説明

電力制御システム

【課題】適用中の制御パターンを一定の長さ以上の期間をかけて評価し、その後の制御に活かすことが可能な電力制御システムを提供する。
【解決手段】太陽光発電装置4及び蓄電装置5を備えた住宅の電力制御システムである。そして、制御に必要な演算条件を設定する初期設定手段21と、発電量及び電力消費量を計測する計測手段7と、電力価格設定手段23と、複数の制御パターンを記憶させる制御パターン記憶手段24と、電力料金を算出する計算期間を設定する計算期間設定手段22と、計算期間に計測手段によって計測された計測値と電力価格とに基づいて、複数の制御パターンのそれぞれで制御した場合の電力料金を算出する電力料金算出手段31と、それらの演算値を所定の基準で評価して一つの制御パターンを選択する制御パターン選択手段32と、選択された制御パターンに従って制御をおこなう制御装置1とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置と蓄電装置とを備えた建物において、太陽光発電装置と蓄電装置と系統電力網とから供給される電力の最適配分を制御する電力制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電装置及び蓄電装置を備えた住宅を対象とした、電力料金の削減や電力負荷を平準化させるための制御などが知られている(特許文献1,2など参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、太陽光発電装置で発電された電力と、系統電力網から深夜以外の時間帯に得られる電力と、深夜電力とのなかで、コストが安い順番で優先順位を決めて使用させることで、電力料金を低減させることが可能な電力供給システムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、太陽光発電装置と蓄電装置の最適な組み合わせを求めるための蓄電池容量の算出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−178237号公報
【特許文献2】特開2004−32989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の電力供給システムは、その時々の状態を判断して使用する電力を決定するシステムであって、数日間で集計した場合に必ずしも最適な制御となっているとはいえない。
【0007】
また、特許文献2の蓄電池容量の算出方法は、過去の計測値や推定値から設備を導入する時点での最適な蓄電装置の容量を算出しているが、電力価格の変化や生活スタイルの変化や近隣に建設された建物によって日陰が発生するようになったなどの導入後の変化に対応できるものではない。
【0008】
そこで、本発明は、適用中の制御パターンを一定の長さ以上の期間をかけて評価し、その後の制御に活かすことが可能な電力制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の電力制御システムは、太陽光発電装置及び蓄電装置を備えた建物の電力制御システムであって、前記太陽光発電装置及び前記蓄電装置の制御に必要な演算条件を設定する初期設定手段と、前記太陽光発電装置の発電量及び前記建物の電力消費量を計測する計測手段と、時間によって変化する電力価格の設定をおこなう電力価格設定手段と、前記太陽光発電装置及び前記蓄電装置の制御についての複数の制御パターンを記憶する制御パターン記憶手段と、前記建物の電力料金を算出する計算期間を設定する計算期間設定手段と、前記計算期間に前記計測手段によって計測された計測値と前記電力価格設定手段によって設定された電力価格とに基づいて、前記複数の制御パターンのそれぞれで制御した場合の電力料金を算出する電力料金算出手段と、前記電力料金算出手段によって算出された演算値を所定の基準で評価して一つの制御パターンを選択する制御パターン選択手段と、前記制御パターン選択手段によって選択された制御パターンに従って制御をおこなう制御装置とを備えたことを特徴とする。ここで、前記計算期間は15〜60日の長さであることが好ましい。
【0010】
また、前記制御パターン選択手段では、前記電力料金算出手段において算出された電力料金の低さを基準にして評価をおこなうことができる。さらに、前記太陽光発電装置の発電量に基づいて二酸化炭素の排出量の削減量を算出する二酸化炭素削減量算出手段を備え、前記制御パターン選択手段では、前記二酸化炭素削減量算出手段による演算結果を合わせた基準で評価をおこなう構成であってもよい。
