電力デバイスおよび酸素生成装置
光電解動力型の電気化学的なガス取り扱いシステムと1種類以上の燃料電池との組合せおよび一体化による、呼吸目的および(特に、燃料電池およびロケットエンジンのための)燃料/エネルギー生成目的の、酸素、水素および炭素の質量の再生ならびに再利用のためのシステム。本発明の好ましい形式では、光分解誘導型電気化学的(PDEC)デバイスにより、二酸化炭素から炭素、および水から水素を固定しながら同時に水からの酸素生成が行なわれて燃料(最も好ましくは、燃料電池またはロケットエンジン用)とし得、そしてカロリー食品として価値のあるものにし得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の権利の陳述)
本発明は、NASA契約番号NNT04AA02Cの下の米国政府の機関との契約の下で、行われた。米国政府は、本発明に権利を有する。
【0002】
(優先権主張)
本出願は、以下の出願に対する優先権を主張し、かつこれらの教示および開示を拡大する:仮特許出願第60/358,448号「Development of Photolytic Pulmonary Gas Exchange」(Bruce Monzykら,2002年2月20日出願);仮特許出願第60/388,977号「Photolytic Artificial Lung」(Bruce Monzykら,2002年6月14日出願);仮特許出願第60/393,049号「Photolytic Oxygenator with Carbon Dioxide Fixation and Separation」(Bruce Monzykら,2002年6月20日出願);およびPCT出願第PCT/US02/24277号「Photolytic Oxygenator with Carbon Dioxide Fixation and Separation」(Bruce Monzykら,2002年8月1日出願);仮特許出願第60/404,978号「Photolytic Oxygenator with Carbon Dioxide and/or Hydrogen Separation and Fixation」(Bruce Monzykら,2002年8月21日出願);PCT出願第PCT/US2003/026012号「Photolytic Oxygenator with Carbon Dioxide and/or Hydrogen Separation and Fixation」(Bruce Monzykら,2003年8月21日出願);および仮特許出願第60/713,079号「Closed Loop Oxygen Generation and Fuel Cell」(Paul E. George IIら,2005年8月31日出願)。
【0003】
上記で参照されたPCT出願(および必要な場合はその対応する米国仮特許出願)の開示および出願番号60/713,079号を有する仮特許出願の開示は、本明細書中で参考として援用される。
【0004】
(発明の分野)
本発明は、典型的にはC、HおよびOの質量(mass)を再利用し、プロセスのためのエネルギーが外部から供給される燃料生成/再生システムと一体型の小型電源システムに関する。本発明の好ましい形式では、光分解誘導型電気化学的(PDEC)デバイスにより、二酸化炭素から炭素、および水から水素を固定しながら同時に水からの酸素生成が行なわれて燃料(最も好ましくは、燃料電池またはロケットエンジン用)とし得、そしてカロリー食品として価値のあるものにし得る。CO2およびH2O供給源は、限られた空間内の呼吸雰囲気および/または燃料電池の排気装置からの分離によって誘導される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の簡単な説明)
該して、PDEC技術では、光分解エネルギーが直接(PVとは異なり)、限られた空間内でCO2が加工処理され、酸素が再生され得る電気化学的反応を誘導するために使用される。典型的な利点としては、量子効率の増大、軽量、小型が挙げられる。月および火星上の資源はひどく限られているが、光子は豊富である。太陽光エネルギーは、28日間の月の日中のうち14日で利用可能であり、月の夜間および火星において電灯を用いて生成され得る。PDECの適用用途としては、宇宙船、月面居住環境モジュールおよび宇宙服に使用され、有意義な利益(例えば、質量の低減、体積の低減、動力の低減など)を有し、より容易に拡大縮小可能なモジュール式空気再生システム、ならびにシステム間で共有され得るモジュール式構成要素が挙げられる。また、該システムにより、月および火星の探査のための「ロジスティックス(logistics)列車(train)」が大きく単純化され得る。
【0006】
一般的に、本発明による実施形態は、CO2、H2Oおよび不純物の除去ならびに酸素の添加による限られた空間内の呼吸空気;水の再利用;C、HおよびOの再利用;燃料電池燃料の再生;一般的な制御装置、センサーなどのための低電力;燃料電池および呼吸空気のための酸素生成を提供する。該システムは、電灯または直接太陽光エネルギーを動力とする小型の、たいていソリッドステート(solid state)である一体型システムであり得る。
【0007】
光分解変換はPDECセル内部で起こり、このとき、典型的には、変換のための動力の大部分は、PDECセルへの光入力により誘導される。
【0008】
本発明の一実施形態は、
A.人間の居住地のための密閉空間を提供すること;
B.CO2および/またはH2O(ここで、該CO2および/またはH2Oは、任意選択で少なくとも一部が該密閉空間内で生成されたものである)を、化学薬品、燃料、食糧、オキシダントの1種類以上および/またはこれらの1種類以上の中間体を含む生成物に光分解により変換し、少なくとも一部を該密閉空間に供給すること;
C.工程Bの生成物の少なくとも1種類からエネルギーを生成させること;ならびに
D.エネルギー生成および/または呼吸で消費された反応体を工程Bに再利用すること
を含む、密閉空間内に人間の居住地を提供するための方法を含む。典型的には、該方法は、少なくとも一部が以下:居住者の呼吸、燃料電池の排気ガスおよび改質装置から放出されるガスの1種類以上に由来するものである工程BのCO2および/またはH2Oを含む。工程Bの生成物としては、以下:酸素含有炭化水素、炭化水素、炭水化物、オリゴマー、ポリマー、水素、酸素、炭素、パラホルムアルデヒド、および化学薬品の中間体;エチレンおよび/またはメタン;ホルムアルデヒド、トリオキサンあるいは糖の1種類以上が挙げられ得る。C5は、C6糖への転化のために供給され得る。11.エネルギーおよび反応体を密閉空間に供給するための方法は、
A.密閉空間を提供すること;
B.CO2および/またはH2O(ここで、該CO2および/またはH2Oは、任意選択で少なくとも一部が該密閉空間内で生成されたものである)を、化学薬品、燃料、食糧、オキシダントの1種類以上および/またはこれらの1種類以上の中間体を含む生成物に光分解により変換し、少なくとも一部を該密閉空間に供給すること;
C.工程Bの生成物の少なくとも1種類からエネルギーを生成させること;ならびに
D.エネルギー生成で消費された反応体を工程Bに再利用すること
を含む。
【0009】
別の実施形態は、
A.人間の居住地のための密閉空間を提供する工程;
B.オキシダント、電子/電流および水素イオンを光分解により供給する工程、
C.これらの電子および水素イオンを、CO2、化学的に酸化された有機もしくは無機化合物および/またはH2O(ここで、該CO2、化学的に酸化された有機および/または無機化合物および/またはH2Oは、任意選択で少なくとも一部が該密閉空間内で生成されたものである)を化学薬品、燃料、食糧、オキシダントの1種類以上、化学的に還元された有機もしくは無機化合物(1種類もしくは複数種)および/またはこれらの1種類以上の中間体を含む生成物に変換するために使用する工程;
D.工程Bおよび/またはCの生成物の1種類以上からエネルギーを生成させる工程;ならびに
E.エネルギー生成および/または人間の呼吸からの排気物質を工程Bに再利用する工程
により、密閉空間内において電源を提供し、人間の呼吸雰囲気を維持するための方法を提供する。典型的には、還元された無機化合物は、
水、
N2、
Fe(II)、Pb(II)、Mn(II)、V(III)、Ce(III)、Cr(III)、Tl(I)、Hg(I)22+、Cu(I)、
V(IV)O2+イオン、V(V)O2+イオンおよび/または他の金属イオン、例えば、オキソ含有イオン、単独、水和(aquated)、キレートまたは錯体の状態のもの、
硫酸イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、亜ジチオン酸イオン、硫化物イオンおよび/またはイオウもしくはS含有過酸化物の他の還元形態
ホウ酸イオン、水素化ホウ素、シアノボロヒドリドおよび/またはホウ素もしくはB含有過酸化物の他の還元形態
銀、ニッケル、銅、金、鉄、カドミウム、鉛、亜鉛、マンガンもしくは他の金属、または金属混合物、
アンモニア、アンモニウムイオン、シアン化水素、ヒドロキシルアミン、
過酸化水素もしくは金属過酸化物、
臭素酸イオン、
MnO2、ZnO、InSnO(ITO)、As2O3、マンガン酸塩、FeO、PbO、SnO、ならびに他のレドックス活性固体金属およびメタロイド酸化物
次亜塩素酸、ヨウ素酸イオン、I2、ヒドラジン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、亜塩素酸、塩素酸イオン、
N2O、N2O4、H2N2O2、亜硝酸、NO、
元素のイオウ(S、S8)、元素のリン(P、P4)、次亜リン酸イオン、ホスホン酸(phosponate)イオン、ホスフィン(PH3)およびホスフィン誘導体、
フェロシアン化物
など、ならびにこれらの物質の混合物
の1種類以上である。
【0010】
21.密閉空間が、宇宙服、宇宙ステーション、月面建造物もしくは生活(living)モジュール、または密閉居留地、火星の建造物もしくは生活モジュール、または密閉居留地、地球周辺もしくは惑星間用宇宙船、月面、火星もしくは惑星ローバー(land rover)、水中、海中ユニット、水中救助ユニット、または地球上でのサバイバルユニットである、請求項12に記載の方法。
【0011】
他の実施形態において、無機化合物は、
過酸化水素、
Fe(II、III、VI)、Pb(IV)、Mn(III、IV、V、VI)、V(IV、V)、Ce(IV)、Cr(VI)、Tl(III)、Hg(II)、Cu(I、II)、Ag(I、II)、Ni(II、III、IV)、Au(I、III)、Cd(II)、Zn(II)、V(IV)O2+イオン、V(V)O2+イオンおよび/または他の金属イオン、例えば、オキソ含有イオン、ハロゲン化物錯体、疑ハロゲン化物錯体、水酸化物錯体、単独、水和、配位子とのキレートまたは錯体の状態のもの、
過硫酸イオンおよび/またはイオウの他の酸化形態もしくはS含有過酸化物
過ホウ酸イオンおよび/またはホウ素の他の酸化形態もしくはB含有過酸化物
ヒドロキシルアミン、亜硝酸イオン、硝酸イオン、シアン、H2N2O2、N2O4、亜硝酸、硝酸、
過酸化水素または金属過酸化物、例えば過酸化バリウムなど、
MnO2、ZnO、InSnO(ITO)、As2O5、過マンガン酸塩(MnO4−)、Fe3O4、
KOH/K2FeO4ブレンド、LiOH/Li2FeO4ブレンド、アルカリおよび/またはアルカリ土類イオンを含む鉄酸塩(VI)の他のブレンド、PbO2、SnO2、ならびに他のレドックス活性固体金属およびメタロイド酸化物
臭素酸イオン、次亜塩素酸、過ヨウ素酸イオン、I2、Br2、亜塩素酸、塩素酸(clorate)イオン、ホスホン酸イオン
N20、N2O4、H2N2O2、亜硝酸、NO、
フェリシアン化物イオン
など、ならびに全体として中性電荷の物質に必要とされる任意の金属イオンまたは水素イオンまたは酸化物/水酸化物イオンとのこれらの物質の混合物
の1種類以上である。
【0012】
別の実施形態は、
A.光を吸収し、酸化を行なう光アノード;およびカソードを備え、任意選択でセパレータまたは膜によって分離され、アノードおよびカソード室が形成されたPDECセル;ならびに
b.その排気装置がPDECセルに連結され、排気水がアノード側に流れ、酸化された燃料または消費された燃料が装置のカソード側に流れる燃料電池
を含む、燃料再生および酸素生成のための装置を提供する。
【0013】
またさらなる実施形態は、
A.流入口および流出口ならびに光アノードおよびカソードを有し、任意選択でセパレータまたは膜によって分離され、アノードおよびカソード室が形成されたPDECセル;ここで、カソードはガスに対して透過性である;ならびに
B.PDECセルに連結された燃料電池、ここで、消費された燃料は再生のためにPDECセルに送られる
を含む燃料再生のための装置を含む。一部のある実施形態において、燃料電池の排気装置とPDECセルの間に酸化された燃料のためのガスセパレータが存在し、ここで、塩基性物質がガス状の消費された燃料と接触される。
【0014】
さらなる実施形態は、光を通す壁を有し、流入口および流出口ならびに該流入口および流出口内にフィルターを有してチャンバを形成するPDECセル;ならびに
B.チャンバ内の光触媒スラリー
を含む、光分解エネルギーを用いた消費された燃料の再生のための装置を含む。該装置は、
C.燃料電池、任意選択でPDECセルと該燃料電池の間にガス燃料排気セパレータを有し、該燃料電池の流出口がPDECセルの流入口に連結されている、
を含むものであり得る。
【0015】
本発明の種々の態様は、
限られた環境内で、エネルギー{光(太陽光、電灯、レーザー)、風、水力発電など}以外の環境とのとの相互作用なしでの少なくともC、HおよびOの質量の保存(「原子収支」)のための一体型システムを含む。本発明の一態様は、限られた環境内で、光エネルギー以外の環境との相互作用なしでのC、HおよびOの質量の保存のための一体型システムであって、保存された物質が再利用されたものであり、食糧または燃料である一体型システムを提供する。
【0016】
限られた環境内で、エネルギー以外の環境との相互作用なしでのC、HおよびOの質量の保存のための一体型システムであって、保存された物質が再利用されたものであり、食糧または燃料であり、生成される燃料に関して柔軟性(flexible)である一体型システム。
【0017】
限られた環境内で、エネルギー以外の環境との相互作用なしでのC、HおよびOの質量の保存のための一体型システムであって、保存された物質が再利用されたものであり、食糧または燃料であり、生成される燃料に関して柔軟性であり、燃料が多数の用途を有する一体型システム。
【0018】
限られた環境内で、エネルギー以外の環境との相互作用なしでのC、HおよびOの質量の保存のための一体型システムであって、保存された物質が再利用されたものであり、食糧または燃料であり、生成される燃料に関して柔軟性であり、燃料が多数の用途、例えば、燃料電池燃料、ロケット燃料および/または食糧としての用途を有する一体型システム。
【0019】
限られた環境内で、エネルギー以外の環境との相互作用なしでのC、HおよびOの質量の保存のための一体型システムであって、保存された物質が再利用されたものであり、食糧または燃料である、および/または生成される燃料に関して柔軟性である、および/または燃料が多数の用途を有する、および/または燃料加工処理が改質装置を含む、一体型システム。
【0020】
限られた環境内で、エネルギー以外の環境との相互作用なしでのC、HおよびOの質量の保存のための一体型システムであって、保存された物質が再利用されたものであり、食糧または燃料である、および/または生成される燃料に関して柔軟性である、および/または燃料が多数の用途を有する、および/または燃料電池が、固体電解質型燃料電池、PEM系H2/酸素燃料電池、一般的な改質装置および/またはMicrotechTM改質装置の1種類以上である一体型システム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(発明および最良の形態の詳細な説明)
本発明は、人間による月および火星の探査、限られたまたは隔離された場所内での工業的作業(例えば、採鉱など)、汚れた空気環境内での公共サービス(例えば、建造物および森林の消火活動など)、ならびに救助における使用のための可能性、および水中活動、例えば、潜水型救助舟艇などにおける使用のための可能性を提供する3つの技術の特異な一体化を提供する。第1の技術である光分解誘導型電気化学的(光分解誘導型Electro−Chemistry)(PDEC)技術は、閉環境内、例えば、限られた作業空間、例えば、宇宙船、月および火星の施設および移動手段、潜水艦、水中救助舟艇ならびに消火活動および救助、採鉱事故のための個人用呼吸デバイス、水中での個人用呼吸デバイス、ロボット型航空機などにおいて、燃料電池、ロケット推進のための酸素(O2)再生、または呼吸雰囲気の維持および二酸化炭素(CO2)の管理を必要とする任意の適用用途に対する有望性を示す。燃料電池技術と組み合わせたPDEC技術は、特に、限られた環境、広範な適用用途、例えば、ロボット型航空機、宇宙服、宇宙船、潜水艦、航空機、採鉱環境、戦場用の車両のための小型エネルギーシステムおよび緊急事態の対応者のための携帯用呼吸システムなどのための次の生命維持システム作製の基盤となり得る。PDECには、燃料槽の少なくとも(a least)一部または大きさおよび燃料補給する必要性を削減するために光分解的動力供給型燃料再生が使用され、それにより、長期間にわたって評価した場合、システム出力密度において相当な増大が達成されるか、または小型もしくは軽量デバイスが得られる。
【0022】
一体型小型電源システムの第2の技術は、燃料電池を伴う。適用可能な燃料電池としては、<300℃で作動させるもの、例えば、Polymer Electrolyte Membranes(PEM)燃料電池を使用するもの、および高温固体電解質型燃料電池(SOFC)などが挙げられる。かかる燃料電池は、両面上が触媒、最も好ましくはPt触媒でコートされたPEM材料からなるものである。固体電解質型燃料電池積層体、膜・電極一体構造(MEA)、セパレータ、触媒およびイオウ制御体(control)が有用である。
【0023】
本発明の第3の主要な構成要素は、1つ以上の改質装置、好ましくは、広範なC/HまたはC/H/O含有燃料を燃料電池用またはロケット燃料に使用される燃料流に加工処理し得る小型のマイクロチャンネル改質装置を含む。
【0024】
一例として、最新式の2.5kWe PEM燃料電池補助電源ユニット(APU)パッケージユニットは、米国陸軍ブラッドリー戦闘車(BFV)のために開発された。BFV APUは、純粋な水素を燃料電池に送るように改質された合成ディーゼルで走行する。この改質装置には、マイクロチャンネル技術が使用され、APUの質量および容積の劇的な低減が達成されている。
【0025】
C、H、Oの再利用、燃料改質装置、および燃料電池の一体型ユニットの稼動は、月または火星の着陸および表面システムハードウエア建造物、において重要な役割を果たし、火星または月面に高価なロケットを用いて地球から宇宙空間内に輸送されなければならない貴重なC、HおよびO資源の効率的な使用を提供し得る。また、適正な一体化により、この技術の組合せによって、電力および生命維持のための相乗的で超効率的な建造物が創出されることが見出され、これは、例えば、月面基地ならびに多くの他の限られたおよび/または遠隔環境に対してロジスティックス的再供給の必要性を大きく低下させる。この適用用途は、かかる建造物の実施形態を示す。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
月面建造物の材料およびエネルギー要件
図1は、月面、火星表面または惑星間宇宙船の居住環境およびこれらまたは他の適用用途、例えば、潜水艦、航空機、地下採鉱などに有用と思われる補給基地の一実施形態の模式図を示す。一例として、月または火星の表面に適用された場合、重要な特徴は、主要居住環境内での生命維持および可動式デバイス(例えば、地球輸送への表面の一部としての軌道に対する表面)の支持である。地球から月面への輸送の中心的な要件は、科学的なサポートシステムに加えて、特別な形態での不可欠なエネルギー(乗組員のための食糧および水、乗組員のための酸素ならびに表面および軌道輸送のための特殊化された燃料)である。エネルギーは、月面上では日光の形態で利用可能である。本明細書に開示したPDEC/燃料電池の実施形態の目的の1つは、輸送された特別な形態のエネルギーを、少なくとも一部、現場エネルギーで置き換えること、および暗期間中での使用のためのエネルギーの効率的な貯蔵を提供することである。後述するように、PDECシステムにより、炭素含有分子をより高エネルギーレベルに効率的に再構成すること;例えば、二酸化炭素を単純な炭化水素、例えば、メタノール、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、エタノールなどに変換することが可能になる(表1)。マイクロ技術化学的加工処理技術の進歩によって可能になったさらなる特殊化された化学合成により、現位置での燃料の加工処理がさらに増強され得る。したがって、PDECシステムは、主要居住環境内の大気清浄化と、特殊化されたエネルギー要件(例えば、燃料電池に動力供給される表面輸送)との間のブリッジとみなされ得る。また、PDECシステムは、主要居住環境に日が当たらない場合、月の日中のその部分の間、燃料電池発電装置における使用のための太陽光エネルギーを保存するための手段をもたらす。PDECシステムはまた、より高いエネルギー密度を有するものであり得るさらなる燃料品質向上(例えば、灯油様燃料に)のための第1段階の投入が行なわれ、それにより、改質装置を備えた燃料電池と組み合わせると、より良好な安全性、より長期のミッション、およびよりコンパクトな貯蔵が提供され得る。
【0027】
図1に示すように、搭載可動式PDECシステムは、燃料電池(直接メタノール燃料電池または改質装置系)からの材料流出液を再捕捉し、これを、さらなる加工処理のために基地居住環境(ここには、主要エネルギー源が存在する)に戻すものであり得る。これによって、燃料電池からの電力(より高エネルギー含量燃料で事前に保存しておいたエネルギー)を用いて機内大気清浄化が提供されることにより、ミッションの長さがさらに増大され得る。軌道ロケットからの材料は失われ、地球から再供給されなければならない。しかしながら、PDECシステムにより、表面に物質を最も特殊化された有用な形態(例えば、食糧)(これは、続いて有用な燃料に再加工処理される)でもたらすことに焦点を当てた再供給が可能になる。
【0028】
PDEC系閉循環型(closed loop)生命維持システムの説明
これまでに開発されたPDEC技術は、宇宙飛行システムに伴う質量、容積および消費電力の設計の制約を満足するものであり得る。
【0029】
典型的なフローセルを図2Aに示す。本発明のPDEC技術は、光エネルギーを用いて酸素と電気エネルギーを同時に生成するとともに、CO2および水を呼吸雰囲気から除去するという、緑色植物内で起こる光合成プロセスを模倣するものである。該システムは、宇宙飛行士による最大の予測CO2生成速度50mg/秒に適応し、呼吸ガス維持サイクルにおける物質収支を潜在的に閉鎖するような大きさであり得る。
【0030】
図2Aは、本発明の光分解セル16の一実施形態のフロースルー型実施形態の一例を示す。フロースルー型セル実施形態では、光分解セル16の以下の主な構成要素、すなわち、真空蒸着Ti金属36の導電性コーティング、接着性TiO2(アナタース型)32のコーティング、任意選択のMnO2微粒子層34が組み立てられたものである。UVレーザー光20は、反応が開始されるように透明なガラスまたは石英基材30上に示した。
【0031】
これに関して、図2Aの光分解セル16は、紫外線レーザー光などの光源20からの光子21の形態の光エネルギーの侵入のための透明な窓30または導波管を含む。ガラススライドの一方の側面は、アノード導体層36、例えば、チタン(Ti)金属膜などである。アノード導体層36には、アナターゼ(TiO2)などの光活性化触媒32の層が接着されている。任意選択の触媒層34(例えば、二酸化マンガンなど)は、光活性化触媒層32に隣接している。光分解セル16は、シリコーンガスケットまたはスペーサー40とアクリル製ハウジング42の1つ以上の層を含む。一対のアノード液44(イン/アウト)が、光活性化触媒層32または任意選択の触媒層34に連結されており、光分解セル16内に延在し、透明な窓30から離れている。光分解セル16は、DuPont製のNAFION(登録商標)膜などのカチオン交換部材46をさらに含む。一対のカソード液48(イン/アウト)は、カチオン交換部材46に連結されており、光分解セル16内に外側に延在し、一般的に透明な窓30から離れている。光分解セル16は、カチオン交換部材46に隣接するカソード層38(例えば、Ptホイルなど)をさらに含む。本発明のこの実施形態の動作および使用を、より詳しく以下に記載する。
【0032】
図2Bは、宇宙服用の閉循環型呼吸システムの実施形態を示す。宇宙服適用用途では、該システムには小型の携帯用レーザー光源が使用され得、これには電力のみが必要とされ得る。したがって、宇宙服システムは、機能するために周囲光を必要としない。しかしながら、宇宙服、宇宙船、ローバー、居住環境モジュールなどは、周囲光をエネルギー源として使用するように構成されることがあり得る。好ましいシステムでは収着キャニスターが使用されないため、CO2は外部環境に排出されず、資源が保存される。該システムは、1)宇宙服、気密ローバーならびに月および火星表面での居住環境モジュール、2)軌道周回および宇宙空間内移動手段、ならびに3)月または火星着陸機に適用可能と考えられる。該システムはまた、乗組員探査用移動手段(Crew Exploration Vehicle)(CEV)のバックアップシステムとしての大きな可能性を有する。
【0033】
閉環境内、例えば、宇宙服、宇宙船、月面ローバーまたは月面居住環境モジュールなどの呼吸雰囲気は、酸素(O2)、水(H2O)、CO2および不活性ガスのブレンドからなるものであり得、その正確な比および厳密な質量は、その閉環境内の大気圧の関数である。閉環境内に放出される呼吸雰囲気は、CO2が多くてO2が少ないが、呼吸雰囲気再生システムに循環されて、CO2および水蒸気が捕捉され、これらがO2および不活性ガス構成要素から分離される。同時に、O2が生成され、呼吸雰囲気内に再導入される。該システムの産出物はリフレッシュされた呼吸雰囲気であり、これは、ガス貯蔵庫に送られ、次いで、必要に応じて放出され得る。
【0034】
充分な規模の呼吸雰囲気再生システムは、CO2の代謝的生成速度に等しいヘルメットからのCO2除去速度(平均25mg/秒、最低8mg/秒および最大50mg/秒である)が達成される大きさであり得る。充分に開発されたシステムは、50ワット未満の電力を消費することを目標とするものであり得、現在宇宙服システムで想定されている8時間の要件を充分超える長期間作動し得るものであり得る。
【0035】
呼吸雰囲気再生の効率的な方法を提供することに加え、該システムにより産出される流出液は、再使用のために捕捉され得る。呼吸雰囲気から分離されたCO2およびH2Oは、酸素およびアルコールに化学的に変換され得、これらは、PEM燃料電池の供給原料として使用され得る。メタノールおよびエタノールは、典型的であり、これらの燃料が月および火星の表面上で燃料電池の供給原料およびロケット用燃料として多数の用途の可能性を有するため、空気再生システムから産出されることが多い。この炭素再使用の特徴により、貴重な資源の真の閉循環型再利用が可能になり、宇宙空間探査に必要なロジスティックスのコストおよび複雑性が大きく低減される。
【0036】
PDEC系システムは、人間の宇宙空間探査をさらに可能にし、任意の既存の技術または現在利用可能なシステムの能力を大きく上回る。該システムは、絶えず再供給する必要性のため、寿命が制限され、主なロジスティックスの問題をもたらすLiOHキャニスターまたは他の吸収体の必要なく、呼吸可能な雰囲気を連続的に再生することが期待される。該システムによってCO2ガスを外部環境に排出する必要性が排除されるため、外部雰囲気の圧力および組成に伴う任意の要件が回避される。
【0037】
燃料電池システムの説明
燃料電池は、燃料の酸化由来の放出されたエネルギーを直流電力に直接変換する本質的に電気化学的な酸化デバイスである。燃料電池の発電システムは、燃料電池積層体を、適正にサポートコントロールおよびハードウエア(例えば、発電管理サブシステム)とともに含む。さまざまな考えられ得るシステムが存在するが、すべて、燃料(これは、実際に燃料電池に至る)は、燃料電池の型に適切でなければならないということが共通する。PEMでは、燃料は、水素高含有ガス(好ましくは純粋な水素)でなければならならず、微量の水分が存在するが、COは燃料電池内のアノード触媒を汚染するため、COは含まれてはならない(該汚染は、一部のある条件下では一部可逆的である)。直接メタノール燃料電池ではクリーンなメタノール/水混合物が典型的に使用される。両者ともに、通常空気または有意な酸素含量を有するなんらかの混合ガス(例えば、月面居住環境内の呼吸可能な雰囲気)である酸化体を必要とする。純粋な酸素燃料電池は可能であるが、PEMおよび直接メタノール燃料電池は、電解質膜の早期分解を回避するため、通常、混合ガスにおいて作動される。
【0038】
PEM燃料電池は、数ワットから数百キロワットまで拡張可能であり、最も一般的な市販のサイズは、通常、一般的な目的および補助電源で3〜15kW範囲、表面移動手段推進で50〜250kW範囲である。市販のPEM燃料電池システムの多くは、ボンベ入り水素または他の貯蔵水素供給源において作動される。PEM燃料電池をより複雑な燃料において作動させるためには、複雑な燃料を水素と穏和な希釈剤に変換する燃料改質装置が必要とされる。直接メタノール燃料電池は、1kW未満、通常200W未満が必要とされる適用用途に使用され、この場合、改質装置およびそのサポートハードウエアの間接費が望ましくない。直接メタノール燃料電池は、典型的には、PEM燃料電池よりも低い出力密度、短い寿命を有するが、キロワット基準でより高価である。それにもかかわらず、これは、個人用の電源および器具類に有用な低電力範囲において魅力的である。
【0039】
月面建造物におけるPDEC系閉循環型生命維持システムとPEM燃料電池システムの一体化
図3は、PDECシステムが、どのようにしてPEMおよび直接メタノール燃料電池システムと組み合わされて、月面居住環境および探査適用用途における生命維持および電力のための超効率的な一体型システムが創製され得るかの概略的な全体の略図である。前述のように、PDECシステムは、単純な炭化水素分子(通常、メタノールまたはホルムアルデヒド)内にエネルギーを保存するための効率的な手段を提供する。このような分子は、液状形態で容易に保存され、必要な場合は、より複雑な燃料にさらに加工処理され得る。
【0040】
図3に示す実施形態では、燃料電池によってもたらされる電力にさまざまな適用用途が存在することが想定される。直接メタノール燃料電池は、典型的には、屋外居住環境での周遊のための個人用の電源ならびに基地居住環境内外での器具類用の低電力を提供する。PEM燃料電池は、典型的には、表面移動手段、高電力器具類、および居住環境内の臨界発電システム。典型的には、居住環境内では、共通の燃料を使用する多数の燃料電池が使用される。安全性および利便性の見地から、共通の燃料は、好ましくは、高い体積および質量エネルギー密度を有し、取扱いが安全なもの(無毒性、不揮発性、低圧力 封入)であり得る。したがって、概略では、ホルムアルデヒド(最も都合のよいPDEC生成物)を、より複雑な燃料、例えば、合成灯油(主に、パラフィン系炭化水素)に変換するための後PDEC加工処理が想定される。エネルギー密度が高い燃料ほど、長期のミッションおよび長い暗期間に好ましい。月の夜間は、ほぼ14日間程度の長さであり、電力の必要性は、日中よりも夜間の方が高いことがあり得るため、相当な量の燃料を、月の日中に保存しなければならない。本発明の種々の態様により、月および特に火星への長期有人ミッション中でのC、HおよびOの再使用;限られた空間のための呼吸空気の再生;酸素供給、CO2除去、RH制御、不純物の制御;水分の回収および精製;燃料電池燃料再生;乗組員あたりの食糧物質の低減;ならびに断続的な操作が行なわれ得、軽量および小型設計であり得る物質再利用システムが提供される。本発明は、これを、光分解誘導型電気化学(PDEC)に基づく再生式生命維持システムによって提供する。PDECシステムにより、消費された呼吸空気、水分および燃料電池燃料からO、HおよびCを再利用するための一体型システムが提供される。燃料の態様に加え、PDECシステムにより、多数の用途、例えば、純粋な酸素として、またはなんらかの不活性ガス(これは、典型的には、燃料電池および/または燃料改質装置システムからの流出液中に見られ得る)での希釈後のいずれかで燃料電池における使用のための酸素が分離される。
【0041】
図3は、燃料(暗に、酸素)が、表面と軌道周回プラットフォーム間の輸送または地球からの再供給船のロケットエンジンにおいて使用され得ることを示す。この状況では、ロケット燃料にメタノールが使用され得るが、燃料を灯油または同様の燃料に品質向上するために充分なエネルギーが日光源から利用可能な場合は、ロケットの性能および運搬能力が向上され得る。
