電力変換装置のスイッチング素子駆動回路
【課題】スイッチング損失を低減しつつサージ電圧やノイズの発生を効果的に抑えることができる電力変換装置のゲート駆動回路を提供する。
【解決手段】スイッチング素子と、電流指令値に追従して前記スイッチング素子を駆動し、該スイッチング素子に流れる主電流を制御するスイッチング素子駆動部とを有する電力変換装置のスイッチング素子駆動回路であって、前記スイッチング素子駆動部は、前記電流指令値の大きさによって前記駆動電圧の時間変化率を制御する駆動電圧制御部を備えた。
【解決手段】スイッチング素子と、電流指令値に追従して前記スイッチング素子を駆動し、該スイッチング素子に流れる主電流を制御するスイッチング素子駆動部とを有する電力変換装置のスイッチング素子駆動回路であって、前記スイッチング素子駆動部は、前記電流指令値の大きさによって前記駆動電圧の時間変化率を制御する駆動電圧制御部を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子とその駆動回路を有する電力変換装置のスイッチング素子駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商用交流を整流して直流出力電圧を得るコンバータとして高調波の発生を抑止しつつ入力力率を改善するアクティブコンバータが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。この回路は、例えば図9に示すように交流電源1の交流電圧を整流して直流電圧を得る電力変換回路2の後段に、スイッチング素子が接続され、このスイッチング素子を駆動する駆動回路3を備えたものでPFC(Power Factor Correction)コンバータとも呼ばれている。
図9において整流回路は、四つのダイオードD1〜D4によってブリッジ整流回路を構成している。このブリッジ整流回路の直流出力側には、リアクトルL1、スイッチング素子[MOSFET(Q1)]および電流検出用のシャント抵抗Rsによる直列回路が接続される。またMOSFET(Q1)のドレイン−ソース間には、ダイオードD5と平滑コンデンサC1からなる直列回路が接続されている。そして平滑コンデンサC1の両端から得られる平滑された直流電圧が負荷RLに与えられるようになっている。
【0003】
次に駆動回路3は、MOSFET(Q1)のゲートに与える駆動電圧を制御してスイッチングする。この駆動回路3には、負荷RLに印加される直流電圧検出値Vdを検出し、この直流電圧検出値Vdと出力電圧指令値Vaとを比較する比較器4が設けられている。この比較器4で比較され、その結果が差電圧[Va−Vd]として出力されて比例・積分回路5に与えられる。
比例・積分回路5の出力電圧Vbは、乗算器6によって整流回路の出力電圧検出値Vrとの電圧積がとられ、電流指令値Vcとなって出力される。
整流回路で整流された直流電流は、シャント抵抗Rsによって検出され、検出電流値に応じた電圧値に変換された電流検出値Vsが得られる。この電流検出値Vsと電流指令値Vcとが比較器7によって比較される。この比較器7で比較された結果が差電圧[Vc−Vs]として出力され、比例・積分回路8に与えられる。
【0004】
比例・積分回路8の出力は、コンパレータ10によって三角波発生部9の出力と比較され、MOSFET(Q1)ゲート駆動信号であるPWM信号が生成される。
一方、MOSFET(Q1)の近傍には、このMOSFET(Q1)の温度を検出し、その検出温度値を出力する温度検出部11が設けられている。この温度検出部11が検出した検出温度値が所定の温度閾値を超えていないかどうかを比較するためコンパレータ12に与えられる。このコンパレータ12に設定される所定の温度閾値は、コンパレータ12の正入力端子に接続された電圧Vtによって与えられる。このコンパレータ12は、温度検出部11が検出した検出温度値が所定の温度閾値を超えていないときゲート駆動信号の出力を許可する役割を担っている。
そして二つのコンパレータ10,12からともに信号が出力されたことをAND回路13が検知するとベース及びエミッタがそれぞれ接続されたNPNトランジスタTr1とPNPトランジスタTr2のベースにゲート駆動信号を与える。トランジスタTr1のコレクタには、ゲート駆動電圧Vgが接続され、トランジスタTr2のコレクタは接地されている。したがってAND回路13からMOSFET(Q1)をオンする駆動信号(充電駆動信号)がこれらのトランジスタTr1,Tr2に与えられると、トランジスタTr1からゲート駆動電圧Vgがゲート抵抗Rg1を介してMOSFET(Q1)に与えられる。
【0005】
次いでAND回路13からゲートをオフする駆動信号(放電駆動信号)がトランジスタTr1,Tr2に与えられると、MOSFET(Q1)のゲートに蓄積された電荷がゲート抵抗Rg1を介してトランジスタTr2によって接地、放電される。ここにゲート抵抗Rg1は、ゲートの充放電電流を制限するものである。
このように構成された電力変換装置(コンバータ)は、ゲート抵抗Rg1の抵抗値に依存してゲート電圧の時間変化率が変化し、それゆえMOSFET(Q1)のスイッチング特性も変化する。つまりゲート抵抗Rg1の抵抗値を小さくするとゲート電流が増加する。このためスイッチング素子のゲート電圧が時間的に急峻に変化することになってスイッチングスピードが増加する。したがってスイッチング損失を低減することができる。しかし、その一方でターンオフ時のサージ電圧が増加し、スイッチング時に発生するノイズも増加するという問題が生ずる。
【0006】
逆に、ゲート抵抗Rg1の抵抗値を大きくすると、ゲート電圧の時間変化率が小さくなる。このためスイッチングスピードが遅くなり、スイッチング損失が増加してしまうが、サージ電圧やノイズを低減することが可能となる。
電力変換回路では、一般にスイッチング素子がオンまたはオフする電流値が小さいとき(軽負荷時も含む)から大きいとき(重負荷時も含む)までの全作動範囲でゲート抵抗を変化させることはなく、その抵抗値は一定である。このためゲート抵抗は、最大電流をオフした場合に発生するサージ電圧が耐圧を超えることがないように、あるいは最大負荷時でもノイズが許容値を超えないように抵抗値が選定される。
このため軽負荷時などのスイッチング素子に流れる電流値が小さいときは、許容値に対して発生するサージ電圧やノイズに余裕があるにもかかわらず、最大負荷時に設定したゲート抵抗のために大きなスイッチング損失が発生するという問題がある。
【0007】
またスイッチング素子のスイッチングスピードは、温度にも依存する。すなわち温度が高くなるとスイッチングスピードが遅くなり、逆に温度が低くなるとスイッチングスピードが速くなる。よって、温度が高いほどサージ電圧やノイズも低くなる。
このようにスイッチング素子の温度は動作状態や周囲温度によって変化するため、ゲート抵抗はサージ電圧やノイズにとって最悪条件である低温時において許容値を超えない抵抗値が選定される。このように低温時に適したゲート抵抗が選定すると、高温時ではサージ電圧やノイズに余裕があるにもかかわらず、大きなスイッチング損失が発生するという問題が生ずる。
さらに、サージ電圧やノイズは定常オフ時にスイッチング素子に印加される電圧、即ち直流中間電圧にも依存する。サージ電圧の極大値は直流中間電圧とスイッチング時の跳ね上がり電圧の総和になるため、直流中間電圧が低くければ、例え跳ね上がり電圧が高くなったとしてもスイッチング素子の耐圧を超えることなく、電力変換装置を安全に作動させることができる。その一方でノイズは、スイッチング素子とグランド間に生成される寄生容量が充放電されることによって誘発されるため、スイッチング素子に印加される電圧が高いほど寄生容量を充放電する電流が増加し、発生するノイズも増加する。
【0008】
近年では、直流中間電圧を変化させて装置の制御性能を向上させるPAM制御が用いられるようになり、直流中間電圧が変化するケースが多い。しかし、直流中間電圧が低い時には、サージ電圧のピーク値やノイズが減少するにも関わらず、ゲート抵抗の抵抗値は一定であるため、大きなスイッチング損失が発生する問題がある。
