説明

電力処理装置

【課題】電力を有効的に消費し、雑音を低減することができる電力処理装置を提供する。
【解決手段】誘導加熱用コイル部Lおよび共振用コンデンサ部Cが直列に接続されて成る電子抵抗器1に交流電流を供給するインバータ回路2を制御する制御回路3で構成され、インバータ回路2は、2個のスイッチング素子S1、S2、およびスイッチング素子S3、S4が直列に接続されたブリッジ回路2a、2bが直流母線間に並列に2個接続されて形成され、制御回路3は、インバータ回路2の入力電力の大きさに応じて電子抵抗器1の消費電力を変更するために、両ブリッジ回路2a、2bの各スイッチング素子S1〜S4のオンオフを行い制御するか、一方のブリッジ回路2aの各スイッチング素子S1、S2のオンオフを行い制御するとともに他方のブリッジ回路2bの一方のスイッチング素子S4をオン状態に他方のスイッチング素子S3をオフ状態に固定して制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力を有効的に消費し、雑音を低減することができる電力処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電力処理装置は、スイッチング損失を調整するためスイッチング周波数が一定の条件でゼロ電流スイッチングがなされている。そして、負荷の温度を検出し、インバータ回路のスイッチング周波数を調整している。このように、加熱部材の温度上昇を検知して、加熱部材の過昇温を未然に回避することができ、さらに、電力供給を維持するようスイッチング周波数を制御して加熱部材をウォームアップ終了温度まで昇温する。そして、スイッチング周波数を共振周波数近傍で調整して出力電力量を調整している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開番号 WO2004/074944
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電力処理装置は、インバータ回路の出力電圧の通電率を調整し出力電力を調整していた。しかし、従来の場合、共振スイッチング状態から外れてしまうためスイッチングによる損失が発生するため、インバータ回路の放熱も必要となってしまう。このため、駆動するためのインバータ回路にも大きな損失が生じてしまい、誘導加熱の特徴である出力電力のほとんどを誘導加熱により消費するという特徴が失われてしまうという問題点があった。
【0005】
さらに、常に共振スイッチング状態で操作するために、入力電圧や、入力電力の値に合わせて間欠的に電子抵抗器を動作していた。よって、電子抵抗器の抵抗値が入力電力値と見合わない場合、外部に雑音など悪影響が生じてしまうという問題点があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、電力を有効的に消費し、雑音を低減することができる電力処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、誘導加熱用コイル部および共振用コンデンサ部が直列に接続されて成る主回路と、
主回路に交流電流を供給するインバータ回路と、
インバータ回路を制御する制御回路とを備え、
インバータ回路は、2個のスイッチング素子が直列に接続されたブリッジ回路が直流母線間に並列に2個接続されて形成され、
制御回路は、インバータ回路の入力電圧または入力電力の大きさに応じて主回路の消費電力を変更するために、両ブリッジ回路の各スイッチング素子のオンオフを行い制御するか、一方のブリッジ回路の各スイッチング素子のオンオフを行い制御するとともに他方のブリッジ回路の一方のスイッチング素子をオン状態に他方のスイッチング素子をオフ状態に固定して制御するかを切り替えるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の電力処理装置は、誘導加熱用コイル部および共振用コンデンサ部が直列に接続されて成る主回路と、
主回路に交流電流を供給するインバータ回路と、
インバータ回路を制御する制御回路とを備え、
インバータ回路は、2個のスイッチング素子が直列に接続されたブリッジ回路が直流母線間に並列に2個接続されて形成され、
制御回路は、インバータ回路の入力電圧または入力電力の大きさに応じて主回路の消費電力を変更するために、両ブリッジ回路の各スイッチング素子のオンオフを行い制御するか、一方のブリッジ回路の各スイッチング素子のオンオフを行い制御するとともに他方のブリッジ回路の一方のスイッチング素子をオン状態に他方のスイッチング素子をオフ状態に固定して制御するので、電力を有効的に消費し、雑音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1の電力処理装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示した電力処理装置のインバータ回路の出力電流波形を説明するための図である。
