説明

電力半導体装置、複数の電力半導体装置を備えた電力半導体モジュール、及び複数の電力半導体モジュールを有するモジュール・アセンブリ

【課題】電力半導体デバイスとベース・プレートとの間の電気的及び熱的な接続の長い寿命を有する電力半導体装置、電力半導体モジュール、及び、モジュール・アセンブリを提供する。
【解決手段】金属の取り付けベース6、及びモリブデンのレイヤ4を有するベース・プレート2と、ベース・プレートの上面側に電気的且つ熱的に結合された電力半導体デバイス3と、を有している。ベース・プレートの金属の取り付けベースは、電力半導体デバイスとモリブデンのレイヤとの間に配置され、モリブデンのレイヤが半導体デバイスとの間で高抵抗の金属間の相を形成することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力半導体装置に係り、この電力半導体装置は、モリブデンのレイヤを有するベース・プレート、及び、このベース・プレートの上面側に取り付けられ、且つ、それに電気的及び熱的に結合された電力半導体デバイスを有している。本発明は、更に、複数の電力半導体装置を備えた電力半導体モジュールに係る。本発明はまた、複数の電力半導体モジュールを有するモジュール・アセンブリ、特に、電力半導体モジュール・アセンブリに係る。
【背景技術】
【0002】
上述の種類の電力半導体装置は、従来技術の中で良く知られていて、例えば、電力半導体デバイス並びに高電力半導体の取り付け及び接触の分野の中で使用されている。これらの電力半導体デバイスは、約1.7kV以上の電圧を取り扱うことがあり、接着、ハンダ付けその他によりベース・プレートに取り付けられる。ベース・プレートは、これらの電力半導体装置において、電力半導体デバイスの一方の側の表面に接触する状態にあり、それによって、ベース・プレートから、直接、電力半導体デバイスに電流がもたらされることが可能になる。
【0003】
電力半導体デバイスとベース・プレートとの間の表面コンタクトが、電力半導体から外に逃れる熱伝達を可能にする。電力半導体デバイスを所望の動作温度で維持するために、ヒート・シンクとして、クーラーがベース・プレートに接続されることが可能である。従って、電力半導体デバイスは、ベース・プレートに熱的及び電気的に結合されている。この分野において使用される典型的な電力半導体デバイスは、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)、逆伝導性絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ、(逆伝導性IGBT)、バイ・モード絶縁ゲート・トランジスタ(BIGT)、または(電力用)ダイオードである。
【0004】
そのような電力半導体装置は、しばしば、例えば、電力半導体モジュールを形成するために結合され、この電力半導体モジュールは、100A及びそれ以上までの電流を取り扱うことが可能である。電力半導体装置は、共通のベース・プレートの上に並列に配置され、このベース・プレートは、通常、電力半導体モジュールの導電性のベースを形成する。電力半導体モジュールは、通常、導電性の蓋により覆われていて、この蓋は、電力半導体デバイスのための更なるコンタクトをもたらす。電力半導体デバイスは、通常、従来技術の中で知られているプレスピンにより導電性の蓋に接続される。
【0005】
プレスピンは、脚部及びヘッド部を有していて、それらは、プレスピンの長手方向軸に沿って互いに対して移動可能であり、且つ、例えば電流バイパスにより、電気的に相互に接続されている。脚部とヘッド部との間に、スプリング要素が配置され、このスプリング要素は、脚部及びヘッド部に、電力半導体デバイスの接触要素及び反対側のコンタクト(例えば、ハウジングの蓋)に対してそれらを押すために、外側に向かう力を加え、それらの間の電気的な接続を維持する。スプリング要素は、スプリング・ワッシャ・パックであっても良いが、しかし、他のスプリング要素が、同様に、使用されても良い。脚部とそれぞれの接触要素との間のコンタクトは、脚部のベースを介して設けられる。典型的に、そのようなプレスピンは、ゲートまたはコンロール・コンタクト、コレクタ・コンタクトおよび/またはエミッタ・コンタクトに接触するために使用される。
【0006】
