電力制御方法および電力制御装置
【課題】突入電流を抑制できるとともに、位相制御とサイクル制御との切り替えのタイミングの自由度を高める。
【解決手段】入力操作量が変化したときには、予め設定したソフトアップ時間bに応じて、入力操作量を修正し(ステップn2)、修正した入力操作量MVが、予め設定した制御切替閾値a未満であるときには、位相制御し(ステップn4)、修正した入力操作量MVが、前記制御切替閾値a以上になったときには、サイクル制御に移行するようにし、ユーザが、ソフトアップ時間bおよび制御切替閾値aの設定によって、位相制御とサイクル制御との切替えタイミングを選択できるようにしている。
【解決手段】入力操作量が変化したときには、予め設定したソフトアップ時間bに応じて、入力操作量を修正し(ステップn2)、修正した入力操作量MVが、予め設定した制御切替閾値a未満であるときには、位相制御し(ステップn4)、修正した入力操作量MVが、前記制御切替閾値a以上になったときには、サイクル制御に移行するようにし、ユーザが、ソフトアップ時間bおよび制御切替閾値aの設定によって、位相制御とサイクル制御との切替えタイミングを選択できるようにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力を制御する電力制御方法および電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒータ等の負荷の電力を制御する方法としては、交流負荷の場合では、交流電源のゼロクロスタイミングでスイッチングするサイクル制御や交流電流が流れる位相角を制御して電力を調整する位相制御がある。
【0003】
サイクル制御では、制御周期が固定であり、かつ1サイクルを単位としてON/OFF制御するので、出力分解能が低く、制御精度が悪く、出力応答も遅い。また、ON状態が時間的に偏るため、制御対象の寿命に悪影響、例えば制御対象がヒータの場合、熱ストレスが大きいという問題がある。
【0004】
一方、位相制御では、高精度の制御が可能であるが位相角を制御するものであるから、基本波成分以外に高調波が発生するという問題がある。さらに高速処理が必要であるため、装置全体が高価になるという問題がある。
【0005】
そこで、本件出願人は、高調波の発生を抑制し、しかも従来のサイクル制御に比べて、高精度な制御が可能なサイクル制御装置を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−265446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかるサイクル制御による電力制御では、負荷が、ランプヒータなどのようにヒータ温度によって電気インピーダンスが大きく変化するものでは、ランプヒータが冷えている時には、過大な突入電流が流れ、電力開閉素子が故障したり、電源ラインにフリッカを生じる場合がある。
【0007】
このため、負荷への通電開始時には、位相制御を行って突入電流を抑制し、定常状態では、サイクル制御を行って低ノイズで電力制御を行うものがあるが、位相制御とサイクル制御との切換えのタイミングを、例えば、ヒータなどの負荷の特性、定常操作量の大きさ、あるいは、ヒータなどの負荷を用いて温度制御される制御対象の反応特性など各種のアプリケーションに応じて、ユーザが、幅広く設定するのは困難であった。
【0008】
本発明は、上述のような点に鑑みてなされたものであって、突入電流を抑制できるとともに、各種のアプリケーシヨンに応じて、位相制御とサイクル制御との切り替えのタイミングを設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の電力制御方法は、入力電力指令値に基づく出力電力指令値を用いて、交流電源から負荷への電力供給ラインに設けられたスイッチング手段のON/OFF制御を行って、前記負荷への電力を、サイクル制御または位相制御する方法であって、前記入力電力指令値が変化したときに、該入力電力指令値を、設定に応じて修正し、修正した入力電力指令値に基づいて前記出力電力指令値を求める一方、前記修正した入力電力指令値と予め設定された切替閾値との比較結果に基づいて、前記サイクル制御と前記位相制御とを切替えるとともに、前記修正した入力電力指令値が、前記切替閾値未満のときには、位相制御するものである。
【0010】
「入力電力指令値」とは、負荷に供給する電力を制御するために与えられる指令値をいい、例えば、調節計やPLC(プログラマブルロジックコントローラ)などから与えられる操作量などをいい、例えば、0%〜100%の値をとる。
【0011】
「出力電力指令値」とは、入力電力指令値に基づいて得られる指令値であって、スイッチング手段をONまたはOFFに制御するのに用いられる指令値をいう。
【0012】
「スイッチング手段」とは、ON/OFFして負荷への電力の供給/遮断を行う手段をいい、例えば、SSRなどで構成されるのが好ましい。
【0013】
入力電力指令値の修正は、入力電力指令値が変化したときに、その変化の度合いを、設定に応じて修正するのが好ましい。
【0014】
入力電力指令値を修正するための設定は、例えば、入力電力指令値が0%から100%まで変化するのに要する時間として設定するのが好ましく、この設定時間に応じた変化の度合いになるように、入力電力指令値を修正するのが好ましい。
【0015】
本発明によると、入力電力指令値が変化したときには、設定に応じて、入力電力指令値を修正するので、例えば、起動時などにおいて、入力電力指令値が上昇に変化したような場合に、入力電力指令値を、前記設定に応じて、緩やかな変化に修正するといったことができるとともに、この修正された入力電力指令値が、予め設定された切替閾値を越えるまでは、位相制御することができるので、ランプヒータなどの負荷の温度が低い起動時には、ヒータ温度が上昇するまで位相制御することによって、過大な突入電流が負荷に流れるのを抑制することができる一方、切替閾値を越えた定常運転時には、高調波ノイズを抑制したサイクル制御を行なうことができる。
【0016】
しかも、設定に応じて入力電力指令値を修正できるので、修正の度合い、すなわち、変化の度合いをユーザが設定することができる一方、切替閾値の設定によって、サイクル制御と位相制御との切替えのタイミングを設定することができ、これによって、ランプヒータなどの負荷の特性、ヒータなどの負荷を用いて温度制御される制御対象の反応特性、あるいは、定常操作量の大きさなど種々のアプリケーションに応じて、サイクル制御と位相制御との切替えタイミングを、ユーザが設定できることになる。
【0017】
(2)本発明の電力制御方法の一つの実施形態では、前記サイクル制御は、前記修正された入力電力指令値と前記出力電力指令値との差を出力誤差値として累積し、基準値と比較して基準値を上回るときには、ONに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をON制御する一方、前記基準値を下回るときには、OFFに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をOFF制御する処理を、半サイクル以上の所定のサイクルで行うものである。
【0018】
「所定のサイクル」とは、電力制御を行うために定めた周期をいい、応答速度を高めるためには、短い周期であるのが好ましく、少なくとも半サイクル以上のサイクルである。
【0019】
この実施形態によると、高調波の発生を抑制し、高精度なサイクル制御が可能となる。
【0020】
(3)本発明の電力制御方法の他の実施形態では、前記位相制御は、前記出力電力指令値に応じた位相角のトリガ信号によって、前記スイッチング手段のON/OFF制御を行うものであって、前記修正された入力電力指令値およびそれまでに累積された出力誤差の累積値に応じて、選択可能な複数の指令値の中から出力電力指令値を選択し、選択した出力電力指令値に応じた位相角の前記トリガ信号によって前記ON/OFF制御を行ない、選択した出力電力指令値に応じて、前記出力誤差の累積値を補正するものである。
【0021】
「出力電力指令値」は、入力電力指令値に基づいて得られる指令値であって、この出力電力指令値によってトリガ信号の位相角が制御され、したがって、位相角の分解能によって、選択可能な出力電力指令値が制限されることになり、例えば、0%〜100%の範囲で、複数の指令値を出力電力指令値として選択することが可能である。
【0022】
上述のように、位相角の分解能によって、出力電力指令値として選択できる指令値は制限されることになるが、この実施形態の位相制御によると、入力電力指令値が、選択可能な複数の指令値でないときには、その入力電力指令値およびそれまで蓄積された出力誤差の累積値に応じて、選択可能な複数の指令値の中から出力電力指令値を選択して、ON/OFF制御を行ない、その選択した出力電力指令値に応じて、出力誤差の累積値を補正するので、入力電力指令値が、選択可能な複数の指令値と異なって出力誤差が生じても、その出力誤差を累積し、以後のサイクルで、その出力誤差の累積値を解消するように出力電力指令値を選択して、出力誤差の累積値を補正することができる。
【0023】
したがって、入力電力指令値が、出力電力指令値として選択可能な指令値以外の指令値をとっても、実質的に出力することが可能となり、高価な回路を用いることなく、制御の分解能を実質的に高めることができる。
【0024】
(4)本発明の電力制御方法の他の実施形態では、前記入力電力指令値の変化が、上昇変化であって、前記修正した入力電力指令値が、前記切替閾値を上回ったときに、前記位相制御から前記サイクル制御に切り替えるものである。
【0025】
この実施形態によると、入力電力指令値が上昇変化して、修正した入力電力指令値が、切替閾値を上回るまでは、位相制御を行なうので、ランプヒータなどの負荷において、突入電流を抑制できる。
【0026】
(5)本発明の電力制御方法の更に他の実施形態では、前記入力電力指令値の変化が、下降変化であって、前記修正した入力電力指令値が、前記切替閾値未満になったときには、前記サイクル制御から前記位相制御に切り替えるものである。
【0027】
この実施形態によると、入力電力指令値が下降変化して、修正した入力電力指令値が、切替閾値未満になると、位相制御に切替わるので、ランプヒータなどの負荷において、突入電流を抑制できる。
【0028】
(6)本発明の電力制御装置は、入力電力指令値に基づく出力電力指令値を用いて、交流電源から負荷への電力供給ラインに設けられたスイッチング手段のON/OFF制御を行って、前記負荷への電力を、サイクル制御または位相制御する装置であって、前記入力電力指令値が変化したときに、該入力電力指令値を、設定に応じて修正し、修正した入力電力指令値に基づいて前記出力電力指令値を求める一方、前記修正した入力電力指令値と予め設定された切替閾値との比較結果に基づいて、前記サイクル制御と前記位相制御とを切替えるとともに、前記修正した入力電力指令値が、前記切替閾値未満のときには、位相制御する制御手段を備えている。