【0011】
さらに、前記制御パターン選択手段による制御パターンの選択は、一定期間間隔でおこなわれる構成であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された本発明の電力制御システムは、太陽光発電装置と蓄電装置とを備えた建物の発電量や電力消費量を実際に計測し、その計測値を使った電力料金のシミュレーションを複数の制御パターンについておこなう。そして、その演算結果に基づいてその後の制御パターンを決定する。
【0013】
このため、適用中の制御パターンを評価しなおすことができ、その結果、評価が高かった制御に基づいてその後の制御をおこなうことができる。すなわち、実際に計測した計測値を使って評価を適宜、しなおすことができるので、電力価格の変化、蓄電装置や太陽光発電装置などの設備の変化、生活スタイルの変化、近隣に建設された建物によって日陰が発生するようになったなどの変化にも容易に対応することができる。
【0014】
また、15〜60日の長さで制御パターンを評価することで、瞬時値に対する制御とは異なる最適な制御を導き出すことが可能になる。
【0015】
さらに、制御パターンを選択するに際して、電力料金が最低となるものを選択するのであれば、最も経済的な制御パターンによって電力制御システムを稼動させることができる。
【0016】
また、太陽光発電装置の発電量に基づいて二酸化炭素の排出量の削減量を算出する二酸化炭素削減量算出手段を設け、評価の基準に加えることができる。
【0017】
このため、単に電力料金が最低になるという経済性のみを追求した制御だけでなく、地球環境への負荷の少ない制御を選択することができる。
【0018】
また、一旦選択された制御を一定期間続けておこなうことにより、選択された制御の評価を長いスパンでおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態の電力制御システムの構成を説明するブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の電力制御システムの処理の流れを説明するフローチャートである。
【図3】制御パターンA1を説明する説明図である。
【図4】制御パターンA2を説明する説明図である。
【図5】実施例1の制御パターンB1を説明する説明図である。
【図6】実施例1の制御パターンC1を説明する説明図である。
【図7】実施例1の制御パターンC2を説明する説明図である。
【図8】実施例2の電力制御システムの構成を説明するブロック図である。
【図9】実施例2の制御パターンD1を説明する説明図である。
【図10】実施例2の制御パターンD2を説明する説明図である。
【図11】実施例4のシミュレーションをおこなうに際しての電力価格の設定図である。
【図12】実施例4の夏期のシミュレーション結果を示したグラフである。
【図13】実施例4の冬期のシミュレーション結果を示したグラフである。
【図14】実施例4の中間期のシミュレーション結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態の電力制御システムの概略構成を説明するためのブロック図である。まず、図1を参照しながら電力制御システムの全体構成について説明する。
【0022】
この電力制御システムによって制御される建物としての住宅は、電力会社の発電所や地域毎に設置されたコジェネレーション設備などの系統電力から電力の供給を受けるための電力網としての系統電力網8に接続されている。
【0023】
また、この住宅は、分散型の発電装置としての太陽光発電装置4と、電力を一時的に蓄えておく蓄電装置5とを備えている。
【0024】
この太陽光発電装置4は、太陽エネルギーとしての太陽光を、太陽電池を利用することによって、直接、電力に変換して発電をおこなう装置である。この太陽光発電装置4は、太陽光を受けることができる時間帯にのみ電力を供給することが可能な装置である。
【0025】
また、太陽光発電装置4によって発電された直流電力は、通常、パワーコンディショナ(図示省略)によって交流電力に変換されて使用される。さらに、蓄電装置5に充電又は蓄電装置5から放電される際にも、パワーコンディショナ(図示省略)によって直流と交流の変換がおこなわれる。
【0026】