複数の電力半導体モジュールが、更に結合されて、モジュール・アセンブリを、特に電力半導体モジュール・アセンブリを、形成することが可能である。電力半導体モジュールは、隣接する電力半導体モジュールの間に電気的な接続を有して、互いに並んで配置される。モジュール・アセンブリは、例えば、電力用トランジスタを有する半導体モジュールなどのような、同一の電力半導体モジュールを、有することが可能であり、または、例えば、電力用トランジスタを有する半導体モジュールのセット、及び電力用ダイオードを有する少なくとも一つの半導体モジュールなどのような、異なる電力半導体モジュールを有することも可能である。そのようなモジュール・アセンブリは、例えば、“Stakpak”との名称で本願の出願人から提供され、例えば、HVDCへの適用において使用されているように、積み重ねられた装置を形成するために使用されることが可能である。従って、モジュール・アセンブリの機械的なデザインが、長いスタックの中での締付けを容易にするために、最適化される。
【0007】
そのような電力半導体モジュール及び電力用モジュール・アセンブリにおいて、個々の電力半導体デバイスの短絡故障モード(SCFM)の支持は、不可欠な特徴である。電力半導体デバイスの内の一つが故障した場合、それは、短絡をもたらすことにより故障して、ベース・プレートから蓋への伝導を可能にする。従って、複数の電力半導体モジュールまたはモジュール・アセンブリが直列に接続されて、例えば、スタックを形成するとき、単一の電力半導体デバイスの故障が、一連の電力半導体モジュールまたはモジュール・アセンブリの故障をもたらすことがない。
【0008】
特に、この短絡故障モードにおいて、非常に高い電流が、単一の電力半導体デバイスの中を通って流れる可能性があり、その理由は、短絡が、並列の電力半導体デバイスの全てを無効にするからである。これらの電力半導体デバイスの長い寿命を、従って、電力半導体モジュール及びモジュール・アセンブリの長い寿命を、実現するために、短絡故障モードが、一年以上の間、維持されることが可能であることが望ましい。従って、電力半導体及びベース・プレートのコンタクトは、短絡電流に起因するかなりの熱を、長い時間に亘って取り扱うことが可能でなければならない。
【0009】
短絡故障モードにおいて良好な伝導をもたらすために、従来技術において、電力半導体デバイスの上にアルミニウムを含む小さいプレートレット(platelet)を設けることが知られている。電力半導体デバイスが故障して、短絡電流が温度を上昇させたとき、アルミニウムが溶けて、電力半導体デバイスのシリコンとの間で合金を形成する。このAlSi合金は、比較的良好な電気的及び熱的な伝導性を有している。それにもかかわらず、ベース・プレートと故障した電力半導体デバイスとの間のコンタクトのエイジングが、他の電力半導体デバイスを破壊するために十分に高いポイントまで、電気的な抵抗を増大させることが可能性があり、それによって、問題が、全電力半導体モジュール及び全モジュール・アセンブリの中を通って伝播されるようになる。特に、電力半導体及び高電力半導体の分野において、これは、非常に危険であって、その理由は、大量のエネルギーが存在して、アーク放電が、電力半導体モジュールの中で発生する可能性があるからである。最悪の場合には、隣接するクーラーの損傷までも、またはシステム全体の故障までも、発生する可能性がある。
【0010】
調査の結果によれば、電気的なコンタクトのエイジング及び故障のための主なる理由は、特に、電力半導体デバイスとベース・プレートとの間の二つの高い抵抗の金属間の相の形成にある。この用語“高い抵抗”は、例えば、AlSiがSCFMの中のコンタクトで形成されるとき、電力半導体デバイスとベース・プレートとの間のコンタクトの“通常の”抵抗と比べて高い抵抗に当てはまる。これらの相は、特に、Mo(SiAl)及びMoSiであって、これらは電力半導体デバイスとベース・プレートとの間の電気的及び熱的な伝導性を減少させる。このために、コンタクトの温度が増大して、SCFMの寿命が減少する。
【0011】
純粋な銅または純粋なアルミニウムで作られたベース・プレートを使用する狙いは、電力半導体装置の寿命の増大を、特に短絡故障モードにおいて、もたらした。その理由は、上述の金属間の相の形成が防止されるからである。それにもかかわらず、これらのベース・プレートの使用は、アルミニウムまたは銅の、シリコンと比べて異なる熱膨張係数に起因して、大きな問題をもたらした。電力半導体装置の温度の変化は、電力半導体デバイスとベース・プレートとの間の接続部に、剪断力をもたらし、それによって、電力半導体デバイスとベース・プレートとの間の接続部の安定性が、時間の経過に伴い減少することになる。これは、熱サイクル強度を制限し、この熱サイクル強度は、半導体デバイスの分野、特に電力半導体デバイスの分野において、重要な問題である。