【0042】
次に、図4を参照すると、この図は、典型的なPEM燃料電池の動作を示す。
【0043】
提案される物質およびエネルギー収支の基礎となる化学反応
以下のセクションは、一体型PDEC/燃料電池システムの基礎となる基本的な化学反応の概観を示す。
【0044】
H2Oの捕捉および再利用ならびに酸素の生成を伴うCO2の固定のPDEC系の実施形態:
目的は、吐き出されたCO2およびH2OからOおよびHを捕捉すること、Cに対してOおよびHの損失を最小限に抑えること、または再使用可能な形態のOおよび/またはH含有Cを形成することである。
【0045】
したがって、PDECセルを用いて得られるCO2の4−電子還元一般化(generalized)酸素含有炭化水素生成物、すなわち、
【0046】
【化1】
(式中、hνは光分解エネルギー(光子)を表す)
が提案される。この反応は、
【0047】
【化2】
に単純化され得る。
【0048】
ここで、CO2およびH2Oは燃料燃焼、例えば燃料電池デバイスから、または人間、動物、植物もしくは乗組員によって使用されている限られた空間からの呼吸空気から生じたものである。例えば、かかる雰囲気は、限られたシステム内、例えば、火星着陸機もしくは火星ローバー移動手段内の宇宙飛行士、または鉱山事故の際の炭鉱の閉鎖区画内の鉱山労働者、ユニフォームを着て燃えている建造物内に居る消防士から吐き出されたガス、廃井救助由来のガスなどから利用可能である。
燃料電池のCO2およびH2O生成:
次に、図5を参照すると、この図は、典型的な直接メタノール燃料電池の模式図である。また、CO2およびH2Oガスは、メタノールとO2、または上記のC(H2O)X一般化酸素含有炭化水素燃料とO2を用いて作動される燃料電池の以下のような排気ガスである。
【0049】
メタノール燃料電池から生成:
【0050】
【化3】
本発明の一実施形態のPDECに関する典型的な一般的燃料電池の説明:
【0051】
【化4】
ベンチマーク技術:
呼吸空気維持:
限られた空間内での呼吸ガスからの現行のCO2除去ベースライン技術では、LiOH消耗用収着媒が、以下のようにして利用される:
【0052】
【化5】
したがって、CO2が呼吸ガスと合わされ、酸素および不活性ガス(1種類または複数種)が回収および再利用される場合は、呼吸および燃料電池によって生成されるCO2とほぼ同程度多くの水酸化リチウムが宇宙空間内に運ばれる必要がある。熱焼成では、多くの場合、金属イオンの炭酸塩からCO2が遊離し、再利用のために金属酸化物が再生されるが、炭酸リチウムの場合は、760トールでの焼成温度が約1310℃であり、ほとんどの炉材料にとってひどく高く、地球上であっても操作が困難である。したがって、月および火星ミッションのための限られた空間内の呼吸雰囲気に対して、このような長期間の旅行には、莫大なLiOHキャニスターの供給が必要とされるため、代替的なCO2除去技術に関心が存在する。低い地球軌道に対する$35k/lbで、このコストはひどく高額と思われる。さらに、重大な問題において、LiOH収着技術に関与するC、Oおよび一部のH2Oは、再使用から失われる。
H2/O2燃料電池:
H2/O2燃料電池の化学反応は、例えば、PEM系セルをPt触媒とともに用い、温条件でのこれらのガス組合せを伴い、反応
【0053】
【化6】
に従って水蒸気と電力が放出される。
【0054】
食糧からの呼吸:
ある種の適用用途、例えば、惑星間旅行またはステルス環境における軍事用潜水艦船内などでは、C、HおよびOサイクルに食糧呼吸を含めることも必要である。したがって、乗組員の食糧消費および賞味期限切れにより生じるCO2およびH2Oを考慮することは、これらの主要ガスに関して呼吸雰囲気維持における物質収支を閉鎖するために必要とされる。炭水化物エネルギー食糧を表す一般表示{C(H2O)}Zを用いた食糧呼吸は、
【0055】
【化7】
で示される。
【0056】
NASAミッションから測定される実際の呼吸係数は、約0.87モル生成CO2/モル消費O2、すなわち、z=1.0に対してw=0.87である(代謝的加工処理(生物学的固定)、ならびに液状および固形廃棄物形成(生物学的異化作用的加工処理)による)ことに注意されたい。
【0057】
まとめ
本出願書類は、地球と月間の輸送負荷を低減するためのPDEC光電解システムと燃料電池との組合せを開示する。月環境への流出液を最小限にするという環境上の利益、あるいは呼吸に加えて他の廃棄物流(尿など)を使用してエネルギーを提供すること、および/またはエネルギー貯蔵や輸送のために原子(H、CおよびO)を使用することは議論しない。また、生成される燃料の詳細特性またはかかるアプローチのエネルギー効率における全体調査も、ここでは評価しなかった。月面へのエネルギー輸送のコストが高いため、輸送負荷を低減するために利用可能な現場エネルギー源(太陽光エネルギー)の使用は、特にミッション期間が延長される場合は、明らかに非常に望ましい。クリーンで効率的かつ静穏な燃料電池システムは、電気エネルギー生成に理想的である。
【0058】
PDEC技術は、潜在的に、何が月面上での原子収支と考えられ得るかを可能にするための鍵となる。すなわち、いったん居住環境が最初に供給されたら、必要とされるエネルギーの保存および輸送は、炭素および水素原子に少なくとも一部依存することが可能であり、したがって、再供給の必要性が低減される。もちろん、ロケット推進における物質損失ならびに漏れおよびパージによる不可避的損失がある。可能な程度まで、再供給は、高価値の形状因子(おそらく食糧)で置換原子をもたらすものであるのがよい。
燃料電池燃料再生のためのPDECセル設計の説明(燃料電池燃料再生)
ある種の金属酸化物(MO)は、特定のエネルギー範囲の光子を高いエネルギー励起子に効率的に変換し、MOが半導体となる場合、すなわち、
【0059】
【化8】
(式中、hν=光/光子エネルギー、e−scb=金属酸化物半伝導帯中の電子)
を介して有用な電荷分離をもたらすことが知られている。この電荷分離は、燃料電池燃料再生プロセスを提供するためのエネルギー変換において重要な工程である。半伝導帯は、このような場合、低エネルギーの長期空の分子軌道の組合せに基づく半導体材料の充分確立された電子構造を表す。したがって、基本的な光分解プロセスは、PDEC技術に対して漸進的とみなされる。良好な量子効率および耐久性のため、選択される金属酸化物は、光透明な表面上に構成された導電性表面(e−scbの除去を可能にする)上に堆積されたTiO2(アナタース型)、ZnO、WO3、または他の堅固なセラミック金属酸化物材料のミクロン薄膜であり得る。光学および電子工学の分野で最近開発された(および開発され続けている)量子収率および吸収スペクトルのバンド幅の増大が利用され得る。金属酸化物材料の新規な発展的改質を用いた多くの改良が可能である。微量金属イオンなどのドーパント添加剤を金属酸化物マトリックスに添加することで、エネルギー吸収の波長を広げ(より広範囲にわたってバンドギャップエネルギーを広げ)、太陽発光スペクトルのより完全な使用が可能となり得る、および/または電荷分離{Φ(e−scb)}の量子効率が増大され得る。
【0060】
反応(8)において、記号MO(h+)は、光子吸収時に電子を失い{e−scbが半伝導帯(下記参照)を介して除かれている場合、励起子から形成される}、したがって、電子欠損およびエネルギーのある状態の金属酸化物の配置を表す。この配置は、「ホール」と呼ばれる。この電荷分離は、有用な多様な形態での光分解エネルギーの効率的な捕捉に不可欠であり、以下のようにして起こると考えられる。充分なエネルギーによって光の量子が吸収されると、基底状態の電子が励起された電子状態になる(より正確には、分子の基底状態がエネルギーを吸収し、それにより励起された電子状態となるが、電子の配置を可視化することは、結晶のエネルギー状態よりもずっと容易である)。記載の金属酸化物候補では、この電子は、酸化物イオン上の非結合電子であり、それ以外の場合では、金属イオンに結晶格子の一部として結合されている。ドーパントおよび/または色素増感剤に補助されていない場合は、この電子遷移は、通常、電磁スペクトルのほぼ350〜500nm領域に対応する。半伝導帯に励起されたMO半導体のe−(scb)は、それにより、金属酸化物の結晶格子全体に分布された状態になり、したがって、もはや供給源の酸化物イオンに局在した状態でなくなる。MO(h+)部位から離れる分布によって再結合が抑制される。ドーパントおよび/または色素により。この波長域は約750nmまで広がり、潜在的に7〜10%の量子効率である。
【0061】
MO(h+)によって表されるエネルギーは、この活発に開発されている応用光化学分野の重要な焦点であり、アナタース型TiO2粉末のUV照射による地下水中の環境的汚染物質の酸化的破壊に使用されている。しかしながら、本発明は、有用な生成物の形成を誘導するためにMO(h+)およびe−scbのエネルギーを使用することを含む。小型エネルギーデバイスの目的のため、これらは、後述のアプローチを用いるFRFRおよび圧縮酸素であるのがよい。
【0062】
燃料電池燃料再生の第1工程は、酸素および還元剤の形成である。本発明は、有用な太陽エネルギーを動力とする電気有機化学的還元を提供する。酸化燃料は、有機化合物またはCO2ガスであり得る。以下の反応(1)により、O2生成、CO2捕捉、CO2化学的還元ならびに有機および無機化学的還元が、一般に推測され得る。また、この1つの光触媒型システム(PDEC)から一部電気の発生が考えられる。この概念は、基本的には、上記のUV照射チタニアでの汚染水処理適用用途と反対であるが、予備結果は非常に有望である。
【0063】
反応(9)は、酸素生成反応を示す。
【0064】
【化9】
この反応では、基底状態MOが再形成され、反応(8)による別の光子の吸収の準備ができた状態である。したがって、反応(8)を(9)と組み合わせることにより、金属酸化物は、水からの直接酸素生成の光触媒であることは明白である(反応10)。
【0065】
【化10】
反応(10)により、まず電気を発生させ、次いで、この電気を用いて水を電解処理する必要なく、酸素の形成が達成される。したがって、PDECは、従来型の光電装置(これは、最初に電気を生成させる)とは異なり、高効率で生成点(point−of−generation)化学的分離および加圧により光分解エネルギーを使用するための新たなアプローチを提供する。したがって、PDECは、PS−IIの場合のように、光子吸収時に、有用な生成物が直接形成されるという点で、新規であると思われる。すなわち、酸素、H+イオンおよび電子/電流が直接生成され、太陽光エネルギー利用において、少なくとも1つの工程が省かれる。このアプローチにより、光分解/化学的変換の形態の高収量エネルギー変換に影響する能力が増強され、1つ以上の化学的変換が一度に提供されることによってシステム複雑性が単純化される。
【0066】
この新たな独自の(proprietary)光分解プロセスを、光分解誘導型電気化学(PDEC)と称し、これは、反応(10)によって表される光分解的動力供給型酸化−還元化学反応で示される。光分解性の水の分離とは異なり、酸素を生成させず、H2と混合するので、爆発性の混合物の生成が回避される。
【0067】
光触媒性能の機構および将来的な開発の可能性の説明
上記の触媒のうち、TiO2(アナタース型)触媒膜は、任意選択で、活性酸素不均化ならびにガス気泡の形成および放出を介して高い酸素ガス形成速度を促進するために二酸化マンガンなどの第2の金属触媒でコートされており、1試験(one tested)系であり得、ここでは酸素ガス生成技術アプローチを例示するために使用され得る。
【0068】
TiO2触媒が使用される場合、光子−チタニア相互作用は、最終的な酸素および再生型燃料電池燃料の形成における最初の工程である。表面が水和/ヒドロキシル化された微粒子TiO2(アナタース型)固体(Ti(IV)O2(a)−OH2またはTi(IV)O2(a)−OH)は、波長<390nm(>3.2eV)で効率的なUV光(hν)吸収体であることが知られている。このエネルギーに吸収された光子により、急速に、不可欠な「活性酸素」形成(上記でいうホール、h+)が、収着水およびヒドロキシル基から高収率でもたらされる光子吸収における初期工程は、以下:
【0069】
【化11】
(式中、{Ti(III)−・0−}*は、結晶内の1つの部位で光子が吸収されると即座にもたらされる電子の励起状態を表す)
に示される、対称性を許容する(非常に好都合である)配位子−金属間電荷移動反応(CTM←L)である。触媒膜の厚さは、この様式で約100%の光吸収が充分保証されるように選択される。ほとんどの材料の場合、かかる励起状態により、バイブロニック共役によって即座にそのエネルギーが失われ、それにより、発色団がその基底状態に戻り、周囲がほんのわずかに加温される。しかしながら、かかる配位子→金属遷移が起こる半導体材料では、励起された電子は金属イオン上に局在しない(先に示した反応(11)TiIIIであるが、多くの原子に非局在する分子軌道(伝導帯として知られる、またはより正確には「半伝導帯」すなわちescb−)。このような場合の基底状態および励起状態に対応する分子のエネルギー状態の差は、「バンドギャップ」エネルギーと称される。アナタース型TiO2のバンドギャップエネルギーは3.2eVであり、389nmの光子エネルギーに相当する。より高エネルギーの光子も、少なくとも350〜389nmの明白に平滑な吸収バンドを与えると、多くの振動状態が関与する主要な電子状態に重なるため、やはり容易に吸収される。この吸収バンドを拡張し、地球の雰囲気から伝達される<750nmの波長を有する本質的にすべての太陽光スペクトルを含めるために、色素増感剤およびドーパントが添加され得る。
【0070】
重要なことは、まさに上記のようにして光子が吸収されると、電子をTiO2の半伝導帯に励起する正味の効果は、光分解により引き起こされる電荷分離、すなわち、直接的化学的電荷またはエネルギー変換と等価である。電荷分離は、有用な仕事がなされ得る物質の高エネルギー状態を表す。提案した研究において、本発明者らは、この電荷分離を用いて有用な化学変化、すなわち、太陽光エネルギーを用いて燃料の再生およびO2オキシダントの生成を同時に行なうことを計画する。これにより、ロボット型ユニットが非常に長期間のミッション(数年)を行なうのを可能にする小型の長寿命発電システムが提供され得、特定の電力増強により(また、小型燃料槽のみに対する要件により)、必要とされる非常に高い年率出力密度が達成され得る。これがどのようにして提供されるかの基本的な科学技術を次に記載する。まず、オキシダント(O2)生成アプローチについて、次いで燃料再生について記載する。PDEC技術により、光分解により電圧印加される加工処理を用いて、酸素と燃料電池燃料再生が同時に提供され得ることを念頭においておくことが重要である。酸素生成操作中に水から放出される電子および水素イオンは、電気化学反応によってカソードで酸化された有機化合物(燃料電池燃料)の酸化状態を還元するために使用され得る。漸進的技術アプローチを用いて長寿命の燃料電池燃料再生能力が得られ得、したがって、最終目的の発電システムを得るリスクが相当低減されるとともに、相当な設計の柔軟性が付加される。PDEC燃料電池燃料再生プロセスのこれらおよび他の特徴は、本記載からあきらかとなろう。
【0071】
純粋な加圧酸素(ガス)の光分解的生成の基礎となる化学反応
以下の式は、基礎となる化学的反応を要約するものであり、相対的に解釈すると、光分解エネルギー変換を表す。このプロセスにより、酸素、O2、H+イオンおよび電力/電子への水の変換がもたらされる。
【0072】
電荷分離および活性酸素の形成をもたらす光分解
【0073】
【化12】
ここで、AOは、固相の活性形態の酸素、例えば、ペルオキソ種「{TiO2(O2 =)2+}(バルク)」を表し、「バルク」は、光触媒膜のバルク固相を表す。この引用は、光子が吸収された(すなわち、「ホール」もしくはh+)TiO2膜内の一過的な光活性化触媒部位、または「ホール」が表面以外で電子交換を介して移動(すなわち、励起子移動)した固体内の任意の配置の代用式を示す。「scb」は、光子吸収時に生成した電子が、チタニア結晶(または試験した他の金属酸化物、例えば、亜鉛酸塩もしくはタングステン酸塩など(ドーパントおよび/または色素増感剤を含むもの、および含まないもの))の半伝導帯内にエネルギー移動されることを示す。このプロセスの量子収率はe−(scb)の離脱に強く依存し、そのため、AO(または励起子)は元の単純な酸化物イオンには再変換され得ず、正味の(net)反応はもたらされない。以下に示すように、AO/励起子は、従来の励起子の部位間交換によって、チタニアが燃料電池または流動している燃料電池電解質由来の湿分飽和ガスと接触している光触媒表面(すなわち、{TiO2−OH2}(surf)などの種が存在する)にいったん移動すると、寿命が非常に短い。また、この移動工程は、光子吸収バルクチタニア膜部位({TiO2}(バルク))を自然に改質し、以下のように、別の光子の吸収の準備がなされる。
【0074】
膜表面への活性酸素の移動および吸着されたペルオキシ種の水和
【0075】
【化13】
酸素生成表面上に存在する水は、燃料電池電解質のバルク水相から供給され、通常、約55モルである。したがって、水の利用可能性が、非常に高い明快な(illuminating)流束(flux)値まで、有意な拡散境界層を表すとは期待されない。かかる限界値は、PDECモジュールの比出力密度能力と組み合わせて測定され得る。理論的には、非常に高い電灯強度および最大酸素流束値でのみ、水拡散速度の制約が予測され得、提案する技術では、制限は予測され得ない。表面で、いったん生成された、酸素はペルオキソ不均化によって自発的に、以下のとおりに生成され得る。
【0076】
不均化(disproprtionation)
【0077】
【化14】
水和された表面チタニア種が再生されると同時に、水が容易に利用可能なことから、酸素が形成され、これは、この時点で、容易に次のO2生成サイクルを受ける。次の工程は、任意選択であり、ガスとしての酸素の放出または酸素形態での脱離(酸化された燃料電池電解質)を伴う。O2の直接形成のこの能力は、低速ガス→ 酸素溶液物質輸送工程が、燃料電池ユニットに供される水性電解質に酸素添加するためにPDECを用いることによって回避され得るため、セルのプロセス(WBS 3.4)に相当価値があると思われることに注意されたい。この強化は、燃料電池によって利用される電解質内に酸素担体を含めることにより、さらに拡大され得る。全血液は、血液のヘモグロビンが水性電解質(この例では、血液)の酸素運搬能力(濃度)を水よりも30倍増大させる例えである。あるいはまた、生成される酸素は、後述のように、搭載貯蔵槽内に圧縮酸素ガスとして回収され得る。
【0078】
加圧酸素は、酸素濃度を、PDECセルの光アノード側のバルク電解質または水性酸素薄膜における酸素溶解度を超えて上昇させることにより得られ、該セルには酸素が、搭載燃料電池および/または他の推進システムによるシステム要件に適合するように事前に選択した排出口圧力解放弁によって調節される圧力まで蓄積される。したがって、酸素生成速度は、照度およびハードウエア設計容量、量子収率および全体的な反応工程速度(反応12、13、14)によって調節される。プロセスの最適化は望ましい。次いで、電解質における酸素溶解度よりも高い割合で酸素を生成させることにより形成される加圧酸素は、PDECセルへの水の流速を該セルの酸素生成速度と比べて遅くすることによって得られる。
【0079】
次いで、この酸素は、燃料電池のカソード側のオキシダントとして利用可能である。酸素ガスには、凝縮物および生成ガスの相対湿度割合(%RH)の両方としての湿分含有の問題が生じ得ることに注意されたい。いくらかの湿分(湿度)含有は燃料電池に必要であることが予測される。しかしながら、酸素が従来の物理的/化学的(PC)バックアップ燃料電池(PCFC、例えば、H2/O2または他の燃料電池)に使用される場合、一部/完全な脱湿が提供され得る。本発明者らはまた、湿度制御および凝縮物の取り扱いが、既に充分確立された技術であることに注目し、したがって、本発明者らは、燃料電池燃料再生回路における水収支の取り扱いのために現行の技術が取り入れられることを期待する。
【0080】
他方で、酸素が加圧された形態で直接溶存酸素から生成されることは、さらなる改善である。この想定されるプロセスでは、酸素の加圧の程度「非凝縮可能ガス」は、1)PDECデバイスの外部ケーシングの設計強度、および2)反応10の逆反応、すなわち反応15の抑制に依存する。
【0081】
光触媒設計によって抑制される再結合反応
【0082】
【化15】
最初の状態では従来型の圧力槽の設計が必要とされ、該プログラムに問題が生じることは予測されない。しかしながら、第2の要件は、光触媒の設計に基本的なことであり、以下に示すように、量子収率の増大の進展の一部としてのプログラムを通してなされる光触媒製作技術の漸進的改善、酸素および燃料電池燃料再生の全体的な生産能力の漸進的改善、ならびにより広範な太陽光スペクトルの使用の達成の漸進的改善により対処され得る。
H+ イオン、電子の光分解的生成の基礎となる化学反応、および燃料電池燃料再生に適した電気化学的還元
このセクションでは、燃料電池燃料再生およびアノード液室と光カソード液室を隔てるための任意選択の膜に使用される水素イオンおよび電子の生成に関する他の関連情報を提供する。
【0083】
反応13からの水素イオンは、貴重であり、燃料電池燃料再生技術に対していくつかの選択肢を提供する。PDEC技術では、これらのイオンは、よく知られた「ホッピング」機構(プロトンが水分子から水分子に移動するのであって、個々のH+イオンがその距離を移動しなければならないのではない)によって、非常に急速に、拡散よりもずっと速く水相中に移動する。このようなH+イオンは、プロトン交換膜(PEM)、好ましくはNafion(登録商標)(技術は既に充分証明され、最適化されたもの)を通りぬけ、次いで、直接または間接的にカソード反応に関与し、燃料電池燃料が再生されるとともに、反応12で生成した電子はカソードに伝導される。副反応を最小限に抑えるため、照明は連続的ではなくパルス化され得る。照明のパルス化によってもたらされる遅延により、e−scbが一方向に離れて伝導され、溶存酸素が別の方向に離れて拡散されることが可能になる。また、照明のパルス化により、酸素(aq)およびe−scbの局所集団が非常に高くなり、その結果、両者間の反応が高速になることが抑制される。関与するパルス速度は極めて小さい(例えば、μ秒〜ミリ秒範囲)であり、そのため、酸素(aq)生成速度に対する影響はほとんどない(最小限の副反応15によってもたらされる増大のため。また、バイアス電圧がコーティング全体に存在し、幾何学的構成を考慮した場合、光分解により確立される電荷分離の収率の向上も可能である。また、酸素生成表面に存在するe−scbの量をさらに低減するために、小さなバイアス電圧が使用され得、それにより、副反応15が回避されることによって、より多くの溶存酸素が生成される。
【0084】
重要なことは、酸素生成のための化学的基材には、燃料電池電解質に由来する水が少量しか必要とされないこと、および/または凝縮物は、酸素需要の必要とされる物質流によって設定されることである。TiO2セラミックナノ微細孔内での酸素の形成により、燃料電池電解質生体材料の直接接触が妨げられ、それにより、酸素形成領域内の電解質のタンパク質含有および/または微生物含有が可能になる。また、おそらく、該設計により、かかる生体材料が、これまでの既存の燃料電池モジュールの首位に存在することが阻止され得る。照明領域は、ソリッドステートのみであり、水相と接触しないことに注意されたい。酸素生成表面上への汚染性の固体膜堆積を抑制するため、酸素生成表面の高い光沢表面平滑性を選択した。
【0085】
二酸化チタン薄膜の製作:
光活性構築物は、透明なガラスまたは石英基材から始まり、その上面に導電性膜、次いで、光触媒膜が堆積されたソリッドステート層状構造からなる。バッチおよびフロースルー型電気化学的セル構成要素およびデバイスの同様の構成を用いた。薄膜光触媒の製作方法論は、世代ごとに着実に改善されており、主として電子/ホール再結合を妨げることにより、量子効率を測定するための重要なパラメータと認識されている(図6A対6B)。
【0086】
次に、図6Aおよび6Bを参照する。この図は、Hasenbach Photosynthesis Laboratory Test CellsにおけるPDEC光触媒性能の説明図である。触媒製作技術の効果は、電子/酸素再結合がTiO2充填ゾル−ゲルに関する試験の暗サイクル中に観察される(図A)が、真空蒸着TiO2では微々たる量である(図B)場合に示される。したがって、エネルギー変換効率は、非常に均一な半導体膜を用いてPDEC光触媒が作製される場合、はるかに大きくなる。
【0087】
両方の膜の作製試験およびこれまで試験されたすべての場合で、暗参照試験またはバイアス電圧を負荷し、触媒には照明しなかった場合では、酸素生成および電流は観察されなかったことに注意されたい。1ボルトのバイアスを負荷してTiO2膜を分極させ、
集電板への電子移動を誘導した。かかる外部から負荷されるバイアスは、P/N接合による内部負荷バイアスおよび/または容易な反応性(熱力学的化学反応と反応速度論の観点による)の組合せのため、典型的には、充分技術設計された光触媒膜では使用されない。照明した場合、約1cm3の面積の触媒膜で数百マイクロアンペアの電流が観察されることに注意されたい。また、全電流フローは、もたらされるカソード反応の容易性に依存する。
【0088】
多くの光触媒膜は、ゾル−ゲルおよび真空アプローチの両方を用い、バッチおよびフローセルの両方で作製した。例えば、ガラス基材は、所望の波長で98%透過性を有する25mm×9mmプレートとした。薄い(<100nm)金属性(Ti)もしくは半導体(酸化インジウムスズ、ITO)導電性膜(1つもしくは複数)またはグリッドを、ガラス表面上に、従来型の真空スパッターコーティング手順を用いて配置した。光活性層は、スパッターコーティングによって堆積、または導電性膜の上面にゾル−ゲル加工処理によって形成のいずれかによる二酸化チタン(TiO2)の膜からなるものとした。
【0089】
光触媒を作製するためのゾル−ゲル法は、以下の手順からなるものとした。アナタース型TiO2粉末は、1gのアナタース型TiO2を80mLの1N HClおよび0.1%HF溶液中に1分間混合することにより、堆積前にHF酸処理して接着性を増強させた。得られたスラリーを2本の遠心管内に等しく分け、沈殿が得られるまで遠心分離した。酸をデカンテーションし、水と交換して粒子を再懸濁させた。試料を遠心分離し、液体をデカンテーションした。次いで、この水リンス処理を反復した。2回目の水リンス処理およびデカンテーション後、40mLのイソプロパノール(iPrOH)を添加し、粒子を再度、再懸濁した。酸化マンガン(IV)、MnO2 (粒径<5um、Aldrich Chemical Co、Milwaukee、WI)をアナターゼゾル−ゲル形成における任意選択の表面構成要素として使用してさらなる膜コーティングを行ない、過酸化物不均化速度を向上させた。
【0090】
ゾル−ゲル酸化物膜は、スピンコーティング技術を用いて作製した。この手順では、導電性層を含むガラススライドを真空チャック上に配置し、1000rpmで回転させた。TiO2コーティングでは、0.5gの酸処理材料を40mLのiPrOHに添加し、30分間混合した。次いで、0.050mLのH2Oおよび0.100mLの4価チタン(IV)(イソプロポキシド)(TTIP)、ゾル−ゲル粒子架橋試薬をこの溶液に添加した。30分間混合した後、溶液を回転している基材に総容量約12mLで滴下した。MnO2を含む構築物の場合は、9mLのTiO2スラリーの添加後、0.20gのMnO2を残りのスラリーに添加した。次いで、得られた溶液の正確に4mLを基材に、スピンコーティング条件で滴下した。この技術の特定の酸化増強変形例もまた調べ、その場合は、RuO2/PtドープTiO2(0.125g)を10mLのiPrOHに添加し、TiO2スラリーの代わりに添加した。アナターゼ粒子のゾルゲル結合剤として、上記のアナターゼスラリーを15分間混合した後、50uLの水および25uLのTTIPを添加し、さらに15分間混合すると、その間、ゾル−ゲル反応が起こった。
【0091】
次いで、この溶液を、スピニングコーティングにより総容量9mLで基材に滴下した。ゾル−ゲルコート試料はすべて、室温で一晩風乾し、次いで、予熱環状炉内に配置し、試験温度で45分間、1L/分の窒素気流下で加熱した。
【0092】
電灯光源
EFOS LiteユニットからのUVA光を、フィルターに通して365nmの光にした後、液体光導体を介して反応チャンバに指向させた。この波長の光出力は、光導体の出口点でTamarack Model 157TM手持ち型追跡可能較正光度計で測定すると、88.1mW/cm2であった。照明中の光触媒の加熱は、TiO2膜が効率的に365nmの光を吸収し、光の浪費をほとんどもたらさなかったため、最小限であった。
【0093】
高い電流密度の同時生成による酸素のバッチ式生成:
光触媒膜は、予備スクリーニングバッチ試験装置において作製および評価した。水からの酸素の光分解生成と関連するパラメータの試験は、液相セル内で、電子吸収体としてのpH1.9の第二鉄イオンの溶液中に浸漬した試験対象のTiO2材料のスラリーまたは堆積膜を用いて行なった。第二鉄イオンの使用により、試験を、電気的に隔離されたセルの設定環境内で行なうことが可能になり、このとき、第二鉄イオンは溶液中に低phで維持されている。第二鉄イオン(Fe3+aq)は、TiO2光触媒反応(反応15)で光分解により移動された電子(escb−)による化学的還元による光分解中、第一鉄イオン(Fe2+aq)に変換された後、Fe3+aq + escb− → Fe2+ aq)となる。Fe2+aqイオンは、酸性媒体中ではゆっくりと酸化するため、同時に生成される酸素の生成速度は、Clark Cellによって直接、形成される第一鉄イオンの速度として測定され得る。O2は、先に示した化学的反応によって生成される。この第二鉄/第一鉄変換反応は、再結合副反応に妨害されることなく、O2生成の量子収率を評価するのに有用である。次いで、これはまた、副反応を抑制することが意図された光触媒設計を評価するためのこの副反応の程度の目安となる。
【0094】
escb−は、第一鉄イオン形成により消費されるが、光触媒表面近傍では水濃度が非常に高い(55M)ため、TiO2内で、隣接する水分子と最小限の拡散制約で交換される。このO2への酸化は、液体の水の高い熱力学的安定性にもかかわらず、UV/VIS光子(これまでの試験のほとんどでは365nmの光子)のエネルギーレベルが高いために起こる。第二鉄イオンの非存在下では、光により生成する電子は、利用可能なままであり、酸素を、その形成よりも少しだけ低い速度で元の水に還元するため、正味の酸素生成はない。したがって、フローセルのための光触媒の作製では、均一な膜の作製が重要であった。容易なカソード反応が供給されなかった試験では(例えば、上記で用いたFe(III/II)還元、バイアス電圧(小電流電圧)を、光によって生成された電子に直接負荷し、集電板膜およびカソードに関して水性界面から離れるように指向した。試験は、O2生成がバイアス電圧負荷では起こらないことを保証するため、バイアスおよび照明ありまたはなしで行なった。
【0095】
光分解誘導型O2生成を評価するためのフロースルー型試験セル
いくつかのフロースルー型セルを基本とする装置を準備した。図2Aは、このようなセルの主な構成要素の一例を示す。試験目的のためには、全血は、生成されたO2が均質な溶液中に残存し、測定のための解析技術は充分精密化され、迅速なため、O2生成を良好な精度でモニターするために使用される優れた電解質である。分割された光分解誘導型電気化学的(PDEC)フロースルー型試験セルを、流動している血液が光分解により生成された酸素と接触するように構築した。このセルは、分割セル様式で作動され、Nafion(登録商標)カチオン交換膜を有するFM0l−LC Electrolyser and ElectroCellsの改良型であった。アノードは光学的に透明であり、光子は、フィルターに通して365nmにした(上記参照)EFOS Lite(登録商標)UVA光源を用いて側面(side−on)照明によって供給した。プレートの非コートガラスまたは石英側を、フィルターに通したUVA光側面照明した。カソード液はLocke’s−Ringer溶液とし、アノード液は、抗凝固剤硫酸ヘパリンを含有する新鮮ウシ全血とした。血液は、地方食肉処理場で使用のために実験日に採取し、したがって、長期保存の必要性が排除された。血液は、ガラスインライン熱交換ジャケットを用いて37℃に維持し、フローは、Harvard蠕動ポンプによって80mL/分とした。収集したデータは、pH(カロメル参照を有するガラス電極)、電流(Fluka 87電圧抵抗計を用いて測定、VOM(使用された電解質および使用されたセルに基づいて必要に応じてμAまたはmAモードで))、温度、溶存酸素(O2、図6Aおよび6B)ならびにオキシヘモグロビン(O2Hb)であった。電灯強度は、バイアス電圧ありまたはなしで(上記参照)、種々に変更した。各実施中に行なった対照試験により、有意な酸素形成速度または電流フローが起こるためには、バイアス電圧およびUVA照明の両方が必要であることが示された。
