説明

電力供給装置

【課題】 トロイダル型トランスと平滑手段用にチョークコイルを備え、交流電気を受けて直流電気を供給する電力供給手段において、チョークコイルをコンパクト化にすることによってトロイダル型トランスの中央の空隙部分に配設可能として装置全体をコンパクトに抑え、且つ、作動時のチョークコイルからの磁気が回りの機器に悪影響を与えることのないことを目的とする。
【解決手段】
トロイダル型トランス3の中央の空隙部分11にチョークコイル21を配設すると、チョークコイル21は作動時に磁気を発生するが、その磁気をシールドするように機能する材料を用いてトロイダル型トランス3のコア部材10を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、交流電気を電圧変換し、続いて、整流手段によって脈流電気に変換し、更に、その変換した脈流電気を平滑して得られた直流電気の電力を、アンプ、プリアンプ等に供給する電力供給装置に関する。
より詳しくは、電圧変換を行うことで電力変換を行うためのトランスはコア部材がドーナツ形状であるトロイダル型トランスであって、且つ、脈流電気を平滑する手段がチョークコイルを備えて構成される電力供給装置に関する。
つまり、平滑手段がチョークインプット型であって、コア部材がドーナツ形状であるトロイダル型トランス用いた電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンプ、プリアンプ等は、所定電圧の直流電気の電力の供給を受けることによって機能する。
従って、アンプ、プリアンプ等を機能させるためには、交流電気を電圧変換し、続いて、交流電気から脈流電気に変換し、更に、その脈流電気を平滑する手段によって平滑されて得られた直流電気を供給する必要がある。
【0003】
ここで、電圧の変換を行うトランスについて、電力変換の効率に関して、コア部材がドーナツ形状であるトロイダル型トランスの方が、コア部材がE型とI型の金属板を組合せてなるEI型トランスよりも良好であることが知られている。
従って、特に、大きな電力を扱う場合、長時間の使用を行う場合等においては、トロイダル型トランスを備えた電力供給装置が望ましい。
【0004】
他方、アンプやプリアンプは微小電圧の音声信号を増幅する装置であるので、その微小電圧の音声信号を忠実に増幅するには、ノイズをより一層抑えることが望ましい。
殊に、質の高い音声信号を扱う、所謂ハイエンドのアンプやプリアンプでは、ノイズからの影響の除去が大きな意味を持つことになる。
【0005】
斯かるノイズの問題に対して、トランスによって電圧変換され、更に整流手段によって得られた脈流電気を平滑する手段として、一つにはチョークコイルを使用した平滑手段つまりチョークインプット型の平滑手段が挙げられる。
【0006】
チョークコイルについては、以下の文献が知られている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−168611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アンプ、プリアンプ等に所定電圧の直流電気の電力の供給を行う電力供給装置では、トロイダル型トランスと平滑手段を構成するチョークコイルは互いに離隔した状態で基板(シャーシ)上に配設固定されていた。
【0009】
ここで、チョークコイルは平滑用の脈流電気が供給されるとチョークコイル自体が磁気を発生し、その磁気がアンプ、プリアンプ等の音声信号に影響を与え、結果的に当該電力供給装置の近傍に配置されたアンプ、プリアンプ等は音声信号の品質を損なわせるといった不具合が生じることになる。
このことに対して、例えば上記特許文献等では、一つにはコア部材の両端部分を鍔形状の鍔部という特定の形状に形成し、又、巻線部の外側にフェライト板(磁気シールド部)を付設することによって、チョークコイルから発する磁気を望まない方向に漏れ飛ばないように工夫が行われている。
【0010】
ここで、トロイダル型トランスとチョークコイルが備えられ、それらの配設が互いに離隔した状態で基板上に配設固定されている電力供給装置では、トロイダル型トランスとチョークコイルは共に大きな空間を占有することから、装置全体のコンパクト化が難しいという問題がある。
この問題に対して、トロイダル型トランスの中央の空隙部分にチョークコイルを配設することが考えられる。
【0011】
このことに関して、トロイダル型トランスの中央の空隙部分にチョークコイルを配設することに、チョークコイル全体の大きさがトロイダル型トランスの中央の空隙部分よりも小さい場合には、その空隙部分にチョークコイルを配設することが可能であって問題は生じない。
【0012】
しかしながら、トロイダル型トランスの中央の空隙部分よりもチョークコイルの方が大きい場合には、その空隙部分にチョークコイルを配設することができず、結果的に電力供給装置のコンパクト化を図ることが難しいという問題が生じる。
