説明

電力変換装置

【課題】入力電源からの直流電圧を昇圧または降圧した直流電圧に変換する電力変換装置において、DC/DC電力変換部のスイッチングにより充放電動作を行う中間コンデンサの電圧を正常に検出できない場合がある。
【解決手段】中間コンデンサCfに蓄電される電圧の不足電圧を検出するための検出開始電圧値V1を設定する電圧設定手段441と所定の判定時間T1を設定する時間設定手段443とを有した設定部44、電力変換部の運転開始後に中間コンデンサの充電が可能となった時点から時間計測するタイマ461を有し、タイマで計測された時間が時間設定手段で設定された所定の判定時間以上経過しても、中間コンデンサに蓄電される電圧が電圧設定手段で設定された検出開始電圧値以上に上昇しない場合に、中間コンデンサの不足電圧として検出する異常検出部46を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は直流電圧を昇圧または降圧した直流電圧に変換する電力変換装置に関し、特にDC/DC電力変換部のスイッチングにより充放電動作を行う中間コンデンサの電圧を検出して装置の異常を検知できるようにしたDC/DC電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のDC/DC電力変換装置は、スイッチ素子のオンオフ動作を利用して、リアクトルへのエネルギーの蓄勢と放勢の量をコントロールして直流から直流への電圧変換を行っている。また、このリアクトルは大型で重いという課題があることから、コンデンサの充放電を利用してリアクトルに印加される電圧を低減し、そのリアクトルに必要なインダクタンス値を低減することにより、リアクトルを小型・軽量化する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、電力変換装置は、太陽電池を使用した発電装置、風力発電装置、燃料電池システム、ハイブリッド自動車など様々の装置に使用されている。
例えば、太陽光発電機やガスエンジン発電機等の分散型電源からの直流電力を商用系統の交流電力に変換するパワーコンディショナ装置においては、分散型電源からの直流電力を昇圧する昇圧回路と、この昇圧回路で昇圧した直流電力を平滑化する電解コンデンサと、この電解コンデンサで平滑化した直流電力を商用系統の交流電力に変換するインバータ回路を備えている。
そして電解コンデンサは使用頻度や使用環境に応じて劣化することで容量抜けが生じ、パワーコンディショナ装置の大きな故障原因に繋がるため、この電解コンデンサの劣化(容量抜け)の有無を事前に認識することが知られている(特許文献2参照)。
【0004】
この特許文献2は、昇圧回路が昇圧動作を開始して直流電力を電解コンデンサに順次充電し、昇圧完了レベルに到達すると昇圧動作を停止する。次に電解コンデンサに充電された電圧を放電して、放電開始から基準電圧値以下に低下するまでの放電時間を測定し、放電時間が正常時の基準放電時間以下であると判定されると、電解コンデンサの容量劣化と判断するようにしたものである。
【0005】
また、太陽電池などの直流電源から入力される直流電圧を昇圧し、一定の電圧に制御して負荷に出力するDC/DCコンバータ装置などの電力変換装置において、入力電圧センサによって検出された電力変換回路の入力電圧と、出力電圧センサによって検出された電力変換回路の出力電圧との相違に基づいて、入力電圧センサ、出力電圧センサ及び電力変換回路を含む回路に異常が発生したか否かを判定することも知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−92162号公報
【特許文献2】特開2008−43061号公報
【特許文献3】特開2011−24294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の特許文献2は、電解コンデンサ自体の容量劣化を検出することは可能であるが、
電圧センサの異常などにより電解コンデンサの電圧値が正常に検出できない状態に陥るような故障などは検出できないという問題があった。
