説明

電力変換装置

【課題】複数の蓄電デバイスの充放電を制御して電気負荷へ電力供給および回生の双方向電力移行を行うとともに、複数の蓄電デバイス間で電圧に依らず電力授受を可能にする。
【解決手段】電力変換装置の主回路3が、それぞれ蓄電デバイス10、15および複数の半導体スイッチング素子11〜14、16−17から成る複数の電力変換ユニットA、Bの交流側を直列接続した蓄電デバイス充放電装置4と、それに接続され、双方向に電力変換するDC/DCコンバータ5とを備える。そして、各蓄電デバイス10、15を選択的に蓄電デバイス充放電装置4の入出力線に直列接続して充放電して、負荷との間で双方向電力移行を行い、その電力移行停止時に、DC/DCコンバータ5内のリアクトル6および第1の半導体スイッチング素子7を用いて、2つの蓄電デバイス10、15間で昇降圧を伴う電力授受を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蓄電デバイスの充放電を制御して電気負荷へ電力供給および回生を行う電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンとモータ・ジェネレータを組み合わせたハイブリッド自動車や、モータのみで走行する電気自動車などの電動車両の普及が進んできている。電動車両においては、モータ・ジェネレータにエネルギ供給を行うため高圧バッテリが用いられている。この高圧バッテリは、比較的長い時間、継続して出力することが求められるが、このような特性を有する持続型バッテリを用いると、瞬発的な大電流の充放電によってバッテリの寿命が低下するという問題点があった。このため、複数の蓄電デバイスを組み合わせて高圧バッテリに用いることが提案されている。
【0003】
一方、複数の蓄電デバイスを用いて所望の電圧を得る従来の電力変換装置には、以下に示すものがある。
直流電源の後段に、各々半導体スイッチング素子と蓄電デバイスであるコンデンサとを有する複数の単相インバータを直列接続し、その後段に、整流ダイオードを介して接続された平滑コンデンサと、平滑コンデンサをバイパスさせる短絡用スイッチとを備える。各単相インバータの出力制御および短絡用スイッチのオンオフ制御の組み合わせによって、複数の蓄電デバイスを切り替えて、蓄電デバイスの電力をコンデンサ側に放電する。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−55593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の電力変換装置では、複数の蓄電デバイスを選択的に用いて各蓄電デバイスの電力を平滑コンデンサ側に放電することはできるが、平滑コンデンサから電力を回生して蓄電デバイスへ充電することはできない。また平滑コンデンサをバイパスして蓄電デバイスを充電することはできるが、直流電源の電力を用いて充電するため、直流電源の電圧に基づいて決められた電圧でしか充電できないものであった。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解消するために成されたものであって、複数の蓄電デバイスを選択的に用いて各蓄電デバイスを充放電させ、出力および回生の双方向電力移行を行うとともに、複数の蓄電デバイスの間で電圧に依らず電力授受が可能な電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による電力変換装置は、双方向に電力変換するDC/DCコンバータと、複数の蓄電デバイスを備えて該各蓄電デバイスが選択的に入出力線に直列接続され、該入出力線により上記DC/DCコンバータに接続される蓄電デバイス充放電装置と、上記DC/DCコンバータおよび上記蓄電デバイス充放電装置を制御する制御装置とを備える。そして、上記蓄電デバイス充放電装置内の上記複数の蓄電デバイス間で上記DC/DCコンバータを介して昇降圧を伴う電力授受を可能にしたものである。
【0008】
またこの発明による電力変換装置は、双方向に電力変換するDC/DCコンバータと、複数の蓄電デバイスを備えて該各蓄電デバイスが選択的に入出力線に接続され、該入出力線により上記DC/DCコンバータに接続される蓄電デバイス充放電装置と、上記DC/DCコンバータおよび上記蓄電デバイス充放電装置を制御する制御装置とを備える。上記蓄電デバイス充放電装置は、交流側が上記入出力線に直列接続されて直流/交流間の電力変換を行う第1の電力変換ユニットと、直流/交流間の電力変換を行う複数の第2の電力変換ユニットの交流側を並列接続して構成し、交流側が上記入出力線に直列接続された第2の電力変換ユニット群とを備え、上記第1、第2の各電力変換ユニットは、直流側に接続された上記各蓄電デバイスと、複数のスイッチング素子とを備えて、上記各蓄電デバイスの充放電を担う。そして、上記蓄電デバイス充放電装置の上記第1の電力変換ユニット内の蓄電デバイスと上記第2の電力変換ユニット内の蓄電デバイスとの2つの蓄電デバイス間で、上記DC/DCコンバータを介して昇降圧を伴う電力授受を可能にしたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明による電力変換装置は、蓄電デバイス充放電装置内の複数の蓄電デバイスを選択的に用いて各蓄電デバイスを充放電させ、DC/DCコンバータを介して出力/回生する双方向電力移行が可能となる。また、蓄電デバイス充放電装置内の複数の蓄電デバイス間で電圧に依らず電力授受が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1による電力変換装置の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による電力変換装置の充電動作を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1による電力変換装置の充電動作を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1による電力変換装置の充電動作を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1による電力変換装置の放電動作を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1による電力変換装置の放電動作を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1による電力変換装置の放電動作を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1による電力変換装置の蓄電デバイス間の昇圧を伴う電力授受動作を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1による電力変換装置の蓄電デバイス間の降圧を伴う電力授受動作を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態1による電力変換装置の蓄電デバイス間の降圧を伴う電力授受動作を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態1による電力変換装置の蓄電デバイス間の昇圧を伴う電力授受動作を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態2による電力変換装置の構成図である。
