説明

電力変換装置

【課題】スイッチ素子のスイッチングを低減しながら入力電流の歪みを抑制する。
【解決手段】電力変換回路2は、昇降圧コンバータ回路7を備える。昇降圧コンバータ回路7は、スイッチ素子(Q1)11と、スイッチ素子(Q2)13とを備える。入力電圧Vinが出力電圧VBより低いとき、Q1はオン状態に固定され、Q2がヒステリシス制御され、昇圧制御が実行される。入力電圧Vinが出力電圧VBより高いとき、Q2はオフ状態に固定され、Q1がヒステリシス制御され、降圧制御が実行される。昇圧制御において、入力電圧Vinがゼロのとき、ヒステリシス幅は極小値に設定される。また、昇圧制御と降圧制御との切替時である入力電圧Vinが出力電圧VBに等しくなるときにも、ヒステリシス幅は極小値に設定される。これにより、入力電流の歪みが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力から直流電力を供給する電力変換装置に関する。より詳細には、昇降圧チョッパ回路をヒステリシス制御回路によって力率制御する電力変換装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、昇降圧チョッパ回路を用いて力率改善回路(PFC回路)を構成した電力変換装置を開示している。
【0003】
特許文献2は、入力電圧と出力電圧との比較結果に基づいて降圧チョッパ制御と、昇圧チョッパ制御とを切り替える電力変換装置を開示している。
【0004】
特許文献3および特許文献4は、電力変換装置におけるヒステリシス制御を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−18287号公報
【特許文献2】特開2000−350442号公報
【特許文献3】特開平8−228482号公報
【特許文献4】特開2003−18851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置では、電源側のスイッチ素子が常にスイッチング、すなわちオンとオフとを繰り返す。このため、リアクトルには、電源電流より大きいリアクトル電流が流れる。このような大きなリアクトル電流を流すために、損失が大きく、効率が低下するという問題点があった。また、リアクトル電流が大きくなることで、リアクトルのコアに発生する磁束密度が大きくなるため、リアクトルが大型化するという問題点があった。
【0007】
特許文献2に開示されるような降圧チョッパ制御と、昇圧チョッパ制御とを切り替える電力変換装置によるとスイッチ素子のスイッチングを減らすことでき、上記特許文献1の問題点を抑制することができる。
【0008】
しかし、入力電圧が0Vに近くなる低入力電圧域と、入力電圧と出力電圧との差が微小となる小電圧差域とで、制御が不安定となり、入力電流、すなわち電源電流に望ましくない歪みを生じることがあった。
【0009】
例えば、入力電圧の位相と入力電流の位相とを一致させるようにスイッチ素子をスイッチングする力率改善制御(PFC制御)を実現するために、広く知られた比例積分制御(PI制御)、またはヒステリシス制御を用いることができる。しかし、低入力電圧域および小電圧差域では、リアクトル電流を変化させるために十分な電圧が回路に与えられない。このため、目標入力電流の変化に追従して実際の入力電流を変化させることができずに、入力電流に歪みを生じることがあった。また、小電圧差域では、降圧チョッパ制御と昇圧チョッパ制御との間での制御の不連続な切り替わり、制御の遅れ、制御量の過剰な増大などのいずれかに起因して入力電流に歪みを生じることがあった。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、入力電流の歪みを抑制することができる電力変換装置を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、低入力電圧域および小電圧差域の両方において入力電流の歪みを抑制することができる電力変換装置を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、低入力電圧域および小電圧差域の両方において入力電流の歪みを抑制することができるヒステリシス制御を用いた電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0014】
請求項1に記載の発明は、入力電圧(Vin)を目標とする出力電圧(VB)に調整する昇降圧コンバータ回路(7、207)と、昇降圧コンバータ回路のリアクトル(L)に流れるリアクトル電流(IL)が目標電流(IL*)に一致するように、昇降圧コンバータ回路の少なくともひとつのスイッチ素子(Q1、Q2)をヒステリシス制御するヒステリシス制御手段(32b、42b)と、ヒステリシス制御手段におけるヒステリシス幅(T)を設定する手段(32c、42c)であって、昇圧制御と降圧制御との切替時にヒステリシス幅を極小値に設定するヒステリシス設定手段(42c)とを備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によると、昇圧制御と降圧制御との切替時にヒステリシス幅が極小値に設定される。このため、昇圧制御と降圧制御との切替に起因する電流波形の歪み、および/またはヒステリシス制御に起因する電流波形の歪みを抑制することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、切替時は、入力電圧が出力電圧と等しいときを含み、ヒステリシス設定手段(32c、42c)は、入力電圧が出力電圧と等しいときに、ヒステリシス幅を極小値に設定する切替時設定手段(42d)を備えることを特徴とする。