他方、トランス及びチョークコイルは所望の機能、特性等を確保する理由から任意にそれらのサイズを選択、設定することができず或る一定範囲の大きさに限定されるから、トロイダル型トランスの中央の空隙部分にチョークコイルを配設可能となるようにトロイダル型トランスとチョークコイルの大きさを任意に適宜選択設定することはできない。
【0013】
この発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、電圧変換手段としてトロイダル型トランスを用い且つ平滑手段にチョークコイルを備えてなる電力供給装置において、トロイダル型トランス及びチョークコイルの大きさが強く限定されていてもトロイダル型トランスの中央の空隙部分にチョークコイルを配設して一体化させることで装置全体のコンパクト化が可能であって、且つ、チョークコイルからの磁気の影響を受け得ない電力供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、トロイダル型トランスのコア部材をチョークコイルから発生する磁気をシールドする材料で形成し、且つ、トロイダル型トランスの中央空隙部分であってチョークコイルからの磁気がシールドされる位置にチョークコイルを配設してなる電力供給装置である。
【0015】
その詳細な構成は、電圧を変換し且つコア部材の形状がドーナツ形状であるトロイダル型トランスと、そのトロイダル型トランスで変換された交流電気を脈流電気に変換する整流手段と、チョークコイルを具備し、前記整流手段からの脈流電気を平滑して直流電気に変換する平滑手段が備えられ、
上記チョークコイルは上記トロイダル型トランスの中央の空隙部分に配設され、且つ、上記チョークコイルが上記トロイダル型トランスの中央の空隙部分に配設されると、上記トロイダル型トランスのコア部材が、上記チョークコイルから発する磁気をシールドしてそのコア部材を越えて外部に漏洩するのを防ぐように機能することを特徴とした電力供給装置である。
【0016】
斯かる構成の電力供給装置では、チョークコイルにチョークコイル自体から発する磁気をシールドするために、チョークコイルはコア部材を特定の形状に形成させたり磁気をシールドするための部材を備える必要がないことから、チョークコイルを小型化することが可能になっている。
他方、装置を作動させるとチョークコイルは磁気を発生するが、トロイダル型トランスのコア部材は対向した位置でチョークコイルを囲んで外周に配設しているから、チョークコイルから発する磁気はトロイダル型トランスのコア部材によってシールドされて外部に漏洩することはない。
【0017】
ここで、トロイダル型トランスのコア部材は具体的に、パーマロイ鋼板、ケイ素鋼板を環状に巻くことによって形成されてなるものが挙げられる。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、トロイダル型トランスのコア部材を磁気シールド性のある材料で形成し、且つ、トロイダル型トランスの中央の空隙部分にチョークコイルを配設することで、チョークコイルからの磁気が前記コア部材によってシールドされてコア部材の外部に漏洩することを防ぐように構成したことにより、チョークコイルに磁気をシールドするための部材を付設しなくてよいことからチョークコイルそのものを小型に抑えることが可能で、よって、トロイダル型トランスの中央の空隙部分にチョークコイルを空間的により一層配設し易いことにより装置全体のコンパクト化がより一層高く、且つ、他の機器がチョークコイルからの磁気の悪影響を受けることのない電力供給装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明を、図1〜図3に示す実施の形態例に基づき詳述する。しかし、この実施の形態例によって、この発明が限定されるものではない。
電力供給装置1は、基板2と、トロイダル型トランス3と、整流手段4,5,6と、平滑手段7,8,9が備えられている。
【0020】
基板2は、絶縁性の板材に所定の配線層(図示省略)が形成され、各部材を固定保持すると共に各部材を電気的に所定通りに接続するためのものである。
【0021】
トロイダル型トランス3は、所謂ドーナツ形状のコア部材10にコイル12,13,14,15が巻かれて全体の形状が同じくドーナツ形状となっており、よって、その中央に空隙部分11が区画形成されている。
【0022】
尚、コア部材10は、薄い板状のケイ素鋼板を環状に重ね巻いてドーナツ形状に形成されている。材料として、他にパーマロイ鋼板が挙げられる。
又、コア部材10を形成する上記板状のケイ素鋼板の材料は、両端部で幅が狭く中央部に進むに従って幅が広くなる、紡錘形を伸長方向に引き伸ばした形状である。
【0023】
