説明

電力変換装置

【課題】逆励磁方式で起動して直流系統を交流系統に連系する場合に高速に起動でき迅速に交流系統に連系できる電力変換装置を提供することである。
【解決手段】制御装置20から起動がかけられると、初充電回路17は交流系統15から電力を入力し、直流系統12の直流コンデンサ19に充電を開始し、直流コンデンサ19の電圧Vdcがインバータの最低動作可能電圧になると、制御装置20はインバータ11をPWM運転し、その後に、連系遮断器14を閉じて直流系統12を交流系統15に連系させる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流系統の直流を交流に変換して交流系統と連系運転する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流系統の直流を交流に変換して交流系統と連系運転する電力変換装置としては、直流送電系統を交流系統に接続するもの、分散型電源設備を交流系統に接続するもの、静止形無効電力補償装置を交流系統に接続するものなどがある。
【0003】
このような電力変換装置では、その起動の前段階として,別回路(初充電回路)から直流コンデンサ(以下、DCコンデンサという)を充電する逆励磁方式が採用されている。これは、交流系統との連系を行う変圧器の励磁突入電流を回避するためである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図8は逆励磁方式を採用した従来の電力変換装置の構成図である。電力変換装置のインバータ11は、直流系統12の直流を交流に変換して変圧器13及び連系遮断器14を介して交流系統15に連系される。電力変換装置の起動の際には、交流系統15から励磁用変圧器16を介して電力を初充電回路17に入力し、初充電回路17は交流を直流に変換して開閉器18を介してDCコンデンサ19を充電する。そして、インバータ11はDCコンデンサ19に充電された電力に基づき、変圧器13を逆励磁してインバータ11を交流系統15に連系する。
【0005】
制御装置20は電力変換装置の制御を行うものであり、制御装置20の起動制御部21は、電力変換装置の起動の際に初充電回路17を起動してDCコンデンサ19を充電するものである。また、直流電圧判定部22はDCコンデンサ19のDC電圧を監視するものであり、DCコンデンサ19のDC電圧VdcがPWM制御可能電圧Vdc1以上となったときはPWM制御部23を起動する。
【0006】
PWM制御部23は、位相同期回路(PLL)24で得られた交流系統15の電圧Vsに同期した信号を入力し、DCコンデンサ19に充電された電力に基づきインバータ11を制御する。すなわち、インバータ11の出力電圧Vcが交流系統11の周波数、位相及び大きさに一致するように制御する。そして、PWM制御部23によるインバータ11の出力電圧Vcの制御が安定すると、連系制御部25は連系遮断器14を閉じてインバータ11を交流系統15に連系する。これにより、電力変換装置は交流系統15と連系運転されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2007−195348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、電力変換装置の起動の際には、初充電回路17によりDCコンデンサ19が充電され、そのDC電圧VdcがPWM制御可能電圧Vdc1以上となったときに、初めて制御装置20のPWM制御部23によりPWM制御が開始されるので、迅速に電力変換装置を立ち上げることができない。
【0009】
図9に示すように、PWM制御可能電圧Vdc1は交流電圧Vacの(√3/2√2≒1.63)倍であるので、DCコンデンサ19のDC電圧VdcがPWM制御可能電圧Vdc1になるまでのDCコンデンサ19への充電時間T1が長く、時点t1でPWM制御可能電圧Vdc1になる。従って、PWM制御が開始されるまでの時間が長く高速化が困難である。一方、電力変換器を高速に立ち上げるために電力変換装置を常にゲートブロック状態で待機させておくことも考えられるが、そうすると待機時に損失が発生する。
【0010】
ここで、PWM制御可能電圧Vdc1として交流電圧Vacの約1.63倍の電圧が必要となるのは、図10に示すように、PWM制御によるインバータ11の出力電圧は、矩形波がPWM制御された断続波形となり電圧利用率が高くないことに起因する。
【0011】