【0017】
この構成によると、入力電圧が出力電圧と等しいときにヒステリシス幅を極小値とするから、ヒステリシス制御によって十分なリアクトル電流を流せないことに起因する電流波形の歪みを抑制することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明では、ヒステリシス設定手段(32c、42c)は、さらに、入力電圧がゼロのときにも、ヒステリシス幅を極小値に設定するゼロクロス設定手段(32c)を備えることを特徴とする。この構成によると、入力電圧がゼロとなるときにも電流波形の歪みを抑制することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明では、極小値がゼロであることを特徴とする。この構成によると、ヒステリシス制御を不感帯のない閾値スイッチング制御に切替えるため、ヒステリシス制御に起因する電流波形の歪みを除去することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明では、ヒステリシス設定手段(32c、42c)は、ヒステリシス幅を極小値から徐々に増加させることを特徴とする。この構成によると、ヒステリシス幅が極小値となった後に、ヒステリシス幅が徐々に増加設定されるから、ヒステリシス制御における急激な変動を抑制し、電流波形の歪みを抑制することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明では、ヒステリシス設定手段(32c、42c)は、ヒステリシス幅を極小値に向けて徐々に減少させることを特徴とする。この構成によると、ヒステリシス幅が極小値になる前に、ヒステリシス幅が徐々に減少設定されるから、ヒステリシス制御における急激な変動を抑制し、電流波形の歪みを抑制することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明では、ヒステリシス設定手段(32c、42c)は、昇圧制御から降圧制御への切替の前、同切替の後、降圧制御から昇圧制御への切替の前、および同切替の後の少なくともいずれかにおいてヒステリシス幅を極小値に設定することを特徴とする。この構成によると、昇圧制御の初期、昇圧制御の末期、降圧制御の初期、および降圧制御の末期のいずれかにおいて電流波形の歪みを抑制することができる。
【0023】
請求項8に記載の発明では、ヒステリシス設定手段(32c、42c)は、昇圧制御において、入力電圧が増加するにつれてヒステリシス幅を徐々に増加させ、昇圧制御から降圧制御への切替時に、ヒステリシス幅を極小値に急激に減少させ、その後の降圧制御において、入力電圧が増加するにつれてヒステリシス幅を極小値から徐々に増加させ、さらに、入力電圧が減少するにつれてヒステリシス幅を極小値へ徐々に減少させ、降圧制御から昇圧制御への切替時に、ヒステリシス幅を極小値から急激に増加させ、その後の昇圧制御において、入力電圧が減少するにつれてヒステリシス幅を徐々に減少させることを特徴とする。この構成によると、ヒステリシス幅が、切替時に急激に減少または増加することにより、切替後の制御に適したヒステリシス幅が設定され、電流波形の歪みを抑制することができる。
【0024】
請求項9に記載の発明では、さらに、入力電圧と出力電圧とを比較し、入力電圧が出力電圧より低いか、または入力電圧が出力電圧より高いかを判定する判定手段(122)と、昇降圧コンバータ回路の降圧コンバータ回路のスイッチ素子(Q1)をオン状態に固定制御する第1オン固定手段(31)と、昇降圧コンバータ回路の昇圧コンバータ回路のスイッチ素子(Q2)をオフ状態に固定制御する第2オフ固定手段(41)と、判定手段により入力電圧が出力電圧より低いと判定されるとき、昇降圧コンバータ回路を昇圧コンバータ回路として作動させる昇圧制御手段(123)と、判定手段により入力電圧が出力電圧より高いと判定されるとき、昇降圧コンバータ回路を降圧コンバータ回路として作動させる降圧制御手段(123)とを備え、昇圧制御手段(123)は、第1オン固定手段(31)により降圧コンバータ回路のスイッチ素子(Q1)をオン状態に固定制御するとともに、ヒステリシス制御手段(32b)により昇圧コンバータ回路のスイッチ素子(Q2)を制御し、降圧制御手段(124)は、第2オフ固定手段(41)により昇圧コンバータ回路のスイッチ素子(Q2)をオフ状態に固定制御するとともに、ヒステリシス制御手段(42b)により降圧コンバータ回路のスイッチ素子(Q1)を制御することを特徴とする。この構成によると、比較的簡単な昇圧制御と降圧制御との切替により、スイッチ素子のスイッチ回数を抑えながら、電流波形の歪みの少ない電力変換装置を提供することができる。
【0025】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係る電力変換装置を含む充電回路を示す回路図である。
【図2】第1実施形態の制御装置の制御を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態の制御装置による昇圧制御を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態の制御装置による降圧制御を示すブロック図である。
【図5】第1実施形態における交流電圧Vacの波形を示す波形図である。
【図6】第1実施形態における入力電流Iacの波形を示す波形図である。
【図7】第1実施形態における全波整流電圧Vinと出力電圧VBとの波形を示す波形図である。
【図8】第1実施形態におけるリアクトル電流ILの波形を示す波形図である。