【0012】
これらの電力半導体装置において発生するもう一つの問題は、電力半導体デバイスの過熱、及び電力半導体デバイスから逃れる熱伝達の問題である。特に電力半導体デバイスにおいて、信頼性の高い冷却メカニズムをもたらすことが重要であり、それによって、電力半導体デバイスが、所望の動作温度で、または少なくとも最高温度より下で、運転されることが可能になる。冷却は、しばしば、電力半導体デバイスからベース・プレートへの熱伝達により実現され、このベース・プレートは、更に、熱を冷却機構へ、例えば、それに取り付けられたクーラーへ、伝達する。電力半導体デバイスから外部への熱伝達は、チップ・デザインにおける制約因子であり、特に、電力半導体デバイスに関係するときに、制約因子となる。従って、この分野においても改良が要求されている。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、電力半導体装置、複数の電力半導体装置を備えた電力半導体モジュール、及び、複数の電力半導体モジュールを有するモジュール・アセンブリを提供することにある、それらは、電力半導体デバイスとベース・プレートとの間の電気的及び熱的な接続の長い寿命を有していて、電力半導体デバイスから外に逃れる良好な熱伝達を、特に短絡故障モードにおいて、もたらす。
【0014】
この目的は、独立請求項により実現される。好ましい実施形態は、従属請求項の中で与えられる。
【0015】
特に、本発明は、電力半導体装置を提供する。この電力半導体装置は、モリブデンのレイヤを有するベース・プレート、及び、ベース・プレートの上面側に取り付けられてそれに電気的及び熱的に結合された電力半導体デバイスを有し、ここで、ベース・プレートは、金属の取り付けベースを有していて、この取り付けベースは、電力半導体デバイスとモリブデンのレイヤとの間に配置されて、モリブデンのレイヤが、電力半導体デバイスとの間で高抵抗の金属間の相を形成することをを防止する。更に、プレスピンが、ベース・プレートの反対側で、電力半導体デバイスの隣に配置される。
【0016】
本発明の基本的なアイディアは、電力半導体デバイスとモリブデンのレイヤとの間に、中間の取り付けベースを設けることであり、それによって、電力半導体デバイスのシリコン及びモリブデンのレイヤのモリブデンが、Mo(SiAl)及びMoSiなどのような、高抵抗の金属間の相を形成することが可能でなくなる。金属材料の使用は、電気的及び熱的な伝導性を維持するために重要であり、それによって、電力半導体装置の通常の運転が制限されないようになる。電流及び熱に対する良好な伝導性を有するを有する金属材料が、好ましい。モリブデンのレイヤのモリブデンの熱膨張係数は、問題を制限し、また、適切な熱サイクル強度をももたらす。
【0017】
本発明の目的はまた、上述のような複数の半導体装置を備えた電力半導体モジュールにより解決される。ここで、電力半導体装置のベース・プレートは、共通のベース・プレートである。従って、単一のベース・プレートが、その上に幾つかの電力半導体デバイスを、通常、並列のやり方で、取り付けるのためのベースとして使用されることが可能であり、それによって、電力半導体モジュールの取り扱いが容易になる。複数の電力半導体デバイスが、電力半導体モジュールの共通のベース・プレートに単に接触することにより、容易に接触されることが可能である。
【0018】
本発明の目的はまた、上述のような複数の電力半導体モジュールを有するモジュール・アセンブリにより、特に、電力半導体モジュール・アセンブリにより、解決される。ここで、電力半導体モジュールは、隣接する電力半導体モジュールの間に電気的な接続を有して、互いに並んで配置される。複数のモジュール・アセンブリが、モジュール・アセンブリに単に接触することにより、容易に接触されることが可能である。モジュール・アセンブリは、同一の電力半導体モジュールを有していることが可能であり、それは、例えば、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)、逆伝導性絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(逆伝導性IGBT)またはバイ・モード絶縁ゲート・トランジスタ(BIGT)などような、電力用トランジスタを有する半導体モジュールであり、あるいは、異なる電力半導体モジュールを有していることが可能であり、それは、例えば、電力用トランジスタを有する及び少なくとも一つの電力半導体モジュール電力用ダイオードを有する電力半導体モジュールのセットなどである。