説明

電力使用量予測装置および電力使用量予測方法

【課題】ヒータの昇温能力の経時変化を電力使用量の予測に反映する。
【解決手段】電力使用量予測装置は、ヒータの加熱する能力を表すヒータ能力係数HPを記憶するヒータ能力係数記憶部5と、制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数THを記憶する昇温時間係数記憶部6と、ヒータの電力使用量を予測する電力使用量予測部7と、操作量上限値OHを取得する操作量上限値取得部8と、昇温を開始した後に操作量MVが操作量上限値OHに到達している時間帯において制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す実績値THxを求める時間実績計測部11と、実績値THxに基づく補正が昇温時間係数THを大きくする補正になると判定した場合のみ、実績値THxを用いて昇温時間係数THを補正する昇温時間係数補正部12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス制御技術に係り、特に電力使用量を予測する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化問題に起因する法改正などに伴い、工場や生産ラインのエネルギー使用量管理が強く求められている。工場内の加熱装置や空調機器は特にエネルギー使用量の大きな設備装置であるため、エネルギー使用量の上限を、本来備える最大量よりも低く抑えるように管理されることが多い。例えば電力を使用する設備装置では、電力デマンド管理システムからの指示により、特定の電力使用量以内に制限する運用が行なわれている。
【0003】
このような事情により、電気ヒータを備える加熱装置を対象として、立ち上げ時に供給される電力を推定する電力使用量予測装置が提案されている(特許文献1参照)。この電力使用量予測装置が対象とする加熱装置の1例を図8に示す。図8の例では、空気循環式の加熱チャンバー101の内部にヒータ102と温度センサ103とが設置されている。温度センサ103は、ヒータ102によって加熱される空気の温度PVを計測する。温調計100は、温度計測値PVが温度設定値SPと一致するように操作量MVを算出する。電力調整器104は、操作量MVに応じた電力を決定し、この決定した電力を電力供給回路105を通じてヒータ102に供給する。こうして、温調計100は、加熱チャンバー101内の温度を制御する。
【0004】
特許文献1に開示された電力使用量予測装置は、ヒータ102の加熱する能力を表すヒータ能力係数HPと、加熱チャンバー101を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数THと、昇温開始時点における温度設定値SPと温度計測値PVとの差である制御偏差に基づいて、ヒータ102の電力使用量を予測するようにしたものである。
図9は特許文献1に開示された電力使用量予測装置の原理を説明する図であり、整定している温度制御系において温度設定値SPを変更したときの温度計測値PVと操作量MVの変化を示す図である。
【0005】
図8に示したような加熱装置は、昇温時に大きめのヒータ出力を利用してほぼ一定の昇温速度で昇温し、温度計測値PVが温度設定値SPに到達する直前にヒータ出力を小さめの出力に絞るように動作する。あるいは、このような昇温特性になるように、コントローラの制御特性が調整される。このような特性で昇温を実行する場合、ヒータ102に与えられる操作量MVの大きさに対応して昇温速度が増減するので、昇温に必要な電力使用量は、操作量MVの大きさとその維持時間の積に概ね比例するものと考えられる。結果的に、電力使用量は、昇温幅、すなわち温度設定値変更時の制御偏差に概ね比例することになる。そこで、代表的な昇温パターンを最低1つ予め調べておき、そのときの昇温過程における使用電力に基づき、温度設定値変更時の制御偏差を基本的入力変数とする関数により使用電力を算出する。以上が、特許文献1に開示された電力使用量予測装置の原理である。このような電力使用量予測装置は、温調計などの汎用的に使用される制御機器に実装されることで、広く普及するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−25867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電力使用量予測の高精度化は、契約電力量を超えないように管理するためにも重要であり、電力使用後に実績が確認できればよいというものではない。
通常のヒータは、経時変化により発熱効率(ワット密度)が悪くなり、昇温能力が落ちて、電力使用量が大きくなるように変化する。しかし、このような経時変化を事前に把握しておくことは困難である。ゆえに、特許文献1に開示された電力使用量予測装置では、ヒータ劣化による経時変化を修正できないので、経時変化による誤差分は全く修正されないままにせざるを得ない。
【0008】
全く同じ制御条件、例えばヒータの使用初期のころから同じ昇温パターンを繰り返すような制御条件で電力使用量の実績を比較していくならば、経時変化を定量化していくことも可能である。しかし、製造装置の場合、製造対象(加熱装置内に投入される製品などの被加熱物)が変われば制御条件も変わるので、単純な比較は難しい。
例えば、ヒータ使用の初期のころに、製品Aを主に製造していたとする。このときの熱処理の温度パターンが、200℃で予備加熱した後に300℃に昇温させるものとする。また、そのときの電力使用量がほぼ常時800Wだったとする。
【0009】
そして、ヒータ劣化を気にすべきころに、製品Aを製造することがなくなり、製品Bを主に製造するようになるとする。このときの熱処理の温度パターンが、150℃で予備加熱した後に350℃に昇温させるものとする。そのときの電力使用量がほぼ常時1800Wだったとする。電力使用量は増えているにしても、制御条件(温度パターン)が変化しているので、ヒータの性能が変化したとは一概には言えない。
このように制御条件が変わっていくと、ヒータ劣化による経時変化分と制御条件の変化分とを切り分けられなくなるので、経時変化を考慮して電力予測を継続することが難しくなる。
【0010】