【0096】
TiO2(a)システムにおいて溶存酸素生成の量を増加させる別の方法は、活性酸素に関して過酸化水素として捕捉されたμ−過酸化物の放出速度を加速する手段を提供することである。
【0097】
H2O2を用いた中間体活性酸素形成の例
【0098】
【化16】
過酸化水素は、容易に移動し、容易に触媒されて溶存酸素と水に不均化されるため、活性酸素種の優れた候補形態である。
【0099】
触媒系を用いた活性酸素からの自発的な酸素形成の例
触媒
膜
【0100】
【化17】
TiO2光触媒膜の向上により、μ−過酸化物を可溶性過酸化水素として急速に放出させるための手段が提供された。これは、過酸化水素がMnO2隣接膜に拡散して溶存酸素を生成させ得るため、またはTi(IV)−O−O−Ti(IV)によって、担体に指向されることによりMnO2クラスター/粒子から電子が電子的に除去される(可逆的なキノン/ヒドロキノン反応によって、緑色植物の光合成で行なわれているものなど)ためである。無機システム、例えば、フェリ/フェロシアン化物、または三ヨウ化物/ヨウ化物イオン、セリウム(III/IV)、レドックスの組などもまた、候補であり、長寿命小型発電システムの目的に必要とされる充分証明された極めて安定なレドックスシステムである。この場合、電子のみが水からMnO2を介して、ソリッドステート非局在結合配置によりμ−ペルオキソ結合に流動する。この電子は、TiO2(a)−OHシステムのe−lostをe−scbに置き換える。
【0101】
活性酸素としての過酸化水素の形成は、過酸化水素が、多くの異なる方法:熱的;金属イオン触媒作用;微粒子/表面触媒作用;塩基触媒作用;およびフリーラジカル反応(還元性の開始を伴う)を用いて、100%の収率で速やかに溶存酸素に変換され得るため、貴重である。好ましくは、MnO2(s)などの金属イオン触媒作用により、薄膜基材構築物上での水と酸素への過酸化水素不均化のための効率的な触媒が提供される。
【0102】
酸化亜鉛ZnOなどの光触媒系は過酸化物を活性酸素として、TiO2よりも容易に放出する。ルイス酸/塩基理論定義の下で、高度にアルカリ性の過酸化物イオンを水プロトン化よりも充分に安定化させ得る酸性金属イオンは少ない(pKa1の過酸化水素は11.38(25℃)であり、固相内で形成され、そのため過酸化水素、過酸化水素はZnOから容易に形成される:
【0103】
【化18】
ZnO膜および粒子は、いくつかの様式で、種々であるが制御された組成、形態構造および多孔度を用いて作製され得る。例えば、亜鉛の鏡、ドープ亜鉛および亜鉛合金が、光学的に透明な支持体にスパッタリングされ、その後、O2(g)で酸化され得る。この処理により、金属/金属酸化物(Zn/ZnO)膜がもたらされる。半導電性ZnO系膜に対する別の高度に有効なアプローチは、光学的ガラスコーティングプロセスを利用することである。光学的ガラスコーティング技術は、硝酸亜鉛/グリシン水溶液をディッピングまたは噴霧として適用した後、乾燥し(110℃で15分間)、次いで、加熱して(450〜500℃で3分間)、自己酸化反応を開始させ、この間、炭素および窒素がガスとして排出され、接着性だが多孔性の膜が下層表面(例えば、ガラス)に結合されて残ることを基本とし、グリシン硝酸塩プロセスと呼ばれる。ZnO膜は、通常、水性配合物状態の硝酸アルミニウムを初期浸漬液に含めることによりアルミナをドープして作製される。多くの他の金属イオンブレンドもまた、この技術で可能である。
【0104】
タングステン酸塩WO3は、評価対象の別の光触媒である。タングステン酸塩は、溶存酸素の生成に可視光のみを必要とし、溶存酸素を形成するための第2の触媒を必要とすることなく、直接溶存酸素を生成させる。WO3の光子エネルギー要件が低いことは、バンドギャップが、TiO2(a)では少なくとも3eVに比べて2.5eVと小さいことによる。TiO2アナターゼ系と同様、WO3触媒でも、e−scbが除去された場合は高収率が可能である。酸素の生成は、RuO2(酸化ルテニウム)をWO3の表面上に配置した場合、非常に有意に増大する。これは、RuO2が酸素生成のための既知の良好な触媒であり、そのため、他のアプローチを改善経路の一例を表すという事実と整合する。
【0105】
酸素生成触媒膜が充填プラスチックであり得る場合は、利点が存在し得る。かかる材料は、多くの場合、廉価、破断に対して抵抗性、および製造が容易である。かかる材料の構築を容易にするため、プラスチックへの組込みのため、プラスチックを導電性にするための既製品状態で供給されるプラスチックのための半導電性で低光吸収性の無機充填剤の市販の供給元が存在する。例えば、E.I.DuPont Nemours、Inc.では、かかる目的のための導電性粉末(EPC)が商標名ZELEC(登録商標)ECPで販売されている。ZELEC(登録商標)ECPにおける導電性物質は、アンチモンドープされ酸化スズ(SnO2:Sb)である。バルク状のこれらの物質は、その上面に導体がコートされており、よく知られた無機物質、例えば、雲母片、TiO2および中空シリカ殻、またはそれぞれECP−M、ECP−TおよびECP−Sなどである。純粋なSnO2:Sb系材料は、ECP−XCと命名されており、その他の材料よりもずっと小さい粒子である。ECP製品の約25〜45重量%が使用されており、そのため、該粒子は互いに充分に近縁であり、他の場合では非導電性であるプラスチック全体に内部電気接続を提供する。ECP−SおよびECP−Mは、通常、低濃度で最良の性能を示す。ECP−XCの薄膜は、非常に微細な粒子状であり、光吸収性が強いため、魅力的なコーティングを提供し得る。
【0106】
TiO2層は、さまざまな様式で形成され得る。TiO2層は、ゾルゲル、乾燥およびベーキングによって形成され得る。商標LIQUICOAT(登録商標)(Merck & Co.、Inc.製)の製品は、Ti(OR)4型材料を水中で加水分解してTiO2を形成させるものであり、ゾルゲル/乾燥/ベーキングプロセス下でTiO2層を形成するために4ROHが使用され得る。TiO2はまた、乾燥粉末からアナターゼ懸濁液を調製し、次いで、懸濁液をディッピング、乾燥およびベーキングしてTiO2層を形成することで形成され得る。TiO2層が形成され得る別の方法は、チタンの電子ビーム蒸着、続いて、蒸着チャンバ内での酸素への該チタンの曝露によるものである。TiO2層はまた、チタン塩を水に添加し、pHを約2〜7に調整して懸濁液を形成し、次いで該懸濁液をディッピングし、該懸濁液を乾燥させることにより形成され得る。
【0107】
活性酸素を溶存酸素に変換するために使用される触媒としては、レドックスサイクルを行ない得る金属イオン、例えば、Fe(II/III)、Cu(I/II)、Co(II/III)、Mn(II/III/(IV))、Ag(I/II)などが挙げられ、膜および粒子として金属酸化物形態で物理的作製され得るものである。特に良好なシステムは、PS−II(上記参照)で使用されているのと同じもの、MnO2である。本発明の反応により、酸素が直接、水から生成される。MnO2触媒は、溶存酸素を効率的、選択的かつ速やかに形成し、PS−IIが酸化状態を数回容易に相互変換し得る場合のように、MnO2クラスターとしての酸素の活性酸素形態に高度に依存性でないため、最も好ましい。疑いなく、これは、生理学的条件下での利用可能性および不溶性ならびに高速な配位子交換速度とともに、Mnイオン水和物をPS−II触媒に理想的に適したものにする特性である(it)。
【0108】
酸素への活性酸素の変換を助長する別の方法は、TiO2アナターゼの表面にマンガン(Mn)をドープすることによるものである。MnによるTiO2表面ドープは、高度に生産性の活性酸素から酸素への変換触媒を提供する。活性酸素不均化は、Mnドープアナターゼ表面に曝露されると、自発的で高速になる。あるいはまた、活性酸素は、MnO2を導電性形態のアナターゼの表面上に配置することによっても酸素に変換され得る。この形態では、電子は、水からアナターゼの活性酸素領域に触媒的に通過する。かかる構成は、光合成酸素生成をより厳密に模倣している。
【0109】
光分解セル内で活性酸素を酸素に変換するための別の方法は、8面体型MnO2分子ふるい(MOMS)材料を溶存酸素触媒として使用することによるものである。MOMS材料は、開放型ゲル様構造を有し、構造がゼオライトに密接に関連している。MOMS材料は、マンガン塩から沈殿および乾燥を介して容易に形成される。
【0110】
また、活性酸素は酸素に、光分解セル内で、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)触媒によって変換され得る。SOD触媒は、充分特性評価された効率的な酵素であり、必要とされる活性酸素の変換を提供し得る。
【0111】
カチオン交換膜
カチオン交換膜は、光分解セル内でのカチオンの拡散を可能にする。特に、カチオン交換膜は、そのカチオンアノード液由来のナトリウムイオン(Na+)または水素イオン(H+)が、膜全体に拡散し、カソード液内に侵入してそこでのカソード反応に関与することを可能にする。カチオン交換膜は、商標NAFION(登録商標)で市販されており、E.I.DuPont Nemours Inc.から入手可能である。NAFION(登録商標)カチオン交換膜は、酸性形態のパーフルオロスルホン酸/PTFEコポリマーである。NAFION(登録商標)カチオン交換膜は、現在のところ、好ましい膜であるが。
【0112】
カソード液配合物の選択
PDECセルに供給されるカソード液組成物は、小型で長寿命の燃料電池に重要である。PDECカソード液組成物は広範であり得るため、充分な高度に選択的な化学的変換がなされ得るのであれば、カソード液組成物は、PDECの観点から制限されないと考えられる。水溶液、例えば、酸、塩基、塩溶液、合成血液の血清、さらには全血は、機能性であることがわかっている。この適応性は、腐蝕および熱に安定なPEM(Nafionは、30%NaOHおよび塩素を電気分解的に製造するために使用されている)の使用により可能であり、カソード材料およびセルハウジングは、広範な耐食性材料(典型的には、チタン、ステンレス鋼、ポリマー、セラミック、ガラス、サーメットならびに他の複合材料および/またはプラスチック)であり得る。
【0113】
カソード液は、燃料電池から、およびおそらく場合によってはまた、バックアップ余剰燃料電池エネルギーシステムからの消費された燃料電池燃料を受容し得るため、カソード液の選択は、燃料電池の進化(evolution)と密接に合わせて行なわれ得る。燃料電池では、カソード液が、安定化された酵素および/または固定化された微生物学的系と適合する条件であり得ることが期待される。したがって、期待されるカソード液は、できるだけ高濃度の燃料候補(おそらく、>10%過剰)を含有する中程度のpH値の生理食塩水溶液であり得る。以下のアプローチの説明は、高い年率エネルギー密度の小型発電システムのためのPDEC技術の進化に関与するカソード液化学反応の組合せに関してさらにより詳細な事項を含む。
【0114】
あらゆる型の燃料電池デバイス設計との一体型光分解誘導型電気化学(PDEC)系の燃料電池燃料再生
燃料電池燃料再生は、緑色植物の光合成のある種の側面を模倣し、デバイス耐久性および長期耐用寿命のために堅固な材料の構築物を使用するという知見を用いてなされる。具体的には、葉緑体および光分解誘導型電気化学反応(PDEC)内で起こっているような集光およびエネルギー輸送により、光化学系II(PS−II)の電荷分離が行なわれる。本発明は、高い発電システムと一体化された場合、多くの型の動力輸送手段(例えば、電動供給、ロケット動力供給など)に必要とされるエネルギーを提供し、それにより、広範な従来型および未来型燃料電池燃料が作製および再生され、広範な燃料候補の連続的な再生が提供される。
【0115】
PDECでは、PS−II(PS−IIは、植物光合成システムの酸素生成部分)のように、任意の供給源から誘導され、120〜1000nm(両端を含む)、好ましくは190〜750nm、最も好ましくは340〜450nmの波長域内の光エネルギーを用いることで、水分子から電子、酸素および水素イオンが生成される。PDECは、酸素生成に伴う拡散障壁の関与が最小限であることが特徴であり、そうでない場合は、従来型電気化学的セル、燃料電池またはガス供給デバイスの性能が制限され得る。3種類の反応体の生成により、従来型光電装置または直接光分解的な水の分離と比べ、ずっとより多目的な技術が提供される。PDECでは、電子と水素イオンが結合して水素分子が形成され得る、および/または、代わりに有機化合物とカソード表面で反応して化学的還元が行なわれ、それにより、従来型および計画された燃料電池のための燃料の再生もしくはカロリー食糧がもたらされ得る。PDECデバイスの重要な基本的要件および目的は、酸素を生成させること、および燃料電池の再生が少なくとも一部行なわれるのに少なくとも充分な電気化学的還元電位ERをもたらすことである。燃料電池燃料再生のERは、光分解エネルギーの一部が酸素生成のために消費された後に残る電位である。この限界値により、下限の許容され得る光分解エネルギーが1000nmに設定される。
【0116】
したがって、本発明のPDECデバイスの任意選択の第2の態様は、2つの方法の一方または組合せによってカソードセル電圧を増大させることである。第1は、2つ以上のPDECセルを、その出力電圧が合計されるように直列に電気的に接続することである。
【0117】
より高いカソード電位を得るためのこの第2の選択肢は、光化学系I(PS−I)と類似する光化学反応を使用するストラテジーを用い、第2の光分解セルを組み込むためのものである。この方法は、酸素生成によって放出された電子の還元電位を増強するための光の光子からのさらなるエネルギーの組込みを伴う。この場合、カソード反応のための電流が、上記のように一次PDEC光触媒から既に利用可能であり、ちょうど従来の光吸収と同期するため、電荷分離は関与しない。
【0118】
以下の表は、従来型燃料電池(H2)、計画された未来型燃料電池(例えば、JP8、JP8代替型、エタノール、メタノールなど)、およびPDECデバイスと一体化型の他の燃料電池の計画された要件を満たす燃料候補の一覧を提供する。この様式では、有用な光電流およびカソード電圧は、PDECデバイスによって、広範な燃料電池型、ロケットへの電力供給または他の発電システムに使用される燃料電池燃料再生および/または酸素供給のために生成される。太陽光照射から単位面積あたりの即時に利用可能なエネルギーの制限により、PDECが連続的に高密度の電力を提供することが期待されないこと、およびこの高電力の仕事は、一体型燃料電池またはロケットによって提供され、通常、非連続的に利用されることを認識されたい。例えば、小型のロボット型の航空機または有人宇宙船では、搭載電子デバイスおよびシステムの操縦または操作中。次いで、一体型システムはまた、ある期間の間、暗所、影または薄暗い所でも機能し得る。この場合、再充電は、照明が利用可能な間に太陽エネルギーまたは電灯照明のいずれかを使用することで行なわれる。したがって、一体型システムのPDECユニットの役割は、燃料および酸素を単独で、または搭載貯蔵庫あるいは他のものからのこれらの物質の他の利用可能な供給源との組合せで提供することである(特に、時間とエネルギー源と要求が可能な場合)。燃料および/または酸素材料は、直接使用され得る、および/または、最も好ましくは、よりタイムリーな使用のために、高いエネルギー生成ユニットによって、もしくは食糧として保存され得る。搭載燃料電池のための再生された燃料は、燃料電池には凝縮型エネルギー源が使用され得るため、移動手段に必要とされる高電力レベルまたは人間に消費される食糧をもたらすガスまたは、好ましくは液体、炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、炭水化物、COおよび/またはH2(これらの燃料の混合物を含む)である。PDECはまた、例えば、かかる燃料貯蔵が充分に補給されている場合、および/または太陽光エネルギーがなお利用可能であり、高電力の燃料電池(1つまたは複数)、ロケット(1台または複数)、搭載バッテリーが充分に充電される場合、ならびに太陽光エネルギー、核エネルギー、運動エネルギーなどが利用可能であり、消費された材料(例えば、消費された燃料電池燃料、H2O、CO2などがなお利用可能である場合、搭載電力(通常、低密度)を提供し得る。かかる状況の一例は火星上(ここでは、CO2および水が、火星環境からの供給により大量に利用可能である)、または火星もしくは月もしくは宇宙船の温室である。
【0119】
本発明の別の態様は、長寿命高電力で光分解型(電気式ではない)化学的変換を提供するため、ならびに任意選択で、貯蔵および電源での使用のために太陽光エネルギーから電力を発生させるため、ならびに従来型および未来型燃料電池(燃料電池を含む)のための燃料の電気化学的再生ための太陽光エネルギー変換技術を提供する。
【0120】
燃料再生PDEC室では、水素イオンと電子が、燃料電池(従来型および計画したもの)に選択された消費された液体またはガス状燃料を再生するために使用され得る。再生された燃料は、小型で適切な大きさのハウジング室または「サージタンク」内に保存され得る。消費された燃料は、燃料電池動作から回収され、搭載された適切な大きさのハウジング室内に回収され得る(図3)。低揮発性化合物、例えば、糖、高級脂肪族アルコールおよびポリオールと、より揮発性の燃料、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノールならびに他の低級脂肪族アルコールおよびカルボン酸、例えば、酢酸またはギ酸との両方の再生がもたらされ得る。典型的には、電気化学的に加圧された(すなわち、機械的に加圧されたのではない)水素(H2)が、従来型の燃料電池の場合に使用され得る。また、光分解により形成される湿潤酸素(または任意選択でH2O2)は、典型的には純粋であり、内部湿度がPEM膜性能に重要であるため、従来型、未来型および光化学的に加圧された燃料電池において、直接再使用に利用可能である。再生型燃料電池燃料は、電力が必要とされるまで保存され得、それにより、長寿命で高電力エネルギー源が提供され得る。このようにして、太陽光エネルギーの効率的な使用が、長期発電容量を誘導するために用いられ得る。
【0121】
PDECの一部のある態様は、PDECの生成物(活性酸素、電流および水素イオン)が別々に生成され、PDECセル個別の室に維持され、それにより、より多くのプロセス選択肢(例えば、液体またはガス状燃料再生など)が提供され、燃料電池のための酸素が提供されるが、複雑な分離の必要性が排除されることにより、典型的には、従来の光電装置(PV)または「水の分離」技術よりもより多目的であり、より光効率のよい技術であることに注意されたい。このような特徴により、維持要件が低減され、その結果、稼動寿命が延長される。
【0122】
PDEC技術の光分解側面は、既に効果的であることが証明されており、生理学的電解質条件下、タンパク質含有生体適合性の電解質、例えば、合成電解質(例えば、模擬血液血清および例えば、全血(人間およびウシ))の存在下で化学変化がもたらされる。したがって、燃料電池燃料を同定するためのアプローチは、表の化合物の一覧からの燃料候補のためのカソード光分解的および電気化学的試験の実施を伴う。
【0123】
3Dフロースルー型PDECセル構造「構築物」は、典型的には、微細加工、(μFAB)集積回路(IC)フォトレジスト、蒸着、エッチングおよび他の関連薄膜製作(FAB)技術を用いて設計され、組み立てられ得る。3D構造の設計は、活性表面全体および限られた空間内の酵素適合性電解質の液の流れの計算流体力学(CFD)モデル設計を用いて選択され、幾何構造が測定され、大きさが最小限にされ得る。微細加工は、ソリッドステートおよび耐久性形態におけるPDEC反応表面のための大きな内部表面積を提供する。PDECモジュールの構築の特定の幾何構造および材料は、必要性、燃料電池に酵素的に誘導される生体適合性、および燃料再生速度によって決定され得る。これらの構造は、空間効率的な配置に一緒に積層されたものであり得、これにより、高速で効率的な電源充電および燃料電池燃料再生のために高速で酸素、電流、and H+イオンを生成させるための光分解エネルギーが使用され得る小型デバイスが得られ得る。
【0124】
燃料再生
燃料電池FRサブシステムの主な設計要件は、カソードおよびカソード液に焦点が当てられている。消費された燃料が燃料電池消費された燃料サージタンクから取り出される場合(図8)。光触媒アノードで生成された電子および水素イオンを用い、特に選択されたPDECカソードにおいて、高度に効率的な化学的還元が行なわれることが必要である。高収率は、セル作動条件およびカソード材料(通常、金属または金属合金)の結果である。再生された燃料は、次いで、必要とされるまで燃料槽に送られる。
【0125】
あるいはまた、消費された燃料は、PDEC動力供給型燃料電池燃料再生モジュールによってもたらされる非排気可能な様式で連続的に除去され、ユニットへの電力は維持される。電力がオフであるか、または一時的に失われている場合、該システムは、電力回復に対する通常の機能を自己再確立させるものであるのがよい。
【0126】
広義で、図8は、PDECユニットと他のシステムとの相互作用を示す。図8は、PDEC技術を用いた燃料電池燃料再生システムの概略的な一般的なプロセスを示す。消費された燃料、高い(5〜50%)濃度の消費された燃料を含有する電解質および残留過剰燃料は、燃料電池から流動し、サージレザーバ内に回収される。この液体は、次いで、小型の低圧力ポンプを用いて気密PDECセル内にポンピングされ、ここで、光分解動力供給型還元が起こり、燃料が再生される。再生された燃料は、なお供給ポンプからの流動下にあり、燃料レザーバ内に流動し、ここでは、電力が必要な場合に燃料電池にポンピングされる。
【0127】
また、PDECアノードで同時に生成された酸素も、既にPDECセルの自然圧下にあるサージタンク内に回収され、それにより、機械式加圧ポンプの必要性が回避され、したがって、その重量、バルク性およびその高電力需要が回避される。代わりに、該システムを閉鎖状態に維持することにより、酸素の加圧もまた、光分解型電力によって誘導される。加圧酸素により、燃料電池の出力が増大される。
【0128】
センサー、制御回路およびサポートハードウエアは、最終サブシステム設計を補助するように選択される。使用される具体的なポンプは、該システムに必要とされる不可欠な技術革新ではないため、コスト削減のために標準的な実験室用ポンプが、計画された研究において使用され得る。同様に、燃料電池燃料再生試験では、アノードの光化学反応は、燃料電池燃料再生カソード電気化学反応に必要とされる電圧および電流密度を供給するためにDC電源を用いてシミュレーションされる。このアプローチにより、カソードにおいて、非最適化光触媒の複合なしで電圧、電流密度、生成速度の定量的測定および生成物の測定が可能になる。
【0129】
カソードに考慮される構成要素としては、物理的構造および組成物が挙げられる。カソードは、軟金属、例えば、亜鉛、カドミウム、鉛、銅、鋼、白金もしくはチタン、めっきまたは合金で作製されたものであり得る。還元炭化水素化合物を形成するため、例えば、アルコールまたはポリマーが望ましい還元炭素生成物に典型的である。多くの生成物材料が、これらの電気化学的処理経路のいずれかの考慮に利用可能である。
【0130】
図7は、燃料電池燃料再生および酸素生成のPDECセルの内部フローの模式図である。設計の主な構成要素には、燃料電解質収集ポンプおよびライン、光触媒アノード(ここでは、酸素が同時に生成され、加圧され、酸素貯蔵槽に戻る)、カソード(カソード化学的還元、消費された燃料を還元して電圧印加た有用な形態に戻すため)が含まれる。カチオン交換膜により、電極が隔離され、アノードで生成されたアノード液からのH+イオンがカソードに移動して燃料還元に関与するのを選択的に許容する。加圧酸素は、アノードで生成される。水収支が提供され得(図示せず)、燃料電池ならびにPDECセルの要件に依存し得る。一般に、水は、存在する微生物/酵素(1種または複数種)燃料電池触媒(1種または複数種)のために該システム内に保持されることが望ましく、従来のH2燃料電池の場合のようにパージされないため、水収支が大きな問題になることは予測されない。また、PDECには水性電解質が使用される。したがって、不可欠で複雑な水収支の操作の必要性が排除され、微調整を必要としてもしなくてもよいシステムに置き換えられる。
【0131】
PDEC光触媒は、燃料電池燃料再生および酸素生成および加圧のための電気化学的電源を提供する。光触媒による光エネルギーの吸収は、電子を触媒の伝導帯へと推進し、電流をもたらし、「ホール」を残して水を酸素とH+に酸化させることを可能にする。遊離した電子は、次いで、外部導体によってカソードに運ばれ、消費された(酸化された)FCRを還元して再生させる。この仕事により、不可欠な改善がカソードおよび光触媒にもたらされる。効率的な電力変換および高い燃料電池燃料再生収率は、不可欠な設計パラメータである。触媒膜内での電荷分離工程の効率により、最終PDECサブシステムの最終の大きさ、重量および出力密度を制御する不可欠な設計パラメータが決定される。具体的には、その要件は、真空スパッターコーティング、化学的蒸着およびエピタキシャル蒸着、ならびに所望の電子遷移、接着性、電荷分離およびエネルギー変換による光子吸収を最適化する関連製作技術、特徴および部材を用いて光触媒を設計することである。
【0132】
燃料電池燃料再生アプローチおよび燃料電池との一体化および集光ユニット動作の詳細な説明
チタニアの光化学反応に関する文献は、その微粒子としての、扱いにくい有機汚染物質の分解のための使用を中心としたものであるが、どのようにしてこのエネルギー源を、水から酸素およびH+イオンが生成されるとともに、電流が発生する様式で指向させるかが見出された(図7参照)。容易に輸送されるH+イオンおよび電子は、アノードの酸素生成反応の位置とは離れてカソード反応において利用され、燃料電池燃料再生が達成される。この光化学的燃料電池燃料再生アプローチの説明を以下に示す。
【0133】
工程1:以下の式は、酸素への水の光分解的変換とともに、カソード反応のための電子および水素イオンの同時生成の基礎を構成する(反応10)。この反応は、光分解エネルギーが一連の有用な酸化/還元電気化学的反応(「レドックス」反応)を行うために容易に使用される形態で効率的に捕捉される主要なエネルギー変換工程である。ここでは、該技術をその最も単純な形態で説明するために、チタニアを使用する。最終的な精製金属酸化物光触媒膜は、典型的には、固溶体または積層膜としての酸化物のブレンド(色素増感剤を含む、または含まない)であり、例えば、タングステン酸塩および亜鉛酸塩が含まれる。かかる混合物により、基本的な酸素生成光化学反応は同じに維持しつつ、ずっと広範な太陽光スペクトルの使用の使用が可能になる(以下に示す)。したがって、有効な光子は、750nm以下の波長を有するもの(エネルギーは13,200cm−1以上)であり得ることが期待される。空気中では、最も短い波長は、酸素による吸収のため約190nm(52,600cm−1)に制限される。したがって、地球上での適用用途では、大気圏を透過する太陽光スペクトルの本質的にすべての非熱的部分、例えば、大部分の可視光スペクトル、ならびに真空UVの外側の全UVスペクトル(UVA、UVBおよびUVC成分)が、燃料電池燃料再生に利用され得る。金属酸化物光子吸収媒は、エネルギー捕捉を達成するための高効率を有するように選択され得るため、エネルギー効率は、最終的に、集光ネットワークの効率によって設定される。
【0134】
工程2:先に記載したように、活性酸素は、蒸気または液状形態いずれかで供給される水と接触している光触媒表面({TiO2−OH2}surf)にいったん移動すると、非常に短い寿命を有する。この移動工程により、光子吸収バルクチタニア膜部位({TiO2}バルク)が改質され、次の光子の吸収に再設定される。
【0135】
酸素生成表面上に存在するH2Oは、バルク供給源から供給されることに注意されたい。燃料電池の場合、これは、通常、酵素/微生物燃料電池媒質によって使用される水相電解質であり得、これは、通常55モルであるため、有意な拡散境界層を提示しない。
【0136】
工程3:いったん「ホール」が反応13により表面に達すると、自発的な不均化によって気相を伴うことなく酸素が生成される(反応14)。
【0137】
次いで、酸素がナノ微細孔表面から、提供される電灯強度、量子収率ならびに反応工程1、2および3の全体的な速度に比例する流束で拡散する。酸素は、水性薄膜を通って移動する(例えば、心材(wicking)膜接触体部材、例えば、工業的に空気を加湿するため、またはガス/表面吸収を提供するために使用されているものを用いて)、このとき、急速に加圧されたガス状の酸素が形成される。
【0138】
集光は、電磁放射線の太陽エネルギースペクトル全体からの光の収集を目的とし、この光を、光学的輸送技術を用いた光変換のためにPDECセルに提供する。波長を調整する必要がある場合、変換が行なわれる。反応13からの水素イオンは自発的に、水性膜相を通って、よく知られた「ホッピング」機構によって移動し、次いで、ソリッドステートプロトン交換膜(PEM)全体に拡散する(図7)。PEMは、従来の物理的−化学的(PC)燃料電池技術から既に利用可能な技術であることに注意されたい。
【0139】
重要なことは、酸素形成のための化学的基質は、燃料電池電解質および/またはシステム凝縮物から誘導される水である。TiO2セラミックナノ微細孔内での酸素の形成により、酸素形成領域との燃料電池電解質の直接接触が妨げられる。照明領域は、典型的にはソリッドステートのみである。生物汚染を抑えるため、酸素生成表面の高い光沢表面平滑性を選択した。
【0140】
工程4:燃料電池燃料再生
PDECシステムの主な目的は、燃料電池によって生成される燃料電池の燃料を任意の搭載バックアップ燃料電池または燃焼システムのために再生することである(図3および8)。この能力は、次のシステム燃料補給までか非常に長期間(数年)であること、および従来のシステムと比べてkwh/kg/年ベースでずっと高い出力密度の両方を達成するのに不可欠である。この期待される主な利点は、おそらく、従来の技術の巨大な燃料槽(それでもなお、高頻度の補給が必要である)が必要とされないことによるものである。PDEC燃料電池の開発において、燃料再生器により、たった1つ(または2つ)の比較的小型の搭載燃料槽を提供することが可能になり、また、1回に数年、地上操作を用いて補給する必要がなくなる。電気有機化学反応の文献のデータマイニングを用い、工業的実践および学術出版物、数多くの燃料電池燃料候補のトップリストおよび候補化学物質を確認した。これらの化合物には、最終燃料候補が含まれ得る、または化学的類型の最も望ましい燃料が含まれ得る可能性が高いことに注意されたい。最も望ましい燃料は、燃料再利用がもたらされ、選択性が「恒常的改善」統計学的確認済みプログラムを用いて体系的に増大される生成試験の生成物である。
【0141】
かかる耐久性の再利用燃料が可能であることの促進(encouragement)は、複数年が要求される適用用途が意図された他の従来の化学生成物、例えば、油圧液、潤滑油、ある種の長寿命表面仕上げ浴化学試薬、および特に、熱媒液などから収集される。これらの生成物はすべて、使用分野で数年持続するが、厳しい適用用途、例えば、航空宇宙、重量構築、化学的製造、発電、高電流密度などおよび多くの他の適用用途における厳しい熱、温度、圧力および酸化条件に連続的または断続的に供される。
【0142】
したがって、燃料選択プロトコルにより、電気化学的再生収率および選択性に関して燃料電池燃料候補が評価されることになる。燃料電池性能以外の不可欠な選択パラメータは、副生成物の生成であり、これは、1回の再利用あたり<<1%に維持されなければならない。精製の一般的なアプローチは、反応収率および再生選択性の両方を測定することだけでなく、燃料電池の使用および燃料再生加工処理中に形成される副生成物も測定することである。いったん特定の有意な副生成物が確認されたら、その形成の機構を推定し、阻止する。次いで、懸念される次の副生成物(この場合も形成を推定する)が確認されるまで試験を反復する。
【0143】
図9は、全体的に高い年率出力密度の小型発電システムのPDEC燃料電池燃料再生加工処理ユニット部分を開発するための具体的な方法をまとめたものである。PDECサブシステムは、高度に選択的な燃料電池燃料再生、および任意選択で、光加圧酸素および/またはCO2を提供する。これらの生成物、燃料およびオキシダントは、燃料電池ユニット(1つまたは複数)を供給する貯蔵槽、呼吸雰囲気またはロケットエンジンに送達される。
【0144】
年率出力密度は、1年間にわたって消費された補給燃料物質(再生された燃料でない)+燃料電池の物質を含む該デバイスから生成される電力を意味する。太陽光エネルギーによって燃料を再利用することにより、付加される正味の燃料物質は、再利用なしよりも相当少なくなる。
【0145】
