雷サージ保護システム
【課題】簡易な雷サージ保護システムを提供する。
【解決手段】屋外高所に設置された第1装置1と、前記第1装置との間で信号の送信又は受信を行う第2装置2と、前記第1装置と前記第2装置とを接続する信号線3a,3bと、前記信号線3a,3bと電源線12の接地線12aとを結ぶ雷サージ用経路26を有する保護回路21と、前記保護回路21は、前記信号線3a,3bと前記電源線12との間での前記信号及び電源電力の通過を阻止するとともに、前記信号線3aに進入した雷サージを前記電源線12の前記接地線12aへ逃がすためのアレスタ27,28を備え、前記雷サージ用経路26は、前記信号線3bから前記第2装置2を経由して前記電源線12の前記接地線12aへ至る経路よりも短く形成されている。
【解決手段】屋外高所に設置された第1装置1と、前記第1装置との間で信号の送信又は受信を行う第2装置2と、前記第1装置と前記第2装置とを接続する信号線3a,3bと、前記信号線3a,3bと電源線12の接地線12aとを結ぶ雷サージ用経路26を有する保護回路21と、前記保護回路21は、前記信号線3a,3bと前記電源線12との間での前記信号及び電源電力の通過を阻止するとともに、前記信号線3aに進入した雷サージを前記電源線12の前記接地線12aへ逃がすためのアレスタ27,28を備え、前記雷サージ用経路26は、前記信号線3bから前記第2装置2を経由して前記電源線12の前記接地線12aへ至る経路よりも短く形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷サージ保護システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
雷による機器被害は、機器そのものの電子化とその素子の動作電圧の低電圧化に伴い、増加する傾向にある。
一方、通常の通信(電話等)においては先進国ではメタル線が使用され、そのメタル線への誘導による雷障害というのがもっぱらであった。
しかし、広大な面積を有する国々では、メタル線を引き回すことが経済的で無いため、無線による固定電話というものが用いられる所が少なからずある。
【0003】
この様な状況下、無線による固定電話を実現するため、一般加入者の宅地内にアンテナ掲揚の為の支柱を立て、その頂上に無線装置を設置する形態が採用されることがある。この場合、宅内には、その無線装置からの信号を元に音声やデータに変換する機器(変換部)が設置され、その変換部には、電話器やパソコン等の端末装置が接続される。なお、変換部を支柱上の機器内におく場合もある
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の様な形態においては、無線の使用周波数帯によっては、基地局との間で見通しが必要となり、通信距離が長くなると支柱の高さを高くしないと見通しが確保できない場合が生じる。
この場合、周囲に地上高の高い構造物(送電線・配電線の鉄塔や支柱、放送用のアンテナ、携帯電話の基地局、避雷針を有するビル・寺院等)が無い場合には、支柱自身が避雷針代わりとなり、そこに直接落雷する可能性が高くなる。
【0005】
一方、マイクロ中継器の様に、地上高が高い場合であっても重要設備である場合には、それなりの費用を掛けた対策も可能である。
しかし、電話のように加入者が多くなる場合、一般需要家の一軒一軒に設置される設備に対して、高価な対策を施すことは実際問題上、無理がある。
【0006】
このため、従来は、電話等の通信設備に簡易に施すことができる雷対策は存在しなかった。
そこで、本発明は、新たな雷対策のためのシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、屋外高所に設置された第1装置と、前記第1装置との間で信号の送信又は受信を行う第2装置と、前記第1装置と前記第2装置とを接続する信号線と、前記信号線と電源線の接地線とを結ぶ雷サージ用経路を有する保護回路と、前記保護回路は、前記信号線と前記電源線との間での前記信号の通過を阻止するとともに、前記信号線に進入した雷サージを前記電源線の前記接地線へ逃がすためのアレスタを備え、前記雷サージ用経路は、前記信号線から前記第2装置を経由して前記電源線の前記接地線へ至る経路よりも短く形成されている。
上記本発明によれば、雷サージが信号線に侵入しても電源線の接地線にアレスタを介して逃がすことができ、誘導雷対しては装置の故障を防止することができ、直雷に関しては装置内でのアーク放電の発生を防止できる。
【0008】
なお、アレスタが破壊するような電流が流れた場合でも、例えば、アレスタのリード電極を溶かすような電流が流れない限り、気中でのアークが発生してもそれにより加熱される空気の体積が多くないため、装置の筐体の破裂等は避けることが可能となる。
また、アレスタが雷サージによる発生電圧を低く抑えるため、装置側に雷サージの主電流を流さなくなる。
【0009】
雷サージ用経路は、複数の電源線のそれぞれが、複数の信号線すべてに接続されるように形成されているのが好ましい。この場合、電源線の接地線がどの雷サージ用経路に接続されているかにかかわらず、雷サージを接地線に流すことができる。
【0010】
前記保護回路は、複数の信号線それぞれに接続された複数の前記アレスタからなる第1アレスタ群と、複数の電源線のそれぞれに接続された複数の前記アレスタからなる第2アレスタ群と、を備え、 前記第1アレスタ群と前記第2アレスタ群との中間点が同電位となるように、前記第1アレスタ群を構成する複数の前記アレスタと前記第2アレスタ群を構成する複数の前記アレスタとが接続されているのが好ましい。
この場合、アレスタの数を少なくすることができる。
【0011】
前記保護回路には、前記信号線に流れようとする雷サージに対してインピーダンスとなるコイルが設けられているのが好ましい。この場合、信号線へ雷サージが流れにくくなる。
【0012】
前記保護回路は、前記第1装置から延びた信号線に接続するための第1信号線接続部と、電源線に接続するための電源接続部と、前記第1信号線接続部から前記第2装置側へ至るための信号用経路と、を備え、前記雷サージ用経路は、前記信号接続部又は前記信号用経路から分岐し、前記電源接続部に至るように形成されているのが好ましい。
【0013】
前記保護回路は、前記信号用経路を、前記第2装置へ延びる信号線に接続するための第2信号線接続部を備えているのが好ましい。
【0014】
前記第2信号線接続部から前記第2装置へ延びる信号線となる接続リード線の中途部又は前記第2装置の電源リード線の中途部がコイル状に形成されて、雷サージに対するインピーダンスとされているのが好ましい。この場合、雷サージの侵入がより一層防止される。
【0015】
前記保護回路は、前記第2装置が電源電力を得るためのパワーアウトレット部を備えているのが好ましい。この場合、雷サージ用経路を最短経路として確保しやすい。
【0016】
