説明

電力変換装置

【課題】コンデンサモジュールの冷却効率に優れた電力変換装置を提供すること。
【解決手段】スイッチング素子を内蔵した半導体モジュール2と半導体モジュール2を両主面から冷却する複数の冷却管3とを積層してなる積層体4と、コンデンサ素子51を内蔵したコンデンサモジュール5とを有する電力変換装置1。コンデンサモジュール5は、コンデンサ素子51の電極に接続された複数のコンデンサバスバー52を備えると共に、コンデンサバスバー52から放熱用突出部53を突出させてなる。放熱用突出部53は、積層体4における互いに隣り合う冷却管3の間に挟持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュールと該半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる積層体と、コンデンサ素子を内蔵したコンデンサモジュールとを有する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュールと該半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる積層体と、コンデンサ素子を内蔵したコンデンサモジュールとを有する電力変換装置が開示されている。かかる電力変換装置においては、冷却管に流れる冷却媒体によって、半導体モジュールを冷却し、半導体モジュールの温度上昇を防いでいる。しかし、コンデンサモジュールを冷却する冷却手段は、特に設けられていない。それゆえ、コンデンサモジュールの発熱が大きい場合には、その温度上昇を招くおそれがある。
【0003】
そこで、冷媒流路を内部に有する冷却プレートに、コンデンサモジュールを接触配置してなる電力変換装置が提案されている(特許文献2)。この電力変換装置においては、半導体モジュールを冷却する冷却器に流す冷却媒体を、冷却プレート内にも導入して、コンデンサモジュールを冷却しようとするものである。
【0004】
また、電力変換装置に設けられたコンデンサモジュールを冷却する手段として、特許文献3、4には、コンデンサモジュールの端子の一部を、冷却器に熱的に接触させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−174760号公報
【特許文献2】特開2005−19454号公報
【特許文献3】特開2010−252460号公報
【特許文献4】特開2005−252461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示された電力変換装置は、コンデンサモジュールの側面を冷却プレートに接触させた構成であるため、コンデンサモジュールの冷却効率を高くすることは困難である。すなわち、コンデンサモジュールは、コンデンサ素子を樹脂にてモールドしてなる。それゆえ、コンデンサモジュールをその側面において冷却プレートに接触させた構成では、コンデンサ素子と冷却プレートとの間に、熱伝導性に劣るモールド樹脂が介在することとなる。その結果、コンデンサ素子の冷却を効率的に行うことが困難となる。
【0007】
また、特許文献3、4に記載の電力変換装置は、コンデンサモジュールの端子を冷却器に熱的に接触させているが、その接触は、片面において行われているのみである。それゆえ、コンデンサモジュールの冷却効率を高め難く、コンデンサモジュールの発熱が大きい場合、その温度上昇を防ぐことが困難となるおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、コンデンサモジュールの冷却効率に優れた電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュールと該半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる積層体と、コンデンサ素子を内蔵したコンデンサモジュールとを有する電力変換装置であって、
上記コンデンサモジュールは、上記コンデンサ素子の電極に接続された複数のコンデンサバスバーを備えると共に、該コンデンサバスバーから放熱用突出部を突出させてなり、
該放熱用突出部は、上記積層体における互いに隣り合う上記冷却管の間に挟持されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