PDECによってもたらされ、燃料を再生するために使用される低電圧/高いアンペア数電力はまた、システム寿命を延ばすため、および/またはバックアップ電池充電を提供するための燃料電池燃料再生の要件(例えば、ピーク電力付加要件)が満たされた場合、他の有用性を有し得る。光触媒およびカソード表面触媒の詳細な設計により、PDECセルの最大出力密度が大きく制御される。
【0146】
従来の酸化技術は、重量ガスシリンダーから燃料電池または他のエネルギーシステムに加圧酸素を1回通す使用のために送達することにより機能を果たすものであるが、廃棄物ガス、通常、廃棄用のCO2および/またはH2Oがもたらされる。本明細書において提供される本発明では、廃棄物ガスおよび液から再利用される水から酸素を生成させるために光分解エネルギーを用い、したがって、遠隔地および現地貯蔵からのガス送達の必要性が排除される。本発明者らにより、UV光と高度な吸収媒金属酸化物系膜(好ましくは高い光子効率のためにドープされ、他の同時堆積膜と重層され、フロースルー酸素生成セルおよび電気化学的セルとしての同時機能が可能であるもの)との相互作用に基づいて水から酸素を生成させることが実現可能であると決定された。以下の実施例では、光分解エネルギーを用い、水溶液から酸素を生成させる、したがってTiO2 表面照明により酸素生成をもたらす。一部のこれらの実験では、混合ウシ静脈血液、および定量的解析的測定のための酸素の優れた収着媒を、血液と反対側を照明した(血液が光に曝露させる可能性を排除するため)ナノ結晶性TiO2薄膜上の再循環ループ内に流動させた。TiO2膜の光曝露後、血液中のオキシヘモグロビン画分は、ほぼ飽和まで急速に増加し、この期間中を通して安定なまま維持された。血液の血清相中に含まれた溶存酸素画分は、オキシヘモグロビンと平行して増加し、これは、ヘモグロビンのほぼ完全な酸化が達成されたことを示す。本発明者らは、光分解により酸素を生成させる(本実施例では血液自体の含水分から)ことは実現可能であり、それにより、重量酸素槽から供給される酸素ガスを強制的に溶解させる必要性が排除されると結論づけた。
【0147】
従来の酸素送達技術は、補充された酸素槽からの消耗用酸素の送達に基づく。一部の他のシステムは、使用場所で(point−of−use)酸素を直接空気から供給し、圧力スイング膜の拡散性および酸素/N2分離を誘導する差動ガス圧に依存する。これらのシステムの主な弱点は、直列に連結された大きな拡散境界層が必要とされ、これは、物質輸送の遅滞をもたらし、したがって、ガスの充分な流束を得るための大きな表面積およびガス圧縮装置、したがって大型で携帯型ではない重量システムの必要性が生じることである。また、このようなシステムには、重金属槽による外生的加圧酸素の連続的な供給源が必要とされる。本発明では、H2OおよびCO2生成物を再利用することにより、ならびにC、HおよびO元素を交換するのではなく光分解または他のエネルギー源を使用することにより、このような制限が回避される。酸素を遠隔または限られた施設に送達したり、または二酸化炭素をCO2の逆圧もしくはおよび酸素の内部フローに対して移動させるのではなく、本発明者らは、光分解エネルギーを用い、酸素および固定炭素(本明細書では、炭水化物あるいはH2Oおよび/またはCO2から直接再利用されるC(H2O)の記号で示す)を間接的に生成させる。
【0148】
アプローチおよび方法
H2Oおよび二酸化炭素からの酸素形成のための光分解的な反応の基礎となる化学反応
燃料電池燃料再生を達成するための消費された燃料電池燃料からの還元
以下の式は、溶存酸素への水の光分解的な変換および消費された燃料電池の炭素質燃料の還元および二酸化炭素l8の固定の基礎を構成する。この例では、最初の化学的基質は水であり、これは、金属酸化物膜(好ましくは、チタニア単独の膜、またはある種の金属イオン増感剤、炭素、黒鉛および/または有機もしくは有機金属色素でドープされた膜)内で活性酸素に光活性化されると、実質的に、酸素、電子およびH+イオンに変換される。かかる光化学的触媒(1種類または複数種)の膜は、金属または半導体元素、好ましくは膜またはスクリーンと充分に接触しており、照明が導電性層を透過すべき場合は透明な膜であり、そうでない場合は、遮光性または透過性が不充分となり得る。電解質は、任意の塩溶液、例えば、照射されている光を認識可能なほど吸収せず、光触媒膜内での励起子の形成を遅滞させるほど充分に光分解されない塩および/またはpH緩衝液のブレンドであり得る。光触媒が電解質を通して照明されるのではなく、導体膜を通して照明されるであれば、遮光性の電解質、例えば全血が使用され得る。後者の場合の一例は、導体膜がガラス、石英または無色透明のプラスチック材料上に堆積され、光がこの透明基材を介して光触媒に侵入するようになっている場合である。
【0149】
(実施例2)
重炭酸塩溶液を形成することによる燃料電池排気および呼吸空気からの酸素生成およびCO2除去ガス流のための重要な光分解誘導型電気化学反応
この実施例は、どのようにして、CO2が燃料電池の排気ガスまたは限られた呼吸雰囲気内の蓄積ガスから浄化されるとともに、かかる液、液体または蒸気/ガス中に存在する湿分から酸素ガスから生成されるかを示す。
【0150】
【化19】
カソードの構成材料は、CO2捕捉(OH−生成)および/または1種類以上の炭素質化合物へのCO2還元および/または1種類以上他の炭素質の有機系の消費された燃料電池の排気構成成分の還元に望ましい電気化学的変化が得られるように選択されることに注意されたい。また、燃料の完全な消費が発電に対して非効率となり得るため、燃料電池の排気には、なお未反応燃料価が含まれ得、ほとんどの場合で含まれることに注意されたい。
【0151】
工程3.カソード液へのMn+イオンの輸送
【0152】
【化20】
工程4.カソードでの水酸化物イオンの生成
【0153】
【化21】
工程5.燃料電池排気または呼吸空気からのCO2捕捉
【0154】
【化22】
ここで、Mn+は、金属カチオン、通常、アルカリまたはアルカリ土類金属イオン単独またはかかるカチオンのブレンドである。Mn+は、Li+、Na+、K+、Rb+、C+ 、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Zn2+、Fe2+、希土類元素(M3+)などであり得る。最も好ましいM種は、炭酸および/または重炭酸イオンとの非常に可溶性の溶液を形成するものである。炭酸塩塩が水溶性である場合は、CO2捕捉が固相収着媒による気相からであることが好ましい(反応8)。
【0155】
【化23】
該固体を、次いで、光生成H+イオンをアノード液中に含むアノード液と反応させ、内部に含有された酸素の除去後、水溶性重炭酸塩溶液を再形成する(反応9)。
【0156】
【化24】
次の工程は、第2の反応において、重炭酸塩溶液をより多くの無酸素アノード液と接触させることにより、アノード液を再形成し、純粋な(しかし湿性の)CO2を放出させるためのものである(反応10)。
【0157】
【化25】
この場合、CO2が反応10中で、化学的に加圧されるように含まれることが最も好ましい。
【0158】
上記の反応はすべて、高速かつ高収率(本質的に100%)であり、非常に高速(通常、1秒未満)で反応する。
【0159】
(実施例3)
炭酸系は、消費されたFC燃料を再生させてFCFRを得るためにPDECを使用することを意味する
この実施例では、PDEC基材を用い、水が酸素、水素イオンおよび電子に変換され、これは、一部、消費された燃料電池燃料、改質装置から放出されるガス、吐き出された呼吸空気などからCO2を捕捉するための炭酸化化学変化を誘導する。捕捉されるとCO2は、炭素質食糧および/または燃料、例えば、燃料電池燃料に還元され得るか、あるいは好ましくは圧力下でCO2ガスとして再生され得る。かかる加圧されたCO2は、周囲二酸化炭素の有意な逆圧が存在し、例えば、火星上もしくは温室内に存在する条件であっても、廃棄物として現場環境に放出するのに有用である。別の利点は、呼吸および燃料電池または改質装置から放出されるガスからCO2を取り出すために水酸化リチウムまたは水酸化リチウムの使用が可能になることである。以下の説明は、本発明のこの好ましい態様を記載するものである。
【0160】
光活性化による電荷分離をもたらすための炭酸塩系燃料電池燃料再生に使用されるデバイスを作製するための材料は、金属酸化物膜、好ましくはチタニアまたは他の光触媒の膜またはスラリー粒子(単独あるいは光分解収率を向上させ、広い波長帯の電磁スペクトルの使用を可能にするためにある種の金属イオン増感剤、炭素、黒鉛および/または有機もしくは有機金属色素でドープされた膜)内で最初に活性酸素を形成するために他の形態でPDECを適用するために使用されているものと同じかまたは類似する。膜形態では、光触媒は、透明な金属または半導体元素と、好ましくは照明が触媒膜全体になされる場合は膜またはスクリーンと充分に接触している。スラリー状態の光触媒で、照明がスラリーになされ、導電性層が所望されない場合では、照明するために使用される光のスペクトルの少なくとも一部において望ましい電荷分離を生成させるために光化学的に効率的となるように、スラリー粒子、ゲルまたは充填床光触媒が選択されるため、スラリーは透明、半透明または遮光性および/または透過性が不充分であり得る。電解質は、任意の塩溶液、例えば、希釈液(1〜1000mM)から凝縮液(1〜50wt%またはイオン液)の金属塩、塩および/またはpH緩衝液、安定剤、溶解度向上剤、乳化剤、これらの物質の組合せのブレンドなどであり得る。好ましくはこれらの物質は、得られる電解質のみが望ましい電荷分離(励起子)ならびに望ましい生成物(活性酸素、酸素、およびスラリーの場合は化学的に還元された生成物)をもたらし、他はもとんどもたらさない様式で光を強力に吸収するように、ならびにそれ自体は、電解質における役割が無効になるような様式で有意に光分解されないように選択される。
【0161】
光触媒触媒の構築では、膜またはスラリーが有用である。このようなスラリーは、微粒子の懸濁液であり得、コロイド、微小コロイドまたはこれらの組合せであり得る。チタニア、酸化タングステン、酸化亜鉛または静脈全血などのスラリーが、許容され得る材料である。遮光性の電解質、スラリーおよびコロイドは、光触媒が電解質を通して照明されるのではなく、支持導電体光触媒膜を通して照明されるのであれば、本発明の実施に有用である。後者の場合の一例は、導体膜がガラス、石英または無色透明のプラスチック材料上に堆積され、光がこの透明基材を介して光触媒に侵入するようになっている場合である。
【0162】
特に、本発明の有用な炭酸塩系の動作様式を以下に記載する。
【0163】
この実施例は、以下の一連の工程を用いて、どのようにしてCO2がFC排気ガスおよび/または限られた呼吸雰囲気内の蓄積ガスから回収され、加工処理されて燃料もしくは食糧に戻され、または所望により廃棄されると同時に、かかる液、液体またはガス中に存在する湿分からO2ガスが生成されるかを示す。
【0164】
工程1.第1のPDECアノード室において、酸素、水素イオンおよび電流(利用可能な電子)を生成させる光分解
【0165】
【化26】
酸素は、呼吸または燃料燃焼のための最終的な再使用の貯蔵のために消費される。
【0166】
工程2.カソードへの電子の輸送(電流)
【0167】
【化27】
工程3.カソード液におけるアルカリ性洗浄溶液
【0168】
【化28】
カソードの構成材料は、CO2捕捉(好ましくはOH−生成)および/または最も好ましくは、1種類以上の炭素質化合物へのCO2化学的還元および/または1種類以上他の炭素質の有機系もしくは無機の消費された燃料電池の(排気)構成成分の還元に望ましい電気化学的変化が得られるように、好ましくは高収率で、特に副生成物の形成が全くないか、または最小限で得られるように選択される。また、燃料電池の排気は、特に、燃料電池が液体系である場合は、一部の燃料電池、特に、液体電解質が使用されたものでは燃料の完全な消費が発電に対して非効率となり得るため、未反応燃料価を含むことが予測され得ることに注意されたい。
【0169】
工程3.カソード液内へのM+nイオンの輸送
【0170】
【化29】
【0171】
【化30】
工程4.カソードでの水酸化物イオンの生成
【0172】
【化31】
工程5.燃料電池排気または呼吸空気からのCO2捕捉
【0173】
【化32】
ここで、生成物の部分には、対応する金属イオンの重炭酸塩が含まれ得る。この二酸化炭素捕捉は、液体収着媒/ガス洗浄、固相収着媒/ガスまたは他のものなどのいずれかとして設計された気体液体接触デバイス、例えば、本発明の適用用途がかかる環境で使用される際に低またはゼロG使用において用いられる場合、最小限の重力用に特別に設計された接触装置を用いてなされる。
【0174】
工程6.アノードで生成されたH+イオンの消費によるCO2ガス発生またはカソードPDEC構成要素の酸性化の抑制
【0175】
【化33】
アノード液室内での二酸化炭素ガス発生の制御は、生成酸素ガスが二酸化炭素ガスで有意に汚染されないために必要である。したがって、反応4では、過剰のMxCO3が提供され、pHは、約8より上、好ましくは約9より上に維持される。
【0176】
工程7.カソードでの燃料電池燃料再生
ここで、Mn+は、金属カチオン、通常、アルカリまたはアルカリ土類金属イオン単独またはかかるカチオンのブレンドである。Mn+は、Li+、Na+、K+、Rb+、C+、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Zn2+、Fe2+、希土類元素(M3+)などであり得る。最も好ましいM種は、炭酸および/または重炭酸イオンとの非常に可溶性の溶液を形成するものである。炭酸塩塩が水溶性である場合は、二酸化炭素捕捉が固相収着媒による気相からであることが好ましい(反応8)。
【0177】
【化34】
該固体を、次いで、光生成H+イオンをアノード液中に含むアノード液と反応させ、内部に含有された酸素の除去後、気体液体分離デバイスを用いて水溶性重炭酸塩溶液を再形成する(反応9)。
【0178】
【化35】
次の工程は、第2のPDECアノード液反応において、第1室を用い、酸素を生成させずに、または好ましくは異なるPDECアノードセル室を用いて、重炭酸塩溶液をより多くの無酸素アノード液と接触させることにより、アノード液を再形成し、純粋な(しかし湿性の)二酸化炭素を放出させるためのものである(反応10)。
【0179】
【化36】
この場合、二酸化炭素が反応10中で、化学的に加圧されるように含まれることが最も好ましい。
【0180】
上記の反応はすべて、高速かつ高収率(本質的に100%)であり、非常に高速(通常、1秒未満)で反応する。
【0181】
まとめると、炭酸塩電解質を有するPDEC動力供給型セルの使用により、排気または消費された呼吸空気および/または燃料電池からの二酸化炭素の除去が可能になる。炭酸塩/重炭酸塩溶液の不揮発性の性質を用い、吸収された二酸化炭素が炭酸/重炭酸イオン形態として酸素ガスから分離されるとともに、PDEC光触媒によって生成された水素イオンが吸収される。二酸化炭素ガスの吸収のための腐食性またはアルカリ性は、PDECカソードにおいて通常の様式でもたらされ、一方、最初に二酸化炭素に由来する燃料または炭素(IV)は、カソードで有用な化合物に、より好ましくは燃料および/または食糧あるいは他の材料に化学的に還元される。あるいはまた、二酸化炭素は、炭酸塩/重炭酸塩電解質を別のまたは同じ直列のアノード液室に通すことにより、凝縮形態、優先的には加圧された形態で放出され得る。また、固形収着媒材料が、例えば、呼吸空気または再呼吸用デバイス内において低い二酸化炭素レベルを維持するのに使用するための二酸化炭素収着材料キャニスターを作製するのに使用するために作製された腐食性材料から製作され得る。
【0182】
【化37】
【0183】
【化38】
【0184】
【化39】
【0185】
【化40】
【0186】
【化41】
【0187】
【化42】
【0188】
【化43】
【0189】
【化44】
【0190】
【化45】
【0191】
【化46】
【0192】
【化47】
【0193】
【化48】
【0194】
【化49】
【0195】
【化50】
【0196】
【化51】
【0197】
【化52】
【0198】
【化53】
【0199】
【化54】
【0200】
【化55】
【0201】
【化56】
【0202】
【化57】
【0203】
【化58】
【0204】
【化59】
【0205】
【化60】
【0206】
【化61】
【0207】
【化62】
【0208】
【化63】
【0209】
【化64】
【0210】
【化65】
【0211】
【化66】
【0212】
【化67】
【0213】
【化68】
【0214】
【化69】
【0215】
【化70】
【0216】
【化71】
【0217】
【化72】
本明細書に開示された本発明の形態は、現時点で好ましい実施形態を構成するが、多くの他の形態が可能である。本明細書では、本発明の考えられ得る均等形態または派生形態のすべてに言及したことは意図されない。本明細書で用いた用語は、限定ではなく単なる説明であること、および本発明の範囲の精神を逸脱することなく種々の変形がなされ得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】図1は、主要物質およびエネルギー源およびフローを示す本発明の広義の概観の模式図である。
【図2A】図2Aは、PDECの典型的なフロースルー型セルの模式図である。
【図2B】図2Bは、宇宙空間ユニット適用用途のための典型的なPDECユニットの模式図である。
【図3】図3は、一体型PDEC/燃料電池システムの詳細なレイアウトの模式図である。
【図4】図4は、本発明の一態様による典型的なポリマー電解質燃料電池(PEMFC)の断面図を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の一態様による典型的な直接メタノール燃料電池(DMFC)の断面図を示す模式図である。
【図6A】図6Aおよび6Bは、Hasenbach光合成試験セルにおけるPDEC光触媒性能のグラフ表示である。
【図6B】図6Aおよび6Bは、Hasenbach光合成試験セルにおけるPDEC光触媒性能のグラフ表示である。
【図7】図7は、燃料電池燃料再生およびO2生成のための本発明の別の態様のPDECセル内部フローの模式図である。該セルの典型的な設計パラメータを示す。
【図8】図8は、本発明の別の態様による燃料電池燃料再生のための2工程プロセスを示す模式図である。該プロセスは、典型的には、生成されたO2のモルでアノード生成物2e−および2H+を用いた、燃料電池で消費された燃料電解質の光分解的動力供給型電気有機化学的還元を伴う。
【図9】図9は、貯蔵、活性ならびにC、HおよびOの再利用を示す本発明の別の態様の模式図である。この図は、燃料電池および燃料電池燃料再生槽および関連貯蔵槽とのPDEC一体化をさらに示す。
【図10】図10は、ガス拡散カソードを有するPDECセルを示す本発明の別の態様の模式図である。これにより、空気中の過剰のCO2を除去するために、ガスをセル内で直接循環することが可能になる。微多孔性の疎水性ポリマーが、CO2選択膜に典型的に使用される。典型的な材料は、TeflonTMである。該プロセスは、二酸化炭素の除去および固定のための単一工程型の設計である。
【図11】図11は、捕捉の後、固定を含む、ガス流からの二酸化炭素除去のための2工程プロセスを示す本発明の別の態様の模式図である。完全に液体のPDECセルのための液体洗浄装置が使用されている。
【図12】図12は、単に膜単独ではなく、照明された光触媒スラリー、床もしくはゲルまたは膜との使用に適用される本発明の別の態様の模式図である。電解質は、任意の容易に可逆的な酸化可能/還元可能な無機もしくは有機種または種のブレンドを用いて作製される。酸性第二鉄/第一鉄電解質を図12に示す。他のかかるシステムの例は、本明細書の別の箇所に挙げられており、例えば、第二銅/第一銅、フェリシアン化物/フェロシアン化物、ニッケルのアルカリ性溶液、ヒドロキノン/キノンなどである。
【技術分野】
【0001】
(政府の権利の陳述)
本発明は、NASA契約番号NNT04AA02Cの下の米国政府の機関との契約の下で、行われた。米国政府は、本発明に権利を有する。
【0002】
(優先権主張)
本出願は、以下の出願に対する優先権を主張し、かつこれらの教示および開示を拡大する:仮特許出願第60/358,448号「Development of Photolytic Pulmonary Gas Exchange」(Bruce Monzykら,2002年2月20日出願);仮特許出願第60/388,977号「Photolytic Artificial Lung」(Bruce Monzykら,2002年6月14日出願);仮特許出願第60/393,049号「Photolytic Oxygenator with Carbon Dioxide Fixation and Separation」(Bruce Monzykら,2002年6月20日出願);およびPCT出願第PCT/US02/24277号「Photolytic Oxygenator with Carbon Dioxide Fixation and Separation」(Bruce Monzykら,2002年8月1日出願);仮特許出願第60/404,978号「Photolytic Oxygenator with Carbon Dioxide and/or Hydrogen Separation and Fixation」(Bruce Monzykら,2002年8月21日出願);PCT出願第PCT/US2003/026012号「Photolytic Oxygenator with Carbon Dioxide and/or Hydrogen Separation and Fixation」(Bruce Monzykら,2003年8月21日出願);および仮特許出願第60/713,079号「Closed Loop Oxygen Generation and Fuel Cell」(Paul E. George IIら,2005年8月31日出願)。
【0003】
上記で参照されたPCT出願(および必要な場合はその対応する米国仮特許出願)の開示および出願番号60/713,079号を有する仮特許出願の開示は、本明細書中で参考として援用される。
【0004】
(発明の分野)
本発明は、典型的にはC、HおよびOの質量(mass)を再利用し、プロセスのためのエネルギーが外部から供給される燃料生成/再生システムと一体型の小型電源システムに関する。本発明の好ましい形式では、光分解誘導型電気化学的(PDEC)デバイスにより、二酸化炭素から炭素、および水から水素を固定しながら同時に水からの酸素生成が行なわれて燃料(最も好ましくは、燃料電池またはロケットエンジン用)とし得、そしてカロリー食品として価値のあるものにし得る。CO2およびH2O供給源は、限られた空間内の呼吸雰囲気および/または燃料電池の排気装置からの分離によって誘導される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の簡単な説明)
該して、PDEC技術では、光分解エネルギーが直接(PVとは異なり)、限られた空間内でCO2が加工処理され、酸素が再生され得る電気化学的反応を誘導するために使用される。典型的な利点としては、量子効率の増大、軽量、小型が挙げられる。月および火星上の資源はひどく限られているが、光子は豊富である。太陽光エネルギーは、28日間の月の日中のうち14日で利用可能であり、月の夜間および火星において電灯を用いて生成され得る。PDECの適用用途としては、宇宙船、月面居住環境モジュールおよび宇宙服に使用され、有意義な利益(例えば、質量の低減、体積の低減、動力の低減など)を有し、より容易に拡大縮小可能なモジュール式空気再生システム、ならびにシステム間で共有され得るモジュール式構成要素が挙げられる。また、該システムにより、月および火星の探査のための「ロジスティックス(logistics)列車(train)」が大きく単純化され得る。
【0006】
一般的に、本発明による実施形態は、CO2、H2Oおよび不純物の除去ならびに酸素の添加による限られた空間内の呼吸空気;水の再利用;C、HおよびOの再利用;燃料電池燃料の再生;一般的な制御装置、センサーなどのための低電力;燃料電池および呼吸空気のための酸素生成を提供する。該システムは、電灯または直接太陽光エネルギーを動力とする小型の、たいていソリッドステート(solid state)である一体型システムであり得る。
【0007】
光分解変換はPDECセル内部で起こり、このとき、典型的には、変換のための動力の大部分は、PDECセルへの光入力により誘導される。
【0008】
本発明の一実施形態は、
A.人間の居住地のための密閉空間を提供すること;
B.CO2および/またはH2O(ここで、該CO2および/またはH2Oは、任意選択で少なくとも一部が該密閉空間内で生成されたものである)を、化学薬品、燃料、食糧、オキシダントの1種類以上および/またはこれらの1種類以上の中間体を含む生成物に光分解により変換し、少なくとも一部を該密閉空間に供給すること;
C.工程Bの生成物の少なくとも1種類からエネルギーを生成させること;ならびに
D.エネルギー生成および/または呼吸で消費された反応体を工程Bに再利用すること
を含む、密閉空間内に人間の居住地を提供するための方法を含む。典型的には、該方法は、少なくとも一部が以下:居住者の呼吸、燃料電池の排気ガスおよび改質装置から放出されるガスの1種類以上に由来するものである工程BのCO2および/またはH2Oを含む。工程Bの生成物としては、以下:酸素含有炭化水素、炭化水素、炭水化物、オリゴマー、ポリマー、水素、酸素、炭素、パラホルムアルデヒド、および化学薬品の中間体;エチレンおよび/またはメタン;ホルムアルデヒド、トリオキサンあるいは糖の1種類以上が挙げられ得る。C5は、C6糖への転化のために供給され得る。11.エネルギーおよび反応体を密閉空間に供給するための方法は、
A.密閉空間を提供すること;
B.CO2および/またはH2O(ここで、該CO2および/またはH2Oは、任意選択で少なくとも一部が該密閉空間内で生成されたものである)を、化学薬品、燃料、食糧、オキシダントの1種類以上および/またはこれらの1種類以上の中間体を含む生成物に光分解により変換し、少なくとも一部を該密閉空間に供給すること;
C.工程Bの生成物の少なくとも1種類からエネルギーを生成させること;ならびに
D.エネルギー生成で消費された反応体を工程Bに再利用すること
を含む。
【0009】
別の実施形態は、
A.人間の居住地のための密閉空間を提供する工程;
B.オキシダント、電子/電流および水素イオンを光分解により供給する工程、
C.これらの電子および水素イオンを、CO2、化学的に酸化された有機もしくは無機化合物および/またはH2O(ここで、該CO2、化学的に酸化された有機および/または無機化合物および/またはH2Oは、任意選択で少なくとも一部が該密閉空間内で生成されたものである)を化学薬品、燃料、食糧、オキシダントの1種類以上、化学的に還元された有機もしくは無機化合物(1種類もしくは複数種)および/またはこれらの1種類以上の中間体を含む生成物に変換するために使用する工程;
D.工程Bおよび/またはCの生成物の1種類以上からエネルギーを生成させる工程;ならびに
E.エネルギー生成および/または人間の呼吸からの排気物質を工程Bに再利用する工程
により、密閉空間内において電源を提供し、人間の呼吸雰囲気を維持するための方法を提供する。典型的には、還元された無機化合物は、
水、
N2、
Fe(II)、Pb(II)、Mn(II)、V(III)、Ce(III)、Cr(III)、Tl(I)、Hg(I)22+、Cu(I)、
V(IV)O2+イオン、V(V)O2+イオンおよび/または他の金属イオン、例えば、オキソ含有イオン、単独、水和(aquated)、キレートまたは錯体の状態のもの、
硫酸イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、亜ジチオン酸イオン、硫化物イオンおよび/またはイオウもしくはS含有過酸化物の他の還元形態
ホウ酸イオン、水素化ホウ素、シアノボロヒドリドおよび/またはホウ素もしくはB含有過酸化物の他の還元形態
銀、ニッケル、銅、金、鉄、カドミウム、鉛、亜鉛、マンガンもしくは他の金属、または金属混合物、
アンモニア、アンモニウムイオン、シアン化水素、ヒドロキシルアミン、
過酸化水素もしくは金属過酸化物、
臭素酸イオン、
MnO2、ZnO、InSnO(ITO)、As2O3、マンガン酸塩、FeO、PbO、SnO、ならびに他のレドックス活性固体金属およびメタロイド酸化物
次亜塩素酸、ヨウ素酸イオン、I2、ヒドラジン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、亜塩素酸、塩素酸イオン、
N2O、N2O4、H2N2O2、亜硝酸、NO、
元素のイオウ(S、S8)、元素のリン(P、P4)、次亜リン酸イオン、ホスホン酸(phosponate)イオン、ホスフィン(PH3)およびホスフィン誘導体、
フェロシアン化物
など、ならびにこれらの物質の混合物
の1種類以上である。
【0010】
21.密閉空間が、宇宙服、宇宙ステーション、月面建造物もしくは生活(living)モジュール、または密閉居留地、火星の建造物もしくは生活モジュール、または密閉居留地、地球周辺もしくは惑星間用宇宙船、月面、火星もしくは惑星ローバー(land rover)、水中、海中ユニット、水中救助ユニット、または地球上でのサバイバルユニットである、請求項12に記載の方法。
【0011】
他の実施形態において、無機化合物は、
過酸化水素、
Fe(II、III、VI)、Pb(IV)、Mn(III、IV、V、VI)、V(IV、V)、Ce(IV)、Cr(VI)、Tl(III)、Hg(II)、Cu(I、II)、Ag(I、II)、Ni(II、III、IV)、Au(I、III)、Cd(II)、Zn(II)、V(IV)O2+イオン、V(V)O2+イオンおよび/または他の金属イオン、例えば、オキソ含有イオン、ハロゲン化物錯体、疑ハロゲン化物錯体、水酸化物錯体、単独、水和、配位子とのキレートまたは錯体の状態のもの、
過硫酸イオンおよび/またはイオウの他の酸化形態もしくはS含有過酸化物
過ホウ酸イオンおよび/またはホウ素の他の酸化形態もしくはB含有過酸化物
ヒドロキシルアミン、亜硝酸イオン、硝酸イオン、シアン、H2N2O2、N2O4、亜硝酸、硝酸、
過酸化水素または金属過酸化物、例えば過酸化バリウムなど、
MnO2、ZnO、InSnO(ITO)、As2O5、過マンガン酸塩(MnO4−)、Fe3O4、
KOH/K2FeO4ブレンド、LiOH/Li2FeO4ブレンド、アルカリおよび/またはアルカリ土類イオンを含む鉄酸塩(VI)の他のブレンド、PbO2、SnO2、ならびに他のレドックス活性固体金属およびメタロイド酸化物
臭素酸イオン、次亜塩素酸、過ヨウ素酸イオン、I2、Br2、亜塩素酸、塩素酸(clorate)イオン、ホスホン酸イオン
N20、N2O4、H2N2O2、亜硝酸、NO、
フェリシアン化物イオン
など、ならびに全体として中性電荷の物質に必要とされる任意の金属イオンまたは水素イオンまたは酸化物/水酸化物イオンとのこれらの物質の混合物
の1種類以上である。
【0012】
別の実施形態は、
A.光を吸収し、酸化を行なう光アノード;およびカソードを備え、任意選択でセパレータまたは膜によって分離され、アノードおよびカソード室が形成されたPDECセル;ならびに
b.その排気装置がPDECセルに連結され、排気水がアノード側に流れ、酸化された燃料または消費された燃料が装置のカソード側に流れる燃料電池
を含む、燃料再生および酸素生成のための装置を提供する。
【0013】
またさらなる実施形態は、
A.流入口および流出口ならびに光アノードおよびカソードを有し、任意選択でセパレータまたは膜によって分離され、アノードおよびカソード室が形成されたPDECセル;ここで、カソードはガスに対して透過性である;ならびに
B.PDECセルに連結された燃料電池、ここで、消費された燃料は再生のためにPDECセルに送られる
を含む燃料再生のための装置を含む。一部のある実施形態において、燃料電池の排気装置とPDECセルの間に酸化された燃料のためのガスセパレータが存在し、ここで、塩基性物質がガス状の消費された燃料と接触される。
【0014】
さらなる実施形態は、光を通す壁を有し、流入口および流出口ならびに該流入口および流出口内にフィルターを有してチャンバを形成するPDECセル;ならびに
B.チャンバ内の光触媒スラリー
を含む、光分解エネルギーを用いた消費された燃料の再生のための装置を含む。該装置は、
C.燃料電池、任意選択でPDECセルと該燃料電池の間にガス燃料排気セパレータを有し、該燃料電池の流出口がPDECセルの流入口に連結されている、
を含むものであり得る。
【0015】
本発明の種々の態様は、
限られた環境内で、エネルギー{光(太陽光、電灯、レーザー)、風、水力発電など}以外の環境とのとの相互作用なしでの少なくともC、HおよびOの質量の保存(「原子収支」)のための一体型システムを含む。本発明の一態様は、限られた環境内で、光エネルギー以外の環境との相互作用なしでのC、HおよびOの質量の保存のための一体型システムであって、保存された物質が再利用されたものであり、食糧または燃料である一体型システムを提供する。
【0016】
限られた環境内で、エネルギー以外の環境との相互作用なしでのC、HおよびOの質量の保存のための一体型システムであって、保存された物質が再利用されたものであり、食糧または燃料であり、生成される燃料に関して柔軟性(flexible)である一体型システム。
