説明

電力伝達用絶縁回路及び電力変換装置

【課題】製造コストの上昇及び回路規模の増大を抑制しつつ、回路に流れる電流を簡易に検出することが可能な電力伝達用絶縁回路を得る。
【解決手段】電力伝達用絶縁回路101は、キャパシタC1と、出力端25へ電力を出力するキャパシタC2と、入力端24から入力された電力をキャパシタC1に供給するか否かを切り替える入力スイッチ部21と、入力スイッチ部21がキャパシタC1に電力を供給していないときに、キャパシタC1に蓄積された電力をキャパシタC2に供給するか否かを切り替える出力スイッチ部22と、キャパシタC2の両端電圧V2を検出する検出部23と、検出部23が検出する電圧に基づいて電力伝達用絶縁回路101の出力電流の電流値iを算出する算出部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力伝達用絶縁回路及び電力変換装置に関し、特に、入力端と出力端との間を絶縁しながら電力を伝達する電力伝達用絶縁回路、及びそれを備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV:Electric Vehicle)及びプラグイン方式のハイブリッドカー(HV:Hybrid Vehicle)等の駆動用の主電池を、一般家庭の交流電力を用いて充電するための電力変換装置が開発されている。
【0003】
すなわち、電気自動車及びプラグイン方式のハイブリッドカーの特長の一つは、家庭用コンセント等の外部電源を用いて主電池である車載バッテリを充電できることである。そして、AC100V又はAC200Vの家庭用コンセントを用いて車載バッテリを充電するには、交流電圧(AC)をバッテリ用の直流電圧(DC)に変換するためのAC/DCコンバータが必要となる。
【0004】
このようなAC/DCコンバータにおいては、安全対策上、入力側と出力側とを絶縁するのが望ましい。しかしながら、入力側と出力側との絶縁を行うために絶縁トランスを用いた場合、絶縁トランスのコイル部品などの体積及び重量が大きいので、AC/DCコンバータの大型化及び重量化を招くことになる。
【0005】
このような課題を解決するための構成として、下記特許文献1には、絶縁トランスを用いずに入力側と出力側との絶縁を行ったDC/DCコンバータが開示されている。当該DC/DCコンバータは、電源側の入力電圧を変圧して負荷側に出力するDC/DCコンバータであって、直流電源電圧が充電される第1キャパシタと、第1キャパシタに充電された電荷が放電される第2キャパシタと、第1キャパシタの両側に接続される2つのスイッチ素子と、第2キャパシタの両側に接続される2つのスイッチ素子と、負荷側に流れる電流を平滑化するリアクトルと、を備える。
【0006】
下記特許文献1に記載の構成を用いれば、これら4つのスイッチ素子を用いて回路を絶縁することができ、第1キャパシタが充放電する電荷の移動によって入力側から出力側に電力の伝達を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−222379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
AC/DCコンバータなどの電力変換装置においては、過電流が出力されることを防ぐだめに、電力伝達用絶縁回路の出力電流を検出することが求められている。特に車載バッテリに用いられる電力変換装置においては大電力が扱われるため、大電流に対応した電流検出を行わなければならない。大電流を検出可能な電流検出方法として、電力伝達用絶縁回路にシャント抵抗を取り付けて、シャント抵抗に流れる電流をアイソレーションアンプによって絶縁しつつ検出する方法がある。
【0009】
しかしながら、シャント抵抗を用いた方法は、シャント抵抗に電流が流れることで損失が発生したり、アイソレーションアンプが高価であるという問題点があった。また、これらの電流検出用の素子を追加することで、回路の大型化を招くという問題点もあった。