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤等も使われることができる。経口のための液状製剤には、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使われる単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他に、各種賦形剤、例えば湿潤剤、甘美剤、芳香剤、保存剤などが含まれることができる。非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤及び坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤には、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物性油、エチルオールレートのような注射可能なエステルなどが使われることができる。坐剤の基剤には、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、トゥイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン(glycerogelatin)などが使われることができる。
【0020】
本発明の抽出物は患者の年齢、性別、体重によって変動するが、一般的に0.01〜500mg/kgの量、望ましくは0.1〜100mg/kgの量を1日1回投与するか数回に分けて投与することができる。また同抽出物の投与量は、投与経路、疾病の程度、性別、体重、年齢などによって増減する。したがって、上記投与量は何れの面からも本発明の範囲を限定するものではない。
【0021】
本発明の組成物は、ラット、マウス、家畜、ヒト等の哺乳動物に多様な経路で投与できる。投与のあらゆる方式が予想できるが、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳室内(intracerebroventricular)注射により投与できる。本発明の零陵香抽出物は、毒性及び副作用が殆どないので、予防目的で長期服用する時にも安心して使用することができる。
【0022】
本発明は、上記零陵香抽出物、及び食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含む、脳神経系関連の不安症を予防するための健康機能食品を提供する。本発明の零陵香抽出物を含む組成物は、脳神経系関連の不安症を予防するための薬剤、食品及び飲料などに多様に用いられ得る。本発明の抽出物が添加可能な食品には、各種食品類、例えば、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康補助食品類などがあり、丸剤、粉末、顆粒、浸剤、錠剤、カプセルまたは飲料の形で使用することができる。この時、食品または飲料の中の上記抽出物の量は、一般的に本発明の健康食品組成物の場合、全体食品重量の0.01〜15重量%加えることができ、健康飲料組成物の場合は、100mlを基準に、0.02〜10g、望ましくは0.3〜1gの割合で加えることができる。
【0023】
本明細書で定義される食品補助添加剤は、当業界における通常の食品添加剤、例えば香味剤、風味剤、着色剤、充填剤、安定化剤などを含む。本発明による健康飲料組成物は、上記抽出物を指示された割合で必須成分として含有するが、上記抽出物の他に添加される成分に特別な制限はなく、通常の飲料のように色々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有できる。上記天然炭水化物の例には、モノサッカリド、例えば、葡萄糖、果糖など;ジサッカリド、例えば、マルトース、スクロースなど;ポリサッカリド、例えば、デキストリン、シクロデキストリン;などの通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールが挙げられる。上述したもの以外の香味剤として、天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウデオサイドA、グリチルリチン等))及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテーム等)を有利に使用することができる。上記天然炭水化物の比率は本発明の組成物100ml当り、一般的に約1〜20g、望ましくは約5〜12gである。
【0024】
上記以外に、本発明の組成物は各種栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレート等)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使われる炭酸化剤などを含有できる。その他、本発明の組成物は、天然果物ジュース、果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよく、このような成分は独立的にまたは組み合わせて使用されてもよい。このような添加剤の比率はそれ程重要なものではないが、本発明の組成物100重量部当り0〜約20重量部の範囲から選択されるのが一般的である。
【0025】