【図9】第1実施形態におけるヒステリシス幅Tの波形を示す波形図である。
【図10】本発明を適用した第2実施形態に係る電力変換装置を含む充電回路を示す回路図である。
【図11】比較例における交流電圧Vacの波形を示す波形図である。
【図12】比較例における入力電流Iacの波形を示す波形図である。
【図13】比較例におけるリアクトル電流ILの波形を示す波形図である。
【図14】本発明を適用した第2実施形態におけるヒステリシス幅Tの波形を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用した第1実施形態に係る電力変換装置を含む充電回路を示す回路図である。充電回路1は、交流電力を供給する交流電源3と、交流電源3の電力を直流電力に変換する電力変換装置2と、電力変換装置2から供給される直流電力によって充電される二次電池4とを備える。充電回路1は、負荷としての二次電池4に電力を供給する電源回路を構成する。交流電源2は、商用電源、または発電機によって提供される。二次電池4は、車両に搭載された車載型の二次電池、可搬型の二次電池、または地上に固定された定置型の二次電池である。二次電池4は、例えばリチウムイオン電池によって提供される。
【0029】
電力変換装置2は、ノイズを除去するフィルタ回路5と、交流電力を整流し全波整流電圧Vinを出力する整流回路6と、整流回路6から供給される電圧を二次電池4の電圧に変換するHブリッジ型の昇降圧コンバータ回路7と、昇降圧コンバータ回路7のスイッチ素子を制御する制御装置20とを備える。
【0030】
昇降圧コンバータ回路7は、交流電圧Vacの全波整流電圧Vinを目標とする出力電圧VBに調整する。全波整流電圧Vinは入力電圧Vinとも呼ばれる。昇降圧コンバータ回路7は、降圧型アームを構成する第1スイッチ素子11(以下、Q1と呼ぶ)と、ダイオード12(以下、D1と呼ぶ)とを備える。Q1とD1とは、整流回路6から供給される電圧(入力電圧とも呼ぶことができる)に対して直列に接続されている。さらに、昇降圧コンバータ回路7は、昇圧型アームを構成する第2スイッチ素子13(以下、Q2と呼ぶ)と、ダイオード14(以下、D2と呼ぶ)とを備える。Q2とD2とは、二次電池4の電圧(出力電圧とも呼ぶことができる)に対して直列に接続されている。Q1とQ2とは、IGBT素子(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ素子)である。よって、Q1とQ2とは、スイッチングトランジスタと、逆接続ダイオードとの並列回路として構成されている。Q1とD1との間と、Q2とD2との間との間には、インダクタンス素子がリアクトル15(以下、Lと呼ぶ)として設けられている。さらに、Q2とD2とに対して並列となるように、出力キャパシタとしてのコンデンサ16が設けられている。
【0031】
昇降圧コンバータ回路7は、昇降圧チョッパ回路とも呼ぶことができる。昇降圧コンバータ回路7は、昇圧コンバータ回路としての構成要素と、降圧コンバータ回路としての構成要素とを備える。Q1は、降圧コンバータ回路としてのスイッチ素子である。Q2は、昇圧コンバータ回路としてのスイッチ素子である。
【0032】
制御装置20は、昇降圧コンバータ回路7のQ1、Q2を制御する制御手段を提供する。制御装置20は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを格納している。記憶媒体は、メモリによって提供されうる。プログラムは、制御装置によって実行されることによって、制御装置をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように制御装置を機能させる。制御装置20が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。
【0033】
電力変換装置2は、交流電圧Vacを検出する入力電圧検出手段としての電圧検出器21と、出力電圧VBを検出する出力電圧検出手段としての電圧検出器22と、リアクトル電流ILを検出する電流検出手段としての電流検出器23とを備える。入力電圧Vinは、交流電圧Vacの絶対値|Vac|として求められる。なお、交流電圧Vacを検出する代わりに、交流電圧Vinを検出してもよい。これら複数の検出器21、22、23からの検出信号は、制御装置20に入力される。
【0034】
制御装置20は、入力電圧Vinと出力電圧VBとの比較に基づいて、昇圧制御、または降圧制御を切り替えて提供する。昇圧制御においては、昇降圧コンバータ回路7は昇圧コンバータ回路として機能する。降圧制御においては、昇降圧コンバータ回路7は降圧コンバータ回路として機能する。さらに、制御装置20は、昇圧制御と降圧制御との両方において、交流電圧Vacと入力電流Iacとの位相をほぼ一致させる力率改善制御(PFC制御)を実行する。入力電流Iacの目標電流Iac*は、交流電圧Vacに基づいて生成することができる。また、Lに流れる電流を制御することによって入力電流Iacの位相を制御することができる。そこで、昇降圧コンバータ回路7のLに流れるリアクトル電流ILが目標電流IL*に一致するように、昇降圧コンバータ回路7の少なくともひとつのスイッチ素子(Q1、Q2)が制御される。リアクトル電流ILの目標電流IL*は、入力電流Iacの目標電流Iac*から生成される。制御装置20は、ヒステリシス制御によってリアクトル電流ILを目標電流IL*に制御する。ヒステリシス制御においては、目標電流IL*より所定のヒステリシス幅Tだけ高い値にオンからオフへのスイッチング閾値が設けられ、目標電流IL*より所定のヒステリシス幅Tだけ低い値にオフからオンへのスイッチング閾値が設けられる。