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みて成されたものであり、製造コストの上昇及び回路規模の増大を抑制しつつ、回路に流れる電流を簡易に検出することが可能な電力伝達用絶縁回路、及びそれを備えた電力変換装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に係る電力伝達用絶縁回路は、入力端から入力された電力を出力端に伝達しつつ絶縁を行う電力伝達用絶縁回路であって、第1の蓄電素子と、前記出力端へ電力を出力する第2の蓄電素子と、前記入力端から入力された電力を前記第1の蓄電素子に供給するか否かを切り替える入力スイッチ部と、前記入力スイッチ部が前記第1の蓄電素子に電力を供給していないときに、前記第1の蓄電素子に蓄積された電力を前記第2の蓄電素子に供給するか否かを切り替える出力スイッチ部と、前記第2の蓄電素子の両端電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部が検出する両端電圧に基づいて、前記電力伝達用絶縁回路に流れる電流の値を算出する算出部と、を備えることを特徴とするものである。
【0012】
第1の態様に係る電力伝達用絶縁回路によれば、入力スイッチ部は、入力端から入力された電力を第1の蓄電素子に供給するか否かを切り替える。出力スイッチ部は、入力スイッチ部が第1の蓄電素子に電力を供給していないときに、第1の蓄電素子に蓄積された電力を第2の蓄電素子に供給するか否かを切り替える。第2の蓄電素子は、第1の蓄電素子から供給された電力を蓄積しつつ、出力端に電力を出力する。よって、入力端から入力された電力は、第1の蓄電素子と第2の蓄電素子とを介して出力端に伝達される。また、出力スイッチ部は、入力スイッチ部が第1の蓄電素子に電力を供給していないときに第2の蓄電素子に電力を供給するので、出力端と入力端とを絶縁することができる。さらに、電圧検出部は、第2の蓄電素子の両端電圧を検出し、算出部は、電圧検出部が検出する両端電圧に基づいて、電力伝達用絶縁回路に流れる電流値を算出する。したがって、第2の蓄電素子の両端電圧を用いた演算によって、電力伝達用絶縁回路に流れる電流の値を簡易に求めることができる。その結果、アイソレーションアンプ等を用いた電流検出回路は不要となるため、製造コストの上昇及び回路規模の増大を抑制することが可能となる。
【0013】
本発明の第2の態様に係る電力伝達用絶縁回路は、第1の態様に係る電力伝達用絶縁回路において特に、前記電力伝達用絶縁回路は、前記入力スイッチ部及び前記出力スイッチ部がともにオフである第1期間、前記入力スイッチ部がオンで前記出力スイッチ部がオフである第2期間、前記入力スイッチ部及び前記出力スイッチ部がともにオフである第3期間、及び前記入力スイッチ部がオフで前記出力スイッチ部がオンである第4期間を、この順に周期的に繰り返し、前記電圧検出部は、前記第1期間の始点である第1時点において、前記両端電圧である第1電圧を検出し、前記第1時点より後、前記第3期間の終了以前の第2時点において、前記両端電圧である第2電圧を検出し、前記算出部は、前記第1電圧と前記第2電圧とに基づいて、前記電力伝達用絶縁回路に流れる電流の値を算出することを特徴とするものである。
【0014】
第2の態様に係る電力伝達用絶縁回路によれば、電圧検出部は、第1期間の始点である第1時点において第1電圧を検出し、第1時点より後、第3期間の終了以前の第2時点において第2電圧を検出する。そして、算出部は、第1電圧と第2電圧とに基づいて、電力伝達用絶縁回路に流れる電流の値を算出する。第1電圧及び第2電圧をパラメータとする所定の式を用いて演算を行うことにより、電力伝達用絶縁回路に流れる電流の値を精度良く求めることが可能となる。
【0015】
本発明の第3の態様に係る電力伝達用絶縁回路は、第1又は第2の態様に係る電力伝達用絶縁回路において特に、前記第1の蓄電素子は第1端と第2端とを有し、前記第2の蓄電素子は第1端と第2端とを有し、前記入力スイッチ部は、前記入力端の一方端側に接続される第1端と前記第1の蓄電素子の第1端に接続される第2端とを有する第1のスイッチ素子、及び前記入力端の他方端側に接続される第1端と前記第1の蓄電素子の第2端に接続される第2端とを有する第2のスイッチ素子を含み、前記出力スイッチ部は、前記第1の蓄電素子の第1端に接続される第1端と前記第2の蓄電素子の第1端に接続される第2端とを有する第3のスイッチ素子、及び前記第1の蓄電素子の第2端に接続される第1端と前記第2の蓄電素子の第2端に接続される第2端とを有する第4のスイッチ素子を含むことを特徴とするものである。
【0016】