以上説明した通り、本発明による零陵香(Lysimachiae Foenum-Graeci Herba)抽出物は、代謝性疾患の指標数値(血液内グルコース、中性脂肪、コレステロール、肝酵素数値)及び肝組織内脂肪の減少に優れた効果を有するので、これを有効性分として、糖尿、高脂血症、脂肪肝及びこれらが同時多発的に現れる代謝症候群を含む代謝性疾患の予防及び治療剤と、肝保護剤としての原料、機能性食品及び生薬剤に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】対照群、試験群及び陽性対照群のマウスから摘出した肝組織写真、肝組織をヘマトキシリン−エオシン(Hematoxylin-Eosin)染色した写真、及び肝組織に分布する脂肪をOil Red Oで染色した写真である。
【図2】対照群、試験群及び陽性対照群のマウスから摘出した肝を用いて肝組織内の中性脂肪及びコレステロール含量を測定した結果を表すグラフである。
【図3】マウスの筋肉母細胞であるC2C12に零陵香抽出物とメトポルミンを投与しグルコース吸収量を測定した結果を表すグラフである。
【図4】ハムスター由来の膵臓ベータ細胞であるHIT−T15に零陵香抽出物を投与しインシュリン分泌量を測定した結果を表すグラフである。
【図5】零陵香抽出物を糖尿疾患モデルであるdb/dbマウスに投与し、血中グルコース量を測定した効果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を下記の実施例及び実験例により詳細に説明する。但し、下記の実施例及び実験例は本発明を例示するだけであって、本発明の内容は下記の実施例及び実験例により限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
実施例1:零陵香(Lysimachiae Foenum-Graeci Herba)抽出物の分離
零陵香の全草又は葉を乾燥粉砕した後、零陵香(Lysimachiae Foenum-Graeci Herba)に重量基準で5〜50倍量のアルコール(メタノールまたはエタノール等)を加え、24時間以上還流抽出して活性物質を抽出した。次に、アルコール(メタノールまたはエタノール等)抽出溶液をろ過紙を用いてろ過した後、40℃以下の温度で減圧濃縮した。
【0029】
実施例2:肥満誘導(DIO)マウスにおける代謝性疾患の予防及び治療効果の検定
C57BL/6雄性マウス7週齢(入手先:KOATECH)を購入し、温度20±1℃、湿度50±10%、明暗周期12時間、照度150〜300Lux、換気10〜20回/hrの飼育環境が維持された飼育場で飼育した。飼料は、実験動物固形飼料(入手先:Polas International)を購入して自由に供給し、飲用水は上水道水を高圧蒸気で滅菌し自由に摂取させた。1週間の順化過程を経てから、飼料としてリサーチダイエット(Research Diet)社の60%Kcal固形飼料を供給し、零陵香抽出物を30、100、300mg/kg/dayで42日間経口投与した。陽性対照群にはシブトラミン(10mg/kg/day)を、陰性対照群には0.5%メチルセルロース(MC;Methyl Cellulose)を同量投与した。6週間物質投与したマウスを1日間絶食させ、COガスを用いて致死させた後、腹部大静脈から採血した血液をEDTAチューブに入れて氷に保管してから、3,000rpmで10分間遠心分離して獲得したプラズマ(plasma)を生化学自動分析装置(AU400,olympus,Japan)を用いて分析した。また、摘出した臓器は即時に液体窒素に入れて凍らせてから−70℃の低温冷凍庫で保管し組織学的に分析した。
【0030】
図1のAは、対照群、試験群及び陽性対照群から摘出した肝組織の写真、図1のBは、対照群、試験群及び陽性対照群から摘出した肝を凍結切片(cryosection)してからヘマトキシリン−エオシン(Hematoxylin-Eosin)染色方法を用いて肝組織の状態を組織学的に観察した写真である。図1のCは、対照群、試験群及び陽性対照群から摘出した肝を凍結切片してから、Oil Red O染色方法を用いて肝組織に分布する脂肪を組織学的に観察した写真である。図1から明らかなように、対照群は高脂肪食餌により肝細胞中に脂肪が過多蓄積され脂肪肝が現れたが、零陵香抽出物を投与した試験群はシブトラミンを投与した陽性対照群に比べて肝細胞への脂肪蓄積の顕著な改善が確認された。
【0031】
下記表1は、食餌性肥満誘発(DIO;Diet-Induced Obesity)マウスに対する代謝性疾患指標測定のために採血した血液の分析結果である。また、摘出した肝組織内の中性脂肪及びコレステロール含量を測定しその結果を図2に示した。
【0032】
【表1】

備考: AST(Aspartate aminotranferase)、ALT(Alanine aminotransferase)、GLU(Glucose)、 CHO(Cholesterol)、TG(Triglyceride)、ALB(Albumin)
表1から明らかなように、零陵香抽出物を投与した場合、高脂肪食餌による肝酵素AST及びALT、そして血中グルコース、コレステロール及び中性脂肪数値の増加が統計的に有意に減少することが確認できた。しかし、シブトラミンを投与した陽性対照群のALT及びグルコース数値は有意に減少したものの、ASTとコレステロール数値には変化がなく、中性脂肪数値はむしろ増加した。
【0033】
また、図2から明らかなように、陽性対照群と類似に零陵香抽出物を投与した場合、肝の中性脂肪とコレステロール含量が有意に減少することが確認できた。
【0034】
実施例3:零陵香抽出物の抗高脂血症活性の測定