また、特許文献3は、入力電圧センサによって検出された入力電圧と、出力電圧センサによって検出された出力電圧との相違に基づいて異常を検出するもので、入力電圧センサ、出力電圧センサ及び電力変換回路のどの箇所に異常が発生したのか、特定が困難であり、また異常を検出する制御回路も複雑であった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、電圧センサの異常などにより電力変換部の中間コンデンサの電圧値が正常に検出できない状態に陥ったことを検出するようにした電力変換装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の電力変換装置は、入力電源からの直流電圧を昇圧し、所定の直流電圧に制御して負荷に出力するDC/DC電力変換部を有し、DC/DC電力変換部のスイッチングにより充放電動作を行う中間コンデンサの電圧を電圧センサで検出するようにした電力変換装置において、中間コンデンサに蓄電される電圧の不足電圧を検出するための検出開始電圧値を設定する電圧設定手段と所定の判定時間を設定する時間設定手段とを有した設定部、DC/DC電力変換部の運転開始後に中間コンデンサの充電が可能となった時点から時間計測するタイマを有し、このタイマで計測された時間が時間設定手段で設定された所定の判定時間以上経過しても、中間コンデンサに蓄電される電圧が電圧設定手段で設定された検出開始電圧値以上に上昇しない場合に、中間コンデンサの不足電圧として検出する異常検出部を備え、異常検出部が中間コンデンサの不足電圧を検出した場合にDC/DC電力変換部の制御を停止するようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、太陽光発電パワーコンディショナなどの電力変換装置において、電圧センサの異常等により中間コンデンサの電圧値が正常に検出できない状態に陥った場合、コンデンサの発熱や過電圧にいたる異常制御状態を防止することができる。
また、運転開始の初動動作時に異常を検出することにより、部品故障や装置破損の影響範囲を抑える効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明が適用される電力変換装置の全体構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御回路のブロック図である。
【図3】この発明の電力変換装置の運転時における不足電圧検出の動作を説明するタイミング図である。
【図4】この発明の電力変換装置の運転開始時における不足電圧検出の動作を説明するタイミング図である。
【図5】この発明の電力変換装置の制御回路のプログラムフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1に係る電力変換装置を図1〜図5に基づいて説明する。なお、この実施形態では電力変換装置として、マルチレベルチョッパ回路を有する太陽光発電パワーコンディショナのDC/DC電力変換装置について説明するが、この発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
図1はこの発明が適用される電力変換装置の全体構成図を示し、図1において、電力変換装置10は、太陽光発電機などで得られる直流電源の入力電源20と、直流を交流に変
換するインバータと組み合わせて工場などの系統に接続される負荷30との間に接続されている。電力変換装置10はDC/DC電力変換部11とその制御回路12で構成され、DC/DC電力変換部11と制御回路12の間には、DC/DC電力変換部11内の後述するコンデンサに蓄電される電圧を検出する電圧センサ(図示省略)からの信号をそれぞれ入力する差動アンプ回路13a、13b、13cが接続されている。
【0014】
DC/DC電力変換部11は、入力電源20からの直流の入力電圧Vinを平準化する平滑用の入力コンデンサCinと、昇圧動作のためのリアクトルLと、制御回路12からの信号によりON、OFF動作をする、互いに直列に接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar transistor)などの第1、第2のスイッチング素子S1、S2と、第1、第2のスイッチング素子S1、S2のON、OFF動作により充放電動作を行う中間コンデンサCfと、出力からの逆流を防止する直列接続された第1、第2のダイオードD1、D2と、出力側に接続された平滑用の出力コンデンサCoutとを備えている。
【0015】
そして、入力電源20とリアクトルLと第1、第2のスイッチング素子S1、S2は互いに直列に接続されている。また、第1、第2のスイッチング素子S1、S2と第1、第2のダイオードD1、D2は互いに直列に接続され、その全体は平滑用の出力コンデンサCoutに並列に接続されている。中間コンデンサCfは第1のダイオードD1と第2のスイッチング素子S2に並列に接続されている。
【0016】
このような構成のDC/DC電力変換装置10の動作について説明する。
1)入力電圧Vinの2倍より小さい直流の出力電圧Voutに変換する場合