なお、後述する電力負荷装置61の一部又は全部が、直流によって作動する装置である場合は、太陽光発電装置4によって発電された電力や蓄電装置5から放電される電力を、直流のまま利用することもできる。
【0027】
また、住宅には、分電盤6を通して電力が供給される様々な電力負荷装置61が設置される。例えば、エアコンなどの空調装置、照明スタンドやシーリングライトなどの照明装置、冷蔵庫やテレビなどの家電装置などが電力によって稼働する。
【0028】
さらに、電気自動車やプラグインハイブリッドカーは、走行させるために充電をおこなう場合は電力負荷装置61となる。また、蓄電装置5と同様に、住宅の電力負荷装置61のために放電させる場合は、蓄電装置5となる。
【0029】
そして、本実施の形態の電力制御システムは、制御をおこなうための様々な設定をおこなう設定部2と、太陽光発電装置4の発電量及び住宅の電力消費量を計測する計測手段7と、後述する複数の制御パターンによって制御した場合の電力料金を算出する電力料金算出手段31と、電力料金算出手段31の演算結果を所定の基準で評価して一つの制御パターンを選択する制御パターン選択手段32と、その選択された制御パターンに従って蓄電装置5や太陽光発電装置4の制御をおこなう制御装置1とを備えている。
【0030】
また、設定部2は、太陽光発電装置4及び蓄電装置5の制御に必要な演算条件を設定する初期設定手段21と、住宅の電力料金を算出する計算期間を設定する計算期間設定手段22と、時間によって変化する電力価格の設定をおこなう電力価格設定手段23と、太陽光発電装置4及び蓄電装置5の制御についての複数の制御パターンを記憶する制御パターン記憶手段24とを備えている。
【0031】
この初期設定手段21では、住宅に取り付けられた太陽光発電装置4の発電容量と、蓄電装置5の蓄電容量とを設定する。また、計算期間設定手段22は、計算対象となる期間を設定する。例えば、計算期間として15〜60日、好ましくは15〜30日程度に設定することができる。
【0032】
さらに、電力価格設定手段23では、一日の時間によって変化する電力価格の設定をおこなう。例えば、23時台(a1)から6時台(b1)までの深夜割引価格、7時台(a2)から9時台(b2)までのリビングタイム価格、10時台(a3)から16時台(b3)までのデイタイム価格、17時台(a4)から22時台(b4)までのリビングタイム価格などが設定される。
【0033】
また、電力価格設定手段23では、太陽光発電装置4で発電した電力を電力会社等が買い取る場合は、その買取価格の設定もおこなう。さらに、二酸化炭素の排出量の削減量を電力会社が買い取る場合は、その排出量価格の設定もおこなう。
【0034】
また、制御パターン記憶手段24には、電力の供給方法や充電のタイミングなどの電力の使用方法に関する複数の制御パターンを記憶させる。図3に制御パターンA1を示した。
【0035】
この制御パターンA1は、前提条件として、太陽光発電装置(PV)4によって発電した電力のうち、住宅で消費されずに余剰分が発生した場合は系統電力網8側に逆潮流として流し、電力会社に買い取ってもらう。また、この際の買取価格は、深夜割引価格よりも高いものとする。さらに、深夜割引価格よりリビングタイム価格が高く、それよりもデイタイム価格が高い設定となっている。また、蓄電装置5は、系統電力網8から流入する電力のみを充電することができる。
【0036】
この制御パターンA1の制御によって期待されることは、太陽光発電装置4の余剰分の買い取りをおこなうことによる電力料金の削減効果と、価格の安い深夜電力を有効利用する効果である。このため、蓄電装置5への充電は、深夜割引価格の時間帯に系統電力網8から流入した電力によっておこなう。
【0037】
そして、制御パターンA1では、住宅への供給電力の配分を次の優先順位でおこなう。まず、深夜割引価格の時間帯(a1〜b1)及び時間b1〜時間(de-1)までは、太陽光発電装置4によって発電された電力の使用を優先し、足りない場合に系統電力網8の電力を供給する。ここで、時間deは、時間a2〜時間b3までの間で設定される時間である。この時間deを変化させることによって、制御パターンA1の中でさらに複数の制御パターンを作成することができる。
【0038】
また、時間deから時間b4までは、蓄電装置5からの放電、太陽光発電装置4によって発電された電力、系統電力網8から供給される電力の優先順位で住宅への電力の供給をおこなう。
【0039】
ここで、蓄電装置5の出力抑制をおこなわない場合は、時間de〜時間b4までの蓄電装置5の制御は同じ制御になる。