第3の態様に係る電力伝達用絶縁回路によれば、入力スイッチ部は、第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子をオンすることで、入力端から入力された電力を第1の蓄電素子に供給することができる。出力スイッチ部は、第3のスイッチ素子及び第4のスイッチ素子をオンすることで、第1の蓄電素子に蓄積された電力を第2の蓄電素子に供給することができる。したがって、第1〜第4のスイッチ素子のオン/オフを制御することで、算出部により電流値を算出しつつ、入力端と出力端との絶縁、及び入力端から出力端への電力の伝達を簡易に行うことが可能となる。
【0017】
本発明の第4の態様に係る電力伝達用絶縁回路は、第1〜第3のいずれか一つの態様に係る電力伝達用絶縁回路において特に、前記電圧検出部はフォトカプラを有することを特徴とするものである。
【0018】
第4の態様に係る電力伝達用絶縁回路によれば、フォトカプラの発光素子と受光素子との間は絶縁されているため、電圧を検出する対象である電力伝達系回路と、電圧値から電流値の算出などを行う信号処理系回路との絶縁を行うことが可能となる。
【0019】
本発明の第5の態様に係る電力変換装置は、入力電圧を昇圧又は降圧し、昇圧又は降圧した電圧を出力する昇降圧回路と、前記昇降圧回路が昇圧又は降圧した前記電圧を受けて、絶縁を行いつつ出力側に電力を伝達する、第1の態様に係る電力伝達用絶縁回路と、を備えることを特徴とするものである。
【0020】
第5の態様に係る電力変換装置は、第1の態様に係る電力伝達用絶縁回路を備える。従って、電力変換装置全体としても、製造コストの上昇及び回路規模の増大を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、製造コストの上昇及び回路規模の増大を抑制しつつ、回路に流れる電流を簡易に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る電力変換装置の構成を概略的に示す回路図である。
【図2】電圧検出部の構成を示す図である。
【図3】スイッチ素子のオンオフ状態とキャパシタの両端電圧との関係を示したタイムチャートである。
【図4】キャパシタ及び負荷を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る電力変換装置201の構成を概略的に示す回路図である。図1の接続関係で示すように電力変換装置201は、電力伝達用絶縁回路101、整流部102、及び昇降圧回路103を備えて構成されている。電力伝達用絶縁回路101は、キャパシタC0〜C2、入力スイッチ部21、出力スイッチ部22、入力端24、出力端25、検出部23、算出部13、及び制御部14を含む。入力スイッチ部21は、スイッチ素子Z1,Z2を含む。出力スイッチ部22は、スイッチ素子Z3,Z4を含む。検出部23は、電圧検出部10〜12を含む。
【0025】
電力変換装置201は、交流電源202から供給された交流電力を直流電力に変換して負荷203に供給する。負荷203は、例えば、EV及びプラグイン方式のHV等の駆動用のバッテリである。
【0026】
整流部102は、例えばダイオードブリッジを含んで構成されており、交流電源202から入力された交流電力を全波整流することにより、直流電力を出力する。
【0027】
昇降圧回路103は、整流部102から入力された直流電力を昇圧又は降圧することにより、任意の電圧レベルの直流電力に変換して出力する。
【0028】
電力伝達用絶縁回路101において、スイッチ素子Z1は、キャパシタC0の第1端である端子T11と電気的に接続された第1端である端子T1、及びキャパシタC1の第1端である端子T13と電気的に接続された第2端である端子T2を有する。スイッチ素子Z2は、キャパシタC0の第2端である端子T12と電気的に接続された第1端である端子T3、及びキャパシタC1の第2端である端子T14と電気的に接続された第2端である端子T4を有する。スイッチ素子Z3は、端子T13と電気的に接続された第1端である端子T5、及びキャパシタC2の第1端である端子T15と電気的に接続された第2端である端子T6を有する。スイッチ素子Z4は、端子T14と電気的に接続された第1端である端子T7、及びキャパシタC2の第2端である端子T16と電気的に接続された第2端である端子T8を有する。
【0029】