本発明の目的は、逆励磁方式で起動して直流系統を交流系統に連系する場合に高速に起動でき迅速に交流系統に連系できる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明に係る電力変換装置は、直流系統の直流を交流に変換し変圧器及び連系遮断器を介して交流系統に出力するインバータと、起動の際に前記交流系統から電力を入力し前記直流系統の直流コンデンサに充電する初充電回路と、前記起動の際の前記初充電回路による前記直流コンデンサの充電により前記直流コンデンサの電圧が前記インバータの最低動作可能電圧になると前記インバータをPWM運転し前記連系遮断器を閉じて前記直流系統を前記交流系統に連系させる制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明に係る電力変換装置は、請求項1の発明において、前記変圧器に直列接続されたリアクトルと、前記リアクトルに並列に設けられ前記リアクトルを短絡する短絡スイッチとを設け、前記制御装置は、前記起動の際には前記短絡スイッチを開き、前記直流系統を前記交流系統に連系させた後に前記短絡スイッチを閉じることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明に係る電力変換装置は、請求項1または2の発明において、前記制御装置は、前記直流系統を前記交流系統に連系した後に前記交流系統の系統電圧が予め定めた変動許容範囲を逸脱しないところまで前記直流コンデンサの電圧を上昇させた後に前記連系遮断器を閉じて前記直流系統を前記交流系統に連系させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、電力変換装置の起動の際に、直流コンデンサの電圧がPWM制御可能電圧よりも低い最低動作可能電圧になると、インバータをPWM運転にて、そのPWM運転の状態で連系遮断器を閉じて直流系統を交流系統に連系させるので、インバータから無効電力の発生はあるが、高速で電力変換装置を起動でき迅速に直流系統を交流系統に連系できる。
【0016】
請求項2の発明によれば、電力変換装置の起動の際には、短絡スイッチを開きリアクトルを変圧器に直列接続した状態とするので、インバータの最低動作可能電圧がさらに低くなり、さらに高速で直流系統を前記交流系統に連系できる。また、直流系統を交流系統に連系させた後に短絡スイッチを閉じるので、連系後においてはリアクトルによる無効電力の発生を抑制できる。
【0017】
請求項3の発明によれば、例えば、交流系統の系統電圧の最低値が予め定められていた場合において、直流系統を交流系統に連系した後に交流系統の系統電圧がその最低値以下とならない範囲まで直流コンデンサの電圧を上昇させて連系遮断器を閉じて直流系統を交流系統に連系させるので、インバータからの無効電力による交流系統の系統電圧への影響により系統電圧が予め定められた最低値以下となることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電力変換装置の構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるインバータの動作特性図。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるインバータが有効電力Pのみを出力している状態を示す特性図。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるインバータが無効電力Qのみを入力している状態を示す特性図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る電力変換装置でのPWM制御が開始される最低動作可能電圧Vdc0の特性を示す特性図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る電力変換装置の構成図。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る電力変換装置の構成図。
【図8】逆励磁方式を採用した従来の電力変換装置の構成図。
【図9】従来の電力変換装置でのPWM制御が開始されるPWM制御可能電圧の特性を示す特性図。
【図10】逆励磁方式を採用した従来の電力変換装置の起動時のPWM制御によるインバータの出力電圧の波形図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る電力変換装置の構成図である。この第1の実施の形態に係る電力変換装置は、図7に示した従来例に対し、制御装置20の直流電圧判定部22は、DCコンデンサ19のDC電圧VdcがPWM制御可能電圧Vdc1以上となったときにPWM制御部23を起動することに代えて、直流コンデンサ19のDC電圧VdcがPWM制御可能電圧Vdc1よりも低い最低動作可能電圧Vdc0になったときにPWM制御部23を起動するようにしたものである。図7と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0020】
直流電圧判定部22は、初充電回路17によりDCコンデンサ19への充電が開始されると、DCコンデンサ19のDC電圧Vdcがインバータ11の最低動作可能電圧Vdc0になったかどうかを監視する。インバータ11の最低動作可能電圧Vdc0はPWM制御可能信号Vdc1より低い電圧である。そして、直流電圧判定部22は、DCコンデンサ19のDC電圧Vdcが最低動作可能電圧Vdc0になったことを検出すると、PWM制御部23を起動する。