【図3】この発明の実施の形態2の電力処理装置のインバータ回路の出力電流波形を説明するための図である。
【図4】この発明の実施の形態3の電力処理装置の構成を示す図である。
【図5】コイルの周波数特性を示した図である。
【図6】図4に示した電力処理装置のインバータ回路の出力電流波形を説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態3の他の電力処理装置の構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態4の電力処理装置の構成を示す図である。
【図9】図8に示した電力処理装置のインバータ回路の出力電流波形を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、本願発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の実施の形態1における電力処理装置の構成を示す図、図2は図1に示した電力処理装置のインバータ回路の出力電流波形(実施の形態1の駆動方法)を説明するための図である。図において、誘導加熱用コイル部Lおよび共振用コンデンサ部Cが直列に接続されて成る主回路としての電子抵抗器1と、電子抵抗器1に交流電流を供給するインバータ回路2と、インバータ回路2を制御する制御回路3とを備えている。そして、インバータ回路2は、2個のスイッチング素子S1、S2およびスイッチング素子S3、S4が直列に接続されたブリッジ回路2a、2bが直流母線間に並列に接続されて形成されている。
【0011】
さらに、制御回路3は、インバータ回路2の入力電圧または入力電力の大きさに応じて電子抵抗器1の消費電力を変更するために、両ブリッジ回路2a、2bの各スイッチング素子S1、S2、S3、S4のオンオフを行い制御する(以下、この制御を第1の制御と称する)か、一方のブリッジ回路2aの各スイッチング素子S1、S2のオンオフを行い制御するとともに他方のブリッジ回路2bの一方のスイッチング素子S4をオン状態に他方のスイッチング素子S3をオフ状態に固定して制御する(以下、この制御を第2の制御と称する)。具体的には、制御回路3は、入力電圧値V0が第1の指示値V1より大きい場合には、第1の制御を行い、第1の指示値V1より小さい場合には、第2の制御を行うものである。このように、制御回路3は、入力電圧V0の大きさにより、スイッチング素子S1、S2、S3、S4へ駆動信号を適宜出力し、インバータ回路2を動作させ電子抵抗器1を駆動する。インバータ回路2のスイッチング周波数は、インバータ回路2の損失を抑えるために電子抵抗器1で定められる共振周波数でスイッチングされる。
【0012】
尚、スイッチング素子S1、S2、S3、S4や、他のインバータ回路2または電子抵抗器1または制御回路3内の半導体素子として、SiCMOSFETなどSiよりワイドバンドギャップの大きなワイドバンドギャップ半導体素子を用いることにより、通常のシリコン半導体素子と比較すると、電流導通時のロスを抑えるものである。尚、このことは以下の実施の形態においても同様であるため、その説明は適宜省略する。
【0013】
図2は図1に示した電力処理装置の動作におけるインバータ回路の出力電流波形の変化を示す。尚、実際の出力電流は回路構成を変更した瞬間に乱れが生じ、共振周波数以上の周波数でスイッチングが行われるが、この問題に対する対策として、共振1周期単位でスイッチングを停止するか動作するか判断するように動作判断のタイミングや検出遅れ時間を設けることや、動作開始電圧指示値より動作停止電圧指示値を低く設定するなど指示値にヒステリシスを設け対応することとする。そしてこの現象は、本発明の特徴を説明するうえにおいて、問題としないため図示しないこととする。また、この現象は以下の実施の形態においても同様のことが言えるため、その説明は適宜省略する。
【0014】
次に上記のように構成された実施の形態1の電力処理装置の動作について説明する。まず、入力電圧V0が第1の指示値V1より大きな値を示した場合、制御回路3は、インバータ回路2の両ブリッジ回路2a、2bに駆動信号を出力して、各スイッチング素子S1、S2、S3、S4のオンオフ制御を行い駆動させる。これによりインバータ回路2は、第1の制御により駆動されて通常のフルブリッジインバータとして動作し、電子抵抗器1には正負の電源電圧が交互に印加されるため、電子抵抗器1の消費電力は大きなものとなる。