【0035】
さらに、制御装置20が提供するヒステリシス制御においては、可変のヒステリシス幅Tが用いられる。ヒステリシス幅Tは、入力電圧Vin(交流電圧Vacの絶対値|Vac|)に応じて変化するように設定される。さらに、ヒステリシス幅Tは、入力電圧Vinが出力電圧VBと等しいときに極小値をとるように設定される。よって、制御装置20は、昇圧制御と降圧制御との切替時に、ヒステリシス幅Tを極小値に設定する。加えて、ヒステリシス幅Tは、入力電圧Vinがゼロ(0V)のときに極小値をとるように設定される。
【0036】
図2は、第1実施形態の制御装置20の制御を示すフローチャートである。制御装置20は、制御処理120を開始すると、ステップ121において信号入力と設定処理とを実行する。ステップ121では、交流電圧Vac、出力電圧VB、リアクトル電流ILが検出器21、22、23から入力される。さらに、目標入力電流Iac*が交流電圧Vacと同位相となるように生成される。また、目標リアクトル電流IL*が目標入力電流Iac*から生成される。
【0037】
ステップ122では、入力電圧Vinを示す交流電圧Vacの絶対値|Vac|と出力電圧VBとが比較される。交流電圧Vacの絶対値|Vac|は入力電圧Vinを示す。|Vac|<VBのとき、処理はステップ123へ進む。一方、|Vac|>VBのとき、処理はステップ124へ進む。また、|Vac|=VBのときにも、処理はステップ124へ進む。よって、ステップ122により、入力電圧Vinが出力電圧VBより低い(|Vac|<VB)か、または入力電圧Vinが出力電圧VBより高い(|Vac|>VB)かを判定する判定手段が提供される。
【0038】
ステップ123では、昇降圧コンバータ回路7を昇圧コンバータ回路として作動させる昇圧制御が実行される。ステップ123により、昇圧制御手段が提供される。昇圧制御では、降圧コンバータ回路の能動素子としてのQ1がオン状態に固定制御され、昇圧コンバータ回路の能動素子としてのQ2がヒステリシス制御される。
【0039】
ステップ124では、昇降圧コンバータ回路7を降圧コンバータ回路として作動させる降圧制御が実行される。ステップ124により、降圧制御手段が提供される。降圧制御では、降圧コンバータ回路の能動素子としてのQ1がヒステリシス制御され、昇圧コンバータ回路の能動素子としてのQ2がオフ状態に固定制御される。
【0040】
ステップ125では、電力変換回路2の動作を終了する要求が手動スイッチなどから入力されたか否かが判定される。終了要求がない場合は、ステップ121から124を繰り返す。終了要求がある場合は、制御処理120を終了し、再び制御処理120が起動されるまで制御装置20は待機状態となる。
【0041】
図3は、第1実施形態の制御装置による昇圧制御を示すブロック図である。昇圧制御123は、Q1オン固定ブロック31と、Q2ヒステリシス制御ブロック32とを備えるブロック構成によって実現することができる。Q1オン固定ブロック31は、Q1に継続的にゲート信号を与えることによって、Q1をオン状態に固定制御する第1オン固定手段を提供する。
【0042】
Q2ヒステリシス制御ブロック32は、リアクトル電流ILが目標リアクトル電流IL*に一致するように、Q2をヒステリシス制御する。Q2ヒステリシス制御ブロック32は、目標リアクトル電流IL*とリアクトル電流ILとの誤差Ieを算出する誤差検出器32aと、ヒステリシス制御ブロック32bと、ヒステリシス設定ブロック32cとを備える。
【0043】
ヒステリシス制御ブロック32bは、入力される誤差Ieと、図示されるヒステリシス特性とに基づいて、Q2のオン信号またはオフ信号を出力する。誤差Ieがヒステリシス幅Tを上回ると、ヒステリシス制御ブロック32bはQ2をオフ状態に制御する信号OFFを出力する。誤差Ieがヒステリシス幅−Tを下回ると、ヒステリシス制御ブロックはQ2をオン状態に制御する信号ONを出力する。ヒステリシス幅Tは、可変である。ヒステリシス制御ブロック32bは、ヒステリシス制御手段を提供する。ヒステリシス制御ブロック32bは、シュミットトリガ回路、正帰還をもつコンパレータ回路、ウインドコンパレータ回路、マイクロコンピュータを用いたソフトウェア制御などによって提供することができる。
【0044】
ヒステリシス設定ブロック32cは、交流電圧Vac、および出力電圧VBに基づいて、入力電流Iacの歪みを抑制するようにヒステリシス幅Tを設定し、ヒステリシス制御ブロック32bにおけるヒステリシス幅Tを調節する。ヒステリシス設定ブロック32cは、ヒステリシス設定手段を提供する。ヒステリシス設定ブロック32cは、比例設定ブロック32dを備える。比例設定ブロック32dは、交流電圧Vacの絶対値|Vac|、すなわち入力電圧Vinに応じてヒステリシス幅Tを比例的に設定する。比例設定ブロック32dは、所定の関数fに基づいて、ヒステリシス幅TをT=f(|Vac|)として設定する。比例設定ブロック32dは、ゼロクロス設定ブロックを含んでいる。ゼロクロス設定ブロックは、入力電圧Vinがゼロのとき、すなわち|Vac|=0のとき、ヒステリシス幅を極小値に設定する。入力電圧Vinがゼロのときのヒステリシス幅Tの極小値は、ゼロ(T=0)である。よって、比例設定ブロック32dは、ゼロクロス設定手段を提供する。
【0045】
なお、この実施形態では、|Vac|=VBのときには後述の降圧制御が実行されるから、切替時におけるヒステリシス幅Tの極小値は、降圧制御においてのみ与えられる。ただし、昇圧制御においても、切替時におけるヒステリシス幅Tの極小値が与えられてもよい。
【0046】