【0021】
PWM制御部23は、起動がかけられると、位相同期回路(PLL)24で得られた交流系統15の電圧Vsに同期した信号を入力し、DCコンデンサ19に充電された電力に基づきインバータ11への制御指令を介してインバータ11に出力する。すなわち、インバータ11の出力電圧Vcが交流系統11の周波数、位相及び大きさに一致するように制御する。そして、PWM制御部23によるインバータ11の出力電圧の制御が安定すると、連系制御部25は連系遮断器14を閉じてインバータ11を交流系統15に連系する。これにより、電力変換装置は交流系統と連系運転されることになる。
【0022】
次に、インバータ11の最低動作可能電圧Vdc0について説明する。図2はインバータ11の動作特性図であり、図2(a)はインバータ11が交流系統15に供給できる有効・無効電力(P+jQ)の特性図、図2(b)はインバータ11の出力電圧Vcの特性図である。
【0023】
交流系統15に接続された自励式のインバータ11が交流系統15に供給できる有効・無効電力(P+jQ)は、図2(a)に示すように、インバータ11の皮相電力最大値Smaxを半径とした円内の任意の値となる。有効電力P及び無効電力Qの向きについては、通常、他励式のインバータの場合には入力方向を正とするが、ここでは自励式のインバータを一種の電源とみなし、インバータ11からの出力方向を正とする。従って、図2(a)の右半平面が逆変換運転の状態、左半平面が順変換運転の状態に対応する。
【0024】
また、皮相電力最大値Smaxは、交流系統15の系統電圧|Vs|とインバータ11の実効値電流容量|Icmax|との積(Smax=|Vs|・|Icmax|)で与えられ、系統電圧Vsが定格1.0puの場合にはMVA容量に一致する。PQ可制御領域は、皮相電力最大値Smaxを半径とした円内であることから、PQ可制御領域は、|Icmax|のみならず系統電圧Vsの大きさ|Vs|にも依存して変化し、その増減に対応してPQ可制御領域も同心円状に増減する。なお、図2(a)中のφは、系統電圧Vsとインバータ11の出力電流Icとの位相差である。
【0025】
一般に、自励式のインバータにおいては、PQ指令値に基づいて系統電圧Vsに対してインバータの出力電流Icを演算し、このインバータの出力電流Icを交流系統15に流し込むのに必要なインバータの出力電圧VcをPWM制御により発生している。インバータ11の最大出力は(1)式で示され、系統電圧Vsを位相基準とするとインバータ11の最大出力は(2)式で示される。なお、(1)式及び(2)式中のXは変圧器13のリアクタンスである。
【数1】

【数2】

【0026】
次に、(2)式からインバータ11の出力電圧Vcを求めると(3)式が得られる。(3)式は、図2(a)の円上に対応したMVA最大出力Smaxを交流系統15に供給するために必要とされるインバータ11の出力電圧Vcである。
【数3】

【0027】
インバータ11の出力電圧Vcは、図2(b)に示すように、大きさ|Vc|がXIcmaxの円内の任意の値となる。インバータ11は、この円内の交流電圧を出力することにより、図2(a)に示したPQ可制御領域に対応した有効・無効電力を発生できる。図2(b)中のθは系統電圧Vsとインバータ11の出力電圧Vcとの位相差である。ここで、有効電力Pは系統電圧Vsに対してπ/2位相をもつ成分(q軸成分)により、無効電力Qは同相の成分(d軸成分)により決定される。
【0028】
図3はインバータ11が有効電力Pのみを入出力している状態を示す特性図であり、図3(a)はインバータ11が有効電力Pのみを交流系統15に出力している状態を示す特性図、図3(b)はインバータ11が有効電力Pのみを交流系統15から入力している状態を示す特性図である。図3(a)に示すように、系統電圧Vsとインバータ11の出力電流Icとが同相である場合には、インバータ11が有効電力Pのみを交流系統15に出力している状態であり、この場合、図2(a)の有効・無効電力(P+jQ)の特性図におけるPmax点での運転となる。図3(b)に示すように、系統電圧Vsとインバータ11の出力電流Icとの位相がπである場合には、インバータ11が有効電力Pのみを交流系統15から入力している状態であり、この場合、図2(a)の有効・無効電力(P+jQ)の特性図における−Pmax点での運転となる。すなわち、有効電力Pは系統電圧Vsに対してπ/2位相をもつ成分(q軸成分)により決定される。
【0029】