【0029】
入力電力指令値を修正するための設定は、例えば、上位機器から通信によって設定してもよいし、当該電力制御装置の操作部を操作した直接設定してもよい。
【0030】
本発明の電力制御装置によると、入力電力指令値が変化したときには、設定に応じて入力電力指令値を修正できるので、修正の度合い、すなわち、変化の度合いをユーザが設定することができる一方、切替閾値の設定によって、サイクル制御と位相制御との切替えのタイミングを選択することができ、ランプヒータ等の負荷の特性、温度制御対象の反応特性、定常操作量の大きさなどの種々のアプリケーションに応じて、サイクル制御と位相制御との切替えタイミングを設定することが可能となる。
【0031】
(7)本発明の電力制御装置の一つの実施形態では、前記制御手段は、前記入力電力指令値が変化したときに、該入力電力指令値を、設定に応じて修正する修正部と、修正した前記入力電力指令値と前記出力電力指令値との差を出力誤差値として累積し、累積した出力誤差値と閾値とを比較して閾値を上回るときには、ONに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をON制御する一方、前記閾値を下回るときには、OFFに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をOFF制御する処理を、半サイクル以上の所定のサイクルで行うサイクル制御部と、修正した前記入力電力指令値およびそれまでに累積された出力誤差の累積値に応じて、選択可能な複数の指令値の中から出力電力指令値を選択し、選択した出力電力指令値に応じた位相角のトリガ信号によって前記スイッチング手段のON/OFF制御を行ない、選択した出力電力指令値に応じて、前記出力誤差の累積値を補正する位相制御部と、前記修正した入力電力指令値と切替閾値との比較結果に基づいて、前記サイクル制御部によるサイクル制御と前記位相制御部による位相制御とを切替える切替え部とを備えている。
【0032】
この実施形態によると、高調波の発生を抑制し、高精度なサイクル制御を行なえる一方、位相制御において、高価な回路を用いることなく、制御の分解能を実質的に高めることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、入力電力指令値が変化したときには、設定に応じて、入力電力指令値を修正するので、変化の度合いを、ユーザが設定できることになり、また、修正した入力電力指令値と予め設定した切替閾値との比較結果に基づいて、サイクル制御と位相制御とを切替えるので、ランプヒータなどの負荷の特性、負荷を用いて温度制御される制御対象の反応特性、定常時の電力指令値(定常操作量)の大きさなどの種々のアプリケーションに応じて、サイクル制御と位相制御との切替えのタイミングを、ユーザが幅広く設定できることになる。これによって、例えば、ランプヒータなどの負荷の温度が低い起動時には、ヒータ温度が上昇するまで位相制御することによって、過大な突入電流が負荷に流れるのを抑制することができる一方、切替閾値を越えた定常運転時には、高調波ノイズを抑制したサイクル制御を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面によって、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0035】
図1は、本発明の一つの実施の形態に係る電力制御装置を備えるシステムの概略構成を示すブロック図である。
【0036】
このシステムは、温度調節器、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)あるいはPC(パーソナルコンピュータ)などの上位機器1と、本発明に係る電力制御装置2と、交流の負荷電源3とランプヒータなどの負荷4との間に設けられて、電力制御装置2からのトリガ信号によってON/OFF制御されるSSRなどのスイッチング手段5と、負荷4に流れる電流を検出する電流検出器(CT)6とを備えている。
【0037】
この実施形態の電力制御装置2は、負荷電源3のゼロクロスタイミングを検出して、上位機器1から与えられる入力電力指令値(入力操作量)に基づく出力電力指令値(出力操作量)を用いて、スイッチング手段5に対するトリガ信号を生成してスイッチング手段5のON/OFF制御を行なうとともに、電流検出器6の出力に基づいて、過電流やヒータ断線等の異常を検出して警報を出力するものである。
【0038】
スイッチング手段5は、電力制御装置2からのトリガ信号によって、ON/OFF制御されて負荷3に対する電力の供給遮断を行う。
【0039】
ランプヒータなどの負荷4では、ヒータ温度によって、電気インピーダンスが大きく変化し、特に、ランプヒータが冷えているときには、過大な突入電流が流れ、スイッチング手段5の電力開閉素子が故障する場合がある。
【0040】
そこで、この実施形態では、かかる突入電流を抑制するために、ユーザの設定に基づいて、サイクル制御と位相制御とを切替えるようにしている。
【0041】
図2は、電力制御装置2の要部のブロック図である。
【0042】
この実施形態では、入力操作量(入力電力指令値)と実際の出力操作量(出力電力指令値)とが一致している定常運転の状態から入力操作量が変化したときに、その入力操作量を、ユーザが予め設定したソフトアップ時間あるいはソフトダウン時間に基づいて修正する修正部7と、サイクル制御部または位相制御部として動作する制御部9と、修正部7からの入力操作量とユーザが予め設定した制御切替閾値とに基づいて、制御部9の制御を、サイクル制御または位相制御に切替える切替部10とを備えている。
【0043】
制御部9は、修正部7からの入力操作量に基づいて、サイクル制御のための出力操作量または位相制御のための出力操作量を生成して図示しないトリガ信号生成部へ与える。
以上の構成は、例えば、マイクロコンピュータによって実現され、このマイクロコンピュータによって、負荷電源3のゼロクロスタイミングが検出されてON/OFF制御が行なわれる。
【0044】
この実施形態のサイクル制御は、上記特許文献1等で本件出願人が提案しているサイクル制御であり、また、位相制御は、本件出願人が、特願2007−101480「位相制御方法および位相制御装置」(平成19年4月9日提出)として提案している新規な位相制御であり、この位相制御は、高価な回路構成を必要とすることなく、制御の分解能を実質的に高めることができるものである。
【0045】
ソフトアップ時間とは、入力操作量が上昇変化したときに、その上昇変化の度合いを規定するためにユーザが設定する時間であり、ソフトダウン時間とは、入力操作量が、下降変化したときに、その下降変化の度合いを規定するためにユーザが設定する時間であり、修正部7では、このユーザが規定する変化の度合いになるように、入力操作量を修正する。
【0046】
この実施形態では、ソフトアップ時間は、操作量を、0%から100%まで上昇変化させるのに要する時間として設定され、ソフトダウン時間は、操作量を、100%から0%まで下降変化させるのに要する時間として設定される。
【0047】
したがって、ソフトアップ時間あるいはソフトダウン時間を、短く設定すれば、上昇あるいは下降変化の度合いが急となり、長く設定すれば、緩やかとなる。
【0048】
これによって、例えば、起動時などにおいて、ランプヒータなどの負荷4の特性や温度制御される制御対象の反応特性などの種々の特性を考慮してユーザが、操作量の上昇変化の度合いを、ソフトアップ時間として設定することができる。
【0049】
かかるソフトアップ時間、ソフトダウン時間および制御切替閾値の設定は、上位機器1から電力制御装置2に対して通信によって設定してもよいし、電力制御装置2の図示しない操作部を操作して直接設定してもよい。
【0050】
図3は、ソフトアップ時間に基づく修正部7における入力操作量の修正を説明するための波形図であり、横軸は時刻を、縦軸は操作量を示している。実線は入力操作量を、破線は入力操作量の修正された部分をそれぞれ示している。
【0051】
上位機器1からの入力操作量が、MV1から目標値となる操作量MV2に上昇変化すると、修正部7では、予め設定されているソフトアップ時間bに対応する上昇変化の度合いになるように、後述の演算式に従って入力操作量を、破線で示すように修正する。
【0052】
ソフトアップ時間bは、上述のように、操作量が、0%から100%まで上昇するのに要する時間として設定されるものであり、このソフトアップ時間bに応じた上昇変化の度合い、すなわち、図3における操作量の変化の傾きになるように、入力操作量が修正されることになる。
【0053】
ソフトダウン時間に応じた入力操作量の修正も、上昇変化が、下降変化に代わるだけで同様である。
【0054】
このように、入力操作量が変化しときには、ユーザが設定したソフトアップ時間あるいはソフトダウン時間に応じた変化になるように、修正部7によって、入力操作量が修正される。
【0055】
なお、修正部7における入力操作量の修正は、入力操作量と実際の出力操作量とが一致している定常運転の状態から入力操作量が変化したときに行われるものであり、したがって、定常運転の状態において、入力操作量が変化しない場合には、入力操作量は、修正されることなく、そのまま制御部9に与えられる。
【0056】
図4は、この定常運転の状態と、ソフトアップあるいはソフトダウンの各状態の遷移を説明するための図である。
【0057】
入力操作量と実際の出力操作量とが一致している定常運転の状態において、入力操作量が上昇変化すると、矢符Aで示すようにソフトアップ状態に遷移し、入力操作量が下降変化すると、矢符Bで示すようにソフトダウン状態に遷移する。
【0058】
ソフトアップ中あるいはソフトダウン中、すなわち、ソフトアップ時間あるいはソフトダウン時間に応じて入力操作量を修正して運転している状態において、操作量の目標値に到達したときには、矢符Cあるいは矢符Dで示すように、定常運転の状態に遷移する。
【0059】
また、ソフトアップ中あるいはソフトダウン中に、入力操作量が下降あるいは上昇してその時点の実際の出力操作量に一致したときには、矢符Eあるいは矢符Fで示すように定常運転の状態に遷移する。
【0060】
ソフトアップ中において、入力操作量が下降してその時点の実際の出力操作量を下回ったときには、矢符Gで示すようにソフトダウンの状態に遷移し、また、ソフトダウン中において、入力操作量が上昇してその時点の実際の出力操作量を上回ったときには、矢符Hで示すようにソフトアップの状態に遷移する。
【0061】