そのようなモジュール・アセンブリは、例えばHVDCへの適用の中で使用されているように、積み重ねられた装置を形成するために使用されることが可能である。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、取り付けベースは、銅で作られる。本発明の代替的な実施形態において、取り付けベースは、銅ベースの合金で作られる。その理由は、銅が良好な熱的及び電気的な伝導性を示すからであり、電力半導体装置の動作を制限することなく使用されることが適切であるからである。これは、銅ベースの合金にも、特に、電気的及び熱的な伝導性に関して銅と同様な性質を有する合金にも当てはまる。銀を更に含む合金は、好ましい。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、取り付けベースは、電力半導体デバイスの故障の場合に、短絡故障モードの形成を支持する。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、プレートレット(platelet)が、電力半導体デバイスとプレスピンとの間に配置される。このプレートレットは、銅、アルミニウム、銀、金および/またはその合金で作られても良い。このプレートレットは、短絡故障モードを形成することを助けることがある。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、取り付けベースは、電力半導体デバイスの表面領域と比べて大きい表面領域を備えた取り付けプレートとして設けられる。取り付けベースの、電力半導体デバイスのサイズと比べて増大されたサイズは、電力半導体の冷却を改善する。その理由は、熱が取り付けプレートを介して放散される、次いでベース・プレートのモリブデンのレイヤに伝えられることが可能であるからである。銅または銅ベース合金の熱伝達特性は、通常、モリブデンの熱伝達特性と比べて良い。従って、電力半導体デバイスの性能が、改善された冷却に起因して改善されることが可能である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、取り付けベースは、モリブデンのレイヤの上方に伸びる取り付けレイヤとして設けられる。これは、ベース・プレートの製造を容易にする。その理由は、取り付けベースは、モリブデンのレイヤの全表面の上に、単一の製造プロセスで付けられることが可能であるからである。また、ベース・プレートが、特定のデザインの電力半導体装置を取り扱う必要無く設けられることが可能である。従って、大量生産が、低いコストで実現されることが可能である。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によれば、取り付けレイヤは、モリブデンのレイヤに積層される。積層(laminating)は、容易に且つ迅速に実施されることが可能な製造プロセスであり、それ故に、低い製造コストでのベース・プレートの準備を可能にする。それにもかかわらず、他の製造工程もまた、モリブデンのレイヤと取り付けレイヤを接続するために、適用されることが可能であり、それは、例えば、接着、またはハンダ付けなどである。
【0025】
本発明に基づく好ましい実施形態によれば、ベース・プレートは、ベース・レイヤを有していて、このベース・レイヤは、取り付けレイヤの反対側で、モリブデンのレイヤの上に設けられている。ここで、ベース・レイヤは、取り付けレイヤの熱膨張係数と本質的に等しい熱膨張係数を有している。ベース・レイヤは、サンドイッチ構造を有するベース・プレートをもたらすことを可能にし、そのようなベース・プレートは、モリブデンのレイヤと取り付けレイヤの材料の異なる熱膨張係数に起因するたわみを防止する。ベース・レイヤは、取り付けレイヤの曲げの力に対して反対側の方向へ曲げる力をもたらし、それによって、ベース・プレートが温度変化に曝されたときであっても、ベース・プレートが平板状の形状のままとどまることになる。これは、たわみの危険無しに、大きなベース・プレートの使用を可能にする。更に、ベース・レイヤは、電力半導体の冷却を、特に、ベース・レイヤの材料の熱的な係数がモリブデンのレイヤの熱的な係数と比べて高いときに、改善する。従って、ベース・プレートの熱の放散及び伝達が改善されることが可能である。