【0017】
限られた環境内で、エネルギー以外の環境との相互作用なしでのC、HおよびOの質量の保存のための一体型システムであって、保存された物質が再利用されたものであり、食糧または燃料であり、生成される燃料に関して柔軟性であり、燃料が多数の用途を有する一体型システム。
【0018】
限られた環境内で、エネルギー以外の環境との相互作用なしでのC、HおよびOの質量の保存のための一体型システムであって、保存された物質が再利用されたものであり、食糧または燃料であり、生成される燃料に関して柔軟性であり、燃料が多数の用途、例えば、燃料電池燃料、ロケット燃料および/または食糧としての用途を有する一体型システム。
【0019】
限られた環境内で、エネルギー以外の環境との相互作用なしでのC、HおよびOの質量の保存のための一体型システムであって、保存された物質が再利用されたものであり、食糧または燃料である、および/または生成される燃料に関して柔軟性である、および/または燃料が多数の用途を有する、および/または燃料加工処理が改質装置を含む、一体型システム。
【0020】
限られた環境内で、エネルギー以外の環境との相互作用なしでのC、HおよびOの質量の保存のための一体型システムであって、保存された物質が再利用されたものであり、食糧または燃料である、および/または生成される燃料に関して柔軟性である、および/または燃料が多数の用途を有する、および/または燃料電池が、固体電解質型燃料電池、PEM系H2/酸素燃料電池、一般的な改質装置および/またはMicrotechTM改質装置の1種類以上である一体型システム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(発明および最良の形態の詳細な説明)
本発明は、人間による月および火星の探査、限られたまたは隔離された場所内での工業的作業(例えば、採鉱など)、汚れた空気環境内での公共サービス(例えば、建造物および森林の消火活動など)、ならびに救助における使用のための可能性、および水中活動、例えば、潜水型救助舟艇などにおける使用のための可能性を提供する3つの技術の特異な一体化を提供する。第1の技術である光分解誘導型電気化学的(光分解誘導型Electro−Chemistry)(PDEC)技術は、閉環境内、例えば、限られた作業空間、例えば、宇宙船、月および火星の施設および移動手段、潜水艦、水中救助舟艇ならびに消火活動および救助、採鉱事故のための個人用呼吸デバイス、水中での個人用呼吸デバイス、ロボット型航空機などにおいて、燃料電池、ロケット推進のための酸素(O2)再生、または呼吸雰囲気の維持および二酸化炭素(CO2)の管理を必要とする任意の適用用途に対する有望性を示す。燃料電池技術と組み合わせたPDEC技術は、特に、限られた環境、広範な適用用途、例えば、ロボット型航空機、宇宙服、宇宙船、潜水艦、航空機、採鉱環境、戦場用の車両のための小型エネルギーシステムおよび緊急事態の対応者のための携帯用呼吸システムなどのための次の生命維持システム作製の基盤となり得る。PDECには、燃料槽の少なくとも(a least)一部または大きさおよび燃料補給する必要性を削減するために光分解的動力供給型燃料再生が使用され、それにより、長期間にわたって評価した場合、システム出力密度において相当な増大が達成されるか、または小型もしくは軽量デバイスが得られる。
【0022】
一体型小型電源システムの第2の技術は、燃料電池を伴う。適用可能な燃料電池としては、<300℃で作動させるもの、例えば、Polymer Electrolyte Membranes(PEM)燃料電池を使用するもの、および高温固体電解質型燃料電池(SOFC)などが挙げられる。かかる燃料電池は、両面上が触媒、最も好ましくはPt触媒でコートされたPEM材料からなるものである。固体電解質型燃料電池積層体、膜・電極一体構造(MEA)、セパレータ、触媒およびイオウ制御体(control)が有用である。
【0023】
本発明の第3の主要な構成要素は、1つ以上の改質装置、好ましくは、広範なC/HまたはC/H/O含有燃料を燃料電池用またはロケット燃料に使用される燃料流に加工処理し得る小型のマイクロチャンネル改質装置を含む。
【0024】
一例として、最新式の2.5kWe PEM燃料電池補助電源ユニット(APU)パッケージユニットは、米国陸軍ブラッドリー戦闘車(BFV)のために開発された。BFV APUは、純粋な水素を燃料電池に送るように改質された合成ディーゼルで走行する。この改質装置には、マイクロチャンネル技術が使用され、APUの質量および容積の劇的な低減が達成されている。
【0025】
C、H、Oの再利用、燃料改質装置、および燃料電池の一体型ユニットの稼動は、月または火星の着陸および表面システムハードウエア建造物、において重要な役割を果たし、火星または月面に高価なロケットを用いて地球から宇宙空間内に輸送されなければならない貴重なC、HおよびO資源の効率的な使用を提供し得る。また、適正な一体化により、この技術の組合せによって、電力および生命維持のための相乗的で超効率的な建造物が創出されることが見出され、これは、例えば、月面基地ならびに多くの他の限られたおよび/または遠隔環境に対してロジスティックス的再供給の必要性を大きく低下させる。この適用用途は、かかる建造物の実施形態を示す。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
月面建造物の材料およびエネルギー要件
図1は、月面、火星表面または惑星間宇宙船の居住環境およびこれらまたは他の適用用途、例えば、潜水艦、航空機、地下採鉱などに有用と思われる補給基地の一実施形態の模式図を示す。一例として、月または火星の表面に適用された場合、重要な特徴は、主要居住環境内での生命維持および可動式デバイス(例えば、地球輸送への表面の一部としての軌道に対する表面)の支持である。地球から月面への輸送の中心的な要件は、科学的なサポートシステムに加えて、特別な形態での不可欠なエネルギー(乗組員のための食糧および水、乗組員のための酸素ならびに表面および軌道輸送のための特殊化された燃料)である。エネルギーは、月面上では日光の形態で利用可能である。本明細書に開示したPDEC/燃料電池の実施形態の目的の1つは、輸送された特別な形態のエネルギーを、少なくとも一部、現場エネルギーで置き換えること、および暗期間中での使用のためのエネルギーの効率的な貯蔵を提供することである。後述するように、PDECシステムにより、炭素含有分子をより高エネルギーレベルに効率的に再構成すること;例えば、二酸化炭素を単純な炭化水素、例えば、メタノール、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、エタノールなどに変換することが可能になる(表1)。マイクロ技術化学的加工処理技術の進歩によって可能になったさらなる特殊化された化学合成により、現位置での燃料の加工処理がさらに増強され得る。したがって、PDECシステムは、主要居住環境内の大気清浄化と、特殊化されたエネルギー要件(例えば、燃料電池に動力供給される表面輸送)との間のブリッジとみなされ得る。また、PDECシステムは、主要居住環境に日が当たらない場合、月の日中のその部分の間、燃料電池発電装置における使用のための太陽光エネルギーを保存するための手段をもたらす。PDECシステムはまた、より高いエネルギー密度を有するものであり得るさらなる燃料品質向上(例えば、灯油様燃料に)のための第1段階の投入が行なわれ、それにより、改質装置を備えた燃料電池と組み合わせると、より良好な安全性、より長期のミッション、およびよりコンパクトな貯蔵が提供され得る。
【0027】
図1に示すように、搭載可動式PDECシステムは、燃料電池(直接メタノール燃料電池または改質装置系)からの材料流出液を再捕捉し、これを、さらなる加工処理のために基地居住環境(ここには、主要エネルギー源が存在する)に戻すものであり得る。これによって、燃料電池からの電力(より高エネルギー含量燃料で事前に保存しておいたエネルギー)を用いて機内大気清浄化が提供されることにより、ミッションの長さがさらに増大され得る。軌道ロケットからの材料は失われ、地球から再供給されなければならない。しかしながら、PDECシステムにより、表面に物質を最も特殊化された有用な形態(例えば、食糧)(これは、続いて有用な燃料に再加工処理される)でもたらすことに焦点を当てた再供給が可能になる。
【0028】
PDEC系閉循環型(closed loop)生命維持システムの説明
これまでに開発されたPDEC技術は、宇宙飛行システムに伴う質量、容積および消費電力の設計の制約を満足するものであり得る。
【0029】
典型的なフローセルを図2Aに示す。本発明のPDEC技術は、光エネルギーを用いて酸素と電気エネルギーを同時に生成するとともに、CO2および水を呼吸雰囲気から除去するという、緑色植物内で起こる光合成プロセスを模倣するものである。該システムは、宇宙飛行士による最大の予測CO2生成速度50mg/秒に適応し、呼吸ガス維持サイクルにおける物質収支を潜在的に閉鎖するような大きさであり得る。
【0030】
図2Aは、本発明の光分解セル16の一実施形態のフロースルー型実施形態の一例を示す。フロースルー型セル実施形態では、光分解セル16の以下の主な構成要素、すなわち、真空蒸着Ti金属36の導電性コーティング、接着性TiO2(アナタース型)32のコーティング、任意選択のMnO2微粒子層34が組み立てられたものである。UVレーザー光20は、反応が開始されるように透明なガラスまたは石英基材30上に示した。
【0031】
これに関して、図2Aの光分解セル16は、紫外線レーザー光などの光源20からの光子21の形態の光エネルギーの侵入のための透明な窓30または導波管を含む。ガラススライドの一方の側面は、アノード導体層36、例えば、チタン(Ti)金属膜などである。アノード導体層36には、アナターゼ(TiO2)などの光活性化触媒32の層が接着されている。任意選択の触媒層34(例えば、二酸化マンガンなど)は、光活性化触媒層32に隣接している。光分解セル16は、シリコーンガスケットまたはスペーサー40とアクリル製ハウジング42の1つ以上の層を含む。一対のアノード液44(イン/アウト)が、光活性化触媒層32または任意選択の触媒層34に連結されており、光分解セル16内に延在し、透明な窓30から離れている。光分解セル16は、DuPont製のNAFION(登録商標)膜などのカチオン交換部材46をさらに含む。一対のカソード液48(イン/アウト)は、カチオン交換部材46に連結されており、光分解セル16内に外側に延在し、一般的に透明な窓30から離れている。光分解セル16は、カチオン交換部材46に隣接するカソード層38(例えば、Ptホイルなど)をさらに含む。本発明のこの実施形態の動作および使用を、より詳しく以下に記載する。
【0032】
図2Bは、宇宙服用の閉循環型呼吸システムの実施形態を示す。宇宙服適用用途では、該システムには小型の携帯用レーザー光源が使用され得、これには電力のみが必要とされ得る。したがって、宇宙服システムは、機能するために周囲光を必要としない。しかしながら、宇宙服、宇宙船、ローバー、居住環境モジュールなどは、周囲光をエネルギー源として使用するように構成されることがあり得る。好ましいシステムでは収着キャニスターが使用されないため、CO2は外部環境に排出されず、資源が保存される。該システムは、1)宇宙服、気密ローバーならびに月および火星表面での居住環境モジュール、2)軌道周回および宇宙空間内移動手段、ならびに3)月または火星着陸機に適用可能と考えられる。該システムはまた、乗組員探査用移動手段(Crew Exploration Vehicle)(CEV)のバックアップシステムとしての大きな可能性を有する。
【0033】
閉環境内、例えば、宇宙服、宇宙船、月面ローバーまたは月面居住環境モジュールなどの呼吸雰囲気は、酸素(O2)、水(H2O)、CO2および不活性ガスのブレンドからなるものであり得、その正確な比および厳密な質量は、その閉環境内の大気圧の関数である。閉環境内に放出される呼吸雰囲気は、CO2が多くてO2が少ないが、呼吸雰囲気再生システムに循環されて、CO2および水蒸気が捕捉され、これらがO2および不活性ガス構成要素から分離される。同時に、O2が生成され、呼吸雰囲気内に再導入される。該システムの産出物はリフレッシュされた呼吸雰囲気であり、これは、ガス貯蔵庫に送られ、次いで、必要に応じて放出され得る。
【0034】
充分な規模の呼吸雰囲気再生システムは、CO2の代謝的生成速度に等しいヘルメットからのCO2除去速度(平均25mg/秒、最低8mg/秒および最大50mg/秒である)が達成される大きさであり得る。充分に開発されたシステムは、50ワット未満の電力を消費することを目標とするものであり得、現在宇宙服システムで想定されている8時間の要件を充分超える長期間作動し得るものであり得る。
【0035】
呼吸雰囲気再生の効率的な方法を提供することに加え、該システムにより産出される流出液は、再使用のために捕捉され得る。呼吸雰囲気から分離されたCO2およびH2Oは、酸素およびアルコールに化学的に変換され得、これらは、PEM燃料電池の供給原料として使用され得る。メタノールおよびエタノールは、典型的であり、これらの燃料が月および火星の表面上で燃料電池の供給原料およびロケット用燃料として多数の用途の可能性を有するため、空気再生システムから産出されることが多い。この炭素再使用の特徴により、貴重な資源の真の閉循環型再利用が可能になり、宇宙空間探査に必要なロジスティックスのコストおよび複雑性が大きく低減される。
【0036】
PDEC系システムは、人間の宇宙空間探査をさらに可能にし、任意の既存の技術または現在利用可能なシステムの能力を大きく上回る。該システムは、絶えず再供給する必要性のため、寿命が制限され、主なロジスティックスの問題をもたらすLiOHキャニスターまたは他の吸収体の必要なく、呼吸可能な雰囲気を連続的に再生することが期待される。該システムによってCO2ガスを外部環境に排出する必要性が排除されるため、外部雰囲気の圧力および組成に伴う任意の要件が回避される。
【0037】
燃料電池システムの説明
燃料電池は、燃料の酸化由来の放出されたエネルギーを直流電力に直接変換する本質的に電気化学的な酸化デバイスである。燃料電池の発電システムは、燃料電池積層体を、適正にサポートコントロールおよびハードウエア(例えば、発電管理サブシステム)とともに含む。さまざまな考えられ得るシステムが存在するが、すべて、燃料(これは、実際に燃料電池に至る)は、燃料電池の型に適切でなければならないということが共通する。PEMでは、燃料は、水素高含有ガス(好ましくは純粋な水素)でなければならならず、微量の水分が存在するが、COは燃料電池内のアノード触媒を汚染するため、COは含まれてはならない(該汚染は、一部のある条件下では一部可逆的である)。直接メタノール燃料電池ではクリーンなメタノール/水混合物が典型的に使用される。両者ともに、通常空気または有意な酸素含量を有するなんらかの混合ガス(例えば、月面居住環境内の呼吸可能な雰囲気)である酸化体を必要とする。純粋な酸素燃料電池は可能であるが、PEMおよび直接メタノール燃料電池は、電解質膜の早期分解を回避するため、通常、混合ガスにおいて作動される。
【0038】
PEM燃料電池は、数ワットから数百キロワットまで拡張可能であり、最も一般的な市販のサイズは、通常、一般的な目的および補助電源で3〜15kW範囲、表面移動手段推進で50〜250kW範囲である。市販のPEM燃料電池システムの多くは、ボンベ入り水素または他の貯蔵水素供給源において作動される。PEM燃料電池をより複雑な燃料において作動させるためには、複雑な燃料を水素と穏和な希釈剤に変換する燃料改質装置が必要とされる。直接メタノール燃料電池は、1kW未満、通常200W未満が必要とされる適用用途に使用され、この場合、改質装置およびそのサポートハードウエアの間接費が望ましくない。直接メタノール燃料電池は、典型的には、PEM燃料電池よりも低い出力密度、短い寿命を有するが、キロワット基準でより高価である。それにもかかわらず、これは、個人用の電源および器具類に有用な低電力範囲において魅力的である。
【0039】
月面建造物におけるPDEC系閉循環型生命維持システムとPEM燃料電池システムの一体化
図3は、PDECシステムが、どのようにしてPEMおよび直接メタノール燃料電池システムと組み合わされて、月面居住環境および探査適用用途における生命維持および電力のための超効率的な一体型システムが創製され得るかの概略的な全体の略図である。前述のように、PDECシステムは、単純な炭化水素分子(通常、メタノールまたはホルムアルデヒド)内にエネルギーを保存するための効率的な手段を提供する。このような分子は、液状形態で容易に保存され、必要な場合は、より複雑な燃料にさらに加工処理され得る。
【0040】
図3に示す実施形態では、燃料電池によってもたらされる電力にさまざまな適用用途が存在することが想定される。直接メタノール燃料電池は、典型的には、屋外居住環境での周遊のための個人用の電源ならびに基地居住環境内外での器具類用の低電力を提供する。PEM燃料電池は、典型的には、表面移動手段、高電力器具類、および居住環境内の臨界発電システム。典型的には、居住環境内では、共通の燃料を使用する多数の燃料電池が使用される。安全性および利便性の見地から、共通の燃料は、好ましくは、高い体積および質量エネルギー密度を有し、取扱いが安全なもの(無毒性、不揮発性、低圧力 封入)であり得る。したがって、概略では、ホルムアルデヒド(最も都合のよいPDEC生成物)を、より複雑な燃料、例えば、合成灯油(主に、パラフィン系炭化水素)に変換するための後PDEC加工処理が想定される。エネルギー密度が高い燃料ほど、長期のミッションおよび長い暗期間に好ましい。月の夜間は、ほぼ14日間程度の長さであり、電力の必要性は、日中よりも夜間の方が高いことがあり得るため、相当な量の燃料を、月の日中に保存しなければならない。本発明の種々の態様により、月および特に火星への長期有人ミッション中でのC、HおよびOの再使用;限られた空間のための呼吸空気の再生;酸素供給、CO2除去、RH制御、不純物の制御;水分の回収および精製;燃料電池燃料再生;乗組員あたりの食糧物質の低減;ならびに断続的な操作が行なわれ得、軽量および小型設計であり得る物質再利用システムが提供される。本発明は、これを、光分解誘導型電気化学(PDEC)に基づく再生式生命維持システムによって提供する。PDECシステムにより、消費された呼吸空気、水分および燃料電池燃料からO、HおよびCを再利用するための一体型システムが提供される。燃料の態様に加え、PDECシステムにより、多数の用途、例えば、純粋な酸素として、またはなんらかの不活性ガス(これは、典型的には、燃料電池および/または燃料改質装置システムからの流出液中に見られ得る)での希釈後のいずれかで燃料電池における使用のための酸素が分離される。
【0041】
図3は、燃料(暗に、酸素)が、表面と軌道周回プラットフォーム間の輸送または地球からの再供給船のロケットエンジンにおいて使用され得ることを示す。この状況では、ロケット燃料にメタノールが使用され得るが、燃料を灯油または同様の燃料に品質向上するために充分なエネルギーが日光源から利用可能な場合は、ロケットの性能および運搬能力が向上され得る。
【0042】
次に、図4を参照すると、この図は、典型的なPEM燃料電池の動作を示す。
【0043】
提案される物質およびエネルギー収支の基礎となる化学反応
以下のセクションは、一体型PDEC/燃料電池システムの基礎となる基本的な化学反応の概観を示す。
【0044】
H2Oの捕捉および再利用ならびに酸素の生成を伴うCO2の固定のPDEC系の実施形態:
目的は、吐き出されたCO2およびH2OからOおよびHを捕捉すること、Cに対してOおよびHの損失を最小限に抑えること、または再使用可能な形態のOおよび/またはH含有Cを形成することである。
【0045】
したがって、PDECセルを用いて得られるCO2の4−電子還元一般化(generalized)酸素含有炭化水素生成物、すなわち、
【0046】
【化1】
(式中、hνは光分解エネルギー(光子)を表す)
が提案される。この反応は、
【0047】
【化2】
に単純化され得る。
【0048】
ここで、CO2およびH2Oは燃料燃焼、例えば燃料電池デバイスから、または人間、動物、植物もしくは乗組員によって使用されている限られた空間からの呼吸空気から生じたものである。例えば、かかる雰囲気は、限られたシステム内、例えば、火星着陸機もしくは火星ローバー移動手段内の宇宙飛行士、または鉱山事故の際の炭鉱の閉鎖区画内の鉱山労働者、ユニフォームを着て燃えている建造物内に居る消防士から吐き出されたガス、廃井救助由来のガスなどから利用可能である。
燃料電池のCO2およびH2O生成:
次に、図5を参照すると、この図は、典型的な直接メタノール燃料電池の模式図である。また、CO2およびH2Oガスは、メタノールとO2、または上記のC(H2O)X一般化酸素含有炭化水素燃料とO2を用いて作動される燃料電池の以下のような排気ガスである。
【0049】
メタノール燃料電池から生成:
【0050】
【化3】
本発明の一実施形態のPDECに関する典型的な一般的燃料電池の説明:
【0051】
【化4】
ベンチマーク技術:
呼吸空気維持:
限られた空間内での呼吸ガスからの現行のCO2除去ベースライン技術では、LiOH消耗用収着媒が、以下のようにして利用される:
【0052】
【化5】
したがって、CO2が呼吸ガスと合わされ、酸素および不活性ガス(1種類または複数種)が回収および再利用される場合は、呼吸および燃料電池によって生成されるCO2とほぼ同程度多くの水酸化リチウムが宇宙空間内に運ばれる必要がある。熱焼成では、多くの場合、金属イオンの炭酸塩からCO2が遊離し、再利用のために金属酸化物が再生されるが、炭酸リチウムの場合は、760トールでの焼成温度が約1310℃であり、ほとんどの炉材料にとってひどく高く、地球上であっても操作が困難である。したがって、月および火星ミッションのための限られた空間内の呼吸雰囲気に対して、このような長期間の旅行には、莫大なLiOHキャニスターの供給が必要とされるため、代替的なCO2除去技術に関心が存在する。低い地球軌道に対する$35k/lbで、このコストはひどく高額と思われる。さらに、重大な問題において、LiOH収着技術に関与するC、Oおよび一部のH2Oは、再使用から失われる。
H2/O2燃料電池:
H2/O2燃料電池の化学反応は、例えば、PEM系セルをPt触媒とともに用い、温条件でのこれらのガス組合せを伴い、反応
【0053】
【化6】
に従って水蒸気と電力が放出される。
【0054】
食糧からの呼吸:
ある種の適用用途、例えば、惑星間旅行またはステルス環境における軍事用潜水艦船内などでは、C、HおよびOサイクルに食糧呼吸を含めることも必要である。したがって、乗組員の食糧消費および賞味期限切れにより生じるCO2およびH2Oを考慮することは、これらの主要ガスに関して呼吸雰囲気維持における物質収支を閉鎖するために必要とされる。炭水化物エネルギー食糧を表す一般表示{C(H2O)}Zを用いた食糧呼吸は、
【0055】
【化7】
で示される。
【0056】
NASAミッションから測定される実際の呼吸係数は、約0.87モル生成CO2/モル消費O2、すなわち、z=1.0に対してw=0.87である(代謝的加工処理(生物学的固定)、ならびに液状および固形廃棄物形成(生物学的異化作用的加工処理)による)ことに注意されたい。
【0057】
まとめ
本出願書類は、地球と月間の輸送負荷を低減するためのPDEC光電解システムと燃料電池との組合せを開示する。月環境への流出液を最小限にするという環境上の利益、あるいは呼吸に加えて他の廃棄物流(尿など)を使用してエネルギーを提供すること、および/またはエネルギー貯蔵や輸送のために原子(H、CおよびO)を使用することは議論しない。また、生成される燃料の詳細特性またはかかるアプローチのエネルギー効率における全体調査も、ここでは評価しなかった。月面へのエネルギー輸送のコストが高いため、輸送負荷を低減するために利用可能な現場エネルギー源(太陽光エネルギー)の使用は、特にミッション期間が延長される場合は、明らかに非常に望ましい。クリーンで効率的かつ静穏な燃料電池システムは、電気エネルギー生成に理想的である。
【0058】
PDEC技術は、潜在的に、何が月面上での原子収支と考えられ得るかを可能にするための鍵となる。すなわち、いったん居住環境が最初に供給されたら、必要とされるエネルギーの保存および輸送は、炭素および水素原子に少なくとも一部依存することが可能であり、したがって、再供給の必要性が低減される。もちろん、ロケット推進における物質損失ならびに漏れおよびパージによる不可避的損失がある。可能な程度まで、再供給は、高価値の形状因子(おそらく食糧)で置換原子をもたらすものであるのがよい。
燃料電池燃料再生のためのPDECセル設計の説明(燃料電池燃料再生)
ある種の金属酸化物(MO)は、特定のエネルギー範囲の光子を高いエネルギー励起子に効率的に変換し、MOが半導体となる場合、すなわち、
【0059】
【化8】
(式中、hν=光/光子エネルギー、e−scb=金属酸化物半伝導帯中の電子)
を介して有用な電荷分離をもたらすことが知られている。この電荷分離は、燃料電池燃料再生プロセスを提供するためのエネルギー変換において重要な工程である。半伝導帯は、このような場合、低エネルギーの長期空の分子軌道の組合せに基づく半導体材料の充分確立された電子構造を表す。したがって、基本的な光分解プロセスは、PDEC技術に対して漸進的とみなされる。良好な量子効率および耐久性のため、選択される金属酸化物は、光透明な表面上に構成された導電性表面(e−scbの除去を可能にする)上に堆積されたTiO2(アナタース型)、ZnO、WO3、または他の堅固なセラミック金属酸化物材料のミクロン薄膜であり得る。光学および電子工学の分野で最近開発された(および開発され続けている)量子収率および吸収スペクトルのバンド幅の増大が利用され得る。金属酸化物材料の新規な発展的改質を用いた多くの改良が可能である。微量金属イオンなどのドーパント添加剤を金属酸化物マトリックスに添加することで、エネルギー吸収の波長を広げ(より広範囲にわたってバンドギャップエネルギーを広げ)、太陽発光スペクトルのより完全な使用が可能となり得る、および/または電荷分離{Φ(e−scb)}の量子効率が増大され得る。
【0060】
反応(8)において、記号MO(h+)は、光子吸収時に電子を失い{e−scbが半伝導帯(下記参照)を介して除かれている場合、励起子から形成される}、したがって、電子欠損およびエネルギーのある状態の金属酸化物の配置を表す。この配置は、「ホール」と呼ばれる。この電荷分離は、有用な多様な形態での光分解エネルギーの効率的な捕捉に不可欠であり、以下のようにして起こると考えられる。充分なエネルギーによって光の量子が吸収されると、基底状態の電子が励起された電子状態になる(より正確には、分子の基底状態がエネルギーを吸収し、それにより励起された電子状態となるが、電子の配置を可視化することは、結晶のエネルギー状態よりもずっと容易である)。記載の金属酸化物候補では、この電子は、酸化物イオン上の非結合電子であり、それ以外の場合では、金属イオンに結晶格子の一部として結合されている。ドーパントおよび/または色素増感剤に補助されていない場合は、この電子遷移は、通常、電磁スペクトルのほぼ350〜500nm領域に対応する。半伝導帯に励起されたMO半導体のe−(scb)は、それにより、金属酸化物の結晶格子全体に分布された状態になり、したがって、もはや供給源の酸化物イオンに局在した状態でなくなる。MO(h+)部位から離れる分布によって再結合が抑制される。ドーパントおよび/または色素により。この波長域は約750nmまで広がり、潜在的に7〜10%の量子効率である。
【0061】
MO(h+)によって表されるエネルギーは、この活発に開発されている応用光化学分野の重要な焦点であり、アナタース型TiO2粉末のUV照射による地下水中の環境的汚染物質の酸化的破壊に使用されている。しかしながら、本発明は、有用な生成物の形成を誘導するためにMO(h+)およびe−scbのエネルギーを使用することを含む。小型エネルギーデバイスの目的のため、これらは、後述のアプローチを用いるFRFRおよび圧縮酸素であるのがよい。
【0062】
燃料電池燃料再生の第1工程は、酸素および還元剤の形成である。本発明は、有用な太陽エネルギーを動力とする電気有機化学的還元を提供する。酸化燃料は、有機化合物またはCO2ガスであり得る。以下の反応(1)により、O2生成、CO2捕捉、CO2化学的還元ならびに有機および無機化学的還元が、一般に推測され得る。また、この1つの光触媒型システム(PDEC)から一部電気の発生が考えられる。この概念は、基本的には、上記のUV照射チタニアでの汚染水処理適用用途と反対であるが、予備結果は非常に有望である。
【0063】
反応(9)は、酸素生成反応を示す。
【0064】
【化9】
この反応では、基底状態MOが再形成され、反応(8)による別の光子の吸収の準備ができた状態である。したがって、反応(8)を(9)と組み合わせることにより、金属酸化物は、水からの直接酸素生成の光触媒であることは明白である(反応10)。
【0065】
【化10】
反応(10)により、まず電気を発生させ、次いで、この電気を用いて水を電解処理する必要なく、酸素の形成が達成される。したがって、PDECは、従来型の光電装置(これは、最初に電気を生成させる)とは異なり、高効率で生成点(point−of−generation)化学的分離および加圧により光分解エネルギーを使用するための新たなアプローチを提供する。したがって、PDECは、PS−IIの場合のように、光子吸収時に、有用な生成物が直接形成されるという点で、新規であると思われる。すなわち、酸素、H+イオンおよび電子/電流が直接生成され、太陽光エネルギー利用において、少なくとも1つの工程が省かれる。このアプローチにより、光分解/化学的変換の形態の高収量エネルギー変換に影響する能力が増強され、1つ以上の化学的変換が一度に提供されることによってシステム複雑性が単純化される。
【0066】
この新たな独自の(proprietary)光分解プロセスを、光分解誘導型電気化学(PDEC)と称し、これは、反応(10)によって表される光分解的動力供給型酸化−還元化学反応で示される。光分解性の水の分離とは異なり、酸素を生成させず、H2と混合するので、爆発性の混合物の生成が回避される。
【0067】
光触媒性能の機構および将来的な開発の可能性の説明
上記の触媒のうち、TiO2(アナタース型)触媒膜は、任意選択で、活性酸素不均化ならびにガス気泡の形成および放出を介して高い酸素ガス形成速度を促進するために二酸化マンガンなどの第2の金属触媒でコートされており、1試験(one tested)系であり得、ここでは酸素ガス生成技術アプローチを例示するために使用され得る。
【0068】
TiO2触媒が使用される場合、光子−チタニア相互作用は、最終的な酸素および再生型燃料電池燃料の形成における最初の工程である。表面が水和/ヒドロキシル化された微粒子TiO2(アナタース型)固体(Ti(IV)O2(a)−OH2またはTi(IV)O2(a)−OH)は、波長<390nm(>3.2eV)で効率的なUV光(hν)吸収体であることが知られている。このエネルギーに吸収された光子により、急速に、不可欠な「活性酸素」形成(上記でいうホール、h+)が、収着水およびヒドロキシル基から高収率でもたらされる光子吸収における初期工程は、以下:
【0069】
【化11】
(式中、{Ti(III)−・0−}*は、結晶内の1つの部位で光子が吸収されると即座にもたらされる電子の励起状態を表す)
に示される、対称性を許容する(非常に好都合である)配位子−金属間電荷移動反応(CTM←L)である。触媒膜の厚さは、この様式で約100%の光吸収が充分保証されるように選択される。ほとんどの材料の場合、かかる励起状態により、バイブロニック共役によって即座にそのエネルギーが失われ、それにより、発色団がその基底状態に戻り、周囲がほんのわずかに加温される。しかしながら、かかる配位子→金属遷移が起こる半導体材料では、励起された電子は金属イオン上に局在しない(先に示した反応(11)TiIIIであるが、多くの原子に非局在する分子軌道(伝導帯として知られる、またはより正確には「半伝導帯」すなわちescb−)。このような場合の基底状態および励起状態に対応する分子のエネルギー状態の差は、「バンドギャップ」エネルギーと称される。アナタース型TiO2のバンドギャップエネルギーは3.2eVであり、389nmの光子エネルギーに相当する。より高エネルギーの光子も、少なくとも350〜389nmの明白に平滑な吸収バンドを与えると、多くの振動状態が関与する主要な電子状態に重なるため、やはり容易に吸収される。この吸収バンドを拡張し、地球の雰囲気から伝達される<750nmの波長を有する本質的にすべての太陽光スペクトルを含めるために、色素増感剤およびドーパントが添加され得る。
【0070】