なお、図5には、入力操作量が、MV1から目標値となるMV2に上昇し、ソフトアップ中に、入力操作量が、MV2から目標値となるMV1に下降変化し、ソフトダウンへ遷移した場合の図3に対応する波形図を示している。
【0062】
このようにして、入力操作量が、上昇あるいは下降変化すると、ユーザによって予め設定されているソフトアップ時間あるいはソフトダウン時間に応じた変化の度合いになるように、入力操作量が修正される。
【0063】
図6は、サイクル制御時の制御部9の構成を示す機能ブロック図である。
【0064】
制御部9は、修正部7から与えられる0%〜100%の入力操作量と、スイッチング手段5に対するONまたはOFFに対応する100%または0%の出力操作量との出力誤差を算出する出力誤差演算部11と、出力誤差演算部11で求めた出力誤差を累積する出力誤差累積部12と、入力操作量と出力誤差累積値とを加算して判定値とする加算部13と、判定値と基準値としての閾値とを比較し、閾値以上のときに、ONに対応する100%の出力操作量を設定する一方、閾値未満ときに、OFFに対応する0%出力操作量を設定する比較部14としての機能を有し、半サイクル以上の所定のサイクルで処理を行うものである。
【0065】
かかる構成は、上記特許文献1等で本件出願人が先に提案しているサイクル制御と同様である。
【0066】
図7は、位相制御時の制御部9の構成を示す機能ブロック図である。
【0067】
制御部9は、修正部7から与えられる0%〜100%の入力操作量に基づいて、出力操作量を生成するが、この出力操作量は、位相角の制御の分解能の制約のために、この実施形態では、表1に示す操作量、すなわち、0%、1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%の操作量しか選択することができない。
【0068】
【表1】
この実施形態では、入力操作量が、選択可能な表1の操作量以外の操作量であっても、後述のように処理して操作量を出力することにより、入力操作量が、選択可能な操作量でなくても、実質的に出力可能とするものである。
【0069】
このため、この実施形態の制御部9は、入力操作量と出力誤差累積部15からの、それまでに累積された出力誤差とを加算して判定値とする加算部16と、入力操作量と累積された出力誤差とに基づいて、閾値を決定する閾値決定部17と、判定値と閾値とを比較する比較部18と、その比較結果に応じて、複数の選択可能な出力操作量から出力操作量を選択する選択部19と、入力操作量から選択された出力操作量を減算して出力誤差を補正する減算部20としての機能を有する。
【0070】
再び、図2を参照して、切替え部10は、サイクル制御あるいは位相制御を、ユーザが予め設定した制御切替閾値および修正した入力操作量に基づいて、切替え選択し、制御部9からの出力操作量が、図示しないトリガ信号生成部に与えられ、出力操作量に応じたトリガ信号によってスイッチング手段5のON/OFFが制御され、サイクル制御または位相制御が行なわれる。
【0071】
切替部10は、修正された入力操作量が、制御切替閾値未満であるときには、位相制御を、制御切替閾値以上であるときには、サイクル制御を、切替え選択する。
【0072】
この制御切替閾値は、定常操作量以下に設定するのが好ましい。
【0073】
これによって、例えば、起動時において、ソフトアップ状態となって、修正された入力操作量が、定常操作量以下の制御切替閾値に達するまでは、位相制御が行なわれ、制御切替閾値に達すると、サイクル制御に移行し、定常状態では、高調波の発生を抑制したサイクル制御が行なわれることになる。
【0074】
これによって、ランプヒータなどの負荷4の温度が上昇するまでは、位相制御とすることができ、突入電流を抑制することができる。
【0075】
図8は、ソフトアップ時における切替え処理の動作説明に供するフローチャートである。
【0076】
上述のように、定常運転の状態から入力操作量が変化すると、この処理に移行し、先ず、制御切替閾値a、ソフトアップ時間b、目標値SP、直前の操作量y0を初期設定するとともに、操作量MVとして直前の操作量y0を設定し、経過時間tを0に初期設定する(ステップn1)。
【0077】
ここで、目標値SPとは、変化後の入力操作量をいい、例えば、入力操作量が、MV1からMV2に変化した上述の図3においては、MV2となる。また、直前の操作量y0とは、変化の直前の操作量であり、図3においては、操作量MV1となる。
【0078】
次に、入力操作量を修正した入力操作量MVを、次の演算式に従って算出する(ステップn2)。
【0079】
すなわち、修正後の入力操作量をMVとすると、次式で示される。
【0080】
MV=y0+(t/b)×100
この修正された入力操作量は、上述の図3の例では、破線で示される部分の操作量に相当するものであり、ユーザが設定したソフトアップ時間bに対応する度合いで変化させた入力操作量となる。
【0081】
この算出された操作量、すなわち、修正された入力操作量MVが、制御切替閾値a以上となったか否かを判断し(ステップn3)、制御切替え閾値a以上でないときには、位相制御を行い(ステップn4)、時間tが、目標値SPに到達するのに要する時間経過したか否かを次式で判断する(ステップn6)。
【0082】
t≧b×(SP−y0)/100
この右辺の式は、上述の図3においては、時間t1に相当する。
【0083】
時間tが、目標値SPに到達するのに要する時間経過していないときには、ステップn2に戻る。
【0084】
したがって、修正された入力操作量MVが、制御切替閾値a以上になるまでは、位相制御が行なわれることになる。
【0085】
次に、ステップn3において、修正された入力操作量MVが、制御切替閾値a以上になると、サイクル制御に移行し(ステップn5)、ステップn6において、時間tが、目標値SPに到達するのに要する時間経過したときには、終了して定常運転となる。
【0086】
このように、修正された入力操作量MVが、制御切替閾値aに達したか否かによって、位相制御とサイクル制御との切替えが行なえるので、ユーザは、例えば、定常操作量に基づいて、制御切替閾値aを設定することができ、定常操作量に近づいたらサイクル制御に移行できるように設定できるとともに、それまでは、位相制御とすることができる。
【0087】
また、ユーザは、ソフトアップ時間bの設定によって、修正される入力操作量の変化の度合い、したがって、制御切替閾値aに達するまでに要する時間を選択できることになる。したがって、ランプヒータなどの負荷4の特性や負荷4を用いて温度制御される制御対象の反応特性などを考慮してソフトアップ時間の設定を行なえることになり、幅広いアプリケーションへの対応が容易となる。
【0088】
なお、ソフトダウン時においては、上述のソフトアップ時間bが、ソフトダウン時間bとなり、また、入力操作量を修正する演算式が、 MV=y0−(t/b)×100となる。
【0089】
次に、サイクル制御および位相制御について、更に詳細に説明する。
【0090】
この実施の形態のサイクル制御の動作を、図9のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0091】
先ず、前回までの出力誤差累積値から前回の出力操作量を減算して、今回の出力誤差累積値を算出し(ステップn1)、この出力誤差累積値に、今回の入力操作量を加算して判定値とし(ステップn2)、判定値が、基準値としての閾値、例えば、50%以上であるか否かを判断する(ステップn3)。
【0092】
判定値が、閾値以上であるときには、今回の出力操作量としてONに対応する100%を設定する(ステップn4)。また、判定値が、閾値以上でないときには、今回の出力操作量としてOFFに対応する0%を設定する(ステップn5)。
【0093】
以上の処理を、半サイクル以上の所定のサイクルで行なうものである。なお、複数チャンネルの制御を行なう場合には、所定のサイクル内で、上記の処理を各チャンネルについて行う。
【0094】
また、図9の処理に代えて、図10のフローチャートに示す処理としてもよい。
【0095】
すなわち、図10に示すように、それまでに累積されている出力誤差累積値である積算操作量に、今回の入力操作量を加算して判定値とし(ステップn1)、判定値が閾値、例えば、50%以上であるか否かを判断する(ステップn2)。
【0096】
判定値が、閾値以上であるときには、今回の出力操作量として100%を設定する(ステップn3)。また、判定値が、閾値以上でないときには、今回の出力操作量として0%を設定する(ステップn4)。
【0097】
次に、判定値から、今回のONまたはOFFに対応する出力操作量である100%または0%を減算して新たな出力誤差累積値である積算操作量を算出して終了する(ステップn5)。
【0098】
図11は、制御部9へ入力される操作量が20%の場合のサイクル制御の例を示すものであり、この図11では、所定のサイクルが半サイクルである場合の例を示している。
【0099】
図11(a)は負荷電源、図11(b)は出力誤差累積値(積算操作量)の変化をそれぞれ示しており、図11(a)において、斜線を施した部分が、出力ONの状態を示している。
【0100】
なお、図11の下欄には、出力誤差累積値(積算操作量)が、閾値50%以上となって、100%の出力操作量を設定して出力をONした場合に、出力誤差累積値から100%の出力操作量が減算された値が示されている。また、出力誤差累積値が、閾値50%未満で、0%の出力操作量を設定して出力をOFFし、出力誤差累積値から0%の出力操作量を減算した場合には、出力誤差累積値の値に変化がないので、省略している。
【0101】
図11に示すように、入力操作量20%と、出力される出力操作量である0%または100%との差である出力誤差が、累積されて出力誤差累積値とされ、この出力誤差累積値が、閾値である50%以上になると、出力操作量を100%に設定して出力をONし、閾値未満であるときには、出力操作量0%に設定して出力をOFFするものである。
【0102】
この図11では、半サイクルを所定のサイクルとして処理を行なう例を示しているので、入力される操作量が20%の場合には、2サイクル半の内の半サイクルでONすることになる。
【0103】
次に、この実施の形態の位相制御の動作を、図12のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0104】
先ず、閾値を、今回の入力操作量と表1の選択可能な操作量とに基づいて決定する。すなわち、今回の入力操作量が、表1の選択可能な操作量であるか否かを判断し(ステップn1)、選択可能な操作量であるときには、その操作量を閾値とする(ステップn2)。
