説明

電力変換装置および太陽光発電システム

【課題】入力コンデンサ電圧および直流母線コンデンサ電圧のモニタを不要としつつ、導通損失を低減すること。
【解決手段】入力コンデンサ2の正極側から直流母線コンデンサ4の正極側に向かって順方向になるようにバイパスダイオード12を昇圧回路3に並列に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力変換装置および太陽光発電システムに関し、特にDC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーコンディショナでは、太陽電池や燃料電池などで発生する直流電圧を必要な電圧に昇圧し、その昇圧電圧を交流電圧に変換して、交流機器で消費させたり、電力系統に逆潮流させたりしている。
【0003】
昇圧電圧は電力系統の電圧値やインバータ方式により決まる。また、太陽電池で発電する電圧の大きさによっては、昇圧回路で昇圧する必要のない条件が発生する。
【0004】
一般的な昇圧回路は、昇圧用半導体スイッチと、ダイオードと、リアクトルにより構成される。この昇圧回路では、昇圧回路の動作を停止しても、ダイオードとリアクトルに電流が流れ続けるため、導通損失が発生する。
【0005】
また、特許文献1には、太陽光電圧をチョッパ回路にて昇圧して生成し、太陽光電圧が所定の電圧を超えるときチョッパ回路の昇圧動作を停止すると共に、並列接続されたバイパスリレーにてチョッパ回路内のリアクトルおよびダイオードをバイパスすることで、昇圧に係る損失を低減し、さらにチョッパ回路内部品の導通損失をなくす技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−238629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術によれば、バイパスリレーの導通時に入力コンデンサ電圧と直流母線コンデンサ電圧との差が3V程度以上あると、バイパスリレーに大電流が流れ、バイパスリレーの接点が溶着故障することがあるという問題があった。
【0008】
一方、バイパスリレーに大電流が流れるのを防止するには、入力コンデンサ電圧に対して直流母線コンデンサ電圧を高精度に追従させる必要がある。このため、入力コンデンサ電圧と直流母線コンデンサ電圧とを測定するために高精度なセンサが必要となり、バイパスリレーを導通させるための設備と制御も複雑化するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、入力コンデンサ電圧および直流母線コンデンサ電圧のモニタを不要としつつ、導通損失を低減することが可能な電力変換装置および太陽光発電システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の電力変換装置は、入力コンデンサ電圧を昇圧する昇圧回路と、前記昇圧回路に前記入力コンデンサ電圧を入力する入力コンデンサと、前記昇圧回路の出力側に接続された直流母線コンデンサと、前記入力コンデンサの正極側から前記直流母線コンデンサの正極側に向かって順方向になるように接続されたバイパスダイオードとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、入力コンデンサ電圧および直流母線コンデンサ電圧のモニタを不要としつつ、導通損失を低減することが可能という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明に係る電力変換装置の実施の形態1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1の電力変換装置の時間に対する入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voとの関係を示す図である。
【図3】図3は、本発明に係る電力変換装置の実施の形態2の概略構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、図3の電力変換装置のSiCダイオードの順方向電圧と順方向電流の温度特性の一例を示す図である。