本発明は、温調計などの汎用的に使用される制御機器に適用されることを前提とし、例えばヒータ使用の初期のころに行なわれていた昇温パターンと異なる昇温パターンになっても、ヒータの昇温能力の経時変化を電力使用量の予測に反映することができる電力使用量予測装置および電力使用量予測方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、限られた昇温機会を可能な限り利用して、ヒータ性能の経時変化分を比較することで、簡易的にヒータ劣化を判定可能にする電力使用量予測装置および電力使用量予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、制御対象を加熱するヒータと、制御対象の温度を計測する温度センサと、この温度センサによって計測された温度計測値PVと外部から入力された温度設定値SPに基づいて操作量MVを算出して前記ヒータに出力するコントローラとからなる制御系において、前記制御対象を昇温するときに必要とされる前記ヒータの電力使用量PWを予測する電力使用量予測装置であって、昇温開始時点における温度設定値SPを取得する温度設定値入力手段と、昇温開始時点における温度計測値PVを取得する温度計測値入力手段と、昇温開始時点における操作量MVを取得する操作量入力手段と、前記コントローラに設定されている操作量上限値OHを取得する操作量上限値取得手段と、前記ヒータの加熱する能力を表すヒータ能力係数HPを記憶するヒータ能力係数記憶手段と、前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数THを記憶する昇温時間係数記憶手段と、前記温度設定値SPと前記温度計測値PVとの差である制御偏差、前記ヒータ能力係数HPおよび前記昇温時間係数THに基づいて、前記電力使用量PWを予測する電力使用量予測手段と、昇温を開始した後に前記操作量MVが前記操作量上限値OHに到達している時間帯において前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す実績値THxを求める時間実績計測手段と、前記実績値THxに基づく補正が前記昇温時間係数THを大きくする補正になると判定した場合のみ、前記実績値THxを用いて前記昇温時間係数THを補正する昇温時間係数補正手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の電力使用量予測装置の1構成例において、前記電力使用量予測手段は、前記電力使用量PWを予測する際に、前記操作量MVと前記操作量上限値OHに基づいて前記昇温時間係数THを補正することを特徴とするものである。
また、本発明の電力使用量予測装置の1構成例は、さらに、前記ヒータの総稼動時間LTを積算する稼動時間積算手段を備え、前記昇温時間係数補正手段は、前記実績値THxと前記昇温時間係数THとの差から補正値候補THnを算出すると共に、前記総稼動時間LTから補正範囲を算出し、前記補正値候補THnを用いた補正が前記補正範囲内に収まるようにして前記昇温時間係数THを補正することを特徴とするものである。
また、本発明の電力使用量予測装置の1構成例は、さらに、前記昇温時間係数THの初期値TH0を記憶する昇温時間係数初期値記憶手段と、前記昇温時間係数THの初期値TH0と前記昇温時間係数補正手段が算出した昇温時間係数THの補正値との比率をヒータ劣化度として算出するヒータ劣化度算出手段と、前記ヒータ劣化度が予め規定された数値γ以上の場合に、前記ヒータが劣化したことをユーザに通知するヒータ劣化通知手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の電力使用量予測装置は、昇温開始時点における温度設定値SPを取得する温度設定値入力手段と、昇温開始時点における温度計測値PVを取得する温度計測値入力手段と、昇温開始時点における操作量MVを取得する操作量入力手段と、前記コントローラに設定されている操作量上限値OHを取得する操作量上限値取得手段と、前記ヒータの加熱する能力を表すヒータ能力係数HPを記憶するヒータ能力係数記憶手段と、前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数THを記憶する昇温時間係数記憶手段と、前記温度設定値SPと前記温度計測値PVとの差である制御偏差、前記ヒータ能力係数HPおよび前記昇温時間係数THに基づいて、前記電力使用量PWを予測する電力使用量予測手段と、昇温を開始した後に前記操作量MVが前記操作量上限値OHに到達している時間帯における前記ヒータの電力使用量PWxを計測し、この電力使用量PWxと前記ヒータ能力係数HPと前記電力使用量予測手段が算出した電力使用量PWとから前記ヒータ能力係数HPの実績値HPxを算出する電力実績計測手段と、前記実績値HPxに基づく補正が前記ヒータ能力係数HPを大きくする補正になると判定した場合のみ、前記実績値HPxを用いて前記ヒータ能力係数HPを補正するヒータ能力係数補正手段とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の電力使用量予測装置の1構成例において、前記電力使用量予測手段は、前記電力使用量PWを予測する際に、前記操作量MVと前記操作量上限値OHに基づいて前記昇温時間係数THを補正することを特徴とするものである。
また、本発明の電力使用量予測装置の1構成例は、さらに、前記ヒータの総稼動時間LTを積算する稼動時間積算手段を備え、前記ヒータ能力係数補正手段は、前記実績値HPxと前記ヒータ能力係数HPとの差から補正値候補HPnを算出すると共に、前記総稼動時間LTから補正範囲を算出し、前記補正値候補HPnを用いた補正が前記補正範囲内に収まるようにして前記ヒータ能力係数HPを補正することを特徴とするものである。
また、本発明の電力使用量予測装置の1構成例は、さらに、前記ヒータ能力係数HPの初期値HP0を記憶するヒータ能力係数初期値記憶手段と、前記ヒータ能力係数HPの初期値HP0と前記ヒータ能力係数補正手段が算出したヒータ能力係数HPの補正値との比率をヒータ劣化度として算出するヒータ劣化度算出手段と、前記ヒータ劣化度が予め規定された数値γ以上の場合に、前記ヒータが劣化したことをユーザに通知するヒータ劣化通知手段とを備えることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の電力使用量予測方法は、昇温開始時点における温度設定値SPを取得する温度設定値入力ステップと、昇温開始時点における温度計測値PVを取得する温度計測値入力ステップと、昇温開始時点における操作量MVを取得する操作量入力ステップと、前記コントローラに設定されている操作量上限値OHを取得する操作量上限値取得ステップと、前記温度設定値SPと前記温度計測値PVとの差である制御偏差、前記ヒータの加熱する能力を表すヒータ能力係数HP、および