図4は、第1実施形態の制御装置による降圧制御を示すブロック図である。降圧制御124は、Q2オフ固定ブロック41と、Q1ヒステリシス制御ブロック42とを備えるブロック構成によって実現することができる。Q2オフ固定ブロック41は、Q2に継続的にゲート信号を与えることによって、Q2をオフ状態に固定制御する第2オフ固定手段を提供する。
【0047】
Q1ヒステリシス制御ブロック42は、リアクトル電流ILが目標リアクトル電流IL*に一致するように、Q1をヒステリシス制御する。Q1ヒステリシス制御ブロック42は、目標リアクトル電流IL*とリアクトル電流ILとの誤差Ieを算出する誤差検出器42aと、ヒステリシス制御ブロック42bと、ヒステリシス設定ブロック42cとを備える。ヒステリシス制御ブロック42bは、上述の昇圧制御におけるヒステリシス制御ブロック32bと同じである。
【0048】
ヒステリシス設定ブロック42cは、交流電圧Vac、および出力電圧VBに基づいて、入力電流Iacの歪みを抑制するようにヒステリシス幅Tを設定し、ヒステリシス制御ブロック42bにおけるヒステリシス幅Tを調節する。ヒステリシス設定ブロック42cは、ヒステリシス設定手段を提供する。ヒステリシス設定ブロック42cは、比例設定ブロック42dを備える。比例設定ブロック42dは、交流電圧Vacの絶対値|Vac|、すなわち入力電圧Vinと出力電圧VBとの差に応じてヒステリシス幅Tを比例的に設定する。比例設定ブロック42dは、所定の関数fに基づいて、ヒステリシス幅TをT=f(|Vac|−VB)として設定する。この比例設定ブロック42dは、切替時設定ブロックを備えている。切替時設定ブロックは、入力電圧Vinが出力電圧VBと等しいときに、ヒステリシス幅Tを極小値に設定する。言い換えると、昇圧制御から降圧制御への切替の直後である降圧制御の初期、および降圧制御から昇圧制御への切替の直前である降圧制御の末期にヒステリシス幅Tを極小値に設定する。切替時のヒステリシス幅Tの極小値は、ゼロ(T=0)である。よって、比例設定ブロック42dは、昇圧制御と降圧制御との切替時に、より詳細には、入力電圧Vinが出力電圧VBと等しいときに、ヒステリシス幅Tを極小値に設定する切替時設定手段を提供する。
【0049】
昇圧制御と降圧制御との切替は、典型的な態様においては入力電圧Vinが出力電圧VBと等しいときを境界として実行することができる。また、昇圧制御と降圧制御との切替は、入力電圧Vinが出力電圧VBと等しいときの前、または後に実行することもできる。例えば、昇圧制御と降圧制御との切替は、入力電圧Vinが出力電圧VBと等しいときの前後にヒステリシスを設けて実行されてもよい。昇圧制御と降圧制御との切替時という概念は、入力電圧Vinが出力電圧VBと等しいときを含み、かつ、そのときの前後の所定範囲を含む概念である。昇圧制御と降圧制御との切替時を、入力電圧Vinと出力電圧VBとの差が微小となる小電圧差域とし、この小電圧差域においてヒステリシス幅Tを極小値に設定してもよい。
【0050】
なお、この実施形態では、|Vac|≧VBのときには、交流電圧Vacがゼロクロスすることはないから、ゼロクロスにおけるヒステリシス幅Tの極小値は、前述の昇圧制御においてのみ与えられる。
【0051】
また、昇圧制御における誤差検出器32aと、降圧制御における誤差検出器42aとは、共通の回路、または演算処理によって提供することができる。昇圧制御におけるヒステリシス制御ブロック32bと、降圧制御におけるヒステリシス制御ブロック42bとも、共通の回路、または演算処理によって提供することができる。さらに、昇圧制御におけるヒステリシス設定ブロック32cと、降圧制御におけるヒステリシス設定ブロック42cとは、それらの大部分が共通の回路、または演算処理によって提供することができる。
【0052】
また、Q1オン固定ブロック31と、Q1ヒステリシス制御ブロック42とは、降圧コンバータ回路のスイッチ素子としてのQ1を制御するための降圧コンバータ回路制御手段を構成している。一方、Q2オフ固定ブロック41と、Q2ヒステリシス制御ブロック32とは、昇圧コンバータ回路のスイッチ素子としてのQ2を制御するための昇圧コンバータ回路制御手段を構成している。
【0053】
次に、波形図に基づいてこの実施形態の作動を説明する。図5は、交流電圧Vacの波形を示す波形図である。図6は、入力電流Iacの波形を示す波形図である。図7は、全波整流電圧Vinと出力電圧VBとの波形を示す波形図である。全波整流電圧Vinは、入力電圧Vinである。図8は、リアクトル電流ILの波形を示す波形図である。図9は、ヒステリシス幅Tの波形を示す波形図である。
【0054】
正弦波の交流電圧Vacがゼロから徐々に上昇すると、入力電圧Vinも上昇する。入力電圧Vinがゼロのときと入力電圧Vinが出力電圧VBと等しいときとの間では、制御装置20は昇圧制御を実行する。昇圧制御においては、Q1オン固定ブロック31によりQ1はオン状態に固定され、Q2はQ2ヒステリシス制御ブロック32によりデューティ制御される。この結果、Q2とLとを含む昇圧コンバータ回路により入力電圧Vinが昇圧され、出力電圧VBが供給される。さらに、誤差検出器32aとヒステリシス制御ブロック32bとによるフィードバック制御により入力電流Iacは、交流電圧Vacと同位相で変化する。
【0055】
昇圧制御において入力電圧Vinが時刻t0から増加するとき、ヒステリシス設定ブロック32cは、入力電圧Vinが増加するにつれてヒステリシス幅Tを徐々に増加させる。この実施例では、ヒステリシス幅Tを入力電圧Vinに比例して増加するように設定する。入力電圧Vinがゼロのとき、ヒステリシス設定ブロック32cは、ヒステリシス幅Tを最小値、T=0に設定する。よって、入力電圧Vinがゼロのとき、ヒステリシス設定ブロック32cは、ヒステリシス幅Tを極小値に設定する。入力電圧Vinが増加すると、入力電圧Vinが出力電圧VBと等しいときに向けて、ヒステリシス幅Tは徐々に増加させられる。やがて、時刻t1の直前に入力電圧Vinが出力電圧VBの直下に到達すると、ヒステリシス幅Tは、昇圧制御における最大値TP2に到達する。