【図13】この発明の実施の形態3による電力変換装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による電力変換装置を図に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施の形態1による電力変換装置の構成図である。
図1に示すように、電力変換装置の主回路3は、負荷であるモータ/ジェネレータ1を駆動するインバータ2に接続され、インバータ2に直流電力を供給すると共に、インバータ2から電力を回生する。なおこの場合、インバータ2も、この発明による電力変換装置(主回路3)から見た負荷である。
【0012】
電力変換装置の主回路3は、直流/交流間の電力変換を行う複数(この場合2個)の電力変換ユニットA、Bの交流側が直列接続された蓄電デバイス充放電装置4と、DC/DCコンバータ5とを備える。DC/DCコンバータ5は、リアクトル6と、第1、第2の半導体スイッチング素子7、8とコンデンサ9とを備える。電力変換ユニットAは、4個の半導体スイッチング素子11〜14を有するフルブリッジ回路と蓄電デバイス10とから成り、電力変換ユニットBは、2個の半導体スイッチング素子16、17を有するハーフブリッジ回路と蓄電デバイス15とから成る。
【0013】
DC/DCコンバータ5内の第1、第2の半導体スイッチング素子7、8および各電力変換ユニットA、B内の複数の半導体スイッチング素子11〜14、16、17は、それぞれダイオードが逆並列接続されたMOSFETを用いているが、このダイオードはMOSFETが内蔵する寄生ダイオードを用いても良い。また、MOSFETに限らず、ダイオードを逆並列に接続したIGBT等の自己消弧型半導体スイッチング素子でも良い。
また電力変換装置は、主回路3の蓄電デバイス充放電装置4とDC/DCコンバータ5とを制御する制御装置30を備える。制御装置30には、DC/DCコンバータ5のコンデンサ9の電圧Vdcと、蓄電デバイス充放電装置4内の各蓄電デバイス10、15の電圧VA、VBおよびモータ/ジェネレータ1の駆動システム(図示せず)の制御信号等が入力され、それらに基づいて、DC/DCコンバータ5内の第1、第2の半導体スイッチング素子7、8および各電力変換ユニットA、B内の複数の半導体スイッチング素子11〜14、16、17へのゲート信号31、32を生成して各半導体スイッチング素子7、8、11〜14、16、17のスイッチングを制御する。
【0014】
次に、主回路3の接続構成を以下に示す。
DC/DCコンバータ5のコンデンサ9の両端は、DC/DCコンバータ5の高電圧側入出力端であり、インバータ2の直流側に接続される。また、コンデンサ9の一端(第1の端子)が第2の半導体スイッチング素子8のドレイン端子に接続される。第1の半導体スイッチング素子7のドレイン端子と第2の半導体スイッチング素子8のソース端子とリアクトル6の一端とが接続される。コンデンサ9の他端(第2の端子)が第1の半導体スイッチング素子7のソース端子に接続され、この接続線とリアクトル6の他端とが、DC/DCコンバータ5の低電圧側入出力端となり、同時に蓄電デバイス充放電装置4の入出力線に接続される。
【0015】
上記リアクトル6の他端は、蓄電デバイス充放電装置4の入出力線を介して半導体スイッチング素子11のソース端子と半導体スイッチング素子12のドレイン端子との接続点に接続される。蓄電デバイス10の正極は半導体スイッチング素子11のドレイン端子と半導体スイッチング素子13のドレイン端子とに接続され、蓄電デバイス10の負極は半導体スイッチング素子12のソース端子と半導体スイッチング素子14のソース端子とに接続される。半導体スイッチング素子13のソース端子と半導体スイッチング素子14のドレイン端子とが接続され、その接続点は、半導体スイッチング素子16のソース端子と半導体スイッチング素子17のドレイン端子とが接続された接続点に接続される。蓄電デバイス15の正極は半導体スイッチング素子16のドレイン端子に接続される。そして、蓄電デバイス15の負極は半導体スイッチング素子17のソース端子に接続されて、蓄電デバイス充放電装置4の入出力線を介してコンデンサ9の第2の端子および第1の半導体スイッチング素子7のソース端子に接続される。
このように、複数の電力変換ユニットA、Bの交流側は蓄電デバイス充放電装置4の入出力線に直列接続され、蓄電デバイス充放電装置4の入出力線はDC/DCコンバータ5の低電圧側入出力端に接続される。
【0016】
次に動作について以下に示す。
蓄電デバイス充放電装置4では、複数の電力変換ユニットA、Bの交流側の各発生電圧の和を入出力線間に発生し、DC/DCコンバータ5の低電圧側入出力端に接続する。
蓄電デバイス充放電装置4内の蓄電デバイス10、15に充放電される電力は、蓄電デバイス充放電装置4とインバータ2との間で、DC/DCコンバータ5を介して電力授受される。蓄電デバイス10、15の充電動作時は、インバータ2からDC/DCコンバータ5を介して蓄電デバイス充放電装置4へ電力を回生し、放電動作時は、蓄電デバイス充放電装置4からDC/DCコンバータ5を介してインバータ2へ電力供給する。
そして、インバータ2と電力変換装置(主回路3)との間で電力の遣り取りが停止している間に、蓄電デバイス充放電装置4内の蓄電デバイス10、15間で互いに電力授受する。
制御装置30は、上記のような蓄電デバイス10、15の充電動作時の制御である回生モードと、蓄電デバイス10、15の放電動作時の制御である力行モードと、蓄電デバイス充放電装置4内の蓄電デバイス10、15間の電力授受を制御する電力授受モードとの3種の制御モードを有する。