前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数THに基づいて、前記電力使用量PWを予測する電力使用量予測ステップと、昇温を開始した後に前記操作量MVが前記操作量上限値OHに到達している時間帯において前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す実績値THxを求める時間実績計測ステップと、前記実績値THxに基づく補正が前記昇温時間係数THを大きくする補正になると判定した場合のみ、前記実績値THxを用いて前記昇温時間係数THを補正する昇温時間係数補正ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の電力使用量予測方法は、昇温開始時点における温度設定値SPを取得する温度設定値入力ステップと、昇温開始時点における温度計測値PVを取得する温度計測値入力ステップと、昇温開始時点における操作量MVを取得する操作量入力ステップと、前記コントローラに設定されている操作量上限値OHを取得する操作量上限値取得ステップと、前記温度設定値SPと前記温度計測値PVとの差である制御偏差、前記ヒータの加熱する能力を表すヒータ能力係数HP、および前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数THに基づいて、前記電力使用量PWを予測する電力使用量予測ステップと、昇温を開始した後に前記操作量MVが前記操作量上限値OHに到達している時間帯における前記ヒータの電力使用量PWxを計測し、この電力使用量PWxと前記ヒータ能力係数HPと前記電力使用量予測ステップで算出した電力使用量PWとから前記ヒータ能力係数HPの実績値HPxを算出する電力実績計測ステップと、前記実績値HPxに基づく補正が前記ヒータ能力係数HPを大きくする補正になると判定した場合のみ、前記実績値HPxを用いて前記ヒータ能力係数HPを補正するヒータ能力係数補正ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ヒータの昇温能力の経時変化を昇温時間係数THに反映することで、精度の高い電力使用量予測を維持することができる。また、本発明では、実績値THxに基づく補正が昇温時間係数THを大きくする補正になると判定した場合のみ昇温時間係数THを補正することにより、何らかの偶然による不自然な変化を抑制することができる。
【0018】
また、本発明では、ヒータの昇温能力の経時変化をヒータ能力係数HPに反映することで、精度の高い電力使用量予測を維持することができる。また、本発明では、実績値HPxに基づく補正がヒータ能力係数HPを大きくする補正になると判定した場合のみヒータ能力係数HPを補正することにより、何らかの偶然による不自然な変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】温度制御系において温度設定値を変更したときの温度計測値と操作量の変化の例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る電力使用量予測装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る電力使用量予測装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】ヒータの昇温能力の劣化倍率とヒータの総稼動時間との関係の1例を示す図である。
【図5】ヒータの昇温能力の劣化倍率とヒータの総稼動時間との関係の他の例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る電力使用量予測装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る電力使用量予測装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】加熱装置の1例を示す図である。
【図9】従来の電力使用量予測装置の原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[発明の原理1]
原理的に、制御条件が変化しても共通で利用できる指標が昇温時間係数THあるいはヒータ能力係数HPであり、ヒータによる加熱の特徴として、図9に示したように操作量MVが出力上限値OHに飽和した状態で昇温することのみを前提としている。ヒータの劣化による経時変化では、ヒータの発熱効率(ワット密度)が悪くなり、昇温能力が落ちて、電力使用量が大きくなるように変化する。ヒータの劣化は、昇温について言えば、操作量MVが出力上限値OHに飽和した状態で昇温する傾向が強くなる方向の変化である。そこで、操作量MVの飽和の状態を計測すれば、ヒータの経時変化の監視を継続することが可能になることに着眼した。このような監視によると、制御機器メーカから製造装置メーカあるいは製造装置ユーザに流通するプロセスにおいて、ヒータの経時変化を単純かつ適正に管理しやすくなるので、有効である。
【0021】
また、本発明では、ヒータの昇温能力が、急激に変化することはないということと、一方向にしか変化しないということを、知識としてアルゴリズムに組み込むことが可能なので、何らかの偶然による不自然な変化を抑制することができる。そして、ヒータの経時変化を昇温時間係数THあるいはヒータ能力係数HPに反映する(すなわち逐次修正する)ことで、精度の高い電力使用量予測を維持することができる。
【0022】
[発明の原理2]
本発明では、昇温時間係数THあるいはヒータ能力係数HPを判定指標にすることにより、昇温幅に依存せずに電力状態を評価できることになるので、ヒータの劣化診断が可能になる。例えばヒータの使用初期のころの標準昇温パターン(SP,PV)と異なる標準昇温パターン(SP’,PV’)になっても、理論的にはヒータ性能として昇温時間係数THあるいはヒータ能力係数HPを比較できる。すなわち、出荷前時点で標準パターンとして想定していた昇温動作が、出荷後の現場において変更になっても、ヒータ劣化を判定することができる。これにより、制御機器メーカから製造装置メーカあるいは製造装置ユーザに流通するプロセスにおいて、ヒータの劣化を単純かつ適正に判定しやすくなるので、有効である。