【0015】
次に、入力電圧V0が第1の指示値V1より小さな値を示した場合、制御回路3は、インバータ回路2の一方のブリッジ回路2aに駆動信号を出力して、各スイッチング素子S1、S2のオンオフ制御を行い駆動させる。また、他方のブリッジ回路2bに駆動信号を出力して、スイッチング素子S4を常にオン状態と、スイッチング素子S3は常にオフ状態とするように制御している。これによりインバータ回路2は、第2の制御により駆動され、電子抵抗器1には正の電源電圧と0電圧とが交互に印加されるため、電子抵抗器1の消費電力は小さなものとなる。
【0016】
尚、ここではこの第2の制御を、インバータ回路2のブリッジ回路2aを動作させる場合について説明したが、これに限られることはなく、例えば、ブリッジ回路2bのスイッチング素子S3、S4をオンオフ制御し、ブリッジ回路2bのスイッチング素子S2はオン状態、スイッチング素子S1はオフ状態とする動作モードを採用しても、上記に示した場合と同様に行うことができる。また、このことは以下の実施の形態においても同様であるためその説明は適宜省略する。
【0017】
次に、入力電圧V0がさらに小さくなり、電子抵抗器1を停止させるような第4の指示値V4になった場合、スイッチング素子S2、S4をオン状態して、スイッチング素子S1、S3をオフ状態とすることで、電子抵抗器1の入力端子を短絡し、電子抵抗器1を入力から切り離す。これにより電子抵抗器1からの入力電力がインバータ回路2の入力側に回生することを防ぐことができる。
【0018】
また、入力電力が大きくなりインバータ回路2が、電子抵抗器1には正の電源電圧と0電圧とが交互に印加する第2の制御による駆動のみでは、電子抵抗器1にて電力が消費しきれなくなり、検出電圧V0が上昇し第1の指示値V1以上になった場合、再び、インバータ回路2を第1の制御の駆動に変更して、電子抵抗器1で消費する電力を大きくなるように制御する。
【0019】
尚、ここで設定された第1の指示値V1とは、インバータ回路2を第1、第2の制御の制御方式の切り替える(以下、このことを切り替え方式と称する)切り替え方式を行うために設定された電圧値で、この第1の指示値V1の電圧値は電力処理装置に使用されるコンデンサや半導体素子など機器を構成する部品になどにより適宜決定されるものである。具体的には、第1の指示値V1は使用している半導体素子やコンデンサ電圧の定格の80%以上など部品の定格による制限値か、もしくは、入力電力が大きくなり、切り替え方式を変化させても可聴周波数で電子抵抗が間欠運転を行わない入力電力値になる値などを設定することが考えられる。
【0020】
上記のように構成された実施の形態1の電力処理装置は、入力電圧の大きさに応じて、電子抵抗器を駆動させるインバータ回路の制御方式を変更することにより、高負荷時には電子抵抗器の両電極に正負の電圧、低負荷時には正方向のみの電圧を印加して、電子抵抗器に印加される電圧を調整することにより電子抵抗器で消費される消費電力を調整する。このように行えば、高負荷時の消費電力に比較して、低負荷時の消費電力は1/4となる。よって、従来のような間欠的動作が不要となり電子抵抗器で発生していた音鳴りを抑制することができる。
【0021】
実施の形態2.
上記実施の形態1では常にインバータ回路2のスイッチング周波数は電子抵抗器1の共振周波数と一致させ、インバータ回路2はゼロ電流スイッチングが行われ、入力電圧の大きさによりインバータ回路2の切り替え方式による制御により対応していたが、本実施の形態2では上記実施の形態1に加えて、入力電圧の大きさにより、インバータ回路2は電子抵抗器1の間欠運転を行い微調整を行うものである。尚、電力処理装置の構成自体は上記実施の形態1と同様であるため、図1に基づいて説明する。
【0022】
図3はこの発明の実施の形態2のインバータ回路の出力電流波形(実施の形態2の駆動方法)を説明するための図である。まず、入力電圧V0が第1の指示値V1より大きい場合であり、制御回路3は、上記実施の形態1と同様に、インバータ回路2の両ブリッジ回路2a、2bに駆動信号を出力して、各スイッチング素子S1、S2、S3、S4のオンオフ制御を行い駆動させる。これによりインバータ回路2は、第1の制御により駆動されて通常のフルブリッジインバータとして動作し、電子抵抗器1には正負の電源電圧が交互に印加されるため、電子抵抗器1の消費電力は大きなものとなる。次に、制御回路3は、入力電圧V0の大きさに伴い、電子抵抗器1を間欠運転するために駆動信号の通電率を下げて電子抵抗器で消費される消費電力を調整する。
【0023】