上記電力変換装置においては、上記コンデンサバスバーから突出した上記放熱用突出部が、上記積層体における互いに隣り合う上記冷却管の間に挟持されている。これにより、コンデンサモジュールの熱を、上記放熱用突出部を介して冷却管に放熱することができる。また、上記放熱用突出部は、上記コンデンサ素子の電極に接続されたコンデンサバスバーから突出しているため、コンデンサ素子の熱が、コンデンサバスバーを介して放熱用突出部に伝わる。それゆえ、この放熱用突出部を冷却管によって冷却することにより、コンデンサモジュールを内部から冷却することができることとなり、コンデンサ素子を効率的に冷却することができる。
【0011】
また、特に、上記放熱用突出部は、隣り合う冷却管の間に挟持されているため、放熱用突出部を互いに反対側の両面から冷却することができる。これにより、放熱用突出部を効率的に冷却することができ、コンデンサモジュールの冷却効率を向上させることができる。また、複数の冷却管は、上記積層体における半導体モジュールを冷却するために元々積層配置されるものであるため、上記放熱用突出部を挟持するためだけに改めて配設したり、冷却管の構造を大きく変えたりする必要もない。
【0012】
以上のごとく、本発明によれば、コンデンサモジュールの冷却効率に優れた電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における、電力変換装置の断面説明図であり、図2のA−A線矢視断面相当の説明図。
【図2】実施例1における、高さ方向から見た電力変換装置の平面説明図。
【図3】実施例1における、コンデンサモジュールの斜視説明図。
【図4】実施例1における、電力変換装置の回路図。
【図5】コンデンサモジュールに対して固定されていない積層体の振動の様子を示す説明図。
【図6】実施例1における、コンデンサモジュールに対して固定された積層体の振動の様子を示す説明図。
【図7】実施例2における、高さ方向から見た電力変換装置の平面説明図。
【図8】実施例3における、コンデンサモジュールの斜視説明図。
【図9】実施例4における、電力変換装置の一部の断面説明図。
【図10】実施例5における、コンデンサモジュールの斜視説明図。
【図11】実施例6における、積層体とコンデンサモジュールとを互いに組み付ける前の状態の電力変換装置の断面説明図。
【図12】実施例7における、高さ方向の1箇所に係合部を備えた放熱用突出部の説明図。
【図13】実施例7における、高さ方向の2箇所に係合部を備えた放熱用突出部の説明図。
【図14】実施例7における、凹部を設けることで高さ方向の2箇所に係合部を備えた放熱用突出部の説明図。
【図15】実施例8における、電力変換装置の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記放熱用突出部は、上記コンデンサバスバーと一体的に構成されたものであってもよいし、上記コンデンサバスバーに接続された別部材であってもよい。
【0015】
また、上記放熱用突出部は、上記コンデンサ素子と上記半導体モジュールとの間の電流経路から外れる状態で形成されている(請求項2)。この場合には、上記冷却管に渦電流が流れることを防ぐことができる。すなわち、上記冷却管が金属からなる場合において、放熱用突出部が電流経路の一部となっていると、放熱用突出部の周りに配される冷却管に渦電流が発生することとなる。これにより、電力変換装置の電力損失が大きくなってしまうおそれがある。そこで、上記放熱用突出部が上記電流経路から外れる状態で形成されていることにより、電力変換装置の損失が大きくなることを防ぐことができる。
また、渦電流によって冷却管が発熱することも考えられるが、上記放熱用突出部を上記電流経路から外れる状態で形成することにより、冷却管の発熱を防ぎ、コンデンサモジュールの冷却効率をより向上させることができる。
【0016】
また、上記放熱用突出部は、上記複数のコンデンサバスバーのうち上記積層体により近い上記コンデンサバスバーから突出していることが好ましい(請求項3)。この場合には、上記放熱用突出部を介したコンデンサモジュールと冷却管との間の伝熱距離を短くすることができるため、コンデンサモジュールの冷却効率をより向上させることができる。
【0017】
また、複数の上記コンデンサバスバーから、上記放熱用突出部がそれぞれ突出していることが好ましい(請求項4)。この場合には、上記コンデンサ素子を両電極側から冷却することができるため、コンデンサモジュールの冷却効率をより一層向上させることができる。
【0018】
