説明

電力変換回路

【課題】2次電池を充電する際の消費電力を削減すること。
【解決手段】電力変換回路1は、トランスT1、T2のそれぞれが有する2次巻線W15、W25と、負荷Loadと、を断続するバッファBUFおよびインバータINVを備える。トランスT1は、2次巻線W15に加えて、2次電池BT11〜BT13のそれぞれと接続可能に設けられた1次巻線W11〜W13を備え、トランスT2は、2次巻線W25に加えて、2次電池BT21〜BT23のそれぞれと接続可能に設けられた1次巻線W21〜W23を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電源として、2次電池が用いられる場合がある。2次電池は、充電装置により充電される(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に示されている充電装置は、電圧源を備えており、電圧源から2次電池に電気エネルギーを供給することで、この2次電池を充電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−288447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、消費電力の削減が求められている。
【0005】
上述の課題に鑑み、本発明は、2次電池を充電する際の消費電力を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の事項を提案している。
(1) 本発明は、トランス(例えば、図5のトランスT1に相当)が有する2次巻線(例えば、図5の2次巻線W15に相当)と、充放電機能を有する負荷(例えば、図5の負荷Loadに相当)と、を断続するスイッチ手段(例えば、図5のバッファBUFおよびインバータINVに相当)を備え、前記トランスは、前記2次巻線と、2次電池(例えば、図5の2次電池BT11に相当)に接続される1次巻線(例えば、図5の1次巻線W11に相当)と、を備えることを特徴とする電力変換回路を提案している。
【0007】
この発明によれば、電力変換回路に、トランスが有する2次巻線と充放電機能を有する負荷とを断続するスイッチ手段を設けた。そして、トランスには、2次巻線と、2次電池に接続される1次巻線と、が設けられるものとした。
【0008】
このため、スイッチ手段により、負荷の両端電圧が2次巻線の両端電圧より高い状態において、2次巻線と負荷とを接続したり切断したりすることができる。これによれば、負荷の両端電圧が2次巻線に印加されて、1次巻線に起電力が発生するので、1次巻線に接続された2次電池を充電することができる。すなわち、スイッチ手段により、負荷の電気エネルギーを2次電池に回生させて、2次電池を充電することができる。したがって、2次電池を充電する際の消費電力を削減することができる。
【0009】
(2) 本発明は、(1)の電力変換回路について、前記2次電池は、複数設けられており(例えば、図5の2次電池BT11〜BT13に相当)、前記トランスは、前記1次巻線を、前記複数の2次電池と対に複数備える(例えば、図5の1次巻線W11〜W13に相当)ことを特徴とする電力変換回路を提案している。
【0010】
この発明によれば、2次電池が複数設けられており、トランスには、上述の1次巻線が、複数の2次電池と対に複数設けられているものとした。
【0011】
このため、負荷の両端電圧を2次巻線に印加させると、複数の1次巻線に起電力が発生し、発生した起電力が複数の2次電池に印加されることとなる。したがって、負荷の電気エネルギーを複数の2次電池に回生させることができる。
【0012】
(3) 本発明は、(2)の電力変換回路について、前記複数の2次電池は、直列接続されることを特徴とする電力変換回路を提案している。
【0013】
この発明によれば、複数の2次電池は、直列接続されているものとした。このため、直列接続されている複数の2次電池に、負荷の電気エネルギーを回生させることができる。
【0014】
(4) 本発明は、(2)または(3)の電力変換回路について、前記複数の2次電池は、複数組設けられており(例えば、図5では、2次電池BT11〜BT13と、2次電池BT21〜BT23と、の2組に相当)、前記トランスは、前記複数の2次電池の組数と同数設けられており(例えば、図5のトランスT1、T2に相当)、前記複数のトランスのそれぞれが有する2次巻線(例えば、図5のトランスT1が有する2次巻線W15と、トランスT2が有する2次巻線W25と、に相当)は、並列接続されることを特徴とする電力変換回路を提案している。
【0015】
この発明によれば、複数の2次電池は、複数組設けられており、トランスは、複数の2次電池の組数と同数設けられるものとした。また、複数のトランスのそれぞれが有する2次巻線は、並列接続されることとした。
【0016】
このため、スイッチ手段により、負荷の両端電圧が複数の2次巻線のそれぞれの両端電圧より高い状態において、複数の2次巻線のそれぞれと負荷とを接続することができる。これによれば、負荷の両端電圧が複数の2次巻線のそれぞれに印加されるため、複数の2次巻線と同数組の複数の2次電池の全てに、負荷の電気エネルギーを回生させることができる。
【0017】
(5) 本発明は、(1)〜(4)のいずれかの電力変換回路について、前記1次巻線および前記2次巻線は、鉄心に巻回されることを特徴とする電力変換回路を提案している。
【0018】
この発明によれば、1次巻線および2次巻線は、鉄心に巻回されることとした。このため、1次巻線および2次巻線が鉄心に巻回されていない場合、すなわち1次巻線および2次巻線が空心である場合と比べて、これら1次巻線および2次巻線で発生する磁束を安定させることができるので、負荷の電気エネルギーをより高精度に回生させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、2次電池を充電する際の消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電力変換回路を備えるセルバランス装置に設けられたセルバランス回路を説明するための図である。
【図2】前記セルバランス回路を説明するための図である。
【図3】前記セルバランス回路を説明するための図である。
【図4】前記セルバランス回路を説明するための図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る電力変換回路を備えるセルバランス装置の回路図である。