【0056】
時刻t1において入力電圧Vinが出力電圧VBに到達すると、昇圧制御から降圧制御への切替が実行される。降圧制御においては、Q2オフ固定ブロック41によりQ2はオフ状態に固定され、Q1はQ1ヒステリシス制御ブロック42によりデューティ制御される。この結果、Q1とLとを含む降圧コンバータ回路により入力電圧Vinが降圧され、出力電圧VBが供給される。さらに、誤差検出器42aとヒステリシス制御ブロック42bとによるフィードバック制御により入力電流Iacは、交流電圧Vacと同位相で変化する。
【0057】
降圧制御の間、ヒステリシス設定ブロック42cは、ヒステリシス幅Tを入力電圧Vinがと出力電圧VBとの差が増加するにつれてヒステリシス幅Tを徐々に増加させる。すなわち、入力電圧Vinと出力電圧VBとの差に比例して増加するようにヒステリシス幅Tを設定する。入力電圧Vinと出力電圧VBとが等しいとき、ヒステリシス設定ブロック42cは、ヒステリシス幅Tを最小値、T=0に設定する。よって、昇圧制御から降圧制御へ切替えられた直後、すなわち降圧制御の初期に、ヒステリシス設定ブロック42cは、ヒステリシス幅Tを最小値、T=0に設定する。昇圧制御から降圧制御への切替の直前にはヒステリシス幅Tは昇圧制御における最大値TP2にあったから、ヒステリシス幅Tは、昇圧制御から降圧制御への切替の直後に、昇圧制御における最大値TP2から極小値に向けて急激に減少される。その後の降圧制御においては、入力電圧Vinが増加するにつれて、ヒステリシス幅Tは極小値から徐々に増加させられる。よって、ヒステリシス設定ブロック42cは、昇圧制御から降圧制御への切替時に、ヒステリシス幅Tを極小値に急激に減少させ、その後に再び増加させることによって、ヒステリシス幅Tの変化に極小点を設定する。
【0058】
やがて、入力電圧Vinがピーク値に到達すると、ヒステリシス幅Tは、降圧制御における最大値TP1に到達する。その後、入力電圧Vinがピーク値から減少すると、入力電圧Vinが減少するにつれてヒステリシス幅Tは、極小値へ向けて徐々に減少させられる。
【0059】
入力電圧Vinがさらに減少し、時刻t2において入力電圧Vinと出力電圧VBとが等しくなると、ヒステリシス設定ブロック42cは、ヒステリシス幅Tを最小値、T=0に設定する。言い換えると、降圧制御の末期、すなわち降圧制御から昇圧制御へ切替える直前に、ヒステリシス設定ブロック42cは、ヒステリシス幅Tを最小値、T=0に設定する。
【0060】
入力電圧Vinがさらに減少し、入力電圧Vinが出力電圧VBを下回ると、降圧制御から昇圧制御への切替が実行される。昇圧制御においては、Q1オン固定ブロック31によりQ1はオン状態に固定され、Q2はQ2ヒステリシス制御ブロック32によりデューティ制御される。この結果、Q2とLとを含む昇圧コンバータ回路により入力電圧Vinが昇圧され、出力電圧VBが供給される。さらに、誤差検出器32aとヒステリシス制御ブロック32bとによるフィードバック制御により入力電流Iacは、交流電圧Vacと同位相で変化する。
【0061】
昇圧制御に切替えられた直後は、入力電圧Vinが比較的高いから、ヒステリシス設定ブロック32cは、昇圧制御におけるヒステリシス幅Tの最大値TP2を設定する。降圧制御から昇圧制御への切替の直前には、ヒステリシス幅Tは、降圧制御における極小値にあったから、ヒステリシス幅Tは、降圧制御から昇圧制御への切替の直後に、降圧制御における極小値T=0から昇圧制御における最大値TP2に向けて急激に増加される。よって、ヒステリシス設定ブロック42cは、降圧制御から昇圧制御への切替時に、ヒステリシス幅Tを極小値から急激に増加させることによって、ヒステリシス幅Tの変化に極小点を設定する。
【0062】
昇圧制御において入力電圧Vinが減少するとき、ヒステリシス設定ブロック32cは、入力電圧Vinが減少するにつれてヒステリシス幅Tを徐々に減少させる。入力電圧Vinが減少すると、ヒステリシス幅Tは昇圧制御における最大値TP2から徐々に減少される。やがて、時刻t3において入力電圧Vinがゼロに到達すると、ヒステリシス設定ブロック32cは、ヒステリシス幅Tを最小値、T=0に設定する。再び入力電圧Vinが増加に転じると、ヒステリシス幅Tも徐々に増加させられる。よって、入力電圧Vinがゼロのとき、ヒステリシス設定ブロック32cは、ヒステリシス幅Tを極小値に設定することによって、ヒステリシス幅Tの変化に極小点を設定する。
【0063】
以上に述べた実施形態によると、昇圧制御と降圧制御とを切替えることにより、昇降圧コンバータ回路のスイッチ素子のスイッチング回数を抑えることができる。さらに、昇圧制御と降圧制御との切替時にヒステリシス幅が極小値に設定されから、昇圧制御と降圧制御との切替に起因する電流波形の歪み、および/またはヒステリシス制御に起因する電流波形の歪みを抑制することができる。また、入力電圧が出力電圧と等しいときにヒステリシス幅を極小値とするから、ヒステリシス制御によって十分なリアクトル電流を流せないことに起因する電流波形の歪みを抑制することができる。さらに、入力電圧がゼロとなるときにも電流波形の歪みを抑制することができる。また、昇圧制御から降圧制御への切替えの後は、ヒステリシス幅が極小値となった後に、ヒステリシス幅が徐々に増加設定されるから、ヒステリシス制御における急激な変動を抑制し、電流波形の歪みを抑制することができる。また、降圧制御から昇圧制御への切替えの前には、ヒステリシス幅が極小値になる前に、ヒステリシス幅が徐々に減少設定されるから、ヒステリシス制御における急激な変動を抑制し、電流波形の歪みを抑制することができる。また、降圧制御の初期、および降圧制御の末期において電流波形の歪みを抑制することができる。