また、上記放熱用突出部は、隣り合う上記冷却管の間に上記半導体モジュールと共に挟持されており、該半導体モジュールよりも上記冷却管に流れる冷却媒体の上流側となる位置に配置されていることが好ましい(請求項5)。この場合には、上記積層体の積層方向の寸法を小さくすることができると共に、冷却管の数を少なくすることができる。これにより、電力変換装置の小型化を容易にすることができると共に、製造コストを低減することができる。また、上記放熱用突出部が上記半導体モジュールよりも冷却媒体の上流側に配されているため、冷却媒体による放熱用突出部の冷却を効率的に行うことができる。すなわち、半導体モジュールと熱交換する前の冷却媒体によって、放熱用突出部を冷却することができるため、その冷却効率が高く、コンデンサモジュールを効率的に冷却することができる。
【0019】
また、上記放熱用突出部は、隣り合う上記冷却管の間に加圧された状態で挟持されており、上記積層体と上記コンデンサモジュールとを互いに固定する支持部材としても機能していることが好ましい(請求項6)。この場合には、上記積層体の振動を抑制することができる。これにより、半導体モジュールとこれに接続されるバスバー等との間の接続部の寿命等を向上させ、電力変換装置の耐振性を向上させることができる。
【0020】
また、上記コンデンサモジュールは、上記積層体に対して、積層方向と直交する方向に配置されており、上記放熱用突出部は、上記冷却管に対して、上記積層体と上記コンデンサモジュールとの並び方向に係合する係合部を設けてなることが好ましい(請求項7)。この場合には、上記積層体の振動を一層抑制することができ、電力変換装置の耐振性を一層向上させることができる。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
上記電力変換装置の実施例につき、図1〜図6を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、図1に示すごとく、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュール2と該半導体モジュール2を両主面から冷却する複数の冷却管3とを積層してなる積層体4と、コンデンサ素子51を内蔵したコンデンサモジュール5とを有する。
【0022】
コンデンサモジュール5は、コンデンサ素子51の電極にそれぞれ接続された複数のコンデンサバスバー52を備えると共に、該コンデンサバスバー52から放熱用突出部53を突出させてなる。
放熱用突出部53は、積層体4における互いに隣り合う冷却管3の間に挟持されている。
【0023】
本例の電力変換装置1は、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に搭載され、直流電源(バッテリ)から供給される直流電力を交流電力に変換して、三相交流の回転電機を駆動することができるよう構成されている。
【0024】
図1、図2に示すごとく、積層体4は、複数の半導体モジュール2を、アルミニウム等の金属からなる複数の冷却管3と共に積層してなる。隣り合う冷却管3の間には、2個の半導体モジュール2が挟持されており、一部を除いて、冷却管3と半導体モジュール2とは交互に積層されている。そして、互いに隣り合う一組の冷却管3の間には、半導体モジュール2が挟持されておらず、上記放熱用突出部53が挟持されている。
【0025】
なお、放熱用突出部53は、例えば、コンデンサバスバー52と同材料である銅等の金属からなる。そして、この場合、放熱用突出部53と冷却管3との間には、例えば伝熱性に優れた絶縁膜が介在しており、両者が互いに電気的に絶縁されるよう構成されている。
【0026】
具体的には、積層体4は、例えば、10本の冷却管3を並列配置してなると共に、隣り合う冷却管3は、その長手方向の両端部付近において、連結管31によって連結されている。この場合、10本の冷却管3とこれらを連結する連結管31とによって、冷却器30が構成されている。そして、10本の冷却管3における隣り合う冷却管3の間に形成された9段の隙間のうち、真ん中(5段目)の隙間に、放熱用突出部53が一対配設され、他の隙間に、半導体モジュール2が配設されている。
【0027】
図2に示すごとく、放熱用突出部53と複数の半導体モジュール2とは、積層方向に直線状に2列、並んで配置されている。つまり、冷却管3の間の8段の隙間にそれぞれ2個ずつ半導体モジュール2が配置され、他の1段の隙間に2本の放熱用突出部53が配置されている。
【0028】
このうちの2段の隙間に配された4個の半導体モジュール2が、後述する電力変換装置1(図4参照)の一部を構成する昇圧コンバータ部101の上アーム側及び下アーム側の半導体モジュール2に対応する。また、6段に配された12個の半導体モジュール2が、後述する電力変換装置1の一部を構成するインバータ部102の上アーム側及び下アーム側の半導体モジュール2に対応する。図4においては、コンバータ部101を構成する半導体モジュール2が2個で、インバータ部102を構成する半導体モジュール2が2個の構成としているが、これら図4に示す各半導体モジュール2は、互いに並列接続された複数個一組の半導体モジュール2としてもよい。図1、図2に記載された電力変換装置1の構成は、図4に示す各半導体モジュール2を二個一組とした例を示している。