図4はインバータ11が無効電力Qのみを入出力している状態を示す特性図であり、図4(a)はインバータ11が無効電力Qのみを交流系統15に出力している状態を示す特性図、図4(b)はインバータ11が無効電力Qのみを交流系統15から入力している状態を示す特性図である。図4(a)に示すように、インバータ11の出力電流Icの位相が系統電圧Vsよりπ/2だけ進んでいる場合には、インバータ11が無効電力Qのみを交流系統15に出力している状態であり、この場合、図2(a)の有効・無効電力(P+jQ)の特性図におけるQmax点での運転となる。図4(b)に示すように、インバータ11の出力電流Icの位相が系統電圧Vsよりπ/2だけ遅れている場合には、インバータ11が無効電力Qのみを交流系統15から入力している状態であり、この場合、図2(a)の有効・無効電力(P+jQ)の特性図における−Qmax点での運転となる。すなわち、無効電力Qは系統電圧Vsの位相と同相の成分(d軸成分)により決定される。
【0030】
ここで、インバータ11が有効・無効電力を制御できる範囲は、図2(a)に示したPQ可制御領域(皮相電力最大値Smaxを半径とした円内)であり、その場合、インバータ11の出力電圧Vcが取り得る最低交流電圧は、図4(a)に示すVc0である。この最低交流電圧Vc0をインバータ11が出力できるときのDCコンデンサ19の電圧がインバータ11の最低動作可能電圧Vdc0である。
【0031】
前述したように、本発明では、直流コンデンサ19のDC電圧VdcがPWM制御可能電圧Vdc1よりも低い最低動作可能電圧Vdc0になったときにPWM制御部23を起動する。
【0032】
図5は本発明の第1の実施の形態に係る電力変換装置でのPWM制御が開始される最低動作可能電圧Vdc0の特性を示す特性図である。図5に示すように、最低動作可能電圧Vdc0は、変圧器13を介して系統電圧Vsと位相・大きさ・周波数が一致しインバータ11の出力電圧Vcを出力可能なPWM制御可能電圧Vdc1より小さい。従って、DCコンデンサ19のDC電圧Vdcが最低動作可能電圧Vdc0なる時点t2までのDCコンデンサ19への充電時間T2は、PWM制御可能電圧Vdc1になる時点t1までのDCコンデンサ19への充電時間T1より短い。このことから、インバータ11から無効電力の発生はあるが、時点t1より早い時点t2からPWM制御を行うことができる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図6は本発明の第2の実施の形態に係る電力変換装置の構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、変圧器13に直列接続されたリアクトル26と、リアクトル26に並列に短絡スイッチ27を設け、制御装置20の連系制御部25は、起動の際には短絡スイッチ27を開いておき、直流系統12を交流系統15に連系させた後には短絡スイッチ27を閉じるようにしたものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0034】
図6に示すように、変圧器13の二次側と連系遮断器14との間にリアクトル26が直列接続され、そのリアクトル26に並列に短絡スイッチ27が設けられている。そして、制御装置20の連系制御部25は、電力変換装置の起動の際には、短絡スイッチ27を開いておき、リアクトル26を変圧器13に直列接続した状態としておく。
【0035】
前述の(3)式から分かるように、インバータ11の出力電圧Vcは、変圧器のインダクタンスXの関数で示される。インバータ11の出力電圧Vcが最低動作可能電圧Vdc0になるのは、図4(a)に示したときであり、このときは、系統電圧Vsとインバータ11の出力電流Icとの位相差φは零であることから、(3)式の第2項の極性はマイナスとなる。従って、変圧器13のリアクタンスXが大きいほど最低動作可能電圧Vdc0は小さくなり、より高速で直流系統12を交流系統15に連系できることになる。
【0036】
そこで、電力変換装置の起動の際には、リアクトル26を変圧器13に直列接続した状態としておき、最低動作可能電圧Vdc0は小さくする。そして、直流系統12を交流系統15に連系させた後においては、リアクトル26を交流系統15に接続しておく必要はなくなるので、短絡スイッチ17を閉じリアクトル26を交流系統15から切り離す。これにより、リアクトルによる無効電力の発生を抑制する。
【0037】
第2の実施の形態によれば、電力変換装置の起動において、インバータ11の最低動作可能電圧Vdc0をさらに小さくできるので、第1の実施の形態よりも高速で直流系統12を交流系統15に連系できる。以上の説明では、変圧器の一次側にリアクトル26を設けたが、変圧器の二次側にリアクトル26を設けるようにしてもよい。