前記第2装置に接続される端末装置を更に備え、前記保護回路及び前記第2装置は屋外に設置され、前記第2装置に接続される前記端末装置は屋内に設置されているのが好ましい。この場合、仮に第2装置に雷サージが流れても、宅内にいる人への影響を回避できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、雷対策を施した簡便なシステムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、雷サージ保護システムが適用される通信機器の概要(保護回路なし)を示している。無線を用いた固定電話(含むデータ通信)を実現するためには、基地局と各需要家宅に設置される子局とが必要であり、図1は、子局を構成する通信機器と電源系統を示している。
【0019】
需要家宅に設置される機器としては、屋外に設置される屋外ユニット(ODU:Outdoor Unit)1と、屋内に設置される屋内ユニット(IDU:Indoor Unit)2とがある。
【0020】
屋外ユニット(第1装置)1は、基地局と対向して信号の送信又は受信を行うためのアンテナ部及び必要ならば送信信号又は受信信号を処理するための処理部を備えている。
屋外ユニット1は、地上から立ち上げた支柱(通常、金属パイプ)Pの頂上に設置され、通信のために必要な地上高に位置する。
【0021】
ここで、使用される無線の周波数帯によっては、無線の直進性が強くなる。このため、基地局の数を増やすことなく数多くの需要家を収容しようとすると、見通しが利かないと通信できない場合があり、加入者側の受信アンテナ部分の地上高を高くせざるを得ないことになる。この結果、ひいてはアンテナ支持のための支柱Pに落雷を招くことになる。
【0022】
屋内ユニット(第2装置)2は、接続リード線3を介して屋外ユニット1と接続されており、屋外ユニット1との間で信号のやりとり(送受信)を行う。この屋内ユニット2には、電話器4が接続されている。また、屋内ユニット2の電源プラグ5は、宅内の電源コンセント6に接続されている。なお、屋内ユニット2の筐体から電源プラグ5までの電源ケーブルの中途には絶縁トランス(IT)7が設けられており、電源プラグ5と屋内ユニット2本体との間の絶縁状態を確保している。
【0023】
ここで、前記接続リード線3は、電話用の接続リード線(ケーブル)であり、例えば、2〜5線のものが採用可能である。なお、以下の説明では、接続リード線3は、5線のものとして説明する。
【0024】
図1において、屋内ユニット2に電源を供給するための電源系統は、需要家宅の近傍の配電柱の上に設置されたトランス(PT)10から各需要家宅に電源線12として引き込まれるように構成されている。
より具体的には、高圧線(例えば、AC33kV)11の電力がトランス10にて接地線12aを含む4線の低圧線12に変換される。そして、4線の低圧線うち接地線12aを含む2本の低圧線12が需要家宅に電源線として引き込まれる。
また、前記接地線12aは、トランス部PTにおいて大地に接地されている。
【0025】
なお、電源系統は、図1のものに限られるものではない。例えば、日本では、図1のものとは異なり、単相3線式で中性線(接地線)と相間電圧が200Vであり、各相と中性線間100Vで配電される。
【0026】
前記屋内ユニット2は、その筐体内部に、接続リード線3と接続される低圧回路部(信号の処理回路部)2aと、電源プラグ5と接続される電源回路部2bと、を備えている。
【0027】
図2及び図3は、本発明の保護回路がない場合における落雷電流の流れ方を示している。図2は、屋内ユニット2の低圧回路部(ターミナル基板)2aと電源回路部(電源基板)2bとが高周波的に絶縁されていない場合における落雷電流の流れ方を示しており、図中の矢印が落雷電流の流れる方向を示している。ここで、低圧回路部(ターミナル基板)2aと電源回路部(電源基板)2bとが高周波的に絶縁されていない場合とは、例えば、EMI低減の目的でパスコンと呼ばれるコンデンサが電源回路部2bと低圧回路部2a間に挿入されている場合をいう。
【0028】
図2の場合、支柱P上の屋外ユニット(ODU)1に直雷が起こる。屋外ユニットに直雷が起こると、落雷電流は屋外ユニット1から屋内ユニット2を通って、柱上トランスPTの接地線12aに雷撃電流が流れる。また、ODUとIDUを接続するケーブル3が金属支柱Pに固定されていると、途中で金属支柱に分流し、大地にも流れることになる。
【0029】
図3は、電源回路部(電源基板)2bが、低圧回路部2aに対して高周波的にも絶縁されているか、又は絶縁トランス7が存在する場合における落雷電流の流れ方を示しており、図中の矢印が落雷電流の流れる方向を示している。
【0030】
図3の場合、金属支柱Pに落雷する。雷撃電流は、金属支柱Pを経由して直接大地へ流れる経路と、図2のように屋外ユニット1に落雷する場合とは逆に、屋内外ユニット1,2を接続する接続ケーブル3に分流し、屋内ユニット(IDU)2を経由し、柱上トランス10の接地に流れることになる。
この場合、接地個所が支柱P根本の大地と、電源側(トランス10)の接地個所の2カ所存在することになり、この距離が離れていると、落雷時にサージインピーダンスにより、一方の接地点の電位が上昇し、他方の接地との間で電位差を生じ、電流が分流することになる。
【0031】
金属支柱P側に流れる電流は、その近傍に近づかない限りそのまま大地に流れることになるが、屋内に流入した電流は、屋内ユニット2の設計が適切でない場合、屋内ユニット2内部でアーク放電を起こし、機器の故障を招く場合がある。
【0032】
一方、落雷に至らない場合には、通常、屋外ユニット1が電気的に故障し、筐体が部分破壊したり、屋内ユニット2の内部回路が損傷したりし、障害が発生することになる。
従って、屋内外ユニット1,2などの機器及び機器支持柱Pへの落雷による被害並びに、落雷に至る前の機器の障害を減じるための対策が必要である。
【0033】
図4は、雷サージ対策のための保護装置20を子局システム中に組み込んだ雷サージ保護システムを示している。
保護装置20は、屋外ユニット1と屋内ユニット2とを接続する信号線3a,3b間に接続される。また、屋内ユニット2は、保護装置20の備えるパワーアウトレット22aから電力供給を受ける。さらに、屋内ユニット2は、電源電力を得るための電源プラグ22bを備えている。
【0034】
図5は、保護装置20の筐体内部に設けられた保護回路21を示している。ここでの保護装置20は、第2装置2とは別体の筐体を有している。
保護回路21は、屋外ユニット1から延びる第1信号線(接続リード線)3aが着脱自在に接続される第1信号線接続部23と、屋内ユニット2へと延びる第2信号線(接続リード線)3bが着脱自在に接続される第2信号線接続部24とを備えている。
保護回路21には、第1信号線接続部23と第2信号線接続部24との間を接続して保護回路内信号線となるための信号用経路25を備えている。
【0035】
信号用経路25は、信号線3a,3bが5線であることに対応して、5本(複数本)設けられている。5本それぞれの信号用経路25中には、コイル25aが設けられている。コイル25aは、電話用の信号(数kHz程度)のように比較的低い周波数信号は通過可能であるが、雷サージ電流のような高周波に対しては抵抗(インピーダンス)となって、第1信号線3aを進入してきた雷サージが、信号用経路25を経由して、第2信号線3b側へ流れるのを防止し、後述の雷サージ用経路26に流れ易くなるように機能する。
