説明

電力変換装置

【課題】インバータ回路における交流出力電圧の対地電圧がアンバランスとなることを抑制した電力変換装置を提供する。
【解決手段】対地に浮遊容量を持つ直流電源が出力する直流電力を交流電力に変換する電力変換装置(太陽光発電用インバータ装置)30において、直流電源(太陽電池パネル)1が出力する直流電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路2と、前記昇圧チョッパ回路2から出力される直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路3と、を備え、直流電源(太陽電池パネル)1のマイナス極を接地し、昇圧チョッパ回路2のプラス極とインバータ回路2のプラス極を共通接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無停電電源装置(UPS),瞬低補償装置,太陽光発電用パワーコンディショナ(太陽光発電用インバータ装置)などの電力変換装置に係り、特に、交流出力電圧の対地電圧がアンバランスとなることを抑制する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来における太陽光発電用インバータ装置10の一例を示す概略図である。太陽光発電用インバータ装置10は、太陽電池パネル1によって発電した直流電圧をインバータ回路3によって交流電圧に変換し、電源系統4へ電力を供給する電力変換装置である。
【0003】
太陽光発電用インバータ装置10は、太陽電池パネル1に対する太陽からの照度や、インバータ回路3から電源系統4に供給する電力(すなわち、発電電力)によって、直流電圧が変動する。この直流電圧の変動に対して効率良くインバータ回路3を動作させるため、一般的には図3に示すように、昇圧チョッパ回路2が太陽電池パネル1とインバータ回路3との間に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−68385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図3に示すように、太陽光発電用インバータ装置10は、昇圧チョッパ回路2のマイナス極とインバータ回路3のマイナス極をコモンとしている(共通線で接続されている)。太陽電池パネル1は対地に対して浮遊容量をもつため、太陽電池パネル1はプラス極とマイナス極を数[μF]のコンデンサ5,5で接地された状態となり、対地に対してバランスが取れている状態となる。
【0006】
この状態で、昇圧チョッパ回路2において、通常のチョッパ動作を行うと、インバータ回路3の直流電圧におけるマイナス極とプラス極の対地電圧はアンバランスとなり、図4に示すように、インバータ回路3における交流出力電圧の対地電圧に直流分(オフセット)が加算される。そのため、インバータ回路3の交流出力電圧は、プラス極側に直流分(オフセット)が加算された分だけ対地電圧が大きくなり、太陽光発電用インバータ装置10の絶縁耐力を高くする必要がある。
【0007】
図5は、従来における太陽光発電用インバータ装置20の他例を示す概略図である。薄膜系の太陽電池パネル1は、制約によって直流側のマイナス極を接地する場合がある。この場合、図5に示すように、直流側の一点が接地される。その結果、図6に示すように、インバータ回路3の交流出力電圧には、更にプラス側に直流分(オフセット)が加算され、非接地時に対して、交流出力電圧の対地電圧が更にアンバランスとなる。
【0008】
以上示したようなことから、インバータ回路における交流出力電圧の対地電圧が、アンバランスとなることを抑制した電力変換装置を提供することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、対地に浮遊容量を持つ直流電源が出力する直流電力を交流電力に変換する電力変換装置であって、直流電源が出力する直流電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路と、前記昇圧チョッパ回路から出力される直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路と、を備え、直流電源のマイナス極を接地し、昇圧チョッパ回路のプラス極とインバータ回路のプラス極を共通線で接続したことを特徴とする。
【0010】
また、前記昇圧チョッパ回路は、直流電源の出力直流電圧をEp,インバータ回路の直流電圧をEcとした場合、2Ep=Ecとなるように、デューティ比を制御しても良い。
【0011】
また、前記昇圧チョッパ回路は、コンデンサが太陽電池パネルに並列に接続され、前記コンデンサの負極側には昇圧用リアクトルの一端が接続され、その昇圧用リアクトルの他端側とコンデンサとの正極の間にはスイッチング素子が接続された構成でも良い。
【0012】