重要なことは、まさに上記のようにして光子が吸収されると、電子をTiO2の半伝導帯に励起する正味の効果は、光分解により引き起こされる電荷分離、すなわち、直接的化学的電荷またはエネルギー変換と等価である。電荷分離は、有用な仕事がなされ得る物質の高エネルギー状態を表す。提案した研究において、本発明者らは、この電荷分離を用いて有用な化学変化、すなわち、太陽光エネルギーを用いて燃料の再生およびO2オキシダントの生成を同時に行なうことを計画する。これにより、ロボット型ユニットが非常に長期間のミッション(数年)を行なうのを可能にする小型の長寿命発電システムが提供され得、特定の電力増強により(また、小型燃料槽のみに対する要件により)、必要とされる非常に高い年率出力密度が達成され得る。これがどのようにして提供されるかの基本的な科学技術を次に記載する。まず、オキシダント(O2)生成アプローチについて、次いで燃料再生について記載する。PDEC技術により、光分解により電圧印加される加工処理を用いて、酸素と燃料電池燃料再生が同時に提供され得ることを念頭においておくことが重要である。酸素生成操作中に水から放出される電子および水素イオンは、電気化学反応によってカソードで酸化された有機化合物(燃料電池燃料)の酸化状態を還元するために使用され得る。漸進的技術アプローチを用いて長寿命の燃料電池燃料再生能力が得られ得、したがって、最終目的の発電システムを得るリスクが相当低減されるとともに、相当な設計の柔軟性が付加される。PDEC燃料電池燃料再生プロセスのこれらおよび他の特徴は、本記載からあきらかとなろう。
【0071】
純粋な加圧酸素(ガス)の光分解的生成の基礎となる化学反応
以下の式は、基礎となる化学的反応を要約するものであり、相対的に解釈すると、光分解エネルギー変換を表す。このプロセスにより、酸素、O2、H+イオンおよび電力/電子への水の変換がもたらされる。
【0072】
電荷分離および活性酸素の形成をもたらす光分解
【0073】
【化12】
ここで、AOは、固相の活性形態の酸素、例えば、ペルオキソ種「{TiO2(O2 =)2+}(バルク)」を表し、「バルク」は、光触媒膜のバルク固相を表す。この引用は、光子が吸収された(すなわち、「ホール」もしくはh+)TiO2膜内の一過的な光活性化触媒部位、または「ホール」が表面以外で電子交換を介して移動(すなわち、励起子移動)した固体内の任意の配置の代用式を示す。「scb」は、光子吸収時に生成した電子が、チタニア結晶(または試験した他の金属酸化物、例えば、亜鉛酸塩もしくはタングステン酸塩など(ドーパントおよび/または色素増感剤を含むもの、および含まないもの))の半伝導帯内にエネルギー移動されることを示す。このプロセスの量子収率はe−(scb)の離脱に強く依存し、そのため、AO(または励起子)は元の単純な酸化物イオンには再変換され得ず、正味の(net)反応はもたらされない。以下に示すように、AO/励起子は、従来の励起子の部位間交換によって、チタニアが燃料電池または流動している燃料電池電解質由来の湿分飽和ガスと接触している光触媒表面(すなわち、{TiO2−OH2}(surf)などの種が存在する)にいったん移動すると、寿命が非常に短い。また、この移動工程は、光子吸収バルクチタニア膜部位({TiO2}(バルク))を自然に改質し、以下のように、別の光子の吸収の準備がなされる。
【0074】
膜表面への活性酸素の移動および吸着されたペルオキシ種の水和
【0075】
【化13】
酸素生成表面上に存在する水は、燃料電池電解質のバルク水相から供給され、通常、約55モルである。したがって、水の利用可能性が、非常に高い明快な(illuminating)流束(flux)値まで、有意な拡散境界層を表すとは期待されない。かかる限界値は、PDECモジュールの比出力密度能力と組み合わせて測定され得る。理論的には、非常に高い電灯強度および最大酸素流束値でのみ、水拡散速度の制約が予測され得、提案する技術では、制限は予測され得ない。表面で、いったん生成された、酸素はペルオキソ不均化によって自発的に、以下のとおりに生成され得る。
【0076】
不均化(disproprtionation)
【0077】
【化14】
水和された表面チタニア種が再生されると同時に、水が容易に利用可能なことから、酸素が形成され、これは、この時点で、容易に次のO2生成サイクルを受ける。次の工程は、任意選択であり、ガスとしての酸素の放出または酸素形態での脱離(酸化された燃料電池電解質)を伴う。O2の直接形成のこの能力は、低速ガス→ 酸素溶液物質輸送工程が、燃料電池ユニットに供される水性電解質に酸素添加するためにPDECを用いることによって回避され得るため、セルのプロセス(WBS 3.4)に相当価値があると思われることに注意されたい。この強化は、燃料電池によって利用される電解質内に酸素担体を含めることにより、さらに拡大され得る。全血液は、血液のヘモグロビンが水性電解質(この例では、血液)の酸素運搬能力(濃度)を水よりも30倍増大させる例えである。あるいはまた、生成される酸素は、後述のように、搭載貯蔵槽内に圧縮酸素ガスとして回収され得る。
【0078】
加圧酸素は、酸素濃度を、PDECセルの光アノード側のバルク電解質または水性酸素薄膜における酸素溶解度を超えて上昇させることにより得られ、該セルには酸素が、搭載燃料電池および/または他の推進システムによるシステム要件に適合するように事前に選択した排出口圧力解放弁によって調節される圧力まで蓄積される。したがって、酸素生成速度は、照度およびハードウエア設計容量、量子収率および全体的な反応工程速度(反応12、13、14)によって調節される。プロセスの最適化は望ましい。次いで、電解質における酸素溶解度よりも高い割合で酸素を生成させることにより形成される加圧酸素は、PDECセルへの水の流速を該セルの酸素生成速度と比べて遅くすることによって得られる。
【0079】
次いで、この酸素は、燃料電池のカソード側のオキシダントとして利用可能である。酸素ガスには、凝縮物および生成ガスの相対湿度割合(%RH)の両方としての湿分含有の問題が生じ得ることに注意されたい。いくらかの湿分(湿度)含有は燃料電池に必要であることが予測される。しかしながら、酸素が従来の物理的/化学的(PC)バックアップ燃料電池(PCFC、例えば、H2/O2または他の燃料電池)に使用される場合、一部/完全な脱湿が提供され得る。本発明者らはまた、湿度制御および凝縮物の取り扱いが、既に充分確立された技術であることに注目し、したがって、本発明者らは、燃料電池燃料再生回路における水収支の取り扱いのために現行の技術が取り入れられることを期待する。
【0080】
他方で、酸素が加圧された形態で直接溶存酸素から生成されることは、さらなる改善である。この想定されるプロセスでは、酸素の加圧の程度「非凝縮可能ガス」は、1)PDECデバイスの外部ケーシングの設計強度、および2)反応10の逆反応、すなわち反応15の抑制に依存する。
【0081】
光触媒設計によって抑制される再結合反応
【0082】
【化15】
最初の状態では従来型の圧力槽の設計が必要とされ、該プログラムに問題が生じることは予測されない。しかしながら、第2の要件は、光触媒の設計に基本的なことであり、以下に示すように、量子収率の増大の進展の一部としてのプログラムを通してなされる光触媒製作技術の漸進的改善、酸素および燃料電池燃料再生の全体的な生産能力の漸進的改善、ならびにより広範な太陽光スペクトルの使用の達成の漸進的改善により対処され得る。
H+ イオン、電子の光分解的生成の基礎となる化学反応、および燃料電池燃料再生に適した電気化学的還元
このセクションでは、燃料電池燃料再生およびアノード液室と光カソード液室を隔てるための任意選択の膜に使用される水素イオンおよび電子の生成に関する他の関連情報を提供する。
【0083】
反応13からの水素イオンは、貴重であり、燃料電池燃料再生技術に対していくつかの選択肢を提供する。PDEC技術では、これらのイオンは、よく知られた「ホッピング」機構(プロトンが水分子から水分子に移動するのであって、個々のH+イオンがその距離を移動しなければならないのではない)によって、非常に急速に、拡散よりもずっと速く水相中に移動する。このようなH+イオンは、プロトン交換膜(PEM)、好ましくはNafion(登録商標)(技術は既に充分証明され、最適化されたもの)を通りぬけ、次いで、直接または間接的にカソード反応に関与し、燃料電池燃料が再生されるとともに、反応12で生成した電子はカソードに伝導される。副反応を最小限に抑えるため、照明は連続的ではなくパルス化され得る。照明のパルス化によってもたらされる遅延により、e−scbが一方向に離れて伝導され、溶存酸素が別の方向に離れて拡散されることが可能になる。また、照明のパルス化により、酸素(aq)およびe−scbの局所集団が非常に高くなり、その結果、両者間の反応が高速になることが抑制される。関与するパルス速度は極めて小さい(例えば、μ秒〜ミリ秒範囲)であり、そのため、酸素(aq)生成速度に対する影響はほとんどない(最小限の副反応15によってもたらされる増大のため。また、バイアス電圧がコーティング全体に存在し、幾何学的構成を考慮した場合、光分解により確立される電荷分離の収率の向上も可能である。また、酸素生成表面に存在するe−scbの量をさらに低減するために、小さなバイアス電圧が使用され得、それにより、副反応15が回避されることによって、より多くの溶存酸素が生成される。
【0084】
重要なことは、酸素生成のための化学的基材には、燃料電池電解質に由来する水が少量しか必要とされないこと、および/または凝縮物は、酸素需要の必要とされる物質流によって設定されることである。TiO2セラミックナノ微細孔内での酸素の形成により、燃料電池電解質生体材料の直接接触が妨げられ、それにより、酸素形成領域内の電解質のタンパク質含有および/または微生物含有が可能になる。また、おそらく、該設計により、かかる生体材料が、これまでの既存の燃料電池モジュールの首位に存在することが阻止され得る。照明領域は、ソリッドステートのみであり、水相と接触しないことに注意されたい。酸素生成表面上への汚染性の固体膜堆積を抑制するため、酸素生成表面の高い光沢表面平滑性を選択した。
【0085】
二酸化チタン薄膜の製作:
光活性構築物は、透明なガラスまたは石英基材から始まり、その上面に導電性膜、次いで、光触媒膜が堆積されたソリッドステート層状構造からなる。バッチおよびフロースルー型電気化学的セル構成要素およびデバイスの同様の構成を用いた。薄膜光触媒の製作方法論は、世代ごとに着実に改善されており、主として電子/ホール再結合を妨げることにより、量子効率を測定するための重要なパラメータと認識されている(図6A対6B)。
【0086】
次に、図6Aおよび6Bを参照する。この図は、Hasenbach Photosynthesis Laboratory Test CellsにおけるPDEC光触媒性能の説明図である。触媒製作技術の効果は、電子/酸素再結合がTiO2充填ゾル−ゲルに関する試験の暗サイクル中に観察される(図A)が、真空蒸着TiO2では微々たる量である(図B)場合に示される。したがって、エネルギー変換効率は、非常に均一な半導体膜を用いてPDEC光触媒が作製される場合、はるかに大きくなる。
【0087】
両方の膜の作製試験およびこれまで試験されたすべての場合で、暗参照試験またはバイアス電圧を負荷し、触媒には照明しなかった場合では、酸素生成および電流は観察されなかったことに注意されたい。1ボルトのバイアスを負荷してTiO2膜を分極させ、
集電板への電子移動を誘導した。かかる外部から負荷されるバイアスは、P/N接合による内部負荷バイアスおよび/または容易な反応性(熱力学的化学反応と反応速度論の観点による)の組合せのため、典型的には、充分技術設計された光触媒膜では使用されない。照明した場合、約1cm3の面積の触媒膜で数百マイクロアンペアの電流が観察されることに注意されたい。また、全電流フローは、もたらされるカソード反応の容易性に依存する。
【0088】
多くの光触媒膜は、ゾル−ゲルおよび真空アプローチの両方を用い、バッチおよびフローセルの両方で作製した。例えば、ガラス基材は、所望の波長で98%透過性を有する25mm×9mmプレートとした。薄い(<100nm)金属性(Ti)もしくは半導体(酸化インジウムスズ、ITO)導電性膜(1つもしくは複数)またはグリッドを、ガラス表面上に、従来型の真空スパッターコーティング手順を用いて配置した。光活性層は、スパッターコーティングによって堆積、または導電性膜の上面にゾル−ゲル加工処理によって形成のいずれかによる二酸化チタン(TiO2)の膜からなるものとした。
【0089】
光触媒を作製するためのゾル−ゲル法は、以下の手順からなるものとした。アナタース型TiO2粉末は、1gのアナタース型TiO2を80mLの1N HClおよび0.1%HF溶液中に1分間混合することにより、堆積前にHF酸処理して接着性を増強させた。得られたスラリーを2本の遠心管内に等しく分け、沈殿が得られるまで遠心分離した。酸をデカンテーションし、水と交換して粒子を再懸濁させた。試料を遠心分離し、液体をデカンテーションした。次いで、この水リンス処理を反復した。2回目の水リンス処理およびデカンテーション後、40mLのイソプロパノール(iPrOH)を添加し、粒子を再度、再懸濁した。酸化マンガン(IV)、MnO2 (粒径<5um、Aldrich Chemical Co、Milwaukee、WI)をアナターゼゾル−ゲル形成における任意選択の表面構成要素として使用してさらなる膜コーティングを行ない、過酸化物不均化速度を向上させた。
【0090】
ゾル−ゲル酸化物膜は、スピンコーティング技術を用いて作製した。この手順では、導電性層を含むガラススライドを真空チャック上に配置し、1000rpmで回転させた。TiO2コーティングでは、0.5gの酸処理材料を40mLのiPrOHに添加し、30分間混合した。次いで、0.050mLのH2Oおよび0.100mLの4価チタン(IV)(イソプロポキシド)(TTIP)、ゾル−ゲル粒子架橋試薬をこの溶液に添加した。30分間混合した後、溶液を回転している基材に総容量約12mLで滴下した。MnO2を含む構築物の場合は、9mLのTiO2スラリーの添加後、0.20gのMnO2を残りのスラリーに添加した。次いで、得られた溶液の正確に4mLを基材に、スピンコーティング条件で滴下した。この技術の特定の酸化増強変形例もまた調べ、その場合は、RuO2/PtドープTiO2(0.125g)を10mLのiPrOHに添加し、TiO2スラリーの代わりに添加した。アナターゼ粒子のゾルゲル結合剤として、上記のアナターゼスラリーを15分間混合した後、50uLの水および25uLのTTIPを添加し、さらに15分間混合すると、その間、ゾル−ゲル反応が起こった。
【0091】
次いで、この溶液を、スピニングコーティングにより総容量9mLで基材に滴下した。ゾル−ゲルコート試料はすべて、室温で一晩風乾し、次いで、予熱環状炉内に配置し、試験温度で45分間、1L/分の窒素気流下で加熱した。
【0092】
電灯光源
EFOS LiteユニットからのUVA光を、フィルターに通して365nmの光にした後、液体光導体を介して反応チャンバに指向させた。この波長の光出力は、光導体の出口点でTamarack Model 157TM手持ち型追跡可能較正光度計で測定すると、88.1mW/cm2であった。照明中の光触媒の加熱は、TiO2膜が効率的に365nmの光を吸収し、光の浪費をほとんどもたらさなかったため、最小限であった。
【0093】
高い電流密度の同時生成による酸素のバッチ式生成:
光触媒膜は、予備スクリーニングバッチ試験装置において作製および評価した。水からの酸素の光分解生成と関連するパラメータの試験は、液相セル内で、電子吸収体としてのpH1.9の第二鉄イオンの溶液中に浸漬した試験対象のTiO2材料のスラリーまたは堆積膜を用いて行なった。第二鉄イオンの使用により、試験を、電気的に隔離されたセルの設定環境内で行なうことが可能になり、このとき、第二鉄イオンは溶液中に低phで維持されている。第二鉄イオン(Fe3+aq)は、TiO2光触媒反応(反応15)で光分解により移動された電子(escb−)による化学的還元による光分解中、第一鉄イオン(Fe2+aq)に変換された後、Fe3+aq + escb− → Fe2+ aq)となる。Fe2+aqイオンは、酸性媒体中ではゆっくりと酸化するため、同時に生成される酸素の生成速度は、Clark Cellによって直接、形成される第一鉄イオンの速度として測定され得る。O2は、先に示した化学的反応によって生成される。この第二鉄/第一鉄変換反応は、再結合副反応に妨害されることなく、O2生成の量子収率を評価するのに有用である。次いで、これはまた、副反応を抑制することが意図された光触媒設計を評価するためのこの副反応の程度の目安となる。
【0094】
escb−は、第一鉄イオン形成により消費されるが、光触媒表面近傍では水濃度が非常に高い(55M)ため、TiO2内で、隣接する水分子と最小限の拡散制約で交換される。このO2への酸化は、液体の水の高い熱力学的安定性にもかかわらず、UV/VIS光子(これまでの試験のほとんどでは365nmの光子)のエネルギーレベルが高いために起こる。第二鉄イオンの非存在下では、光により生成する電子は、利用可能なままであり、酸素を、その形成よりも少しだけ低い速度で元の水に還元するため、正味の酸素生成はない。したがって、フローセルのための光触媒の作製では、均一な膜の作製が重要であった。容易なカソード反応が供給されなかった試験では(例えば、上記で用いたFe(III/II)還元、バイアス電圧(小電流電圧)を、光によって生成された電子に直接負荷し、集電板膜およびカソードに関して水性界面から離れるように指向した。試験は、O2生成がバイアス電圧負荷では起こらないことを保証するため、バイアスおよび照明ありまたはなしで行なった。
【0095】
光分解誘導型O2生成を評価するためのフロースルー型試験セル
いくつかのフロースルー型セルを基本とする装置を準備した。図2Aは、このようなセルの主な構成要素の一例を示す。試験目的のためには、全血は、生成されたO2が均質な溶液中に残存し、測定のための解析技術は充分精密化され、迅速なため、O2生成を良好な精度でモニターするために使用される優れた電解質である。分割された光分解誘導型電気化学的(PDEC)フロースルー型試験セルを、流動している血液が光分解により生成された酸素と接触するように構築した。このセルは、分割セル様式で作動され、Nafion(登録商標)カチオン交換膜を有するFM0l−LC Electrolyser and ElectroCellsの改良型であった。アノードは光学的に透明であり、光子は、フィルターに通して365nmにした(上記参照)EFOS Lite(登録商標)UVA光源を用いて側面(side−on)照明によって供給した。プレートの非コートガラスまたは石英側を、フィルターに通したUVA光側面照明した。カソード液はLocke’s−Ringer溶液とし、アノード液は、抗凝固剤硫酸ヘパリンを含有する新鮮ウシ全血とした。血液は、地方食肉処理場で使用のために実験日に採取し、したがって、長期保存の必要性が排除された。血液は、ガラスインライン熱交換ジャケットを用いて37℃に維持し、フローは、Harvard蠕動ポンプによって80mL/分とした。収集したデータは、pH(カロメル参照を有するガラス電極)、電流(Fluka 87電圧抵抗計を用いて測定、VOM(使用された電解質および使用されたセルに基づいて必要に応じてμAまたはmAモードで))、温度、溶存酸素(O2、図6Aおよび6B)ならびにオキシヘモグロビン(O2Hb)であった。電灯強度は、バイアス電圧ありまたはなしで(上記参照)、種々に変更した。各実施中に行なった対照試験により、有意な酸素形成速度または電流フローが起こるためには、バイアス電圧およびUVA照明の両方が必要であることが示された。
【0096】
TiO2(a)システムにおいて溶存酸素生成の量を増加させる別の方法は、活性酸素に関して過酸化水素として捕捉されたμ−過酸化物の放出速度を加速する手段を提供することである。
【0097】
H2O2を用いた中間体活性酸素形成の例
【0098】
【化16】
過酸化水素は、容易に移動し、容易に触媒されて溶存酸素と水に不均化されるため、活性酸素種の優れた候補形態である。
【0099】
触媒系を用いた活性酸素からの自発的な酸素形成の例
触媒
膜
【0100】
【化17】
TiO2光触媒膜の向上により、μ−過酸化物を可溶性過酸化水素として急速に放出させるための手段が提供された。これは、過酸化水素がMnO2隣接膜に拡散して溶存酸素を生成させ得るため、またはTi(IV)−O−O−Ti(IV)によって、担体に指向されることによりMnO2クラスター/粒子から電子が電子的に除去される(可逆的なキノン/ヒドロキノン反応によって、緑色植物の光合成で行なわれているものなど)ためである。無機システム、例えば、フェリ/フェロシアン化物、または三ヨウ化物/ヨウ化物イオン、セリウム(III/IV)、レドックスの組などもまた、候補であり、長寿命小型発電システムの目的に必要とされる充分証明された極めて安定なレドックスシステムである。この場合、電子のみが水からMnO2を介して、ソリッドステート非局在結合配置によりμ−ペルオキソ結合に流動する。この電子は、TiO2(a)−OHシステムのe−lostをe−scbに置き換える。
【0101】
活性酸素としての過酸化水素の形成は、過酸化水素が、多くの異なる方法:熱的;金属イオン触媒作用;微粒子/表面触媒作用;塩基触媒作用;およびフリーラジカル反応(還元性の開始を伴う)を用いて、100%の収率で速やかに溶存酸素に変換され得るため、貴重である。好ましくは、MnO2(s)などの金属イオン触媒作用により、薄膜基材構築物上での水と酸素への過酸化水素不均化のための効率的な触媒が提供される。
【0102】
酸化亜鉛ZnOなどの光触媒系は過酸化物を活性酸素として、TiO2よりも容易に放出する。ルイス酸/塩基理論定義の下で、高度にアルカリ性の過酸化物イオンを水プロトン化よりも充分に安定化させ得る酸性金属イオンは少ない(pKa1の過酸化水素は11.38(25℃)であり、固相内で形成され、そのため過酸化水素、過酸化水素はZnOから容易に形成される:
【0103】
【化18】
ZnO膜および粒子は、いくつかの様式で、種々であるが制御された組成、形態構造および多孔度を用いて作製され得る。例えば、亜鉛の鏡、ドープ亜鉛および亜鉛合金が、光学的に透明な支持体にスパッタリングされ、その後、O2(g)で酸化され得る。この処理により、金属/金属酸化物(Zn/ZnO)膜がもたらされる。半導電性ZnO系膜に対する別の高度に有効なアプローチは、光学的ガラスコーティングプロセスを利用することである。光学的ガラスコーティング技術は、硝酸亜鉛/グリシン水溶液をディッピングまたは噴霧として適用した後、乾燥し(110℃で15分間)、次いで、加熱して(450〜500℃で3分間)、自己酸化反応を開始させ、この間、炭素および窒素がガスとして排出され、接着性だが多孔性の膜が下層表面(例えば、ガラス)に結合されて残ることを基本とし、グリシン硝酸塩プロセスと呼ばれる。ZnO膜は、通常、水性配合物状態の硝酸アルミニウムを初期浸漬液に含めることによりアルミナをドープして作製される。多くの他の金属イオンブレンドもまた、この技術で可能である。
【0104】
タングステン酸塩WO3は、評価対象の別の光触媒である。タングステン酸塩は、溶存酸素の生成に可視光のみを必要とし、溶存酸素を形成するための第2の触媒を必要とすることなく、直接溶存酸素を生成させる。WO3の光子エネルギー要件が低いことは、バンドギャップが、TiO2(a)では少なくとも3eVに比べて2.5eVと小さいことによる。TiO2アナターゼ系と同様、WO3触媒でも、e−scbが除去された場合は高収率が可能である。酸素の生成は、RuO2(酸化ルテニウム)をWO3の表面上に配置した場合、非常に有意に増大する。これは、RuO2が酸素生成のための既知の良好な触媒であり、そのため、他のアプローチを改善経路の一例を表すという事実と整合する。
【0105】
酸素生成触媒膜が充填プラスチックであり得る場合は、利点が存在し得る。かかる材料は、多くの場合、廉価、破断に対して抵抗性、および製造が容易である。かかる材料の構築を容易にするため、プラスチックへの組込みのため、プラスチックを導電性にするための既製品状態で供給されるプラスチックのための半導電性で低光吸収性の無機充填剤の市販の供給元が存在する。例えば、E.I.DuPont Nemours、Inc.では、かかる目的のための導電性粉末(EPC)が商標名ZELEC(登録商標)ECPで販売されている。ZELEC(登録商標)ECPにおける導電性物質は、アンチモンドープされ酸化スズ(SnO2:Sb)である。バルク状のこれらの物質は、その上面に導体がコートされており、よく知られた無機物質、例えば、雲母片、TiO2および中空シリカ殻、またはそれぞれECP−M、ECP−TおよびECP−Sなどである。純粋なSnO2:Sb系材料は、ECP−XCと命名されており、その他の材料よりもずっと小さい粒子である。ECP製品の約25〜45重量%が使用されており、そのため、該粒子は互いに充分に近縁であり、他の場合では非導電性であるプラスチック全体に内部電気接続を提供する。ECP−SおよびECP−Mは、通常、低濃度で最良の性能を示す。ECP−XCの薄膜は、非常に微細な粒子状であり、光吸収性が強いため、魅力的なコーティングを提供し得る。
【0106】
TiO2層は、さまざまな様式で形成され得る。TiO2層は、ゾルゲル、乾燥およびベーキングによって形成され得る。商標LIQUICOAT(登録商標)(Merck & Co.、Inc.製)の製品は、Ti(OR)4型材料を水中で加水分解してTiO2を形成させるものであり、ゾルゲル/乾燥/ベーキングプロセス下でTiO2層を形成するために4ROHが使用され得る。TiO2はまた、乾燥粉末からアナターゼ懸濁液を調製し、次いで、懸濁液をディッピング、乾燥およびベーキングしてTiO2層を形成することで形成され得る。TiO2層が形成され得る別の方法は、チタンの電子ビーム蒸着、続いて、蒸着チャンバ内での酸素への該チタンの曝露によるものである。TiO2層はまた、チタン塩を水に添加し、pHを約2〜7に調整して懸濁液を形成し、次いで該懸濁液をディッピングし、該懸濁液を乾燥させることにより形成され得る。
【0107】
活性酸素を溶存酸素に変換するために使用される触媒としては、レドックスサイクルを行ない得る金属イオン、例えば、Fe(II/III)、Cu(I/II)、Co(II/III)、Mn(II/III/(IV))、Ag(I/II)などが挙げられ、膜および粒子として金属酸化物形態で物理的作製され得るものである。特に良好なシステムは、PS−II(上記参照)で使用されているのと同じもの、MnO2である。本発明の反応により、酸素が直接、水から生成される。MnO2触媒は、溶存酸素を効率的、選択的かつ速やかに形成し、PS−IIが酸化状態を数回容易に相互変換し得る場合のように、MnO2クラスターとしての酸素の活性酸素形態に高度に依存性でないため、最も好ましい。疑いなく、これは、生理学的条件下での利用可能性および不溶性ならびに高速な配位子交換速度とともに、Mnイオン水和物をPS−II触媒に理想的に適したものにする特性である(it)。
【0108】
酸素への活性酸素の変換を助長する別の方法は、TiO2アナターゼの表面にマンガン(Mn)をドープすることによるものである。MnによるTiO2表面ドープは、高度に生産性の活性酸素から酸素への変換触媒を提供する。活性酸素不均化は、Mnドープアナターゼ表面に曝露されると、自発的で高速になる。あるいはまた、活性酸素は、MnO2を導電性形態のアナターゼの表面上に配置することによっても酸素に変換され得る。この形態では、電子は、水からアナターゼの活性酸素領域に触媒的に通過する。かかる構成は、光合成酸素生成をより厳密に模倣している。
【0109】
光分解セル内で活性酸素を酸素に変換するための別の方法は、8面体型MnO2分子ふるい(MOMS)材料を溶存酸素触媒として使用することによるものである。MOMS材料は、開放型ゲル様構造を有し、構造がゼオライトに密接に関連している。MOMS材料は、マンガン塩から沈殿および乾燥を介して容易に形成される。
【0110】
また、活性酸素は酸素に、光分解セル内で、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)触媒によって変換され得る。SOD触媒は、充分特性評価された効率的な酵素であり、必要とされる活性酸素の変換を提供し得る。
【0111】
カチオン交換膜
カチオン交換膜は、光分解セル内でのカチオンの拡散を可能にする。特に、カチオン交換膜は、そのカチオンアノード液由来のナトリウムイオン(Na+)または水素イオン(H+)が、膜全体に拡散し、カソード液内に侵入してそこでのカソード反応に関与することを可能にする。カチオン交換膜は、商標NAFION(登録商標)で市販されており、E.I.DuPont Nemours Inc.から入手可能である。NAFION(登録商標)カチオン交換膜は、酸性形態のパーフルオロスルホン酸/PTFEコポリマーである。NAFION(登録商標)カチオン交換膜は、現在のところ、好ましい膜であるが。
【0112】
カソード液配合物の選択
PDECセルに供給されるカソード液組成物は、小型で長寿命の燃料電池に重要である。PDECカソード液組成物は広範であり得るため、充分な高度に選択的な化学的変換がなされ得るのであれば、カソード液組成物は、PDECの観点から制限されないと考えられる。水溶液、例えば、酸、塩基、塩溶液、合成血液の血清、さらには全血は、機能性であることがわかっている。この適応性は、腐蝕および熱に安定なPEM(Nafionは、30%NaOHおよび塩素を電気分解的に製造するために使用されている)の使用により可能であり、カソード材料およびセルハウジングは、広範な耐食性材料(典型的には、チタン、ステンレス鋼、ポリマー、セラミック、ガラス、サーメットならびに他の複合材料および/またはプラスチック)であり得る。
【0113】
カソード液は、燃料電池から、およびおそらく場合によってはまた、バックアップ余剰燃料電池エネルギーシステムからの消費された燃料電池燃料を受容し得るため、カソード液の選択は、燃料電池の進化(evolution)と密接に合わせて行なわれ得る。燃料電池では、カソード液が、安定化された酵素および/または固定化された微生物学的系と適合する条件であり得ることが期待される。したがって、期待されるカソード液は、できるだけ高濃度の燃料候補(おそらく、>10%過剰)を含有する中程度のpH値の生理食塩水溶液であり得る。以下のアプローチの説明は、高い年率エネルギー密度の小型発電システムのためのPDEC技術の進化に関与するカソード液化学反応の組合せに関してさらにより詳細な事項を含む。
【0114】
あらゆる型の燃料電池デバイス設計との一体型光分解誘導型電気化学(PDEC)系の燃料電池燃料再生
燃料電池燃料再生は、緑色植物の光合成のある種の側面を模倣し、デバイス耐久性および長期耐用寿命のために堅固な材料の構築物を使用するという知見を用いてなされる。具体的には、葉緑体および光分解誘導型電気化学反応(PDEC)内で起こっているような集光およびエネルギー輸送により、光化学系II(PS−II)の電荷分離が行なわれる。本発明は、高い発電システムと一体化された場合、多くの型の動力輸送手段(例えば、電動供給、ロケット動力供給など)に必要とされるエネルギーを提供し、それにより、広範な従来型および未来型燃料電池燃料が作製および再生され、広範な燃料候補の連続的な再生が提供される。
【0115】
PDECでは、PS−II(PS−IIは、植物光合成システムの酸素生成部分)のように、任意の供給源から誘導され、120〜1000nm(両端を含む)、好ましくは190〜750nm、最も好ましくは340〜450nmの波長域内の光エネルギーを用いることで、水分子から電子、酸素および水素イオンが生成される。PDECは、酸素生成に伴う拡散障壁の関与が最小限であることが特徴であり、そうでない場合は、従来型電気化学的セル、燃料電池またはガス供給デバイスの性能が制限され得る。3種類の反応体の生成により、従来型光電装置または直接光分解的な水の分離と比べ、ずっとより多目的な技術が提供される。PDECでは、電子と水素イオンが結合して水素分子が形成され得る、および/または、代わりに有機化合物とカソード表面で反応して化学的還元が行なわれ、それにより、従来型および計画された燃料電池のための燃料の再生もしくはカロリー食糧がもたらされ得る。PDECデバイスの重要な基本的要件および目的は、酸素を生成させること、および燃料電池の再生が少なくとも一部行なわれるのに少なくとも充分な電気化学的還元電位ERをもたらすことである。燃料電池燃料再生のERは、光分解エネルギーの一部が酸素生成のために消費された後に残る電位である。この限界値により、下限の許容され得る光分解エネルギーが1000nmに設定される。
【0116】
したがって、本発明のPDECデバイスの任意選択の第2の態様は、2つの方法の一方または組合せによってカソードセル電圧を増大させることである。第1は、2つ以上のPDECセルを、その出力電圧が合計されるように直列に電気的に接続することである。
【0117】
より高いカソード電位を得るためのこの第2の選択肢は、光化学系I(PS−I)と類似する光化学反応を使用するストラテジーを用い、第2の光分解セルを組み込むためのものである。この方法は、酸素生成によって放出された電子の還元電位を増強するための光の光子からのさらなるエネルギーの組込みを伴う。この場合、カソード反応のための電流が、上記のように一次PDEC光触媒から既に利用可能であり、ちょうど従来の光吸収と同期するため、電荷分離は関与しない。
【0118】