そこで、電流値を検出してゲート抵抗を切り換える手段が試みられている(例えば、特許文献1を参照)。また温度検出値をゲート抵抗の切り換えを行うための判断要素の一つとした駆動回路もある(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−328746号公報
【特許文献2】特開2003−274672号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】仁田旦三、中岡睦雄,「新世代工学シリーズ パワーエレクトロニクス」,第1版,株式会社オーム社,平成17年3月10日,p.161−170
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら特許文献1に記載の電圧形スイッチング素子制御方法及びその装置に用いられている絶縁形の電流検出器は高価であり、電力変換装置のコストが増加するという問題が生ずる。もちろん安価な電流検出器としてシャント抵抗を用いることも可能であるが、シャント抵抗の両端に生ずる電圧は、発生損失を低減させるために微小な電圧値である。このため検出電圧値に僅かなノイズが重畳されると、電力変換装置が誤動作を起こす要因となったり、破損が生じたりするという懸念がある。
また特許文献2に記載の半導体スイッチング装置は、温度検出値をゲート抵抗の切り換えを行うための判断要素の一つとしているが、直流中間電圧の変化に応じてゲート抵抗を切り換えることができず、スイッチングに伴う電力損失を軽減することができない。
本発明は、このような問題を解決するべくなされたもので、その目的とするところは、スイッチング損失を低減しつつノイズの発生を効果的に抑えることができる電力変換装置のゲート駆動回路を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するため本発明の電力変換装置のゲート駆動回路は、スイッチング素子と、電流指令値に追従して前記スイッチング素子を駆動し、該スイッチング素子に流れる主電流を制御するスイッチング素子駆動部とを有する電力変換装置のスイッチング素子駆動回路であって、前記スイッチング素子駆動部は、前記電流指令値の大きさによって前記駆動電圧の時間変化率を制御する駆動電圧制御部を備えることを特徴とするものである。
上述の電力変換装置のゲート駆動回路は、電流指令値に応じてゲート抵抗の抵抗値を制御する駆動電圧制御部によってゲートに印加される駆動電圧の時間変化率を変化させる。
また前記駆動電圧制御部は、前記電流指令値が所定の電流指令閾値よりも大きいときに前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも小さくし、該電流指令値が前記電流指令閾値よりも小さいときに前記駆動電圧の時間変化率を前記時間変化率よりも大きくすることを特徴としている。
【0013】
上述の電力変換装置のゲート駆動回路は、電流指令値が所定の電流指令閾値よりも大きいときにはゲート抵抗の抵抗値を大きくしてゲート電圧の時間変化率を緩やかな変化とし、スイッチングスピードを遅くする。それゆえターンオフ時のサージ電圧を抑制することができる。逆に電流指令値が前記電流指令閾値よりも小さいときには、ゲート抵抗の抵抗値を小さくしてゲート電圧の時間変化率を急峻な変化としてスイッチング損失を低減させる。
あるいは本発明は、直流中間電圧部の電圧値を検出する直流中間電圧検出部と、前記直流中間電圧部に接続されたスイッチング素子と、直流中間電圧指令値に応じて前記スイッチング素子を駆動して前記直流中間電圧部の電圧を制御するスイッチング素子駆動部とを備えた電力変換装置のスイッチング素子駆動回路であって、前記スイッチング素子駆動部は、前記直流中間電圧の指令値または前記直流中間電圧検出部が検出した電圧値が所定の電圧閾値よりも高いとき前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも小さくし、前記直流中間電圧の指令値または前記直流中間電圧検出部が検出した電圧値が前記電圧閾値よりも低いとき前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも大きくする駆動電圧制御部を備えることを特徴とするものである。
【0014】
上述の電力変換装置のゲート駆動回路は、直流中間電圧指令値に応じてゲート抵抗の抵抗値を制御して駆動電圧の時間変化率を変化させる。即ち、直流中間電圧指令値が所定の電圧閾値よりも高いときにはゲート抵抗の抵抗値を大きくしてゲート電圧の時間変化率を緩やかな変化とし、スイッチングスピードを遅くする。それゆえターンオフ時のサージ電圧を抑制することができる。逆に直流中間電圧指令値が所定の電圧閾値よりも低いときには、ゲート抵抗の抵抗値を小さくしてゲート電圧の時間変化率を急峻な変化としてスイッチング損失を低減させる。
あるいは前記スイッチング素子の温度値を検出するスイッチング素子温度検出部を備え、前記駆動電圧制御部は、前記スイッチング素子温度検出部が検出した前記スイッチング素子の温度値が所定の温度閾値よりも高いとき、前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも大きくし、前記スイッチング素子の温度値が所定の温度閾値よりも低いとき前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも小さくすることが望ましい。
【0015】
上述の電力変換装置のゲート駆動回路は、温度が高い時には半導体素子の特性でサージ電圧やノイズの発生が小さくなる特性を利用し、ゲート電圧の変化率を大きく(変化を急峻に)し、高速スイッチングさせてもサージ電圧やノイズの規定値を超えることがなく、スイッチング損失を低減できる。これとは逆に、温度が低い時にはサージ電圧やノイズの発生が大きくなるので上述の電力変換装置のゲート駆動回路は、ゲート電圧の変化率を小さく(緩やかに)してサージ電圧やノイズを規定値を超えないように低減させることができる。
好ましくは前記駆動電圧制御部は、前記電流指令閾値および前記スイッチング素子の温度値によって前記駆動電圧の時間変化率を制御することが望ましい。
上述の電力変換装置のゲート駆動回路は、スイッチング素子の温度値が所定の温度閾値よりも高いときにはゲート抵抗の抵抗値を小さくしてゲート電圧の時間変化率を急峻とし、損失を低減させる。逆にスイッチング素子の温度値が所定の温度閾値よりも低いときときには、ゲート抵抗の抵抗値を大きくしてゲート電圧の時間変化率を緩やかな変化としてノイズを低減させる。
【0016】
あるいは前記駆動電圧制御部は、前記電流指令閾値、前記直流中間電圧の指令値、前記直流中間電圧検出部が検出した電圧値または前記スイッチング素子の温度値の少なくとも二つの値によって前記駆動電圧の時間変化率を変更するものとして構成される。
【発明の効果】
【0017】
上述したように本発明の電力変換装置のスイッチング素子駆動回路は、変換回路の動作や状態に応じてゲート電圧の変化率を切り換えているので効果的にスイッチング損失やノイズを低減させることができる。また本発明の電力変換装置のスイッチング素子駆動回路は、電流指令値の大きさによってゲート電圧の変化率を切り換えるタイミングを決定しているので、ノイズなどによる誤動作を防ぐことができ、信頼性の高い電力変換装置を提供できる。さらに本発明は、温度だけでなく直流中間電圧も加味してゲート電圧の変化率を調整できるので、本発明の電力変換装置のスイッチング素子駆動回路は、電力変換装置の稼動状況に応じて、より最適なゲート駆動が可能となり、スイッチング損失とノイズを低減できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1に係る電力変換装置のスイッチング素子駆動回路の概略構成を示す図。