ICR雄性マウス5週齢(入手先:(株)中央実験動物)を購入し、温度20±1℃、湿度50±10%、明暗周期12時間、照度150〜300Lux、換気10〜20回/hrの飼育環境が維持された飼育場で飼育した。飼料は、実験動物固形飼料(入手先:Cargill Agri Purina,Inc.)を購入して自由に供給し、飲用水は上水道水を高圧蒸気で滅菌し自由に摂取させた。1週間の順化過程を経てから、1群当たり8匹のマウスとして零陵香抽出物を100mg/kgの濃度で経口投与し、対照群には抽出物の代わりに生理食塩水を経口投与した。続いて、2時間経過後にトウモロコシ油1g/kgを経口投与し、正常群にはトウモロコシ油に代えて食塩水を経口投与した。トウモロコシ油の投与から2時間30分後、マウスの腹部大静脈から採血しEDTAチューブに入れて氷に保管した後、3,000rpmで10分間遠心分離し、獲得したプラズマを生化学自動分析装置(AU400,Olympus、日本)を用いて分析しその結果を下記表2に示した。対照薬物にはゼニカル(xenical)10mg/kgを用いた。
【0035】
【表2】

備考:TG(triglyceride)、CHO(cholesterol)
表2から明らかなように、零陵香抽出物を投与した場合、対照薬物を使用した場合に比べて中性脂肪及び総コレステロールの量が減少した。かかることから、零陵香抽出物の抗高脂血症活性が確認できた。
【0036】
実施例4:零陵香抽出物の抗糖尿効能の測定
筋肉細胞であるC2C12細胞(ATCC,CRL−1772)を10%BCS(bovine calf serum)の入っているDMEMで細胞培養した。細胞密度が約85〜90%程度となると、1%BCS培養液に変えて細胞分化を誘導した。分化したC2C12細胞を低グルコースDMEMで断食(starvation)させた後、零陵香抽出物を10ug/mlの濃度で4時間処理してから、HEPES緩衝食塩水(buffered saline)に交換し2−[3H]DG(Deoxyglucose)を処理して20分間追加培養した。HEPES緩衝食塩水を取り除きice-cold PBSで3回洗浄した後、0.1N NaOHを用いて細胞を溶解させ放射線計測器(liquid scintillation counter)でcpmを測定し細胞内糖吸収程度を定量的に分析した。対照薬物としては、メトホルミン(metformin)(2mM)を用いた。実験の結果、図3に示すように、対照群又はメトホルミン投与群に比べて零陵香抽出物の投与によりグルコース吸収量が増加した。
【0037】
また、膵臓細胞であるHIT−T15細胞(ATCC、CRL−1777)に零陵香抽出物を10ug/mlの濃度で1時間処理した後、細胞外に分泌されるインシュリン量をELISA方法で確認し図4に示した。図4に示されているように、零陵香抽出物を投与した場合、インシュリン分泌量が対照群に比べて増加した。
【0038】
糖尿疾患モデルであるdb/db雄性マウス5週齢(入手先:(株)中央実験動物)を購入し、温度20±1℃、湿度50±10%、明暗周期12時間、照度150〜300Lux、換気10〜20回/hrの飼育環境が維持された飼育場で飼育した。飼料は、実験動物固形飼料(入手先:Cargill Agri Purina,Inc.)を購入して自由に供給し、飲用水は上水道水を高圧蒸気で滅菌し自由に摂取させた。1週間の順化過程を経てから、db/dbマウスを1群当たり6匹として零陵香抽出物を100mg/kgの濃度で経口投与し、対照群には抽出物の代わりに生理食塩水を経口投与した。週に2回24日間尻尾静脈から採血し血糖数値を測定した結果を図5に示した。図5から明らかなように、零陵香抽出物を投与した場合、グルコースの量が減少した。
【0039】
上記のような実験の結果、本願発明の零陵香抽出物が抗糖尿効能を示すことが確認できた。
【0040】
実施例5:零陵香抽出物の抗動脈硬化及び抗心血管疾患活性の測定
ICR雄性マウス5週齢(入手先:(株)中央実験動物)を購入し、温度20±1℃、湿度50±10%、明暗周期12時間、照度150〜300Lux、換気10〜20回/hrの飼育環境が維持された飼育場で飼育した。飼料は、実験動物固形飼料(入手先:Cargill Agri Purina,Inc.)を購入して自由に供給し、飲用水は上水道水を高圧蒸気で滅菌し自由に摂取させた。1週間の順化過程を経てから、マウスを1群当たり6匹として高コレステロール食餌(Research Diet)を自由に摂取させながら零陵香抽出物を100mg/kgの濃度で5週間経口投与した。対照群には抽出物の代わりに生理食塩水を経口投与した。最終投与後、16時間絶食させてからマウスの腹部大静脈から採血しEDTAチューブに入れて氷に保管した後、3,000rpmで10分間遠心分離して獲得したプラズマを生化学自動分析装置(AU400,olympus,Japan)を用いて分析し、その結果を下記表3に示した。
【0041】
【表3】

備考:TG(triglyceride)、CHO(cholesterol)、LDL(low-density lipoprotein)、HDL(high-density lipoprotein)
動脈硬化指数=(総コレステロール量−HDLコレステロール量)/HDLコレステロール量
上記の表3から明らかなように、中性脂肪、総コレステロール量、LDL数値が減少しHDL数値が増加した。これに伴ない、動脈硬化指数が減少した。
【0042】
以下、本発明の組成物のための製剤例を挙げる。
【0043】
製剤例1:散剤の製造
実施例1の零陵香抽出物の乾燥粉末 300mg
乳糖 100mg
タルク 10mg
上記の成分を混合し、気密包材に充填して散剤を製造する。
【0044】
製剤例2:錠剤の製造