また、入力操作量が、選択可能な操作量でないときには、入力操作量を切り上げて、該入力操作量に最も近い表1の選択可能な操作量を閾値とする(ステップn3)。入力操作量が、表1の選択可能な操作量でないとき、例えば、11%であるとすると、切り上げて、選択可能な最も近い操作量である20%を閾値とする。また、例えば、入力操作量が、25%であるとすると、切り上げて、選択可能な最も近い操作量である30%を閾値とする。
【0105】
次に、出力誤差の累積値である積算操作量と入力操作量とを加算して判定値とし(ステップn4)、判定値が閾値以上であるか否かを判断し(ステップn5)、判定値が閾値以上であるときには、閾値を今回の出力操作量として選択する(ステップn6)。
また、ステップn5において、判定値が閾値以上でないときには、その閾値を、上記表1における1分解能分だけ下げた操作量を、今回の出力操作量として選択する(ステップn7)。
【0106】
例えば、閾値が20%であるとすると、表1の操作量20%の1分解能(1段階)低い操作量である10%を今回の出力操作量とし、また、例えば、閾値が30%であるとすると、表1の操作量30%の1分解能低い操作量である20%を今回の出力操作量とする。
次に、判定値から今回の出力操作量を減算した値を、新たな積算操作量とする(ステップn8)。
【0107】
この実施形態では、以上の処理を、例えば、半サイクル毎に行う。
【0108】
図13は、入力操作量が11%の場合の例を示すものであり、同図(a)は出力波形、同図(b)は入力操作量と積算操作量(出力誤差の累積値)との和である判定値の変化をそれぞれ示している。
【0109】
ここで、図13の左から2番目の第1の周期から説明を始める。
【0110】
先ず、閾値を決定するが、入力操作量11%は、表1の選択可能な操作量ではないので、入力操作量11%を、切り上げた最も近い選択可能な操作量である20%を閾値とする。
【0111】
次に、入力操作量11%と積算操作量とを加算して判定値とする。図13の左端の第0の周期では、21%の判定値に対して、20%の出力操作量を選択して出力しているので、出力誤差の累積値である積算操作量は、1%である。したがって、第1の周期における判定値は、入力操作量11%と積算操作量1%とを加算した12%となる。この判定値12%は、閾値20%よりも小さいので、該閾値20%よりも1分解能低い選択可能な操作量である10%を、今回の出力操作量として選択し、選択した出力操作量10%に応じた位相のトリガ信号によって、スイッチング手段5のON/OFFを制御し、判定値12%から今回操作量10%を減算して積算操作量を補正し、減算値2%を積算操作量として終了する。
【0112】
次の第2の周期では、入力操作量が、11%であるので、第1の周期と同様に、閾値を20%とする。
【0113】
次に、入力操作量11%と積算操作量2%とを加算して判定値13%とする。この判定値13%は、閾値20%よりも小さいので、該閾値20%よりも1分解能低い選択可能な操作量である10%を、今回の出力操作量として選択し、選択した出力操作量10%に応じた位相のトリガ信号によって、スイッチング手段5のON/OFFを制御し、判定値13%から今回操作量10%を減算した値3%を積算操作量として終了する。
【0114】
以下、半サイクル毎の同様の処理によって、積算操作量(出力誤差の累積値)が1%ずつ増加する。
【0115】
そして、第10の周期では、入力操作量が、11%であるので、上述と同様に、閾値を20%とする。
【0116】
次に、入力操作量11%と積算操作量10%とを加算して判定値21%とする。この判定値21%は、閾値20%よりも大きいので、この場合には、その閾値20を、今回の出力操作量として選択し、選択した出力操作量20%に応じた位相のトリガ信号によって、スイッチング手段5のON/OFFを制御し、判定値21%から今回操作量20%を減算した値1%を積算操作量として終了する。
【0117】
以下、同様の処理によって、10周期で110%の出力操作量を出力するので、平均すると、1周期では、11%の出力操作量となる。
【0118】
このようにして、入力操作量11%が、選択可能な操作量でなくとも、実質的に11%の出力操作量を出力できることになる。
【0119】
したがって、比較的安価なマイクロコンピュータ等を用いて制御回路を構成し、位相角の制御の分解能が制約されて、選択可能な操作量に制限がある場合であっても、選択できない出力操作量を実質的に出力することが可能となり、高価で高性能な制御回路を用いることなく、制御の分解能を実質的に高めることができる。
【0120】
なお、複数チャンネルの場合には、上記処理を各チャンネル毎に行なえばよい。
【0121】
以上のようにして、サイクル制御または位相制御が行なわれる。
【0122】
上述の実施形態では、サイクル制御は、上記特許文献1等で本件出願人が提案しているサイクル制御とし、位相制御は、本件出願人が、特願2007−101480「位相制御方法および位相制御装置」(平成19年4月9日提出)として提案している新規な位相制御を用いたけれども、本発明の他の実施形態として、サイクル制御として、本願出願人が提案したサイクル制御以外の従来のサイクル制御を、また、位相制御として、従来公知の位相制御を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、負荷に対する電力の制御に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、本発明に係る電力制御装置を備えるシステムの概略構成図である。
【図2】図2は、図1の電力制御装置の要部のブロック図である。
【図3】図3は、ソフトアップ時間に基づく入力操作量の修正を説明するための波形図である。
【図4】図4は、定常運転の状態と、ソフトアップあるいはソフトダウンの各状態の遷移を示す図である。
【図5】図5は、ソフトアップからソフトダウンへの移行時の図3に対応する図である。
【図6】図6は、サイクル制御時の機能ブロック図である。
【図7】図7は、位相制御時の機能ブロック図である。
【図8】図8は、ソフトアップ時における切替え処理の動作説明に供するフローチャートである。
【図9】図9は、サイクル制御の動作説明に供するフローチャートである。
【図10】図10は、サイクル制御の他の例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、入力操作量が20%の場合のサイクル制御の出力波形および出力誤差累積値(積算操作量)の変化を示す図である。
【図12】図12は、位相制御の動作説明に供するフローチャートである。
【図13】図13は、入力操作量が11%の場合の位相制御の出力波形および判定値を示す図である。
【符号の説明】
【0125】
1 上位機器
2 電力制御装置
4 負荷
5 スイッチング手段
7 修正部
9 制御部
10 切替部
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力を制御する電力制御方法および電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒータ等の負荷の電力を制御する方法としては、交流負荷の場合では、交流電源のゼロクロスタイミングでスイッチングするサイクル制御や交流電流が流れる位相角を制御して電力を調整する位相制御がある。
【0003】
サイクル制御では、制御周期が固定であり、かつ1サイクルを単位としてON/OFF制御するので、出力分解能が低く、制御精度が悪く、出力応答も遅い。また、ON状態が時間的に偏るため、制御対象の寿命に悪影響、例えば制御対象がヒータの場合、熱ストレスが大きいという問題がある。
【0004】
一方、位相制御では、高精度の制御が可能であるが位相角を制御するものであるから、基本波成分以外に高調波が発生するという問題がある。さらに高速処理が必要であるため、装置全体が高価になるという問題がある。
【0005】
そこで、本件出願人は、高調波の発生を抑制し、しかも従来のサイクル制御に比べて、高精度な制御が可能なサイクル制御装置を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−265446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかるサイクル制御による電力制御では、負荷が、ランプヒータなどのようにヒータ温度によって電気インピーダンスが大きく変化するものでは、ランプヒータが冷えている時には、過大な突入電流が流れ、電力開閉素子が故障したり、電源ラインにフリッカを生じる場合がある。
【0007】
このため、負荷への通電開始時には、位相制御を行って突入電流を抑制し、定常状態では、サイクル制御を行って低ノイズで電力制御を行うものがあるが、位相制御とサイクル制御との切換えのタイミングを、例えば、ヒータなどの負荷の特性、定常操作量の大きさ、あるいは、ヒータなどの負荷を用いて温度制御される制御対象の反応特性など各種のアプリケーションに応じて、ユーザが、幅広く設定するのは困難であった。
【0008】
本発明は、上述のような点に鑑みてなされたものであって、突入電流を抑制できるとともに、各種のアプリケーシヨンに応じて、位相制御とサイクル制御との切り替えのタイミングを設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の電力制御方法は、入力電力指令値に基づく出力電力指令値を用いて、交流電源から負荷への電力供給ラインに設けられたスイッチング手段のON/OFF制御を行って、前記負荷への電力を、サイクル制御または位相制御する方法であって、前記入力電力指令値が変化したときに、該入力電力指令値を、設定に応じて修正し、修正した入力電力指令値に基づいて前記出力電力指令値を求める一方、前記修正した入力電力指令値と予め設定された切替閾値との比較結果に基づいて、前記サイクル制御と前記位相制御とを切替えるとともに、前記修正した入力電力指令値が、前記切替閾値未満のときには、位相制御するものである。
【0010】
「入力電力指令値」とは、負荷に供給する電力を制御するために与えられる指令値をいい、例えば、調節計やPLC(プログラマブルロジックコントローラ)などから与えられる操作量などをいい、例えば、0%〜100%の値をとる。
【0011】
「出力電力指令値」とは、入力電力指令値に基づいて得られる指令値であって、スイッチング手段をONまたはOFFに制御するのに用いられる指令値をいう。
【0012】
「スイッチング手段」とは、ON/OFFして負荷への電力の供給/遮断を行う手段をいい、例えば、SSRなどで構成されるのが好ましい。
【0013】
入力電力指令値の修正は、入力電力指令値が変化したときに、その変化の度合いを、設定に応じて修正するのが好ましい。
【0014】
入力電力指令値を修正するための設定は、例えば、入力電力指令値が0%から100%まで変化するのに要する時間として設定するのが好ましく、この設定時間に応じた変化の度合いになるように、入力電力指令値を修正するのが好ましい。