キャパシタC0は、昇降圧回路103から入力された直流電力を蓄える。入力スイッチ部21は、スイッチ素子Z1の端子T1及びスイッチ素子Z2の端子T3において受けた電力をキャパシタC1に供給するか否かを切り替える。出力スイッチ部22は、キャパシタC1に蓄積された電荷をキャパシタC2及び負荷203に供給するか否かを切り替える。キャパシタC2に蓄積された電荷は、放電されて出力端25から負荷203に供給される。
【0030】
制御部14は、ゲート駆動信号G1〜G4をスイッチ素子Z1〜Z4に入力することにより、スイッチ素子Z1〜Z4のオンオフを切り替える。電力伝達用絶縁回路101は、制御部14のスイッチ制御により、整流部102及び負荷203間を絶縁しながら、キャパシタC0に蓄えられた電力を負荷203に伝達する。
【0031】
電圧検出部10は、スイッチ素子Z1の端子T1及びスイッチ素子Z2の端子T3間の電圧V0、すなわちキャパシタC0の両端電圧V0を検出する。電圧V0は、昇降圧回路103が出力する直流電圧の電圧であり、電力伝達用絶縁回路101の入力電圧でもある。電圧検出部11は、キャパシタC1の両端電圧V1を検出する。電圧検出部12は、キャパシタC2の両端電圧V2を検出する。
【0032】
図2は、電圧検出部10の構成を示す図である。図2では電圧検出部10の構成を代表的に示しているが、電圧検出部11,12の構成もこれと同様である。
【0033】
図2を参照して、電圧検出部10は、フォトカプラX1、入力抵抗R1、及び出力抵抗R2を含む。キャパシタC0の端子T11及び端子T12間に、入力抵抗R1とフォトカプラX1の発光素子とが直列に接続されている。フォトカプラX1の電源電圧Vccが供給されるノードと接地電圧が供給されるノードとの間に、フォトカプラX1の受光素子と出力抵抗R2とが直列に接続されている。
【0034】
キャパシタC0の両端に電圧が印加されたとき、当該電圧に応じた量の電流がフォトカプラX1の発光素子を通して流れ、この電流量がフォトカプラX1の受光素子に伝達される。すなわち、キャパシタC0の両端電圧に応じた量の電流が、フォトカプラX1における受光素子を通して流れる。これにより、電圧検出部10は、キャパシタC0の両端電圧V0の電圧値を検出することができる。フォトカプラX1の発光素子と受光素子との間に電気的接続はなく、絶縁されている。そのため、算出部13とキャパシタC0との間は絶縁され、キャパシタC0の両端電圧に応じた大きさの電圧が、安全に算出部13へ伝達される。同様に、電圧検出部11は、キャパシタC1の両端電圧V1の電圧値を検出し、両端電圧V1に応じた大きさの電圧が算出部13へ伝達される。また、電圧検出部12は、キャパシタC2の両端電圧V2の電圧値を検出し、両端電圧V2に応じた大きさの電圧が算出部13へ伝達される。
【0035】
算出部13は、電圧検出部12が検出したキャパシタC2の両端電圧V2の電圧値に基づいて、電力伝達用絶縁回路101の出力電流の電流値を算出する。この電流値の算出手法の詳細については後述する。算出部13は、算出した出力電流の電流値を制御部14に入力する。
【0036】
次に、電力伝達用絶縁回路101が行う電力伝達におけるスイッチ素子Z1〜Z4の動作と、キャパシタC0〜C2の両端電圧V0〜V2との関係について説明する。図3は、スイッチ素子Z1〜Z4のオンオフの状態とキャパシタC0〜C2の両端電圧V0〜V2との関係を示したタイムチャートである。電力伝達用絶縁回路101は、この順に連続する期間P1〜P4を一周期として繰り返す定常動作を行うことで、昇降圧回路103及び負荷203間の電力伝達を行っている。なお、図3においては、直流電圧である電圧V0の大きさは電圧値V00である。期間P1開始時の電圧V1の大きさは電圧値V10であり、期間P4開始時の電圧V1の大きさは電圧値V11である。期間P1開始時の電圧V2の大きさは電圧値V20であり、期間P4開始時の電圧V2の大きさは電圧値V21である。
【0037】
図3を参照して、まず制御部14は、期間P1において、スイッチ素子Z1〜Z4をオフする。これにより、電力伝達用絶縁回路101の入力側と出力側との間の絶縁を確保するためのデッドタイムが設けられる。つまり、このデッドタイムを設けることにより、入力スイッチ部21及び出力スイッチ部22の各スイッチ素子を介して電力伝達用絶縁回路101の入力側と出力側との間が短絡することが防止されている。これにより、昇降圧回路103と負荷203との間の絶縁が確保される。またこのとき、キャパシタC2に蓄積されていた電荷は、放電されて負荷203に供給される。キャパシタC2に蓄積されている電荷が減少することにより、キャパシタC2の両端電圧V2は徐々に低下する。