【図2】図1に示す電力変換装置におけるブリッジ整流回路の電圧とゲート抵抗切換え信号の関係を示す図。
【図3】本発明の実施例2に係る電力変換装置のスイッチング素子駆動回路の概略構成を示す図。
【図4】図3に示す電力変換装置における直流中間電圧とゲート抵抗切換え信号の関係を示す図。
【図5】本発明の実施例3に係る電力変換装置のスイッチング素子駆動回路の概略構成を示す図。
【図6】本発明の別の実施例に係る電力変換装置のスイッチング素子駆動回路におけるゲート部分の概略構成を示す図。
【図7】本発明の更に別の実施例に係る電力変換装置のスイッチング素子駆動回路におけるゲート部分の概略構成を示す図。
【図8】図7に示す本発明の更に別の実施例に係る電力変換装置におけるブリッジ整流回路の電圧とゲート切換え信号の関係を示す図。
【図9】従来の電力変換装置のスイッチング素子駆動回路の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0020】
図1,2は本発明の実施例1を示すものであって、図中、図9と同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成は図に示す従来のものと同様であるので説明を略述する。
さて図1に示す本発明の実施例1に係る電力変換装置のスイッチング素子回路が従来のものと異なるところは、ゲート抵抗Rg2とスイッチSWの直列回路をゲート抵抗Rg1と並列に接続し、乗算器6から出力される電流指令値Vcが所定の設定値Vthを上回ったとき、このスイッチSWをオンにするコンパレータ20を有する駆動電圧制御部を備えた点にある。
このような特徴ある本発明の電力変換装置のスイッチング素子回路についてより詳細に説明する。
【0021】
まず電流指令値Vcは、四つのダイオードD1〜D4で構成されるブリッジ整流回路の出力電圧検出値Vrを比例・積分回路5の出力電圧Vbと乗算することによって得られる。ちなみに図1に示す交流電源1は、100Vや200Vなどの商用交流であり、これを単に乗算すると高い電圧値になる。このため特に図示しないが電流指令値Vcは、数ボルト程度の値に変換されて乗算器6から出力される。
ブリッジ整流回路から出力される直流電流ILは、シャント抵抗Rsの両端に生ずる電圧降下によって反転極性で検出され、電流指令値Vcとの差分が零になるようにフィードバック制御される。よってスイッチング周波数成分のリプルを無視すれば直流電流ILは電流指令値Vcに追従するように制御される。またMOSFET(Q1)がオンまたはオフする電流も電流指令値Vcに相当する値となる。
【0022】
次に図2に示すように電流指令値Vcが小さいときには、コンパレータ20の出力電圧(ゲート抵抗切換信号VSEL)がハイレベルとなり、スイッチSWがオンする。すると二つのゲート抵抗Rg1,Rg2が並列に接続されることになるので、合成抵抗値は減少する。したがってゲート抵抗の抵抗値が小さいのでゲート電圧の時間変化率が急峻となり、スイッチング損失を低減することができる。更に電流指令値Vcが小さいときには、MOSFET(Q1)がスイッチングする電流も小さい。このためゲート抵抗を小さくしてもサージ電圧はMOSFET(Q1)の耐圧を超えることなく、安全に動作させることができる。
一方、電流指令値Vcが大きいときには、ゲート抵抗切換信号VSELがローレベルになり、スイッチSWがオフする。するとゲート抵抗Rg1だけとなり、抵抗値が増加する。よって、スイッチングスピードが遅くなり、ターンオフ時のサージ電圧はMOSFET(Q1)耐圧を超えないように抑制される。
【0023】
かくして本発明の実施例1に係る電力変換装置のスイッチング素子回路は、電流指令値Vcが小さい領域でゲート抵抗の抵抗値を小さくしているのでMOSFET(Q1)のスイッチング損失を低減させることができ、電力変換装置の高効率化を図ることができる。また本発明は、電流指令値Vcが大きい領域でゲート抵抗の抵抗値を大きくしているのでターンオフ時にMOSFET(Q1)耐圧を超えるサージ電圧の印加を防ぐことができる。
特に本発明の電力変換装置のスイッチング素子回路は、電流指令値Vcを用いて、その値に応じてゲート抵抗を切り換えている。この電流指令値Vcは交流電源1を全波整流した高電圧を検出することによって生成されるので、多少のノイズが重畳されたとしても相対的にノイズ電圧が小さいので影響を受けることが少ない。更に電流指令値Vcを用いてゲート抵抗の切り換えを行う本発明のスイッチング素子回路は、信頼性が高く、安全に電力変換装置を作動させることができる。
【0024】
また交流電源1の位相(ゼロクロス)を検出し、交流電源1に同期した正弦波全波波形の指令を生成すれば、電流指令値Vcを生成するための電圧検出回路も不用となり、電力変換装置外から受けるノイズの影響をさらに低減することが可能となり、実用上極めて有効である。
【実施例2】
【0025】
図3に本発明の実施例2に係る電力変換装置のスイッチング制御回路の概略構成を示す。この実施例2が上述した実施例1と異なるところは、負荷RLに代えてDC−DCコンバータやインバータなどの変換回路15を接続した点にある。このように構成された電力変換装置にあっては、電力変換回路2の出力電圧が直流中間電圧となり、出力電圧指令値Vaに相当する電圧値に制御される。
スイッチング素子回路は、図4に示すように直流電圧検出値Vdが大きくなると、スイッチSWをオフにしてゲート抵抗を増加させる。逆に直流電圧検出値Vdが小さいときは、スイッチSWをオンにしてゲート抵抗を減少させる
したがって本発明のスイッチング制御回路は、出力電圧が高いときゲート抵抗が増加してMOSFET(Q1)のスイッチングスピードが低下するので、サージ電圧やノイズを効果的に抑制することができるとともに、ターンオフ時におけるサージ電圧が抑制され、スイッチング素子の耐圧を超えることがない。逆に、直流電圧検出値Vdが低くなるとスイッチSWをオンにし、ゲート抵抗を減少させているので、スイッチング損失を低減することができ、電力変換装置を高効率で稼動させることができる。
【0026】
また直流電圧検出値Vdが低いときには出力電圧も低い。このため本発明のスイッチング制御回路は、ゲート抵抗を小さくして跳ね上がり電圧を増加させてもMOSFET(Q1)の耐圧を超えることなく電力変換装置を安全に作動させることができる。
なお、本発明のスイッチング制御回路は、直流電圧検出値Vdの代わりに出力電圧指令値Vaを用いてゲート抵抗切換信号VSELを生成しても同様な効果が得られる。
【実施例3】
【0027】
図5に本発明の実施例3に係る電力変換装置のスイッチング制御回路の概略構成を示す。この実施例3が上述した実施例1,2と異なるところはスイッチング素子の温度依存性に着目し、ゲート抵抗の抵抗値を制御する点にある。
この実施例3は、MOSFET(Q1)の近傍に素子の温度を検出する温度検出部30を備え、この温度検出部30が検出した温度検出値Veが電流指令値Vcや出力電圧(出力電圧指令値Vaまたは直流電圧検出値Vd)とともにゲート抵抗切換部31に入力されている。
例えば、電流や出力電圧が大きい場合でもMOSFET(Q1)の温度が高ければ、ゲート抵抗を小さくしてもサージ電圧やノイズが許容値を超えないことがある。このためゲート電圧の変化率を大きく(変化を急峻に)し、高速スイッチングさせてもサージ電圧やノイズの規定値を超えることがなく、スイッチング損失を低減できる。また、電流値が高く、温度が低くても出力電圧が低ければサージ電圧やノイズは許容値を超えないことがある。このためゲート電圧の変化率を小さく(変化を緩やかに)することで、サージ電圧やノイズを規定値を超えないように低減できる。このようにサージ電圧やノイズは上記3要素の関係で変化する。
【0028】
そこでゲート抵抗切換部31には上記3要素の状態に応じて適切なゲート抵抗を選択するための予め検証したデータを用意しておき、電力変換回路の動作状態によってサージ電圧やノイズの発生を許容値以下に抑えつつスイッチング損失を低減させるゲート抵抗を選択させる。