【0023】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。図1(A)、図1(B)は整定している温度制御系において温度設定値SPを変更したときの温度計測値PVと操作量MVの変化の例を示す図である。図1(A)はヒータの使用初期の状態を示しており、図1(B)はヒータの昇温能力が落ちて昇温の所要時間が長くなった状態を示している。本実施の形態では、図1(B)に示すようにヒータの劣化で発熱効率(ワット密度)が悪くなり、昇温能力が落ちる場合の補正について説明する。特許文献1に開示されている式(1)と式(3)のどちらも有効であるが、より高精度に実行するためには式(3)を採用するのが好ましい。本実施の形態では、特許文献1に開示されている式(3)を引用する。
【0024】
図2は本実施の形態に係る電力使用量予測装置の構成を示すブロック図である。電力使用量予測装置は、外部からの予測実行信号を受ける予測実行信号入力部1と、昇温開始時点における温度設定値SP(変更後の設定値SP)を取得する温度設定値入力部2と、昇温開始時点における温度計測値PV(設定値SPの変更を確認したときの変更前の制御量PV)を取得する温度計測値入力部3と、昇温開始時点における操作量MV(設定値SPの変更を確認したときの変更前の操作量MV)を取得する操作量入力部4と、ヒータ能力係数HPを予め記憶するヒータ能力係数記憶部5と、昇温時間係数THを予め記憶する昇温時間係数記憶部6と、ヒータの電力使用量を予測する電力使用量予測部7と、温調計に設定されている操作量上限値OHを取得する操作量上限値取得部8と、ヒータの総稼動時間LT(単位:hour)を積算する稼動時間積算部9と、昇温時間係数THの初期値TH0を記憶する昇温時間係数初期値記憶部10と、昇温を開始した後に操作量MVが操作量上限値OHに到達している時間帯において制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す実績値THxを求める時間実績計測部11と、実績値THxに基づく補正が昇温時間係数THを大きくする補正になると判定した場合のみ、実績値THxを用いて昇温時間係数THを補正する昇温時間係数補正部12と、昇温時間係数THの初期値TH0と昇温時間係数補正部12が算出した昇温時間係数THの補正値との比率をヒータ劣化度として算出するヒータ劣化度算出部13と、ヒータ劣化度が予め規定された数値γ以上の場合に、ヒータが劣化したことをユーザに通知するヒータ劣化通知部14とを備える。
【0025】
本実施の形態は、図8に示したような加熱装置において例えば常温から所望の温度に昇温する際の電力使用量を予測することを想定している。電力使用量予測装置は、加熱装置の温調計100(コントローラ)に実装されている。
【0026】
以下、本実施の形態の電力使用量予測装置の動作を図3を用いて説明する。予測実行信号入力部1は、外部から電力使用量予測値算出処理の実行を指示する予測実行信号を受けて、この予測実行信号を温度設定値入力部2、温度計測値入力部3および操作量入力部4に転送する(図3ステップS100)。電力使用量予測装置のユーザが昇温開始時に予測実行信号を入力してもよいが、温度設定値SPが変更されたときに、例えば温調計100から自動的に予測実行信号が送られるようにしてもよい。予測実行信号を自動的に生成する場合、例えば昇温制御のための温度設定値SPの変更であれば、実質的に昇温開始時点で昇温に必要な電力使用量を予測するように動作することになるので好適である。
【0027】
温度設定値入力部2は、予測実行信号入力部1から予測実行信号が入力されると、加熱装置のユーザによって設定された温度設定値SPを取得して電力使用量予測部7に通知する(ステップS101)。なお、温度設定値入力部2が取得する温度設定値SPは、昇温開始時点における値である。したがって、例えばSP=0℃からSP=100℃に変更されたとすれば、温度設定値入力部2が取得する値はSP=100℃である。
【0028】
温度計測値入力部3は、予測実行信号入力部1から予測実行信号が入力されると、加熱装置の温度センサ103から温度計測値PVを取得して電力使用量予測部7に通知する(ステップS102)。なお、温度計測値入力部3が取得する温度計測値PVは、昇温開始時点における値である。ただし、制御系に応答の遅れがあるため、温度計測値PVは、温度設定値SPの変更に対して遅れて上昇を始める。したがって、温度計測値PV=0℃の状態から昇温を開始したとすれば、温度計測値入力部3が取得する値は昇温開始直前の値と同じPV=0℃である。
【0029】
操作量入力部4は、予測実行信号入力部1から予測実行信号が入力されると、温調計100から操作量MVを取得して電力使用量予測部7に通知する(ステップS103)。なお、操作量入力部4が取得する操作量MVは、昇温開始時点における値である。ただし、温度設定値SPの変更が反映されるのは、温調計100の次の制御周期からになるので、操作量MVは、温度設定値SPの変更に対して1制御周期遅れて上昇を始める。したがって、操作量MV=50%の状態から昇温を開始したとすれば、操作量入力部4が取得する値は昇温開始直前の値と同じMV=50%である。
【0030】
操作量上限値取得部8は、温調計100に設定されている操作量上限値OHを取得して電力使用量予測部7と時間実績計測部11とに通知する(ステップS104)。なお、温調計100は、操作量MVが操作量上限値OH以下となるように上限処理する。つまり、温調計100は、温度計測値PVが温度設定値SPと一致するように制御周期毎に操作量MVを算出するが、算出した操作量MVが操作量上限値OHを上回る場合、操作量MV=OHとして出力する。
【0031】
電力使用量予測部7は、温度設定値SPと温度計測値PVと操作量MVと操作量上限値OHとを受け取ると、ヒータ102の加熱する能力を表すヒータ能力係数HPをヒータ能力係数記憶部5から取得すると共に、加熱チャンバー101を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数THを昇温時間係数記憶部6から取得し、以下の数式により電力使用量予測値PWを算出する(ステップS105)。なお、特許文献1に開示された式(3)ではOH=100%としている。
PW=(SP−PV)HPTH{100/(OH−MV)} ・・・(1)
【0032】
昇温時間係数THは、昇温時間係数記憶部6に予め記憶されているが、この昇温時間係数THを求めるには、ヒータ出力を100%に維持して昇温させたときに、加熱チャンバー101が例えば常温(25℃)から100℃になるまでに必要な所要時間T_100を実際に調べ、単位温度(1℃)あたりにかかる昇温時間を昇温時間係数THとして算出しておけばよい。すなわち、昇温時間係数THは次式により算出できる。
TH=T_100/(100−25) ・・・(2)