なお、コイル25aは設けなくても良く、コイル25aを設けない例については後述する。
【0036】
保護回路21は、信号用経路25を備えているため、保護装置20を屋外ユニット1と屋内ユニット2とを繋ぐ信号線3a,3bの間に介在させても、図1のように屋外ユニット1と屋内ユニット2とを信号線3で直接接続した場合と同様に、屋内外ユニット1,2間での信号のやりとりが可能である。
【0037】
保護回路21は、信号経路25の中途から分岐した雷サージ用経路26を備えている。この雷サージ用経路26は、5本の信号用経路(信号線)それぞれから分岐した5本(複数)の第1経路26aと、電源プラグ22へ繋がるべく電源線12と同じ数の2本(複数)の第2経路26bと、を有している。
【0038】
5本のそれぞれの第1経路26aには、第1アレスタ(避雷器)27が設けられている。この第1アレスタ27は、信号電圧及び電源電圧のように低い電圧では動作せず、雷サージのように非常に高い電圧でのみ動作する。
また、2本のそれぞれの第2経路26bには、第2アレスタ(避雷器)28が設けられている。この第2アレスタも、信号電圧及び電源電圧のように低い電圧では動作せず、雷サージのように非常に高い電圧でのみ動作する。
【0039】
アレスタ27,28が設けられていることで、雷サージ用経路26を設けても、信号線3a,3b,26aを流れる信号は電源線12へ流れることはなく、電源電圧が信号線3a,3b,26a側へ作用することもない。
そして、雷サージが信号線3aに進入して、保護回路21まで来ると、雷サージは、雷サージ用経路26を経由して、電源線12の接地線12へ逃がすことが可能である。
【0040】
そして、保護回路21の雷サージ用経路(バイパス経路)26は、雷サージが、保護回路21の信号用経路25から第2信号線3bを通って屋内ユニット2の電源プラグ5に至るまでの迂回経路よりも、短くなっている(図4参照)。雷サージは、接地位置までの最短距離を通過しようとするため、前記迂回経路ではなく、距離の短いバイパス経路である雷サージ用経路26を流れることになる。
よって、雷サージが屋内ユニット2に流れることが防止される。
【0041】
図5においては、複数(5個)の第1アレスタ27からなる第1アレスタ群を有する第1経路26aと、複数(2個)の第1アレスタ28からなる第2アレスタ群を有する第2経路26bとは接続部29に対して接続されており、 前記第1アレスタ群と前記第2アレスタ群との中間点が同電位となっている。
すなわち、5本の第1経路26aの端部と2本の第2経路26bの端部とは、例えば1つの金属板からなる接続部29に接続されており、接続部29の位置で、7本の各経路26a,26bが集合している。この結果、接続部29において、7本の各経路26a,26bの電位が同じになっている。
【0042】
上記接続部29を設けることで、雷サージが、5本の信号線3aのいずれから進入しても、5本の第1経路26aのいずれかを通って、2本の第2経路26bの何れにでも流れることができる。
つまり、保護装置20の電源プラグ22がコンセント6に差し込まれた場合、2本の第2経路26aのどちらが電力線12の接地線12aに繋がっているかは、ケースバイケースである。しかし、上記接続部29を設けることで、2本の第2経路26bの一方が接地線12aに繋がっている場合には、雷サージは、当該一方の第2経路26bを通って、接地線12aへ流れることができる。また、2本の第2経路26bの他方が接地線12aに繋がっている場合には、雷サージは、当該他方の第2経路26bを通って、接地線12aへ流れることができる。
【0043】
このように、複数の第2経路26bのうち、いずれが接地極となっても、雷サージを接地線へ逃がすことができる。
また、図5のように構成することで、アレスタ27,28の数を少なくすることができる。すなわち、アレスタを第1アレスタ群と第2アレスタ群の2つの群に分けずに、複数の第2経路26bのうちいずれが接地極となっても、雷サージを接地線へ逃がすためには、一方の第2経路26bに接続される第1アレスタ群27と、他方の第2経路26bに接続される第1アレスタ群27とが必要であり、第1経路26aからの分岐数が非常に多くなるとともにアレスタ27の数も多くなる(アレスタの数=第1経路26aの数×第2経路26bの数)。
これに対して、図5のような構成であれば、アレスタの数=第1経路26aの数+第2経路26bの数、でよく、アレスタの数が少なくて済む。
【0044】
前記第2経路26bは、第2アレスタ28よりも電源プラグ22側の位置で分岐して、パワーアウトレット(ACアウトレット)22aへ接続されている。また、前記第2経路26bは、パワーアウトレット(ACアウトレット)22aへの分岐位置よりも電源プラグ22b側の位置にヒューズHを備えている。
パワーアウトレット22aは、屋内ユニット2の電源プラグ5又はその他屋内に設置される機器の電源プラグを接続するためのものである。屋内ユニット2の電源プラグ5をパワーアウトレット22aに接続することで、雷サージ用経路26の長さを確実に短くすることができる。なお、パワーアウトレット22aは、1つでも複数であってもよい。
【0045】
アレスタ27,28が定格範囲内で動作した場合、過電流が通過したか否か不明のため、前記ヒューズHを入れることで、動作確認をすることができる。また、アレスタ27,28がガラス管タイプ等のギャップアレスタの場合には過電流等で故障すると、回路は断状態になるため問題とはならないが、酸化亜鉛等の半導体で作られたアレスタの場合、故障モードによっては常時導通状態となる場合があり、その時、回路を断とするためこのヒューズHを入れるとよい。
【0046】
図6及び図7は、雷サージの流れ方(矢印)を簡単に説明したものであり、図6は保護回路21がない場合を、図7は保護回路21がある場合を示している。図6に示すように保護回路21がなければ、雷サージは屋内ユニット2を流れ、保護回路21がある場合は、雷サージは屋内ユニット2を流れないことがわかる。
【0047】
図8は、図7のシステム構成において、屋内ユニット2に接続された信号線(接続リード線)3b,3c及び/又は屋内ユニットに接続された電源ケーブル5aの途中にコイルCを形成したものである。これらのコイルCは、接続リード線3b,3c又は電源ケーブル5aの中途部をコイル状に巻いたり、フェライトコアなどの磁性材料に接続リード線3b,3c又は電源ケーブル5aの中途部を巻き付けて、雷サージに対するインピーダンスとしたものである。
【0048】
このように、雷サージ電流を通したくない箇所に、サージに対して抵抗として作用する部分(コイルC)をつくることで、雷サージの侵入を効果的に防止でき、本来の信号や電源供給に支障のない形で、機器の保護を安価に図ることができる。また、コイルCを形成することで、雷サージの種電流が通る道筋が特定でき、その道筋を人から遠ざけた位置に設置することが容易となる。
【0049】