【図6】前記セルバランス装置が備えるセルバランス回路の回路図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る電力変換回路を備えるセルバランス装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素などとの置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る電力変換回路1を、図5に示す。電力変換回路1は、セルバランス装置AAに設けられており、このセルバランス装置AAには、セルバランス回路10、20も設けられている。まず図1〜4を用いて、セルバランス回路10、20の基本的な概念について説明し、次に図5、6を用いて、電力変換回路1およびセルバランス回路10、20を備えるセルバランス装置AAについて説明する。
【0023】
[セルバランス回路100の構成]
図1は、セルバランス回路100の回路図である。セルバランス回路100は、2次電池BT1、BT2のそれぞれの充電電圧を均一化する。2次電池BT1、BT2は、図示しない充電回路に接続されており、この充電回路により充電されるとともに、図示しない負荷に接続されており、この負荷の要求に応じて負荷に電力を供給することで放電される。
【0024】
セルバランス回路100は、トランスTと、2次電池BT1と対に設けられた充放電部11と、2次電池BT2と対に設けられた充放電部12と、を備える。充放電部11は、スイッチSW1を備え、充放電部12は、スイッチSW2を備える。これらスイッチSW1、SW2は、例えばMOSFETやIGBTやBJTで構成される。トランスTは、2次電池BT1と対に設けられた巻線W1と、2次電池BT2と対に設けられた巻線W2と、を備える。巻線W1と巻線W2とは、同一の鉄心に巻回されており、巻線W1の巻数と、巻線W2の巻数とは、等しい。
【0025】
巻線W1の一端には、2次電池BT1の一端が接続され、巻線W1の他端には、スイッチSW1を介して2次電池BT1の他端が接続される。巻線W2の一端には、2次電池BT2の一端が接続され、巻線W2の他端には、スイッチSW2を介して2次電池BT2の他端が接続される。
【0026】
[セルバランス回路100の動作]
以上の構成を備えるセルバランス回路100は、2次電池BT1、BT2の充電時および放電時において、2次電池BT1の充電電圧と2次電池BT2の充電電圧とが異なれば、これら2次電池BT1、BT2に電流を流して、2次電池BT1、BT2のそれぞれの充電電圧を均一化する。具体的なセルバランス回路100の動作について、以下に詳述する。
【0027】
セルバランス回路100は、2次電池BT1、BT2の充電時および放電時において、図示しない制御部により、スイッチSW1とスイッチSW2とを同期制御する。スイッチSW1、SW2がオン状態になると、巻線W1には2次電池BT1の充電電圧が印加され、巻線W2には2次電池BT2の充電電圧が印加されることとなる。
【0028】
巻線W1に2次電池BT1の充電電圧が印加されると、巻線W1で磁束が発生し、この磁束が巻線W2を貫くこととなる。この磁束をΦ、巻線W1、W2の巻数をNとすると、巻線W1、W2のそれぞれには、以下の式(1)に示す起電力εが発生することとなる。
【0029】
【数1】

【0030】
ここで、巻線W1で発生する磁束は、巻線W1に印加される電圧に応じて変化する。このため、巻線W2に発生する起電力は、2次電池BT1の充電電圧に応じて変化することとなる。
【0031】
巻線W2においても、上述の巻線W1と同様に、2次電池BT2の充電電圧が印加されると磁束が発生し、この磁束が巻線W1を貫くため、巻線W1には、上述の式(1)で示したものと同様の起電力が発生することとなる。そして、巻線W1に発生する起電力は、2次電池BT2の充電電圧に応じて変化することとなる。
【0032】
ここで、2次電池BT1の充電電圧をVBT1、2次電池BT2の充電電圧をVBT2、巻線W1の抵抗成分をRW1、巻線W2の抵抗成分をRW2とする。すると、2次電池BT1、BT2のそれぞれの充電電圧の関係に応じて巻線W1を流れる電流IW1は、以下の式(2)のように表され、2次電池BT1、BT2のそれぞれの充電電圧の関係に応じて巻線W2を流れる電流IW2は、以下の式(3)のように表されることとなる。
【0033】
【数2】

【0034】
【数3】

【0035】
2次電池BT1の充電電圧VBT1と2次電池BT2の充電電圧VBT2とが等しい場合には、上述の式(2)のように、巻線W1に電流が流れないとともに、上述の式(3)のように、巻線W2に電流が流れないため、2次電池BT1および2次電池BT2には、電流が流れない。
【0036】
一方、2次電池BT1の充電電圧VBT1が2次電池BT2の充電電圧VBT2より低い場合には、2次電池BT1の充電電圧VBT1と2次電池BT2の充電電圧VBT2とが等しくなるまで、上述の式(2)で定まる電流が巻線W1から2次電池BT1に流れて、2次電池BT1が充電される。また、2次電池BT1の充電電圧VBT1と2次電池BT2の充電電圧VBT2とが等しくなるまで、上述の式(3)で定まる電流が2次電池BT2から巻線W2に流れて、2次電池BT2が放電される。
【0037】
また、2次電池BT1の充電電圧VBT1が2次電池BT2の充電電圧VBT2より高い場合には、2次電池BT1の充電電圧VBT1と2次電池BT2の充電電圧VBT2とが等しくなるまで、上述の式(2)で定まる電流が2次電池BT1から巻線W1に流れて、2次電池BT1が放電される。また、2次電池BT1の充電電圧VBT1と2次電池BT2の充電電圧VBT2とが等しくなるまで、上述の式(3)で定まる電流が巻線W2から2次電池BT2に流れて、2次電池BT2が充電される。
【0038】
以上より、図1に示したセルバランス回路100によれば、2次電池BT1、BT2の充電時および放電時において、2次電池BT1の充電電圧VBT1と、2次電池BT2の充電電圧VBT2と、を等しくすることができる。この図1に示したセルバランス回路100は、図2のように表すこともできる。
【0039】
[セルバランス回路100Aの構成]
図3は、セルバランス回路100Aの回路図である。セルバランス回路100Aは、図2に示したセルバランス回路100とは、2次電池BT1、BT2が直列接続されている点が異なる。セルバランス回路100Aにおいて、セルバランス回路100と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0040】
[セルバランス回路100Aの動作]
図3に示したセルバランス回路100Aについても、スイッチSW1、SW2を制御することで、セルバランス回路100と同様の効果を奏することができる。ところが、2次電池BT1、BT2は直流電力を出力するため、図1、2に示したセルバランス回路100や、図3に示したセルバランス回路100Aでは、スイッチSW1、SW2をオン状態のままにしておくと、トランスTが飽和してしまう。このトランスTの飽和を防止できるのが、図4に示すセルバランス回路100Bである。