まず、第1のスイッチング素子S1をON、第2のスイッチング素子S2をOFFにする。この時、入力電源20の入力電圧Vin(入力コンデンサCinは容量が大きいとして所定の時間内の動作では直流電源と見做してもよい)は、入力コンデンサCin→リアクトルL→第1のダイオードD1→中間コンデンサCf→第1のスイッチング素子S1→入力コンデンサCinという経路で通電し、入力コンデンサCinの直流電圧のエネルギーがリアクトルLと中間コンデンサCfに移行する。
【0017】
次に、第1のスイッチング素子S1と第2のスイッチング素子S2が共にOFFの時、リアクトルLに蓄積されたエネルギーが、リアクトルL→第1のダイオードD1→第2のダイオードD2→出力コンデンサCout→入力コンデンサCin→リアクトルLという経路で通電し、出力コンデンサCoutに移行する。
次に、第1のスイッチング素子S1をOFF、第2のスイッチング素子S2をONにする。この時、中間コンデンサCfに蓄積されたエネルギーが、中間コンデンサCf→第2のダイオードD2→出力コンデンサCout→入力コンデンサCin→リアクトルL→第2のスイッチング素子S2→中間コンデンサCfという経路で通電し、出力コンデンサCoutに移行すると共に、リアクトルLにエネルギーを蓄積する。
【0018】
次に、第1のスイッチング素子S1と第2のスイッチング素子S2が共にOFFの時、リアクトルLに蓄積されたエネルギーが、リアクトルL→第1のダイオードD1→第2のダイオードD2→出力コンデンサCout→入力コンデンサCin→リアクトルLという経路で通電し、出力コンデンサCoutに移行する。
この一連の動作の繰り返しにより、Vin≦Vout<2×Vinの範囲で、入力された電圧Vinを昇圧調整して、出力電圧Voutとして出力する。
【0019】
2)入力電圧Vinの2倍より大きい直流の出力電圧Voutに変換する場合
まず、第1のスイッチング素子S1と第2のスイッチング素子S2を共にONにする。この時、入力電源20の入力電圧Vinは、入力コンデンサCin→リアクトルL→第2のスイッチング素子S2→第1のスイッチング素子S1→入力コンデンサCinという経
路で通電し、入力コンデンサCinの直流電圧のエネルギーがリアクトルLに移行する。
次に、第1のスイッチング素子S1をON、第2のスイッチング素子S2をOFFにする。この時、リアクトルLに蓄積されたエネルギーが、リアクトルL→第1のダイオードD1→中間コンデンサCf→第1のスイッチング素子S1→入力コンデンサCin→リアクトルLという経路で通電し、中間コンデンサCfに移行する。
【0020】
次に、第1のスイッチング素子S1と第2のスイッチング素子S2を共にONにする。この時、入力コンデンサCinの直流電圧Vinは、入力コンデンサCin→リアクトルL→第2のスイッチング素子S2→第1のスイッチング素子S1→入力コンデンサCinという経路で通電し、入力コンデンサCinの直流電圧のエネルギーがリアクトルLに移行する。
【0021】
次に、第1のスイッチング素子S1をOFF、第2のスイッチング素子S2をONにする。この時、リアクトルLに蓄積されたエネルギーと中間コンデンサCfに蓄積されたエネルギーが、リアクトルL→第2のスイッチング素子S2→中間コンデンサCf→第2のダイオードD2→出力コンデンサCout→入力コンデンサCin→リアクトルLという経路で通電し、出力コンデンサCoutに移行する。
この一連の動作の繰り返しにより、Vout>2×Vinの範囲で、入力された電圧Vinを昇圧調整して、出力電圧Voutとして出力する。
【0022】
昇圧に限らず降圧の場合も、第1、第2のスイッチング素子S1、S2をON、OFF制御して得ることができ、こうして電力変換装置はマルチレベルチョッパ回路として機能するが、この発明は電力変換装置の昇圧または降圧動作に特徴がある訳でないので、これ以上の説明については省略する。
【0023】
次に、この発明の電力変換装置の制御回路について図2に基づき説明する。
図2において、電圧センサ入力部41は、DC/DC電力変換部11の入力コンデンサCinと中間コンデンサCfと出力コンデンサCoutに蓄電される電圧を検出する電圧センサ(図示省略)からの信号を入力する。制御演算部42は、電圧センサ入力部41から入力される入力コンデンサCinの入力電圧Vinと出力コンデンサCoutの出力電圧Voutを比較して、比較結果を基に出力電圧Voutが所定値になるようスイッチング素子S1、S2のON、OFF時間のデューティ比を演算する。ゲートパルス出力部43は、制御演算部42からの信号により、スイッチング素子S1、S2のゲートに入力する信号パルスを生成する。
【0024】
ここで、図1に示す電力変換装置において、中間コンデンサCfに蓄えられる電圧Vcfが正常値に保たれていなければ、安定した出力電圧Voutが得られないため、中間コンデンサCfの過電圧・不足電圧を検出する必要がある。