【0064】
(第2実施形態)
図10は、本発明を適用した第2実施形態に係る電力変換装置202を含む充電回路1を示す回路図である。電力変換装置202は、逆潮流を可能とするようにブリッジ回路のすべてのアームにスイッチ素子を備えている。上記整流回路6に代えて4つのスイッチ素子を用いた整流回路206が設けられている。整流回路206のスイッチ素子は、交流電力を整流し全波整流電圧Vinを出力するように制御される。さらに、整流回路206のスイッチ素子は、逆潮流を可能とするようにも制御される。昇降圧コンバータ回路207には、上記ダイオード12に代えてスイッチ素子212(以下、Q3という)が用いられ、上記ダイオード14に代えてスイッチ素子214(以下、Q4という)が用いられている。制御装置220は、Q1、Q2、Q3、Q4を制御することによって、上記実施形態と同じ昇圧制御と降圧制御とを提供する。さらに、制御装置220は、逆潮流を可能とするようにもQ1、Q2、Q3、Q4を制御する。
【0065】
この実施形態においても、上記実施形態と同様の制御が実行され、同様の作用効果が得られる。
【0066】
(比較例)
以上に説明した実施形態では、PFC制御のためにヒステリシス制御器を使用し、昇圧制御と降圧制御とを切替えるとともに、昇圧制御と降圧制御との切替え時にヒステリシス幅を極小値とした。これに代えて、PFC制御のためにPI制御(比例積分制御)を使用した場合の比較例における波形図を説明する。図11は、比較例における交流電圧Vacの波形を示す波形図である。図12は、比較例における入力電流Iacの波形を示す波形図である。図13は、比較例におけるリアクトル電流ILの波形を示す波形図である。
【0067】
この比較例によると、入力電圧が出力電圧に到達し、昇圧制御から降圧制御へ切替えられる時刻t1において、入力電流Iacに大きな歪みが見られる。再び、入力電圧が出力電圧に到達し、降圧制御から昇圧制御へ切替えられる時刻t2においても、入力電流Iacに大きな歪みが見られる。さらに、昇圧制御の間に、入力電圧がゼロに到達するゼロクロスの時刻t3においても、入力電流Iacに大きな歪みが見られる。これらの入力電流Iacにおける歪みは高調波を生じ、交流電源に好ましくない影響を与えることがある。
【0068】
これに対して以上に説明した実施形態では、入力電流Iacの歪みを抑制することができ、高調波の影響を低減することができる。
【0069】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0070】
例えば、図14に示すように、|Vac|=0と|Vac|=VBの間におけるヒステリシス幅は、|Vac|=VBから徐々に上昇するように、および/または|Vac|=VBに向けて徐々に減少するように設定されてもよい。さらに、|Vac|=0におけるヒステリシス幅の極小値と、|Vac|=VBにおけるヒステリシス幅の極小値とは、互いに異なる値を設定してもよい。例えば、|Vac|=0におけるヒステリシス幅の極小値をゼロとし、|Vac|=VBにおけるヒステリシス幅の極小値をヒステリシス幅の最大値の1/2としてもよい。|Vac|=VBにおけるヒステリシス幅の極小値は、電流波形の歪みをより小さく抑制するように、昇圧制御から降圧制御への切替時と、降圧制御から昇圧制御への切替時とで異なる値を設定してもよい。
【0071】
さらに、ヒステリシス幅Tは、入力電圧Vinが0Vに近くなる低入力電圧域、すなわち|Vac|=0を中心とする所定幅の低入力電圧域において極小値をとるように設定されてもよい。また、ヒステリシス幅Tは、入力電圧Vinと出力電圧VBとの差が微小となる小電圧差域、すなわち|Vac|=VBを中心とする所定幅の小電圧差域において極小値をとるように設定されてもよい。
【0072】
上記実施形態では、入力電圧Vinと出力電圧VBとが等しいときは、降圧制御が実行される。これに代えて、入力電圧Vinと出力電圧VBとが等しいときには、昇圧制御が実行されるようにステップ122における不等号を設定してもよい。さらに、上記実施形態では、入力電圧Vinと出力電圧VBとが等しいとき、すなわち|Vac|=VBのときに設定されるヒステリシス幅の極小値は、降圧制御の初期、および降圧制御の末期に使用される。これに代えて、あるいは加えて、ヒステリシス幅の極小値が、昇圧制御の初期、および昇圧制御の末期に使用されるように設定してもよい。ヒステリシス幅の極小値が、昇圧制御から降圧制御への切替の前、同切替の後、降圧制御から昇圧制御への切替の前、および同切替の後の少なくともいずれかにおいて使用されるように、ヒステリシス幅の極小値を設定してもよい。これにより、昇圧制御の初期、昇圧制御の末期、降圧制御の初期、および降圧制御の末期のいずれかにおいてヒステリシス制御に起因する電流波形の歪みを抑制することができる。
【0073】