図9及び図10は、屋内ユニット2の筐体内に保護回路21を内蔵させた変形例を示している。前述の保護装置20は、雷サージ対策のない機器1,2と組み合わせてしようすることで、既存の機器1,2を改造することなく雷サージ保護機能を実現したものであるのに対し、図9及び図10は、屋内ユニット2と保護回路21とを一体化したものである。
すなわち、屋内ユニット2の筐体内には、保護回路21と、低圧回路部2a及び電源回路部2bを有する本体回路40とが内蔵されており、両回路21,40とが屋内ユニット2の筐体内で接続されている。
なお、図9及び図10に関し、説明を省略した点は、図1〜図8と同様である。
【0050】
図11は、電話器4以外の機器を屋外に設置した変形例を示している。なお、図11に関し、説明を省略した点は、図1〜図10と同様である。
図11では、屋内ユニット(第2装置)2、保護装置20、絶縁トランス7、コンセント6を設置し、使用するために宅内に必要な電話器4だけを宅内に設置している。
また、保護装置20の電源プラグ22が接続されるコンセント6は、受電盤などの電源線引き込み部に近い位置から屋外に引き出して設置されている。
このように構成することで、例えば、電話器4やテレビ受像器のように使用するためには人の近くに存在する必要があるために宅内に設置されるべき端末(図11では、テレビもは保護されていない)だけが宅内に位置するため、想定外の規模の落雷等(含む誘導雷)が発生しても、基本的に人がいる近くに雷電流を引き込まないようにしている。したがって、最悪、屋内ユニット2などの機器自体が壊れても、人体への影響を抑えることができる。
【0051】
また、図11においては図示していないが、電話などの屋内に設置される端末(機器)への電源供給は、前記保護装置20のパワーアウトレット21から行うのが好ましい。宅内で使用される機器が、旧式の電話器で別個の電源を必要としない場合には問題ないが、新型のデジタル方式の電話やTVのように電源を必要とする場合、落雷或いはそれに相当するような誘導雷発生時に、宅内で使用される機器の電源のアース電位と保護装置20のアウトレット21の電位に差が生じると、話中の人に影響する可能性があるため、宅内で使用される機器4の電源取得は、保護装置20のアウトレット21から行うのが好ましい。
【0052】
図12は、図5の保護回路においてコイル25aを省略した変形例を示している。信号用経路25にコイル25aがなくても、雷サージは最短経路を流れようとするため、雷サージをバイパス経路である雷サージ用経路26に逃がすことが可能である。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、屋外高所に設置される第1装置としては、電話用の屋外ユニット1に限られるものではなく、テレビ受信用アンテナであってもよく、この場合、第2装置としては、テレビ受像器となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】子局の機器構成と電源系統を示す概略図である。
【図2】屋内ユニットの電源ユニットに、ノイズ対策用のパスコンを挿入している場合の放電経路を示す図である。
【図3】電源基板に、ノイズ対策用のパスコン使用時の対策として絶縁トランスを挿入している場合の放電経路を示す図である。
【図4】保護装置を外付けした場合の雷サージ保護システムにおける放電経路(接地点に対して最短経路通過)を示す図である。
【図5】保護回路の回路図である。
【図6】保護回路がない場合の放電経路の概略図である。
【図7】保護回路がある場合の放電経路の概略図である。
【図8】図7にコイルCを追加した場合の放電経路の概略図である。
【図9】保護回路を屋内ユニットに内蔵させた場合の雷サージ保護システムを示す図である。
【図10】保護回路を内蔵した屋内ユニットの回路図である。
【図11】電話器4以外の機器を屋外に接地した例を示すシステム構成図である。
【図12】図5の保護回路においてコイルを省略した回路図である。
【符号の説明】
【0055】
1 屋外ユニット(第1装置)
2 屋内ユニット(第2装置)
3a 信号線
3b 信号線
12 電源線
12a 接地線
21 保護回路
26 雷サージ用経路
27 アレスタ
28 アレスタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷サージ保護システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
雷による機器被害は、機器そのものの電子化とその素子の動作電圧の低電圧化に伴い、増加する傾向にある。
一方、通常の通信(電話等)においては先進国ではメタル線が使用され、そのメタル線への誘導による雷障害というのがもっぱらであった。
しかし、広大な面積を有する国々では、メタル線を引き回すことが経済的で無いため、無線による固定電話というものが用いられる所が少なからずある。
【0003】
この様な状況下、無線による固定電話を実現するため、一般加入者の宅地内にアンテナ掲揚の為の支柱を立て、その頂上に無線装置を設置する形態が採用されることがある。この場合、宅内には、その無線装置からの信号を元に音声やデータに変換する機器(変換部)が設置され、その変換部には、電話器やパソコン等の端末装置が接続される。なお、変換部を支柱上の機器内におく場合もある
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の様な形態においては、無線の使用周波数帯によっては、基地局との間で見通しが必要となり、通信距離が長くなると支柱の高さを高くしないと見通しが確保できない場合が生じる。
この場合、周囲に地上高の高い構造物(送電線・配電線の鉄塔や支柱、放送用のアンテナ、携帯電話の基地局、避雷針を有するビル・寺院等)が無い場合には、支柱自身が避雷針代わりとなり、そこに直接落雷する可能性が高くなる。
【0005】
一方、マイクロ中継器の様に、地上高が高い場合であっても重要設備である場合には、それなりの費用を掛けた対策も可能である。
しかし、電話のように加入者が多くなる場合、一般需要家の一軒一軒に設置される設備に対して、高価な対策を施すことは実際問題上、無理がある。
【0006】
このため、従来は、電話等の通信設備に簡易に施すことができる雷対策は存在しなかった。
そこで、本発明は、新たな雷対策のためのシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、屋外高所に設置された第1装置と、前記第1装置との間で信号の送信又は受信を行う第2装置と、前記第1装置と前記第2装置とを接続する信号線と、前記信号線と電源線の接地線とを結ぶ雷サージ用経路を有する保護回路と、前記保護回路は、前記信号線と前記電源線との間での前記信号の通過を阻止するとともに、前記信号線に進入した雷サージを前記電源線の前記接地線へ逃がすためのアレスタを備え、前記雷サージ用経路は、前記信号線から前記第2装置を経由して前記電源線の前記接地線へ至る経路よりも短く形成されている。
上記本発明によれば、雷サージが信号線に侵入しても電源線の接地線にアレスタを介して逃がすことができ、誘導雷対しては装置の故障を防止することができ、直雷に関しては装置内でのアーク放電の発生を防止できる。