【0017】
まず制御装置30の回生モードにおける蓄電デバイス10、15の充電動作を、図2〜図4に基づいて3通りに分けて説明する。図中の点線および矢印は蓄電デバイス充放電装置4内の電流の流れを示す。
なお、この回生モードでは、インバータ2はモータ/ジェネレータ1からの電力を回生し、DC/DCコンバータ5はインバータ2から回生される電力を蓄電デバイス充放電装置4へ移行する。この時、制御装置30は、第2の半導体スイッチング素子8のスイッチング制御によりDC/DCコンバータ5を降圧動作させ、コンデンサ9の電圧Vdcを設定電圧に保持すると共に、蓄電デバイス充放電装置4へ電力移行する。このようなDC/DCコンバータ5の動作は、制御装置30の回生モードにおいて共通であるため、各図(図2〜図4)の説明では図示および説明は省略する。
【0018】
第1の充電動作は、図2に示すように、2つの電力変換ユニットA、Bの蓄電デバイス10、15の双方を充電する動作である。この場合、電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子11、14をON状態、半導体スイッチング素子12、13をOFF状態にすると共に、電力変換ユニットBの半導体スイッチング素子16をON状態、半導体スイッチング素子17をOFF状態にする。これにより、電力変換ユニットA、Bの2つの蓄電デバイス10、15は直列接続されると共に、蓄電デバイス充放電装置4の入出力線に直列接続される。このとき、図に示す経路を流れる電流により蓄電デバイス10、15は充電動作状態となり、インバータ2からDC/DCコンバータ5を介して蓄電デバイス充放電装置4へ移行した電力が、蓄電デバイス10、15に充電される。
【0019】
第2の充電動作は、図3に示すように、電力変換ユニットAの蓄電デバイス10には充電せず、電力変換ユニットBの蓄電デバイス15を充電する動作である。この場合、電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子12、14をON状態、半導体スイッチング素子11、13をOFF状態にすると共に、電力変換ユニットBの半導体スイッチング素子16をON状態、半導体スイッチング素子17をOFF状態にする。これにより、電力変換ユニットAの蓄電デバイス10はバイパスされ、電力変換ユニットBの蓄電デバイス15のみ蓄電デバイス充放電装置4の入出力線に直列接続される。このとき、図に示す経路を流れる電流により蓄電デバイス15は充電動作状態となり、インバータ2からDC/DCコンバータ5を介して蓄電デバイス充放電装置4へ移行した電力が、蓄電デバイス15に充電される。
【0020】
第3の充電動作は、図4に示すように、電力変換ユニットAの蓄電デバイス10を充電し、電力変換ユニットBの蓄電デバイス15には充電しない動作である。この場合、電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子11、14をON状態、半導体スイッチング素子12、13をOFF状態にすると共に、電力変換ユニットBの半導体スイッチング素子16をOFF状態、半導体スイッチング素子17をON状態にする。これにより、電力変換ユニットAの蓄電デバイス10のみ蓄電デバイス充放電装置4の入出力線に直列接続され、電力変換ユニットBの蓄電デバイス15はバイパスされる。このとき、図に示す経路を流れる電流により蓄電デバイス10は充電動作状態となり、インバータ2からDC/DCコンバータ5を介して蓄電デバイス充放電装置4へ移行した電力が、蓄電デバイス10に充電される。
【0021】
次に、制御装置30の力行モードにおける蓄電デバイス10、15の放電動作を、図5〜図7に基づいて3通りに分けて説明する。図中の点線および矢印は蓄電デバイス充放電装置4内の電流の流れを示す。
なお、この力行モードでは、蓄電デバイス充放電装置4から出力された電力がDC/DCコンバータ5を介してインバータ2に供給される。この時、制御装置30は、第1の半導体スイッチング素子7のスイッチング制御によりコンデンサ9の電圧Vdcが設定電圧に保持されるようにDC/DCコンバータ5を昇圧動作させる。このようなDC/DCコンバータ5の動作は、制御装置30の力行モードにおいて共通であるため、各図(図5〜図7)の説明では図示および説明は省略する。
【0022】
第1の放電動作は、図5に示すように、2つの電力変換ユニットA、Bの蓄電デバイス10、15の双方を放電する動作である。この場合、電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子11、14をON状態、半導体スイッチング素子12、13をOFF状態にすると共に、電力変換ユニットBの半導体スイッチング素子16をON状態、半導体スイッチング素子17をOFF状態にする。これにより、電力変換ユニットA、Bの2つの蓄電デバイス10、15は直列接続されると共に、蓄電デバイス充放電装置4の入出力線に直列接続される。このとき、図に示す経路を電流が流れて蓄電デバイス10、15は放電動作状態となり、蓄電デバイス10、15からの放電電力は蓄電デバイス充放電装置4から出力され、DC/DCコンバータ5を介してインバータ2に供給される。
【0023】
第2の放電動作は、図6に示すように、電力変換ユニットAの蓄電デバイス10は放電せず、電力変換ユニットBの蓄電デバイス15を放電する動作である。この場合、電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子12、14をON状態、半導体スイッチング素子11、13をOFF状態にすると共に、電力変換ユニットBの半導体スイッチング素子16をON状態、半導体スイッチング素子17をOFF状態にする。これにより、電力変換ユニットAの蓄電デバイス10はバイパスされ、電力変換ユニットBの蓄電デバイス15のみ蓄電デバイス充放電装置4の入出力線に直列接続される。このとき、図に示す経路を電流が流れて蓄電デバイス15は放電動作状態となり、蓄電デバイス15からの放電電力は蓄電デバイス充放電装置4から出力され、DC/DCコンバータ5を介してインバータ2に供給される。
【0024】