【0041】
[セルバランス回路100Bの構成]
セルバランス回路100Bは、図3に示したセルバランス回路100Aとは、制御部50を備える点と、スイッチSW1の代わりにバッファBUF1およびインバータINV1を備える点と、スイッチSW2の代わりにバッファBUF2およびインバータINV2を備える点と、が異なる。セルバランス回路100Bにおいて、図3に示したセルバランス回路100Aと同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
バッファBUF1の入力端子と、インバータINV1の入力端子とには、制御部50が接続される。バッファBUF1の出力端子には、巻線W1の一端が接続され、インバータINV1の出力端子には、巻線W1の他端が接続される。バッファBUF1の高電位側制御端子と、インバータINV1の高電位側制御端子とには、2次電池BT1の一端が接続され、バッファBUF1の低電位側制御端子と、インバータINV1の低電位側制御端子とには、2次電池BT1の他端が接続される。
【0043】
バッファBUF2およびインバータINV2についても、上述のバッファBUF1およびインバータINV1と同様に、2次電池BT2および巻線W2に接続される。なお、バッファBUF2の入力端子と、インバータINV2の入力端子とには、制御部50が、キャパシタCD1を介して接続される。
【0044】
[セルバランス回路100Bの動作]
制御部50は、2次電池BT1、BT2の充電時および放電時において、デューティ比が50%の制御信号を出力する。この制御信号は、バッファBUF1、BUF2の入力端子と、インバータINV1、INV2の入力端子と、に入力されるため、これらバッファBUF1、BUF2とインバータINV1、INV2とは、同期制御されることとなる。
【0045】
制御信号の電圧レベルがHレベルの場合には、バッファBUF1、BUF2において、出力端子と高電位側制御端子とが導通するとともに、インバータINV1、INV2において、出力端子と低電位側制御端子とが導通する。これによれば、2次電池BT1、BT2のそれぞれの一端と、巻線W1、W2のそれぞれの一端と、が接続されるとともに、2次電池BT1、BT2のそれぞれの他端と、巻線W1、W2のそれぞれの他端と、が接続され、巻線W1、W2のそれぞれに2次電池BT1、BT2のそれぞれの充電電圧が印加されることとなる。
【0046】
一方、制御信号の電圧レベルがLレベルの場合には、バッファBUF1、BUF2において、出力端子と低電位側制御端子とが導通するとともに、インバータINV1、INV2において、出力端子と高電位側制御端子とが導通する。これによれば、2次電池BT1、BT2のそれぞれの一端と、巻線W1、W2のそれぞれの他端と、が接続されるとともに、2次電池BT1、BT2のそれぞれの他端と、巻線W1、W2のそれぞれの一端と、が接続され、巻線W1、W2のそれぞれに2次電池BT1、BT2のそれぞれの充電電圧が印加されることとなる。
【0047】
以上より、上述のセルバランス回路100、100Aと同様に、2次電池BT1の充電電圧と2次電池BT2の充電電圧との関係に応じた電流が、2次電池BT1、BT2に流れることとなる。
【0048】
なお、制御信号の電圧レベルがHレベルの場合とLレベルの場合とでは、巻線W1の他端を基準とした一端の電圧の極性が反転するとともに、巻線W2の他端を基準とした一端の電圧の極性も反転する。このため、トランスTの飽和が防止されることとなる。
【0049】
[セルバランス装置AAの構成]
図5は、本発明の第1実施形態に係る電力変換回路1と、セルバランス回路10、20と、を備えるセルバランス装置AAの回路図である。セルバランス装置AAは、直列接続された2次電池BT11〜BT13と、直列接続された2次電池BT21〜BT23と、のそれぞれの充電電圧を均一化する。
【0050】
2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23は、負荷Loadの要求に応じて負荷Loadに電力を供給することで放電される。また、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23は、図示しない充電回路に接続されており、この充電回路により充電されたり、負荷Loadからの電気エネルギーの回生により充電されたりする。なお、負荷Loadとしては、充放電機能を有する負荷、例えばモータや2次電池や商用電源を適用できる。
【0051】
セルバランス装置AAは、電力変換回路1と、セルバランス回路10、20と、制御部50と、を備える。
【0052】
<電力変換回路1の構成>
電力変換回路1は、バッファBUFおよびインバータINVを備える。バッファBUFの入力端子と、インバータINVの入力端子とには、制御部50が接続される。バッファBUFの出力端子には、後述の2次巻線W15の一端と、後述の2次巻線W25の一端と、が接続され、インバータINVの出力端子には、後述の2次巻線W15の他端と、後述の2次巻線W25の他端と、が接続される。すなわち、2次巻線W15と2次巻線W25とは、並列接続される。バッファBUFの高電位側制御端子と、インバータINVの高電位側制御端子とには、負荷Loadの一端が接続され、バッファBUFの低電位側制御端子と、インバータINVの低電位側制御端子とには、負荷Loadの他端が接続される。
【0053】
<セルバランス回路10の構成>
セルバランス回路10は、2次電池BT11〜BT13と対に設けられ、充放電部11〜13と、トランスT1と、を備える。トランスT1は、1次巻線W11〜W13と、上述の2次巻線W15と、を備える。1次巻線W11〜W13のそれぞれと2次巻線W15とは、同一の鉄心に巻回されており、1次巻線W11〜W13のそれぞれの巻数は等しい。このセルバランス回路10について、図6を用いて詳述する。
【0054】
充放電部11は、2次電池BT11および1次巻線W11と対に設けられ、バッファBUF1およびインバータINV1を備える。バッファBUF1の入力端子と、インバータINV1の入力端子とには、制御部50が接続される。バッファBUF1の出力端子には、1次巻線W11の一端が接続され、インバータINV1の出力端子には、1次巻線W11の他端が接続される。バッファBUF1の高電位側制御端子と、インバータINV1の高電位側制御端子とには、2次電池BT11の一端が接続され、バッファBUF1の低電位側制御端子と、インバータINV1の低電位側制御端子とには、2次電池BT11の他端が接続される。
【0055】