以下の表は、従来型燃料電池(H2)、計画された未来型燃料電池(例えば、JP8、JP8代替型、エタノール、メタノールなど)、およびPDECデバイスと一体化型の他の燃料電池の計画された要件を満たす燃料候補の一覧を提供する。この様式では、有用な光電流およびカソード電圧は、PDECデバイスによって、広範な燃料電池型、ロケットへの電力供給または他の発電システムに使用される燃料電池燃料再生および/または酸素供給のために生成される。太陽光照射から単位面積あたりの即時に利用可能なエネルギーの制限により、PDECが連続的に高密度の電力を提供することが期待されないこと、およびこの高電力の仕事は、一体型燃料電池またはロケットによって提供され、通常、非連続的に利用されることを認識されたい。例えば、小型のロボット型の航空機または有人宇宙船では、搭載電子デバイスおよびシステムの操縦または操作中。次いで、一体型システムはまた、ある期間の間、暗所、影または薄暗い所でも機能し得る。この場合、再充電は、照明が利用可能な間に太陽エネルギーまたは電灯照明のいずれかを使用することで行なわれる。したがって、一体型システムのPDECユニットの役割は、燃料および酸素を単独で、または搭載貯蔵庫あるいは他のものからのこれらの物質の他の利用可能な供給源との組合せで提供することである(特に、時間とエネルギー源と要求が可能な場合)。燃料および/または酸素材料は、直接使用され得る、および/または、最も好ましくは、よりタイムリーな使用のために、高いエネルギー生成ユニットによって、もしくは食糧として保存され得る。搭載燃料電池のための再生された燃料は、燃料電池には凝縮型エネルギー源が使用され得るため、移動手段に必要とされる高電力レベルまたは人間に消費される食糧をもたらすガスまたは、好ましくは液体、炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、炭水化物、COおよび/またはH2(これらの燃料の混合物を含む)である。PDECはまた、例えば、かかる燃料貯蔵が充分に補給されている場合、および/または太陽光エネルギーがなお利用可能であり、高電力の燃料電池(1つまたは複数)、ロケット(1台または複数)、搭載バッテリーが充分に充電される場合、ならびに太陽光エネルギー、核エネルギー、運動エネルギーなどが利用可能であり、消費された材料(例えば、消費された燃料電池燃料、H2O、CO2などがなお利用可能である場合、搭載電力(通常、低密度)を提供し得る。かかる状況の一例は火星上(ここでは、CO2および水が、火星環境からの供給により大量に利用可能である)、または火星もしくは月もしくは宇宙船の温室である。
【0119】
本発明の別の態様は、長寿命高電力で光分解型(電気式ではない)化学的変換を提供するため、ならびに任意選択で、貯蔵および電源での使用のために太陽光エネルギーから電力を発生させるため、ならびに従来型および未来型燃料電池(燃料電池を含む)のための燃料の電気化学的再生ための太陽光エネルギー変換技術を提供する。
【0120】
燃料再生PDEC室では、水素イオンと電子が、燃料電池(従来型および計画したもの)に選択された消費された液体またはガス状燃料を再生するために使用され得る。再生された燃料は、小型で適切な大きさのハウジング室または「サージタンク」内に保存され得る。消費された燃料は、燃料電池動作から回収され、搭載された適切な大きさのハウジング室内に回収され得る(図3)。低揮発性化合物、例えば、糖、高級脂肪族アルコールおよびポリオールと、より揮発性の燃料、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノールならびに他の低級脂肪族アルコールおよびカルボン酸、例えば、酢酸またはギ酸との両方の再生がもたらされ得る。典型的には、電気化学的に加圧された(すなわち、機械的に加圧されたのではない)水素(H2)が、従来型の燃料電池の場合に使用され得る。また、光分解により形成される湿潤酸素(または任意選択でH2O2)は、典型的には純粋であり、内部湿度がPEM膜性能に重要であるため、従来型、未来型および光化学的に加圧された燃料電池において、直接再使用に利用可能である。再生型燃料電池燃料は、電力が必要とされるまで保存され得、それにより、長寿命で高電力エネルギー源が提供され得る。このようにして、太陽光エネルギーの効率的な使用が、長期発電容量を誘導するために用いられ得る。
【0121】
PDECの一部のある態様は、PDECの生成物(活性酸素、電流および水素イオン)が別々に生成され、PDECセル個別の室に維持され、それにより、より多くのプロセス選択肢(例えば、液体またはガス状燃料再生など)が提供され、燃料電池のための酸素が提供されるが、複雑な分離の必要性が排除されることにより、典型的には、従来の光電装置(PV)または「水の分離」技術よりもより多目的であり、より光効率のよい技術であることに注意されたい。このような特徴により、維持要件が低減され、その結果、稼動寿命が延長される。
【0122】
PDEC技術の光分解側面は、既に効果的であることが証明されており、生理学的電解質条件下、タンパク質含有生体適合性の電解質、例えば、合成電解質(例えば、模擬血液血清および例えば、全血(人間およびウシ))の存在下で化学変化がもたらされる。したがって、燃料電池燃料を同定するためのアプローチは、表の化合物の一覧からの燃料候補のためのカソード光分解的および電気化学的試験の実施を伴う。
【0123】
3Dフロースルー型PDECセル構造「構築物」は、典型的には、微細加工、(μFAB)集積回路(IC)フォトレジスト、蒸着、エッチングおよび他の関連薄膜製作(FAB)技術を用いて設計され、組み立てられ得る。3D構造の設計は、活性表面全体および限られた空間内の酵素適合性電解質の液の流れの計算流体力学(CFD)モデル設計を用いて選択され、幾何構造が測定され、大きさが最小限にされ得る。微細加工は、ソリッドステートおよび耐久性形態におけるPDEC反応表面のための大きな内部表面積を提供する。PDECモジュールの構築の特定の幾何構造および材料は、必要性、燃料電池に酵素的に誘導される生体適合性、および燃料再生速度によって決定され得る。これらの構造は、空間効率的な配置に一緒に積層されたものであり得、これにより、高速で効率的な電源充電および燃料電池燃料再生のために高速で酸素、電流、and H+イオンを生成させるための光分解エネルギーが使用され得る小型デバイスが得られ得る。
【0124】
燃料再生
燃料電池FRサブシステムの主な設計要件は、カソードおよびカソード液に焦点が当てられている。消費された燃料が燃料電池消費された燃料サージタンクから取り出される場合(図8)。光触媒アノードで生成された電子および水素イオンを用い、特に選択されたPDECカソードにおいて、高度に効率的な化学的還元が行なわれることが必要である。高収率は、セル作動条件およびカソード材料(通常、金属または金属合金)の結果である。再生された燃料は、次いで、必要とされるまで燃料槽に送られる。
【0125】
あるいはまた、消費された燃料は、PDEC動力供給型燃料電池燃料再生モジュールによってもたらされる非排気可能な様式で連続的に除去され、ユニットへの電力は維持される。電力がオフであるか、または一時的に失われている場合、該システムは、電力回復に対する通常の機能を自己再確立させるものであるのがよい。
【0126】
広義で、図8は、PDECユニットと他のシステムとの相互作用を示す。図8は、PDEC技術を用いた燃料電池燃料再生システムの概略的な一般的なプロセスを示す。消費された燃料、高い(5〜50%)濃度の消費された燃料を含有する電解質および残留過剰燃料は、燃料電池から流動し、サージレザーバ内に回収される。この液体は、次いで、小型の低圧力ポンプを用いて気密PDECセル内にポンピングされ、ここで、光分解動力供給型還元が起こり、燃料が再生される。再生された燃料は、なお供給ポンプからの流動下にあり、燃料レザーバ内に流動し、ここでは、電力が必要な場合に燃料電池にポンピングされる。
【0127】
また、PDECアノードで同時に生成された酸素も、既にPDECセルの自然圧下にあるサージタンク内に回収され、それにより、機械式加圧ポンプの必要性が回避され、したがって、その重量、バルク性およびその高電力需要が回避される。代わりに、該システムを閉鎖状態に維持することにより、酸素の加圧もまた、光分解型電力によって誘導される。加圧酸素により、燃料電池の出力が増大される。
【0128】
センサー、制御回路およびサポートハードウエアは、最終サブシステム設計を補助するように選択される。使用される具体的なポンプは、該システムに必要とされる不可欠な技術革新ではないため、コスト削減のために標準的な実験室用ポンプが、計画された研究において使用され得る。同様に、燃料電池燃料再生試験では、アノードの光化学反応は、燃料電池燃料再生カソード電気化学反応に必要とされる電圧および電流密度を供給するためにDC電源を用いてシミュレーションされる。このアプローチにより、カソードにおいて、非最適化光触媒の複合なしで電圧、電流密度、生成速度の定量的測定および生成物の測定が可能になる。
【0129】
カソードに考慮される構成要素としては、物理的構造および組成物が挙げられる。カソードは、軟金属、例えば、亜鉛、カドミウム、鉛、銅、鋼、白金もしくはチタン、めっきまたは合金で作製されたものであり得る。還元炭化水素化合物を形成するため、例えば、アルコールまたはポリマーが望ましい還元炭素生成物に典型的である。多くの生成物材料が、これらの電気化学的処理経路のいずれかの考慮に利用可能である。
【0130】
図7は、燃料電池燃料再生および酸素生成のPDECセルの内部フローの模式図である。設計の主な構成要素には、燃料電解質収集ポンプおよびライン、光触媒アノード(ここでは、酸素が同時に生成され、加圧され、酸素貯蔵槽に戻る)、カソード(カソード化学的還元、消費された燃料を還元して電圧印加た有用な形態に戻すため)が含まれる。カチオン交換膜により、電極が隔離され、アノードで生成されたアノード液からのH+イオンがカソードに移動して燃料還元に関与するのを選択的に許容する。加圧酸素は、アノードで生成される。水収支が提供され得(図示せず)、燃料電池ならびにPDECセルの要件に依存し得る。一般に、水は、存在する微生物/酵素(1種または複数種)燃料電池触媒(1種または複数種)のために該システム内に保持されることが望ましく、従来のH2燃料電池の場合のようにパージされないため、水収支が大きな問題になることは予測されない。また、PDECには水性電解質が使用される。したがって、不可欠で複雑な水収支の操作の必要性が排除され、微調整を必要としてもしなくてもよいシステムに置き換えられる。
【0131】
PDEC光触媒は、燃料電池燃料再生および酸素生成および加圧のための電気化学的電源を提供する。光触媒による光エネルギーの吸収は、電子を触媒の伝導帯へと推進し、電流をもたらし、「ホール」を残して水を酸素とH+に酸化させることを可能にする。遊離した電子は、次いで、外部導体によってカソードに運ばれ、消費された(酸化された)FCRを還元して再生させる。この仕事により、不可欠な改善がカソードおよび光触媒にもたらされる。効率的な電力変換および高い燃料電池燃料再生収率は、不可欠な設計パラメータである。触媒膜内での電荷分離工程の効率により、最終PDECサブシステムの最終の大きさ、重量および出力密度を制御する不可欠な設計パラメータが決定される。具体的には、その要件は、真空スパッターコーティング、化学的蒸着およびエピタキシャル蒸着、ならびに所望の電子遷移、接着性、電荷分離およびエネルギー変換による光子吸収を最適化する関連製作技術、特徴および部材を用いて光触媒を設計することである。
【0132】
燃料電池燃料再生アプローチおよび燃料電池との一体化および集光ユニット動作の詳細な説明
チタニアの光化学反応に関する文献は、その微粒子としての、扱いにくい有機汚染物質の分解のための使用を中心としたものであるが、どのようにしてこのエネルギー源を、水から酸素およびH+イオンが生成されるとともに、電流が発生する様式で指向させるかが見出された(図7参照)。容易に輸送されるH+イオンおよび電子は、アノードの酸素生成反応の位置とは離れてカソード反応において利用され、燃料電池燃料再生が達成される。この光化学的燃料電池燃料再生アプローチの説明を以下に示す。
【0133】
工程1:以下の式は、酸素への水の光分解的変換とともに、カソード反応のための電子および水素イオンの同時生成の基礎を構成する(反応10)。この反応は、光分解エネルギーが一連の有用な酸化/還元電気化学的反応(「レドックス」反応)を行うために容易に使用される形態で効率的に捕捉される主要なエネルギー変換工程である。ここでは、該技術をその最も単純な形態で説明するために、チタニアを使用する。最終的な精製金属酸化物光触媒膜は、典型的には、固溶体または積層膜としての酸化物のブレンド(色素増感剤を含む、または含まない)であり、例えば、タングステン酸塩および亜鉛酸塩が含まれる。かかる混合物により、基本的な酸素生成光化学反応は同じに維持しつつ、ずっと広範な太陽光スペクトルの使用の使用が可能になる(以下に示す)。したがって、有効な光子は、750nm以下の波長を有するもの(エネルギーは13,200cm−1以上)であり得ることが期待される。空気中では、最も短い波長は、酸素による吸収のため約190nm(52,600cm−1)に制限される。したがって、地球上での適用用途では、大気圏を透過する太陽光スペクトルの本質的にすべての非熱的部分、例えば、大部分の可視光スペクトル、ならびに真空UVの外側の全UVスペクトル(UVA、UVBおよびUVC成分)が、燃料電池燃料再生に利用され得る。金属酸化物光子吸収媒は、エネルギー捕捉を達成するための高効率を有するように選択され得るため、エネルギー効率は、最終的に、集光ネットワークの効率によって設定される。
【0134】
工程2:先に記載したように、活性酸素は、蒸気または液状形態いずれかで供給される水と接触している光触媒表面({TiO2−OH2}surf)にいったん移動すると、非常に短い寿命を有する。この移動工程により、光子吸収バルクチタニア膜部位({TiO2}バルク)が改質され、次の光子の吸収に再設定される。
【0135】
酸素生成表面上に存在するH2Oは、バルク供給源から供給されることに注意されたい。燃料電池の場合、これは、通常、酵素/微生物燃料電池媒質によって使用される水相電解質であり得、これは、通常55モルであるため、有意な拡散境界層を提示しない。
【0136】
工程3:いったん「ホール」が反応13により表面に達すると、自発的な不均化によって気相を伴うことなく酸素が生成される(反応14)。
【0137】
次いで、酸素がナノ微細孔表面から、提供される電灯強度、量子収率ならびに反応工程1、2および3の全体的な速度に比例する流束で拡散する。酸素は、水性薄膜を通って移動する(例えば、心材(wicking)膜接触体部材、例えば、工業的に空気を加湿するため、またはガス/表面吸収を提供するために使用されているものを用いて)、このとき、急速に加圧されたガス状の酸素が形成される。
【0138】
集光は、電磁放射線の太陽エネルギースペクトル全体からの光の収集を目的とし、この光を、光学的輸送技術を用いた光変換のためにPDECセルに提供する。波長を調整する必要がある場合、変換が行なわれる。反応13からの水素イオンは自発的に、水性膜相を通って、よく知られた「ホッピング」機構によって移動し、次いで、ソリッドステートプロトン交換膜(PEM)全体に拡散する(図7)。PEMは、従来の物理的−化学的(PC)燃料電池技術から既に利用可能な技術であることに注意されたい。
【0139】
重要なことは、酸素形成のための化学的基質は、燃料電池電解質および/またはシステム凝縮物から誘導される水である。TiO2セラミックナノ微細孔内での酸素の形成により、酸素形成領域との燃料電池電解質の直接接触が妨げられる。照明領域は、典型的にはソリッドステートのみである。生物汚染を抑えるため、酸素生成表面の高い光沢表面平滑性を選択した。
【0140】
工程4:燃料電池燃料再生
PDECシステムの主な目的は、燃料電池によって生成される燃料電池の燃料を任意の搭載バックアップ燃料電池または燃焼システムのために再生することである(図3および8)。この能力は、次のシステム燃料補給までか非常に長期間(数年)であること、および従来のシステムと比べてkwh/kg/年ベースでずっと高い出力密度の両方を達成するのに不可欠である。この期待される主な利点は、おそらく、従来の技術の巨大な燃料槽(それでもなお、高頻度の補給が必要である)が必要とされないことによるものである。PDEC燃料電池の開発において、燃料再生器により、たった1つ(または2つ)の比較的小型の搭載燃料槽を提供することが可能になり、また、1回に数年、地上操作を用いて補給する必要がなくなる。電気有機化学反応の文献のデータマイニングを用い、工業的実践および学術出版物、数多くの燃料電池燃料候補のトップリストおよび候補化学物質を確認した。これらの化合物には、最終燃料候補が含まれ得る、または化学的類型の最も望ましい燃料が含まれ得る可能性が高いことに注意されたい。最も望ましい燃料は、燃料再利用がもたらされ、選択性が「恒常的改善」統計学的確認済みプログラムを用いて体系的に増大される生成試験の生成物である。
【0141】
かかる耐久性の再利用燃料が可能であることの促進(encouragement)は、複数年が要求される適用用途が意図された他の従来の化学生成物、例えば、油圧液、潤滑油、ある種の長寿命表面仕上げ浴化学試薬、および特に、熱媒液などから収集される。これらの生成物はすべて、使用分野で数年持続するが、厳しい適用用途、例えば、航空宇宙、重量構築、化学的製造、発電、高電流密度などおよび多くの他の適用用途における厳しい熱、温度、圧力および酸化条件に連続的または断続的に供される。
【0142】
したがって、燃料選択プロトコルにより、電気化学的再生収率および選択性に関して燃料電池燃料候補が評価されることになる。燃料電池性能以外の不可欠な選択パラメータは、副生成物の生成であり、これは、1回の再利用あたり<<1%に維持されなければならない。精製の一般的なアプローチは、反応収率および再生選択性の両方を測定することだけでなく、燃料電池の使用および燃料再生加工処理中に形成される副生成物も測定することである。いったん特定の有意な副生成物が確認されたら、その形成の機構を推定し、阻止する。次いで、懸念される次の副生成物(この場合も形成を推定する)が確認されるまで試験を反復する。
【0143】
図9は、全体的に高い年率出力密度の小型発電システムのPDEC燃料電池燃料再生加工処理ユニット部分を開発するための具体的な方法をまとめたものである。PDECサブシステムは、高度に選択的な燃料電池燃料再生、および任意選択で、光加圧酸素および/またはCO2を提供する。これらの生成物、燃料およびオキシダントは、燃料電池ユニット(1つまたは複数)を供給する貯蔵槽、呼吸雰囲気またはロケットエンジンに送達される。
【0144】
年率出力密度は、1年間にわたって消費された補給燃料物質(再生された燃料でない)+燃料電池の物質を含む該デバイスから生成される電力を意味する。太陽光エネルギーによって燃料を再利用することにより、付加される正味の燃料物質は、再利用なしよりも相当少なくなる。
【0145】
PDECによってもたらされ、燃料を再生するために使用される低電圧/高いアンペア数電力はまた、システム寿命を延ばすため、および/またはバックアップ電池充電を提供するための燃料電池燃料再生の要件(例えば、ピーク電力付加要件)が満たされた場合、他の有用性を有し得る。光触媒およびカソード表面触媒の詳細な設計により、PDECセルの最大出力密度が大きく制御される。
【0146】
従来の酸化技術は、重量ガスシリンダーから燃料電池または他のエネルギーシステムに加圧酸素を1回通す使用のために送達することにより機能を果たすものであるが、廃棄物ガス、通常、廃棄用のCO2および/またはH2Oがもたらされる。本明細書において提供される本発明では、廃棄物ガスおよび液から再利用される水から酸素を生成させるために光分解エネルギーを用い、したがって、遠隔地および現地貯蔵からのガス送達の必要性が排除される。本発明者らにより、UV光と高度な吸収媒金属酸化物系膜(好ましくは高い光子効率のためにドープされ、他の同時堆積膜と重層され、フロースルー酸素生成セルおよび電気化学的セルとしての同時機能が可能であるもの)との相互作用に基づいて水から酸素を生成させることが実現可能であると決定された。以下の実施例では、光分解エネルギーを用い、水溶液から酸素を生成させる、したがってTiO2 表面照明により酸素生成をもたらす。一部のこれらの実験では、混合ウシ静脈血液、および定量的解析的測定のための酸素の優れた収着媒を、血液と反対側を照明した(血液が光に曝露させる可能性を排除するため)ナノ結晶性TiO2薄膜上の再循環ループ内に流動させた。TiO2膜の光曝露後、血液中のオキシヘモグロビン画分は、ほぼ飽和まで急速に増加し、この期間中を通して安定なまま維持された。血液の血清相中に含まれた溶存酸素画分は、オキシヘモグロビンと平行して増加し、これは、ヘモグロビンのほぼ完全な酸化が達成されたことを示す。本発明者らは、光分解により酸素を生成させる(本実施例では血液自体の含水分から)ことは実現可能であり、それにより、重量酸素槽から供給される酸素ガスを強制的に溶解させる必要性が排除されると結論づけた。
【0147】
従来の酸素送達技術は、補充された酸素槽からの消耗用酸素の送達に基づく。一部の他のシステムは、使用場所で(point−of−use)酸素を直接空気から供給し、圧力スイング膜の拡散性および酸素/N2分離を誘導する差動ガス圧に依存する。これらのシステムの主な弱点は、直列に連結された大きな拡散境界層が必要とされ、これは、物質輸送の遅滞をもたらし、したがって、ガスの充分な流束を得るための大きな表面積およびガス圧縮装置、したがって大型で携帯型ではない重量システムの必要性が生じることである。また、このようなシステムには、重金属槽による外生的加圧酸素の連続的な供給源が必要とされる。本発明では、H2OおよびCO2生成物を再利用することにより、ならびにC、HおよびO元素を交換するのではなく光分解または他のエネルギー源を使用することにより、このような制限が回避される。酸素を遠隔または限られた施設に送達したり、または二酸化炭素をCO2の逆圧もしくはおよび酸素の内部フローに対して移動させるのではなく、本発明者らは、光分解エネルギーを用い、酸素および固定炭素(本明細書では、炭水化物あるいはH2Oおよび/またはCO2から直接再利用されるC(H2O)の記号で示す)を間接的に生成させる。
【0148】
アプローチおよび方法
H2Oおよび二酸化炭素からの酸素形成のための光分解的な反応の基礎となる化学反応
燃料電池燃料再生を達成するための消費された燃料電池燃料からの還元
以下の式は、溶存酸素への水の光分解的な変換および消費された燃料電池の炭素質燃料の還元および二酸化炭素l8の固定の基礎を構成する。この例では、最初の化学的基質は水であり、これは、金属酸化物膜(好ましくは、チタニア単独の膜、またはある種の金属イオン増感剤、炭素、黒鉛および/または有機もしくは有機金属色素でドープされた膜)内で活性酸素に光活性化されると、実質的に、酸素、電子およびH+イオンに変換される。かかる光化学的触媒(1種類または複数種)の膜は、金属または半導体元素、好ましくは膜またはスクリーンと充分に接触しており、照明が導電性層を透過すべき場合は透明な膜であり、そうでない場合は、遮光性または透過性が不充分となり得る。電解質は、任意の塩溶液、例えば、照射されている光を認識可能なほど吸収せず、光触媒膜内での励起子の形成を遅滞させるほど充分に光分解されない塩および/またはpH緩衝液のブレンドであり得る。光触媒が電解質を通して照明されるのではなく、導体膜を通して照明されるであれば、遮光性の電解質、例えば全血が使用され得る。後者の場合の一例は、導体膜がガラス、石英または無色透明のプラスチック材料上に堆積され、光がこの透明基材を介して光触媒に侵入するようになっている場合である。
【0149】
(実施例2)
重炭酸塩溶液を形成することによる燃料電池排気および呼吸空気からの酸素生成およびCO2除去ガス流のための重要な光分解誘導型電気化学反応
この実施例は、どのようにして、CO2が燃料電池の排気ガスまたは限られた呼吸雰囲気内の蓄積ガスから浄化されるとともに、かかる液、液体または蒸気/ガス中に存在する湿分から酸素ガスから生成されるかを示す。
【0150】
【化19】
カソードの構成材料は、CO2捕捉(OH−生成)および/または1種類以上の炭素質化合物へのCO2還元および/または1種類以上他の炭素質の有機系の消費された燃料電池の排気構成成分の還元に望ましい電気化学的変化が得られるように選択されることに注意されたい。また、燃料の完全な消費が発電に対して非効率となり得るため、燃料電池の排気には、なお未反応燃料価が含まれ得、ほとんどの場合で含まれることに注意されたい。
【0151】
工程3.カソード液へのMn+イオンの輸送
【0152】
【化20】
工程4.カソードでの水酸化物イオンの生成
【0153】
【化21】
工程5.燃料電池排気または呼吸空気からのCO2捕捉
【0154】
【化22】
ここで、Mn+は、金属カチオン、通常、アルカリまたはアルカリ土類金属イオン単独またはかかるカチオンのブレンドである。Mn+は、Li+、Na+、K+、Rb+、C+ 、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Zn2+、Fe2+、希土類元素(M3+)などであり得る。最も好ましいM種は、炭酸および/または重炭酸イオンとの非常に可溶性の溶液を形成するものである。炭酸塩塩が水溶性である場合は、CO2捕捉が固相収着媒による気相からであることが好ましい(反応8)。
【0155】
【化23】
該固体を、次いで、光生成H+イオンをアノード液中に含むアノード液と反応させ、内部に含有された酸素の除去後、水溶性重炭酸塩溶液を再形成する(反応9)。
【0156】
【化24】
次の工程は、第2の反応において、重炭酸塩溶液をより多くの無酸素アノード液と接触させることにより、アノード液を再形成し、純粋な(しかし湿性の)CO2を放出させるためのものである(反応10)。
【0157】
【化25】
この場合、CO2が反応10中で、化学的に加圧されるように含まれることが最も好ましい。
【0158】
上記の反応はすべて、高速かつ高収率(本質的に100%)であり、非常に高速(通常、1秒未満)で反応する。
【0159】
(実施例3)
炭酸系は、消費されたFC燃料を再生させてFCFRを得るためにPDECを使用することを意味する
この実施例では、PDEC基材を用い、水が酸素、水素イオンおよび電子に変換され、これは、一部、消費された燃料電池燃料、改質装置から放出されるガス、吐き出された呼吸空気などからCO2を捕捉するための炭酸化化学変化を誘導する。捕捉されるとCO2は、炭素質食糧および/または燃料、例えば、燃料電池燃料に還元され得るか、あるいは好ましくは圧力下でCO2ガスとして再生され得る。かかる加圧されたCO2は、周囲二酸化炭素の有意な逆圧が存在し、例えば、火星上もしくは温室内に存在する条件であっても、廃棄物として現場環境に放出するのに有用である。別の利点は、呼吸および燃料電池または改質装置から放出されるガスからCO2を取り出すために水酸化リチウムまたは水酸化リチウムの使用が可能になることである。以下の説明は、本発明のこの好ましい態様を記載するものである。
【0160】
光活性化による電荷分離をもたらすための炭酸塩系燃料電池燃料再生に使用されるデバイスを作製するための材料は、金属酸化物膜、好ましくはチタニアまたは他の光触媒の膜またはスラリー粒子(単独あるいは光分解収率を向上させ、広い波長帯の電磁スペクトルの使用を可能にするためにある種の金属イオン増感剤、炭素、黒鉛および/または有機もしくは有機金属色素でドープされた膜)内で最初に活性酸素を形成するために他の形態でPDECを適用するために使用されているものと同じかまたは類似する。膜形態では、光触媒は、透明な金属または半導体元素と、好ましくは照明が触媒膜全体になされる場合は膜またはスクリーンと充分に接触している。スラリー状態の光触媒で、照明がスラリーになされ、導電性層が所望されない場合では、照明するために使用される光のスペクトルの少なくとも一部において望ましい電荷分離を生成させるために光化学的に効率的となるように、スラリー粒子、ゲルまたは充填床光触媒が選択されるため、スラリーは透明、半透明または遮光性および/または透過性が不充分であり得る。電解質は、任意の塩溶液、例えば、希釈液(1〜1000mM)から凝縮液(1〜50wt%またはイオン液)の金属塩、塩および/またはpH緩衝液、安定剤、溶解度向上剤、乳化剤、これらの物質の組合せのブレンドなどであり得る。好ましくはこれらの物質は、得られる電解質のみが望ましい電荷分離(励起子)ならびに望ましい生成物(活性酸素、酸素、およびスラリーの場合は化学的に還元された生成物)をもたらし、他はもとんどもたらさない様式で光を強力に吸収するように、ならびにそれ自体は、電解質における役割が無効になるような様式で有意に光分解されないように選択される。
【0161】
光触媒触媒の構築では、膜またはスラリーが有用である。このようなスラリーは、微粒子の懸濁液であり得、コロイド、微小コロイドまたはこれらの組合せであり得る。チタニア、酸化タングステン、酸化亜鉛または静脈全血などのスラリーが、許容され得る材料である。遮光性の電解質、スラリーおよびコロイドは、光触媒が電解質を通して照明されるのではなく、支持導電体光触媒膜を通して照明されるのであれば、本発明の実施に有用である。後者の場合の一例は、導体膜がガラス、石英または無色透明のプラスチック材料上に堆積され、光がこの透明基材を介して光触媒に侵入するようになっている場合である。
【0162】
特に、本発明の有用な炭酸塩系の動作様式を以下に記載する。
【0163】
この実施例は、以下の一連の工程を用いて、どのようにしてCO2がFC排気ガスおよび/または限られた呼吸雰囲気内の蓄積ガスから回収され、加工処理されて燃料もしくは食糧に戻され、または所望により廃棄されると同時に、かかる液、液体またはガス中に存在する湿分からO2ガスが生成されるかを示す。
【0164】
工程1.第1のPDECアノード室において、酸素、水素イオンおよび電流(利用可能な電子)を生成させる光分解
【0165】
【化26】
酸素は、呼吸または燃料燃焼のための最終的な再使用の貯蔵のために消費される。
【0166】
工程2.カソードへの電子の輸送(電流)
【0167】
【化27】
工程3.カソード液におけるアルカリ性洗浄溶液
【0168】
【化28】
カソードの構成材料は、CO2捕捉(好ましくはOH−生成)および/または最も好ましくは、1種類以上の炭素質化合物へのCO2化学的還元および/または1種類以上他の炭素質の有機系もしくは無機の消費された燃料電池の(排気)構成成分の還元に望ましい電気化学的変化が得られるように、好ましくは高収率で、特に副生成物の形成が全くないか、または最小限で得られるように選択される。また、燃料電池の排気は、特に、燃料電池が液体系である場合は、一部の燃料電池、特に、液体電解質が使用されたものでは燃料の完全な消費が発電に対して非効率となり得るため、未反応燃料価を含むことが予測され得ることに注意されたい。
【0169】
工程3.カソード液内へのM+nイオンの輸送
【0170】
【化29】
【0171】
【化30】
工程4.カソードでの水酸化物イオンの生成
【0172】
【化31】
工程5.燃料電池排気または呼吸空気からのCO2捕捉
【0173】
【化32】
ここで、生成物の部分には、対応する金属イオンの重炭酸塩が含まれ得る。この二酸化炭素捕捉は、液体収着媒/ガス洗浄、固相収着媒/ガスまたは他のものなどのいずれかとして設計された気体液体接触デバイス、例えば、本発明の適用用途がかかる環境で使用される際に低またはゼロG使用において用いられる場合、最小限の重力用に特別に設計された接触装置を用いてなされる。
【0174】
工程6.アノードで生成されたH+イオンの消費によるCO2ガス発生またはカソードPDEC構成要素の酸性化の抑制
【0175】
【化33】
アノード液室内での二酸化炭素ガス発生の制御は、生成酸素ガスが二酸化炭素ガスで有意に汚染されないために必要である。したがって、反応4では、過剰のMxCO3が提供され、pHは、約8より上、好ましくは約9より上に維持される。
【0176】
工程7.カソードでの燃料電池燃料再生
ここで、Mn+は、金属カチオン、通常、アルカリまたはアルカリ土類金属イオン単独またはかかるカチオンのブレンドである。Mn+は、Li+、Na+、K+、Rb+、C+、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Zn2+、Fe2+、希土類元素(M3+)などであり得る。最も好ましいM種は、炭酸および/または重炭酸イオンとの非常に可溶性の溶液を形成するものである。炭酸塩塩が水溶性である場合は、二酸化炭素捕捉が固相収着媒による気相からであることが好ましい(反応8)。
【0177】
【化34】
該固体を、次いで、光生成H+イオンをアノード液中に含むアノード液と反応させ、内部に含有された酸素の除去後、気体液体分離デバイスを用いて水溶性重炭酸塩溶液を再形成する(反応9)。
【0178】
【化35】
次の工程は、第2のPDECアノード液反応において、第1室を用い、酸素を生成させずに、または好ましくは異なるPDECアノードセル室を用いて、重炭酸塩溶液をより多くの無酸素アノード液と接触させることにより、アノード液を再形成し、純粋な(しかし湿性の)二酸化炭素を放出させるためのものである(反応10)。
【0179】
【化36】