【図5】図5は、本発明に係る電力変換装置の実施の形態3の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図6(a)は、図5の電力変換装置の時間に対するパイパス電流Ixを示す図、図6(b)は、図5の電力変換装置の時間に対する入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voとの関係を示す図である。
【図7】図7(a)は、本発明に係る電力変換装置の実施の形態4の入力コンデンサ電圧Vinの上昇時におけるパイパス電流Ixと入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voとの関係を示す図、図7(b)は、本発明に係る電力変換装置の実施の形態4の入力コンデンサ電圧Vinの下降時におけるパイパス電流Ixと入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voとの関係を示す図である。
【図8】図8(a)は、本発明に係る電力変換装置の実施の形態5の入力コンデンサ電圧Vinの上昇時におけるパイパス電流Ixと入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voとの関係を示す図、図8(b)は、本発明に係る電力変換装置の実施の形態4の入力コンデンサ電圧Vinの下降時におけるパイパス電流Ixと入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る電力変換装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る電力変換装置の実施の形態1の概略構成を示すブロック図である。図1において、電力変換装置には、入力コンデンサ電圧Vinを昇圧する昇圧回路3が設けられている。そして、昇圧回路3の入力側には入力コンデンサ2が接続され、昇圧回路3の出力側には直流母線コンデンサ4が接続されている。
【0015】
また、入力コンデンサ2の前段には可変直流電源として太陽電池1が接続され、直流母線コンデンサ4の後段にはインバータ回路5を介して交流負荷6が接続されている。この交流負荷6は電力系統であってもよい。
【0016】
昇圧回路3には、昇圧半導体スイッチ7、昇圧リアクトル8および昇圧ダイオード9が設けられている。昇圧リアクトル8と昇圧ダイオード9とは直列に接続され、この直列回路は、入力コンデンサ2の正極側から直流母線コンデンサ4の正極側に向かって昇圧ダイオード9が順方向になるように、入力コンデンサ2の正極側と直流母線コンデンサ4の正極側との間に接続されている。昇圧リアクトル8と昇圧ダイオード9との接続点には昇圧半導体スイッチ7が接続されている。
【0017】
また、入力コンデンサ2の正極側から直流母線コンデンサ4の正極側に向かって順方向になるようにバイパスダイオード12が昇圧回路3に並列に接続されている。
【0018】
太陽電池1の電圧は入力コンデンサ2に充電され、入力コンデンサ電圧Vinが昇圧回路3に入力される。ここで、太陽電池1など自然エネルギーによる発電手段では、直流電圧の変動が大きく、入力コンデンサ2の電圧を安定的に所定の電圧以上に上昇させたり、太陽電池1で発生する直流電圧が高くなり、昇圧動作が不要になったりする条件が発生する。
【0019】
入力コンデンサ電圧Vinを所望の値に昇圧する場合、昇圧半導体スイッチ7がオン/オフ制御される。そして、昇圧半導体スイッチ7がオンの時は、昇圧半導体スイッチ7を介して昇圧リアクトル8に電流が流れ、昇圧半導体スイッチ7がオフの時は、昇圧リアクトル8に流れる電流が直流母線コンデンサ4へ充電されることで、入力コンデンサ電圧Vinが昇圧され、直流母線コンデンサ電圧Voが生成される。
【0020】
直流母線コンデンサ電圧Voはインバータ回路5にて直流から交流に変換されて、交流負荷6へ供給される。例えば、交流負荷6が電力系統の場合は、インバータ回路5が出力する電圧は電力系統電圧により決まる。また、直流母線コンデンサ電圧Voも系統電圧とインバータ回路方式により決まる。また、系統電圧が変動することがあり、これに対応するために直流母線コンデンサ電圧Voの目標値を変える。
【0021】
