説明

電力変換装置

【課題】瞬低の発生をより早く的確に判定することが容易となる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力系統に連系し、直流電力を交流電力に変換して電力系統に出力する電力変換装置であって、系統電圧の角加速度の情報を取得する角加速度情報取得部と、前記角加速度に基づいて瞬低の発生を判定する系統状態判定部と、を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統に連系する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力系統に連系し、直流電力を交流電力に変換して電力系統に出力する電力変換装置が利用されている。このような電力変換装置については、系統安定化のための要件が検討されている。
【0003】
系統安定化のための要件によれば、例えば瞬時電圧低下(以下、「瞬低」と称する)といった過渡的な電力系統の変動に対して、電力変換装置が運転を継続することが要求される。このような事情から電力変換装置においては、瞬低への適切な対応を可能とするため、瞬低の発生を早く的確に判定できることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−153433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば系統電圧の値を検出し、この検出結果に基づいて瞬低の発生を判定する従来の方式では、瞬低の発生を早く的確に判定することは容易ではない。
【0006】
本発明は上述した問題に鑑み、瞬低の発生を早く的確に判定することが容易となる電力変換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電力変換装置は、電力系統に連系し、直流電力を交流電力に変換して電力系統に出力する電力変換装置であって、系統電圧の角加速度の情報を取得する角加速度情報取得部と、前記角加速度に基づいて瞬低の発生を判定する系統状態判定部と、を備えた構成とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電力変換装置によれば、瞬低の発生を早く的確に判定することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の構成図である。
【図2】系統電圧の波形に関する説明図である。
【図3】系統状態の判定およびこれに関連する動作に関するフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電力変換装置の構成図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る電力変換装置の構成図である。
【図6】系統状態の判定条件に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、第1実施形態から第3実施形態の各々を例に挙げて、以下に説明する。
【0011】
1.第1実施形態
[電力変換装置の構成等]
まず第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る電力変換装置1の構成図である。電力変換装置1は、端子Taおよび端子Tbを有しており、端子Taに直流電源(本実施形態では、一例として太陽電池2であるとするが、他の直流電源であっても構わない)が接続されるとともに、端子Tbを介して電力系統3に連系した形態で使用される。
【0012】
なお太陽電池2は、太陽光の光電変換により得た直流電力を電力変換装置1に出力する。また電力変換装置1は、様々な形態で電力系統3に接続され得る。図1に示す例では、電力変換装置1は、コイル(L)や抵抗(R)等を有する電力ラインを介して電力系統3に接続されており、当該電力ラインの正極側と負極側の間には負荷が接続されている。
【0013】
電力変換装置1は、コンデンサ11、インバータ12、連系リレー13、過電流防止回路14、および制御装置15などを備えている。コンデンサ11は、主に電力の平滑用として設けられており、両端がそれぞれ端子Taの正極側と負極側に接続されている。
【0014】
インバータ12は、制御装置15から受取るゲート信号Sgに応じてスイッチング動作を行うように駆動し、端子Ta側から入力された直流電力を交流電力に変換して、端子Tb側へ出力する。インバータ12は、例えば、ゲート信号SgによりON/OFFが切替る複数のトランジスタがブリッジ接続され、各スイッチング素子にダイオードが逆並列に接続された構成となっている。
【0015】