【0040】
これに対して、時間deから時間(gk-1)までは、蓄電装置5の出力を抑えることができる。これは、深夜割引価格より高い値段で買い取りがおこなわれる太陽光発電装置4によって発電された電力を、できるだけ多く買い取らせるための制御である。
【0041】
ここで、時間gkは、時間a2〜時間b3までの間で設定される時間である。また、この時間gkを変化させることによって、制御パターンA1の中でさらに複数の制御パターンを作成することができる。
【0042】
このように制御パターンA1の中で、時間de及び時間gkを変化させることによって複数の制御パターンを設定することができる。
【0043】
一方、図4に示した制御パターンA2は、太陽光発電装置4によって発電された電力を最優先に使用する点が制御パターンA1とは異なる。そして、時間deから時間b4までは、太陽光発電装置4によって発電された電力、蓄電装置5からの放電、系統電力網8から供給される電力の優先順位で住宅への電力の供給をおこなう。
【0044】
この制御パターンA2の制御によって期待されることは、太陽光発電装置4によって発電された電力を最優先に使用することによって二酸化炭素の削減効果を大きくすることである。
【0045】
また、この制御パターンA2では、電力会社が排出量価格の設定をおこなっている場合は、太陽光発電装置4の発電量と排出量価格とに基づいて計算される金額を電力料金から差し引くことができる(PV全買取)。
【0046】
そして、電力料金算出手段31では、この制御パターン記憶手段24に記憶された複数の制御パターンについて電力料金の演算をおこなう。この電力料金の演算は、計算期間設定手段22で設定した計算期間についておこなう。
【0047】
また、この計算期間の太陽光発電装置4の発電量及び売電量(逆潮流量)、並びに住宅の電力消費量は、計測手段7によって計測された計測値を使用する。例えば、1年前の同一月日のn日間に計測された計測値を使用することができる。この場合は、実際に計測された計測値をそのまま使うこともできるが、n日間の計測値から一日の各時間の平均値を算出して使用することもできる。
【0048】
さらに、制御パターン選択手段32では、複数の制御パターンについて算出された電力料金の中で、最も安い電力料金となる制御パターンを選択する。すなわち、本実施の形態で説明する制御パターンの評価基準は、金額の低さである。
【0049】
そして、制御装置1では、制御パターン選択手段32において選択された一つの制御パターンに従って制御をおこなう。ここで、制御装置1は、蓄電装置5、太陽光発電装置4、系統電力網8及び電力負荷装置61に繋がる分電盤6に接続されている。
【0050】
この制御装置1は、蓄電装置5の充電及び放電のタイミングを制御するパワーコンディショナの機能を備えている。また、蓄電装置5から放電された電力を分電盤6に向けて流す制御をおこなう。さらに、太陽光発電装置4で発電された電力を分電盤6に流すか、系統電力網8に逆潮流させるかを制御する。また、系統電力網8の電力を蓄電装置5に流すか、分電盤6に流すかの制御をおこなう。
【0051】
次に、本実施の形態の電力制御システムの処理の流れを、図2を参照しながら説明する。
【0052】
まず、初期設定手段21によって太陽光発電装置4の発電容量(kW)、蓄電装置5の蓄電容量(kW)を入力する(ステップS1)。この入力は、システムに接続された端末(図示省略)や住宅に設置されたモニタ(図示省略)などからおこなう。また、システムに接続された太陽光発電装置4や蓄電装置5の仕様を自動的に検知する構成であってもよい。
【0053】
続いて、演算時の電力価格を電力価格設定手段23によって設定する(ステップS2)。この設定は、端末などからおこなうこともできるが、システムに接続されたデータベース(図示省略)から抽出するものであってもよい。また、電力会社のサーバに接続して自動更新させる構成であってもよい。
【0054】
さらに、演算をおこなう前提として、少なくとも計算期間分の太陽光発電装置4の発電量及び売電量、並びに住宅の消費電力量を計測手段7によって計測させ、計測値を蓄積させる(ステップS3)。
【0055】
そして、計算期間設定手段22で計算期間を設定する(ステップS4)。例えば、直前までのn日間(15〜60日間)や一年前の同一月日のn日間を計算期間として設定することができる。また、制御パターン記憶手段24には、複数の制御パターンを記憶させる(ステップS5)。この制御パターンの設定は、端末からおこなうこともできるが、システムがそれまでの運用から学習したり、他の運用実績から援用したりして自動設定されるものであってもよい。