なお、ゲート抵抗の選択には必ずしも上記3要素全てを用いる必要はなく、仕様に応じて適宜選択してもよい。例えば、スイッチング素子の温度変化がほとんどない場合は、温度による判断要素を削除しても構わない。このような制御は例えばディジタル制御を適用すれば容易に実現可能であり、電流や電圧および温度などを加味した最適なゲート駆動条件が実現でき、電力変換装置におけるサージ電圧やノイズまたはスイッチング損失を低減することができる。
【0029】
また、本実施例ではゲート電圧の変化率を変化させる手段として、ゲート抵抗を切り換える方式を説明したが、図6(図1,3,5の回路図におけるMOSFET(Q1)とゲート抵抗RG1以外を省略)に示すようにMOSFET(Q1)のゲート・ソース間にコンデンサCxとスイッチSWxの直列回路を接続し、そのスイッチをオン・オフさせてゲート電圧の変化率を変化させてもよい。すなわちゲート電圧の変化率を減少させるには、図示しないスイッチ制御回路がスイッチSWxをオンにしてコンデンサCxを充電させればよい。逆にゲート電圧の変化率を増加させるときは、スイッチ制御回路がスイッチSWxをオフし、ゲート・ソース間に存在する寄生容量だけを充電させればよい。
あるいは本発明のスイッチング回路は、複数のゲート抵抗切換回路を用いて段階的にゲート電圧の変化率を変化させてもよい。具体的には、図1,3,5の回路図に示したゲート抵抗RG1,RG2およびスイッチSWからなるゲート抵抗回路を図7(ゲート抵抗回路およびMOSFET(Q1)以外を省略)に示すように三つのゲート抵抗RG1,RG2,RG3を用い、ゲート抵抗RG1にゲート抵抗RG2とスイッチSW2を直列に接続した直列回路を並列に接続し、更にゲート抵抗RG3とスイッチSW3を直列に接続した直列回路を並列に接続する。ここで二つのゲート抵抗RG2,RG3は、[RG2<RG3]であるとする。そしてそれぞれのスイッチSW2,SW3をゲート抵抗切換部がオン・オフ可能なように接続する(特に図示せず)。
【0030】
このように構成された本発明の更に別の実施例に係るスイッチング回路は、図8に示すように電流指令値Vcが第一の電閾値圧Vth2以下の場合にはスイッチSW2をオンして抵抗値の小さなゲート抵抗RG2を導通させる。これによりMOSFET(Q1)のゲートが急速に充電されて電圧変化率が向上する。次に、第一の閾値Vth1<電流指令値Vc<第二の電圧閾値Vth2の状態でゲート抵抗切換部は、スイッチSW2をオフ、スイッチSW3をオンしてゲート抵抗RG3を導通させゲート抵抗を増加させる。するとゲート電圧の変化率は低下する。
電流指令値Vcが第二の電圧閾値Vth3以上のときゲート抵抗切換部は、スイッチSW2,SW3の両方をオフにしてゲート抵抗をRG1だけとし、最も大きなゲート抵抗値にしてゲート電圧の変化率をさらに小さくする。
【0031】
このようにすることでより好ましいゲート電圧の変化をさせることができ、スイッチング損失を低減しつつサージ電圧やノイズの発生を効果的に抑えることが可能となる。
また、本発明のスイッチング回路は、連続的に変化する電流源でゲートを充放電させてもよい。特に図示しないが、この電流源は例えば、一般的なカレントミラー回路で構成され、カレントミラー回路の電圧値を変化させることで連続的に変化する電流源となる。そして予めマイコンやDSPなどに保存された情報から適切な電流値が選択され(ゲート抵抗値切換部に相当する)、D/A変換することよって適切な電流値に相当する電圧を得ることができる。そうして得られた電圧をカレントミラー回路の電圧源とすることで、電圧値と共に電流が変化し、電流値が小さくなればゲート電圧の変化率も小さくなる。逆に、電流値が大きくなればゲート電圧の変化率も増加する。このような電流源を用いてノイズや損失、または跳ね上がり電圧を低減させるようにゲート電圧の変化率を変化させれば良い。
【0032】
このように本発明は、ゲート電圧の変化率を変化させる手段に限定されるものではない。また上述した実施例はスイッチング素子としてMOSFETで説明したが、IGBTやGTO等のスイッチング素子にも適用可能である。更に本発明は上述した電力変換装置の他に、電流指令値を用いてスイッチング素子を制御する変換装置や直流中間電圧を変化させる電力変換装置の全てに本発明を適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1 交流電源
2 電力変換回路
3 駆動回路
Q1 MOSFET
D1-D5 ダイオード
Rg1,Rg2 ゲート抵抗
RL 負荷
Rs シャント抵抗
SW スイッチ
Tr1,Tr2 トランジスタ
Va 出力電圧指令値
Vb 出力電圧
Vc 電流指令値
Vd 直流電圧検出値
Vg ゲート駆動電圧
Vr 出力電圧検出値
VSEL ゲート抵抗切換信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子とその駆動回路を有する電力変換装置のスイッチング素子駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商用交流を整流して直流出力電圧を得るコンバータとして高調波の発生を抑止しつつ入力力率を改善するアクティブコンバータが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。この回路は、例えば図9に示すように交流電源1の交流電圧を整流して直流電圧を得る電力変換回路2の後段に、スイッチング素子が接続され、このスイッチング素子を駆動する駆動回路3を備えたものでPFC(Power Factor Correction)コンバータとも呼ばれている。
図9において整流回路は、四つのダイオードD1〜D4によってブリッジ整流回路を構成している。このブリッジ整流回路の直流出力側には、リアクトルL1、スイッチング素子[MOSFET(Q1)]および電流検出用のシャント抵抗Rsによる直列回路が接続される。またMOSFET(Q1)のドレイン−ソース間には、ダイオードD5と平滑コンデンサC1からなる直列回路が接続されている。そして平滑コンデンサC1の両端から得られる平滑された直流電圧が負荷RLに与えられるようになっている。
【0003】
次に駆動回路3は、MOSFET(Q1)のゲートに与える駆動電圧を制御してスイッチングする。この駆動回路3には、負荷RLに印加される直流電圧検出値Vdを検出し、この直流電圧検出値Vdと出力電圧指令値Vaとを比較する比較器4が設けられている。この比較器4で比較され、その結果が差電圧[Va−Vd]として出力されて比例・積分回路5に与えられる。
比例・積分回路5の出力電圧Vbは、乗算器6によって整流回路の出力電圧検出値Vrとの電圧積がとられ、電流指令値Vcとなって出力される。
整流回路で整流された直流電流は、シャント抵抗Rsによって検出され、検出電流値に応じた電圧値に変換された電流検出値Vsが得られる。この電流検出値Vsと電流指令値Vcとが比較器7によって比較される。この比較器7で比較された結果が差電圧[Vc−Vs]として出力され、比例・積分回路8に与えられる。
【0004】
比例・積分回路8の出力は、コンパレータ10によって三角波発生部9の出力と比較され、MOSFET(Q1)ゲート駆動信号であるPWM信号が生成される。
一方、MOSFET(Q1)の近傍には、このMOSFET(Q1)の温度を検出し、その検出温度値を出力する温度検出部11が設けられている。この温度検出部11が検出した検出温度値が所定の温度閾値を超えていないかどうかを比較するためコンパレータ12に与えられる。このコンパレータ12に設定される所定の温度閾値は、コンパレータ12の正入力端子に接続された電圧Vtによって与えられる。このコンパレータ12は、温度検出部11が検出した検出温度値が所定の温度閾値を超えていないときゲート駆動信号の出力を許可する役割を担っている。