そこで、中間コンデンサCfの不足電圧を検出する手段として、制御回路12内に設定部44と、電力変換部11の運転状態に応じた信号を出力する状態信号出力部45と、不足電圧を検出する異常検出部46とを備えている。また異常検出部46が中間コンデンサCfの不足電圧を検出した場合にDC/DC電力変換部11の制御を停止する運転停止制御部47を備えている。
【0025】
設定部44は、中間コンデンサCfに蓄電される電圧の不足電圧を検出するために、検出開始電圧値V1を設定する電圧設定手段441と、電圧設定手段441で設定した検出開始電圧値V1よりも小さい値の不足電圧判定値V2を設定する判定値設定手段442と、充電開始後の時間監視を行うために所定の判定時間T1を設定する時間設定手段443とを有している。
【0026】
状態信号出力部45は、DC/DC電力変換部11が停止の時は「0」で、運転状態になった時に「1」の信号を出力する運転状態部451と、DC/DC電力変換部11が運転後に中間コンデンサCfが充電を開始した時に「1」(またはON)の信号を出力し、充電が開始されていない時は「0」(またはOFF)の信号を出力する充電開始部452を有している。
【0027】
異常検出部46は、DC/DC電力変換部11の運転開始後に中間コンデンサCfの充電が可能となった時点から時間計測するタイマ461と、中間コンデンサCfに蓄電された電圧が不足電圧判定値V2以下になった時間を計測するカウンタ462と、タイマ461で計測された時間が時間設定手段443で設定された所定の判定時間T1以上経過しても、中間コンデンサCfに蓄電される電圧が電圧設定手段441で設定された検出開始電圧値V1以上に上昇しない場合に、中間コンデンサCfの不足電圧と判定する第1の判定部463と、中間コンデンサCfに蓄電された電圧が検出開始電圧値V1以上に上昇した後、カウンタ462によるカウント値(中間コンデンサCfの電圧が不足電圧判定値V2以下になった継続時間)が所定値(例えば3カウント=3ms)以上になった時に、中間コンデンサCfの不足電圧と判定する第2の判定部464と、中間コンデンサCfに蓄電される電圧が、電圧設定手段441で設定された検出開始電圧値V1未満の時は不足電圧検出を「無効」とし、電圧設定手段441で設定された検出開始電圧値V1以上に上昇した時に不足電圧検出を「有効」とするフラグを出力する検出フラグ発生器465とを備えている。
【0028】
なお、異常検出部46のカウンタ462はタイマに代えてもよい。また、制御回路12内の異常検出部46は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよいが、制御回路12内にメモリ及びCPU等を設けソフトウェアにより、それぞれの機能を実現してもよい。
【0029】
次に図2の制御回路による、中間コンデンサCfの不足電圧検出の方法を図3および図4に基づいて説明する。
まず図3に示すように、電力変換装置10の運転開始後に、充電開始条件成立(ON)後、中間コンデンサCfの電圧Vcfが上昇し、検出開始電圧値V1を超えることで不足電圧検出のフラグが「有効」となった場合について説明する。
【0030】
状態信号出力部45の運転状態部451から、電力変換装置10が運転状態になったことを示す「1」の信号が図3(e)のように出力され、さらに充電開始部452から中間コンデンサCfの充電開始を示す「ON」の信号が図3(c)のように出力される。
中間コンデンサCfに充電される電圧Vcfは、図3(b)のように順次上昇して行き、その電圧Vcfが電圧設定手段441で設定された図3(a)に示す検出開始電圧値V1を超えると、検出フラグ発生器465は不足電圧検出フラグを図3(d)に示すように「有効」とする。
【0031】
不足電圧検出フラグが有効期間中に、中間コンデンサCfの電圧Vcfが判定値設定手段442で設定された図3(a)に示す不足電圧判定値V2(V2<V1)以下となった時から、カウンタ462がカウントを始め、カウンタ462によるカウンタ値が所定値(例えば3カウント)以上になった時に、第2の判定部464が中間コンデンサCfの不足電圧と判定する。そして第2の判定部464は運転停止制御部47にエラー信号を送り、電力変換装置10の制御を停止する。
なお、カウンタ462をタイマに代えた場合は、中間コンデンサCfの電圧Vcfが不足電圧判定値V2以下となる時間が、整定時間(一例として3ms)以上継続した場合に、第2の判定部464は中間コンデンサCfの不足電圧と判定し、電力変換装置10の制御を停止する。
【0032】