昇圧回路3は、入力コンデンサ電圧Vinを所望の値に昇圧すると、昇圧半導体スイッチ7をオフし、昇圧動作を停止する。この時、昇圧半導体スイッチ7のスイッチングが止まっても、入力コンデンサ電圧Vinが直流母線コンデンサ電圧Vo+昇圧ダイオード9の順方向電圧より大きいと、昇圧リアクトル6と昇圧ダイオード9に電流は流れる。昇圧リアクトル6と昇圧ダイオード9に電流が流れると、導通損失が発生する。
【0022】
ここで、入力コンデンサ電圧Vinが直流母線コンデンサ電圧Vo+バイパスダイオード12の順方向電圧より大きいと、バイパスダイオード12は導通し、入力コンデンサ電圧Vinが直流母線コンデンサ電圧Voより小さいと、バイパスダイオード12はオフする。
【0023】
バイパスダイオード12が導通している時は、昇圧回路3が停止している。このため、バイパスダイオード12がオフしている時に昇圧回路3は昇圧動作を行う。
【0024】
例えば、入力コンデンサ電圧Vinが直流母線コンデンサ電圧Voより小さく、昇圧回路3が昇圧動作している場合、バイパスダイオード12は非導通状態であるため、昇圧回路3は正常に動作することができる。
【0025】
一方、入力コンデンサ電圧Vinが直流母線コンデンサ電圧Voより大きい場合、昇圧回路3は昇圧する必要がなく、昇圧回路3は昇圧動作を停止する。この時、バイパスダイオード12は導通状態になり、バイパスダイオード12にバイバス電流Ixが流れ、入力コンデンサ電圧Vinが直流母線コンデンサ電圧Vo+バイパスダイオード12の順方向電圧になる。
【0026】
バイパスダイオード12では、入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voの大小関係に応じてスイッチ動作がそれ自体の性質により実施されるため、入力コンデンサ電圧Vinおよび直流母線コンデンサ電圧Voのモニタやバイパスダイオード12の電圧制御を不要としつつ、昇圧リアクトル8と昇圧ダイオード9に流れる電流をバイパスさせることができ、昇圧リアクトル8と昇圧ダイオード9の導通損失を低減することができる。
【0027】
なお、バイパスダイオード12を使う場合、バイパスダイオード12の順方向電圧による導通損失が発生するが、昇圧リアクトル8に電流が流れる分だけ導通損失を低減させることができる。さらに、バイパスダイオード12の順方向電圧を昇圧ダイオード9の順方向電圧より小さくすることで、昇圧ダイオード9の導通損失よりもバイパスダイオード12の導通損失を小さくすることができる。ここで、バイパスダイオード12はスイッチング動作を必要としないため、リカバリー損失が大きくてもよく、昇圧ダイオード9より順方向電圧が低いものを選択することができる。
【0028】
図2は、図1の電力変換装置の時間に対する入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voとの関係を示す図である。図2において、入力コンデンサ電圧Vinが時間と伴に増加するものとする。時刻Aから時刻Bの間は入力コンデンサ電圧Vinが必要な直流母線コンデンサ電圧Voより低いため、図1の昇圧回路3は動作し、入力コンデンサ電圧Vinを所定の値まで増加させる。この状態では入力コンデンサ電圧Vinが直流母線コンデンサ電圧Voより小さいため、バイパスダイオード12はオフし、バイパス電流Ixは流れない。
【0029】
時刻Bから時刻Cの間は、入力コンデンサ電圧Vinが所定の電圧を越えている。そのため、昇圧回路3は昇圧動作する必要がなく停止する。この状態では入力コンデンサ電圧Vinが直流母線コンデンサ電圧Vo+昇圧ダイオード9の順方向電圧より大きくなり、バイパスダイオード12は導通し、バイパス電流Ixが流れる。
【0030】
昇圧回路3が停止の状態で、バイパスダイオード12にバイパス電流Ixを流すことができる。このため、昇圧回路3の動作停止時の導通損失を昇圧リアクトル8と昇圧ダイオード9の導通損失分から、バイパスダイオード12の導通損失分に減少させることができる。さらに、バイパスダイオード12は高い繰り返し周波数でのスイッチングを必要としないため、昇圧ダイオード9に比べて導通損失の少ないダイオードを選択することができ、バイパスダイオード12での損失も低減することができる。
【0031】
実施の形態2.