【0026】
好ましい実施形態によれば、ベース・レイヤ及び取り付けレイヤは、同一のレイヤとして設けられる。ベース・プレートは、容易に製造されることが可能である。その理由は、唯一つの材料が、ベース・レイヤ及び取り付けレイヤのために設けられれば良く、それは、単一の処理工程により処理されることが可能であるからである。同一のレイヤの使用はまた、同一のサンドイッチ構造を備えたベース・プレートをもたらし、それは、一方をベース・レイヤ及び取り付けレイヤとしもう一方をモリブデンのレイヤとする、異なる材料の熱膨張に起因するたわみの可能性を更に減少させる。
【0027】
本発明に基づく好ましい実施形態によれば、モリブデンのレイヤの厚さは、取り付けプレートまたは取り付けレイヤの厚さと比べて、少なくとも3倍大きい。取り付けプレートまたは取り付けレイヤの厚さと比べて、モリブデンのレイヤの厚さは、好ましくは、3倍から10倍大きく、更に好ましくは、5倍から6倍大きい。この厚さの関係は、実用的なテストにおいて良好な性能を示している。第一に、取り付けプレート/レイヤ及びモリブデンのレイヤの材料の異なる熱膨張にも拘わらず、良好なサイクリング強度が実現される。第二に、電力半導体からモリブデンのレイヤへの良好な熱伝達及び放散が実現される。絶対値で表すと、0.2mmの取り付けレイヤの厚さが、適切な値に対する一つの例である。
【0028】
ベース・レイヤがモリブデンのレイヤに接続される場合、取り付けプレート/取り付けレイヤ、モリブデンのレイヤ及びベース・レイヤの間の厚さの関係は、好ましくは、1:3:1から1:10:1であり、より好ましくは、1:5:1から1:6:1、であり、それにより、ベース・プレートの同一のサンドイッチ構造を形成する。その理由は、取り付けプレート/取り付けレイヤ及びベース・レイヤの厚さが等しく、異なる材料の熱膨張に起因するたわみが避けられることが可能になるからである。
【0029】
本発明に基づく好ましい実施形態によれば、モリブデンのレイヤの厚さは、1mmと10mmとの間にある。モリブデンのレイヤのそのような厚さは、ベース・プレートの良好な安定性をもたらす。また、良好な電力半導体デバイスから外に逃れる熱伝達も、実現されることが可能である。
【0030】
本発明の電力半導体モジュールの好ましい実施形態によれば、電力半導体モジュールは、ハウジングを有している。ここで、導電性の蓋が、ハウジングの上面側を形成して、電力半導体モジュールの第一のコンタクトをもたらし、共通のベース・プレートは、ハウジングのベースを形成して、電力半導体モジュールの第二のコンタクトをもたらし、電力半導体デバイスは、蓋と電気的に接触する状態にある。好ましくは、プレスピンが、電気的なコンタクトを設けるために、電力半導体デバイスと蓋との間に設けられる。一般的に、蓋は、電力半導体デバイスの第一のコンタクトと接触するための、電力半導体モジュールの第一のコンタクトをもたらし、ベース・プレートは、電力半導体デバイスの第二のコンタクトと接触するための電力半導体モジュールの第二のコンタクトをもたらす。
【0031】
電力用トランジスタが電力半導体デバイスとして使用されるとき、通常、ベース・プレートが、電力用トランジスタのコレクタに接続され、電力用トランジスタのエミッタが蓋に接続される。電力用トランジスタのゲートはまた、電力半導体モジュールの中で共通に接続されて、例えば、蓋の中のスペア(spare)を通って、または、横方向のコンタクトにより、接触されることが可能である。
【0032】
本発明のモジュール・アセンブリの好ましい実施形態によれば、電力半導体モジュールのベース・プレートは、互いに対して電気的に接続される。接続は、配線によりまたは電力半導体モジュールのベース・プレートと接触するためのコンタクト・プレートを設けることにより、なされることが可能である。
【0033】