そして、その通電率が1/4以下になると、制御回路3は、入力電圧V0が第1の指示値V1より小さな値となった判断して、制御回路3は、上記実施の形態1と同様に、インバータ回路2の一方のブリッジ回路2aに駆動信号を出力して、各スイッチング素子S1、S2のオンオフ制御を行い駆動させる。また、他方のブリッジ回路2bに駆動信号を出力して、スイッチング素子S4を常にオン状態と、スイッチング素子S3は常にオフ状態とするように制御している。これによりインバータ回路2は、第2の制御により駆動され、電子抵抗器1には正の電源電圧と0電圧とが交互に印加されるため、電子抵抗器1の消費電力は小さなものとなる。さらに、制御回路3は入力電圧が下がると、インバータ回路2のこの第2の制御の状況での通電率を下げて電子抵抗器で消費される消費電力を調整する。
【0024】
次に、入力電圧V0がさらに小さくなり、電子抵抗器1を停止させるような第4の指示値V4になった場合、スイッチング素子S2、S4をオン状態して、スイッチング素子S1、S3をオフ状態とすることで、電子抵抗器1の入力端子を短絡し、電子抵抗器1を入力から切り離す。これにより電子抵抗器1からの入力電力がインバータ回路2の入力側に回生することを防ぐことができる。このような、通電率による制御と、切り替え方式による制御とを組み合わせ、例えば4周期をひとつのまとまりとして制御する場合、通電率の制御は8段階にて、切り替え方式の制御は2段階にて調整することができるので、計16段階の電子抵抗器の消費電力の調整を行うことができることとなる。
【0025】
上記のように構成された実施の形態2の電力処理装置は、上記実施の形態1と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、通電率を制御することにより、消費電力をより細かく調整することできる。
【0026】
実施の形態3.
図4はこの発明の実施の形態3の電力処理装置の構成を示す図、図5はコイルの周波数特性を示した図、図6は図4に示した電力処理装置のインバータ回路の出力電流波形を説明するための図、図7はこの発明の実施の形態3の他の電力処理装置の構成を示す図である。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して省略する。また、インバータ回路2の構成は上記各実施の形態と同様である(図1を参照)。
【0027】
上記実施の形態2は上記実施の形態1の制御に加えて、電子抵抗器1の通電率を変化させて調整する例を示したが、本実施の形態3では、上記実施の形態1の制御に加えて、共振用コンデンサ部Cを複数のコンデンサC1、C2にて構成し、それぞれをオンオフするスイッチS5、S6を備える。そして、共振用コンデンサ部Cの容量を変化し共振周波数を変化させ、インバータ回路2の出力周波数を共振周波数の変化に応じて変化させ、電子抵抗器1の抵抗値を変化させる場合について説明する。また、コンデンサC1、C2のそれぞれの容量は異なるものを用いてもよい。ここでは例えば、コンデンサC2>コンデンサC1の容量を有するものとする。
【0028】
まず、コイルの周波数特性を図5に基づいて説明する。図に示すように、コイルの周波数特性は、コイルが周波数f1で駆動したときの抵抗値は抵抗値R1となり、周波数f2で駆動したときの抵抗値は抵抗値R2となる。そして、コイルを駆動する周波数を大きくした場合、そのインダクタンス値は小さくなり、抵抗値は大きくなる傾向がある。
例えば、周波数f2の場合、抵抗値R2となるため電子抵抗器1に印加される電圧がVの場合、電子抵抗器1で消費される電力P2は、
P2=V/R2
となる。
【0029】
周波数f1の場合、抵抗値R1となるため電子抵抗器1に印加される電圧Vが変わらない(切り替え方式が変わらない)場合、電子抵抗器1で消費される電力P1は、
P1=V/R1
となる。よって、R1<R2であるため、P1<P2であることが明らかであり、周波数を変化させることにより電子抵抗器1における消費電力を調整することができる。このため周波数の違いによる抵抗値の変化を切り替え方式の変更時の例えば1/4以下になるように設定することでより細かな電力調整を行うことができる。
【0030】
よって、電子抵抗器1に入力される電力、もしくは入力電圧値が大きい場合には、コイルを駆動する周波数を小さく(低周波駆動)して抵抗値を下げ、消費される電力を大きくする。一方、電子抵抗器1に入力される電力、もしくは入力電圧値が小さい場合には、コイルを駆動する周波数を大きく(高周波駆動)して抵抗値を上げ、消費される電力を小さくする。尚、複数のコンデンサを用いて調整する方法を示したが、これに限られることはなく、可変容量コンデンサ(バリアブルコンデンサ)を用いて容量を変化させてもよい。
【0031】