【0038】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。図7は本発明の第3の実施の形態に係る電力変換装置の構成図である。この第3の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、交流系統15の系統電圧Vsを検出する電圧検出器28を設けるとともに、制御装置20に連系許容直流電圧演算部29を設けたものである。連系許容直流電圧演算部29は、電圧検出器28で検出された系統電圧Vsを入力し、直流系統12を交流系統15に連系した後に交流系統15の系統電圧Vsが予め定めた変動許容範囲を逸脱しない直流コンデンサ19のDC電圧(連系許容直流電圧Vdc2)を演算する。そして、連系制御部25は直流コンデンサ19のDC電圧Vdcが連系許容直流電圧Vdc2になると、連系遮断器14を閉じて直流系統12を交流系統15に連系させるようにしたものである。図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0039】
制御装置20の連系許容直流電圧演算部29は、電圧検出器28で検出された系統電圧Vsを入力し、直流系統12を交流系統15に連系した後に系統電圧Vsが変動許容範囲を逸脱しないこととなる直流コンデンサ19のDC電圧を連系許容直流電圧Vdc2として予め演算する。そして、直流コンデンサ19のDC電圧Vdcがその連系許容直流電圧Vdc2まで上昇したときに連系遮断器14を閉じて、直流系統12を交流系統15に連系させる。
【0040】
前述したように、DCコンデンサ19のDC電圧Vdcが最低動作可能電圧Vdc0になったときに制御装置20のPWM制御部23はPWM制御を開始し、PWM制御部23によるインバータ11の出力電圧Vcの制御が安定すると、連系制御部25は連系遮断器14を閉じてインバータ11を交流系統15に連系することになるが、その際には、インバータ11は無効電力Qを交流系統15に出力することになる。
【0041】
そこで、制御装置20の連系許容直流電圧演算部29は、系統電圧Vsを入力し、直流系統12を交流系統15に連系した後の系統電圧Vsがその変動許容範囲内を逸脱しないこととなる直流コンデンサ19のDC電圧を連系許容直流電圧Vdc2として予め演算し、直流コンデンサ19のDC電圧Vdcがその連系許容直流電圧Vdc2になったときに連系遮断器14を閉じて直流系統12を交流系統15に連系させる。系統電圧Vsの変動許容範囲は、基準電圧から一時的に低下する系統電圧Vsの許容範囲を考慮して定められる。
【0042】
これにより、直流系統12を交流系統15に連系させた際に生じるインバータ11からの無効電力Qによる系統電圧Vsの電圧変動を緩和できる。以上の説明では、第1の実施の形態に対して電圧検出器28を設け、直流系統12を交流系統15に連系させた際に生じる系統電圧Vsの電圧変動を緩和するようにしたが、第2の実施の形態に対しても同様に適用することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
11…インバータ、12…直流系統、13…変圧器、14…連系遮断器、15…交流系統、16…励磁用変圧器、17…初充電回路、18…開閉器、19…DCコンデンサ、20…制御装置、21…起動制御部、22…電圧判定部、23…PWM制御部、24…位相同期回路、25…連系制御部、26…リアクトル、27…短絡スイッチ、28…電圧検出器、29…連系許容直流電圧演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流系統の直流を交流に変換し変圧器及び連系遮断器を介して交流系統に出力するインバータと、起動の際に前記交流系統から電力を入力し前記直流系統の直流コンデンサに充電する初充電回路と、前記起動の際の前記初充電回路による前記直流コンデンサの充電により前記直流コンデンサの電圧が前記インバータの最低動作可能電圧になると前記インバータをPWM運転し前記連系遮断器を閉じて前記直流系統を前記交流系統に連系させる制御装置とを備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記変圧器に直列接続されたリアクトルと、前記リアクトルに並列に設けられ前記リアクトルを短絡する短絡スイッチとを設け、前記制御装置は、前記起動の際には前記短絡スイッチを開き、前記直流系統を前記交流系統に連系させた後に前記短絡スイッチを閉じることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記直流系統を前記交流系統に連系した後に前記交流系統の系統電圧が予め定めた変動許容範囲を逸脱しないところまで前記直流コンデンサの電圧を上昇させた後に前記連系遮断器を閉じて前記直流系統を前記交流系統に連系させることを特徴とする請求項1または2記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−172333(P2011−172333A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32012(P2010−32012)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】