【0008】
なお、アレスタが破壊するような電流が流れた場合でも、例えば、アレスタのリード電極を溶かすような電流が流れない限り、気中でのアークが発生してもそれにより加熱される空気の体積が多くないため、装置の筐体の破裂等は避けることが可能となる。
また、アレスタが雷サージによる発生電圧を低く抑えるため、装置側に雷サージの主電流を流さなくなる。
【0009】
雷サージ用経路は、複数の電源線のそれぞれが、複数の信号線すべてに接続されるように形成されているのが好ましい。この場合、電源線の接地線がどの雷サージ用経路に接続されているかにかかわらず、雷サージを接地線に流すことができる。
【0010】
前記保護回路は、複数の信号線それぞれに接続された複数の前記アレスタからなる第1アレスタ群と、複数の電源線のそれぞれに接続された複数の前記アレスタからなる第2アレスタ群と、を備え、 前記第1アレスタ群と前記第2アレスタ群との中間点が同電位となるように、前記第1アレスタ群を構成する複数の前記アレスタと前記第2アレスタ群を構成する複数の前記アレスタとが接続されているのが好ましい。
この場合、アレスタの数を少なくすることができる。
【0011】
前記保護回路には、前記信号線に流れようとする雷サージに対してインピーダンスとなるコイルが設けられているのが好ましい。この場合、信号線へ雷サージが流れにくくなる。
【0012】
前記保護回路は、前記第1装置から延びた信号線に接続するための第1信号線接続部と、電源線に接続するための電源接続部と、前記第1信号線接続部から前記第2装置側へ至るための信号用経路と、を備え、前記雷サージ用経路は、前記信号接続部又は前記信号用経路から分岐し、前記電源接続部に至るように形成されているのが好ましい。
【0013】
前記保護回路は、前記信号用経路を、前記第2装置へ延びる信号線に接続するための第2信号線接続部を備えているのが好ましい。
【0014】
前記第2信号線接続部から前記第2装置へ延びる信号線となる接続リード線の中途部又は前記第2装置の電源リード線の中途部がコイル状に形成されて、雷サージに対するインピーダンスとされているのが好ましい。この場合、雷サージの侵入がより一層防止される。
【0015】
前記保護回路は、前記第2装置が電源電力を得るためのパワーアウトレット部を備えているのが好ましい。この場合、雷サージ用経路を最短経路として確保しやすい。
【0016】
前記第2装置に接続される端末装置を更に備え、前記保護回路及び前記第2装置は屋外に設置され、前記第2装置に接続される前記端末装置は屋内に設置されているのが好ましい。この場合、仮に第2装置に雷サージが流れても、宅内にいる人への影響を回避できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、雷対策を施した簡便なシステムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、雷サージ保護システムが適用される通信機器の概要(保護回路なし)を示している。無線を用いた固定電話(含むデータ通信)を実現するためには、基地局と各需要家宅に設置される子局とが必要であり、図1は、子局を構成する通信機器と電源系統を示している。
【0019】
需要家宅に設置される機器としては、屋外に設置される屋外ユニット(ODU:Outdoor Unit)1と、屋内に設置される屋内ユニット(IDU:Indoor Unit)2とがある。
【0020】
屋外ユニット(第1装置)1は、基地局と対向して信号の送信又は受信を行うためのアンテナ部及び必要ならば送信信号又は受信信号を処理するための処理部を備えている。
屋外ユニット1は、地上から立ち上げた支柱(通常、金属パイプ)Pの頂上に設置され、通信のために必要な地上高に位置する。
【0021】
ここで、使用される無線の周波数帯によっては、無線の直進性が強くなる。このため、基地局の数を増やすことなく数多くの需要家を収容しようとすると、見通しが利かないと通信できない場合があり、加入者側の受信アンテナ部分の地上高を高くせざるを得ないことになる。この結果、ひいてはアンテナ支持のための支柱Pに落雷を招くことになる。
【0022】
屋内ユニット(第2装置)2は、接続リード線3を介して屋外ユニット1と接続されており、屋外ユニット1との間で信号のやりとり(送受信)を行う。この屋内ユニット2には、電話器4が接続されている。また、屋内ユニット2の電源プラグ5は、宅内の電源コンセント6に接続されている。なお、屋内ユニット2の筐体から電源プラグ5までの電源ケーブルの中途には絶縁トランス(IT)7が設けられており、電源プラグ5と屋内ユニット2本体との間の絶縁状態を確保している。
【0023】
ここで、前記接続リード線3は、電話用の接続リード線(ケーブル)であり、例えば、2〜5線のものが採用可能である。なお、以下の説明では、接続リード線3は、5線のものとして説明する。
【0024】
図1において、屋内ユニット2に電源を供給するための電源系統は、需要家宅の近傍の配電柱の上に設置されたトランス(PT)10から各需要家宅に電源線12として引き込まれるように構成されている。
より具体的には、高圧線(例えば、AC33kV)11の電力がトランス10にて接地線12aを含む4線の低圧線12に変換される。そして、4線の低圧線うち接地線12aを含む2本の低圧線12が需要家宅に電源線として引き込まれる。
また、前記接地線12aは、トランス部PTにおいて大地に接地されている。
【0025】
なお、電源系統は、図1のものに限られるものではない。例えば、日本では、図1のものとは異なり、単相3線式で中性線(接地線)と相間電圧が200Vであり、各相と中性線間100Vで配電される。
【0026】
前記屋内ユニット2は、その筐体内部に、接続リード線3と接続される低圧回路部(信号の処理回路部)2aと、電源プラグ5と接続される電源回路部2bと、を備えている。
【0027】
図2及び図3は、本発明の保護回路がない場合における落雷電流の流れ方を示している。図2は、屋内ユニット2の低圧回路部(ターミナル基板)2aと電源回路部(電源基板)2bとが高周波的に絶縁されていない場合における落雷電流の流れ方を示しており、図中の矢印が落雷電流の流れる方向を示している。ここで、低圧回路部(ターミナル基板)2aと電源回路部(電源基板)2bとが高周波的に絶縁されていない場合とは、例えば、EMI低減の目的でパスコンと呼ばれるコンデンサが電源回路部2bと低圧回路部2a間に挿入されている場合をいう。
【0028】
図2の場合、支柱P上の屋外ユニット(ODU)1に直雷が起こる。屋外ユニットに直雷が起こると、落雷電流は屋外ユニット1から屋内ユニット2を通って、柱上トランスPTの接地線12aに雷撃電流が流れる。また、ODUとIDUを接続するケーブル3が金属支柱Pに固定されていると、途中で金属支柱に分流し、大地にも流れることになる。
【0029】
図3は、電源回路部(電源基板)2bが、低圧回路部2aに対して高周波的にも絶縁されているか、又は絶縁トランス7が存在する場合における落雷電流の流れ方を示しており、図中の矢印が落雷電流の流れる方向を示している。
【0030】