第3の放電動作は、図7に示すように、電力変換ユニットAの蓄電デバイス10を放電し、電力変換ユニットBの蓄電デバイス15は放電しない動作である。この場合、電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子11、14をON状態、半導体スイッチング素子12、13をOFF状態にすると共に、電力変換ユニットBの半導体スイッチング素子16をOFF状態、半導体スイッチング素子17をON状態にする。これにより、電力変換ユニットAの蓄電デバイス10のみ蓄電デバイス充放電装置4の入出力線に直列接続され、電力変換ユニットBの蓄電デバイス15はバイパスされる。このとき、図に示す経路を電流が流れて蓄電デバイス10は放電動作状態となり、蓄電デバイス10からの放電電力は蓄電デバイス充放電装置4から出力され、DC/DCコンバータ5を介してインバータ2に供給される。
【0025】
次に、制御装置30の電力授受モードにおける蓄電デバイス10、15の電力授受動作を、図8〜図11に基づいて4通りに分けて説明する。図中の点線および矢印は蓄電デバイス充放電装置4内の電流の流れを示す。
なお、この電力授受モードでは、インバータ2と電力変換装置(主回路3)との間で電力の遣り取りが停止しており、蓄電デバイス充放電装置4内の蓄電デバイス10、15間でDC/DCコンバータ5を介して互いに電力授受する。
【0026】
第1の電力授受動作は、図8に示すように、電力変換ユニットAの蓄電デバイス10から電力変換ユニットBの蓄電デバイス15へ昇圧動作を伴って電力移行する動作である。
まず図8(a)に示すように、DC/DCコンバータ5の第1の半導体スイッチング素子7をON状態にし、第2の半導体スイッチング素子8をOFF状態にし、電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子12、13をON状態、半導体スイッチング素子11、14をOFF状態にすると共に、電力変換ユニットBの半導体スイッチング素子16をOFF、半導体スイッチング素子17をONする。これにより、蓄電デバイス充放電装置4では電力変換ユニットAの蓄電デバイス10のみ入出力線に直列接続され、図に示す経路を電流が流れて、蓄電デバイス10は電力を放電してDC/DCコンバータ5のリアクトル6は電力を蓄える。
【0027】
次いで図8(b)に示すように、電力変換ユニットBの半導体スイッチング素子16をON、半導体スイッチング素子17をOFFすると、蓄電デバイス充放電装置4では電力変換ユニットAの蓄電デバイス10が放電、電力変換ユニットBの蓄電デバイス15が充電するように蓄電デバイス10、15が入出力線に直列接続され、図に示すように電流経路が切り替わる。蓄電デバイス10の放電電力はリアクトル6に蓄えられていた電力と共に、蓄電デバイス15へ移行する。
電力変換ユニットBの半導体スイッチング素子16、17のON/OFFを切り替えて図8(a)、図8(b)で示す動作を交互に繰り返すことにより、半導体スイッチング素子16、17およびリアクトル6による昇圧動作が行われ、電力変換ユニットAの蓄電デバイス10から電力変換ユニットBの蓄電デバイス15へ電力が移行する。
なお、半導体スイッチング素子7、16はOFF状態のままで、半導体スイッチング素子17のON/OFFを切り替えても同様の効果が得られる。
【0028】
第2の電力授受動作は、図9に示すように、電力変換ユニットAの蓄電デバイス10から電力変換ユニットBの蓄電デバイス15へ降圧動作を伴って電力移行する動作である。
まず図9(a)に示すように、DC/DCコンバータ5の第1の半導体スイッチング素子7をON状態にし、第2の半導体スイッチング素子8をOFF状態にし、電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子13をON状態、半導体スイッチング素子14をOFF状態にし、電力変換ユニットBの半導体スイッチング素子16をON状態、半導体スイッチング素子17をOFF状態にする。そして、電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子11をOFF、半導体スイッチング素子12をONにする。これにより、蓄電デバイス充放電装置4では電力変換ユニットAの蓄電デバイス10が放電、電力変換ユニットBの蓄電デバイス15が充電するように蓄電デバイス10、15が入出力線に直列接続され、図に示す経路を電流が流れて、蓄電デバイス10は放電し、蓄電デバイス15は充電すると共に、DC/DCコンバータ5のリアクトル6は電力を蓄える。
【0029】
次いで図9(b)に示すように、電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子11をON、半導体スイッチング素子12をOFFすると、蓄電デバイス充放電装置4では電力変換ユニットAの蓄電デバイス10がバイパスされ、電力変換ユニットBの蓄電デバイス15のみ入出力線に直列接続され、図に示すように電流経路が切り替わる。これによりリアクトル6に蓄えられていた電力は蓄電デバイス15へ移行する。
電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子11、12のON/OFFを切り替えて図9(a)、図9(b)で示す動作を交互に繰り返すことにより、半導体スイッチング素子11、12およびリアクトル6による降圧動作が行われ、電力変換ユニットAの蓄電デバイス10から電力変換ユニットBの蓄電デバイス15へ電力が移行する。
なお、半導体スイッチング素子7、11はOFF状態のままで、半導体スイッチング素子12のON/OFFを切り替えても同様の効果が得られる。
【0030】
第3の電力授受動作は、図10に示すように、電力変換ユニットBの蓄電デバイス15から電力変換ユニットAの蓄電デバイス10へ降圧動作を伴って電力移行する動作である。
まず図10(a)に示すように、DC/DCコンバータ5の第1の半導体スイッチング素子7をON状態にし、第2の半導体スイッチング素子8をOFF状態にし、電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子12、13をON状態、半導体スイッチング素子11、14をOFF状態にし、電力変換ユニットBの半導体スイッチング素子16をON、半導体スイッチング素子17をOFFする。これにより、蓄電デバイス充放電装置4では電力変換ユニットAの蓄電デバイス10が充電、電力変換ユニットBの蓄電デバイス15が放電するように蓄電デバイス10、15が入出力線に直列接続され、図に示す経路を電流が流れて、蓄電デバイス15は放電し、蓄電デバイス10は充電すると共に、DC/DCコンバータ5のリアクトル6は電力を蓄える。
【0031】