充放電部12は、2次電池BT12および1次巻線W12と対に設けられ、バッファBUF2、インバータINV2、およびキャパシタCD1を備える。バッファBUF2の入力端子と、インバータINV2の入力端子とには、キャパシタCD1を介して制御部50が接続される。バッファBUF2の出力端子には、1次巻線W12の一端が接続され、インバータINV2の出力端子には、1次巻線W12の他端が接続される。バッファBUF2の高電位側制御端子と、インバータINV2の高電位側制御端子とには、2次電池BT12の一端が接続され、バッファBUF2の低電位側制御端子と、インバータINV2の低電位側制御端子とには、2次電池BT12の他端が接続される。
【0056】
充放電部13は、2次電池BT13および1次巻線W13と対に設けられ、バッファBUF3、インバータINV3、およびキャパシタCD2を備える。バッファBUF3の入力端子と、インバータINV3の入力端子とには、キャパシタCD2およびキャパシタCD1を介して制御部50が接続される。バッファBUF3の出力端子には、1次巻線W13の一端が接続され、インバータINV3の出力端子には、1次巻線W13の他端が接続される。バッファBUF3の高電位側制御端子と、インバータINV3の高電位側制御端子とには、2次電池BT13の一端が接続され、バッファBUF3の低電位側制御端子と、インバータINV3の低電位側制御端子とには、2次電池BT13の他端が接続される。
【0057】
<セルバランス回路20の構成>
セルバランス回路20は、セルバランス回路10と同様に、2次電池BT21〜BT23と対に設けられ、充放電部21〜23と、トランスT2と、を備える。充放電部21〜23のそれぞれは、充放電部11〜13のそれぞれと同様の構成を備える。トランスT2は、トランスT1と同様に、1次巻線W21〜W23と、上述の2次巻線W25と、を備える。1次巻線W21〜W23のそれぞれと2次巻線W25とは、同一の鉄心に巻回されており、1次巻線W21〜W23のそれぞれの巻数は等しい。また、1次巻線W21〜W23のそれぞれの巻数は、1次巻線W11〜W13のそれぞれの巻数とも等しく、2次巻線W25の巻数は、2次巻線W15の巻数と等しい。
【0058】
[セルバランス装置AAの動作]
以上の構成を備えるセルバランス装置AAは、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23の充放電時において、後述の充電モード、放電モード、および回生モードのうちのいずれかで動作する。また、セルバランス回路10、20により、上述のセルバランス回路100、100A、100Bと同様に、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のうち少なくとも1つの充電電圧が他の充電電圧と異なれば、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23に電流を流して、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの充電電圧を均一化する。
【0059】
<2次電池の充電電圧の均一化>
【0060】
制御部50は、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23の充放電時において、デューティ比が50%の制御信号を出力する。この制御信号は、充放電部11〜13、21〜23のそれぞれに設けられたバッファおよびインバータの入力端子に入力される。
【0061】
制御信号の電圧レベルがHレベルの場合には、充放電部11〜13、21〜23のそれぞれに設けられたバッファにおいて、出力端子と高電位側制御端子とが導通するとともに、充放電部11〜13、21〜23のそれぞれに設けられたインバータにおいて、出力端子と低電位側制御端子とが導通する。これによれば、1次巻線W11〜W13、W21〜W23のそれぞれの一端と、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの一端と、が接続されるとともに、1次巻線W11〜W13、W21〜W23のそれぞれの他端と、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの他端と、が接続される。このため、1次巻線W11〜W13、W21〜W23のそれぞれに、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの充電電圧が印加されることとなる。
【0062】
一方、制御信号の電圧レベルがLレベルの場合には、充放電部11〜13、21〜23のそれぞれに設けられたバッファにおいて、出力端子と低電位側制御端子とが導通するとともに、充放電部11〜13、21〜23のそれぞれに設けられたインバータにおいて、出力端子と高電位側制御端子とが導通する。これによれば、1次巻線W11〜W13、W21〜W23のそれぞれの一端と、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの他端と、が接続されるとともに、1次巻線W11〜W13、W21〜W23のそれぞれの他端と、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの一端と、が接続される。このため、1次巻線W11〜W13、W21〜W23のそれぞれに、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの充電電圧が印加されることとなる。
【0063】
1次巻線W11に2次電池BT11の充電電圧が印加されると、1次巻線W11で磁束が発生し、この磁束が1次巻線W12および1次巻線W13を貫くため、これら1次巻線W12および1次巻線W13には、上述の式(1)で示したものと同様の起電力が発生することとなる。
【0064】
ここで、1次巻線W11で発生する磁束は、1次巻線W11に印加される電圧に応じて変化する。このため、1次巻線W12、W13のそれぞれに発生する起電力は、2次電池BT11の充電電圧に応じて変化することとなる。
【0065】
1次巻線W12においても、上述の1次巻線W11と同様に、2次電池BT12の充電電圧が印加されると磁束が発生し、この磁束が1次巻線W13、W11を貫くため、1次巻線W13、W11のそれぞれには、上述の式(1)に示したものと同様の起電力が発生することとなる。そして、1次巻線W13、W11のそれぞれに発生する起電力は、2次電池BT12の充電電圧に応じて変化することとなる。
【0066】