図3の場合、金属支柱Pに落雷する。雷撃電流は、金属支柱Pを経由して直接大地へ流れる経路と、図2のように屋外ユニット1に落雷する場合とは逆に、屋内外ユニット1,2を接続する接続ケーブル3に分流し、屋内ユニット(IDU)2を経由し、柱上トランス10の接地に流れることになる。
この場合、接地個所が支柱P根本の大地と、電源側(トランス10)の接地個所の2カ所存在することになり、この距離が離れていると、落雷時にサージインピーダンスにより、一方の接地点の電位が上昇し、他方の接地との間で電位差を生じ、電流が分流することになる。
【0031】
金属支柱P側に流れる電流は、その近傍に近づかない限りそのまま大地に流れることになるが、屋内に流入した電流は、屋内ユニット2の設計が適切でない場合、屋内ユニット2内部でアーク放電を起こし、機器の故障を招く場合がある。
【0032】
一方、落雷に至らない場合には、通常、屋外ユニット1が電気的に故障し、筐体が部分破壊したり、屋内ユニット2の内部回路が損傷したりし、障害が発生することになる。
従って、屋内外ユニット1,2などの機器及び機器支持柱Pへの落雷による被害並びに、落雷に至る前の機器の障害を減じるための対策が必要である。
【0033】
図4は、雷サージ対策のための保護装置20を子局システム中に組み込んだ雷サージ保護システムを示している。
保護装置20は、屋外ユニット1と屋内ユニット2とを接続する信号線3a,3b間に接続される。また、屋内ユニット2は、保護装置20の備えるパワーアウトレット22aから電力供給を受ける。さらに、屋内ユニット2は、電源電力を得るための電源プラグ22bを備えている。
【0034】
図5は、保護装置20の筐体内部に設けられた保護回路21を示している。ここでの保護装置20は、第2装置2とは別体の筐体を有している。
保護回路21は、屋外ユニット1から延びる第1信号線(接続リード線)3aが着脱自在に接続される第1信号線接続部23と、屋内ユニット2へと延びる第2信号線(接続リード線)3bが着脱自在に接続される第2信号線接続部24とを備えている。
保護回路21には、第1信号線接続部23と第2信号線接続部24との間を接続して保護回路内信号線となるための信号用経路25を備えている。
【0035】
信号用経路25は、信号線3a,3bが5線であることに対応して、5本(複数本)設けられている。5本それぞれの信号用経路25中には、コイル25aが設けられている。コイル25aは、電話用の信号(数kHz程度)のように比較的低い周波数信号は通過可能であるが、雷サージ電流のような高周波に対しては抵抗(インピーダンス)となって、第1信号線3aを進入してきた雷サージが、信号用経路25を経由して、第2信号線3b側へ流れるのを防止し、後述の雷サージ用経路26に流れ易くなるように機能する。
なお、コイル25aは設けなくても良く、コイル25aを設けない例については後述する。
【0036】
保護回路21は、信号用経路25を備えているため、保護装置20を屋外ユニット1と屋内ユニット2とを繋ぐ信号線3a,3bの間に介在させても、図1のように屋外ユニット1と屋内ユニット2とを信号線3で直接接続した場合と同様に、屋内外ユニット1,2間での信号のやりとりが可能である。
【0037】
保護回路21は、信号経路25の中途から分岐した雷サージ用経路26を備えている。この雷サージ用経路26は、5本の信号用経路(信号線)それぞれから分岐した5本(複数)の第1経路26aと、電源プラグ22へ繋がるべく電源線12と同じ数の2本(複数)の第2経路26bと、を有している。
【0038】
5本のそれぞれの第1経路26aには、第1アレスタ(避雷器)27が設けられている。この第1アレスタ27は、信号電圧及び電源電圧のように低い電圧では動作せず、雷サージのように非常に高い電圧でのみ動作する。
また、2本のそれぞれの第2経路26bには、第2アレスタ(避雷器)28が設けられている。この第2アレスタも、信号電圧及び電源電圧のように低い電圧では動作せず、雷サージのように非常に高い電圧でのみ動作する。
【0039】
アレスタ27,28が設けられていることで、雷サージ用経路26を設けても、信号線3a,3b,26aを流れる信号は電源線12へ流れることはなく、電源電圧が信号線3a,3b,26a側へ作用することもない。
そして、雷サージが信号線3aに進入して、保護回路21まで来ると、雷サージは、雷サージ用経路26を経由して、電源線12の接地線12へ逃がすことが可能である。
【0040】
そして、保護回路21の雷サージ用経路(バイパス経路)26は、雷サージが、保護回路21の信号用経路25から第2信号線3bを通って屋内ユニット2の電源プラグ5に至るまでの迂回経路よりも、短くなっている(図4参照)。雷サージは、接地位置までの最短距離を通過しようとするため、前記迂回経路ではなく、距離の短いバイパス経路である雷サージ用経路26を流れることになる。
よって、雷サージが屋内ユニット2に流れることが防止される。
【0041】
図5においては、複数(5個)の第1アレスタ27からなる第1アレスタ群を有する第1経路26aと、複数(2個)の第1アレスタ28からなる第2アレスタ群を有する第2経路26bとは接続部29に対して接続されており、 前記第1アレスタ群と前記第2アレスタ群との中間点が同電位となっている。
すなわち、5本の第1経路26aの端部と2本の第2経路26bの端部とは、例えば1つの金属板からなる接続部29に接続されており、接続部29の位置で、7本の各経路26a,26bが集合している。この結果、接続部29において、7本の各経路26a,26bの電位が同じになっている。
【0042】
上記接続部29を設けることで、雷サージが、5本の信号線3aのいずれから進入しても、5本の第1経路26aのいずれかを通って、2本の第2経路26bの何れにでも流れることができる。
つまり、保護装置20の電源プラグ22がコンセント6に差し込まれた場合、2本の第2経路26aのどちらが電力線12の接地線12aに繋がっているかは、ケースバイケースである。しかし、上記接続部29を設けることで、2本の第2経路26bの一方が接地線12aに繋がっている場合には、雷サージは、当該一方の第2経路26bを通って、接地線12aへ流れることができる。また、2本の第2経路26bの他方が接地線12aに繋がっている場合には、雷サージは、当該他方の第2経路26bを通って、接地線12aへ流れることができる。
【0043】
このように、複数の第2経路26bのうち、いずれが接地極となっても、雷サージを接地線へ逃がすことができる。
また、図5のように構成することで、アレスタ27,28の数を少なくすることができる。すなわち、アレスタを第1アレスタ群と第2アレスタ群の2つの群に分けずに、複数の第2経路26bのうちいずれが接地極となっても、雷サージを接地線へ逃がすためには、一方の第2経路26bに接続される第1アレスタ群27と、他方の第2経路26bに接続される第1アレスタ群27とが必要であり、第1経路26aからの分岐数が非常に多くなるとともにアレスタ27の数も多くなる(アレスタの数=第1経路26aの数×第2経路26bの数)。