【0029】
なお、積層体4における冷却管3の段数は、特に限定されるものではない。
積層体4における積層方向の一端には、冷却器30に冷却媒体を導入するための冷媒導入管321と、冷却器30から冷却媒体を排出するための冷媒排出管322とが配設されている。
【0030】
また、積層体4における積層方向の他端には、積層体4を積層方向に加圧する加圧部材12が配設されている。積層体4は、積層体4とコンデンサモジュール5との並び方向(以下において適宜「高さ方向」という)から見た形状が長方形状であるフレーム11内に配設されている。そして、加圧部材12が積層体4とフレーム11の内側面との間に配設されている。なお、「高さ方向」は便宜的な表現であり、この方向が必ずしも鉛直方向と一致するわけではない。
【0031】
加圧部材12は、板ばねからなり、積層体4における他端を、一端側(冷媒導入管321および冷媒排出管322が設けられた側)へ向かって押圧している。これにより、冷却管3と半導体モジュール2との接触圧を高く保つと共に、冷却管3と放熱用突出部53との接触圧を高くしている。
なお、加圧部材12は、積層体4における冷媒導入管321および冷媒排出管322が設けられた側の一端に配し、他端へ向かって押圧するようにしてもよい。この場合、加圧部材12は、冷媒導入管321および冷媒排出管322の間に配されることとなる。
【0032】
コンデンサモジュール5は、図1に示すごとく、積層体4に対して、積層方向と冷却管3の長手方向との双方に直交する方向(高さ方向)に配置されている。そして、図1、図3に示すごとく、コンデンサモジュール5は、複数のコンデンサ素子51を内蔵し、これらを樹脂によってモールドしてなる。複数のコンデンサ素子51は、一対の電極を高さ方向の両端に配置するように、平行に配列されている。本例においては、高さ方向における積層体4に近い側を正極、遠い側を負極としている。
【0033】
コンデンサ素子51は、例えば金属化フィルムを巻回してなるフィルムコンデンサによって構成され、その巻回軸が高さ方向となるように配置されている。また、複数のコンデンサ素子51は、積層方向に直線状に2列、配列されている。
また、本例の電力変換装置1において、複数のコンデンサ素子51のうちの一部が、平滑コンデンサ501を構成し、他の一部がフィルタコンデンサ502を構成している。
【0034】
本例の電力変換装置1は、図4に示すごとく、昇圧コンバータ部101とインバータ部102とを有する。すなわち、電力変換装置1は、直流電源61から供給される直流電力の電圧を昇圧コンバータ部101において昇圧し、その昇圧後の直流電力をインバータ部102において三相の交流電力に変換して、三相交流の回転電機62を駆動するよう構成されている。また、逆に、回転電機62において発電した交流電力をインバータ部102において直流電力に変換し、昇圧コンバータ101において降圧して、直流電源61に充電することもできる。
【0035】
昇圧コンバータ部101は、リアクトル63と複数の半導体モジュール2とを有する。また、インバータ部102は、複数の半導体モジュール2によって構成されている。直流電源61と昇圧コンバータ部101との間には、直流電源61の電圧を平滑化するためのフィルタコンデンサ502が設けられ、昇圧コンバータ部101とインバータ部102との間には、インバータ部102へ供給される昇圧後の電圧を平滑化する平滑コンデンサ501が設けられている。
【0036】
図3に示すごとく、平滑コンデンサ501を構成するコンデンサ素子51の正極は、一つのコンデンサバスバー52(以下、適宜、「第1正極コンデンサバスバー521」という)に接続され、フィルタコンデンサ502を構成するコンデンサ素子51の正極は、他の一つのコンデンサバスバー52(以下、適宜、「第2正極コンデンサバスバー522」という)に接続されている。
また、コンデンサモジュール5における、平滑コンデンサ501を構成するコンデンサ素子51およびフィルタコンデンサ502を構成するコンデンサ素子51の負極は、いずれも一つのコンデンサバスバー52(以下、適宜、「負極コンデンサバスバー523」という)に接続されている。
【0037】