次いで図10(b)に示すように、電力変換ユニットBの半導体スイッチング素子16をOFF、半導体スイッチング素子17をONすると、蓄電デバイス充放電装置4では電力変換ユニットBの蓄電デバイス15がバイパスされ、電力変換ユニットAの蓄電デバイス10のみ入出力線に直列接続され、図に示すように電流経路が切り替わる。これによりリアクトル6に蓄えられていた電力は蓄電デバイス10へ移行する。
電力変換ユニットBの半導体スイッチング素子16、17のON/OFFを切り替えて図10(a)、図10(b)で示す動作を交互に繰り返すことにより、半導体スイッチング素子16、17およびリアクトル6による降圧動作が行われ、電力変換ユニットBの蓄電デバイス15から電力変換ユニットAの蓄電デバイス10へ電力が移行する。
なお、半導体スイッチング素子16はOFF状態のままで、半導体スイッチング素子17のON/OFFを切り替えても同様の効果が得られる。
【0032】
第4の電力授受動作は、図11に示すように、電力変換ユニットBの蓄電デバイス15から電力変換ユニットAの蓄電デバイス10へ昇圧動作を伴って電力移行する動作である。
まず図11(a)に示すように、DC/DCコンバータ5の第1の半導体スイッチング素子7をON状態にし、第2の半導体スイッチング素子8をOFF状態にし、電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子13をON状態、半導体スイッチング素子14をOFF状態にし、電力変換ユニットBの半導体スイッチング素子16をON状態、半導体スイッチング素子17をOFF状態にする。そして、電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子11をON、半導体スイッチング素子12をOFFする。これにより、蓄電デバイス充放電装置4では電力変換ユニットBの蓄電デバイス15のみ入出力線に直列接続され、図に示す経路を電流が流れて、蓄電デバイス15は電力を放電してDC/DCコンバータ5のリアクトル6は電力を蓄える。
【0033】
次いで図11(b)に示すように、電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子11をOFF、半導体スイッチング素子12をONすると、蓄電デバイス充放電装置4では電力変換ユニットBの蓄電デバイス15が放電、電力変換ユニットAの蓄電デバイス10が充電するように蓄電デバイス10、15が入出力線に直列接続され、図に示すように電流経路が切り替わる。蓄電デバイス15の放電電力はリアクトル6に蓄えられていた電力と共に、蓄電デバイス10へ移行する。
電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子11、12のON/OFFを切り替えて図11(a)、図11(b)で示す動作を交互に繰り返すことにより、半導体スイッチング素子11、12およびリアクトル6による昇圧動作が行われ、電力変換ユニットBの蓄電デバイス15から電力変換ユニットAの蓄電デバイス10へ電力が移行する。
なお、半導体スイッチング素子11はOFF状態のままで、半導体スイッチング素子12のON/OFFを切り替えても同様の効果が得られる。
【0034】
以上のように、この実施の形態では、蓄電デバイス充放電装置4内の複数の蓄電デバイス10、15を選択的に充放電させ、DC/DCコンバータ5を介して出力/回生する双方向電力移行が可能となる。また、蓄電デバイス充放電装置4内の複数の蓄電デバイス10、15間で電圧に依らず双方向に電力授受が可能になり、蓄電デバイス10、15に耐圧の異なるデバイスを用いることができる。例えば蓄電デバイス15から蓄電デバイス10へ電力移行する際、各蓄電デバイス10、15の電圧VA、VBに応じて昇圧あるいは降圧することで容易に電力移行できる。
また、2つの蓄電デバイス10、15を特性の異なるデバイス、例えばニッケル水素バッテリやリチウムイオンバッテリ等から成り、比較的長い時間、継続して出力するのに適する持続型バッテリと、例えばリチウムイオンバッテリや電気二重層コンデンサ等から成り、瞬発的な大電流の充放電に適する瞬発型バッテリとで構成し、モータ/ジェネレータ1の駆動制御に応じて各蓄電デバイス10、15の特性を生かした制御を行う等、自由度の高い制御に対応でき、利便性が向上する。またこれにより、蓄電デバイス10、15の劣化を抑制して長寿命化が図れると共に、高い電力変換効率を実現できる。また複数の蓄電デバイス10、15の中で安価な蓄電デバイスを優先的に用いる制御が可能になり、それにより蓄電デバイスの保守管理の低コスト化も図れる。
【0035】
なお、図2〜図11を用いて説明した各半導体スイッチング素子のオン/オフ動作は、一例であり、例えば、電力変換ユニットAの半導体スイッチング素子12、14をON状態にして半導体スイッチング素子11、13をOFF状態にするのは、半導体スイッチング素子11、13をON状態にして半導体スイッチング素子12、14をOFF状態にするものでも良く、上述した動作に限るものではない。また例えば、図2〜図11において、電流経路によっては一部の各半導体スイッチング素子の逆並列ダイオードを用いて、蓄電デバイス10、15の充電動作である回生モードと、蓄電デバイス10、15の放電動作である力行モードと、蓄電デバイス10、15間の電力授受である電力授受モードの動作をさせることができ、同様の効果が得られる。
また、電力変換ユニットBは、2個の半導体スイッチング素子16、17を有するハーフブリッジ回路と蓄電デバイス15とから成るものを示したが、フルブリッジ回路と蓄電デバイス15とから成るものでも良い。
【0036】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、2個の電力変換ユニットA、Bを備えるものを示したが、この実施の形態2による電力変換装置は、4個の電力変換ユニットA、B、C、Dを備える。
図12は、この発明の実施の形態2による電力変換装置の構成図である。以下、実施の形態1との差分を中心に示す。
図12に示すように、電力変換装置の主回路3aは、直流/交流間の電力変換を行う電力変換ユニットA、B、C、Dの交流側が直列接続された蓄電デバイス充放電装置4aと、DC/DCコンバータ5とを備える。電力変換ユニットAは、4個の半導体スイッチング素子11〜14を有するフルブリッジ回路と蓄電デバイス10とから成り、電力変換ユニットBは、4個の半導体スイッチング素子16〜19を有するフルブリッジ回路と蓄電デバイス15とから成り、電力変換ユニットCは、4個の半導体スイッチング素子21〜24を有するフルブリッジ回路と蓄電デバイス20とから成る。そして、最も低電圧側に接続される電力変換ユニットDは、2個の半導体スイッチング素子26、27を有するハーフブリッジ回路と蓄電デバイス25とから成る。各電力変換ユニットA〜D内の複数の半導体スイッチング素子は、それぞれダイオードが逆並列接続されたMOSFETを用いているが、このダイオードはMOSFETが内蔵する寄生ダイオードを用いても良い。また、MOSFETに限らず、ダイオードを逆並列に接続したIGBT等の自己消弧型半導体スイッチング素子でも良い。