これに対して、図5のような構成であれば、アレスタの数=第1経路26aの数+第2経路26bの数、でよく、アレスタの数が少なくて済む。
【0044】
前記第2経路26bは、第2アレスタ28よりも電源プラグ22側の位置で分岐して、パワーアウトレット(ACアウトレット)22aへ接続されている。また、前記第2経路26bは、パワーアウトレット(ACアウトレット)22aへの分岐位置よりも電源プラグ22b側の位置にヒューズHを備えている。
パワーアウトレット22aは、屋内ユニット2の電源プラグ5又はその他屋内に設置される機器の電源プラグを接続するためのものである。屋内ユニット2の電源プラグ5をパワーアウトレット22aに接続することで、雷サージ用経路26の長さを確実に短くすることができる。なお、パワーアウトレット22aは、1つでも複数であってもよい。
【0045】
アレスタ27,28が定格範囲内で動作した場合、過電流が通過したか否か不明のため、前記ヒューズHを入れることで、動作確認をすることができる。また、アレスタ27,28がガラス管タイプ等のギャップアレスタの場合には過電流等で故障すると、回路は断状態になるため問題とはならないが、酸化亜鉛等の半導体で作られたアレスタの場合、故障モードによっては常時導通状態となる場合があり、その時、回路を断とするためこのヒューズHを入れるとよい。
【0046】
図6及び図7は、雷サージの流れ方(矢印)を簡単に説明したものであり、図6は保護回路21がない場合を、図7は保護回路21がある場合を示している。図6に示すように保護回路21がなければ、雷サージは屋内ユニット2を流れ、保護回路21がある場合は、雷サージは屋内ユニット2を流れないことがわかる。
【0047】
図8は、図7のシステム構成において、屋内ユニット2に接続された信号線(接続リード線)3b,3c及び/又は屋内ユニットに接続された電源ケーブル5aの途中にコイルCを形成したものである。これらのコイルCは、接続リード線3b,3c又は電源ケーブル5aの中途部をコイル状に巻いたり、フェライトコアなどの磁性材料に接続リード線3b,3c又は電源ケーブル5aの中途部を巻き付けて、雷サージに対するインピーダンスとしたものである。
【0048】
このように、雷サージ電流を通したくない箇所に、サージに対して抵抗として作用する部分(コイルC)をつくることで、雷サージの侵入を効果的に防止でき、本来の信号や電源供給に支障のない形で、機器の保護を安価に図ることができる。また、コイルCを形成することで、雷サージの種電流が通る道筋が特定でき、その道筋を人から遠ざけた位置に設置することが容易となる。
【0049】
図9及び図10は、屋内ユニット2の筐体内に保護回路21を内蔵させた変形例を示している。前述の保護装置20は、雷サージ対策のない機器1,2と組み合わせてしようすることで、既存の機器1,2を改造することなく雷サージ保護機能を実現したものであるのに対し、図9及び図10は、屋内ユニット2と保護回路21とを一体化したものである。
すなわち、屋内ユニット2の筐体内には、保護回路21と、低圧回路部2a及び電源回路部2bを有する本体回路40とが内蔵されており、両回路21,40とが屋内ユニット2の筐体内で接続されている。
なお、図9及び図10に関し、説明を省略した点は、図1〜図8と同様である。
【0050】
図11は、電話器4以外の機器を屋外に設置した変形例を示している。なお、図11に関し、説明を省略した点は、図1〜図10と同様である。
図11では、屋内ユニット(第2装置)2、保護装置20、絶縁トランス7、コンセント6を設置し、使用するために宅内に必要な電話器4だけを宅内に設置している。
また、保護装置20の電源プラグ22が接続されるコンセント6は、受電盤などの電源線引き込み部に近い位置から屋外に引き出して設置されている。
このように構成することで、例えば、電話器4やテレビ受像器のように使用するためには人の近くに存在する必要があるために宅内に設置されるべき端末(図11では、テレビもは保護されていない)だけが宅内に位置するため、想定外の規模の落雷等(含む誘導雷)が発生しても、基本的に人がいる近くに雷電流を引き込まないようにしている。したがって、最悪、屋内ユニット2などの機器自体が壊れても、人体への影響を抑えることができる。
【0051】
また、図11においては図示していないが、電話などの屋内に設置される端末(機器)への電源供給は、前記保護装置20のパワーアウトレット21から行うのが好ましい。宅内で使用される機器が、旧式の電話器で別個の電源を必要としない場合には問題ないが、新型のデジタル方式の電話やTVのように電源を必要とする場合、落雷或いはそれに相当するような誘導雷発生時に、宅内で使用される機器の電源のアース電位と保護装置20のアウトレット21の電位に差が生じると、話中の人に影響する可能性があるため、宅内で使用される機器4の電源取得は、保護装置20のアウトレット21から行うのが好ましい。
【0052】
図12は、図5の保護回路においてコイル25aを省略した変形例を示している。信号用経路25にコイル25aがなくても、雷サージは最短経路を流れようとするため、雷サージをバイパス経路である雷サージ用経路26に逃がすことが可能である。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、屋外高所に設置される第1装置としては、電話用の屋外ユニット1に限られるものではなく、テレビ受信用アンテナであってもよく、この場合、第2装置としては、テレビ受像器となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】子局の機器構成と電源系統を示す概略図である。
【図2】屋内ユニットの電源ユニットに、ノイズ対策用のパスコンを挿入している場合の放電経路を示す図である。
【図3】電源基板に、ノイズ対策用のパスコン使用時の対策として絶縁トランスを挿入している場合の放電経路を示す図である。
【図4】保護装置を外付けした場合の雷サージ保護システムにおける放電経路(接地点に対して最短経路通過)を示す図である。
【図5】保護回路の回路図である。
【図6】保護回路がない場合の放電経路の概略図である。
【図7】保護回路がある場合の放電経路の概略図である。
【図8】図7にコイルCを追加した場合の放電経路の概略図である。
【図9】保護回路を屋内ユニットに内蔵させた場合の雷サージ保護システムを示す図である。
【図10】保護回路を内蔵した屋内ユニットの回路図である。
【図11】電話器4以外の機器を屋外に接地した例を示すシステム構成図である。
【図12】図5の保護回路においてコイルを省略した回路図である。
【符号の説明】
【0055】
1 屋外ユニット(第1装置)
2 屋内ユニット(第2装置)
3a 信号線
3b 信号線
12 電源線
12a 接地線
21 保護回路
26 雷サージ用経路
27 アレスタ
28 アレスタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外高所に設置された第1装置と、
前記第1装置との間で信号の送信又は受信を行う第2装置と、
前記第1装置と前記第2装置とを接続する信号線と、
前記信号線と電源線の接地線とを結ぶ雷サージ用経路を有する保護回路と、