1次巻線W13においても、上述の1次巻線W11、W12と同様に、2次電池BT13の充電電圧が印加されると磁束が発生し、この磁束が1次巻線W11、W12を貫くため、1次巻線W11、W12のそれぞれには、上述の式(1)に示したものと同様の起電力が発生することとなる。そして、1次巻線W11、W12のそれぞれに発生する起電力は、2次電池BT13の充電電圧に応じて変化することとなる。
【0067】
ここで、2次電池BT11の充電電圧と2次電池BT12の充電電圧とが等しい場合には、上述の式(2)のように、1次巻線W11を電流が流れないとともに、上述の式(3)のように、1次巻線W12を電流が流れないため、2次電池BT11、BT12には、電流が流れない。
【0068】
一方、2次電池BT11の充電電圧が2次電池BT12の充電電圧より低い場合には、2次電池BT11の充電電圧と2次電池BT12の充電電圧とが等しくなるまで、上述の式(2)で定まる電流が1次巻線W11から2次電池BT11に流れて、2次電池BT11が充電される。また、2次電池BT11の充電電圧と2次電池BT12の充電電圧とが等しくなるまで、上述の式(3)で定まる電流が2次電池BT12から1次巻線W12に流れて、2次電池BT12が放電される。
【0069】
また、2次電池BT11の充電電圧が2次電池BT12の充電電圧より高い場合には、2次電池BT11の充電電圧と2次電池BT12の充電電圧とが等しくなるまで、上述の式(2)で定まる電流が2次電池BT11から1次巻線W11に流れて、2次電池BT11が放電される。また、2次電池BT11の充電電圧と2次電池BT12の充電電圧とが等しくなるまで、上述の式(3)で定まる電流が1次巻線W12から2次電池BT12に流れて、2次電池BT12が充電される。
【0070】
上述の2次電池BT11の充電電圧と2次電池BT12の充電電圧との関係と同様に、2次電池BT12の充電電圧と2次電池BT13の充電電圧と、および、2次電池BT13の充電電圧と2次電池BT11の充電電圧と、においても、それぞれの充電電圧の関係に応じた電流が各2次電池を流れて、各2次電池が充電または放電される。そして、その結果、2次電池BT11〜BT13のそれぞれの充電電圧が等しくなる。
【0071】
2次電池BT21〜BT23のそれぞれについても、2次電池BT11〜BT13のそれぞれと同様に、充電電圧が等しくなる。
【0072】
ここで、2次巻線W15の両端電圧は、1次巻線W11〜W13のそれぞれの両端電圧に応じて変化し、2次巻線W25の両端電圧は、1次巻線W21〜W23のそれぞれの両端電圧に応じて変化する。そして、2次巻線W15と2次巻線W25とは、上述のように並列接続されるため、2次巻線W15の両端電圧と、2次巻線W25の両端電圧とは、等しくなる。このため、1次巻線W11〜W13の両端電圧と、1次巻線W21〜W23の両端電圧と、も等しくなる。よって、2次電池BT11〜BT13のそれぞれの充電電圧と、2次電池BT21〜BT23のそれぞれの充電電圧と、も等しくなる。
【0073】
<充電モード>
上述の充電モードでは、セルバランス装置AAは、図示しない充電回路により、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれを充電する。
【0074】
<放電モードおよび回生モード>
制御部50から出力されるデューティ比が50%の制御信号は、充放電部11〜13、21〜23のそれぞれに設けられたバッファおよびインバータの入力端子だけでなく、バッファBUFおよびインバータINVの入力端子にも入力される。このため、バッファBUFおよびインバータINVは、充放電部11〜13、21〜23のそれぞれに設けられたバッファおよびインバータと同期して動作する。
【0075】
制御信号の電圧レベルがHレベルの場合には、バッファBUFの出力端子と高電位側制御端子とが導通するとともに、インバータINVの出力端子と低電位側制御端子とが導通する。これによれば、負荷Loadの一端と、2次巻線W15、W25のそれぞれの一端と、が導通するとともに、負荷Loadの他端と、2次巻線W15、W25のそれぞれの他端と、が導通することとなる。
【0076】
一方、制御信号の電圧レベルがLレベルの場合には、バッファBUFの出力端子と低電位側制御端子とが導通するとともに、インバータINVの出力端子と高電位側制御端子とが導通する。これによれば、負荷Loadの一端と、2次巻線W15、W25のそれぞれの他端と、が導通するとともに、負荷Loadの他端と、2次巻線W15、W25のそれぞれの一端と、が導通することとなる。
【0077】
ここで、負荷Loadの他端を基準とした一端の電圧、すなわち負荷Loadの両端電圧をVioとし、2次巻線W25の他端を基準とした一端の電圧、すなわち2次巻線W25の両端電圧をVW25とする。すると、以下の式(4)を満たす場合には、放電モードとなる。
【0078】
【数4】

【0079】
上述の式(4)を満たす場合には、バッファBUFおよびインバータINVを介して、2次巻線W25の両端電圧VW25が負荷Loadに供給される。ここで、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの充電電圧は、1次巻線W11〜W13、W21〜W23のそれぞれに印加され、その結果、2次巻線W15、W25のそれぞれに起電力が発生する。このため、上述の式(4)を満たす場合、すなわち放電モードでは、バッファBUFおよびインバータINVを備える電力変換回路1により、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれから負荷Loadに電力が供給され、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23が放電されることとなる。
【0080】
一方、以下の式(5)を満たす場合には、回生モードとなる。
【0081】
【数5】

【0082】
上述の式(5)を満たす場合には、バッファBUFおよびインバータINVを介して、負荷Loadの両端電圧Vioが2次巻線W15、W25に供給される。ここで、2次巻線W15、W25のそれぞれに電圧が印加されると、1次巻線W11〜W13、W21〜W23のそれぞれに起電力が発生し、これら起電力が2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれに供給される。このため、上述の式(5)を満たす場合、すなわち回生モードでは、バッファBUFおよびインバータINVを備える電力変換回路1により、負荷Loadから2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23に電気エネルギーが回生され、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23が充電されることとなる。
【0083】