【0056】
続いて、設定された各制御パターンの電力料金を電力料金算出手段31において算出する(ステップS6)。さらに、制御パターン選択手段32によって、電力料金が算出された制御パターンの中から最も安い電力料金となった制御パターンを抽出する(ステップS7)。
【0057】
そして、演算後は、この選択された最も電力料金が安くなる制御パターンによる制御を制御装置1によっておこなう(ステップS8)。この制御パターンの見直しは、毎日おこなうこともできるが、計算期間と同等の長さ単位でおこなってもよい。
【0058】
次に、本実施の形態の電力制御システムの作用について説明する。
【0059】
このように構成された本実施の形態の電力制御システムは、太陽光発電装置4と蓄電装置5とを備えた住宅の発電量や電力消費量を一定以上の期間をかけて実際に計測し、その計測値を使った電力料金のシミュレーションを複数の制御パターンについておこなう。そして、その演算結果に基づいてその後の制御パターンを決定する。
【0060】
このため、適用中の制御パターンを15〜60日間といった比較的長い期間をかけて評価しなおすことができ、その結果、評価が高かった制御に基づいてその後の制御をおこなうことができる。
【0061】
さらに、一旦選択された制御を一定期間続けておこなうことにより、その後に選択された制御パターンの再評価をおこなうに際して、実際の運用結果に基づいた長いスパンでの評価をおこなうことができる。
【0062】
また、実際に計測した計測値を使って評価を適宜、しなおすことができるので、電力価格の変化、蓄電装置5や太陽光発電装置4などの設備の変化、生活スタイルの変化、近隣に建設された建物によって日陰が発生するようになったなどの変化にも容易に対応することができる。
【実施例1】
【0063】
次に、前記実施の形態で説明した制御パターンA1とは別の制御パターンについて、図5−図7を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0064】
図5に示した制御パターンB1は、前提条件として、太陽光発電装置4によって発電した電力の電力会社による買い取りがない場合は、排出量価格による二酸化炭素の削減された排出量の買い取りがある。または、太陽光発電装置4によって発電した電力の電力会社による買い取りがある場合は、買取金額が深夜割引価格よりも安い。そして、蓄電装置5は、太陽光発電装置4によって発電された電力のみを充電する。
【0065】
この制御パターンB1の制御によって期待されることは、太陽光発電装置4によって発電された電力をできるだけ多く使うことによる二酸化炭素の削減効果と、価格の安い深夜電力を有効利用する効果である。
【0066】
そこで、制御パターンB1では、すべての時間において太陽光発電装置4によって発電された電力を住宅に供給することを最優先し、余剰分は蓄電装置5に充電する。
【0067】
また、時間a1〜時間(dk-1)までは、系統電力網8の深夜割引価格の電力を2番目の優先順位で使用し、時間dkから時間b4までは蓄電装置5からの放電を2番目の優先順位とし、系統電力網8からの供給を3番目とする。ここで、時間dkは、時間a1〜時間b4までの間で設定される時間である。また、時間PKは太陽光発電装置4の発電開始時間、時間VKは太陽光発電装置4の発電終了時間である。
【0068】
これに対して図6に示した制御パターンC1は、蓄電装置5が太陽光発電装置4と系統電力網8から流入する電力の両方で利用可能な点で制御パターンB1と異なる。すなわち、蓄電装置5は、時間a1から時間b1(又は時間PK)までは系統電力網8から流入した電力を充電し、時間PKから時間VKまでは太陽光発電装置4によって発電された電力の余剰分によって充電をおこなう。
【0069】
また、図7に示した制御パターンC2は、太陽光発電装置4によって発電された電力の電力会社による買い取りが必須である点が制御パターンC1とは異なる。
【0070】
さらに、時間dkから時間b4までは、蓄電装置5からの放電、太陽光発電装置4によって発電された電力、系統電力網8から供給される電力の優先順位で住宅への電力の供給をおこなう。
【0071】
このように前提条件が異なれば、上記実施の形態で説明した制御パターンA1,A2とは異なる制御パターンを設定することができる。