前記保護回路は、前記信号線と前記電源線との間での前記信号の通過を阻止するとともに、前記信号線に進入した雷サージを前記電源線の前記接地線へ逃がすためのアレスタを備え、
前記雷サージ用経路は、前記信号線から前記第2装置を経由して前記電源線の前記接地線へ至る経路よりも短く形成されていることを特徴とする雷サージ保護システム。
【請求項2】
雷サージ用経路は、複数の電源線のそれぞれが、複数の信号線すべてに接続されるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の雷サージ保護システム。
【請求項3】
前記保護回路は、複数の信号線それぞれに接続された複数の前記アレスタからなる第1アレスタ群と、複数の電源線のそれぞれに接続された複数の前記アレスタからなる第2アレスタ群と、を備え、
前記第1アレスタ群と前記第2アレスタ群との中間点が同電位となるように、前記第1アレスタ群を構成する複数の前記アレスタと前記第2アレスタ群を構成する複数の前記アレスタとが接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の雷サージ保護システム。
【請求項4】
前記保護回路には、前記信号線に流れようとする雷サージに対してインピーダンスとなるコイルが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の雷サージ保護システム。
【請求項5】
前記保護回路は、前記第1装置から延びた信号線に接続するための第1信号線接続部と、
電源線に接続するための電源接続部と、
前記第1信号線接続部から前記第2装置側へ至るための信号用経路と、を備え、
前記雷サージ用経路は、前記第1信号接続部又は前記信号用経路から分岐し、前記電源接続部に至るように形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の雷サージ保護システム。
【請求項6】
前記保護回路は、前記信号用経路を、前記第2装置へ延びる信号線に接続するための第2信号線接続部を備えていることを特徴とする請求項5記載の雷サージ保護システム。
【請求項7】
前記第2信号線接続部から前記第2装置へ延びる信号線となる接続リード線の中途部又は前記第2装置の電源リード線の中途部がコイル状に形成され、雷サージに対するインピーダンスとされていることを特徴とする請求項6記載の雷サージ保護システム。
【請求項8】
前記保護回路は、前記第2装置が電源電力を得るためのパワーアウトレット部を備えていることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の雷サージ保護システム。
【請求項9】
前記第2装置に接続される端末装置を更に備え、
前記保護回路及び前記第2装置は屋外に設置され、
前記第2装置に接続される前記端末装置は屋内に設置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の雷サージ保護システム。
【請求項1】
屋外高所に設置された第1装置と、
前記第1装置との間で信号の送信又は受信を行う第2装置と、
前記第1装置と前記第2装置とを接続する信号線と、
前記信号線と電源線の接地線とを結ぶ雷サージ用経路を有する保護回路と、
前記保護回路は、前記信号線と前記電源線との間での前記信号の通過を阻止するとともに、前記信号線に進入した雷サージを前記電源線の前記接地線へ逃がすためのアレスタを備え、
前記雷サージ用経路は、前記信号線から前記第2装置を経由して前記電源線の前記接地線へ至る経路よりも短く形成されていることを特徴とする雷サージ保護システム。
【請求項2】
雷サージ用経路は、複数の電源線のそれぞれが、複数の信号線すべてに接続されるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の雷サージ保護システム。
【請求項3】
前記保護回路は、複数の信号線それぞれに接続された複数の前記アレスタからなる第1アレスタ群と、複数の電源線のそれぞれに接続された複数の前記アレスタからなる第2アレスタ群と、を備え、
前記第1アレスタ群と前記第2アレスタ群との中間点が同電位となるように、前記第1アレスタ群を構成する複数の前記アレスタと前記第2アレスタ群を構成する複数の前記アレスタとが接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の雷サージ保護システム。
【請求項4】
前記保護回路には、前記信号線に流れようとする雷サージに対してインピーダンスとなるコイルが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の雷サージ保護システム。
【請求項5】
前記保護回路は、前記第1装置から延びた信号線に接続するための第1信号線接続部と、
電源線に接続するための電源接続部と、
前記第1信号線接続部から前記第2装置側へ至るための信号用経路と、を備え、
前記雷サージ用経路は、前記第1信号接続部又は前記信号用経路から分岐し、前記電源接続部に至るように形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の雷サージ保護システム。
【請求項6】
前記保護回路は、前記信号用経路を、前記第2装置へ延びる信号線に接続するための第2信号線接続部を備えていることを特徴とする請求項5記載の雷サージ保護システム。
【請求項7】
前記第2信号線接続部から前記第2装置へ延びる信号線となる接続リード線の中途部又は前記第2装置の電源リード線の中途部がコイル状に形成され、雷サージに対するインピーダンスとされていることを特徴とする請求項6記載の雷サージ保護システム。
【請求項8】
前記保護回路は、前記第2装置が電源電力を得るためのパワーアウトレット部を備えていることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の雷サージ保護システム。
【請求項9】
前記第2装置に接続される端末装置を更に備え、
前記保護回路及び前記第2装置は屋外に設置され、
前記第2装置に接続される前記端末装置は屋内に設置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の雷サージ保護システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−79411(P2008−79411A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255011(P2006−255011)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000163394)株式会社コミューチュア (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000163394)株式会社コミューチュア (12)
【Fターム(参考)】
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