【0015】
本発明によると、入力電力指令値が変化したときには、設定に応じて、入力電力指令値を修正するので、例えば、起動時などにおいて、入力電力指令値が上昇に変化したような場合に、入力電力指令値を、前記設定に応じて、緩やかな変化に修正するといったことができるとともに、この修正された入力電力指令値が、予め設定された切替閾値を越えるまでは、位相制御することができるので、ランプヒータなどの負荷の温度が低い起動時には、ヒータ温度が上昇するまで位相制御することによって、過大な突入電流が負荷に流れるのを抑制することができる一方、切替閾値を越えた定常運転時には、高調波ノイズを抑制したサイクル制御を行なうことができる。
【0016】
しかも、設定に応じて入力電力指令値を修正できるので、修正の度合い、すなわち、変化の度合いをユーザが設定することができる一方、切替閾値の設定によって、サイクル制御と位相制御との切替えのタイミングを設定することができ、これによって、ランプヒータなどの負荷の特性、ヒータなどの負荷を用いて温度制御される制御対象の反応特性、あるいは、定常操作量の大きさなど種々のアプリケーションに応じて、サイクル制御と位相制御との切替えタイミングを、ユーザが設定できることになる。
【0017】
(2)本発明の電力制御方法の一つの実施形態では、前記サイクル制御は、前記修正された入力電力指令値と前記出力電力指令値との差を出力誤差値として累積し、基準値と比較して基準値を上回るときには、ONに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をON制御する一方、前記基準値を下回るときには、OFFに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をOFF制御する処理を、半サイクル以上の所定のサイクルで行うものである。
【0018】
「所定のサイクル」とは、電力制御を行うために定めた周期をいい、応答速度を高めるためには、短い周期であるのが好ましく、少なくとも半サイクル以上のサイクルである。
【0019】
この実施形態によると、高調波の発生を抑制し、高精度なサイクル制御が可能となる。
【0020】
(3)本発明の電力制御方法の他の実施形態では、前記位相制御は、前記出力電力指令値に応じた位相角のトリガ信号によって、前記スイッチング手段のON/OFF制御を行うものであって、前記修正された入力電力指令値およびそれまでに累積された出力誤差の累積値に応じて、選択可能な複数の指令値の中から出力電力指令値を選択し、選択した出力電力指令値に応じた位相角の前記トリガ信号によって前記ON/OFF制御を行ない、選択した出力電力指令値に応じて、前記出力誤差の累積値を補正するものである。
【0021】
「出力電力指令値」は、入力電力指令値に基づいて得られる指令値であって、この出力電力指令値によってトリガ信号の位相角が制御され、したがって、位相角の分解能によって、選択可能な出力電力指令値が制限されることになり、例えば、0%〜100%の範囲で、複数の指令値を出力電力指令値として選択することが可能である。
【0022】
上述のように、位相角の分解能によって、出力電力指令値として選択できる指令値は制限されることになるが、この実施形態の位相制御によると、入力電力指令値が、選択可能な複数の指令値でないときには、その入力電力指令値およびそれまで蓄積された出力誤差の累積値に応じて、選択可能な複数の指令値の中から出力電力指令値を選択して、ON/OFF制御を行ない、その選択した出力電力指令値に応じて、出力誤差の累積値を補正するので、入力電力指令値が、選択可能な複数の指令値と異なって出力誤差が生じても、その出力誤差を累積し、以後のサイクルで、その出力誤差の累積値を解消するように出力電力指令値を選択して、出力誤差の累積値を補正することができる。
【0023】
したがって、入力電力指令値が、出力電力指令値として選択可能な指令値以外の指令値をとっても、実質的に出力することが可能となり、高価な回路を用いることなく、制御の分解能を実質的に高めることができる。
【0024】
(4)本発明の電力制御方法の他の実施形態では、前記入力電力指令値の変化が、上昇変化であって、前記修正した入力電力指令値が、前記切替閾値を上回ったときに、前記位相制御から前記サイクル制御に切り替えるものである。
【0025】
この実施形態によると、入力電力指令値が上昇変化して、修正した入力電力指令値が、切替閾値を上回るまでは、位相制御を行なうので、ランプヒータなどの負荷において、突入電流を抑制できる。
【0026】
(5)本発明の電力制御方法の更に他の実施形態では、前記入力電力指令値の変化が、下降変化であって、前記修正した入力電力指令値が、前記切替閾値未満になったときには、前記サイクル制御から前記位相制御に切り替えるものである。
【0027】
この実施形態によると、入力電力指令値が下降変化して、修正した入力電力指令値が、切替閾値未満になると、位相制御に切替わるので、ランプヒータなどの負荷において、突入電流を抑制できる。
【0028】
(6)本発明の電力制御装置は、入力電力指令値に基づく出力電力指令値を用いて、交流電源から負荷への電力供給ラインに設けられたスイッチング手段のON/OFF制御を行って、前記負荷への電力を、サイクル制御または位相制御する装置であって、前記入力電力指令値が変化したときに、該入力電力指令値を、設定に応じて修正し、修正した入力電力指令値に基づいて前記出力電力指令値を求める一方、前記修正した入力電力指令値と予め設定された切替閾値との比較結果に基づいて、前記サイクル制御と前記位相制御とを切替えるとともに、前記修正した入力電力指令値が、前記切替閾値未満のときには、位相制御する制御手段を備えている。
【0029】
入力電力指令値を修正するための設定は、例えば、上位機器から通信によって設定してもよいし、当該電力制御装置の操作部を操作した直接設定してもよい。
【0030】
本発明の電力制御装置によると、入力電力指令値が変化したときには、設定に応じて入力電力指令値を修正できるので、修正の度合い、すなわち、変化の度合いをユーザが設定することができる一方、切替閾値の設定によって、サイクル制御と位相制御との切替えのタイミングを選択することができ、ランプヒータ等の負荷の特性、温度制御対象の反応特性、定常操作量の大きさなどの種々のアプリケーションに応じて、サイクル制御と位相制御との切替えタイミングを設定することが可能となる。
【0031】
(7)本発明の電力制御装置の一つの実施形態では、前記制御手段は、前記入力電力指令値が変化したときに、該入力電力指令値を、設定に応じて修正する修正部と、修正した前記入力電力指令値と前記出力電力指令値との差を出力誤差値として累積し、累積した出力誤差値と閾値とを比較して閾値を上回るときには、ONに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をON制御する一方、前記閾値を下回るときには、OFFに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をOFF制御する処理を、半サイクル以上の所定のサイクルで行うサイクル制御部と、修正した前記入力電力指令値およびそれまでに累積された出力誤差の累積値に応じて、選択可能な複数の指令値の中から出力電力指令値を選択し、選択した出力電力指令値に応じた位相角のトリガ信号によって前記スイッチング手段のON/OFF制御を行ない、選択した出力電力指令値に応じて、前記出力誤差の累積値を補正する位相制御部と、前記修正した入力電力指令値と切替閾値との比較結果に基づいて、前記サイクル制御部によるサイクル制御と前記位相制御部による位相制御とを切替える切替え部とを備えている。
【0032】
この実施形態によると、高調波の発生を抑制し、高精度なサイクル制御を行なえる一方、位相制御において、高価な回路を用いることなく、制御の分解能を実質的に高めることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、入力電力指令値が変化したときには、設定に応じて、入力電力指令値を修正するので、変化の度合いを、ユーザが設定できることになり、また、修正した入力電力指令値と予め設定した切替閾値との比較結果に基づいて、サイクル制御と位相制御とを切替えるので、ランプヒータなどの負荷の特性、負荷を用いて温度制御される制御対象の反応特性、定常時の電力指令値(定常操作量)の大きさなどの種々のアプリケーションに応じて、サイクル制御と位相制御との切替えのタイミングを、ユーザが幅広く設定できることになる。これによって、例えば、ランプヒータなどの負荷の温度が低い起動時には、ヒータ温度が上昇するまで位相制御することによって、過大な突入電流が負荷に流れるのを抑制することができる一方、切替閾値を越えた定常運転時には、高調波ノイズを抑制したサイクル制御を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面によって、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0035】
図1は、本発明の一つの実施の形態に係る電力制御装置を備えるシステムの概略構成を示すブロック図である。
【0036】
このシステムは、温度調節器、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)あるいはPC(パーソナルコンピュータ)などの上位機器1と、本発明に係る電力制御装置2と、交流の負荷電源3とランプヒータなどの負荷4との間に設けられて、電力制御装置2からのトリガ信号によってON/OFF制御されるSSRなどのスイッチング手段5と、負荷4に流れる電流を検出する電流検出器(CT)6とを備えている。
【0037】
この実施形態の電力制御装置2は、負荷電源3のゼロクロスタイミングを検出して、上位機器1から与えられる入力電力指令値(入力操作量)に基づく出力電力指令値(出力操作量)を用いて、スイッチング手段5に対するトリガ信号を生成してスイッチング手段5のON/OFF制御を行なうとともに、電流検出器6の出力に基づいて、過電流やヒータ断線等の異常を検出して警報を出力するものである。
【0038】
スイッチング手段5は、電力制御装置2からのトリガ信号によって、ON/OFF制御されて負荷3に対する電力の供給遮断を行う。
【0039】
ランプヒータなどの負荷4では、ヒータ温度によって、電気インピーダンスが大きく変化し、特に、ランプヒータが冷えているときには、過大な突入電流が流れ、スイッチング手段5の電力開閉素子が故障する場合がある。
【0040】
そこで、この実施形態では、かかる突入電流を抑制するために、ユーザの設定に基づいて、サイクル制御と位相制御とを切替えるようにしている。