この中間コンデンサCfの不足電圧検出方法では、電力変換装置10の運転を開始し、一旦中間コンデンサCfの充電が完了した後に電圧低下を監視するものであり、電圧センサの入力が正常で、中間コンデンサCfの電圧値が正常に読み取れている状態でのみ可能である。中間コンデンサCfの電圧値を検出する電圧センサの入力の断線など、電圧値を読み取れない場合には、中間コンデンサCfの充電状態が監視できず、中間コンデンサCfの過充電や発熱など異常制御状態に陥るという問題がある。
【0033】
そこで、この発明は電圧センサの入力断線などで中間コンデンサCfの電圧値を読み取れない場合でも、不足電圧として検出する機能を備えている。以下、この中間コンデンサCfの不足電圧検出の方法について説明する。
図4に示すように、電力変換装置10の運転開始後に、充電可能となった(ON)後、中間コンデンサCfの電圧Vcfが所定値まで上昇しないで不足電圧検出のフラグがまだ「無効」の場合について説明する。
【0034】
状態信号出力部45の運転状態部451から、電力変換装置10が運転状態になったことを示す「1」の信号が図4(e)のように出力され、さらに充電開始部452から中間コンデンサCfの充電開始を示す「ON」の信号が図4(c)のように出力される。タイマ461はこの時点から時間計測する。
中間コンデンサCfに充電される電圧Vcfは、図4(b)のように微かに上昇して行くが、タイマ461による時間計測が時間設定手段443で設定された判定時間T1以上経過しても、中間コンデンサCfの電圧Vcfが、電圧設定手段441で設定された図4(a)に示す検出開始電圧値V1以上に上昇しない場合、第1の判定部463は中間コンデンサCfの不足電圧と判定する。そして第1の判定部463は運転停止制御部47にエラー信号を送り、電力変換装置10の制御を停止する。
【0035】
これの動作を図5に示す制御回路12のプログラムフローチャートに基づいて説明する。
まずステップS1は、電力変換装置10が運転中かどうか判断する。ステップS1において電力変換装置10が運転中の場合(YES)はステップS2に進み、電力変換装置10が運転中でない場合(NO)はステップS3に進む。ステップS3では中間コンデンサCfの不足電圧の検出を「無効」とする。
【0036】
ステップS2では、中間コンデンサCfの電圧Vcfが検出開始電圧値V1以上になったかどうか判断する。ステップS2において、中間コンデンサCfの電圧Vcfが検出開始電圧値V1以上の場合(YES)はステップS4に進み、中間コンデンサCfの電圧Vcfが検出開始電圧値V1未満の場合(NO)はステップS5に進む。ステップS4では、中間コンデンサCfの不足電圧の検出を「有効」とし、ステップS5に進む。
【0037】
ステップS5では、中間コンデンサCfの不足電圧の検出が有効であるか否か判断する。ステップS5において、不足電圧の検出が有効である場合(YES)はステップS6に進み、不足電圧の検出が無効である場合(NO)はステップS12に進む。
ステップS6において、中間コンデンサCfの電圧Vcfが不足電圧判定値V2以下になったかどうか判断する。ステップS6において、中間コンデンサCfの電圧Vcfが不足電圧判定値V2以下になった場合(YES)はステップS7に進み、中間コンデンサCfの電圧Vcfが不足電圧判定値V2以下でない場合(NO)はステップS8に進む。
【0038】
ステップS7では、不足電圧判定値V2以下となる時間が整定時間以上継続するかを検出するカウンタ462を更新し(Cnt)、カウンタ462によるカウントを開始する。
一方、ステップS8は、不足電圧判定値V2以下となる時間が整定時間以上継続するか
を検出するカウンタ462をクリア(Cnt=0)し、カウンタ462によるカウントは行わない。
【0039】
ステップS9においては、カウンタ462によるカウントが所定値(一例として3)以上かどうか判断する。ステップS9において、カウンタ462によるカウントが所定値以上になれば(YES)、ステップS10に進み、カウンタ462によるカウントが所定値以上にならなければステップS11に進む。
ステップS10においては、中間コンデンサCfの電圧Vcfが不足電圧になったと検出し、ステップS11に進むと同時に、電力変換装置10の制御を停止してエンドとなる。なおステップS11の動作については後述する。
【0040】
以上が図3で説明した、電力変換装置10の運転開始後に、充電開始条件成立(ON)後、不足電圧検出のフラグが「有効」(Vcf>V1)の場合における不足電圧検出方法である。
次に、不足電圧検出のフラグが「無効」(Vcf<V1)の場合における不足電圧検出方法を図5のプログラムフローチャートで説明する。
【0041】
ステップS12は、ステップS5において中間コンデンサCfの不足電圧の検出が「無効」である場合に、中間コンデンサCfへの充電開始の条件を監視する。ステップS12において、充電開始の場合(YES)はステップS13に進み、充電開始が行われていない場合(NO)はステップS14に進む。ステップS13では、判定時間T1を監視するタイマ461を更新し(Timer)、タイマ461による時間を計測する。