前記電力変換装置には、太陽光発電用インバータ装置(太陽光発電用パワーコンディショナ),無停電電源装置(UPS),瞬低補償装置,などを適用しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インバータ回路の交流出力電圧のアンバランスを抑制した電力変換装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態における太陽光発電用インバータ装置の一例を示す概略図である。
【図2】実施形態における太陽光発電用インバータ装置の交流出力電圧を示すグラフである。
【図3】従来における太陽光発電用インバータ装置の一例を示す概略図である。
【図4】図3に示す太陽光発電用インバータ装置の交流出力電圧を示すグラフである。
【図5】従来における太陽光発電用インバータ装置の他例を示す概略図である。
【図6】図5に示す太陽光発電用インバータ装置の交流出力電圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的は、電力変換装置(例えば、太陽光発電用インバータ装置)における交流出力電圧の対地電圧を極力バランス(対象の波形に)させることである。
【0016】
図5に示したように、昇圧チョッパ回路2とインバータ回路3のマイナス極をコモンとして(共通線で)接続すると、交流出力電圧の対地電圧にはプラス側に直流分(オフセット)が加算される。また、太陽電池パネル1の直流側マイナス極を接地した場合、交流出力電圧の対地電圧にはプラス側に直流分(オフセット)が加算される。この2つの条件から、本発明における太陽光発電用インバータ装置30を提案する。
【0017】
具体的には、昇圧チョッパ回路2とインバータ回路3のプラス極をコモンとして(共通線で)接続する。また、接地電位をゼロVとし、インバータ回路3の直流側プラス極における対地からの平均電位をP,インバータ回路3の直流側マイナス極における対地からの平均電位をNとした場合、極力P=|N|となるように制御するものである。
【0018】
以下、本発明の実施形態における電力変換装置を図1,図2に基づいて詳細に説明する。
【0019】
[実施形態]
図1は、本実施形態における電力変換装置(例えば、太陽光発電用インバータ装置:以下、太陽光発電用インバータ装置と称する)30を示す概略図である。
【0020】
太陽光発電用インバータ装置30は、太陽電池パネル1と電源系統4との間に介挿され、太陽電池パネル1から出力される直流電力を交流電力に変換し、電源系統4に出力する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態における太陽光発電用インバータ装置30は、太陽電池パネル1に接続された昇圧チョッパ回路2と、その昇圧チョッパ回路2と電源系統4との間に介挿されたインバータ回路3とを備える。また、前記昇圧チョッパ回路2とインバータ回路3との間には、平滑用コンデンサC2が介挿されている。
【0022】
前記太陽電池パネル1は、対地に対して浮遊容量を持つため、プラス極とマイナス極を数[μF]のコンデンサ5,5で接地された状態となっている。
【0023】
前記昇圧チョッパ回路2は、コンデンサC1と、昇圧用リアクトルLと、直列に接続された2つのスイッチング素子Sw1,Sw2と、を備えた一般的な昇圧チョッパ回路であり、直流電圧の変動に対して効率良くインバータ回路3を動作させるために直流電圧を昇圧するものである。なお、本実施形態における前記スイッチング素子Sw1,Sw2は自己消弧形の半導体素子(例えば、IGBT等)とフリーホイールダイオードを逆並列に接続したものである。
【0024】
前記昇圧チョッパ回路2は、コンデンサC1が太陽電池パネル1に並列に接続され、そのコンデンサC1の負極側には昇圧用リアクトルLの一端が接続されている。当該昇圧用リアクトルLの他端側とコンデンサC1の正極側との間にはスイッチング素子Sw2が接続され、そのスイッチング素子Sw2と平滑コンデンサC2との間にはスイッチング素子Sw1が介挿されている。
【0025】
前記昇圧チョッパ回路2では、スイッチング素子Sw2がオンの時は、コンデンサC1から出力されたエネルギーを昇圧用リアクトルLに蓄積させる。そして、スイッチング素子Sw2がオフの時、昇圧用リアクトルLに蓄積されたエネルギーならびにコンデンサC1から出力されたエネルギーが平滑用コンデンサC2に供給される。
【0026】
このように、スイッチング素子Sw2のオン状態の時間とオフ状態の時間との割合を制御(すなわち、デューティ比を決定)することにより、コンデンサC1から供給される電圧を所定の電圧に昇圧することができる。
【0027】
前記平滑用コンデンサC2は、昇圧チョッパ回路2の出力とインバータ回路3の入力電圧を平滑化する。
【0028】
前記インバータ回路3は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、図1に示すように、一般的な三相電圧形インバータを用いるものとする。
【0029】
本実施形態における太陽光発電用インバータ装置30は、昇圧チョッパ回路2とインバータ回路3のプラス極側をコモンとして(共通線で)接続し、太陽電池パネル1の直流側マイナス極を接地した回路である。前記昇圧チョッパ回路2の制御方法、特性等は、従来技術における図3,図5のように、マイナス極側をコモンとして(共通線で)接続した場合と同様である。