そして二つのコンパレータ10,12からともに信号が出力されたことをAND回路13が検知するとベース及びエミッタがそれぞれ接続されたNPNトランジスタTr1とPNPトランジスタTr2のベースにゲート駆動信号を与える。トランジスタTr1のコレクタには、ゲート駆動電圧Vgが接続され、トランジスタTr2のコレクタは接地されている。したがってAND回路13からMOSFET(Q1)をオンする駆動信号(充電駆動信号)がこれらのトランジスタTr1,Tr2に与えられると、トランジスタTr1からゲート駆動電圧Vgがゲート抵抗Rg1を介してMOSFET(Q1)に与えられる。
【0005】
次いでAND回路13からゲートをオフする駆動信号(放電駆動信号)がトランジスタTr1,Tr2に与えられると、MOSFET(Q1)のゲートに蓄積された電荷がゲート抵抗Rg1を介してトランジスタTr2によって接地、放電される。ここにゲート抵抗Rg1は、ゲートの充放電電流を制限するものである。
このように構成された電力変換装置(コンバータ)は、ゲート抵抗Rg1の抵抗値に依存してゲート電圧の時間変化率が変化し、それゆえMOSFET(Q1)のスイッチング特性も変化する。つまりゲート抵抗Rg1の抵抗値を小さくするとゲート電流が増加する。このためスイッチング素子のゲート電圧が時間的に急峻に変化することになってスイッチングスピードが増加する。したがってスイッチング損失を低減することができる。しかし、その一方でターンオフ時のサージ電圧が増加し、スイッチング時に発生するノイズも増加するという問題が生ずる。
【0006】
逆に、ゲート抵抗Rg1の抵抗値を大きくすると、ゲート電圧の時間変化率が小さくなる。このためスイッチングスピードが遅くなり、スイッチング損失が増加してしまうが、サージ電圧やノイズを低減することが可能となる。
電力変換回路では、一般にスイッチング素子がオンまたはオフする電流値が小さいとき(軽負荷時も含む)から大きいとき(重負荷時も含む)までの全作動範囲でゲート抵抗を変化させることはなく、その抵抗値は一定である。このためゲート抵抗は、最大電流をオフした場合に発生するサージ電圧が耐圧を超えることがないように、あるいは最大負荷時でもノイズが許容値を超えないように抵抗値が選定される。
このため軽負荷時などのスイッチング素子に流れる電流値が小さいときは、許容値に対して発生するサージ電圧やノイズに余裕があるにもかかわらず、最大負荷時に設定したゲート抵抗のために大きなスイッチング損失が発生するという問題がある。
【0007】
またスイッチング素子のスイッチングスピードは、温度にも依存する。すなわち温度が高くなるとスイッチングスピードが遅くなり、逆に温度が低くなるとスイッチングスピードが速くなる。よって、温度が高いほどサージ電圧やノイズも低くなる。
このようにスイッチング素子の温度は動作状態や周囲温度によって変化するため、ゲート抵抗はサージ電圧やノイズにとって最悪条件である低温時において許容値を超えない抵抗値が選定される。このように低温時に適したゲート抵抗が選定すると、高温時ではサージ電圧やノイズに余裕があるにもかかわらず、大きなスイッチング損失が発生するという問題が生ずる。
さらに、サージ電圧やノイズは定常オフ時にスイッチング素子に印加される電圧、即ち直流中間電圧にも依存する。サージ電圧の極大値は直流中間電圧とスイッチング時の跳ね上がり電圧の総和になるため、直流中間電圧が低くければ、例え跳ね上がり電圧が高くなったとしてもスイッチング素子の耐圧を超えることなく、電力変換装置を安全に作動させることができる。その一方でノイズは、スイッチング素子とグランド間に生成される寄生容量が充放電されることによって誘発されるため、スイッチング素子に印加される電圧が高いほど寄生容量を充放電する電流が増加し、発生するノイズも増加する。
【0008】
近年では、直流中間電圧を変化させて装置の制御性能を向上させるPAM制御が用いられるようになり、直流中間電圧が変化するケースが多い。しかし、直流中間電圧が低い時には、サージ電圧のピーク値やノイズが減少するにも関わらず、ゲート抵抗の抵抗値は一定であるため、大きなスイッチング損失が発生する問題がある。
そこで、電流値を検出してゲート抵抗を切り換える手段が試みられている(例えば、特許文献1を参照)。また温度検出値をゲート抵抗の切り換えを行うための判断要素の一つとした駆動回路もある(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−328746号公報
【特許文献2】特開2003−274672号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】仁田旦三、中岡睦雄,「新世代工学シリーズ パワーエレクトロニクス」,第1版,株式会社オーム社,平成17年3月10日,p.161−170
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら特許文献1に記載の電圧形スイッチング素子制御方法及びその装置に用いられている絶縁形の電流検出器は高価であり、電力変換装置のコストが増加するという問題が生ずる。もちろん安価な電流検出器としてシャント抵抗を用いることも可能であるが、シャント抵抗の両端に生ずる電圧は、発生損失を低減させるために微小な電圧値である。このため検出電圧値に僅かなノイズが重畳されると、電力変換装置が誤動作を起こす要因となったり、破損が生じたりするという懸念がある。
また特許文献2に記載の半導体スイッチング装置は、温度検出値をゲート抵抗の切り換えを行うための判断要素の一つとしているが、直流中間電圧の変化に応じてゲート抵抗を切り換えることができず、スイッチングに伴う電力損失を軽減することができない。
本発明は、このような問題を解決するべくなされたもので、その目的とするところは、スイッチング損失を低減しつつノイズの発生を効果的に抑えることができる電力変換装置のゲート駆動回路を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するため本発明の電力変換装置のゲート駆動回路は、スイッチング素子と、電流指令値に追従して前記スイッチング素子を駆動し、該スイッチング素子に流れる主電流を制御するスイッチング素子駆動部とを有する電力変換装置のスイッチング素子駆動回路であって、前記スイッチング素子駆動部は、前記電流指令値の大きさによって前記駆動電圧の時間変化率を制御する駆動電圧制御部を備えることを特徴とするものである。
上述の電力変換装置のゲート駆動回路は、電流指令値に応じてゲート抵抗の抵抗値を制御する駆動電圧制御部によってゲートに印加される駆動電圧の時間変化率を変化させる。
また前記駆動電圧制御部は、前記電流指令値が所定の電流指令閾値よりも大きいときに前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも小さくし、該電流指令値が前記電流指令閾値よりも小さいときに前記駆動電圧の時間変化率を前記時間変化率よりも大きくすることを特徴としている。
【0013】
上述の電力変換装置のゲート駆動回路は、電流指令値が所定の電流指令閾値よりも大きいときにはゲート抵抗の抵抗値を大きくしてゲート電圧の時間変化率を緩やかな変化とし、スイッチングスピードを遅くする。それゆえターンオフ時のサージ電圧を抑制することができる。逆に電流指令値が前記電流指令閾値よりも小さいときには、ゲート抵抗の抵抗値を小さくしてゲート電圧の時間変化率を急峻な変化としてスイッチング損失を低減させる。
あるいは本発明は、直流中間電圧部の電圧値を検出する直流中間電圧検出部と、前記直流中間電圧部に接続されたスイッチング素子と、直流中間電圧指令値に応じて前記スイッチング素子を駆動して前記直流中間電圧部の電圧を制御するスイッチング素子駆動部とを備えた電力変換装置のスイッチング素子駆動回路であって、前記スイッチング素子駆動部は、前記直流中間電圧の指令値または前記直流中間電圧検出部が検出した電圧値が所定の電圧閾値よりも高いとき前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも小さくし、前記直流中間電圧の指令値または前記直流中間電圧検出部が検出した電圧値が前記電圧閾値よりも低いとき前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも大きくする駆動電圧制御部を備えることを特徴とするものである。