上記3つのコンデンサバスバー52、すなわち、第1正極コンデンサバスバー521、第2正極コンデンサバスバー522、負極コンデンサバスバー523は、いずれも、コンデンサモジュール5における樹脂モールド部から積層体4側に向かって、電極端子524を突出形成させてなる。
【0038】
第1正極コンデンサバスバー521及び負極コンデンサバスバー523の電極端子524は、複数の半導体モジュール2の主電極端子21あるいは直流電源61の正極に接続される電力バスバー13に、適宜接続される。図1に示すごとく、これらの電力バスバー13は、積層体4とコンデンサモジュール5との間に配置されている。また、図1において描かれた電極端子524および電力バスバー13は、両者が互いに接続されることを示すものであり、その配置等については特に正確に描かれたものではない。また、図1においては、フレーム11や加圧部材12の記載は省略してある。
【0039】
複数のコンデンサバスバー52のうち、負極コンデンサバスバー523は、他の2つのコンデンサバスバー52よりも、積層体4との間の距離が遠い。そして、放熱用突出部53は、積層体4に近いコンデンサバスバー52、すなわち、第1正極コンデンサバスバー521および第2正極コンデンサバスバー522から、それぞれ突出している。
【0040】
放熱用突出部53は、コンデンサ素子51と半導体モジュール2との間の電流経路から外れる状態で形成されている。すなわち、放熱用突出部53は、コンデンサバスバー52と接続され、電気的にも接続されることとなるが、その接続状態において、放熱用突出部53がコンデンサ素子51と半導体モジュール2との間の電流経路の一部とはならないようにしてある。
【0041】
また、放熱用突出部53は、隣り合う冷却管3の間に加圧された状態で挟持されている。これにより、積層体4とコンデンサモジュール5とを互いに固定する支持部材としても機能している。つまり、積層体4は、図2に示すごとく、加圧部材12によって積層方向に加圧されているため、積層体4の積層方向の中央部において一対の冷却管3の間に挟持された放熱用突出部53は一対の冷却管3によって加圧挟持されている。これにより、放熱用突出部53は、積層体4に固定されることとなる。
そして、放熱用突出部53は、コンデンサモジュール5の本体部に固定された部材でもある。それゆえ、コンデンサモジュール5と積層体4とは、2本の放熱用突出部53において互いに固定されることとなる。
【0042】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記電力変換装置1においては、コンデンサバスバー52から突出した放熱用突出部53が、積層体4における互いに隣り合う冷却管3の間に挟持されている。これにより、コンデンサモジュール5の熱を、放熱用突出部53を介して冷却管3に放熱することができる。また、放熱用突出部53は、コンデンサ素子51の電極に接続されたコンデンサバスバー52から突出しているため、コンデンサ素子51の熱が、コンデンサバスバー52を介して放熱用突出部53に伝わる。それゆえ、この放熱用突出部53を冷却管3によって冷却することにより、コンデンサモジュール5を内部から冷却することができることとなり、コンデンサ素子51を効率的に冷却することができる。
【0043】
また、特に、放熱用突出部53は、隣り合う冷却管3の間に挟持されているため、放熱用突出部53を互いに反対側の両面から冷却することができる。これにより、放熱用突出部53を効率的に冷却することができ、コンデンサモジュール5の冷却効率を向上させることができる。また、複数の冷却管3は、積層体4における半導体モジュール2を冷却するために元々積層配置されるものであるため、放熱用突出部53を挟持するためだけに改めて配設したり、冷却管3の構造を大きく変えたりする必要もない。
【0044】
また、放熱用突出部53は、コンデンサ素子51と半導体モジュール2との間の電流経路から外れる状態で形成されているため、冷却管3に渦電流が流れることを防ぐことができる。すなわち、放熱用突出部53が電流経路の一部となっていると、放熱用突出部53の周りに配される金属製の冷却管3に渦電流が発生することとなる。これにより、電力変換装置1の電力損失が大きくなってしまうおそれがある。そこで、放熱用突出部53が電流経路から外れる状態で形成されていることにより、電力変換装置1の損失が大きくなることを防ぐことができる。
また、渦電流によって冷却管3が発熱することも考えられるが、放熱用突出部53を電流経路から外れる状態で形成することにより、冷却管3の発熱を防ぎ、コンデンサモジュール5の冷却効率をより向上させることができる。
【0045】