本発明のモジュール・アセンブリの好ましい実施形態によれば、モジュール・アセンブリは、ハウジングを有していて、ここで、電力半導体モジュールの共通のベース・プレートは、ハウジングのベースの中を通って伸び、導電性の蓋は、ハウジングの上面側を形成して、電力半導体モジュールのための共通のコンタクトをもたらす。一般的に、蓋が、電力半導体モジュールの第一のコンタクトと接触するためのモジュール・アセンブリの第一のコンタクトをもたらし、ベース・プレートが、電力半導体モジュールの第二のコンタクトと接触するためのモジュール・アセンブリの第二のコンタクトをもたらす。電力半導体モジュールのゲート・コンタクトはまた、モジュール・アセンブリの中で共通に接触され、モジュール・アセンブリの横方向のコンタクトに接続され、あるいは、蓋の中のスペアを通って接触されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、複数の電力半導体装置を備えた電力半導体モジュールの電力半導体装置の断面図を示していて、ここで、電力半導体装置の電力半導体デバイスは、プレスピンにより接触されている。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のこれらの及び他のアスペクトは、以下に記載された実施形態を参照することにより、明らかでありまた明らかにされる。
【0036】
図1は、本発明に基づく電力半導体装置1を示している。この電力半導体装置1は、ベース・プレート2及び電力半導体デバイス3を有している。ベース・プレート2は、中央のモリブデンのレイヤ4を有する積層されたプレートであって、このモリブデンのレイヤは、ベース・レイヤ5と取り付けレイヤ6との間に挟まれている。モリブデンのレイヤ4の厚さは、本発明のこの代表的な実施形態によれば、約5mmである。
【0037】
電力半導体デバイス3は、本発明のこの代表的な実施形態において、電力用電力半導体デバイスであり、特に、IGBTであり、1.7kV以上までの電圧に対して使用されることが可能である。それは、取り付けレイヤ6の上面側に取り付けられ、それにより、それに電気的及び熱的に結合される。電力半導体デバイス3は、プレスピン7により、ベース・プレート2の反対側にあるその上側に接触される。プレスピン7は、従来技術の中で知られているので、プレスピン7に関する更なる詳細については、ここで説明されない。取り付けレイヤ6は、電力半導体3のための取り付けベースとして使用され、ここで、取り付けレイヤ6の広がりは、電力半導体の表面領域と比べて大きい。
【0038】
取り付けレイヤ6及びベース・レイヤ5は、双方とも、銅で作られていて、モリブデンのレイヤ4に積層されている。取り付けレイヤ6及びベース・レイヤ5の厚さは、本発明のこの代表的な実施形態において、1mmである。従って、取り付けレイヤ6と、モリブデンのレイヤ4と、ベース・レイヤ5との間の厚さの関係は、本発明のこの代表的な実施形態において、1:5:1である。ベース・レイヤ5及び取り付けレイヤ6は、そのそれぞれの側で、モリブデンのレイヤ4の全表面の上に伸びている。従って、レイヤ5,6は、モリブデンのレイヤ4の両側に等しく設けられていて、レイヤ5,6の熱膨張が互いに補償し合うことになる。それ故に、加熱および/または冷却を含む熱的なサイクルの中においても、ベース・プレート2は、平板状の形状のままとどまる。
【0039】
ベース・プレート2に、モリブデンのレイヤ4の上面側で、取り付けレイヤ6が設けられているので、電力半導体デバイス3及びモリブデンのレイヤ4は、直接接触する状態に無い。従って、モリブデンのレイヤ4のモリブデンと電力半導体デバイスのシリコン3との間の、金属間の相の形成、特に、Mo(SiAl)及びMoSiの形成が、信頼性高く防止される。
【0040】
図1の電力半導体装置1は、電力半導体モジュールの部分を形成し、この電力半導体モジュールは、上述のように、複数の電力半導体装置1を有している。電力半導体モジュールの詳細については、この図面の中に示されていない。電力半導体装置1のベース・プレート2は、共通のベース・プレート2であって、全ての電力半導体デバイス3がその上に取り付けられている。本発明のこの代表的な実施形態において、複数の電力半導体デバイス3が、ベース・プレート2の上に互いに対して並列に配置され、電力半導体モジュールを形成する。
【0041】
電力半導体モジュールは、ハウジングを有していて、ここで、共通のベース・プレート2が、ハウジングのベースを形成する。導電性の蓋は、ハウジングの上面側を形成する。この蓋は、電力半導体モジュールの第一のコンタクトをもたらし、ベース・プレート2は、電力半導体モジュールの第二のコンタクトをもたらす。電力半導体デバイス3は、プレスピン7により蓋と電気的に接触する状態にあり、これらのプレスピンは、それらの間に電気的なコンタクトを設けるために、電力半導体デバイスと蓋との間に設けられる。ベース・プレート2は、電力半導体デバイス3のコレクタに接続され、電力半導体デバイス3のエミッタは、蓋に接続される。電力半導体デバイス3のゲートはまた、蓋の中のスペアの中を通って、電力半導体モジュールの中で共通に接触される。