【0041】
図2は、電力制御装置2の要部のブロック図である。
【0042】
この実施形態では、入力操作量(入力電力指令値)と実際の出力操作量(出力電力指令値)とが一致している定常運転の状態から入力操作量が変化したときに、その入力操作量を、ユーザが予め設定したソフトアップ時間あるいはソフトダウン時間に基づいて修正する修正部7と、サイクル制御部または位相制御部として動作する制御部9と、修正部7からの入力操作量とユーザが予め設定した制御切替閾値とに基づいて、制御部9の制御を、サイクル制御または位相制御に切替える切替部10とを備えている。
【0043】
制御部9は、修正部7からの入力操作量に基づいて、サイクル制御のための出力操作量または位相制御のための出力操作量を生成して図示しないトリガ信号生成部へ与える。
以上の構成は、例えば、マイクロコンピュータによって実現され、このマイクロコンピュータによって、負荷電源3のゼロクロスタイミングが検出されてON/OFF制御が行なわれる。
【0044】
この実施形態のサイクル制御は、上記特許文献1等で本件出願人が提案しているサイクル制御であり、また、位相制御は、本件出願人が、特願2007−101480「位相制御方法および位相制御装置」(平成19年4月9日提出)として提案している新規な位相制御であり、この位相制御は、高価な回路構成を必要とすることなく、制御の分解能を実質的に高めることができるものである。
【0045】
ソフトアップ時間とは、入力操作量が上昇変化したときに、その上昇変化の度合いを規定するためにユーザが設定する時間であり、ソフトダウン時間とは、入力操作量が、下降変化したときに、その下降変化の度合いを規定するためにユーザが設定する時間であり、修正部7では、このユーザが規定する変化の度合いになるように、入力操作量を修正する。
【0046】
この実施形態では、ソフトアップ時間は、操作量を、0%から100%まで上昇変化させるのに要する時間として設定され、ソフトダウン時間は、操作量を、100%から0%まで下降変化させるのに要する時間として設定される。
【0047】
したがって、ソフトアップ時間あるいはソフトダウン時間を、短く設定すれば、上昇あるいは下降変化の度合いが急となり、長く設定すれば、緩やかとなる。
【0048】
これによって、例えば、起動時などにおいて、ランプヒータなどの負荷4の特性や温度制御される制御対象の反応特性などの種々の特性を考慮してユーザが、操作量の上昇変化の度合いを、ソフトアップ時間として設定することができる。
【0049】
かかるソフトアップ時間、ソフトダウン時間および制御切替閾値の設定は、上位機器1から電力制御装置2に対して通信によって設定してもよいし、電力制御装置2の図示しない操作部を操作して直接設定してもよい。
【0050】
図3は、ソフトアップ時間に基づく修正部7における入力操作量の修正を説明するための波形図であり、横軸は時刻を、縦軸は操作量を示している。実線は入力操作量を、破線は入力操作量の修正された部分をそれぞれ示している。
【0051】
上位機器1からの入力操作量が、MV1から目標値となる操作量MV2に上昇変化すると、修正部7では、予め設定されているソフトアップ時間bに対応する上昇変化の度合いになるように、後述の演算式に従って入力操作量を、破線で示すように修正する。
【0052】
ソフトアップ時間bは、上述のように、操作量が、0%から100%まで上昇するのに要する時間として設定されるものであり、このソフトアップ時間bに応じた上昇変化の度合い、すなわち、図3における操作量の変化の傾きになるように、入力操作量が修正されることになる。
【0053】
ソフトダウン時間に応じた入力操作量の修正も、上昇変化が、下降変化に代わるだけで同様である。
【0054】
このように、入力操作量が変化しときには、ユーザが設定したソフトアップ時間あるいはソフトダウン時間に応じた変化になるように、修正部7によって、入力操作量が修正される。
【0055】
なお、修正部7における入力操作量の修正は、入力操作量と実際の出力操作量とが一致している定常運転の状態から入力操作量が変化したときに行われるものであり、したがって、定常運転の状態において、入力操作量が変化しない場合には、入力操作量は、修正されることなく、そのまま制御部9に与えられる。
【0056】
図4は、この定常運転の状態と、ソフトアップあるいはソフトダウンの各状態の遷移を説明するための図である。
【0057】
入力操作量と実際の出力操作量とが一致している定常運転の状態において、入力操作量が上昇変化すると、矢符Aで示すようにソフトアップ状態に遷移し、入力操作量が下降変化すると、矢符Bで示すようにソフトダウン状態に遷移する。
【0058】
ソフトアップ中あるいはソフトダウン中、すなわち、ソフトアップ時間あるいはソフトダウン時間に応じて入力操作量を修正して運転している状態において、操作量の目標値に到達したときには、矢符Cあるいは矢符Dで示すように、定常運転の状態に遷移する。
【0059】
また、ソフトアップ中あるいはソフトダウン中に、入力操作量が下降あるいは上昇してその時点の実際の出力操作量に一致したときには、矢符Eあるいは矢符Fで示すように定常運転の状態に遷移する。
【0060】
ソフトアップ中において、入力操作量が下降してその時点の実際の出力操作量を下回ったときには、矢符Gで示すようにソフトダウンの状態に遷移し、また、ソフトダウン中において、入力操作量が上昇してその時点の実際の出力操作量を上回ったときには、矢符Hで示すようにソフトアップの状態に遷移する。
【0061】
なお、図5には、入力操作量が、MV1から目標値となるMV2に上昇し、ソフトアップ中に、入力操作量が、MV2から目標値となるMV1に下降変化し、ソフトダウンへ遷移した場合の図3に対応する波形図を示している。
【0062】
このようにして、入力操作量が、上昇あるいは下降変化すると、ユーザによって予め設定されているソフトアップ時間あるいはソフトダウン時間に応じた変化の度合いになるように、入力操作量が修正される。
【0063】
図6は、サイクル制御時の制御部9の構成を示す機能ブロック図である。
【0064】
制御部9は、修正部7から与えられる0%〜100%の入力操作量と、スイッチング手段5に対するONまたはOFFに対応する100%または0%の出力操作量との出力誤差を算出する出力誤差演算部11と、出力誤差演算部11で求めた出力誤差を累積する出力誤差累積部12と、入力操作量と出力誤差累積値とを加算して判定値とする加算部13と、判定値と基準値としての閾値とを比較し、閾値以上のときに、ONに対応する100%の出力操作量を設定する一方、閾値未満ときに、OFFに対応する0%出力操作量を設定する比較部14としての機能を有し、半サイクル以上の所定のサイクルで処理を行うものである。
【0065】
かかる構成は、上記特許文献1等で本件出願人が先に提案しているサイクル制御と同様である。
【0066】
図7は、位相制御時の制御部9の構成を示す機能ブロック図である。
【0067】
制御部9は、修正部7から与えられる0%〜100%の入力操作量に基づいて、出力操作量を生成するが、この出力操作量は、位相角の制御の分解能の制約のために、この実施形態では、表1に示す操作量、すなわち、0%、1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%の操作量しか選択することができない。
【0068】
【表1】
この実施形態では、入力操作量が、選択可能な表1の操作量以外の操作量であっても、後述のように処理して操作量を出力することにより、入力操作量が、選択可能な操作量でなくても、実質的に出力可能とするものである。
【0069】
このため、この実施形態の制御部9は、入力操作量と出力誤差累積部15からの、それまでに累積された出力誤差とを加算して判定値とする加算部16と、入力操作量と累積された出力誤差とに基づいて、閾値を決定する閾値決定部17と、判定値と閾値とを比較する比較部18と、その比較結果に応じて、複数の選択可能な出力操作量から出力操作量を選択する選択部19と、入力操作量から選択された出力操作量を減算して出力誤差を補正する減算部20としての機能を有する。
【0070】
再び、図2を参照して、切替え部10は、サイクル制御あるいは位相制御を、ユーザが予め設定した制御切替閾値および修正した入力操作量に基づいて、切替え選択し、制御部9からの出力操作量が、図示しないトリガ信号生成部に与えられ、出力操作量に応じたトリガ信号によってスイッチング手段5のON/OFFが制御され、サイクル制御または位相制御が行なわれる。
【0071】
切替部10は、修正された入力操作量が、制御切替閾値未満であるときには、位相制御を、制御切替閾値以上であるときには、サイクル制御を、切替え選択する。
【0072】
この制御切替閾値は、定常操作量以下に設定するのが好ましい。
【0073】
これによって、例えば、起動時において、ソフトアップ状態となって、修正された入力操作量が、定常操作量以下の制御切替閾値に達するまでは、位相制御が行なわれ、制御切替閾値に達すると、サイクル制御に移行し、定常状態では、高調波の発生を抑制したサイクル制御が行なわれることになる。
【0074】
これによって、ランプヒータなどの負荷4の温度が上昇するまでは、位相制御とすることができ、突入電流を抑制することができる。
【0075】
図8は、ソフトアップ時における切替え処理の動作説明に供するフローチャートである。
【0076】
上述のように、定常運転の状態から入力操作量が変化すると、この処理に移行し、先ず、制御切替閾値a、ソフトアップ時間b、目標値SP、直前の操作量y0を初期設定するとともに、操作量MVとして直前の操作量y0を設定し、経過時間tを0に初期設定する(ステップn1)。
【0077】
ここで、目標値SPとは、変化後の入力操作量をいい、例えば、入力操作量が、MV1からMV2に変化した上述の図3においては、MV2となる。また、直前の操作量y0とは、変化の直前の操作量であり、図3においては、操作量MV1となる。
【0078】
次に、入力操作量を修正した入力操作量MVを、次の演算式に従って算出する(ステップn2)。
【0079】
すなわち、修正後の入力操作量をMVとすると、次式で示される。
【0080】
MV=y0+(t/b)×100
この修正された入力操作量は、上述の図3の例では、破線で示される部分の操作量に相当するものであり、ユーザが設定したソフトアップ時間bに対応する度合いで変化させた入力操作量となる。
【0081】
この算出された操作量、すなわち、修正された入力操作量MVが、制御切替閾値a以上となったか否かを判断し(ステップn3)、制御切替え閾値a以上でないときには、位相制御を行い(ステップn4)、時間tが、目標値SPに到達するのに要する時間経過したか否かを次式で判断する(ステップn6)。
【0082】
t≧b×(SP−y0)/100