連系リレー13は、インバータ12と端子Tbを繋ぐライン上に設けられており、制御装置15から解列信号Srを受けたときに、開くように動作する。連系リレー13が開くと、電力変換装置1は電力系統3から解列することになる。
【0016】
過電流防止回路14は、電力変換装置1の出力電流が所定の機器保護レベルを超えたとき、つまり過電流となったときに、過電流防止機能として電力変換装置1の動作を停止(エラー停止)させる。過電流防止機能が作動することにより、過電流から機器を保護することが可能である。
【0017】
なお、過電流防止機能は機器を保護する上で重要な役割を果すものであるが、過電流防止機能が作動して電力変換装置1の動作が停止した場合には、電力変換装置1の復帰(再起動)には時間が掛かる。そのため電力変換装置1を安定的に動作させる観点からは、過電流防止機能を出来るだけ作動させないように、出力電流が過電流となる状況は未然に回避されることが望ましい。
【0018】
そこで電力変換装置1は、必要に応じて出力電流指令値の制限やゲートブロックを行い、出力電流が過電流となる状況を出来るだけ回避させるようになっている。この点の詳細については、後述する説明にて明らかとなる。
【0019】
制御装置15は、バンドパスフィルタ21、周波数/位相/振幅算出部22、座標変換部23、角加速度算出部24、系統状態判定部25、単独運転検知部26、直流電圧制御部27、リミッタ28、有効電流制御部29、無効電流制御部30、座標変換部31、およびゲート信号生成部32などを有している。
【0020】
また制御装置15には、端子Tb間における交流電圧の検出値(交流電圧検出値v)、端子Tbを流れる交流電流の検出値(交流電流検出値i)、および、コンデンサ11の両端間における直流電圧の検出値(直流電圧検出値E)の各々の信号が入力される。制御装置15は、これらの信号を所定のサンプリング周波数(例えば17.5kHz)でAD変換し、得られたデジタル信号に対して各処理を施すようになっている。
【0021】
バンドパスフィルタ21は、交流電圧検出値vの信号が入力され、この信号に対して高域および低域遮断(バンドパス)のフィルタ処理を施し、周波数/位相/振幅算出部22へ出力する。なお交流電圧検出値vは、系統電圧(電力系統3の電圧)の値、或いはこれに応じた値となっている。
【0022】
周波数/位相/振幅算出部22は、バンドパスフィルタ21から受取る交流電圧検出値vの信号に基づいて、系統電圧の周波数(角速度)ω、位相θ、および振幅Vを算出(推定)し、算出結果の信号を後段側に送出する。なお周波数/位相/振幅算出部22は、制御装置15におけるAD変換の周期ごとに、周波数ω、位相θ、および振幅Vを算出することが可能となっている。
【0023】
また算出結果の信号のうち、位相θの信号は座標変換部23および座標変換部31へ、周波数ωの信号は角加速度算出部24および単独運転検知部26へ、振幅Vの信号は単独運転検知部26へ、それぞれ送出される。なお、周波数/位相/振幅算出部22が行う算出処理の形態は特に限定されるものではなく、例えば、予め適切に設定された算出式やLUT[Look Up Table]が用いられる形態であっても良い。
【0024】
座標変換部23は、位相θの信号を用いて交流電流検出値iに対する座標変換を行い、有効電流検出値i(有効成分)および無効電流検出値i(無効成分)を求める。また座標変換部23は、有効電流検出値iの信号を有効電流制御部29へ、無効電流検出値iの信号を無効電流制御部30へ、それぞれ送出する。
【0025】
角加速度算出部24は、周波数ωの信号に基づいて系統電圧の角加速度dω/dtを算出し、算出結果の信号(角加速度dω/dtの信号)を系統状態判定部25へ送出する。
【0026】
系統状態判定部25は、角加速度dω/dtの信号に基づいて電力系統3の状態(系統状態)を判定し、当該判定の結果を表す系統状態判定信号Sdを、単独運転検知部26およびリミッタ28へ送出する。なお系統状態判定部25は、角加速度の大きさ|dω/dt|に応じて、系統状態を「通常」、「単独運転」、「瞬低発生(位相跳躍小)」、および「瞬低発生(位相跳躍大)」の何れかに判定するようになっている。
【0027】
より具体的には、角加速度の大きさ|dω/dt|が所定の閾値A以下である場合には、「通常」と判定され、閾値Aより大きく閾値B(閾値Aより大きい所定値)以下である場合には、「単独運転」(電力変換装置1の単独運転を誘発し得る程度の異常が生じた状態)と判定される。
【0028】
電力系統3の異常(擾乱)が発生したときには、その影響により、角加速度の大きさ|dω/dt|は通常より増大する傾向にある。また異常の度合が高いほど、角加速度の大きさ|dω/dt|はより大きい値となる傾向にある。上述した閾値Aは、電力変換装置1の単独運転を誘発する程度の異常が生じていない「通常」の系統状態と、電力変換装置1の単独運転を誘発し得る程度の異常が生じている「単独運転」の系統状態と、の判定が良好に行われるように、事前調査等に基づいて適切に設定されている。