図3は、本発明に係る電力変換装置の実施の形態2の概略構成を示すブロック図である。図3において、この電力変換装置では図1のパイパスダイオード12としてワイドギャップ半導体ダイオード12a、12bが設けられている。これらのワイドギャップ半導体ダイオード12a、12bは互いに並列に接続されている。なお、ワイドギャップ半導体の材料としては、例えば、SiC、GaNあるいはダイヤモンド用いることができる。
SiCダイオードを並列に使うことにより導通損失を低減できる。
【0032】
ここで、Siダイオードに比べて、ワイドギャップ半導体ダイオード12a、12bはオン抵抗が小さい。このため、パイパスダイオード12としてワイドギャップ半導体ダイオード12a、12bを使用することにより、その導通損失を小さくすることができ、電力変換装置の効率を向上させることができる。
【0033】
また、ワイドギャップ半導体ダイオード12a、12bの順方向電圧は正の温度係数を持っており、ワイドギャップ半導体ダイオード12a、12bの温度が高くなると、順方向電圧が高くなり、電流が流れにくくなる。このため、ワイドギャップ半導体ダイオード12a、12bのどちらか一方に電流が集中すると、電流が集中した方のワイドギャップ半導体ダイオード12a、12bの温度が上昇し、電流が抑制される。この結果、ワイドギャップ半導体ダイオード12a、12bを互いに並列に接続することにより、ワイドギャップ半導体ダイオード12a、12bに流れる電流を均等化することができ、ワイドギャップ半導体ダイオード12a、12bでの損失を低減することができる。
【0034】
図4は、図3の電力変換装置のSiCダイオードの順方向電圧と順方向電流の温度特性の一例を示す図である。図4において、ワイドギャップ半導体ダイオード12a、12bは順方向電圧が正の温度係数であるので、その温度が高くなると、順方向電圧が高くなり、電流が流れにくくなる。
【0035】
このため、ワイドギャップ半導体ダイオード12a、12bを並列に接続することで、ワイドギャップ半導体ダイオード12a、12bに流れる電流を均等化することができ、ワイドギャップ半導体ダイオード12a、12bでの損失を低減することができる。
【0036】
これに対し、シリコンダイオードの順方向電圧は負の温度係数を持っており、シリコンダイオードの温度が高くなると、順方向電圧が低くなり、電流が流れ易くなる。このため、特定のシリコンダイオードに電流が集中すると、そのシリコンダイオードは発熱し、さらに順方向電圧が低くなることから、さらに電流集中が促進され、シリコンダイオードを並列に接続した場合においても、導通損失の改善が図れない。
【0037】
実施の形態3.
図5は、本発明に係る電力変換装置の実施の形態3の概略構成を示すブロック図である。図5において、この電力変換装置では図1のパイパスダイオード12に並列にバイパス補助リレー13が接続されている。
【0038】
また、パイパスダイオード12に流れるバイパス電流Ixを計測する電流計14、バイパス補助リレー13の導通制御を行うリレー制御装置16が設けられている。
【0039】
なお、図5の例では、電流計14は、バイパス補助リレー13の接続点と入力コンデンサ2の正極側との間に接続する方法について説明したが、バイパス補助リレー13の接続点とバイパスダイオード12のアノード端子の間に接続し、バイパスダイオード12だけの電流を測定できるようにしてもよい。電流計14としては、例えば、シャント抵抗、磁場を測定するセンサまたはカレントトランスなどを挙げることができる。また、リレー制御装置16はマイクロコンピュータあるいはDSPにて構成するようにしてもよいし、コンパレータなどのデジタル回路にて構成するようにしてもよい。
【0040】
次に、図5の電力変換装置の動作について説明する。
【0041】
昇圧回路3が停止し、バイパスダイオード12にバイパス電流Ixが流れ始めると、このバイパス電流Ixは電流計14にて計測され、その電流測定値15がリレー制御装置16に送られる。
【0042】
リレー制御装置16では電流測定値15が送られると、バイパス補助リレー制御信号17を出力し、バイパス補助リレー13が導通するように制御する。ここで、バイパス電流Ixが流れる場合、入力コンデンサ電圧Vinが直流母線コンデンサ電圧Vo+バイパスダイオード13の順方向電圧になっている。
【0043】
すなわち、バイパス補助リレー13の両端には、バイパスダイオード12の順方向電圧が掛かる。この時、バイパス補助リレー13の両端の電位差が1V以下であれば、バイパス補助リレー13の接点は破損し難い。
【0044】
一方、バイパスダイオード12の順方向電圧は一般的には0.6V前後である。このため、バイパスダイオード12の導通後にバイパス補助リレー13を導通させると、バイパス補助リレー13の両端の電位差は1V以下となり、バイパス補助リレー13の接点の破損を防止することができる。
【0045】