【0030】
ここで、インバータ回路3の直流側の正極部における対地からの平均電位をP,負極部における対地からの平均電位をNとすると共に、図1に示すように、太陽電池パネル1の出力直流電圧をEp,インバータ回路3の直流電圧をEcとした場合、Pの電位はEp,Nの電位はEp−Ecとなる。そのため、インバータ回路3の交流出力電圧に加算される直流分(オフセット)の電圧は、Ep−Ec/2と表すことができる。
【0031】
そして、電位がP=|N|(すなわち、Ep=|Ep−Ec|)となる2Ep=Ecの場合は、インバータ回路3の直流電圧におけるマイナス極とプラス極の対地電圧のアンバランスが解消される。そのため、本実施形態における太陽光発電用インバータ装置30では、昇圧チョッパ回路2を、2Ep=Ecとなるように制御(デューティ比を決定)することにより、インバータ回路3から出力される交流出力電圧の対地電圧におけるアンバランスを抑制することが可能となる。
【0032】
図2は、本実施形態における太陽光発電用インバータ装置30の交流出力電圧を示すグラフである。図2に示すように、本実施形態における太陽光発電用インバータ装置30は、インバータ回路3の交流出力電圧における対地電圧のアンバランスが解消される。その結果、対地に対する最大電圧が緩和され、絶縁耐力を抑制することが可能となる。
【0033】
以上示したように、本実施形態における太陽光発電用インバータ装置30によれば、昇圧チョッパ回路2を有し、太陽電池パネル1のマイナス極を接地する場合において、昇圧チョッパ回路2とインバータ回路3のプラス極をコモンと(共通線で接続)した回路とすることにより、インバータ回路3の交流出力電圧の対地電圧におけるアンバランスを解消することが可能となる。
【0034】
また、インバータ回路3の交流出力電圧の対地電圧におけるアンバランスを解消することにより、対地に対する最大電圧が緩和され、絶縁耐力を抑制することが可能となる。
【0035】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0036】
例えば、実施形態では、三相電圧形のインバータ回路3を適用した電力変換装置30について詳細に説明したが、その他の構成のインバータ回路も適用可能である。
【0037】
また、前記昇圧チョッパ回路2も実施形態で説明した構成に限られるものではなく、例えば、スイッチング素子Sw1はダイオードに置換しても良い。
【0038】
さらに、実施形態では、電力変換装置30に太陽光発電用インバータ装置を適用したが、電力変換装置30には、無停電電源装置(UPS),瞬低補償装置,太陽光発電用パワーコンディショナなどの種々の電力変換装置が適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…太陽電池パネル(直流電源)
2…昇圧チョッパ回路
3…インバータ回路
4…電源系統
10,20,30…電力変換装置(太陽光発電用インバータ装置)
C1…コンデンサ
C2…平滑コンデンサ
L…昇圧用リアクトル
Sw1,Sw2…スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対地に浮遊容量を持つ直流電源が出力する直流電力を交流電力に変換する電力変換装置であって、
直流電源が出力する直流電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路と、
前記昇圧チョッパ回路から出力される直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路と、を備え、
直流電源のマイナス極を接地し、昇圧チョッパ回路のプラス極とインバータ回路のプラス極を共通線で接続したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記昇圧チョッパ回路は、
直流電源の出力直流電圧をEp,インバータ回路の直流電圧をEcとした場合、2Ep=Ecとなるように、デューティ比を制御することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記昇圧チョッパ回路は、
コンデンサが太陽電池パネルに並列に接続され、前記コンデンサの負極側には昇圧用リアクトルの一端が接続され、その昇圧用リアクトルの他端側とコンデンサとの正極の間にはスイッチング素子が接続されたことを特徴とする請求項1または2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電力変換装置は、太陽光発電用インバータ装置であることを特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−257342(P2012−257342A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127246(P2011−127246)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】