以上の電力変換回路1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0084】
負荷Loadの両端電圧Vioが2次巻線W25の両端電圧VW25より高い状態において、2次巻線W15、W25のそれぞれと負荷Loadとを接続することができる。これによれば、負荷Loadの電気エネルギーを2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23に回生させて、これら2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23を充電することができる。このため、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23の充電を上述の充電モードで行う時間を短縮することができるので、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23を充電する際の消費電力を削減することができる。
【0085】
また、以上の電力変換回路1を備えるセルバランス装置AAによれば、以下の効果を奏することができる。
【0086】
上述の特許文献1に示されている回路は、複数の2次電池のそれぞれの充電電圧の均一化を、ダイオードを用いて行う。ここで、ダイオードの順方向電圧は、温度に応じて変化するため、複数の2次電池のそれぞれの充電電圧を正確に均一化することができないおそれがあった。これに対して、セルバランス装置AAは、上述の特許文献1に示されている回路が必要としていたダイオードを、充電電圧を均一化するために用いることはない。このため、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの充電電圧を正確に均一化することができる。
【0087】
また、仮に、上述のダイオードの順方向電圧の温度に応じた変化を無視できたとしても、上述の特許文献1に示されている回路は、複数の2次電池のそれぞれの充電電圧の均一化を、2次電池の充電時にのみ行うため、2次電池の放電時には充電電圧が不均一となってしまい、セルバランスを安定させることができなかった。これに対して、セルバランス装置AAは、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23の充電時および放電時において、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの充電電圧を等しくすることができる。このため、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23の充電時だけでなく放電時においても、これら2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの充電電圧を正確に均一化させることができ、セルバランスを安定させることができる。
【0088】
また、セルバランス装置AAは、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの充電電圧を検出することなく、動作する。このため、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの充電電圧を監視する必要がないため、充電電圧を監視する素子や回路が不要であり、セルバランス装置AAを低コスト化および小型化することができる。
【0089】
また、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23の充電時および放電時において、これら2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23の充電電圧に差が生じるのを抑制できるので、一時的に劣化領域に達してしまうのを防止して、これら2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23の劣化を抑制できる。
【0090】
また、制御部50から出力される制御信号のデューティ比が50%であるため、第1期間と第2期間とを等しい時間で交互に設けることができる。ここで、第1期間とは、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの一端と、1次巻線W11〜W13、W21〜W23のそれぞれの一端と、が接続されるとともに、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの他端と、1次巻線W11〜W13、W21〜W23のそれぞれの他端と、が接続される期間のことである。また、第2期間とは、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの一端と、1次巻線W11〜W13、W21〜W23のそれぞれの他端と、が接続されるとともに、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの他端と、1次巻線W11〜W13、W21〜W23のそれぞれの一端と、が接続される期間のことである。このため、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの充電電圧をより正確に均一化させることができる。
【0091】
また、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれの充電電圧を均一化させる手法として、これら2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれに対して、抵抗を1つずつ並列接続することが考えられる。ところが、この手法によれば、抵抗での放電により電力損失が大きくなってしまうとともに、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれに流すことのできる電流が抵抗により制限されてしまう。これに対して、セルバランス装置AAには、トランスT1、T2は設けられているが、抵抗は設けられていない。このため、電力損失を低減できる。また、トランスT1、T2に設けられた1次巻線W11〜W13、W21〜W23および2次巻線W15、W25の抵抗値は、抵抗の抵抗値と比べて大幅に小さいため、トランスT1、T2により制限される電流は、抵抗により制限される電流と比べて大幅に小さくなる。このため、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23のそれぞれに対して上述のように抵抗を1つずつ並列接続した場合と比べて、2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23に流すことのできる電流を大きくすることができる。