【0038】
次に制御部14は、期間P2において、スイッチ素子Z1,Z2をオンし、スイッチ素子Z3,Z4をオフする。これにより、キャパシタC0から放電された電荷によってキャパシタC1が充電される。キャパシタC1に蓄積されている電荷が増加することにより、キャパシタC1の両端電圧V1は徐々に上昇する。また、スイッチ素子Z3,Z4がオフされていることにより、昇降圧回路103と負荷203と間の絶縁は確保されている。またこのとき、キャパシタC2に蓄積されていた電荷は、放電されて負荷203に供給される。キャパシタC2に蓄積されている電荷が減少することにより、キャパシタC2の両端電圧V2は徐々に低下する。
【0039】
次に制御部14は、期間P3において、スイッチ素子Z1〜Z4をオフする。これにより、期間P1と同様に、電力伝達用絶縁回路101の入力側と出力側との間の絶縁を確保するためのデッドタイムが設けられる。またこのとき、キャパシタC2に蓄積されていた電荷は、放電されて負荷203に供給される。キャパシタC2に蓄積されている電荷が減少することにより、キャパシタC2の両端電圧V2は徐々に低下する。
【0040】
次に制御部14は、期間P4において、スイッチ素子Z1,Z2をオフし、スイッチ素子Z3,Z4をオンする。これにより、キャパシタC1から放電された電荷によってキャパシタC2が充電される。キャパシタC1に蓄積されている電荷が減少することにより、キャパシタC1の両端電圧V1は徐々に低下する。また、キャパシタC2に蓄積されている電荷が増加することにより、キャパシタC2の両端電圧V2は徐々に上昇する。また、スイッチ素子Z1,Z2がオフされていることにより、昇降圧回路103と負荷203との間の絶縁は確保されている。
【0041】
このように、期間P2の開始時から終了時までの間で、電圧V1は電圧値V10から電圧値V11に上昇する。期間P4の開始時から終了時までの間で、電圧V1は電圧値V11から電圧値V10に低下する。また、期間P1の開始時から期間P3の終了時までの間で、電圧V2は電圧値V20から電圧値V21に低下する。期間P4の開始時から終了時までの間で、電圧V2は電圧値V21から電圧値V20に上昇する。電圧V1及び電圧V2は、このような電圧値の上昇及び低下を繰り返し行うことで脈動している。この期間P1〜P4を作り出す、スイッチ素子Z1〜Z4のスイッチングの周波数は、例えば数kHz〜数十kHzである。
【0042】
以下、算出部13による電力伝達用絶縁回路101の出力電流の算出手法について説明する。図4は、キャパシタC2及び負荷203を示す回路図である。図4に示すように、キャパシタC2の静電容量をC、キャパシタC2の両端電圧V2の電圧値をV、負荷203の抵抗値をR、電力伝達用絶縁回路101の出力電流の電流値をiとする。また、図3を参照して、期間P1の開始点である第1時点におけるキャパシタの両端電圧V2の電圧値はV20である。そして、第1時点よりも後、かつ期間P3の終了以前である第2時点におけるキャパシタC2の両端電圧V2の電圧値をV(t)とする。ここで「t」は、第1時点と第2時点との間の時間間隔であり、期間P1〜P3の合計時間より短い。
【0043】
このとき、図3に示した期間P1〜P3においては、抵抗値Rは一定とみなすことができるため、電圧値V(t)は下記式(1)によって表される。
【0044】
【数1】

【0045】
従って、抵抗値RLは下記式(2)によって表され、電流値iは下記式(3)によって表される。
【0046】
【数2】

【0047】
【数3】

【0048】
式(3)より、電圧値V20と電圧値V(t)とが分かれば、電流値iを求めることができる。
【0049】
そこで、まず電圧検出部12は、期間P1の開始点である第1時点において、キャパシタC2の両端電圧V2を検出する。そして、その検出結果である電圧値V20を算出部13に入力する。次に電圧検出部12は、第1時点よりも後、かつ期間P3の終了以前である第2時点において、キャパシタC2の両端電圧V2を検出する。そして、その検出結果である電圧値V(t)を算出部13に入力する。そして算出部13は、入力された電圧値V20及び電圧値V(t)を用いて式(3)の演算を行うことにより、電流値iを算出する。
【0050】