ここで、バイパスダイオード12にアノードからカソードに向かって順方向電流が流れると、バイパスダイオード12に順方向電圧が発生し、導通損失が発生する。一方、バイパス補助リレー13では、バイパスダイオード12に比べてオン抵抗を小さくすることができ、導通損失を小さくすることができる。
【0046】
このため、バイパスダイオード12の導通後にバイパス補助リレー13を導通させることにより、バイパス補助リレー13の接点の破損を防止しつつ、導通損失をより一層低減させることができる。
【0047】
この時のバイパス補助リレー13の導通できる条件は、バイパスダイオード12にバイパス電流Ixが流れ、バイパスダイオード12のアノードとカソードの電位差が1V以下になった場合である。
【0048】
このため、電流計14にてバイパス電流Ixを計測することにより、バイパスダイオード12の導通を正確に監視することができ、バイパス補助リレー13が導通タイミングを精度よく設定することができる。このため、バイパス補助リレー13に過電流が流れるのを防止することができ、バイパス補助リレー13の損傷を回避することができる。
【0049】
図6(a)は、図5の電力変換装置の時間に対するパイパス電流Ixを示す図、図6(b)は、図5の電力変換装置の時間に対する入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voとの関係を示す図である。
【0050】
図6において、バイパスダイオード12のアノードとカソードの電位差が1V以下になった場合では、バイパス電流Ixの電流ピークを抑えることができ、バイパス補助リレー13の損傷を回避することができる。
【0051】
なお、上述した実施の形態では、バイパスダイオード12に流れるパイパス電流Ixを計測する電流計14を設け、電流計14にてパイパス電流Ixが検出された時にバイパス補助リレー13を導通させる方法について説明したが、入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voを計測する電圧計を設け、入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voとの差が1V程度以下になった時にバイパス補助リレー13を導通させるようにしてもよい。
【0052】
実施の形態4.
図7(a)は、本発明に係る電力変換装置の実施の形態4の入力コンデンサ電圧Vinの上昇時におけるパイパス電流Ixと入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voとの関係を示す図、図7(b)は、本発明に係る電力変換装置の実施の形態4の入力コンデンサ電圧Vinの下降時におけるパイパス電流Ixと入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voとの関係を示す図である。
【0053】
図7(a)および図7(b)において、入力コンデンサ電圧Vinが時間的に上昇したと仮定して、入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voが等しくなり、さらに入力コンデンサ電圧Vinが上昇した点に、バイパスリレー導通電圧18およびバイパスリレー解列電圧19を設定する。
【0054】
そして、入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voが等しくなると、パイパス電流Ixが流れる。さらに、入力コンデンサ電圧Vinがバイパスリレー導通電圧18を越えると、図5のリレー制御装置16からバイパス補助リレー制御信号17が出力され、バイパス補助リレー13が導通する。
【0055】
また、図7(b)に示すように、入力コンデンサ電圧Vinが下降し、入力コンデンサ電圧Vinがバイパスリレー解列電圧19を下回ると、バイパス補助リレー制御信号17が遮断され、バイパス補助リレー13が解列する。
【0056】
これにより、バイパスダイオード12に電流が流れた状態でバイパス補助リレー13を導通させることができ、バイパス補助リレー13を破壊するような突入電流を防ぐことができ、導通損失の少ない電力変換装置が期待できる。
【0057】
すなわち、直流母線コンデンサ電圧Voに対して入力コンデンサ電圧Vinが高くなった状態が、バイパスダイオード12に電流が流れている状態である。この状態をリレー制御装置16で確認し、バイパス補助リレー13を導通させることにより、バイパス補助リレー13に過電流が発生することがなく、バイパス補助リレー13の損傷を回避させることができる。
【0058】
また、入力コンデンサ電圧Vinをバイパスリレー導通電圧18およびバイパスリレー解列電圧19と比較することにより、直流母線コンデンサ電圧Voは直接測定する必要がなくなり、バイパス補助リレー13の制御を容易に行うことができる。
【0059】
実施の形態5.