次に上記のように構成された実施の形態3の電力処理装置の動作について説明する。まず、入力電圧V0が第2の指示値V2より大きな値を示した場合、制御回路3は、上記各実施の形態と同様に、インバータ回路2の両ブリッジ回路2a、2bに駆動信号を出力して、各スイッチング素子S1、S2、S3、S4のオンオフ制御を行い駆動させる。これによりインバータ回路2は、第1の制御により駆動されて通常のフルブリッジインバータとして動作し、電子抵抗器1には正負の電源電圧が交互に印加される。さらに、制御回路3はスイッチS5をオフし、スイッチS6をオンして、共振用コンデンサ部CとしてコンデンサC2のみ使用し、誘導加熱用コイル部Lを駆動する周波数(インバータ回路2の出力周波数)を共振周波数の変化に応じて小さく(低周波駆動)し、電子抵抗器1の抵抗値を下げ、消費される電力を大きくする。
【0032】
そして、電力処理装置10に入力される入力電圧V0が第1の指示値V1より大きく第2の指示値V2よりが小さい場合、インバータ回路2は第1の制御により駆動されるとともに、制御回路3はスイッチS5をオンし、スイッチS6をオフし、共振用コンデンサ部CとしてコンデンサC1を使用し、誘導加熱用コイル部Lを駆動する周波数(インバータ回路2の出力周波数)を共振周波数の変化に応じて上記の場合より大きく(高周波駆動)することにより、電子抵抗器1の抵抗値を上記の場合より上げ、消費される電力を上記の場合より小さくする。
【0033】
次に、制御回路3は、入力電圧V0が第1の指示値V1より小さく第3の指示値V3より大きな値を示した場合、制御回路3は、上記各実施の形態と同様に、インバータ回路2の一方のブリッジ回路2aに駆動信号を出力して、各スイッチング素子S1、S2のオンオフ制御を行い駆動させる。また、他方のブリッジ回路2bに駆動信号を出力して、スイッチング素子S4を常にオン状態と、スイッチング素子S3は常にオフ状態とするように制御している。これによりインバータ回路2は、第2の制御により駆動され、電子抵抗器1には正の電源電圧と0電圧とが交互に印加される。さらに、制御回路3はスイッチS5をオフし、スイッチS6をオンして、共振用コンデンサ部CとしてコンデンサC2のみ使用し、誘導加熱用コイル部Lを駆動する周波数を(インバータ回路2の出力周波数)を共振周波数の変化に応じて小さくする(低周波駆動)ことにより、電子抵抗器1の抵抗値を下げ、第2の制御状態においては、消費される電力が大きくなる。
【0034】
次に、制御回路3は、入力電圧V0が第3の指示値V3より小さな値を示した場合、インバータ回路2を第2の制御により駆動するとともに、制御回路3はスイッチS5をオンし、スイッチS6をオフし、共振用コンデンサ部CとしてコンデンサC1を使用し、誘導加熱用コイル部Lを駆動する周波数を(インバータ回路2の出力周波数)を共振周波数の変化に応じて上記の場合より大きくする(高周波駆動)ことにより、電子抵抗器1の抵抗値を上記の場合より上げ、消費される電力を上記の場合より小さくする。
【0035】
次に、入力電圧V0がさらに小さくなり、電子抵抗器1を停止させるような第4の指示値V4になった場合、スイッチング素子S2、S4をオン状態して、スイッチング素子S1、S3をオフ状態とすることで、電子抵抗器1の入力端子を短絡し、電子抵抗器1を入力から切り離す。これにより電子抵抗器1からの入力電力がインバータ回路2の入力側に回生することを防ぐことができる。
【0036】
上記のように構成された実施の形態3の電力処理装置は、上記実施の形態1と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、電子抵抗器の抵抗値を制御することにより、消費電力をより細かく調整することできる。
【0037】
尚、上記実施の形態3では、共振用コンデンサ部Cの接続方法は、2方法にて接続して2段階に制御する例を示したが、これに限られることはなく、コンデンサC1、C2を並列に接続する場合を追加して、3方法にて接続して3段階にて制御する例も考えられる。このことは以下の実施の形態においても同様であるため、その説明は適宜省略する。
【0038】
また、電子抵抗器1の抵抗値を、共振用コンデンサ部Cの容量を変更して、共振周波数を変更することにより対応する例を示したが、これに限られることはなく、例えば図7に示すように、誘導加熱用コイル部Lを複数のコイルL1、L2にて形成し、それぞれをオンオフするスイッチS7、S8、S9を備え、これらをオンオフすることにより、L1,L2の接続方法を直列、並列、単体使用と誘導加熱用コイル部Lのコイル構成を変更することにより、電子抵抗器1の抵抗値を変更して対応するようにしても、上記コンデンサの場合と同様に調整することが可能である。
【0039】
実施の形態4.