また、放熱用突出部53は、複数のコンデンサバスバー52のうち、積層体4により近いコンデンサバスバー52(第1正極コンデンサバスバー521、第2正極コンデンサバスバー522)から突出している。これにより、放熱用突出部53を介したコンデンサモジュール5と冷却管3との間の伝熱距離を短くすることができるため、コンデンサモジュール5の冷却効率をより向上させることができる。
【0046】
また、放熱用突出部53は、隣り合う冷却管3の間に加圧された状態で挟持されており、積層体4とコンデンサモジュール5とを互いに固定する支持部材としても機能している。これにより、積層体4の振動を抑制することができ、半導体モジュール2とこれに接続される電力バスバー13等との間の接続部の寿命等を向上させ、電力変換装置1の耐振性を向上させることができる。
【0047】
すなわち、積層体4は、積層方向の両端においてフレーム11に固定されているが、図5に示すごとく、仮に放熱用突出部53が冷却管3の間に加圧挟持されていない場合には、両端部が節となり、その間の中央部が腹となるような振動を生じる。そうすると、その振動は大きくなりやすく、例えば溶接部やはんだ付け部等に応力がかかるなど、不具合を招くおそれがある。
【0048】
これに対して、上記のように放熱用突出部53が支持部材としても機能することにより、図6に示すごとく、積層体4を積層方向の中央部においてもコンデンサモジュール5に対して固定することができる。これにより、積層体4の剛性が高くなる。そして、積層体4が振動する場合にも、積層体4における積層方向の両端部と中央部とが振動の節となり、その振幅が小さくなる。それゆえ、積層体4が大きく振動することを防ぐことができ、溶接部やはんだ付け部等にかかる応力を低減することができる。
なお、図5、図6における曲線Wは、積層体4の振動の定常波を示す。
【0049】
以上のごとく、本例によれば、コンデンサモジュールの冷却効率に優れた電力変換装置を提供することができる。
【0050】
(実施例2)
本例は、図7に示すごとく、放熱用突出部53は、隣り合う冷却管3の間に半導体モジュール2と共に挟持されている例である。
そして、放熱用突出部53は、半導体モジュール2よりも冷却管3に流れる冷却媒体の上流側となる位置に配置されている。すなわち、図7に示す電力変換装置1において、冷却器30には、冷却媒体が冷媒導入管321から導入される。そして、冷却媒体は、連結管31を適宜通って複数の冷却管3をそれぞれ流れ、冷媒排出管322から排出される。このように、冷却媒体は、各冷却管3を、その長手方向の一端から他端へ向かって流れる。そこで、放熱用突出部53を半導体モジュール2よりも冷却管3の長手方向の一端に近い位置に配することで、半導体モジュール2に対して冷却媒体の流れの上流側となる位置に、放熱用突出部53が配置されることとなる。
【0051】
また、放熱用突出部53は、冷却管3の上流側に配された連結管31と半導体モジュール2との間に配置されている。そして、本例においては、放熱用突出部53は、連結管31にも接触している。
その他は、実施例1と同様である。
【0052】
本例の場合には、積層体4の積層方向の寸法を小さくすることができると共に、冷却管の数を少なくすることができる。これにより、電力変換装置1の小型化を容易にすることができると共に、製造コストを低減することができる。また、放熱用突出部53が上記半導体モジュール2よりも冷却媒体の上流側に配されているため、冷却媒体による放熱用突出部53の冷却を効率的に行うことができる。すなわち、半導体モジュール2と熱交換する前の冷却媒体によって、放熱用突出部53を冷却することができるため、その冷却効率が高く、コンデンサモジュール5を効率的に冷却することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0053】
(実施例3)
本例は、図8に示すごとく、コンデンサモジュール5における電極端子524から枝分れさせるように放熱用突出部53を設けた例である。
すなわち、コンデンサモジュール5からは、コンデンサバスバー52の端子として電極端子524が積層体4側へ突出している。そして、第1正極コンデンサバスバー521と第2正極コンデンサバスバー522とからそれぞれ伸びた電極端子524に、放熱用突出部53が連続して形成されている。この放熱用突出部53は、電極端子524からさらに高さ方向に突出し、積層体4にまで伸び、積層体4における冷却管3の間に挟持されている(図示略)。
その他は、実施例1と同様である。
本例の場合にも、実施例1と同様に、コンデンサモジュール5の冷却効率を向上させることができる。
【0054】
(実施例4)