制御装置20、220が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置20、220をアナログ回路によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 充電回路、2 電力変換装置、3 交流電源、4 二次電池(負荷)、5 フィルタ回路、6 整流回路、7 昇降圧コンバータ回路、11 スイッチ素子(Q1)、12 ダイオード(D1)、13 スイッチ素子(Q2)、14 ダイオード(D2)、15 リアクトル(L)、16 コンデンサ、20 制御装置、21 電圧検出器、22 電圧検出器、23 電流検出器、31 Q1オン固定ブロック、32 Q2ヒステリシス制御ブロック、41 Q2オフ固定ブロック、42 Q1ヒステリシス制御ブロック、202 電力変換装置、206 整流回路、207 昇降圧コンバータ回路、212 スイッチ素子(Q3)、214 スイッチ素子(Q4)、220 制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧(Vin)を目標とする出力電圧(VB)に調整する昇降圧コンバータ回路(7、207)と、
前記昇降圧コンバータ回路のリアクトル(L)に流れるリアクトル電流(IL)が目標電流(IL*)に一致するように、前記昇降圧コンバータ回路の少なくともひとつのスイッチ素子(Q1、Q2)をヒステリシス制御するヒステリシス制御手段(32b、42b)と、
前記ヒステリシス制御手段におけるヒステリシス幅(T)を設定する手段(32c、42c)であって、昇圧制御と降圧制御との切替時に前記ヒステリシス幅を極小値に設定するヒステリシス設定手段(42c)とを備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記切替時は、前記入力電圧が前記出力電圧と等しいときを含み、前記ヒステリシス設定手段(32c、42c)は、前記入力電圧が前記出力電圧と等しいときに、前記ヒステリシス幅を極小値に設定する切替時設定手段(42d)を備えることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記ヒステリシス設定手段(32c、42c)は、さらに、前記入力電圧がゼロのときにも、前記ヒステリシス幅を極小値に設定するゼロクロス設定手段(32c)を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記極小値がゼロであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記ヒステリシス設定手段(32c、42c)は、
前記ヒステリシス幅を前記極小値から徐々に増加させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記ヒステリシス設定手段(32c、42c)は、
前記ヒステリシス幅を前記極小値に向けて徐々に減少させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記ヒステリシス設定手段(32c、42c)は、前記昇圧制御から前記降圧制御への切替の前、同切替の後、前記降圧制御から前記昇圧制御への切替の前、および同切替の後の少なくともいずれかにおいて前記ヒステリシス幅を前記極小値に設定することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記ヒステリシス設定手段(32c、42c)は、
前記昇圧制御において、前記入力電圧が増加するにつれて前記ヒステリシス幅を徐々に増加させ、
前記昇圧制御から前記降圧制御への切替時に、前記ヒステリシス幅を前記極小値に急激に減少させ、
その後の前記降圧制御において、前記入力電圧が増加するにつれて前記ヒステリシス幅を前記極小値から徐々に増加させ、さらに、前記入力電圧が減少するにつれて前記ヒステリシス幅を前記極小値へ徐々に減少させ、
前記降圧制御から前記昇圧制御への切替時に、前記ヒステリシス幅を前記極小値から急激に増加させ、
その後の前記昇圧制御において、前記入力電圧が減少するにつれて前記ヒステリシス幅を徐々に減少させることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項9】
さらに、
前記入力電圧と前記出力電圧とを比較し、前記入力電圧が前記出力電圧より低いか、または前記入力電圧が前記出力電圧より高いかを判定する判定手段(122)と、
前記昇降圧コンバータ回路の降圧コンバータ回路のスイッチ素子(Q1)をオン状態に固定制御する第1オン固定手段(31)と、
前記昇降圧コンバータ回路の昇圧コンバータ回路のスイッチ素子(Q2)をオフ状態に固定制御する第2オフ固定手段(41)と、
前記判定手段により前記入力電圧が前記出力電圧より低いと判定されるとき、前記昇降圧コンバータ回路を昇圧コンバータ回路として作動させる昇圧制御手段(123)と、
前記判定手段により前記入力電圧が前記出力電圧より高いと判定されるとき、前記昇降圧コンバータ回路を降圧コンバータ回路として作動させる降圧制御手段(123)とを備え、
前記昇圧制御手段(123)は、
前記第1オン固定手段(31)により前記降圧コンバータ回路のスイッチ素子(Q1)をオン状態に固定制御するとともに、前記ヒステリシス制御手段(32b)により前記昇圧コンバータ回路のスイッチ素子(Q2)を制御し、
前記降圧制御手段(124)は、
前記第2オフ固定手段(41)により前記昇圧コンバータ回路のスイッチ素子(Q2)をオフ状態に固定制御するとともに、前記ヒステリシス制御手段(42b)により前記降圧コンバータ回路のスイッチ素子(Q1)を制御することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−85397(P2012−85397A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227706(P2010−227706)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】