【0042】
電力半導体モジュール・アセンブリは、上述のように、複数の電力半導体モジュールを有している。モジュール・アセンブリの詳細について、この図面の中に示されていない。電力半導体モジュールは、ハウジングの中に互いに並んで配置され、ここで、電力半導体モジュールの共通のベース・プレート2は、ハウジングのベースの中を通って伸びている。導電性の蓋が、ハウジングの上面側を形成して、隣接する電力半導体モジュールの間で電気的な接続で、電力半導体モジュールのための共通のコンタクトをもたらす。この蓋は、電力半導体モジュールの第一のコンタクトと接触するための、モジュール・アセンブリの第一のコンタクトをもたらし、ベース・プレートは、電力半導体モジュールの第二のコンタクトと接触するための、モジュール・アセンブリの第二のコンタクトをもたらす。電力半導体モジュールのゲート・コンタクトは、モジュール・アセンブリの中で互いに対して接続され、モジュール・アセンブリの横方向のコンタクトに接続される。
【0043】
モジュール・アセンブリは、異なる電力半導体モジュールを有していて、本発明のこの代表的な実施形態において、電力用トランジスタを有する電力半導体モジュールのセット、及び、電力用ダイオードを有する少なくとも一つの電力半導体モジュールを有している。モジュール・アセンブリは、HVDCへ適用する場合に、積み重ねられた装置を形成するために使用される。
【0044】
本発明について、図面及び上述の説明において、図示され、詳細に説明されたが、そのような図及び説明は、例示的または代表的なものであって、限定的なものではないと考えられるべきであり; 本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態の他の変形形態は、請求項に記載された発明を実施する中で、図面、開示、及び添付された請求項の学習から、理解され且つ当業者により実現されることが可能である。請求項の中で、言葉“〜を有する/comprising”は、他の要素またはステップを排除することがなく、、不定冠詞“a”または“an”は、複数を排除することがない。特定の手段が、互いに異なる従属請求項の中で挙げられていると言う単なる事実は、これらの手段の組合わせが、良い結果を伴って使用されることが可能でないと言うことを示唆していない。請求項の中の何れの参照符号も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0045】
1・・・電力半導体装置、2・・・ベース・プレート、3・・・電力半導体デバイス、4・・・モリブデンのレイヤ、5・・・ベース・レイヤ、6・・・取り付けレイヤ、7・・・プレスピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力半導体装置(1)であって、
モリブデンのレイヤ(4)を有するベース・プレート(2)と、
ベース・プレート(2)の上面側に取り付けられ且つそれに電気的且つ熱的に結合された電力半導体デバイス(3)と、
ベース・プレート(2)の反対側で電力半導体デバイスの隣に配置されたプレスピンと、を有し、
ベース・プレート(2)は、金属の取り付けベース(6)を有し、
この取り付けベースは、前記電力半導体デバイス(3)と前記モリブデンのレイヤ(4)との間に配置され、且つ、前記モリブデンのレイヤ(4)と前記電力半導体デバイス(3)との間で高抵抗の金属間の相が形成されることを防止すること、を特徴とする電力半導体装置。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載の電力半導体装置、
前記取り付けベース(6)は、銅で作られている。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項1に記載の電力半導体装置、
前記取り付けベース(6)は、銅ベースの合金で作られている。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項1から3の何れか1項に記載の電力半導体装置、
前記取り付けベース(6)は、前記電力半導体デバイス(3)の故障の場合に、短絡故障モードの形成を支持する。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項1から4の何れか1項に記載の電力半導体装置、