【0072】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【実施例2】
【0073】
次に、前記実施の形態で説明した電力制御システムとは別の形態の電力制御システムについて、図8−図10を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0074】
この実施例2の電力制御システムは、図8に示すように、太陽光発電装置4によって発電された電力を充電する蓄電装置5Aと、系統電力網8から流入する電力を充電する蓄電装置5Bとの2つの蓄電装置を備えている。また、これらの蓄電装置5A,5Bは、制御装置1Aによって制御される。
【0075】
そして、図9に示した制御パターンD1は、前提条件として、太陽光発電装置4によって発電した電力の電力会社による買い取りがない場合は、排出量価格による二酸化炭素の削減された排出量の買い取りがある。または、太陽光発電装置4によって発電した電力の電力会社による買い取りがある場合は、買取金額が深夜割引価格よりも安い。
【0076】
この制御パターンD1の制御によって期待されることは、太陽光発電装置4によって発電された電力をできるだけ多く使うことによる二酸化炭素の削減効果と、価格の安い深夜電力を有効利用する効果である。
【0077】
また、太陽光発電装置4によって発電された電力を充電する蓄電装置5Aは、発電開始時間PKから発電終了時間VKまでに発生する余剰分の電力を充電する。さらに、蓄電装置5Bへの充電は、深夜割引価格の時間帯(a1〜b1)に系統電力網8から流入した電力によっておこなう。
【0078】
そして、制御パターンD1では、住宅への供給電力の配分を次の優先順位でおこなう。まず、時間a1〜時間(fw-1)までは、太陽光発電装置4によって発電された電力の使用を優先し、足りない場合に系統電力網8の電力を供給する。ここで、時間fwは、時間a1〜時間b4までの間で、後述する時間dg以前の時間である。
【0079】
また、時間fwから時間b4までは、太陽光発電装置4によって発電された電力を最優先に住宅に供給し、太陽光発電装置4によって充電された蓄電装置5Aの放電による供給を2番目の優先順位にする。
【0080】
さらに、3番目の優先順位としては系統電力網8からの供給をおこなう。また、時間dg(a2≦dg≦b4,dg≧fw)以降は、蓄電装置5Bからの放電を系統電力網8からの供給よりも優先させる。
【0081】
これに対して図10に示した制御パターンD2は、太陽光発電装置4によって発電された電力の電力会社による買い取りが必須である点が制御パターンD1と異なる。また、この際の買取価格は、深夜割引価格よりも高い。
【0082】
そして、制御パターンD2では、住宅への供給電力の配分を次の優先順位でおこなう。まず、時間a1〜時間(dg-1)までは、太陽光発電装置4によって発電された電力を充電した蓄電装置5Aからの放電を優先し、足りない場合に太陽光発電装置4によって発電された電力、系統電力網8の電力の順に供給する。
【0083】
また、時間dgから時間b4までは、蓄電装置5Bからの放電、太陽光発電装置4によって充電された蓄電装置5Aの放電、太陽光発電装置4によって発電された電力、系統電力網8の電力の優先順位で住宅に電力を供給する。
【0084】
このように太陽光発電装置4用の蓄電装置5Aと、系統電力網8用の蓄電装置5Bとの2種類の蓄電装置を備えた電力制御システムであれば、より多くの制御パターンを設定することができ、その中から最適な制御パターンを選択するこができる。
【0085】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるため説明を省略する。
【実施例3】
【0086】
次に、前記実施の形態で説明した電力制御システムとは別の形態の電力制御システムについて説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0087】
この実施例3の電力制御システムは、太陽光発電装置4の発電量に基づいて二酸化炭素の排出量の削減量を算出する二酸化炭素削減量算出手段を備えている。この二酸化炭素削減量算出手段では、太陽光発電装置4の発電量と同量の電力を電力会社が発電する際に排出される二酸化炭素の排出量を算出する。
【0088】