【0092】
また、制御部50から出力される制御信号のデューティ比が50%である。このため、制御信号の電圧レベルに応じて反転する、1次巻線W11〜W13、W21〜W23および2次巻線W15、W25のそれぞれの一端の電圧の極性は、周期的に反転することとなる。したがって、トランスT1、T2が飽和してしまうのを防止することができる。
【0093】
また、1次巻線W11〜W13のそれぞれと2次巻線W15とは、同一の鉄心に巻回されている。このため、1次巻線W11〜W13のそれぞれと2次巻線W15とが鉄心に巻回されていない場合、すなわち1次巻線W11〜W13のそれぞれと2次巻線W15とが空心である場合と比べて、これら1次巻線W11〜W13のそれぞれと2次巻線W15とで発生する磁束を安定させることができる。また、1次巻線W21〜W23のそれぞれと2次巻線W25とも、同一の鉄心に巻回されているため、1次巻線W21〜W23のそれぞれと2次巻線W25とが鉄心に巻回されていない場合と比べて、これら1次巻線W21〜W23のそれぞれと2次巻線W25とで発生する磁束を安定させることができる。したがって、セルバランスをより高精度に安定させることができるとともに、負荷Loadの電気エネルギーを2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23により高精度に回生させることができる。
【0094】
(第2実施形態)
[セルバランス装置BBの構成]
図7は、本発明の第2実施形態に係る電力変換回路1Aと、セルバランス回路30と、を備えるセルバランス装置BBの回路図である。セルバランス装置BBは、直列接続された2次電池BT31〜BT33のそれぞれの充電電圧を均一化する。なお、セルバランス装置BBにおいて、図5に示したセルバランス装置AAと同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0095】
2次電池BT31〜BT33は、図5に示した2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23と同様に、負荷Loadの要求に応じて負荷Loadに電力を供給することで放電される。また、2次電池BT31〜BT33は、図5に示した2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23と同様に、図示しない充電回路に接続されており、この充電回路により充電されたり、負荷Loadからの電気エネルギーの回生により充電されたりする。
【0096】
セルバランス装置BBは、電力変換回路1Aと、セルバランス回路30と、制御部50Aと、を備える。
【0097】
<電力変換回路1Aの構成>
電力変換回路1Aは、NチャネルMOSFETで構成されるスイッチ素子Q4およびキャパシタCD3を備える。スイッチ素子Q4のドレインには、後述の2次巻線W35の他端が接続され、スイッチ素子Q4のソースには、負荷Loadの他端と、キャパシタCD3の他方の電極と、が接続される。後述の2次巻線W35の一端には、負荷Loadの一端と、キャパシタCD3の一方の電極と、が接続される。
【0098】
<セルバランス回路30の構成>
セルバランス回路30は、2次電池BT31〜BT33と対に設けられ、充放電部31〜33と、トランスT3と、を備える。トランスT3は、1次巻線W31〜W33と、上述の2次巻線W35と、を備える。1次巻線W31〜W33のそれぞれと2次巻線W35とは、同一の鉄心に巻回されており、1次巻線W31〜W33のそれぞれの巻数は等しい。
【0099】
充放電部31は、2次電池BT31および1次巻線W31と対に設けられ、NチャネルMOSFETで構成されるスイッチ素子Q1を備える。スイッチ素子Q1のドレインには、1次巻線W31の他端が接続され、スイッチ素子Q1のソースには、2次電池BT31の他端が接続され、スイッチ素子Q1のゲートには、制御部50Aが接続される。2次電池BT31の一端には、1次巻線W31の一端が接続される。
【0100】
充放電部32は、2次電池BT32および1次巻線W32と対に設けられ、NチャネルMOSFETで構成されるスイッチ素子Q2およびキャパシタCD1を備える。スイッチ素子Q2のドレインには、1次巻線W32の他端が接続され、スイッチ素子Q2のソースには、2次電池BT32の他端が接続され、スイッチ素子Q2のゲートには、キャパシタCD1を介して制御部50Aが接続される。2次電池BT32の一端には、1次巻線W32の一端が接続される。
【0101】
充放電部33は、2次電池BT33および1次巻線W33と対に設けられ、NチャネルMOSFETで構成されるスイッチ素子Q3およびキャパシタCD2を備える。スイッチ素子Q3のドレインには、1次巻線W33の他端が接続され、スイッチ素子Q3のソースには、2次電池BT33の他端が接続され、スイッチ素子Q3のゲートには、キャパシタCD2およびキャパシタCD1を介して制御部50Aが接続される。2次電池BT33の一端には、1次巻線W33の一端が接続される。
【0102】
[セルバランス装置BBの動作]
以上の構成を備えるセルバランス装置BBは、図5に示したセルバランス装置AAと同様に、2次電池BT31〜BT33の充放電時において、上述の充電モード、放電モード、および回生モードのうちいずれかで動作する。また、セルバランス回路30により、図5に示したセルバランス回路10、20と同様に、2次電池BT31〜BT33のうち少なくとも1つの充電電圧が他の充電電圧と異なれば、2次電池BT31〜BT33に電流を流して、2次電池BT31〜BT33のそれぞれの充電電圧を均一化する。
【0103】
<2次電池の充電電圧の均一化>
制御部50Aは、2次電池BT31〜BT33の充放電時において、デューティ比が50%の第1制御信号を出力するとともに、第1制御信号の極性を反転させた第2制御信号を出力する。第1制御信号は、スイッチ素子Q1〜Q3のそれぞれのゲートに入力され、第2制御信号は、スイッチ素子Q4のゲートに入力される。これによれば、スイッチ素子Q1〜Q3と、スイッチ素子Q4と、が同期制御され、スイッチ素子Q1〜Q3がターンオンするタイミングで、スイッチ素子Q4がターンオフするとともに、スイッチ素子Q1〜Q3がターンオフするタイミングで、スイッチ素子Q4がターンオンする。
【0104】
第1制御信号の電圧レベルがHレベルの場合には、スイッチ素子Q1〜Q3がオン状態であり、1次巻線W31〜W33のそれぞれに、2次電池BT31〜BT33のそれぞれの充電電圧が印加されることとなる。これによれば、図5に示した2次電池BT11〜BT13、BT21〜BT23と同様に、2次電池BT31〜BT33のそれぞれの充電電圧が等しくなる。また、2次巻線W35の両端電圧は、1次巻線W31〜W33のそれぞれの両端電圧に応じて変化する。