【0033】
ヒータ能力係数HPは、ヒータ能力係数記憶部5に予め記憶されているが、このヒータ能力係数HPとしては、ヒータ容量を使用すればよい。
なお、電力使用量予測値PWの単位は、ヒータ能力係数HPの単位と昇温時間係数THの単位によって決まるものなので、必要に応じて適宜換算するのがよい。本実施の形態では、(SP−PV)の単位が[℃]、ヒータ能力係数HPの単位が[W]、昇温時間係数THの単位が[h/℃]なので、電力使用量予測値PWの単位は[Wh]である。
【0034】
本実施の形態では、特許文献1に開示されている式(3)を採用しているが、特許文献1に開示されている式(1)を採用する場合、電力使用量予測部7は、以下の数式により電力使用量予測値PWを算出すればよい(ステップS105)。
PW=(SP−PV)HPTH ・・・(3)
【0035】
次に、時間実績計測部11は、予測実行信号入力部1から予測実行信号が入力されると、操作量MVが操作量上限値OHに到達している時間帯における温度上昇幅ΔPVとこの時間帯の長さである実績時間T_OHとを計測し、加熱チャンバー101を単位温度加熱するのに必要な昇温時間係数THの実績値THxを以下の数式により算出する(ステップS106)。なお、温度上昇幅ΔPVと実績時間T_OHについては、図1(B)に示している。
THx=T_OH/ΔPV ・・・(4)
【0036】
昇温時間係数補正部12は、THx>TH、すなわち昇温時間係数THの実績値THxが昇温時間係数THよりも大きく、実績値THxに基づく補正が昇温時間係数THを大きくする補正になると判定した場合、実績値THxと昇温時間係数THとの差(THx−TH)に所定の比率αを掛けた値を、昇温時間係数THの補正量ΔTHとして求め、以下の数式のように補正値候補THnを算出する(ステップS107)。この昇温時間係数補正部12の処理により、ヒータの昇温能力が、急激に変化することはないということと、一方向にしか変化しないということを、アルゴリズムに組み込むことができる。
THn=TH+ΔTH=TH+α(THx−TH) ・・・(5)
【0037】
比率αは例えば0.3である。このα=0.3という設定は、単位温度加熱するのに必要な所要時間が同一の値THxである昇温を繰り返すときに昇温時間係数THが30%ずつTHxに近づくという設定である。昇温動作の少ない(補正機会の少ない)加熱装置であるほど、比率αを大きめに設定することが好ましい。
【0038】
続いて、昇温時間係数補正部12は、稼動時間積算部9からヒータ102の総稼動時間LTの値を取得すると共に、昇温時間係数初期値記憶部10から昇温時間係数THの初期値TH0を取得し、昇温時間係数THの想定し得る上限値THuを以下の数式のように算出する(ステップS108)。
THu=TH0(1+βLT) ・・・(6)
【0039】
式(6)において、βは予め規定された、経時変化予測の係数である(例えばβ=0.0003)。このβ=0.0003は、昇温時間係数THが約2倍に経時変化するのに最低でも約3000hourはかかるという知識に基づき概算的に設定された数値であり、ヒータ102の種類などに応じて適宜予め設定されるべき数値である。
【0040】
式(6)は、図4に示すようにヒータ102の昇温能力の劣化倍率が総稼動時間LTに1次比例する場合についての式である。図5に示すように劣化倍率が総稼動時間LTに2次比例する場合には、式(6)の代わりに式(7)を用いればよく、ヒータ102の昇温能力が指数関数的に劣化する場合には、式(8)を用いればよい。ただし係数βは数式に応じて適宜設定変更すべきである。
THu=TH0(1+βLT2) ・・・(7)
THu=TH0exp(LT/β) ・・・(8)
【0041】
次に、昇温時間係数補正部12は、ステップS107で算出した補正値候補THnをステップS108で算出した上限値THuで上限処理し、この上限処理した値を用いて、昇温時間係数記憶部6に記憶されている昇温時間係数THを更新補正する(ステップS109)。
if THn>THu then TH_new=THu
else TH_new=THn ・・・(9)
【0042】
式(9)は、補正値候補THnが上限値THuよりも大きい場合、昇温時間係数記憶部6に記憶されている昇温時間係数THを補正値TH_new=THuに更新し、補正値候補THnが上限値THu以下の場合、補正値候補THnをそのまま補正値TH_newとすることを表している。こうして、ヒータ102の昇温能力の経時変化を昇温時間係数THに反映することで、精度の高い電力使用量予測を維持することができる。なお、昇温時間係数補正部12は、補正値候補THnが上限値THuよりも大きい場合、ユーザに対して警報を出すようにしてもよい。
【0043】
ヒータ劣化度算出部13は、昇温時間係数初期値記憶部10に記憶されている昇温時間係数THの初期値TH0と昇温時間係数補正部12が算出した昇温時間係数THの補正値TH_newとの比率を、ヒータ劣化度Rとして算出する(ステップS110)。
R=TH_new/TH0 ・・・(10)
【0044】
ヒータ劣化通知部14は、ヒータ劣化度Rが予め規定された数値γ(例えばγ=2.0)以上の場合(ステップS111においてYES)、ヒータ102が劣化したことをユーザに通知する(ステップS112)。このときの通知方法としては、例えば加熱装置が通常備える装置操作パネルにメッセージを表示する方法がある。この通知により、ユーザは、ヒータ102を交換すべき時期が来たと認識することができる。なお、γ=2.0という数値は、ヒータ102の性能が初期状態から半分の能力に劣化したことを意味する値である。以上で、電力使用量予測装置の動作が終了する。
【0045】
なお、本実施の形態では、昇温開始に応じて昇温時間係数THを補正するのであるから、補正後の昇温時間係数THが電力使用量の予測に適用されるのは、次回の昇温時となることは言うまでもない。
【0046】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態と同様にヒータ102の劣化で発熱効率(ワット密度)が悪くなり、昇温能力が落ちる場合の補正について説明する。ただし、第1の実施の形態では、ヒータ102の昇温能力の経時変化に応じて昇温時間係数THを補正しているが、実用上はヒータ能力係数HPを補正してもよい。本実施の形態では、ヒータ能力係数HPの補正について説明する。特許文献1に開示されている式(1)と式(3)のどちらも有効であるが、より高精度に実行するためには式(3)を採用するのが好ましい。本実施の形態では、特許文献1に開示されている式(3)を引用する。