本例は、図9に示すごとく、コンデンサモジュール5における電極端子524を延長させることにより放熱用突出部53を形成した例である。
換言すると、本例の電力変換装置1は、コンデンサバスバー52から立設した放熱用突出部53の一部を電極端子524として利用している。つまり、放熱用突出部53は、コンデンサモジュール5から積層体4側へ大きく突出して、その一部において、一対の冷却管3の間に挟持されている。そして、積層体4とコンデンサモジュール5との間において、電力バスバー13が放熱用突出部53の一部である電極端子524に電気的に接続されている。
その他は、実施例1と同様である。
【0055】
本例の場合には、放熱用突出部53の一部を電極端子524として利用できるため、その構造を簡素化することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0056】
(実施例5)
本例は、図10に示すごとく、複数のコンデンサバスバー52のうち、負極コンデンサバスバー523から、放熱用突出部53を突出させた例である。
すなわち、本例においては、コンデンサモジュール5を、負極コンデンサバスバー523が積層体4側となるように配置し、負極コンデンサバスバー523から、積層体4側へ放熱用突出部53を突出させている。
【0057】
また、放熱用突出部53は、負極コンデンサバスバー523から4本立設させている。ただし、この本数は、特に限定されるものではなく、3本以下でもよいし、5本以上でもよい。
その他は、実施例1と同様である。
【0058】
本例の場合にも、実施例1と同様に、コンデンサモジュール5の冷却効率を向上させることができる。
【0059】
(実施例6)
本例は、図11に示すごとく、放熱用突出部53を複数の部材によって構成した例である。
すなわち、放熱用突出部53を、コンデンサバスバー52と一体化された第1突出部531と、該第1突出部531に対して接続できるよう構成された第2突出部532とによって構成している。
その他は、実施例1と同様である。
【0060】
本例の場合には、電力変換装置1の製造を容易に行うことができる。
すなわち、電力変換装置1を組み立てる際には、放熱用突出部53を積層体4における隣り合う一対の冷却管3の間に挟持させるが、このとき、本例の場合には、放熱用突出部53のうち第2突出部532のみを積層体4における冷却管3の間に挟持させればよい。つまり、半導体モジュール2と同様に、第2突出部532を冷却管3の間に挟持させて、積層体4を組み立てることができる。
【0061】
その後、積層体4の一部となった第2突出部532を、コンデンサモジュール5から突出した第1突出部531と接続すればよい。このとき、例えば、ネジ等の締結部材によって、第1突出部531と第2突出部532とを締結することにより、両者を接続し、放熱用突出部53として機能させることができる。
【0062】
このように、本例によれば、放熱用突出部53を冷却管3の間に挟持させながら積層体4を組み立てる作業を、コンデンサモジュール5とは個別に行うことができるため、その作業性を極めて向上させることができる。
その結果、電力変換装置1の生産性を向上させることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0063】
(実施例7)
本例は、図12〜図14に示すごとく、放熱用突出部53は、冷却管3に対して、積層体4とコンデンサモジュール5との並び方向、すなわち高さ方向に係合する係合部533を設けた例である。
図12に示す放熱用突出部53は、冷却管3における高さ方向の一方の端面に係合するように、係合部533を設けてなる。具体的には、冷却管3における、コンデンサモジュール5と反対側の端面に、放熱用突出部53の係合部533が係合している。
図13に示す放熱用突出部53は、冷却管3における高さ方向の両端面に係合するように、一対の係合部533を設けてなる。
図14に示す放熱用突出部53は、その両面に凹部を形成することで、冷却管3における高さ方向の両端面に係合するように、一対の係合部533を設けてなる。
その他は、実施例1と同様である。
【0064】
本例の場合には、積層体4の振動を一層抑制することができ、電力変換装置1の耐振性を一層向上させることができる。すなわち、実施例1における電力変換装置1は、放熱用突出部53と冷却管3との摩擦力によって、積層体4の高さ方向の振動を抑制した構造であると言える。それゆえ、摩擦力を超えて大きな力が積層体4とコンデンサモジュール5との間に作用したときに、積層体4に対して、放熱用突出部53がずれることも考えられる。
【0065】