図8はこの発明の実施の形態4における電力処理装置を用いたシステムの構成を示した図、図9は図8に示した電力処理装置のインバータ回路の出力電流波形を説明するための図である。上記各実施の形態では、電力処理装置の入力電圧を検出し動作させていたが、本実施の形態4では外部回路による検出値を基に電子抵抗器の駆動方法を変化させる場合について説明する。
【0040】
図において、入力系統に接続されたコンバータ11と、コンバータ11の出力側に接続されたコンデンサ12と、コンバータ11の出力側にコンデンサ12を介し接続されたインバータ14と、インバータ14の出力側に接続されたモータ15とを有するシステムである。そして、電力処理装置10は、コンデンサ12の両端に接続されている。そして、コンバータ11とインバータ14との間にはインバータ14から回生される電力を測定するための電力計13が配設され、電力処理装置10内のインバータ回路および制御回路には入力電圧V0と電力計13の検出値W0とが入力されている。尚、電力処理装置10の構成は上記実施の形態3に示した図4の構成が採用されているものとする。
【0041】
上記のように構成された実施の形態4の電力処理装置10の動作について説明する。ここでは、電力処理装置10は入力電圧V0の大きさに応じて動作のオン/オフを決定し、駆動方法は電力計13の検出値W0に従い制御する場合を想定する。まず、検出値W0が第2の指示値W2より大きな値を示した場合、制御回路3は、インバータ回路2の両ブリッジ回路2a、2bに駆動信号を出力して、各スイッチング素子S1、S2、S3、S4のオンオフ制御を行い駆動させる。これによりインバータ回路2は、第1の制御により駆動されて通常のフルブリッジインバータとして動作し、電子抵抗器1には正負の電源電圧が交互に印加される。さらに、制御回路3はスイッチS5をオフし、スイッチS6をオンして、共振用コンデンサ部CとしてコンデンサC2のみ使用し、誘導加熱用コイル部Lを駆動する周波数(インバータ回路2の出力周波数)を共振周波数の変化に応じて小さく(低周波駆動)し、電子抵抗器1の抵抗値を下げ、消費される電力を大きくする。
【0042】
そして、電力処理装置10に入力される検出値W0が第1の指示値W1より大きく第2の指示値W2よりが小さい場合、インバータ回路2は第1の制御により駆動されるとともに、制御回路3はスイッチS5をオンし、スイッチS6をオフし、共振用コンデンサ部CとしてコンデンサC1を使用し、誘導加熱用コイル部Lを駆動する周波数を(インバータ回路2の出力周波数)を共振周波数の変化に応じて上記の場合より大きくする(高周波駆動)することにより、電子抵抗器1の抵抗値を上記の場合より上げ、消費される電力を上記の場合より小さくする。
【0043】
次に、制御回路3は、検出値W0が第1の検出値W1より小さく第3の検出値W3より大きな値を示した場合、制御回路3は、インバータ回路2の一方のブリッジ回路2aに駆動信号を出力して、各スイッチング素子S1、S2のオンオフ制御を行い駆動させる。また、他方のブリッジ回路2bに駆動信号を出力して、スイッチング素子S4を常にオン状態と、スイッチング素子S3は常にオフ状態とするように制御している。これによりインバータ回路2は、第2の制御により駆動され、電子抵抗器1には正の電源電圧と0電圧とが交互に印加される。さらに、制御回路3はスイッチS5をオフし、スイッチS6をオンして、共振用コンデンサ部CとしてコンデンサC2のみ使用し、誘導加熱用コイル部Lを駆動する周波数(インバータ回路2の出力周波数)を共振周波数の変化に応じて小さく(低周波駆動)ことにより、電子抵抗器1の抵抗値を下げ、第2の制御状態においては、消費される電力が大きくなる。
【0044】
次に、制御回路3は、検出値W0が第3の検出値W3より小さな値を示した場合、制御回路3はインバータ回路2は第2の制御により駆動されるとともに、制御回路3はスイッチS5をオンし、スイッチS6をオフし、共振用コンデンサ部CとしてコンデンサC1を使用し、誘導加熱用コイル部Lを駆動する周波数を(インバータ回路2の出力周波数)を共振周波数の変化に応じて上記の場合より大きくする(高周波駆動)ことにより、電子抵抗器1の抵抗値を上記の場合より上げ、消費される電力を上記の場合より小さくする。