【0029】
また角加速度の大きさ|dω/dt|が閾値Bより大きく閾値C(閾値Bより大きい所定値)以下である場合には、「瞬低発生(位相跳躍小)」(瞬低が発生した状態のうち、位相跳躍の度合が比較的小さい状態)と判定される。なお瞬低は、例えば、残電圧が20%以下となり、その継続時間が1秒以下である場合を指す。但し、瞬低に該当する場合の電圧低下量や継続時間等の条件は、この内容には限られず、その他の条件とされ得る。
【0030】
角加速度の大きさ|dω/dt|が特に大きい場合には、電力変換装置1の単独運転を誘発し得るような系統状態の異常ではなく、落雷等に起因する瞬低が発生した可能性が高いと想定される。上述した閾値Bは、「単独運転」の系統状態と、瞬低が発生した「瞬低発生(位相跳躍小)」の系統状態と、の判定が良好に行われるように、事前調査等に基づいて適切に設定されている。
【0031】
また角加速度の大きさ|dω/dt|が閾値Cより大きい場合には、「瞬低発生(位相跳躍大)」(瞬低が発生した状態のうち、位相跳躍の度合が比較的大きい状態)と判定される。「瞬低発生(位相跳躍大)」の状態は、例えば、位相跳躍の度合が正または負の方向に、ある閾値(例えば30〜90degの範囲における何れかの値)を超える場合が該当する。一例としては、系統電圧が図2に示すように180degずれた波形となるときの系統状態が、「瞬低発生(位相跳躍大)」に該当する。なお瞬低が発生した状態であって、位相跳躍の度合が当該閾値を超えない場合には、「瞬低発生(位相跳躍小)」が該当する。
【0032】
また系統状態判定部25は、系統状態を「瞬低発生(位相跳躍大)」と判定したときは、インバータ12の動作を停止させるために、ゲート信号生成部32へゲートブロック信号Sbを送出するようになっている。ゲートブロック信号Sbは、後述するように、ゲート信号Sgの送出の遮断(ゲートブロック)を行うための信号である。
【0033】
単独運転検知部26は、周波数ωの信号および振幅Vの信号に基づく受動的検知方式により、電力変換装置1における単独運転の発生を検知する。なお、単独運転検知部26が単独運転を検知する具体的な手法は特に限定されず、種々の手法が採用され得る。
【0034】
単独運転検知部26は、系統状態判定部25から「単独運転」の状態を表す系統状態判定信号Sdを受けており、かつ、受動的検知方式により単独運転の発生を検知したときには、連系リレー13へ解列信号Srを送出する。このように単独運転検知部26は、単独運転の発生の検知結果に応じて、電力系統3からの解列が行われるようにする。但し単独運転検知部26は、「瞬低発生(位相跳躍小)」の状態を表す系統状態判定信号Sdを受けているときには、単独運転の発生の検知結果に関わらず、解列信号Srを送出しないように設定されている。
【0035】
直流電圧制御部27は、直流電圧検出値Eの信号、および、直流電圧検出値Eに対する指令値(直流電圧指令値E*)の信号が入力される。なお直流電圧指令値E*は、予め適切に設定されている値である。そして直流電圧制御部27は、これらの値の差がゼロに近づくようにする信号を、有効電流指令値i*(有効電流検出値iに対する指令値)の信号として生成し、リミッタ28へ送出する。
【0036】
リミッタ28は、系統状態判定部25から「瞬低発生(位相跳躍小)」の状態を表す系統状態判定信号Sdを受けているときに、入力された有効電流指令値i*の信号にその大きさを制限するフィルタ処理を施し、フィルタ処理済の信号を有効電流制御部29へ出力する。一方、「瞬低発生(位相跳躍小)」の状態を表す系統状態判定信号Sdを受けていないときには、リミッタ28は、入力された有効電流指令値i*の信号をそのまま有効電流制御部29へ出力する。
【0037】
なおリミッタ28が行うフィルタ処理は、有効電流指令値i*の大きさが、予め決められた制限値Limを超えないようにする(制限値Limを超えているときには、例えば制限値Limと同値となるように修正する)処理となっている。
【0038】
有効電流制御部29は、座標変換部23から有効電流検出値iの信号が入力され、リミッタ28から有効電流指令値i*の信号が入力される。そして有効電流制御部29は、これらの値の差がゼロに近づくようにする信号を、有効電圧指令値v*(有効電圧検出値vに対する指令値)の信号として生成し、座標変換部31へ送出する。
【0039】
無効電流制御部30は、無効電流検出値iの信号、および、無効電流検出値iに対する指令値(無効電流指令値i*)の信号が入力される。なお無効電流指令値i*は、予め適切に設定されている値である。そして無効電流制御部30は、これらの値の差がゼロに近づくようにする信号を、無効電圧指令値v*(無効電圧検出値vに対する指令値)の信号として生成し、座標変換部31へ送出する。