【0037】
また電力変換装置は、主回路3aの蓄電デバイス充放電装置4aとDC/DCコンバータ5とを制御する制御装置30aを備える。制御装置30aには、DC/DCコンバータ5のコンデンサ9の電圧Vdcと、蓄電デバイス充放電装置4a内の各蓄電デバイス10、15、20、25の電圧VA、VB、VC、VDおよびモータ/ジェネレータ1の駆動システム(図示せず)の制御信号等が入力され、それらに基づいて、DC/DCコンバータ5内および各電力変換ユニットA〜D内の半導体スイッチング素子へのゲート信号31、32aを生成してDC/DCコンバータ5および蓄電デバイス充放電装置4aを制御する。その他の構成は、上記実施の形態1と同様である。
【0038】
次に、主回路3aの接続構成について、実施の形態1との差分を中心に以下に示す。
蓄電デバイス15の正極は半導体スイッチング素子16のドレイン端子と半導体スイッチング素子18のドレイン端子とに接続され、蓄電デバイス15の負極は半導体スイッチング素子17のソース端子と半導体スイッチング素子19のソース端子とに接続される。半導体スイッチング素子18のソース端子と半導体スイッチング素子19のドレイン端子とが接続され、その接続点は、半導体スイッチング素子21のソース端子と半導体スイッチング素子22のドレイン端子とが接続された接続点に接続される。
蓄電デバイス20の正極は半導体スイッチング素子21のドレイン端子と半導体スイッチング素子23のドレイン端子とに接続され、蓄電デバイス20の負極は半導体スイッチング素子22のソース端子と半導体スイッチング素子24のソース端子とに接続される。半導体スイッチング素子23のソース端子と半導体スイッチング素子24のドレイン端子とが接続され、その接続点は、半導体スイッチング素子26のソース端子と半導体スイッチング素子27のドレイン端子とが接続された接続点に接続される。
【0039】
蓄電デバイス25の正極は半導体スイッチング素子26のドレイン端子に接続される。そして、蓄電デバイス25の負極は半導体スイッチング素子27のソース端子に接続されて、蓄電デバイス充放電装置4aの入出力線を介してコンデンサ9の第2の端子および第1の半導体スイッチング素子7のソース端子に接続される。その他の接続構成は、上記実施の形態1と同様である。
このように、複数の電力変換ユニットA〜Dの交流側は蓄電デバイス充放電装置4aの入出力線に直列接続され、蓄電デバイス充放電装置4aの入出力線はDC/DCコンバータ5の低電圧側入出力端に接続される。
【0040】
次に動作について以下に示す。
蓄電デバイス充放電装置4aでは、複数の電力変換ユニットA〜Dの交流側の各発生電圧の和を入出力線間に発生し、DC/DCコンバータ5の低電圧側入出力端に接続する。
蓄電デバイス充放電装置4a内の蓄電デバイス10、15、20、25に充放電される電力は、蓄電デバイス充放電装置4aとインバータ2との間で、DC/DCコンバータ5を介して電力授受される。
制御装置30aは、上記実施の形態1と同様に、蓄電デバイス10、15、20、25の充電動作時の制御である回生モードと、蓄電デバイス10、15、20、25の放電動作時の制御である力行モードと、インバータ2と電力変換装置(主回路3a)との間で電力の遣り取りが停止している間に、蓄電デバイス充放電装置4a内の蓄電デバイス10、15、20、25間の電力授受を制御する電力授受モードとの3種の制御モードを有する。
【0041】
回生モードでは、インバータ2はモータ/ジェネレータ1からの電力を回生し、DC/DCコンバータ5はインバータ2から回生される電力を蓄電デバイス充放電装置4aへ移行する。この時、制御装置30aは、第2の半導体スイッチング素子8のスイッチング制御によりDC/DCコンバータ5を降圧動作させ、コンデンサ9の電圧Vdcを設定電圧に保持すると共に、蓄電デバイス充放電装置4aへ電力移行する。そして、蓄電デバイス充放電装置4a内の各電力変換ユニットA〜Dを駆動制御して、各蓄電デバイス10、15、20、25を選択的に蓄電デバイス充放電装置4aの入出力線に直列接続して充電する。
【0042】
力行モードでは、蓄電デバイス充放電装置4aから出力された電力がDC/DCコンバータ5を介してインバータ2に供給される。この時、制御装置30aは、蓄電デバイス充放電装置4a内の各電力変換ユニットA〜Dを駆動制御して、各蓄電デバイス10、15、20、25を選択的に蓄電デバイス充放電装置4aの入出力線に直列接続して放電する。そして、第1の半導体スイッチング素子7のスイッチング制御によりコンデンサ9の電圧Vdcが設定電圧に保持されるようにDC/DCコンバータ5を昇圧動作させてインバータ2に電力供給する。
【0043】
そして電力授受モードでは、蓄電デバイス充放電装置4a内の複数の蓄電デバイス10、15、20、25内から選択された2つの蓄電デバイス間で、DC/DCコンバータ5のリアクトル6および第1の半導体スイッチング素子7を用いて、昇圧動作あるいは降圧動作を伴って互いに電力授受する。
個別の動作については上記実施の形態1と同様である。
【0044】
以上のように、この実施の形態においても上記実施の形態1と同様に、蓄電デバイス充放電装置4a内の複数の蓄電デバイス10、15、20、25を選択的に充放電させ、DC/DCコンバータ5を介して出力/回生する双方向電力移行が可能となる。また、蓄電デバイス充放電装置4a内の複数の蓄電デバイス10、15、20、25内の2つを選択して、その蓄電デバイス10、15、20、25間で電圧に依らず双方向に電力授受が可能になる。これにより、上記実施の形態1で示したように、耐圧や特性の異なる複数の蓄電デバイスを用いることができ、また自由度の高い制御に対応でき、利便性が向上する。またこれにより、蓄電デバイスの劣化を抑制して長寿命化が図れると共に、高い電力変換効率を実現できる。
【0045】
なお、電力変換ユニットDはフルブリッジ回路を用いても良い。
また、蓄電デバイス充放電装置4a内の電力変換ユニットA〜Dの個数は、3個または5個以上でも良い。
【0046】
実施の形態3.