【0047】
図6は本実施の形態に係る電力使用量予測装置の構成を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。電力使用量予測装置は、予測実行信号入力部1と、温度設定値入力部2と、温度計測値入力部3と、操作量入力部4と、ヒータ能力係数記憶部5と、昇温時間係数記憶部6と、電力使用量予測部7と、操作量上限値取得部8と、稼動時間積算部9と、ヒータ劣化通知部14と、ヒータ能力係数HPの初期値HP0を記憶するヒータ能力係数初期値記憶部15と、昇温を開始した後に操作量MVが操作量上限値OHに到達している時間帯におけるヒータの電力使用量PWxを計測し、この電力使用量PWxとヒータ能力係数HPと電力使用量予測部7が算出した電力使用量PWとからヒータ能力係数HPの実績値HPxを算出する電力実績計測部16と、実績値HPxに基づく補正がヒータ能力係数HPを大きくする補正になると判定した場合のみ、実績値HPxを用いてヒータ能力係数HPを補正するヒータ能力係数補正部17と、ヒータ能力係数HPの初期値HP0とヒータ能力係数補正部17が算出したヒータ能力係数HPの補正値との比率をヒータ劣化度として算出するヒータ劣化度算出部18とを備える。
【0048】
以下、本実施の形態の電力使用量予測装置の動作を図7を用いて説明する。図7のステップS200〜S205の処理は、第1の実施の形態のステップS100〜S105の処理と同様であるので、説明は省略する。
【0049】
電力実績計測部16は、予測実行信号入力部1から予測実行信号が入力されると、操作量MVが操作量上限値OHに到達している時間帯におけるヒータ102の電力使用量PWxを計測する。そして、電力実績計測部16は、この電力使用量PWxとヒータ能力係数HPと電力使用量予測部7が算出した電力使用量予測値PWとから以下の数式によりヒータ能力係数HPの実績値HPxを算出する(図7ステップS206)。
HPx=HP(PWx/PW) ・・・(11)
【0050】
ヒータ能力係数補正部17は、HPx>HP、すなわちヒータ能力係数HPの実績値HPxがヒータ能力係数HPよりも大きく、実績値HPxに基づく補正がヒータ能力係数HPを大きくする補正になると判定した場合、実績値HPxとヒータ能力係数HPとの差(HPx−HP)に所定の比率αを掛けた値を、ヒータ能力係数HPの補正量ΔHPとして求め、以下の数式のように補正値候補HPnを算出する(ステップS207)。このヒータ能力係数補正部17の処理により、ヒータの昇温能力が、急激に変化することはないということと、一方向にしか変化しないということを、アルゴリズムに組み込むことができる。
HPn=HP+ΔHP=HP+α(HPx−HP) ・・・(12)
【0051】
比率αは例えば0.3である。このα=0.3という設定は、ヒータ能力係数が同一の値HPxであるヒータを使って昇温を繰り返すときにヒータ能力係数HPが30%ずつHPxに近づくという設定である。昇温動作の少ない(補正機会の少ない)加熱装置であるほど、比率αを大きめに設定することが好ましい。
【0052】
続いて、ヒータ能力係数補正部17は、稼動時間積算部9からヒータ102の総稼動時間LTの値を取得すると共に、ヒータ能力係数初期値記憶部15からヒータ能力係数HPの初期値HP0を取得し、ヒータ能力係数HPの想定し得る上限値HPuを以下の数式のように算出する(ステップS208)。
HPu=HP0(1+βLT) ・・・(13)
【0053】
式(13)において、βは予め規定された、経時変化予測の係数である(例えばβ=0.0003)。このβ=0.0003は、ヒータ能力係数HPが約2倍に経時変化するのに最低でも約3000hourはかかるという知識に基づき概算的に設定された数値であり、ヒータ102の種類などに応じて適宜予め設定されるべき数値である。
【0054】
式(13)は、図4に示したようにヒータ102の昇温能力の劣化倍率が総稼動時間LTに1次比例する場合についての式である。図5に示したように劣化倍率が総稼動時間LTに2次比例する場合には、式(13)の代わりに式(14)を用いればよく、ヒータ102の昇温能力が指数関数的に劣化する場合には、式(15)を用いればよい。ただし係数βは数式に応じて適宜設定変更すべきである。
HPu=HP0(1+βLT2) ・・・(14)
HPu=HP0exp(LT/β) ・・・(15)
【0055】
次に、ヒータ能力係数補正部17は、ステップS207で算出した補正値候補HPnをステップS208で算出した上限値HPuで上限処理し、この上限処理した値を用いて、ヒータ能力係数記憶部5に記憶されているヒータ能力係数HPを更新補正する(ステップS209)。
if HPn>HPu then HP_new=HPu
else HP_new=HPn ・・・(16)
【0056】
式(16)は、補正値候補HPnが上限値HPuよりも大きい場合、ヒータ能力係数記憶部5に記憶されているヒータ能力係数HPを補正値HP_new=HPuに更新し、補正値候補HPnが上限値HPu以下の場合、補正値候補HPnをそのまま補正値HP_newとすることを表している。こうして、ヒータ102の昇温能力の経時変化をヒータ能力係数HPに反映することで、精度の高い電力使用量予測を維持することができる。なお、ヒータ能力係数補正部17は、補正値候補HPnが上限値HPuよりも大きい場合、ユーザに対して警報を出すようにしてもよい。
【0057】
ヒータ劣化度算出部18は、ヒータ能力係数初期値記憶部15に記憶されているヒータ能力係数HPの初期値HP0とヒータ能力係数補正部17が算出したヒータ能力係数HPの補正値HP_newとの比率を、ヒータ劣化度Rとして算出する(ステップS210)。
R=HP_new/HP0 ・・・(17)
【0058】
ステップS211,S212の処理は、第1の実施の形態のステップS111,S112の処理と同様である。以上で、電力使用量予測装置の動作が終了する。
こうして、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。第1の実施の形態と同様に、補正後のヒータ能力係数HPが電力使用量の予測に適用されるのは、次回の昇温時である。
【0059】