実施例1の零陵香抽出物の乾燥粉末 50mg
とうもろこし澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
上記の成分を混合した後、通常の錠剤製造方法にしたがって打錠して錠剤を製造する。
【0045】
製剤例3:カプセル剤の製造
実施例1の零陵香抽出物の乾燥粉末 50mg
とうもろこし澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
通常のカプセル剤製造方法にしたがって上記の成分を混合し、ゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造する。
【0046】
製剤例4:注射剤の製造
実施例1の零陵香抽出物の乾燥粉末 50mg
注射用滅菌蒸溜水 適量
pH調節剤 適量
通常の注射剤製造方法にしたがって1アンプル(2ml)当たり上記の成分含量で製造する。
【0047】
製剤例5:液剤の製造
実施例1の零陵香抽出物の乾燥粉末 100mg
異性化糖 10g
マンニトール 5g
精製水 適量
通常の液剤製造方法にしたがって精製水にそれぞれの成分を加えて溶解させ、レモン香を適量加えてから上記の成分を混合した後、精製水を加えて全体体積が100mlとなるように調節してから、褐色瓶に充填し滅菌させて液剤を製造する。
【0048】
製剤例6:健康食品の製造
実施例1の零陵香抽出物の乾燥粉末 1000mg
ビタミン混合物 適量
ビタミンAアセテート 70μg
ビタミンE 1.0mg
ビタミンB 0.13mg
ビタミンB 0.15mg
ビタミンB 0.5mg
ビタミンB12 0.2μg
ビタミンC 10mg
ビオチン 10μg
ニコチン酸アミド 1.7mg
葉酸 50μg
パントテン酸カルシウム 0.5mg
無機質混合物 適量
硫酸第1鉄 1.75mg
酸化亜鉛 0.82mg
炭酸マグネシウム 25.3mg
第1リン酸カリウム 15mg
第2リン酸カルシウム 55mg
クエン酸カリウム 90mg
炭酸カルシウム 100mg
塩化マグネシウム 24.8mg
上記のビタミン及びミネラル混合物の組成比は、健康食品に比較的適合した成分を望ましい実施例により混合組成したが、その配合比を任意に変形実施しても支障はなく、通常の健康食品の製造方法によって上記の成分を混合してから、顆粒を製造し、通常の方法によって健康食品組成物の製造に用いることもできる。
【0049】
製剤例7:健康飲料の製造
実施例1の零陵香抽出物乾燥粉末 1000mg
クエン酸 1000mg
オリゴ糖 100g
梅の実濃縮液 2g
タウリン 1g
精製水を加えた全体 900ml
通常の健康飲料製造方法によって上記の成分を混合してから、約1時間85℃で撹はん加熱した後、作られた溶液をろ過して、滅菌された2リットル容器に取得し密封滅菌後に冷蔵保管して本発明による健康飲料組成物の製造に用いる。
【0050】
上記組成比は、嗜好飲料に比較的適合した成分を望ましい実施例によって混合組成したが、需要階層や需要国家、使用用途など地域的、民族的嗜好などによってその配合比を任意に変形実施しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明による零陵香(Lysimachiae Foenum-Graeci Herba)抽出物は、代謝性疾患の指標数値(血液内グルコース、中性脂肪、コレステロール、肝酵素数値)及び肝組織内脂肪の減少に優れた効果を有するので、糖尿、高脂血症、脂肪肝及びこれらが同時多発的に現れる代謝症候群を含む代謝性疾患の予防及び治療剤と、肝保護剤としての原料、機能性食品及び生薬剤に有用に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
零陵香(Lysimachiae Foenum-Graeci Herba)抽出物を有効性分として含有する、高脂血症、脂肪肝、糖尿病、動脈硬化及び心血管疾患からなる群より選ばれた1つ以上の代謝性疾患の予防及び治療用の薬学組成物。
【請求項2】
上記組成物は、カプセル、錠剤、顆粒、粉末または飲料形態であることを特徴とする請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項3】
零陵香(Lysimachiae Foenum-Graeci Herba)抽出物を有効性分として含有する、糖尿病、高脂血症、動脈硬化、心血管疾患及び脂肪肝からなる群より選ばれた1つ以上の代謝性疾患の症状を改善又は緩和させる健康機能食品。
【請求項4】
零陵香抽出物を有効性分として含有する、肝機能改善用の健康機能食品。
【請求項5】
カプセル、錠剤、顆粒、粉末または飲料形態であることを特徴とする請求項4に記載の肝機能改善用の健康機能食品。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公表番号】特表2011−507951(P2011−507951A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540581(P2010−540581)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007706
【国際公開番号】WO2009/084875
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(510179124)ビーアールエヌサイエンス カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】