このことによって、コア部材10は図1に示すように、断面がほぼ楕円形状に形成されており、角形状がない形成になっている。従って、コア部材10にコイル12,13,14,15を巻く際にコア部材10とコイル12,13,14,15の間に間隙を作らずにコイル12,13,14,15を容易に巻くことが可能になっており、間隙が出来ることによって不要な磁気が発生することの回避を容易に得る構成になっている。
【0024】
トロイダル型トランス3は電圧変換を行うものであって、交流電気の電力がコイル12に供給されると、コア部材10を共通とするコイル13,14,15から所定の交流電圧を出力するものである。
【0025】
整流手段4,5,6はそれぞれ、コイル13,14,15からの所定の交流電気を入力して整流して、脈流電気を出力するものである。
整流手段4,5,6はそれぞれ、4個の整流ダイオード(図示省略)を所謂ブリッジ型に接続して構成されていて、全波整流を行うためのものである。
【0026】
整流手段4,5,6の後段にはそれぞれ、それらで得られた整流後の脈流電気を平滑するための平滑手段7,8,9が接続されている。
16と17は、平滑手段7を構成するコンデンサであり、18は、平滑手段8を構成するコンデンサである。
【0027】
平滑回路9は、チョークコイル21及びコンデンサ19,20を備え、チョークインプット型に構成されている。
チョークコイル21は、コア部材22にコイル23が巻かれて形成されており、平滑作用を行う際に磁気を発する性質を有している。
しかしながら、チョークコイル21は、トロイダル型トランス3の空隙部分11に配設され得るように、小型に形成されており、平滑作用時に発生する磁気をシールドするためのシールド部材は付設されていない。
【0028】
チョークコイル21は、トロイダル型トランス3の中央の空隙部分11に配設されており、この状態においてトロイダル型トランス3のコア部材10は、チョークコイル21から発する磁気をシールドするように機能するものである。
24は、家庭電源の電力を受ける入力端子のプラグである。
【0029】
25は、トロイダル型トランスを覆うカバー体であり、トロイダル型トランス3を基板2の所定の位置に配設した後、ビス止めによって取り付け固定されるものである。
25aは、表面が鍍金によって化粧加工された銅製の外側カバー体であり、25bは、チョークコイル21から発する磁気に対して磁気シールド性を有するケイ素鋼板から形成された内側カバー体である。内側カバー体25bについては、パーマロイ鋼板で形成されるものも挙げられる。
26〜33は、直流電気の出力端子である。
【0030】
電力供給装置1は、上述したように構成されている。以下において、電力供給装置1の作用を説明する。
使用者はまず、プラグ24を家庭電源の差込みに差し込んで電力供給装置1に交流電気の電力を供給して作動させる。
【0031】
ここで、電力供給装置1は、トロイダル型トランス3の入力側に交流電気が供給され、コイル12に交流電気が供給されるとコア部材10に閉自路の磁束が発生する。
続いて、出力側のコイル13,14,15は磁束を発生しているコア部材10を共通としていることによって、それぞれが所定電圧の交流電気を発生する。
コイル13,14,15で発生した交流電気は、それぞれ後段である整流手段4,5,6に送られる。
【0032】
整流手段4,5,6は、それぞれコイル13,14,15から交流電気を受け取るとその交流電気を脈流電気に変換し、更にここで得られた脈流電気をそれぞれの後段である平滑手段7,8,9に送る。
平滑手段7,8,9は、それぞれ整流手段4,5,6からの脈流電気を受け取ると、平滑加工して直流電気に変換する。
【0033】
この時、平滑手段7及び平滑手段8においては、脈流電気はそれぞれコンデンサ16,17及び18によって交流電気に加工されるので、磁気が発生することはない。
【0034】
他方、平滑手段9においては、整流手段6からの脈流電気がチョークコイル21に送られるが、コイル23に脈流電気が流れるとコイル23の巻き方向に対して直角方向で出て直角方向で戻るという磁気つまり磁束が発生する。
【0035】
このチョークコイル21の平滑作用の際に、上述したように、コイル23の巻き方向に対して直角方向で出て直角方向で戻るという磁気が発生するが、チョークコイル21には発生して来る磁気をチョークコイル21の内部に留めておくための部材が備えられていないから、前記磁気はチョークコイル21の外部へと漏洩する。
しかしながら、トロイダル型トランス3のコア部材10は前記磁気と対向する位置にあって、前記磁気をコア部材10より外部に漏洩することを遮るように構成されているから、前記磁気はコア部材10の内部で遮られてそれより外側に漏洩することはなく、コア部材10は磁気に対してシールド作用を行う(図3の矢印B方向)。
【0036】