この右辺の式は、上述の図3においては、時間t1に相当する。
【0083】
時間tが、目標値SPに到達するのに要する時間経過していないときには、ステップn2に戻る。
【0084】
したがって、修正された入力操作量MVが、制御切替閾値a以上になるまでは、位相制御が行なわれることになる。
【0085】
次に、ステップn3において、修正された入力操作量MVが、制御切替閾値a以上になると、サイクル制御に移行し(ステップn5)、ステップn6において、時間tが、目標値SPに到達するのに要する時間経過したときには、終了して定常運転となる。
【0086】
このように、修正された入力操作量MVが、制御切替閾値aに達したか否かによって、位相制御とサイクル制御との切替えが行なえるので、ユーザは、例えば、定常操作量に基づいて、制御切替閾値aを設定することができ、定常操作量に近づいたらサイクル制御に移行できるように設定できるとともに、それまでは、位相制御とすることができる。
【0087】
また、ユーザは、ソフトアップ時間bの設定によって、修正される入力操作量の変化の度合い、したがって、制御切替閾値aに達するまでに要する時間を選択できることになる。したがって、ランプヒータなどの負荷4の特性や負荷4を用いて温度制御される制御対象の反応特性などを考慮してソフトアップ時間の設定を行なえることになり、幅広いアプリケーションへの対応が容易となる。
【0088】
なお、ソフトダウン時においては、上述のソフトアップ時間bが、ソフトダウン時間bとなり、また、入力操作量を修正する演算式が、 MV=y0−(t/b)×100となる。
【0089】
次に、サイクル制御および位相制御について、更に詳細に説明する。
【0090】
この実施の形態のサイクル制御の動作を、図9のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0091】
先ず、前回までの出力誤差累積値から前回の出力操作量を減算して、今回の出力誤差累積値を算出し(ステップn1)、この出力誤差累積値に、今回の入力操作量を加算して判定値とし(ステップn2)、判定値が、基準値としての閾値、例えば、50%以上であるか否かを判断する(ステップn3)。
【0092】
判定値が、閾値以上であるときには、今回の出力操作量としてONに対応する100%を設定する(ステップn4)。また、判定値が、閾値以上でないときには、今回の出力操作量としてOFFに対応する0%を設定する(ステップn5)。
【0093】
以上の処理を、半サイクル以上の所定のサイクルで行なうものである。なお、複数チャンネルの制御を行なう場合には、所定のサイクル内で、上記の処理を各チャンネルについて行う。
【0094】
また、図9の処理に代えて、図10のフローチャートに示す処理としてもよい。
【0095】
すなわち、図10に示すように、それまでに累積されている出力誤差累積値である積算操作量に、今回の入力操作量を加算して判定値とし(ステップn1)、判定値が閾値、例えば、50%以上であるか否かを判断する(ステップn2)。
【0096】
判定値が、閾値以上であるときには、今回の出力操作量として100%を設定する(ステップn3)。また、判定値が、閾値以上でないときには、今回の出力操作量として0%を設定する(ステップn4)。
【0097】
次に、判定値から、今回のONまたはOFFに対応する出力操作量である100%または0%を減算して新たな出力誤差累積値である積算操作量を算出して終了する(ステップn5)。
【0098】
図11は、制御部9へ入力される操作量が20%の場合のサイクル制御の例を示すものであり、この図11では、所定のサイクルが半サイクルである場合の例を示している。
【0099】
図11(a)は負荷電源、図11(b)は出力誤差累積値(積算操作量)の変化をそれぞれ示しており、図11(a)において、斜線を施した部分が、出力ONの状態を示している。
【0100】
なお、図11の下欄には、出力誤差累積値(積算操作量)が、閾値50%以上となって、100%の出力操作量を設定して出力をONした場合に、出力誤差累積値から100%の出力操作量が減算された値が示されている。また、出力誤差累積値が、閾値50%未満で、0%の出力操作量を設定して出力をOFFし、出力誤差累積値から0%の出力操作量を減算した場合には、出力誤差累積値の値に変化がないので、省略している。
【0101】
図11に示すように、入力操作量20%と、出力される出力操作量である0%または100%との差である出力誤差が、累積されて出力誤差累積値とされ、この出力誤差累積値が、閾値である50%以上になると、出力操作量を100%に設定して出力をONし、閾値未満であるときには、出力操作量0%に設定して出力をOFFするものである。
【0102】
この図11では、半サイクルを所定のサイクルとして処理を行なう例を示しているので、入力される操作量が20%の場合には、2サイクル半の内の半サイクルでONすることになる。
【0103】
次に、この実施の形態の位相制御の動作を、図12のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0104】
先ず、閾値を、今回の入力操作量と表1の選択可能な操作量とに基づいて決定する。すなわち、今回の入力操作量が、表1の選択可能な操作量であるか否かを判断し(ステップn1)、選択可能な操作量であるときには、その操作量を閾値とする(ステップn2)。
また、入力操作量が、選択可能な操作量でないときには、入力操作量を切り上げて、該入力操作量に最も近い表1の選択可能な操作量を閾値とする(ステップn3)。入力操作量が、表1の選択可能な操作量でないとき、例えば、11%であるとすると、切り上げて、選択可能な最も近い操作量である20%を閾値とする。また、例えば、入力操作量が、25%であるとすると、切り上げて、選択可能な最も近い操作量である30%を閾値とする。
【0105】
次に、出力誤差の累積値である積算操作量と入力操作量とを加算して判定値とし(ステップn4)、判定値が閾値以上であるか否かを判断し(ステップn5)、判定値が閾値以上であるときには、閾値を今回の出力操作量として選択する(ステップn6)。
また、ステップn5において、判定値が閾値以上でないときには、その閾値を、上記表1における1分解能分だけ下げた操作量を、今回の出力操作量として選択する(ステップn7)。
【0106】
例えば、閾値が20%であるとすると、表1の操作量20%の1分解能(1段階)低い操作量である10%を今回の出力操作量とし、また、例えば、閾値が30%であるとすると、表1の操作量30%の1分解能低い操作量である20%を今回の出力操作量とする。
次に、判定値から今回の出力操作量を減算した値を、新たな積算操作量とする(ステップn8)。
【0107】
この実施形態では、以上の処理を、例えば、半サイクル毎に行う。
【0108】
図13は、入力操作量が11%の場合の例を示すものであり、同図(a)は出力波形、同図(b)は入力操作量と積算操作量(出力誤差の累積値)との和である判定値の変化をそれぞれ示している。
【0109】
ここで、図13の左から2番目の第1の周期から説明を始める。
【0110】
先ず、閾値を決定するが、入力操作量11%は、表1の選択可能な操作量ではないので、入力操作量11%を、切り上げた最も近い選択可能な操作量である20%を閾値とする。
【0111】
次に、入力操作量11%と積算操作量とを加算して判定値とする。図13の左端の第0の周期では、21%の判定値に対して、20%の出力操作量を選択して出力しているので、出力誤差の累積値である積算操作量は、1%である。したがって、第1の周期における判定値は、入力操作量11%と積算操作量1%とを加算した12%となる。この判定値12%は、閾値20%よりも小さいので、該閾値20%よりも1分解能低い選択可能な操作量である10%を、今回の出力操作量として選択し、選択した出力操作量10%に応じた位相のトリガ信号によって、スイッチング手段5のON/OFFを制御し、判定値12%から今回操作量10%を減算して積算操作量を補正し、減算値2%を積算操作量として終了する。
【0112】
次の第2の周期では、入力操作量が、11%であるので、第1の周期と同様に、閾値を20%とする。
【0113】
次に、入力操作量11%と積算操作量2%とを加算して判定値13%とする。この判定値13%は、閾値20%よりも小さいので、該閾値20%よりも1分解能低い選択可能な操作量である10%を、今回の出力操作量として選択し、選択した出力操作量10%に応じた位相のトリガ信号によって、スイッチング手段5のON/OFFを制御し、判定値13%から今回操作量10%を減算した値3%を積算操作量として終了する。
【0114】
以下、半サイクル毎の同様の処理によって、積算操作量(出力誤差の累積値)が1%ずつ増加する。
【0115】
そして、第10の周期では、入力操作量が、11%であるので、上述と同様に、閾値を20%とする。
【0116】
次に、入力操作量11%と積算操作量10%とを加算して判定値21%とする。この判定値21%は、閾値20%よりも大きいので、この場合には、その閾値20を、今回の出力操作量として選択し、選択した出力操作量20%に応じた位相のトリガ信号によって、スイッチング手段5のON/OFFを制御し、判定値21%から今回操作量20%を減算した値1%を積算操作量として終了する。
【0117】
以下、同様の処理によって、10周期で110%の出力操作量を出力するので、平均すると、1周期では、11%の出力操作量となる。
【0118】
このようにして、入力操作量11%が、選択可能な操作量でなくとも、実質的に11%の出力操作量を出力できることになる。
【0119】
したがって、比較的安価なマイクロコンピュータ等を用いて制御回路を構成し、位相角の制御の分解能が制約されて、選択可能な操作量に制限がある場合であっても、選択できない出力操作量を実質的に出力することが可能となり、高価で高性能な制御回路を用いることなく、制御の分解能を実質的に高めることができる。
【0120】
なお、複数チャンネルの場合には、上記処理を各チャンネル毎に行なえばよい。
【0121】
以上のようにして、サイクル制御または位相制御が行なわれる。
【0122】
上述の実施形態では、サイクル制御は、上記特許文献1等で本件出願人が提案しているサイクル制御とし、位相制御は、本件出願人が、特願2007−101480「位相制御方法および位相制御装置」(平成19年4月9日提出)として提案している新規な位相制御を用いたけれども、本発明の他の実施形態として、サイクル制御として、本願出願人が提案したサイクル制御以外の従来のサイクル制御を、また、位相制御として、従来公知の位相制御を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、負荷に対する電力の制御に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、本発明に係る電力制御装置を備えるシステムの概略構成図である。