一方、ステップS14は、判定時間T1を監視するタイマ461をクリア(Timer=0)し、タイマ461による時間計測は行わない。
【0042】
ステップS15は、タイマ461による計測時間Timerが判定時間T1を超えているかどうか判断する。ステップS15において、タイマ461による計測時間Timerが判定時間T1を超えていた場合(YES)はステップS16に進み、タイマ461による計測時間Timerが判定時間T1を超えていない場合(NO)はステップS17に進む。
ステップS16では、タイマ461による計測時間Timerが判定時間T1を超えていたため、中間コンデンサCfの電圧Vcfが不足電圧になったと検出し、ステップS17に進むと同時に、電力変換装置10の制御を停止してエンドとなる。
【0043】
なお、ステップS11は、不足電圧検出のフラグが「有効」(Vcf>V1)の場合において、判定時間T1を監視するタイマ461をクリア(Timer=0)しておくもので、一方、ステップS17は、不足電圧検出のフラグが「無効」(Vcf<V1)の場合において、カウンタ462によるカウントをクリア(Cnt=0)しておくものである。
【0044】
また、以上の説明では電圧センサの異常の状態検知をハードウェアにより行うようにしたが、電圧センサの異常の状態検知をソフトウェアで実施することにより、電圧センサの二重化などH/Wによる対策と比較して低コストであり、主回路構造を単純化することができる。
また、この発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
10:電力変換装置 11:DC/DC電力変換部
12:制御回路
20:入力電源 30:負荷
41:電圧センサ入力部 42:制御演算部
43:ゲートパルス出力部 44:設定部
45:状態信号出力部 46:異常検出部
47:運転停止制御部
441:電圧設定手段 442:判定値設定手段
443:時間設定手段
451:運転状態部 452:充電開始部
461:タイマ 462:カウンタ
463:第1の判定部 464:第2の判定部
465:検出フラグ発生器
Cin,Cf,Cout:コンデンサ L:リアクトル
D1,D2:ダイオード S1,S2:スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電源からの直流電圧を昇圧し、所定の直流電圧に制御して負荷に出力するDC/DC電力変換部を有し、前記DC/DC電力変換部のスイッチングにより充放電動作を行う中間コンデンサの電圧を電圧センサで検出するようにした電力変換装置において、前記中間コンデンサに蓄電される電圧の不足電圧を検出するための検出開始電圧値を設定する電圧設定手段と所定の判定時間を設定する時間設定手段とを有した設定部、前記DC/DC電力変換部の運転開始後に前記中間コンデンサの充電が可能となった時点から時間計測するタイマを有し、このタイマで計測された時間が前記時間設定手段で設定された所定の判定時間以上経過しても、前記中間コンデンサに蓄電される電圧が前記電圧設定手段で設定された検出開始電圧値以上に上昇しない場合に、前記中間コンデンサの不足電圧として検出する異常検出部を備え、前記異常検出部が前記中間コンデンサの不足電圧を検出した場合に前記DC/DC電力変換部の制御を停止するようにした電力変換装置。
【請求項2】
前記設定部に前記電圧設定手段で設定した検出開始電圧値よりも小さい値の不足電圧判定値を設定する判定値設定手段を設け、前記異常検出部は、前記中間コンデンサに蓄電された電圧が前記検出開始電圧値以上に上昇した後、前記判定値設定手段で設定された不足電圧判定値以下になった時間が所定時間継続した場合に、前記中間コンデンサの不足電圧として検出するようにした請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記中間コンデンサに蓄電される電圧が、前記電圧設定手段で設定された検出開始電圧値未満の時は不足電圧検出を無効とし、前記電圧設定手段で設定された検出開始電圧値以上に上昇した時に不足電圧検出を有効とする検出フラグ発生器を設けた請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−74724(P2013−74724A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211984(P2011−211984)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】