そして、実施例3の制御パターン選択手段では、この二酸化炭素削減量算出手段による演算結果を合わせた基準で制御パターンの評価をおこなう。すなわち、前記実施の形態の制御パターン選択手段32の評価基準は金額の低さのみであったが、実施例3の制御パターン選択手段では二酸化炭素の削減量も評価基準に加える。
【0089】
例えば、上記した電力会社の排出量価格による買い取りがあるか否かに関わらず、二酸化炭素の削減量を金額に換算し、各制御パターンについて算出された電力料金から差し引くことで金額に置き換えた評価基準を設けることができる。
【0090】
このように太陽光発電装置4の発電量に基づいて二酸化炭素の排出量の削減量を算出する二酸化炭素削減量算出手段を設け、評価の基準に加えることで、単に電力料金が最低になるという経済性のみを追求した制御だけでなく、地球環境への負荷の少ない制御を選択することができる。
【0091】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるため説明を省略する。
【実施例4】
【0092】
次に、前記実施の形態で説明した制御パターンA1に基づいてシミュレーションをおこなった結果について、図11−図14を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0093】
この実施例4でシミュレーションをおこなうに際して、電力価格設定手段23で、図11に示すように電力価格の設定をおこなった。すなわち、23時台(a1)から6時台(b1)までの深夜割引価格を9円/kWh、7時台(a2)から9時台(b2)までのリビングタイム価格を23円/kWh、10時台(a3)から16時台(b3)までのデイタイム価格を28円/kWh、17時台(a4)から22時台(b4)までのリビングタイム価格を23円/kWhとした。
【0094】
また、太陽光発電装置4で発電した電力を電力会社が買い取る買取価格を、39円/kWhとした。よって、買取価格は深夜割引価格よりも高くなり、深夜割引価格よりリビングタイム価格が高く、それよりもデイタイム価格が高くなるという制御パターンA1の前提条件を満たしている。
【0095】
また、この実施例4では、夏期、冬季及び夏期と冬季の間の中間期のそれぞれにおいて、計算期間を30日間に設定してシミュレーションをおこなった。さらに、各季節において、蓄電装置5の放電開始時間(時間de)を7時〜10時の間で1時間ずつずらした4つの制御パターンについてシミュレーションをおこない電力料金を算出した。
【0096】
図12は、夏期の4つの制御パターンのシミュレーション結果を示したグラフである。この結果、1日あたりの電力料金は、放電開始時間が7時からの制御パターンでは85円/日、8時からの制御パターンでは72円/日、9時からの制御パターンでは75円/日、10時からの制御パターンでは100円/日となった。
【0097】
すなわち、夏期では、放電開始時間を8時からとした制御パターンによって制御をおこなった場合が、最も電力料金が低くなることがわかる。なお、参考までに蓄電装置5が無い場合の電力料金は761円/日となる。
【0098】
また、図13は、冬期の4つの制御パターンのシミュレーション結果を示したグラフである。この結果、1日あたりの電力料金は、放電開始時間が7時からの制御パターンでは401円/日、8時からの制御パターンでは384円/日、9時からの制御パターンでは390円/日、10時からの制御パターンでは399円/日となった。
【0099】
すなわち、冬期では、放電開始時間を8時からとした制御パターンによって制御をおこなった場合が、最も電力料金が低くなることがわかる。なお、蓄電装置5が無い場合の電力料金は731円/日となる。
【0100】
また、図14は、中間期の4つの制御パターンのシミュレーション結果を示したグラフである。この結果、1日あたりの電力料金は、放電開始時間が7時からの制御パターンでは-25円/日、8時からの制御パターンでは-16円/日、9時からの制御パターンでは1円/日、10時からの制御パターンでは16円/日となった。なお、-(マイナス)の表示は、電力料金の支払いがなく、利益になることを示している。
【0101】
すなわち、中間期では、放電開始時間を7時からとした制御パターンによって制御をおこなった場合が、1日あたり25円の利益が出て、電力料金が最も低くなることがわかる。なお、蓄電装置5が無い場合の電力料金は465円/日となる。
【0102】