この場合、二酸化炭素が反応10中で、化学的に加圧されるように含まれることが最も好ましい。
【0180】
上記の反応はすべて、高速かつ高収率(本質的に100%)であり、非常に高速(通常、1秒未満)で反応する。
【0181】
まとめると、炭酸塩電解質を有するPDEC動力供給型セルの使用により、排気または消費された呼吸空気および/または燃料電池からの二酸化炭素の除去が可能になる。炭酸塩/重炭酸塩溶液の不揮発性の性質を用い、吸収された二酸化炭素が炭酸/重炭酸イオン形態として酸素ガスから分離されるとともに、PDEC光触媒によって生成された水素イオンが吸収される。二酸化炭素ガスの吸収のための腐食性またはアルカリ性は、PDECカソードにおいて通常の様式でもたらされ、一方、最初に二酸化炭素に由来する燃料または炭素(IV)は、カソードで有用な化合物に、より好ましくは燃料および/または食糧あるいは他の材料に化学的に還元される。あるいはまた、二酸化炭素は、炭酸塩/重炭酸塩電解質を別のまたは同じ直列のアノード液室に通すことにより、凝縮形態、優先的には加圧された形態で放出され得る。また、固形収着媒材料が、例えば、呼吸空気または再呼吸用デバイス内において低い二酸化炭素レベルを維持するのに使用するための二酸化炭素収着材料キャニスターを作製するのに使用するために作製された腐食性材料から製作され得る。
【0182】
【化37】
【0183】
【化38】
【0184】
【化39】
【0185】
【化40】
【0186】
【化41】
【0187】
【化42】
【0188】
【化43】
【0189】
【化44】
【0190】
【化45】
【0191】
【化46】
【0192】
【化47】
【0193】
【化48】
【0194】
【化49】
【0195】
【化50】
【0196】
【化51】
【0197】
【化52】
【0198】
【化53】
【0199】
【化54】
【0200】
【化55】
【0201】
【化56】
【0202】
【化57】
【0203】
【化58】
【0204】
【化59】
【0205】
【化60】
【0206】
【化61】
【0207】
【化62】
【0208】
【化63】
【0209】
【化64】
【0210】
【化65】
【0211】
【化66】
【0212】
【化67】
【0213】
【化68】
【0214】
【化69】
【0215】
【化70】
【0216】
【化71】
【0217】
【化72】
本明細書に開示された本発明の形態は、現時点で好ましい実施形態を構成するが、多くの他の形態が可能である。本明細書では、本発明の考えられ得る均等形態または派生形態のすべてに言及したことは意図されない。本明細書で用いた用語は、限定ではなく単なる説明であること、および本発明の範囲の精神を逸脱することなく種々の変形がなされ得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】図1は、主要物質およびエネルギー源およびフローを示す本発明の広義の概観の模式図である。
【図2A】図2Aは、PDECの典型的なフロースルー型セルの模式図である。
【図2B】図2Bは、宇宙空間ユニット適用用途のための典型的なPDECユニットの模式図である。
【図3】図3は、一体型PDEC/燃料電池システムの詳細なレイアウトの模式図である。
【図4】図4は、本発明の一態様による典型的なポリマー電解質燃料電池(PEMFC)の断面図を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の一態様による典型的な直接メタノール燃料電池(DMFC)の断面図を示す模式図である。
【図6A】図6Aおよび6Bは、Hasenbach光合成試験セルにおけるPDEC光触媒性能のグラフ表示である。
【図6B】図6Aおよび6Bは、Hasenbach光合成試験セルにおけるPDEC光触媒性能のグラフ表示である。
【図7】図7は、燃料電池燃料再生およびO2生成のための本発明の別の態様のPDECセル内部フローの模式図である。該セルの典型的な設計パラメータを示す。
【図8】図8は、本発明の別の態様による燃料電池燃料再生のための2工程プロセスを示す模式図である。該プロセスは、典型的には、生成されたO2のモルでアノード生成物2e−および2H+を用いた、燃料電池で消費された燃料電解質の光分解的動力供給型電気有機化学的還元を伴う。
【図9】図9は、貯蔵、活性ならびにC、HおよびOの再利用を示す本発明の別の態様の模式図である。この図は、燃料電池および燃料電池燃料再生槽および関連貯蔵槽とのPDEC一体化をさらに示す。
【図10】図10は、ガス拡散カソードを有するPDECセルを示す本発明の別の態様の模式図である。これにより、空気中の過剰のCO2を除去するために、ガスをセル内で直接循環することが可能になる。微多孔性の疎水性ポリマーが、CO2選択膜に典型的に使用される。典型的な材料は、TeflonTMである。該プロセスは、二酸化炭素の除去および固定のための単一工程型の設計である。
【図11】図11は、捕捉の後、固定を含む、ガス流からの二酸化炭素除去のための2工程プロセスを示す本発明の別の態様の模式図である。完全に液体のPDECセルのための液体洗浄装置が使用されている。
【図12】図12は、単に膜単独ではなく、照明された光触媒スラリー、床もしくはゲルまたは膜との使用に適用される本発明の別の態様の模式図である。電解質は、任意の容易に可逆的な酸化可能/還元可能な無機もしくは有機種または種のブレンドを用いて作製される。酸性第二鉄/第一鉄電解質を図12に示す。他のかかるシステムの例は、本明細書の別の箇所に挙げられており、例えば、第二銅/第一銅、フェリシアン化物/フェロシアン化物、ニッケルのアルカリ性溶液、ヒドロキノン/キノンなどである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.人間の居住地のための密閉空間を提供すること;
B.CO2および/またはH2O(ここで、該CO2および/またはH2Oは、任意選択で少なくとも一部が該密閉空間内で生成されたものである)を、光分解により、化学薬品、燃料、食糧、オキシダントの1種類以上および/またはこれらの1種類以上の中間体を含む生成物に変換し、少なくとも一部を該密閉空間に供給すること;
C.工程Bの生成物の1種類以上からエネルギーを生成させること;ならびに
D.エネルギー生成および/または呼吸で消費された反応体を工程Bに再利用すること
を含む、密閉空間内に人間の居住地を提供するための方法。
【請求項2】
前記工程BのCO2および/またはH2Oの少なくとも一部が、以下:居住者の呼吸、燃料電池の排気ガスおよび改質装置から放出されるガスの1種類以上に由来するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程Bの生成物が、以下:酸素含有炭化水素、炭化水素、炭水化物、オリゴマー、ポリマー、水素、酸素、炭素、パラホルムアルデヒド、および化学薬品の中間体の1種類以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素がエチレンおよび/またはメタンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記炭水化物が、ホルムアルデヒド、トリオキサンまたは糖である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
C5糖が、工程BにおいてCO2によるC6糖への転化のために提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記密閉空間が、宇宙服、宇宙ステーション、月面建造物もしくは居留地、火星の建造物もしくは居留地、宇宙船、月もしくは惑星ローバー、または地球上でのサバイバルユニットである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記密閉空間内のガス圧が地球の1気圧(one earth atmosphere)未満に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記密閉空間内のガス圧が地球の1気圧の約0.4〜約0.8に維持される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
2つ以上の密閉空間が工程Aにおいて提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
生成物の少なくとも一部がロケット燃料である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
A.密閉空間を提供すること;
B.CO2および/またはH2O(ここで、該CO2および/またはH2Oは、任意選択で少なくとも一部が該密閉空間内で生成されたものである)を、光分解により、化学薬品、燃料、食糧、オキシダントの1種類以上および/またはこれらの1種類以上の中間体を含む生成物に変換し、少なくとも一部を該密閉空間に供給すること;
C.工程Bの生成物の1種類以上からエネルギーを生成させること;ならびに
D.エネルギー生成で消費された反応体を工程Bに再利用すること
を含む、エネルギーおよび反応体を密閉空間に供給するための方法。
【請求項12】
A.人間の居住地のための密閉空間を提供すること;
B.オキシダント、電子/電流および水素イオンを光分解により供給すること,
C.これらの電子および水素イオンを、CO2、化学的に酸化された有機もしくは無機化合物および/またはH2O(ここで、該CO2、化学的に酸化された有機および/または無機化合物および/またはH2Oは、任意選択で少なくとも一部が該密閉空間内で生成されたものである)を化学薬品、燃料、食糧、オキシダント、化学的に還元された有機もしくは無機化合物(1種類もしくは複数種)の1種類以上および/またはこれらの1種類以上の中間体を含む生成物に変換するために使用すること
D.工程Bおよび/またはCの生成物の1種類以上からエネルギーを生成させること;ならびに
E.エネルギー生成および/または人間の呼吸からの排気物質を工程Bに再利用すること
を含む、密閉空間内において電源を提供し、人間の呼吸雰囲気を維持するための方法。
【請求項13】
工程CのCO2、酸化された有機もしくは無機化合物(1種類もしくは複数種)および/またはH2Oの少なくとも一部が、以下:1人以上の居住者の呼吸空気、燃料電池の排気ガスおよび/または改質装置から放出されるガスの1種類以上に由来するものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程Cの生成物が、以下:酸素含有炭化水素、炭化水素、炭水化物、オリゴマー、ポリマー、水素、酸素、一酸化炭素、炭素、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、還元された無機化合物、ヒドロキノン、およびスルホキシドの1種類以上を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
工程Cの生成物が、以下:化学薬品の中間体、電気化学的に活性な有機化合物、およびその混合物の1種類以上を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記炭化水素が、エチレン、エタン、プロパン、プロピレン、イソブタン、イソブタン、ブタン、ブチレン、メタン、フィッシャー・トロプシュ生成物および/またはこれらの物質の混合物である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記炭水化物が、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、もしくは糖、またはこれらの物質の任意の組合せならびに異性体、C−5糖、C−6糖、グルコシドなどである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記還元された無機化合物が、
水、
N2、
Fe(II)、Pb(II)、Mn(II)、V(III)、Ce(III)、Cr(III)、Tl(I)、Hg(I)22+、Cu(I)、V(IV)O2+イオン、V(V)O2+イオンおよび/または例えば、オキソ含有イオン、単独イオン、水和イオン、キレートイオンまたは錯体の状態のイオンを含む他の金属イオン、
硫酸イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、亜ジチオン酸イオン、硫化物イオンおよび/またはイオウもしくはS含有過酸化物の他の還元形態
ホウ酸イオン、水素化ホウ素、シアノボロヒドリドおよび/またはホウ素もしくはB含有過酸化物の他の還元形態
銀、ニッケル、銅、金、鉄、カドミウム、鉛、亜鉛、マンガンもしくは他の金属、または金属混合物、
アンモニア、アンモニウムイオン、シアン化水素、ヒドロキシルアミン、
過酸化水素または金属過酸化物、
臭素酸イオン、
MnO2、ZnO、InSnO(ITO)、As2O3、マンガン酸塩、FeO、PbO、SnO、ならびに他のレドックス活性固体金属およびメタロイド酸化物
次亜塩素酸、ヨウ素酸イオン、I2、ヒドラジン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、亜塩素酸、塩素酸イオン、
N2O、N2O4、H2N2O2、亜硝酸、NO、元素のイオウ(S、S8)、元素のリン(P、P4)、次亜リン酸イオン、ホスホン酸イオン、ホスフィン(PH3)およびホスフィン誘導体、
フェロシアン化物
など、ならびにこれらの物質の混合物
の1種類以上である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
単独で、液体であるか、固体であるか、膜もしくはゲル内に固定化された状態の物質、あるいは水溶液として、極性溶媒中、溶融塩、あるいはこのような溶媒の組合せ中に存在する物質、および/または不活性な塩を含む物質であって、−2〜+16の任意のpHである、請求項18に記載の物質。
【請求項20】
C5糖が、工程CにおいてCO2によるC6糖への転化のために提供される、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記密閉空間が、宇宙服、宇宙ステーション、月面建造物もしくは生活モジュール、または密閉居留地、火星の建造物もしくは生活モジュール、または密閉居留地、地球周辺もしくは惑星間用宇宙船、月面、火星もしくは惑星ローバー、水中、海中ユニット、水中救助ユニット、または地球上でのサバイバルユニットである、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記密閉空間内のガス圧が地球の1気圧未満に維持される、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
前記密閉空間内のガス圧が地球の1気圧の約0.4〜約0.8に維持される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記電源が約5キロワット以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
前記酸化された無機化合物が、
過酸化水素、
Fe(II、III、VI)、Pb(IV)、Mn(III、IV、V、VI)、V(IV、V)、Ce(IV)、Cr(VI)、Tl(III)、Hg(II)、Cu(I、II)、Ag(I、II)、Ni(II、III、IV)、Au(I、III)、Cd(II)、Zn(II)、V(IV)O2+イオン、V(V)O2+イオンおよび/または、オキソ含有イオン、ハロゲン化物錯体、疑ハロゲン化物錯体、水酸化物錯体、単独イオン、水和イオン、キレートイオンまたは配位子との錯体の状態のイオンを含む他の金属イオン、
過硫酸イオンおよび/またはイオウもしくはS含有過酸化物の他の酸化形態
過ホウ酸イオンおよび/またはホウ素もしくはB含有過酸化物の他の酸化形態
ヒドロキシルアミン、亜硝酸イオン、硝酸イオン、シアン、H2N2O2、N2O4、亜硝酸、硝酸、
過酸化水素または金属過酸化物、例えば過酸化バリウムなど、
MnO2、ZnO、InSnO(ITO)、As2O5、過マンガン酸塩(MnO4−)、Fe3O4、KOH/K2FeO4ブレンド、LiOH/Li2FeO4ブレンド、アルカリおよび/またはアルカリ土類イオンを含む鉄酸塩(VI)の他のブレンド、PbO2、SnO2、ならびに他のレドックス活性固体金属およびメタロイド酸化物
臭素酸イオン、次亜塩素酸、過ヨウ素酸イオン、I2、Br2、亜塩素酸、塩素酸イオン、ホスホン酸イオン
N2O、N2O4、H2N2O2、亜硝酸、NO、
フェリシアン化物イオン
など、ならびに全体として中性電荷の物質に必要とされる任意の金属イオンまたは水素イオンまたは酸化物/水酸化物イオンとのこれらの物質の混合物
の1種類以上である、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
燃料再生および酸素生成のための装置であって、
A.光を吸収し、酸化を行なう光アノード;およびカソードを備え、任意選択でセパレータまたは膜によって分離され、アノードおよびカソード室が形成されたPDECセル;ならびに
b.その排気装置が該PDECセルに連結され、排気水が該アノード側に流れ、酸化された燃料または消費された燃料が該装置の該カソード側に流れる燃料電池
を備える、装置。
【請求項27】
燃料再生のための装置であって、
A.流入口および流出口ならびに光アノードおよびカソードを有し、任意選択でセパレータまたは膜によって分離され、アノードおよびカソード室が形成されたPDECセル;ここで、該カソードはガスに対して透過性である;ならびに
B.該PDECセルに連結された燃料電池であって、ここから、消費された燃料が再生のために該PDECセルに送られる、燃料電池
を備える、装置。
【請求項28】
酸化された燃料のためのガスセパレータが前記燃料電池の前記排気装置と前記PDECセルとの間に存在し、ここで、塩基性物質がガス状の消費された燃料と接触される、請求項65に記載の装置。
【請求項29】
光分解エネルギーを用いた消費された燃料の再生のための装置であって、
A.光を通す壁を有し、流入口および流出口ならびに該流入口および流出口内にフィルターを有してチャンバを形成するPDECセル;ならびに
B.チャンバ内の光触媒スラリー
を備える、装置。
【請求項30】
C.任意選択で前記PDECセルと該燃料電池との間にガス燃料排気セパレータを有し、該燃料電池の流出口が該PDECセルの流入口に連結されている、燃料電池、
を備える、請求項70に記載の装置。
【請求項31】
本明細書に記載のすべての新規な装置、方法および使用。
【請求項1】
A.人間の居住地のための密閉空間を提供すること;
B.CO2および/またはH2O(ここで、該CO2および/またはH2Oは、任意選択で少なくとも一部が該密閉空間内で生成されたものである)を、光分解により、化学薬品、燃料、食糧、オキシダントの1種類以上および/またはこれらの1種類以上の中間体を含む生成物に変換し、少なくとも一部を該密閉空間に供給すること;
C.工程Bの生成物の1種類以上からエネルギーを生成させること;ならびに
D.エネルギー生成および/または呼吸で消費された反応体を工程Bに再利用すること
を含む、密閉空間内に人間の居住地を提供するための方法。
【請求項2】
前記工程BのCO2および/またはH2Oの少なくとも一部が、以下:居住者の呼吸、燃料電池の排気ガスおよび改質装置から放出されるガスの1種類以上に由来するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程Bの生成物が、以下:酸素含有炭化水素、炭化水素、炭水化物、オリゴマー、ポリマー、水素、酸素、炭素、パラホルムアルデヒド、および化学薬品の中間体の1種類以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素がエチレンおよび/またはメタンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記炭水化物が、ホルムアルデヒド、トリオキサンまたは糖である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
C5糖が、工程BにおいてCO2によるC6糖への転化のために提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記密閉空間が、宇宙服、宇宙ステーション、月面建造物もしくは居留地、火星の建造物もしくは居留地、宇宙船、月もしくは惑星ローバー、または地球上でのサバイバルユニットである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記密閉空間内のガス圧が地球の1気圧(one earth atmosphere)未満に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記密閉空間内のガス圧が地球の1気圧の約0.4〜約0.8に維持される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
2つ以上の密閉空間が工程Aにおいて提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
生成物の少なくとも一部がロケット燃料である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
A.密閉空間を提供すること;
B.CO2および/またはH2O(ここで、該CO2および/またはH2Oは、任意選択で少なくとも一部が該密閉空間内で生成されたものである)を、光分解により、化学薬品、燃料、食糧、オキシダントの1種類以上および/またはこれらの1種類以上の中間体を含む生成物に変換し、少なくとも一部を該密閉空間に供給すること;
C.工程Bの生成物の1種類以上からエネルギーを生成させること;ならびに
D.エネルギー生成で消費された反応体を工程Bに再利用すること
を含む、エネルギーおよび反応体を密閉空間に供給するための方法。
【請求項12】
A.人間の居住地のための密閉空間を提供すること;
B.オキシダント、電子/電流および水素イオンを光分解により供給すること,
C.これらの電子および水素イオンを、CO2、化学的に酸化された有機もしくは無機化合物および/またはH2O(ここで、該CO2、化学的に酸化された有機および/または無機化合物および/またはH2Oは、任意選択で少なくとも一部が該密閉空間内で生成されたものである)を化学薬品、燃料、食糧、オキシダント、化学的に還元された有機もしくは無機化合物(1種類もしくは複数種)の1種類以上および/またはこれらの1種類以上の中間体を含む生成物に変換するために使用すること
D.工程Bおよび/またはCの生成物の1種類以上からエネルギーを生成させること;ならびに
E.エネルギー生成および/または人間の呼吸からの排気物質を工程Bに再利用すること
を含む、密閉空間内において電源を提供し、人間の呼吸雰囲気を維持するための方法。
【請求項13】
工程CのCO2、酸化された有機もしくは無機化合物(1種類もしくは複数種)および/またはH2Oの少なくとも一部が、以下:1人以上の居住者の呼吸空気、燃料電池の排気ガスおよび/または改質装置から放出されるガスの1種類以上に由来するものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程Cの生成物が、以下:酸素含有炭化水素、炭化水素、炭水化物、オリゴマー、ポリマー、水素、酸素、一酸化炭素、炭素、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、還元された無機化合物、ヒドロキノン、およびスルホキシドの1種類以上を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
工程Cの生成物が、以下:化学薬品の中間体、電気化学的に活性な有機化合物、およびその混合物の1種類以上を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記炭化水素が、エチレン、エタン、プロパン、プロピレン、イソブタン、イソブタン、ブタン、ブチレン、メタン、フィッシャー・トロプシュ生成物および/またはこれらの物質の混合物である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記炭水化物が、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、もしくは糖、またはこれらの物質の任意の組合せならびに異性体、C−5糖、C−6糖、グルコシドなどである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記還元された無機化合物が、
水、
N2、
Fe(II)、Pb(II)、Mn(II)、V(III)、Ce(III)、Cr(III)、Tl(I)、Hg(I)22+、Cu(I)、V(IV)O2+イオン、V(V)O2+イオンおよび/または例えば、オキソ含有イオン、単独イオン、水和イオン、キレートイオンまたは錯体の状態のイオンを含む他の金属イオン、
硫酸イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、亜ジチオン酸イオン、硫化物イオンおよび/またはイオウもしくはS含有過酸化物の他の還元形態
ホウ酸イオン、水素化ホウ素、シアノボロヒドリドおよび/またはホウ素もしくはB含有過酸化物の他の還元形態
銀、ニッケル、銅、金、鉄、カドミウム、鉛、亜鉛、マンガンもしくは他の金属、または金属混合物、
アンモニア、アンモニウムイオン、シアン化水素、ヒドロキシルアミン、
過酸化水素または金属過酸化物、
臭素酸イオン、
MnO2、ZnO、InSnO(ITO)、As2O3、マンガン酸塩、FeO、PbO、SnO、ならびに他のレドックス活性固体金属およびメタロイド酸化物
次亜塩素酸、ヨウ素酸イオン、I2、ヒドラジン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、亜塩素酸、塩素酸イオン、
N2O、N2O4、H2N2O2、亜硝酸、NO、元素のイオウ(S、S8)、元素のリン(P、P4)、次亜リン酸イオン、ホスホン酸イオン、ホスフィン(PH3)およびホスフィン誘導体、
フェロシアン化物
など、ならびにこれらの物質の混合物
の1種類以上である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
単独で、液体であるか、固体であるか、膜もしくはゲル内に固定化された状態の物質、あるいは水溶液として、極性溶媒中、溶融塩、あるいはこのような溶媒の組合せ中に存在する物質、および/または不活性な塩を含む物質であって、−2〜+16の任意のpHである、請求項18に記載の物質。
【請求項20】
C5糖が、工程CにおいてCO2によるC6糖への転化のために提供される、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記密閉空間が、宇宙服、宇宙ステーション、月面建造物もしくは生活モジュール、または密閉居留地、火星の建造物もしくは生活モジュール、または密閉居留地、地球周辺もしくは惑星間用宇宙船、月面、火星もしくは惑星ローバー、水中、海中ユニット、水中救助ユニット、または地球上でのサバイバルユニットである、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記密閉空間内のガス圧が地球の1気圧未満に維持される、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
前記密閉空間内のガス圧が地球の1気圧の約0.4〜約0.8に維持される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記電源が約5キロワット以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
前記酸化された無機化合物が、
過酸化水素、
Fe(II、III、VI)、Pb(IV)、Mn(III、IV、V、VI)、V(IV、V)、Ce(IV)、Cr(VI)、Tl(III)、Hg(II)、Cu(I、II)、Ag(I、II)、Ni(II、III、IV)、Au(I、III)、Cd(II)、Zn(II)、V(IV)O2+イオン、V(V)O2+イオンおよび/または、オキソ含有イオン、ハロゲン化物錯体、疑ハロゲン化物錯体、水酸化物錯体、単独イオン、水和イオン、キレートイオンまたは配位子との錯体の状態のイオンを含む他の金属イオン、
過硫酸イオンおよび/またはイオウもしくはS含有過酸化物の他の酸化形態
過ホウ酸イオンおよび/またはホウ素もしくはB含有過酸化物の他の酸化形態
ヒドロキシルアミン、亜硝酸イオン、硝酸イオン、シアン、H2N2O2、N2O4、亜硝酸、硝酸、
過酸化水素または金属過酸化物、例えば過酸化バリウムなど、
MnO2、ZnO、InSnO(ITO)、As2O5、過マンガン酸塩(MnO4−)、Fe3O4、KOH/K2FeO4ブレンド、LiOH/Li2FeO4ブレンド、アルカリおよび/またはアルカリ土類イオンを含む鉄酸塩(VI)の他のブレンド、PbO2、SnO2、ならびに他のレドックス活性固体金属およびメタロイド酸化物
臭素酸イオン、次亜塩素酸、過ヨウ素酸イオン、I2、Br2、亜塩素酸、塩素酸イオン、ホスホン酸イオン
N2O、N2O4、H2N2O2、亜硝酸、NO、
フェリシアン化物イオン
など、ならびに全体として中性電荷の物質に必要とされる任意の金属イオンまたは水素イオンまたは酸化物/水酸化物イオンとのこれらの物質の混合物
の1種類以上である、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
燃料再生および酸素生成のための装置であって、
A.光を吸収し、酸化を行なう光アノード;およびカソードを備え、任意選択でセパレータまたは膜によって分離され、アノードおよびカソード室が形成されたPDECセル;ならびに
b.その排気装置が該PDECセルに連結され、排気水が該アノード側に流れ、酸化された燃料または消費された燃料が該装置の該カソード側に流れる燃料電池
を備える、装置。
【請求項27】
燃料再生のための装置であって、
A.流入口および流出口ならびに光アノードおよびカソードを有し、任意選択でセパレータまたは膜によって分離され、アノードおよびカソード室が形成されたPDECセル;ここで、該カソードはガスに対して透過性である;ならびに
B.該PDECセルに連結された燃料電池であって、ここから、消費された燃料が再生のために該PDECセルに送られる、燃料電池
を備える、装置。
【請求項28】
酸化された燃料のためのガスセパレータが前記燃料電池の前記排気装置と前記PDECセルとの間に存在し、ここで、塩基性物質がガス状の消費された燃料と接触される、請求項65に記載の装置。
【請求項29】
光分解エネルギーを用いた消費された燃料の再生のための装置であって、
A.光を通す壁を有し、流入口および流出口ならびに該流入口および流出口内にフィルターを有してチャンバを形成するPDECセル;ならびに
B.チャンバ内の光触媒スラリー
を備える、装置。
【請求項30】
C.任意選択で前記PDECセルと該燃料電池との間にガス燃料排気セパレータを有し、該燃料電池の流出口が該PDECセルの流入口に連結されている、燃料電池、
を備える、請求項70に記載の装置。
【請求項31】
本明細書に記載のすべての新規な装置、方法および使用。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−505904(P2009−505904A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529271(P2008−529271)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/034004
【国際公開番号】WO2007/027876
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(504306714)バッテル メモリアル インスティテュート (26)
【氏名又は名称原語表記】BATTELLE MEMORIAL INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】505 King Avenue, Columbus, OH 43201−2693 (US)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/034004
【国際公開番号】WO2007/027876
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(504306714)バッテル メモリアル インスティテュート (26)
【氏名又は名称原語表記】BATTELLE MEMORIAL INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】505 King Avenue, Columbus, OH 43201−2693 (US)
【Fターム(参考)】
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