これに対して、本例の場合には、放熱用係合部53は、係合部533によって、積層体4に対して、高さ方向から係合されることとなる。それゆえ、大きな力が積層体4とコンデンサモジュール5との間に作用しても、積層体4に対して放熱用突出部53がずれることを防ぐことが可能となる。
特に、図13に示す放熱用突出部53のように、冷却管3における高さ方向の両端面に係合するように、一対の係合部533を設けてあることにより、放熱用突出部53が、積層体4に対して、突出方向(先端側)にもその反対側にもずれることを防ぐことができる。
【0066】
さらに、本例の場合には、係合部533においても、冷却管3と接触させることができるため、放熱用突出部53の放熱面積を増やすことができ、冷却効率の向上も期待できる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0067】
(実施例8)
本例は、図15に示すごとく、昇圧コンバータ部101(図4参照)を持たない電力変換装置1の例である。
すなわち、本例の電力変換装置1は、直流電源61から供給される直流電力を昇圧することなく、インバータ部102において三相の交流電力に変換して、三相交流の回転電機62を駆動するよう構成されている。この場合、実施例1において示したフィルタコンデンサ502も不要となる。その結果、本例の電力変換装置1におけるコンデンサモジュール5は、平滑コンデンサ501を構成する複数のコンデンサ素子51によって構成されることとなる。
その他は、実施例1と同様の構成を有し、同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 電力変換装置
2 半導体モジュール
3 冷却管
4 積層体
5 コンデンサモジュール
51 コンデンサ素子
52 コンデンサバスバー
53 放熱用突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を内蔵した半導体モジュールと該半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる積層体と、コンデンサ素子を内蔵したコンデンサモジュールとを有する電力変換装置であって、
上記コンデンサモジュールは、上記コンデンサ素子の電極に接続された複数のコンデンサバスバーを備えると共に、該コンデンサバスバーから放熱用突出部を突出させてなり、
該放熱用突出部は、上記積層体における互いに隣り合う上記冷却管の間に挟持されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記放熱用突出部は、上記コンデンサ素子と上記半導体モジュールとの間の電流経路から外れる状態で形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換装置において、上記放熱用突出部は、上記複数のコンデンサバスバーのうち上記積層体により近い上記コンデンサバスバーから突出していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電力変換装置において、複数の上記コンデンサバスバーから、上記放熱用突出部がそれぞれ突出していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記放熱用突出部は、隣り合う上記冷却管の間に上記半導体モジュールと共に挟持されており、該半導体モジュールよりも上記冷却管に流れる冷却媒体の上流側となる位置に配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記放熱用突出部は、隣り合う上記冷却管の間に加圧された状態で挟持されており、上記積層体と上記コンデンサモジュールとを互いに固定する支持部材としても機能していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電力変換装置において、上記コンデンサモジュールは、上記積層体に対して、積層方向と直交する方向に配置されており、上記放熱用突出部は、上記冷却管に対して、上記積層体と上記コンデンサモジュールとの並び方向に係合する係合部を設けてなることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−115907(P2013−115907A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259302(P2011−259302)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】