【0014】
上述の電力変換装置のゲート駆動回路は、直流中間電圧指令値に応じてゲート抵抗の抵抗値を制御して駆動電圧の時間変化率を変化させる。即ち、直流中間電圧指令値が所定の電圧閾値よりも高いときにはゲート抵抗の抵抗値を大きくしてゲート電圧の時間変化率を緩やかな変化とし、スイッチングスピードを遅くする。それゆえターンオフ時のサージ電圧を抑制することができる。逆に直流中間電圧指令値が所定の電圧閾値よりも低いときには、ゲート抵抗の抵抗値を小さくしてゲート電圧の時間変化率を急峻な変化としてスイッチング損失を低減させる。
あるいは前記スイッチング素子の温度値を検出するスイッチング素子温度検出部を備え、前記駆動電圧制御部は、前記スイッチング素子温度検出部が検出した前記スイッチング素子の温度値が所定の温度閾値よりも高いとき、前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも大きくし、前記スイッチング素子の温度値が所定の温度閾値よりも低いとき前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも小さくすることが望ましい。
【0015】
上述の電力変換装置のゲート駆動回路は、温度が高い時には半導体素子の特性でサージ電圧やノイズの発生が小さくなる特性を利用し、ゲート電圧の変化率を大きく(変化を急峻に)し、高速スイッチングさせてもサージ電圧やノイズの規定値を超えることがなく、スイッチング損失を低減できる。これとは逆に、温度が低い時にはサージ電圧やノイズの発生が大きくなるので上述の電力変換装置のゲート駆動回路は、ゲート電圧の変化率を小さく(緩やかに)してサージ電圧やノイズを規定値を超えないように低減させることができる。
好ましくは前記駆動電圧制御部は、前記電流指令閾値および前記スイッチング素子の温度値によって前記駆動電圧の時間変化率を制御することが望ましい。
上述の電力変換装置のゲート駆動回路は、スイッチング素子の温度値が所定の温度閾値よりも高いときにはゲート抵抗の抵抗値を小さくしてゲート電圧の時間変化率を急峻とし、損失を低減させる。逆にスイッチング素子の温度値が所定の温度閾値よりも低いときときには、ゲート抵抗の抵抗値を大きくしてゲート電圧の時間変化率を緩やかな変化としてノイズを低減させる。
【0016】
あるいは前記駆動電圧制御部は、前記電流指令閾値、前記直流中間電圧の指令値、前記直流中間電圧検出部が検出した電圧値または前記スイッチング素子の温度値の少なくとも二つの値によって前記駆動電圧の時間変化率を変更するものとして構成される。
【発明の効果】
【0017】
上述したように本発明の電力変換装置のスイッチング素子駆動回路は、変換回路の動作や状態に応じてゲート電圧の変化率を切り換えているので効果的にスイッチング損失やノイズを低減させることができる。また本発明の電力変換装置のスイッチング素子駆動回路は、電流指令値の大きさによってゲート電圧の変化率を切り換えるタイミングを決定しているので、ノイズなどによる誤動作を防ぐことができ、信頼性の高い電力変換装置を提供できる。さらに本発明は、温度だけでなく直流中間電圧も加味してゲート電圧の変化率を調整できるので、本発明の電力変換装置のスイッチング素子駆動回路は、電力変換装置の稼動状況に応じて、より最適なゲート駆動が可能となり、スイッチング損失とノイズを低減できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1に係る電力変換装置のスイッチング素子駆動回路の概略構成を示す図。
【図2】図1に示す電力変換装置におけるブリッジ整流回路の電圧とゲート抵抗切換え信号の関係を示す図。
【図3】本発明の実施例2に係る電力変換装置のスイッチング素子駆動回路の概略構成を示す図。
【図4】図3に示す電力変換装置における直流中間電圧とゲート抵抗切換え信号の関係を示す図。
【図5】本発明の実施例3に係る電力変換装置のスイッチング素子駆動回路の概略構成を示す図。
【図6】本発明の別の実施例に係る電力変換装置のスイッチング素子駆動回路におけるゲート部分の概略構成を示す図。
【図7】本発明の更に別の実施例に係る電力変換装置のスイッチング素子駆動回路におけるゲート部分の概略構成を示す図。
【図8】図7に示す本発明の更に別の実施例に係る電力変換装置におけるブリッジ整流回路の電圧とゲート切換え信号の関係を示す図。
【図9】従来の電力変換装置のスイッチング素子駆動回路の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0020】
図1,2は本発明の実施例1を示すものであって、図中、図9と同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成は図に示す従来のものと同様であるので説明を略述する。
さて図1に示す本発明の実施例1に係る電力変換装置のスイッチング素子回路が従来のものと異なるところは、ゲート抵抗Rg2とスイッチSWの直列回路をゲート抵抗Rg1と並列に接続し、乗算器6から出力される電流指令値Vcが所定の設定値Vthを上回ったとき、このスイッチSWをオンにするコンパレータ20を有する駆動電圧制御部を備えた点にある。
このような特徴ある本発明の電力変換装置のスイッチング素子回路についてより詳細に説明する。
【0021】
まず電流指令値Vcは、四つのダイオードD1〜D4で構成されるブリッジ整流回路の出力電圧検出値Vrを比例・積分回路5の出力電圧Vbと乗算することによって得られる。ちなみに図1に示す交流電源1は、100Vや200Vなどの商用交流であり、これを単に乗算すると高い電圧値になる。このため特に図示しないが電流指令値Vcは、数ボルト程度の値に変換されて乗算器6から出力される。
ブリッジ整流回路から出力される直流電流ILは、シャント抵抗Rsの両端に生ずる電圧降下によって反転極性で検出され、電流指令値Vcとの差分が零になるようにフィードバック制御される。よってスイッチング周波数成分のリプルを無視すれば直流電流ILは電流指令値Vcに追従するように制御される。またMOSFET(Q1)がオンまたはオフする電流も電流指令値Vcに相当する値となる。
【0022】
次に図2に示すように電流指令値Vcが小さいときには、コンパレータ20の出力電圧(ゲート抵抗切換信号VSEL)がハイレベルとなり、スイッチSWがオンする。すると二つのゲート抵抗Rg1,Rg2が並列に接続されることになるので、合成抵抗値は減少する。したがってゲート抵抗の抵抗値が小さいのでゲート電圧の時間変化率が急峻となり、スイッチング損失を低減することができる。更に電流指令値Vcが小さいときには、MOSFET(Q1)がスイッチングする電流も小さい。このためゲート抵抗を小さくしてもサージ電圧はMOSFET(Q1)の耐圧を超えることなく、安全に動作させることができる。
一方、電流指令値Vcが大きいときには、ゲート抵抗切換信号VSELがローレベルになり、スイッチSWがオフする。するとゲート抵抗Rg1だけとなり、抵抗値が増加する。よって、スイッチングスピードが遅くなり、ターンオフ時のサージ電圧はMOSFET(Q1)耐圧を超えないように抑制される。
【0023】
かくして本発明の実施例1に係る電力変換装置のスイッチング素子回路は、電流指令値Vcが小さい領域でゲート抵抗の抵抗値を小さくしているのでMOSFET(Q1)のスイッチング損失を低減させることができ、電力変換装置の高効率化を図ることができる。また本発明は、電流指令値Vcが大きい領域でゲート抵抗の抵抗値を大きくしているのでターンオフ時にMOSFET(Q1)耐圧を超えるサージ電圧の印加を防ぐことができる。