なお、第1、第2の実施の形態で説明した電力使用量予測装置は、CPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1、第2の実施の形態で説明した処理を実行する。このようなコンピュータとして、調節計を構成する小規模のコンピュータを使用することができるので、電力使用量予測装置を調節計で実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、例えばプロセス制御における電力使用量の予測技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…予測実行信号入力部、2…温度設定値入力部、3…温度計測値入力部、4…操作量入力部、5…ヒータ能力係数記憶部、6…昇温時間係数記憶部、7…電力使用量予測部、8…操作量上限値取得部、9…稼動時間積算部、10…昇温時間係数初期値記憶部、11…時間実績計測部、12…昇温時間係数補正部、13…ヒータ劣化度算出部、14…ヒータ劣化通知部、15…ヒータ能力係数初期値記憶部、16…電力実績計測部、17…ヒータ能力係数補正部、18…ヒータ劣化度算出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象を加熱するヒータと、制御対象の温度を計測する温度センサと、この温度センサによって計測された温度計測値PVと外部から入力された温度設定値SPに基づいて操作量MVを算出して前記ヒータに出力するコントローラとからなる制御系において、前記制御対象を昇温するときに必要とされる前記ヒータの電力使用量PWを予測する電力使用量予測装置であって、
昇温開始時点における温度設定値SPを取得する温度設定値入力手段と、
昇温開始時点における温度計測値PVを取得する温度計測値入力手段と、
昇温開始時点における操作量MVを取得する操作量入力手段と、
前記コントローラに設定されている操作量上限値OHを取得する操作量上限値取得手段と、
前記ヒータの加熱する能力を表すヒータ能力係数HPを記憶するヒータ能力係数記憶手段と、
前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数THを記憶する昇温時間係数記憶手段と、
前記温度設定値SPと前記温度計測値PVとの差である制御偏差、前記ヒータ能力係数HPおよび前記昇温時間係数THに基づいて、前記電力使用量PWを予測する電力使用量予測手段と、
昇温を開始した後に前記操作量MVが前記操作量上限値OHに到達している時間帯において前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す実績値THxを求める時間実績計測手段と、
前記実績値THxに基づく補正が前記昇温時間係数THを大きくする補正になると判定した場合のみ、前記実績値THxを用いて前記昇温時間係数THを補正する昇温時間係数補正手段とを備えることを特徴とする電力使用量予測装置。
【請求項2】
請求項1記載の電力使用量予測装置において、
前記電力使用量予測手段は、前記電力使用量PWを予測する際に、前記操作量MVと前記操作量上限値OHに基づいて前記昇温時間係数THを補正することを特徴とする電力使用量予測装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の電力使用量予測装置において、
さらに、前記ヒータの総稼動時間LTを積算する稼動時間積算手段を備え、
前記昇温時間係数補正手段は、前記実績値THxと前記昇温時間係数THとの差から補正値候補THnを算出すると共に、前記総稼動時間LTから補正範囲を算出し、前記補正値候補THnを用いた補正が前記補正範囲内に収まるようにして前記昇温時間係数THを補正することを特徴とする電力使用量予測装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の電力使用量予測装置において、
さらに、前記昇温時間係数THの初期値TH0を記憶する昇温時間係数初期値記憶手段と、
前記昇温時間係数THの初期値TH0と前記昇温時間係数補正手段が算出した昇温時間係数THの補正値との比率をヒータ劣化度として算出するヒータ劣化度算出手段と、
前記ヒータ劣化度が予め規定された数値γ以上の場合に、前記ヒータが劣化したことをユーザに通知するヒータ劣化通知手段とを備えることを特徴とする電力使用量予測装置。
【請求項5】
制御対象を加熱するヒータと、制御対象の温度を計測する温度センサと、この温度センサによって計測された温度計測値PVと外部から入力された温度設定値SPに基づいて操作量MVを算出して前記ヒータに出力するコントローラとからなる制御系において、前記制御対象を昇温するときに必要とされる前記ヒータの電力使用量PWを予測する電力使用量予測装置であって、
昇温開始時点における温度設定値SPを取得する温度設定値入力手段と、
昇温開始時点における温度計測値PVを取得する温度計測値入力手段と、
昇温開始時点における操作量MVを取得する操作量入力手段と、
前記コントローラに設定されている操作量上限値OHを取得する操作量上限値取得手段と、
前記ヒータの加熱する能力を表すヒータ能力係数HPを記憶するヒータ能力係数記憶手段と、
前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数THを記憶する昇温時間係数記憶手段と、
前記温度設定値SPと前記温度計測値PVとの差である制御偏差、前記ヒータ能力係数HPおよび前記昇温時間係数THに基づいて、前記電力使用量PWを予測する電力使用量予測手段と、
昇温を開始した後に前記操作量MVが前記操作量上限値OHに到達している時間帯における前記ヒータの電力使用量PWxを計測し、この電力使用量PWxと前記ヒータ能力係数HPと前記電力使用量予測手段が算出した電力使用量PWとから前記ヒータ能力係数HPの実績値HPxを算出する電力実績計測手段と、
前記実績値HPxに基づく補正が前記ヒータ能力係数HPを大きくする補正になると判定した場合のみ、前記実績値HPxを用いて前記ヒータ能力係数HPを補正するヒータ能力係数補正手段とを備えることを特徴とする電力使用量予測装置。
【請求項6】
請求項5記載の電力使用量予測装置において、
前記電力使用量予測手段は、前記電力使用量PWを予測する際に、前記操作量MVと前記操作量上限値OHに基づいて前記昇温時間係数THを補正することを特徴とする電力使用量予測装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の電力使用量予測装置において、
さらに、前記ヒータの総稼動時間LTを積算する稼動時間積算手段を備え、
前記ヒータ能力係数補正手段は、前記実績値HPxと前記ヒータ能力係数HPとの差から補正値候補HPnを算出すると共に、前記総稼動時間LTから補正範囲を算出し、前記補正値候補HPnを用いた補正が前記補正範囲内に収まるようにして前記ヒータ能力係数HPを補正することを特徴とする電力使用量予測装置。