従って、チョークコイル21から発生する磁気はトロイダル型トランス3の内部でシールドされることになり、電力供給装置1から電力の供給を受ける例えばアンプ、プリアンプ等に磁気が作用しないから、当該アンプ、プリアンプにおいて音声信号等がチョークコイル21からの磁気によって悪影響を受けるということはない。
【0037】
他方、チョークコイル21は、磁気をシールドするための部材が備えられていないのでその分小型化が可能になっており、トロイダル型トランス3の空隙部分11の内部への配設がより一層可能になっている。
又、チョークコイル21は、磁気をシールドするための部材が備えられていないので、その分、設計、製作等が簡便になっている。
【0038】
ここで、使用者は、出力端26〜33より所望の直流電気の供給を受けて、アンプ、プリアンプ等を作動することができるが、この時、当該アンプ、プリアンプ等はチョークコイル21からの磁気を受けずに作動することになる。
そうして、電力供給手段1はチョークコイル21がトロイダル型トランス3の空隙部分11の内部に配設されているので、チョークコイル21とトロイダル型トランス3を基板2の上に別体で配設するよりも全体がコンパクトになっている。
【0039】
又、電力供給装置1に衝撃が加えられてトロイダル型トランス3に対して空隙部分11に配設されているチョークコイル21に位置ズレや姿勢変化が生じ、コア部材10がチョークコイル21からの全ての磁気をシールドができず、その一部がトロイダル型トランス3の外部に進んでも、そのトロイダル型トランス3の外部に進んだ磁気は内側カバー体25bによってシールドされ、結果的にチョークコイル21からの磁気がアンプ、プリアンプ等の他の電気・電子機器にノイズを生じさせることはない。
【0040】
電力供給装置1ではトロイダル型トランス3のコア部材10は断面の形状が楕円形であるが、断面に角形状がないもの、例えば円形、達磨形状等であってもよい。
電力供給装置1では出力側として三つのコイル13,14,15が備えられているが、供給すべき電圧(電流)の種類の数に応じて適宜設定するのが望ましい。
又、整流手段4,5,6及び平滑手段7,8,9は、その供給すべき電圧の種類の数に対応するとよい。
【0041】
電力供給装置1ではトロイダル型トランス3の空隙部分11に一つのチョークコイル21が配設されているが、所望により、可能であれば二つ以上のチョークコイルを配設した構成であってもよい。
【0042】
電力供給装置1ではトロイダル型トランス3のコア部材10によってチョークコイル21からの磁気をシールドする構成になっているが、磁気のシールドをより一層完璧にするために、トロイダル型トランス3の空隙部部11にチョークコイル21を配設した後、空隙部分11の底部と上部に磁気シールド性の蓋体を配設する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の実施の形態例の電気的な構成を説明する電気回路図である。
【図2】図1に示す実施の形態例の一部切欠きを含み、要部の構成を説明する斜視図である。
【図3】図2に示す斜視図のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 電力供給装置
2 基板
3 トランス
4,5,6 整流手段
7,8,9 平滑手段
10 コア部材
11 空隙部分
12〜15 コイル
16〜20 コンデンサ
21 チョークコイル
22 コア部材
23 コイル
24 プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧を変換し且つコア部材の形状がドーナツ形状であるトロイダル型トランスと、そのトロイダル型トランスで変換された交流電気を脈流電気に変換する整流手段と、チョークコイルを具備し、前記整流手段からの脈流電気を平滑して直流電気に変換する平滑手段が備えられ、
上記チョークコイルは上記トロイダル型トランスの中央の空隙部分に配設され、且つ、上記チョークコイルが上記トロイダル型トランスの中央の空隙部分に配設されると、上記トロイダル型トランスのコア部材が、上記チョークコイルから発する磁気をシールドしてそのコア部材を越えて外部に漏洩するのを防ぐように機能することを特徴とした電力供給装置。
【請求項2】
トロイダル型トランスのコア部材の材料が、パーマロイ鋼板、ケイ素鋼板を環状に巻くことによって形成してなる請求項1に記載の電力供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−149172(P2006−149172A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339515(P2004−339515)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(303009467)株式会社ディーアンドエムホールディングス (274)
【Fターム(参考)】