このような電流値iの算出処理は例えば100ミリ秒間隔で定期的に実行されることにより、出力電流の異常の有無が監視される。この出力電流の監視において、出力電流の電流値が異常値を示した場合には、制御部14は、スイッチ素子Z1〜Z4をオフすることにより、負荷203に異常な電流が流れることを防止する。
【0051】
また、負荷203がバッテリ等である場合には、バッテリの充電が進行してバッテリの電圧と電力伝達用絶縁回路101の出力電圧との差が小さくなったときに、バッテリへ供給される電力伝達用絶縁回路101の出力電流が小さくなって、充電がそれ以上進行しにくい状態となることがある。このような場合、算出部13によって電力伝達用絶縁回路101の出力電流の電流値iを算出し、充電の進行に伴って電流値iが小さくなってきたことを検出した場合には、昇降圧回路103によって電力伝達用絶縁回路101の出力電圧をより高いレベルに設定することで、バッテリに押し込み充電を行うことが可能となる。この押し込み充電により、バッテリの充電を速やかに完了することができる。
【0052】
このように本実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路101によれば、入力スイッチ部21は、入力端24から入力された電力をキャパシタC1に供給するか否かを切り替える。出力スイッチ部22は、入力スイッチ部21がキャパシタC1に電力を供給していないときに、キャパシタC1に蓄積された電力をキャパシタC2に供給するか否かを切り替える。キャパシタC2は、キャパシタC1から供給された電力を蓄積しつつ、出力端25に電力を出力する。よって、入力端24から入力された電力は、キャパシタC1とキャパシタC2とを介して出力端25に伝達される。また、出力スイッチ部22は、入力スイッチ部21がキャパシタC1に電力を供給していないときにキャパシタC2に電力を供給するので、出力端25と入力端24とを絶縁することができる。さらに、電圧検出部12は、キャパシタC2の両端電圧V2を検出し、算出部13は、電圧検出部12が検出する両端電圧V2に基づいて、電力伝達用絶縁回路101に流れる電流値iを算出する。したがって、キャパシタC2の両端電圧V2を用いた演算によって、電力伝達用絶縁回路101に流れる電流の電流値iを簡易に求めることができる。その結果、アイソレーションアンプ等を用いた電流検出回路は不要となるため、製造コストの上昇及び回路規模の増大を抑制することが可能となる。
【0053】
また、本実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路101によれば、電圧検出部12は、第1期間P1の始点である第1時点において電圧値V20(第1電圧)を検出し、第1時点より後、第3期間P3の終了以前の第2時点において電圧値V(t)(第2電圧)を検出する。そして、算出部13は、電圧値V20と電圧値V(t)とに基づいて、電力伝達用絶縁回路101に流れる電流の電流値iを算出する。電圧値V20及び電圧値V(t)をパラメータとする式(3)を用いて演算を行うことにより、電力伝達用絶縁回路101に流れる電流の電流値iを精度良く求めることが可能となる。
【0054】
また、本実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路101によれば、入力スイッチ部21は、スイッチ素子Z1(第1のスイッチ素子)及びスイッチ素子Z2(第2のスイッチ素子)をオンすることで、入力端24から入力された電力をキャパシタC1に供給することができる。出力スイッチ部22は、スイッチ素子Z3(第3のスイッチ素子)及びスイッチ素子Z4(第4のスイッチ素子)をオンすることで、キャパシタC1に蓄積された電力をキャパシタC2に供給することができる。したがって、スイッチ素子Z1〜Z4のオン/オフを制御することで、算出部13により電流値iを算出しつつ、入力端24と出力端25との絶縁、及び入力端24から出力端25への電力の伝達を簡易に行うことが可能となる。
【0055】
また、本実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路101によれば、フォトカプラX1の発光素子と受光素子との間は絶縁されているため、電圧を検出する対象である電力伝達系回路と、電圧値から電流値の算出などを行う信号処理系回路(算出部13及び制御部14等)との絶縁を行うことが可能となる。
【0056】