このように制御パターンを変えることによって、同じ計算期間であっても、算出される電力料金が変化することがわかる。また、この実施例4のシミュレーションは、計算期間を30日間としておこなっており、このように比較的長い期間の計算をおこなうことで、瞬時値による制御とは異なる、実際の運用に即した経済的な制御を導き出すことができる。
【0103】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるため説明を省略する。
【0104】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0105】
例えば、前記実施の形態では、分散型の発電装置として太陽光発電装置4についてしか説明していないが、燃料電池、化石燃料による小型発電機などを備えた住宅の電力制御システムであってもよい。
【0106】
また、前記実施の形態又は実施例4で説明した電力価格は例示であって、電力価格が変化する時間や価格が異なる時間帯の数は、電力会社の経営方針やその時の政策などによって変化する。
【0107】
さらに、前記実施の形態又は実施例2で説明した制御装置1(1A)は、太陽光発電装置4、蓄電装置5(5A,5B)、系統電力網8及び分電盤6に接続されていたが、これに限定されるものではなく、例えば蓄電装置5(5A,5B)と分電盤6との間に配置されるパワーコンディショナが制御装置であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
1,1A 制御装置
21 初期設定手段
22 計算期間設定手段
23 電力価格設定手段
24 制御パターン記憶手段
31 電力料金算出手段
32 制御パターン選択手段
4 太陽光発電装置
5,5A,5B 蓄電装置
7 計測手段
A1,A2 制御パターン
B1 制御パターン
C1,C2 制御パターン
D1,D2 制御パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電装置及び蓄電装置を備えた建物の電力制御システムであって、
前記太陽光発電装置及び前記蓄電装置の制御に必要な演算条件を設定する初期設定手段と、
前記太陽光発電装置の発電量及び前記建物の電力消費量を計測する計測手段と、
時間によって変化する電力価格の設定をおこなう電力価格設定手段と、
前記太陽光発電装置及び前記蓄電装置の制御についての複数の制御パターンを記憶する制御パターン記憶手段と、
前記建物の電力料金を算出する計算期間を設定する計算期間設定手段と、
前記計算期間に前記計測手段によって計測された計測値と前記電力価格設定手段によって設定された電力価格とに基づいて、前記複数の制御パターンのそれぞれで制御した場合の電力料金を算出する電力料金算出手段と、
前記電力料金算出手段によって算出された演算値を所定の基準で評価して一つの制御パターンを選択する制御パターン選択手段と、
前記制御パターン選択手段によって選択された制御パターンに従って制御をおこなう制御装置とを備えたことを特徴とする電力制御システム。
【請求項2】
前記計算期間は15〜60日の長さであることを特徴とする請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記制御パターン選択手段では、前記電力料金算出手段において算出された電力料金の低さを基準にして評価をおこなうことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力制御システム。
【請求項4】
前記太陽光発電装置の発電量に基づいて二酸化炭素の排出量の削減量を算出する二酸化炭素削減量算出手段を備え、前記制御パターン選択手段では、前記二酸化炭素削減量算出手段による演算結果を合わせた基準で評価をおこなうことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力制御システム。
【請求項5】
前記制御パターン選択手段による制御パターンの選択は、一定期間間隔でおこなわれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電力制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−16258(P2012−16258A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187821(P2010−187821)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】