特に本発明の電力変換装置のスイッチング素子回路は、電流指令値Vcを用いて、その値に応じてゲート抵抗を切り換えている。この電流指令値Vcは交流電源1を全波整流した高電圧を検出することによって生成されるので、多少のノイズが重畳されたとしても相対的にノイズ電圧が小さいので影響を受けることが少ない。更に電流指令値Vcを用いてゲート抵抗の切り換えを行う本発明のスイッチング素子回路は、信頼性が高く、安全に電力変換装置を作動させることができる。
【0024】
また交流電源1の位相(ゼロクロス)を検出し、交流電源1に同期した正弦波全波波形の指令を生成すれば、電流指令値Vcを生成するための電圧検出回路も不用となり、電力変換装置外から受けるノイズの影響をさらに低減することが可能となり、実用上極めて有効である。
【実施例2】
【0025】
図3に本発明の実施例2に係る電力変換装置のスイッチング制御回路の概略構成を示す。この実施例2が上述した実施例1と異なるところは、負荷RLに代えてDC−DCコンバータやインバータなどの変換回路15を接続した点にある。このように構成された電力変換装置にあっては、電力変換回路2の出力電圧が直流中間電圧となり、出力電圧指令値Vaに相当する電圧値に制御される。
スイッチング素子回路は、図4に示すように直流電圧検出値Vdが大きくなると、スイッチSWをオフにしてゲート抵抗を増加させる。逆に直流電圧検出値Vdが小さいときは、スイッチSWをオンにしてゲート抵抗を減少させる
したがって本発明のスイッチング制御回路は、出力電圧が高いときゲート抵抗が増加してMOSFET(Q1)のスイッチングスピードが低下するので、サージ電圧やノイズを効果的に抑制することができるとともに、ターンオフ時におけるサージ電圧が抑制され、スイッチング素子の耐圧を超えることがない。逆に、直流電圧検出値Vdが低くなるとスイッチSWをオンにし、ゲート抵抗を減少させているので、スイッチング損失を低減することができ、電力変換装置を高効率で稼動させることができる。
【0026】
また直流電圧検出値Vdが低いときには出力電圧も低い。このため本発明のスイッチング制御回路は、ゲート抵抗を小さくして跳ね上がり電圧を増加させてもMOSFET(Q1)の耐圧を超えることなく電力変換装置を安全に作動させることができる。
なお、本発明のスイッチング制御回路は、直流電圧検出値Vdの代わりに出力電圧指令値Vaを用いてゲート抵抗切換信号VSELを生成しても同様な効果が得られる。
【実施例3】
【0027】
図5に本発明の実施例3に係る電力変換装置のスイッチング制御回路の概略構成を示す。この実施例3が上述した実施例1,2と異なるところはスイッチング素子の温度依存性に着目し、ゲート抵抗の抵抗値を制御する点にある。
この実施例3は、MOSFET(Q1)の近傍に素子の温度を検出する温度検出部30を備え、この温度検出部30が検出した温度検出値Veが電流指令値Vcや出力電圧(出力電圧指令値Vaまたは直流電圧検出値Vd)とともにゲート抵抗切換部31に入力されている。
例えば、電流や出力電圧が大きい場合でもMOSFET(Q1)の温度が高ければ、ゲート抵抗を小さくしてもサージ電圧やノイズが許容値を超えないことがある。このためゲート電圧の変化率を大きく(変化を急峻に)し、高速スイッチングさせてもサージ電圧やノイズの規定値を超えることがなく、スイッチング損失を低減できる。また、電流値が高く、温度が低くても出力電圧が低ければサージ電圧やノイズは許容値を超えないことがある。このためゲート電圧の変化率を小さく(変化を緩やかに)することで、サージ電圧やノイズを規定値を超えないように低減できる。このようにサージ電圧やノイズは上記3要素の関係で変化する。
【0028】
そこでゲート抵抗切換部31には上記3要素の状態に応じて適切なゲート抵抗を選択するための予め検証したデータを用意しておき、電力変換回路の動作状態によってサージ電圧やノイズの発生を許容値以下に抑えつつスイッチング損失を低減させるゲート抵抗を選択させる。
なお、ゲート抵抗の選択には必ずしも上記3要素全てを用いる必要はなく、仕様に応じて適宜選択してもよい。例えば、スイッチング素子の温度変化がほとんどない場合は、温度による判断要素を削除しても構わない。このような制御は例えばディジタル制御を適用すれば容易に実現可能であり、電流や電圧および温度などを加味した最適なゲート駆動条件が実現でき、電力変換装置におけるサージ電圧やノイズまたはスイッチング損失を低減することができる。
【0029】
また、本実施例ではゲート電圧の変化率を変化させる手段として、ゲート抵抗を切り換える方式を説明したが、図6(図1,3,5の回路図におけるMOSFET(Q1)とゲート抵抗RG1以外を省略)に示すようにMOSFET(Q1)のゲート・ソース間にコンデンサCxとスイッチSWxの直列回路を接続し、そのスイッチをオン・オフさせてゲート電圧の変化率を変化させてもよい。すなわちゲート電圧の変化率を減少させるには、図示しないスイッチ制御回路がスイッチSWxをオンにしてコンデンサCxを充電させればよい。逆にゲート電圧の変化率を増加させるときは、スイッチ制御回路がスイッチSWxをオフし、ゲート・ソース間に存在する寄生容量だけを充電させればよい。
あるいは本発明のスイッチング回路は、複数のゲート抵抗切換回路を用いて段階的にゲート電圧の変化率を変化させてもよい。具体的には、図1,3,5の回路図に示したゲート抵抗RG1,RG2およびスイッチSWからなるゲート抵抗回路を図7(ゲート抵抗回路およびMOSFET(Q1)以外を省略)に示すように三つのゲート抵抗RG1,RG2,RG3を用い、ゲート抵抗RG1にゲート抵抗RG2とスイッチSW2を直列に接続した直列回路を並列に接続し、更にゲート抵抗RG3とスイッチSW3を直列に接続した直列回路を並列に接続する。ここで二つのゲート抵抗RG2,RG3は、[RG2<RG3]であるとする。そしてそれぞれのスイッチSW2,SW3をゲート抵抗切換部がオン・オフ可能なように接続する(特に図示せず)。
【0030】
このように構成された本発明の更に別の実施例に係るスイッチング回路は、図8に示すように電流指令値Vcが第一の電閾値圧Vth2以下の場合にはスイッチSW2をオンして抵抗値の小さなゲート抵抗RG2を導通させる。これによりMOSFET(Q1)のゲートが急速に充電されて電圧変化率が向上する。次に、第一の閾値Vth1<電流指令値Vc<第二の電圧閾値Vth2の状態でゲート抵抗切換部は、スイッチSW2をオフ、スイッチSW3をオンしてゲート抵抗RG3を導通させゲート抵抗を増加させる。するとゲート電圧の変化率は低下する。
電流指令値Vcが第二の電圧閾値Vth3以上のときゲート抵抗切換部は、スイッチSW2,SW3の両方をオフにしてゲート抵抗をRG1だけとし、最も大きなゲート抵抗値にしてゲート電圧の変化率をさらに小さくする。
【0031】
このようにすることでより好ましいゲート電圧の変化をさせることができ、スイッチング損失を低減しつつサージ電圧やノイズの発生を効果的に抑えることが可能となる。
また、本発明のスイッチング回路は、連続的に変化する電流源でゲートを充放電させてもよい。特に図示しないが、この電流源は例えば、一般的なカレントミラー回路で構成され、カレントミラー回路の電圧値を変化させることで連続的に変化する電流源となる。そして予めマイコンやDSPなどに保存された情報から適切な電流値が選択され(ゲート抵抗値切換部に相当する)、D/A変換することよって適切な電流値に相当する電圧を得ることができる。そうして得られた電圧をカレントミラー回路の電圧源とすることで、電圧値と共に電流が変化し、電流値が小さくなればゲート電圧の変化率も小さくなる。逆に、電流値が大きくなればゲート電圧の変化率も増加する。このような電流源を用いてノイズや損失、または跳ね上がり電圧を低減させるようにゲート電圧の変化率を変化させれば良い。
【0032】