【図2】図2は、図1の電力制御装置の要部のブロック図である。
【図3】図3は、ソフトアップ時間に基づく入力操作量の修正を説明するための波形図である。
【図4】図4は、定常運転の状態と、ソフトアップあるいはソフトダウンの各状態の遷移を示す図である。
【図5】図5は、ソフトアップからソフトダウンへの移行時の図3に対応する図である。
【図6】図6は、サイクル制御時の機能ブロック図である。
【図7】図7は、位相制御時の機能ブロック図である。
【図8】図8は、ソフトアップ時における切替え処理の動作説明に供するフローチャートである。
【図9】図9は、サイクル制御の動作説明に供するフローチャートである。
【図10】図10は、サイクル制御の他の例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、入力操作量が20%の場合のサイクル制御の出力波形および出力誤差累積値(積算操作量)の変化を示す図である。
【図12】図12は、位相制御の動作説明に供するフローチャートである。
【図13】図13は、入力操作量が11%の場合の位相制御の出力波形および判定値を示す図である。
【符号の説明】
【0125】
1 上位機器
2 電力制御装置
4 負荷
5 スイッチング手段
7 修正部
9 制御部
10 切替部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電力指令値に基づく出力電力指令値を用いて、交流電源から負荷への電力供給ラインに設けられたスイッチング手段のON/OFF制御を行って、前記負荷への電力を、サイクル制御または位相制御する方法であって、
前記入力電力指令値が変化したときに、該入力電力指令値を、設定に応じて修正し、修正した入力電力指令値に基づいて前記出力電力指令値を求める一方、
前記修正した入力電力指令値と予め設定された切替閾値との比較結果に基づいて、前記サイクル制御と前記位相制御とを切替えるとともに、前記修正した入力電力指令値が、前記切替閾値未満のときには、位相制御することを特徴とする電力制御方法。
【請求項2】
前記サイクル制御は、前記修正された入力電力指令値と前記出力電力指令値との差を出力誤差値として累積し、基準値と比較して基準値を上回るときには、ONに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をON制御する一方、前記基準値を下回るときには、OFFに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をOFF制御する処理を、半サイクル以上の所定のサイクルで行う請求項1に記載の電力制御方法。
【請求項3】
前記位相制御は、前記出力電力指令値に応じた位相角のトリガ信号によって、前記スイッチング手段のON/OFF制御を行うものであって、前記修正された入力電力指令値およびそれまでに累積された出力誤差の累積値に応じて、選択可能な複数の指令値の中から出力電力指令値を選択し、選択した出力電力指令値に応じた位相角の前記トリガ信号によって前記ON/OFF制御を行ない、選択した出力電力指令値に応じて、前記出力誤差の累積値を補正する請求項1または2に記載の電力制御方法。
【請求項4】
前記入力電力指令値の変化が、上昇変化であって、前記修正した入力電力指令値が、前記切替閾値を上回ったときに、前記位相制御から前記サイクル制御に切り替える請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力制御方法。
【請求項5】
前記入力電力指令値の変化が、下降変化であって、前記修正した入力電力指令値が、前記切替閾値未満になったときには、前記サイクル制御から前記位相制御に切り替える請求項1〜4のいずれか一項に記載の電力制御方法。
【請求項6】
入力電力指令値に基づく出力電力指令値を用いて、交流電源から負荷への電力供給ラインに設けられたスイッチング手段のON/OFF制御を行って、前記負荷への電力を、サイクル制御または位相制御する装置であって、
前記入力電力指令値が変化したときに、該入力電力指令値を、設定に応じて修正し、修正した入力電力指令値に基づいて前記出力電力指令値を求める一方、前記修正した入力電力指令値と予め設定された切替閾値との比較結果に基づいて、前記サイクル制御と前記位相制御とを切替えるとともに、前記修正した入力電力指令値が、前記切替閾値未満のときには、位相制御する制御手段を備えることを特徴とする電力制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記入力電力指令値が変化したときに、該入力電力指令値を、設定に応じて修正する修正部と、
修正した前記入力電力指令値と前記出力電力指令値との差を出力誤差値として累積し、累積した出力誤差値と閾値とを比較して閾値を上回るときには、ONに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をON制御する一方、前記閾値を下回るときには、OFFに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をOFF制御する処理を、半サイクル以上の所定のサイクルで行うサイクル制御部と、
修正した前記入力電力指令値およびそれまでに累積された出力誤差の累積値に応じて、選択可能な複数の指令値の中から出力電力指令値を選択し、選択した出力電力指令値に応じた位相角のトリガ信号によって前記スイッチング手段のON/OFF制御を行ない、選択した出力電力指令値に応じて、前記出力誤差の累積値を補正する位相制御部と、
前記修正した入力電力指令値と切替閾値との比較結果に基づいて、前記サイクル制御部によるサイクル制御と前記位相制御部による位相制御とを切替える切替え部とを備える請求項6に記載の電力制御装置。
【請求項1】
入力電力指令値に基づく出力電力指令値を用いて、交流電源から負荷への電力供給ラインに設けられたスイッチング手段のON/OFF制御を行って、前記負荷への電力を、サイクル制御または位相制御する方法であって、
前記入力電力指令値が変化したときに、該入力電力指令値を、設定に応じて修正し、修正した入力電力指令値に基づいて前記出力電力指令値を求める一方、
前記修正した入力電力指令値と予め設定された切替閾値との比較結果に基づいて、前記サイクル制御と前記位相制御とを切替えるとともに、前記修正した入力電力指令値が、前記切替閾値未満のときには、位相制御することを特徴とする電力制御方法。
【請求項2】
前記サイクル制御は、前記修正された入力電力指令値と前記出力電力指令値との差を出力誤差値として累積し、基準値と比較して基準値を上回るときには、ONに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をON制御する一方、前記基準値を下回るときには、OFFに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をOFF制御する処理を、半サイクル以上の所定のサイクルで行う請求項1に記載の電力制御方法。
【請求項3】
前記位相制御は、前記出力電力指令値に応じた位相角のトリガ信号によって、前記スイッチング手段のON/OFF制御を行うものであって、前記修正された入力電力指令値およびそれまでに累積された出力誤差の累積値に応じて、選択可能な複数の指令値の中から出力電力指令値を選択し、選択した出力電力指令値に応じた位相角の前記トリガ信号によって前記ON/OFF制御を行ない、選択した出力電力指令値に応じて、前記出力誤差の累積値を補正する請求項1または2に記載の電力制御方法。
【請求項4】
前記入力電力指令値の変化が、上昇変化であって、前記修正した入力電力指令値が、前記切替閾値を上回ったときに、前記位相制御から前記サイクル制御に切り替える請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力制御方法。
【請求項5】
前記入力電力指令値の変化が、下降変化であって、前記修正した入力電力指令値が、前記切替閾値未満になったときには、前記サイクル制御から前記位相制御に切り替える請求項1〜4のいずれか一項に記載の電力制御方法。
【請求項6】
入力電力指令値に基づく出力電力指令値を用いて、交流電源から負荷への電力供給ラインに設けられたスイッチング手段のON/OFF制御を行って、前記負荷への電力を、サイクル制御または位相制御する装置であって、
前記入力電力指令値が変化したときに、該入力電力指令値を、設定に応じて修正し、修正した入力電力指令値に基づいて前記出力電力指令値を求める一方、前記修正した入力電力指令値と予め設定された切替閾値との比較結果に基づいて、前記サイクル制御と前記位相制御とを切替えるとともに、前記修正した入力電力指令値が、前記切替閾値未満のときには、位相制御する制御手段を備えることを特徴とする電力制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記入力電力指令値が変化したときに、該入力電力指令値を、設定に応じて修正する修正部と、
修正した前記入力電力指令値と前記出力電力指令値との差を出力誤差値として累積し、累積した出力誤差値と閾値とを比較して閾値を上回るときには、ONに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をON制御する一方、前記閾値を下回るときには、OFFに対応する前記出力電力指令値を設定して前記スイッチング手段をOFF制御する処理を、半サイクル以上の所定のサイクルで行うサイクル制御部と、
修正した前記入力電力指令値およびそれまでに累積された出力誤差の累積値に応じて、選択可能な複数の指令値の中から出力電力指令値を選択し、選択した出力電力指令値に応じた位相角のトリガ信号によって前記スイッチング手段のON/OFF制御を行ない、選択した出力電力指令値に応じて、前記出力誤差の累積値を補正する位相制御部と、
前記修正した入力電力指令値と切替閾値との比較結果に基づいて、前記サイクル制御部によるサイクル制御と前記位相制御部による位相制御とを切替える切替え部とを備える請求項6に記載の電力制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−305226(P2008−305226A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152543(P2007−152543)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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