図8(a)は、本発明に係る電力変換装置の実施の形態5の入力コンデンサ電圧Vinの上昇時におけるパイパス電流Ixと入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voとの関係を示す図、図8(b)は、本発明に係る電力変換装置の実施の形態4の入力コンデンサ電圧Vinの下降時におけるパイパス電流Ixと入力コンデンサ電圧Vinと直流母線コンデンサ電圧Voとの関係を示す図である。
【0060】
図8において、図7のバイパスリレー導通電圧18とバイパスリレー解列電圧19の代わりにバイパスリレー導通電圧18´とバイパスリレー解列電圧19´が設定されている。入力コンデンサ電圧Vinの変化ヒステリシス動作が可能になるように、バイパスリレー導通電圧18´とバイパスリレー解列電圧19´とは互いに異なっている。
【0061】
これにより、バイパスダイオード12に充分電流が流れてからバイパス補助リレー13を投入することが可能となるとともに、バイパスダイオード12に流れる電流がなくなる前にバイパス補助リレー13を解列させることができる。このため、入力コンデンサ電圧Vinの変化によるバイパス補助リレー13のチャタリングを防止でき安定した動作が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように本発明に係る電力変換装置は、入力コンデンサ電圧および直流母線コンデンサ電圧のモニタを不要としつつ、導通損失を低減することが可能となり、太陽電池や燃料電池などで発生する直流電圧を必要な電圧に昇圧する電力変換装置および太陽光発電システムに適している。
【符号の説明】
【0063】
1 太陽電池
2 入力コンデンサ
3 昇圧回路
4 直流母線コンデンサ
5 インバータ回路
6 交流負荷(電力系統)
7 昇圧半導体スイッチ
8 昇圧リアクトル
9 昇圧ダイオード
12 バイパスダイオード
13 バイパス補助リレー
14 電流計
15 電流測定値
16 リレー制御装置
17 バイパス補助リレー制御信号
18、18´ バイパスリレー導通電圧
19、19´ バイパスリレー解列電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力コンデンサ電圧を昇圧する昇圧回路と、
前記昇圧回路に前記入力コンデンサ電圧を入力する入力コンデンサと、
前記昇圧回路の出力側に接続された直流母線コンデンサと、
前記入力コンデンサの正極側から前記直流母線コンデンサの正極側に向かって順方向になるように接続されたバイパスダイオードとを備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記バイパスダイオードはワイドギャップ半導体ダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
複数のワイドギャップ半導体ダイオードが並列に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記入力コンデンサの前段に接続された可変直流電源と、
前記直流母線コンデンサの後段に接続されたインバータ回路とを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記バイパスダイオードに並列に接続されたバイパス補助リレーをさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記バイパスダイオードの導通後に前記バイパス補助リレーを導通させるリレー制御装置をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記バイパスダイオードに流れる電流を計測する電流計をさらに備え、
前記リレー制御装置は、前記バイパスダイオードに流れる電流に基づいて、前記バイパス補助リレーを導通させることを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
入力コンデンサ電圧と直流母線コンデンサ電圧を計測する電圧計をさらに備え、
前記リレー制御装置は、前記入力コンデンサ電圧と前記直流母線コンデンサ電圧との差に基づいて、前記バイパス補助リレーを導通させることを特徴とする請求項6または7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
入力コンデンサ電圧を計測する電圧計をさらに備え、
前記リレー制御装置は、前記入力コンデンサ電圧をバイパスリレー導通電圧およびバイパスリレー解列電圧と比較し、前記入力コンデンサ電圧が前記バイパスリレー導通電圧より高い場合、前記バイパス補助リレーを導通させ、前記入力コンデンサ電圧が前記バイパスリレー解列電圧より低い場合、前記バイパス補助リレーを解列させることを特徴とする請求項6または7に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記バイパスリレー導通電圧と前記バイパスリレー解列電圧を互いに異ならせることを特徴とする請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の電力変換装置を有するパワーコンディショナを備えることを特徴とする太陽光発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−65441(P2012−65441A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207244(P2010−207244)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】