このように本発明は、ゲート電圧の変化率を変化させる手段に限定されるものではない。また上述した実施例はスイッチング素子としてMOSFETで説明したが、IGBTやGTO等のスイッチング素子にも適用可能である。更に本発明は上述した電力変換装置の他に、電流指令値を用いてスイッチング素子を制御する変換装置や直流中間電圧を変化させる電力変換装置の全てに本発明を適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1 交流電源
2 電力変換回路
3 駆動回路
Q1 MOSFET
D1-D5 ダイオード
Rg1,Rg2 ゲート抵抗
RL 負荷
Rs シャント抵抗
SW スイッチ
Tr1,Tr2 トランジスタ
Va 出力電圧指令値
Vb 出力電圧
Vc 電流指令値
Vd 直流電圧検出値
Vg ゲート駆動電圧
Vr 出力電圧検出値
VSEL ゲート抵抗切換信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子と、電流指令値に追従して前記スイッチング素子を駆動し、該スイッチング素子に流れる主電流を制御するスイッチング素子駆動部と
を有する電力変換装置のスイッチング素子駆動回路であって、
前記スイッチング素子駆動部は、前記電流指令値の大きさによって前記駆動電圧の時間変化率を制御する駆動電圧制御部を備えることを特徴とする電力変換装置のスイッチング素子駆動回路。
【請求項2】
前記駆動電圧制御部は、前記電流指令値が所定の電流指令閾値よりも大きいときに前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも小さくし、該電流指令値が前記電流指令閾値よりも小さいときに前記駆動電圧の時間変化率を前記時間変化率よりも大きくすることを特徴とした請求項1に記載の電力変換装置のスイッチング素子駆動回路。
【請求項3】
直流中間電圧部の電圧値を検出する直流中間電圧検出部と、
前記直流中間電圧部に接続されたスイッチング素子と、
直流中間電圧指令値に応じて前記スイッチング素子を駆動して前記直流中間電圧部の電圧を制御するスイッチング素子駆動部と
を備えた電力変換装置のスイッチング素子駆動回路であって、
前記スイッチング素子駆動部は、前記直流中間電圧の指令値または前記直流中間電圧検出部が検出した電圧値が所定の電圧閾値よりも高いとき前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも小さくし、前記直流中間電圧の指令値または前記直流中間電圧検出部が検出した電圧値が前記電圧閾値よりも低いとき前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも大きくする駆動電圧制御部を備えることを特徴とした電力変換装置のスイッチング素子駆動回路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電力変換装置のスイッチング素子駆動回路であって、
さらに前記スイッチング素子の温度値を検出するスイッチング素子温度検出部を備え、
前記駆動電圧制御部は、前記スイッチング素子温度検出部が検出した前記スイッチング素子の温度値が所定の温度閾値よりも高いとき、前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも大きくし、前記スイッチング素子の温度値が所定の温度閾値よりも低いとき前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも小さくすることを特徴とした電力変換装置のスイッチング素子駆動回路。
【請求項5】
請求項1、2または4のいずれかに記載の電力変換装置のスイッチング素子駆動回路であって、
前記駆動電圧制御部は、前記電流指令閾値および前記スイッチング素子の温度値によって前記駆動電圧の時間変化率を制御するものである電力変換装置のスイッチング素子駆動回路。
【請求項6】
請求項3または4のいずれかに記載の電力変換装置のスイッチング素子駆動回路であって、
前記駆動電圧制御部は、前記電流指令閾値、前記直流中間電圧の指令値、前記直流中間電圧検出部が検出した電圧値または前記スイッチング素子の温度値の少なくとも二つの値によって前記駆動電圧の時間変化率を変更するものである電力変換装置のスイッチング素子駆動回路。
【請求項1】
スイッチング素子と、電流指令値に追従して前記スイッチング素子を駆動し、該スイッチング素子に流れる主電流を制御するスイッチング素子駆動部と
を有する電力変換装置のスイッチング素子駆動回路であって、
前記スイッチング素子駆動部は、前記電流指令値の大きさによって前記駆動電圧の時間変化率を制御する駆動電圧制御部を備えることを特徴とする電力変換装置のスイッチング素子駆動回路。
【請求項2】
前記駆動電圧制御部は、前記電流指令値が所定の電流指令閾値よりも大きいときに前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも小さくし、該電流指令値が前記電流指令閾値よりも小さいときに前記駆動電圧の時間変化率を前記時間変化率よりも大きくすることを特徴とした請求項1に記載の電力変換装置のスイッチング素子駆動回路。
【請求項3】
直流中間電圧部の電圧値を検出する直流中間電圧検出部と、
前記直流中間電圧部に接続されたスイッチング素子と、
直流中間電圧指令値に応じて前記スイッチング素子を駆動して前記直流中間電圧部の電圧を制御するスイッチング素子駆動部と
を備えた電力変換装置のスイッチング素子駆動回路であって、
前記スイッチング素子駆動部は、前記直流中間電圧の指令値または前記直流中間電圧検出部が検出した電圧値が所定の電圧閾値よりも高いとき前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも小さくし、前記直流中間電圧の指令値または前記直流中間電圧検出部が検出した電圧値が前記電圧閾値よりも低いとき前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも大きくする駆動電圧制御部を備えることを特徴とした電力変換装置のスイッチング素子駆動回路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電力変換装置のスイッチング素子駆動回路であって、
さらに前記スイッチング素子の温度値を検出するスイッチング素子温度検出部を備え、
前記駆動電圧制御部は、前記スイッチング素子温度検出部が検出した前記スイッチング素子の温度値が所定の温度閾値よりも高いとき、前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも大きくし、前記スイッチング素子の温度値が所定の温度閾値よりも低いとき前記駆動電圧の時間変化率を所定の時間変化率よりも小さくすることを特徴とした電力変換装置のスイッチング素子駆動回路。
【請求項5】
請求項1、2または4のいずれかに記載の電力変換装置のスイッチング素子駆動回路であって、
前記駆動電圧制御部は、前記電流指令閾値および前記スイッチング素子の温度値によって前記駆動電圧の時間変化率を制御するものである電力変換装置のスイッチング素子駆動回路。
【請求項6】
請求項3または4のいずれかに記載の電力変換装置のスイッチング素子駆動回路であって、
前記駆動電圧制御部は、前記電流指令閾値、前記直流中間電圧の指令値、前記直流中間電圧検出部が検出した電圧値または前記スイッチング素子の温度値の少なくとも二つの値によって前記駆動電圧の時間変化率を変更するものである電力変換装置のスイッチング素子駆動回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2010−252451(P2010−252451A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97070(P2009−97070)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
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