【0105】
<充電モード>
上述の充電モードでは、セルバランス装置BBは、セルバランス装置AAと同様に、図示しない充電回路により、2次電池BT31〜BT33のそれぞれを充電する。
【0106】
<放電モード>
第1制御信号の電圧レベルがHレベルからLレベルに変化した場合には、スイッチ素子Q1〜Q3がターンオフし、1次巻線W31〜W33のそれぞれにフライバック電圧が生じる。ここで、第1制御信号の電圧レベルがHレベルからLレベルに変化したタイミングで、第2制御信号の電圧レベルがLレベルからHレベルに変化し、スイッチ素子Q4がターンオンする。
【0107】
ここで、2次巻線W35の他端を基準とした一端の電圧、すなわち2次巻線W35の両端電圧をVW35とする。すると、2次巻線W35の両端電圧VW35と、負荷Loadの両端電圧Vioと、が以下の式(6)を満たす場合には、放電モードとなる。
【0108】
【数6】

【0109】
上述の式(6)を満たす場合、すなわち放電モードでは、オン状態のスイッチ素子Q4を介して、2次電池BT31〜BT33のそれぞれから負荷Loadに電力が供給され、2次電池BT31〜BT33が放電されることとなる。
【0110】
<回生モード>
第1制御信号の電圧レベルがLレベルからHレベルに変化した場合には、スイッチ素子Q1〜Q3がターンオンする。ここで、第1制御信号の電圧レベルがLレベルからHレベルに変化したタイミングで、第2制御信号の電圧レベルがHレベルからLレベルに変化し、スイッチ素子Q4がターンオフし、2次巻線W35にフライバック電圧が生じる。
【0111】
ここで、2次巻線W35の両端電圧VW35と、負荷Loadの両端電圧Vioと、が以下の式(7)を満たす場合には、回生モードとなる。
【0112】
【数7】

【0113】
上述の式(7)を満たす場合、すなわち回生モードでは、スイッチ素子Q1〜Q3の各ボディーダイオードを介して、負荷Loadから2次電池BT31〜BT33に電気エネルギーが回生され、2次電池BT31〜BT33が充電されることとなる。
【0114】
以上の電力変換回路1Aによれば、以下の効果を奏することができる。
【0115】
負荷Loadの両端電圧Vioが2次巻線W35の両端電圧VW35より高い状態において、2次巻線W35と負荷Loadとを接続した状態から切断した状態にすることができる。これによれば、負荷Loadの電気エネルギーにより2次巻線W35にフライバック電圧を生じさせ、負荷Loadの電気エネルギーを2次電池BT31〜BT33に回生させて、これら2次電池BT31〜BT33を充電することができる。このため、2次電池BT31〜BT33の充電を上述の充電モードで行う時間を短縮することができるので、2次電池BT31〜BT33を充電する際の消費電力を削減することができる。
【0116】
また、以上の電力変換回路1Aを備えるセルバランス装置BBによれば、図5に示したセルバランス装置AAが奏することのできる効果と同様の効果を奏することができる。
【0117】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0118】
例えば、上述の実施形態では、3つの2次電池が直列接続されている場合ついて説明したが、これに限らない。例えば、4つの2次電池が直列接続されている場合や、5つの2次電池が直列接続されている場合に対しても、本発明の電力変換回路を適用することができる。
【0119】
また、上述の実施形態では、3つの2次電池を直列接続したものが2組ある場合について説明したが、これに限らない。例えば、1組ある場合や、3組ある場合に対しても、本発明の電力変換回路を適用することができる。
【0120】
また、上述の実施形態では、1次巻線W11〜W13のそれぞれと2次巻線W15とや、1次巻線W21〜W23のそれぞれと2次巻線W25とや、1次巻線W31〜W33のそれぞれと2次巻線W35とについて、同一の鉄心に巻回されているものとしたが、これに限らず、例えば鉄心がないものとしてもよいし、互いに異なる鉄心に巻回されるものとしてもよい。
【0121】
また、上述の実施形態において、2次電池BT11〜BT13とセルバランス回路10とを一体に設けたり、2次電池BT21〜BT23とセルバランス回路20とを一体に設けたり、2次電池BT31〜BT33とセルバランス回路30とを一体に設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0122】
1、1A;電力変換回路
10、20、30、100、100A、100B;セルバランス回路
11〜13、21〜23、31〜33;充放電部
50、50A;制御部
AA、BB;セルバランス装置
BT1、BT2、BT11〜BT13、BT21〜BT23;2次電池
BUF、BUF1〜BUF3;バッファ
INV、INV1〜INV3;インバータ
T、T1、T2、T3;トランス
Load;負荷
Q1〜Q4;スイッチ素子
SW1、SW2;スイッチ
W1、W2;巻線
W11〜W13、W21〜W23;1次巻線
W15、W25;2次巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスが有する2次巻線と、充放電機能を有する負荷と、を断続するスイッチ手段を備え、
前記トランスは、前記2次巻線と、2次電池に接続される1次巻線と、を備えることを特徴とする電力変換回路。
【請求項2】
前記2次電池は、複数設けられており、
前記トランスは、前記1次巻線を、前記複数の2次電池と対に複数備えることを特徴とする請求項1に記載の電力変換回路。
【請求項3】
前記複数の2次電池は、直列接続されることを特徴とする請求項2に記載の電力変換回路。
【請求項4】
前記複数の2次電池は、複数組設けられており、
前記トランスは、前記複数の2次電池の組数と同数設けられており、
前記複数のトランスのそれぞれが有する2次巻線は、並列接続されることを特徴とする請求項2または3に記載の電力変換回路。
【請求項5】
前記1次巻線および前記2次巻線は、鉄心に巻回されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電力変換回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−253999(P2012−253999A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221151(P2011−221151)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】