【0045】
さらに、電力値W0が小さくなると、電力処理装置10は入力電圧V0の大きさに応じて動作のオン/オフを繰り返し、電力処理装置を間欠的に動作させることにより消費電力を調整する。
尚、上記実施の形態4では電力計14を用いて電力処理装置10の制御を行う例を示したが、これに限られることはなく、電力計14の代わりに電圧計と電流計とを用いて、入力電圧V0と検出値I0とを検出して電力処理装置10を制御してもよい。
また本実施の形態では複数のコンデンサC1、C2を使用した例について説明したが、C1、C2の代わりに静電容量を変化させることのできる可変容量コンデンサを用いて、制御回路からの指示値に応じて上記コンデンサの容量と、電子抵抗器の駆動周波数を変化させることにより電力処理装置の抵抗値を調整してもかまわない。
【0046】
上記のように構成された実施の形態4の電力処理装置は、上記各実施の形態と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、外部信号により制御することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 電子抵抗器、2 インバータ回路、3 制御回路、10 電力処理装置、
C 共振用コンデンサ部、C1,C2 コンデンサ、L 誘導加熱コイル部、
L1,L2 コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱用コイル部および共振用コンデンサ部が直列に接続されて成る主回路と、
上記主回路に交流電流を供給するインバータ回路と、
上記インバータ回路を制御する制御回路とを備え、
上記インバータ回路は、2個のスイッチング素子が直列に接続されたブリッジ回路が直流母線間に並列に2個接続されて形成され、
上記制御回路は、上記インバータ回路の入力電圧または入力電力の大きさに応じて上記主回路の消費電力を変更するために、上記両ブリッジ回路の各スイッチング素子のオンオフを行い制御するか、一方の上記ブリッジ回路の各スイッチング素子のオンオフを行い制御するとともに他方の上記ブリッジ回路の一方のスイッチング素子をオン状態に他方のスイッチング素子をオフ状態に固定して制御するかを切り替えることを特徴とする電力処理装置。
【請求項2】
上記制御回路は、上記インバータ回路の入力に応じて上記主回路の抵抗値を変更し、上記インバータ回路の出力周波数を変更された上記主回路の共振周波数となるようにすることを特徴とする請求項1に記載の電力処理装置。
【請求項3】
上記制御回路は、上記入力電圧または上記入力電力の大きさに応じて上記主回路の消費電力を変更するために、上記主回路に間欠的に通電するように上記インバータ回路の電力調整を行うことを特徴とした請求項1または請求項2に記載の電力処理装置。
【請求項4】
上記制御回路は、外部信号に応じて、上記主回路の消費電力を変更するために、上記両ブリッジ回路の各スイッチング素子のオンオフを行い制御するか、一方の上記ブリッジ回路の各スイッチング素子のオンオフを行い制御するとともに他方の上記ブリッジ回路の一方のスイッチング素子をオン状態に他方のスイッチング素子をオフ状態に固定して制御するかを切り替えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電力処理装置。
【請求項5】
上記インバータ回路または上記主回路または上記制御回路の少なくもいずれか1つは、ワイドバンドギャップ半導体素子を備えることを特徴とした請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電力処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−79648(P2012−79648A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226391(P2010−226391)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】