上記実施の形態1では、2個の電力変換ユニットA、Bを直列接続したものを示したが、この実施の形態3による電力変換装置は、一方の電力変換ユニットBの代わりに、複数の第2の電力変換ユニットを並列接続して用いる。
図13は、この発明の実施の形態3による電力変換装置の構成図である。以下、実施の形態1との差分を中心に示す。
図13に示すように、電力変換装置の主回路3bは、直流/交流間の電力変換を行う電力変換ユニットA(第1の電力変換ユニット)および第2の電力変換ユニット群を構成する複数の第2の電力変換ユニット33〜35を備える。各第2の電力変換ユニット33〜35は、2個の半導体スイッチング素子16−17、21−22、26−27を有するハーフブリッジ回路と蓄電デバイス15、20、25とから成り、交流側が並列接続される。
各第1、第2の電力変換ユニットA、33〜35内の複数の半導体スイッチング素子は、それぞれダイオードが逆並列接続されたMOSFETを用いているが、このダイオードはMOSFETが内蔵する寄生ダイオードを用いても良い。また、MOSFETに限らず、ダイオードを逆並列に接続したIGBT等の自己消弧型半導体スイッチング素子でも良い。
【0047】
また電力変換装置は、主回路3bの蓄電デバイス充放電装置4bとDC/DCコンバータ5とを制御する制御装置30bを備える。制御装置30bには、DC/DCコンバータ5のコンデンサ9の電圧Vdcと、蓄電デバイス充放電装置4b内の各蓄電デバイス10、15、20、25の電圧VA、VB1、VB2、VB3およびモータ/ジェネレータ1の駆動システム(図示せず)の制御信号等が入力され、それらに基づいて、DC/DCコンバータ5内および各第1、第2の電力変換ユニットA、33〜35内の半導体スイッチング素子へのゲート信号31、32bを生成してDC/DCコンバータ5および蓄電デバイス充放電装置4bを制御する。その他の構成は、上記実施の形態1と同様である。
【0048】
次に、主回路3bの接続構成について、実施の形態1との差分を中心に以下に示す。
蓄電デバイス15の正極は半導体スイッチング素子16のドレイン端子に接続され、蓄電デバイス20の正極は半導体スイッチング素子21のドレイン端子に接続され、蓄電デバイス25の正極は半導体スイッチング素子26のドレイン端子に接続される。蓄電デバイス15の負極と半導体スイッチング素子17のソース端子とが接続された接続点と、蓄電デバイス20の負極と半導体スイッチング素子22のソース端子とが接続された接続点と、蓄電デバイス25の負極と半導体スイッチング素子27のソース端子とが接続された接続点とが並列接続され、さらに、蓄電デバイス充放電装置4aの入出力線を介してコンデンサ9の第2の端子および第1の半導体スイッチング素子7のソース端子に接続される。
【0049】
また、半導体スイッチング素子16のソース端子と半導体スイッチング素子17のドレイン端子とが接続された接続点と、半導体スイッチング素子21のソース端子と半導体スイッチング素子22のドレイン端子とが接続された接続点と、半導体スイッチング素子26のソース端子と半導体スイッチング素子27のドレイン端子とが接続された接続点とが並列接続され、さらに、半導体スイッチング素子13のソース端子と半導体スイッチング素子14のドレイン端子とが接続された接続点に接続される。その他の接続構成は、上記実施の形態1と同様である。
このように、第1の電力変換ユニットAと、複数の第2の電力変換ユニット33〜35の交流側が並列接続されて構成される第2の電力変換ユニット群とは、蓄電デバイス充放電装置4bの入出力線に直列接続され、蓄電デバイス充放電装置4bの入出力線はDC/DCコンバータ5の低電圧側入出力端に接続される。
【0050】
次に動作について以下に示す。
蓄電デバイス充放電装置4bでは、第1の電力変換ユニットAの交流側の発生電圧と、第2の電力変換ユニット33〜35の交流側の並列接続点での発生電圧との和を入出力線間に発生し、DC/DCコンバータ5の低電圧側入出力端に接続する。
蓄電デバイス充放電装置4b内の蓄電デバイス10、15、20、25に充放電される電力は、蓄電デバイス充放電装置4bとインバータ2との間で、DC/DCコンバータ5を介して電力授受される。
制御装置30bは、上記実施の形態1と同様に、蓄電デバイス10、15、20、25の充電動作時の制御である回生モードと、蓄電デバイス10、15、20、25の放電動作時の制御である力行モードと、インバータ2と電力変換装置(主回路3b)との間で電力の遣り取りが停止している間に、蓄電デバイス充放電装置4b内の蓄電デバイス10、15、20、25間の電力授受を制御する電力授受モードとの3種の制御モードを有する。
【0051】
回生モードでは、インバータ2はモータ/ジェネレータ1からの電力を回生し、DC/DCコンバータ5はインバータ2から回生される電力を蓄電デバイス充放電装置4bへ移行する。この時、制御装置30bは、第2の半導体スイッチング素子8のスイッチング制御によりDC/DCコンバータ5を降圧動作させ、コンデンサ9の電圧Vdcを設定電圧に保持すると共に、蓄電デバイス充放電装置4bへ電力移行する。そして、蓄電デバイス充放電装置4b内の各第1、第2の電力変換ユニットA、33〜35を駆動制御して、各蓄電デバイス10、15、20、25を選択的に蓄電デバイス充放電装置4bの入出力線に接続して充電する。
【0052】
力行モードでは、蓄電デバイス充放電装置4bから出力された電力がDC/DCコンバータ5を介してインバータ2に供給される。この時、制御装置30bは、蓄電デバイス充放電装置4b内の各第1、第2の電力変換ユニットA、33〜35を駆動制御して、各蓄電デバイス10、15、20、25を選択的に蓄電デバイス充放電装置4bの入出力線に直列接続して放電する。そして、第1の半導体スイッチング素子7のスイッチング制御によりコンデンサ9の電圧Vdcが設定電圧に保持されるようにDC/DCコンバータ5を昇圧動作させてインバータ2に電力供給する。
【0053】
そして電力授受モードでは、蓄電デバイス充放電装置4b内の第1の電力変換ユニットAの蓄電デバイス10と、複数の第2の電力変換ユニット33〜35内の蓄電デバイス15、20、25から選択された1つの蓄電デバイスとの間で、DC/DCコンバータ5のリアクトル6および第1の半導体スイッチング素子7を用いて、昇圧動作あるいは降圧動作を伴って互いに電力授受する。
個別の動作については上記実施の形態1と同様である。
【0054】
以上のように、この実施の形態においても、蓄電デバイス充放電装置4b内の複数の蓄電デバイス10、15、20、25を選択的に充放電させ、DC/DCコンバータ5を介して出力/回生する双方向電力移行が可能となる。また、第1の電力変換ユニットAの蓄電デバイス10と、第2の電力変換ユニット33〜35内の1つの蓄電デバイス15(、20、25)との間で、電圧に依らず双方向に電力授受が可能になる。これにより、上記実施の形態1で示したように、耐圧や特性の異なる複数の蓄電デバイスを用いることができ、また自由度の高い制御に対応でき、利便性が向上する。またこれにより、蓄電デバイスの劣化を抑制して長寿命化が図れると共に、高い電力変換効率を実現できる。