【請求項8】
請求項5または6記載の電力使用量予測装置において、
さらに、前記ヒータ能力係数HPの初期値HP0を記憶するヒータ能力係数初期値記憶手段と、
前記ヒータ能力係数HPの初期値HP0と前記ヒータ能力係数補正手段が算出したヒータ能力係数HPの補正値との比率をヒータ劣化度として算出するヒータ劣化度算出手段と、
前記ヒータ劣化度が予め規定された数値γ以上の場合に、前記ヒータが劣化したことをユーザに通知するヒータ劣化通知手段とを備えることを特徴とする電力使用量予測装置。
【請求項9】
制御対象を加熱するヒータと、制御対象の温度を計測する温度センサと、この温度センサによって計測された温度計測値PVと外部から入力された温度設定値SPに基づいて操作量MVを算出して前記ヒータに出力するコントローラとからなる制御系において、前記制御対象を昇温するときに必要とされる前記ヒータの電力使用量PWを予測する電力使用量予測方法であって、
昇温開始時点における温度設定値SPを取得する温度設定値入力ステップと、
昇温開始時点における温度計測値PVを取得する温度計測値入力ステップと、
昇温開始時点における操作量MVを取得する操作量入力ステップと、
前記コントローラに設定されている操作量上限値OHを取得する操作量上限値取得ステップと、
前記温度設定値SPと前記温度計測値PVとの差である制御偏差、前記ヒータの加熱する能力を表すヒータ能力係数HP、および前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数THに基づいて、前記電力使用量PWを予測する電力使用量予測ステップと、
昇温を開始した後に前記操作量MVが前記操作量上限値OHに到達している時間帯において前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す実績値THxを求める時間実績計測ステップと、
前記実績値THxに基づく補正が前記昇温時間係数THを大きくする補正になると判定した場合のみ、前記実績値THxを用いて前記昇温時間係数THを補正する昇温時間係数補正ステップとを備えることを特徴とする電力使用量予測方法。
【請求項10】
請求項9記載の電力使用量予測方法において、
前記電力使用量予測ステップは、前記電力使用量PWを予測する際に、前記操作量MVと前記操作量上限値OHに基づいて前記昇温時間係数THを補正することを特徴とする電力使用量予測方法。
【請求項11】
請求項9または10記載の電力使用量予測方法において、
さらに、前記ヒータの総稼動時間LTを積算する稼動時間積算ステップを備え、
前記昇温時間係数補正ステップは、前記実績値THxと前記昇温時間係数THとの差から補正値候補THnを算出すると共に、前記総稼動時間LTから補正範囲を算出し、前記補正値候補THnを用いた補正が前記補正範囲内に収まるようにして前記昇温時間係数THを補正することを特徴とする電力使用量予測方法。
【請求項12】
請求項9または10記載の電力使用量予測方法において、
さらに、前記昇温時間係数THの初期値TH0と前記昇温時間係数補正ステップで算出した昇温時間係数THの補正値との比率をヒータ劣化度として算出するヒータ劣化度算出ステップと、
前記ヒータ劣化度が予め規定された数値γ以上の場合に、前記ヒータが劣化したことをユーザに通知するヒータ劣化通知ステップとを備えることを特徴とする電力使用量予測方法。
【請求項13】
制御対象を加熱するヒータと、制御対象の温度を計測する温度センサと、この温度センサによって計測された温度計測値PVと外部から入力された温度設定値SPに基づいて操作量MVを算出して前記ヒータに出力するコントローラとからなる制御系において、前記制御対象を昇温するときに必要とされる前記ヒータの電力使用量PWを予測する電力使用量予測方法であって、
昇温開始時点における温度設定値SPを取得する温度設定値入力ステップと、
昇温開始時点における温度計測値PVを取得する温度計測値入力ステップと、
昇温開始時点における操作量MVを取得する操作量入力ステップと、
前記コントローラに設定されている操作量上限値OHを取得する操作量上限値取得ステップと、
前記温度設定値SPと前記温度計測値PVとの差である制御偏差、前記ヒータの加熱する能力を表すヒータ能力係数HP、および前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数THに基づいて、前記電力使用量PWを予測する電力使用量予測ステップと、
昇温を開始した後に前記操作量MVが前記操作量上限値OHに到達している時間帯における前記ヒータの電力使用量PWxを計測し、この電力使用量PWxと前記ヒータ能力係数HPと前記電力使用量予測ステップで算出した電力使用量PWとから前記ヒータ能力係数HPの実績値HPxを算出する電力実績計測ステップと、
前記実績値HPxに基づく補正が前記ヒータ能力係数HPを大きくする補正になると判定した場合のみ、前記実績値HPxを用いて前記ヒータ能力係数HPを補正するヒータ能力係数補正ステップとを備えることを特徴とする電力使用量予測方法。
【請求項14】
請求項13記載の電力使用量予測方法において、
前記電力使用量予測ステップは、前記電力使用量PWを予測する際に、前記操作量MVと前記操作量上限値OHに基づいて前記昇温時間係数THを補正することを特徴とする電力使用量予測方法。
【請求項15】
請求項13または14記載の電力使用量予測方法において、
さらに、前記ヒータの総稼動時間LTを積算する稼動時間積算ステップを備え、
前記ヒータ能力係数補正ステップは、前記実績値HPxと前記ヒータ能力係数HPとの差から補正値候補HPnを算出すると共に、前記総稼動時間LTから補正範囲を算出し、前記補正値候補HPnを用いた補正が前記補正範囲内に収まるようにして前記ヒータ能力係数HPを補正することを特徴とする電力使用量予測方法。
【請求項16】
請求項13または14記載の電力使用量予測方法において、
さらに、前記ヒータ能力係数HPの初期値HP0と前記ヒータ能力係数補正ステップで算出したヒータ能力係数HPの補正値との比率をヒータ劣化度として算出するヒータ劣化度算出ステップと、
前記ヒータ劣化度が予め規定された数値γ以上の場合に、前記ヒータが劣化したことをユーザに通知するヒータ劣化通知ステップとを備えることを特徴とする電力使用量予測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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