プレートレットが、前記電力半導体デバイスと前記プレスピンとの間に配置され、このプレートレットは、銅、アルミニウム、銀、金、および/または、マグネシウム、またはそれらの合金で作られている。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項1から5の何れか1項に記載の電力半導体装置、
前記取り付けベース(6)は、前記電力半導体デバイス(3)の表面領域と比べて大きい表面領域を備えた取り付けプレートとして設けられている。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項1から6の何れか1項に記載の電力半導体装置、
前記取り付けベース(6)は、前記モリブデンのレイヤ(4)上方に伸びる取り付けレイヤとして設けられている。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項7に記載の電力半導体装置、
前記取り付けレイヤ(6)は、前記モリブデンのレイヤ(4)に積層されている。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項7または8に記載の電力半導体装置、
前記ベース・プレート(2)は、ベース・レイヤ(5)を有していて、このベース・レイヤは、前記取り付けレイヤ(6)の反対側で、前記モリブデンのレイヤ(4)の上に設けられ、
前記ベース・レイヤ(5)は、前記取り付けレイヤ(6)の熱膨張係数と本質的に等しい熱膨張係数を有している。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項9に記載の電力半導体装置、
前記ベース・レイヤ(5)及び前記取り付けレイヤ(6)は、同一のレイヤとして設けられている。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項6から10の何れか1項に記載の電力半導体装置、
前記モリブデンのレイヤ(4)の厚さは、前記取り付けプレートまたは取り付けレイヤ(6)厚さと比べて、少なくとも3倍大きく、好ましくは、前記モリブデンのレイヤ(4)の厚さは、前記取り付けプレートまたは取り付けレイヤ(6)の厚さと比べて、3倍から10倍大きく、更に好ましくは、5倍から6倍大きい。
【請求項12】
下記特徴を有する請求項6から11の何れか1項に記載の電力半導体装置、前記モリブデンのレイヤ(4)の厚さは、1mmと10mmとの間にある。
【請求項13】
請求項1から12の何れか1項に記載の複数の電力半導体装置(1)を備えた電力半導体モジュールであって、前記電力半導体装置(1)の前記ベース・プレート(2)は、共通のベース・プレート(2)であることを特徴とする電力半導体モジュール。
【請求項14】
下記特徴を有する請求項13に記載の電力半導体モジュール、
前記電力半導体モジュールは、ハウジングを有していて、
導電性の蓋が、前記ハウジングの上面側を形成し、且つ、前記電力半導体モジュールの第一のコンタクトをもたらし、
前記共通のベース・プレート(2)は、前記ハウジングのベースを形成し、且つ、前記電力半導体モジュールの第二のコンタクトをもたらし、
各電力半導体装置(1)の前記プレスピンは、前記電力半導体装置(1)の前記電力半導体デバイス(3)と前記蓋との間に配置され、
前記電力半導体デバイス(3)は、前記蓋と電気的に接触する状態にある。
【請求項15】
請求項13または14に記載の複数の電力半導体モジュールを有するを有するモジュール・アセンブリ、特に、電力半導体モジュール・アセンブリであって、
前記電力半導体モジュールが、隣接する電力半導体モジュールの間の電気的な接続を有して互いに並んで配置されているモジュール・アセンブリ。
【請求項16】
下記特徴を有する請求項15に記載のモジュール・アセンブリ、
前記電力半導体モジュールの前記ベース・プレート(2)は、互いに対して電気的に接続されている。
【請求項17】
下記特徴を有する請求項15または16に記載のモジュール・アセンブリ、
前記モジュール・アセンブリは、ハウジングを有していて、
前記電力半導体モジュールの前記共通のベース・プレート(2)は、前記ハウジングのベースの中を通って伸び、
導電性の蓋が、前記ハウジングの上面側を形成し、前記電力半導体モジュールのための共通のコンタクトをもたらす。

【図1】
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