また、最も低電圧側に接続される第2の電力変換ユニット33〜35を並列構成としたため、ハーフブリッジ回路を用いて複数の第2の電力変換ユニット33〜35を構成でき、素子数を低減できる。また、並列構成することで、容量の小さい蓄電デバイス15、20、25を用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
2 負荷としてのインバータ、3,3a,3b 電力変換装置(主回路)、
4,4a,4b 蓄電デバイス充放電装置、5 DC/DCコンバータ、
6 リアクトル、7 第1の半導体スイッチング素子、
8 第2の半導体スイッチング素子、9 コンデンサ、10 蓄電デバイス、
11〜14 半導体スイッチング素子、15 蓄電デバイス、
16〜19 半導体スイッチング素子、20 蓄電デバイス、
21〜24 半導体スイッチング素子、25 蓄電デバイス、
26,27 半導体スイッチング素子、30,30a,30b 制御装置、
31 ゲート信号、32,32a,32b ゲート信号、
A 電力変換ユニット(第1の電力変換ユニット)、B,C,D 電力変換ユニット、
33〜35 第2の電力変換ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向に電力変換するDC/DCコンバータと、
複数の蓄電デバイスを備えて該各蓄電デバイスが選択的に入出力線に直列接続され、該入出力線により上記DC/DCコンバータに接続される蓄電デバイス充放電装置と、
上記DC/DCコンバータおよび上記蓄電デバイス充放電装置を制御する制御装置とを備え、
上記蓄電デバイス充放電装置内の上記複数の蓄電デバイス間で上記DC/DCコンバータを介して昇降圧を伴う電力授受を可能にしたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
上記蓄電デバイス充放電装置は、交流側が上記入出力線に直列接続されて直流/交流間の電力変換を行う複数の電力変換ユニットを備え、
上記各電力変換ユニットは、直流側に接続された上記各蓄電デバイスと、複数のスイッチング素子とを備えて、上記各蓄電デバイスの充放電を担うことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
上記DC/DCコンバータは、リアクトルと、第1、第2の半導体スイッチング素子とを備え、上記リアクトルおよび上記第1の半導体スイッチング素子を用いて、上記複数の蓄電デバイス内の2つの蓄電デバイス間で昇降圧を伴う電力授受を可能にしたことを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
上記DC/DCコンバータは、リアクトルと、第1、第2の半導体スイッチング素子とを備え、
上記制御装置は、
上記各電力変換ユニットを駆動制御して上記各蓄電デバイスを選択的に放電させると共に、上記第1の半導体スイッチング素子のスイッチング制御により上記DC/DCコンバータを昇圧動作させて負荷に電力を出力する力行モードと、
上記各電力変換ユニットを駆動制御して上記各蓄電デバイスを選択的に充電させると共に、上記第2の半導体スイッチング素子のスイッチング制御により上記DC/DCコンバータを降圧動作させて上記負荷からの電力を回生する回生モードと、
上記負荷と上記DC/DCコンバータとの間の電力移行が停止している間に、上記各電力変換ユニットを駆動制御すると共に、上記DC/DCコンバータ内の上記リアクトルおよび上記第1の半導体スイッチング素子を用いて、上記複数の蓄電デバイス内の2つの蓄電デバイス間で昇降圧を伴って電力授受させる電力授受モードを備え、
該電力授受モードにおいて、上記2つの蓄電デバイスの一方を放電させ他方を充電させ、上記2つの蓄電デバイスの各電圧に応じて昇圧/降圧するように上記一方の蓄電デバイスから上記他方の蓄電デバイスへ電力を移行させることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
上記各電力変換ユニットは、上記複数のスイッチング素子を有するブリッジ回路を備えたことを特徴とする請求項2または4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
上記複数の蓄電デバイスは、それぞれ特性が異なることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
上記複数の蓄電デバイスは2個であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
上記複数の電力変換ユニットの内、最も低電圧側に接続される電力変換ユニットのみ、上記ブリッジ回路としてハーフブリッジ回路を備え、その他の電力変換ユニットは上記ブリッジ回路としてフルブリッジ回路を備えることを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項9】
双方向に電力変換するDC/DCコンバータと、
複数の蓄電デバイスを備えて該各蓄電デバイスが選択的に入出力線に接続され、該入出力線により上記DC/DCコンバータに接続される蓄電デバイス充放電装置と、
上記DC/DCコンバータおよび上記蓄電デバイス充放電装置を制御する制御装置とを備え、
上記蓄電デバイス充放電装置は、交流側が上記入出力線に直列接続されて直流/交流間の電力変換を行う第1の電力変換ユニットと、直流/交流間の電力変換を行う複数の第2の電力変換ユニットの交流側を並列接続して構成し、交流側が上記入出力線に直列接続された第2の電力変換ユニット群とを備え、
上記第1、第2の各電力変換ユニットは、直流側に接続された上記各蓄電デバイスと、複数のスイッチング素子とを備えて、上記各蓄電デバイスの充放電を担うものであり、
上記蓄電デバイス充放電装置の上記第1の電力変換ユニット内の蓄電デバイスと上記第2の電力変換ユニット内の蓄電デバイスとの2つの蓄電デバイス間で、上記DC/DCコンバータを介して昇降圧を伴う電力授受を可能にしたことを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−31238(P2013−31238A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163811(P2011−163811)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】