また、本実施の形態に係る電力変換装置201は、電力伝達用絶縁回路101を備える。従って、電力変換装置201全体としても、製造コストの上昇及び回路規模の増大を抑制することが可能となる。
【0057】
なお、今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、本実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路101は蓄電素子としてキャパシタC0〜C2を備えるが、蓄電素子はキャパシタに限らず、コイル(インダクタ)等の他の蓄電素子であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
C0〜C2 キャパシタ
Z1〜Z4 スイッチ素子
10〜12 電圧検出部
13 算出部
14 制御部
21 入力スイッチ部
22 出力スイッチ部
23 検出部
101 電力伝達用絶縁回路
102 整流部
103 昇降圧回路
201 電力変換装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端から入力された電力を出力端に伝達しつつ絶縁を行う電力伝達用絶縁回路であって、
第1の蓄電素子と、
前記出力端へ電力を出力する第2の蓄電素子と、
前記入力端から入力された電力を前記第1の蓄電素子に供給するか否かを切り替える入力スイッチ部と、
前記入力スイッチ部が前記第1の蓄電素子に電力を供給していないときに、前記第1の蓄電素子に蓄積された電力を前記第2の蓄電素子に供給するか否かを切り替える出力スイッチ部と、
前記第2の蓄電素子の両端電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部が検出する両端電圧に基づいて、前記電力伝達用絶縁回路に流れる電流の値を算出する算出部と、
を備える電力伝達用絶縁回路。
【請求項2】
前記電力伝達用絶縁回路は、前記入力スイッチ部及び前記出力スイッチ部がともにオフである第1期間、前記入力スイッチ部がオンで前記出力スイッチ部がオフである第2期間、前記入力スイッチ部及び前記出力スイッチ部がともにオフである第3期間、及び前記入力スイッチ部がオフで前記出力スイッチ部がオンである第4期間を、この順に周期的に繰り返し、
前記電圧検出部は、前記第1期間の始点である第1時点において、前記両端電圧である第1電圧を検出し、前記第1時点より後、前記第3期間の終了以前の第2時点において、前記両端電圧である第2電圧を検出し、
前記算出部は、前記第1電圧と前記第2電圧とに基づいて、前記電力伝達用絶縁回路に流れる電流の値を算出する、請求項1に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項3】
前記第1の蓄電素子は第1端と第2端とを有し、
前記第2の蓄電素子は第1端と第2端とを有し、
前記入力スイッチ部は、前記入力端の一方端側に接続される第1端と前記第1の蓄電素子の第1端に接続される第2端とを有する第1のスイッチ素子、及び前記入力端の他方端側に接続される第1端と前記第1の蓄電素子の第2端に接続される第2端とを有する第2のスイッチ素子を含み、
前記出力スイッチ部は、前記第1の蓄電素子の第1端に接続される第1端と前記第2の蓄電素子の第1端に接続される第2端とを有する第3のスイッチ素子、及び前記第1の蓄電素子の第2端に接続される第1端と前記第2の蓄電素子の第2端に接続される第2端とを有する第4のスイッチ素子を含む、請求項1又は2に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項4】
前記電圧検出部はフォトカプラを有する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項5】
入力電圧を昇圧又は降圧し、昇圧又は降圧した電圧を出力する昇降圧回路と、
前記昇降圧回路が昇圧又は降圧した前記電圧を受けて、絶縁を行いつつ出力側に電力を伝達する、請求項1に記載の電力伝達用絶縁回路と、
を備える電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−175810(P2012−175810A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35475(P2011−35475)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】