【0040】
座標変換部31は、位相θの信号を用いて有効電圧指令値v*(有効成分)および無効電圧指令値i*(無効成分)に対する座標変換を行い、交流電圧指令値v*を求める。また座標変換部31は、交流電圧指令値v*の信号をゲート信号生成部32へ送出する。
【0041】
ゲート信号生成部32は、交流電圧指令値v*に応じたデューティ比のパルス信号をゲート信号Sgとして生成し、インバータ12へ送出する。ゲート信号生成部32はこのようにして、インバータ12のPWM[Pulse Width Modulation]制御を行うようになっている。
【0042】
またゲート信号生成部32は、ゲートブロック信号Sbを受けているときには、ゲート信号Sgを例えばローレベルに固定する。これにより、系統状態判定部25からゲートブロック信号Sbが送出されているときには、ゲートブロックが行われる。すなわちインバータ12の駆動は停止されて、インバータ12の出力が遮断される。なおゲートブロック信号Sbの送出が解除されたときには、ゲートブロックは解除され、ゲート信号生成部32は、インバータ12を駆動するためのゲート信号Sgの送出を再開する。
【0043】
[電力変換装置の動作等]
電力変換装置1は、基本的動作として、太陽電池2から受ける直流電力をインバータ12によって交流電力に変換し、この交流電力を電力系統3に出力する動作を行う。
【0044】
また制御装置15は、これまでに説明した通り、各種の検出値(v、i、E)および予め設定された各指令値(E*、i*)等に基づいて、交流電圧指令値v*を算出し、ゲート信号Sgを生成することによってインバータ12を制御する。交流電圧指令値v*は、インバータ12の操作量に相当している。
【0045】
なお制御装置15は、電力変換装置1の出力を電力系統3の電力状態に合わせるように、交流電圧指令値v*を算出するものとなっている。なお、交流電圧指令値v*の算出過程において求められる有効電流指令値i*は、電力変換装置1が出力する電流の指令値(出力電流指令値)に相当する。インバータ12による電力の変換は、電力系統3に出力する電流の値が出力電流指令値に対応した値となるように、行われることとなる。
【0046】
そして更に制御装置15は、系統電圧の角加速度dω/dtに基づいて系統状態を判定し、当該判定の結果に応じて電力変換装置1の動作を制御するようになっている。ここで、系統状態の判定およびこれに関連する動作の流れについて、図3のフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0047】
角加速度算出部24によって系統電圧の角加速度dω/dtが算出されると(ステップS11)、系統状態判定部25は、その角加速度の大きさ|dω/dt|を閾値(閾値A〜閾値C)と比較することにより、系統状態を判定する(ステップS12〜S14)。
【0048】
角加速度の大きさ|dω/dt|が閾値A(第3閾値)より大きく(ステップS12のY)、かつ、閾値B(第1閾値)以下である場合(ステップS13のN)、系統状態が「単独運転」と判定される。このように判定されたときには、制御装置15の動作形態は「単独運転対応モード」となる(ステップS15)。
【0049】
「単独運転対応モード」では、「単独運転」を表す系統状態判定信号Sdが単独運転検知部26に入力される。これにより単独運転検知部26は、受動的検知方式により単独運転を検知すると、解列信号Srを出力する。これにより電力変換装置1を電力系統3から解列させ、単独運転を解消させることが可能である。
【0050】
なお単独運転検知部26は、「単独運転」を表す系統状態判定信号Sdが入力されたとき(すなわち、角加速度の大きさ|dω/dt|が閾値Aを超え、かつ、閾値B以下であったとき)には、それだけで単独運転が発生したと判定し、解列信号Srを出力するようになっていても構わない。この場合には、系統状態が「単独運転」と判定されると、直ちに解列信号Srが出力され、電力変換装置1は電力系統3から解列する。
【0051】
また角加速度の大きさ|dω/dt|が閾値Bより大きく(ステップS13のY)、かつ、閾値C(第2閾値)以下である場合(ステップS14のN)、系統状態が「瞬低発生(位相跳躍小)」と判定される。このように判定されたときには、制御装置15の動作形態は「第1瞬低対応モード」となる(ステップS16)。
【0052】
「第1瞬低対応モード」では、「瞬低発生(位相跳躍小)」を表す系統状態判定信号Sdがリミッタ28に入力されることにより、リミッタ28は出力電流指令値(有効電流指令値i*)の信号に対して、その大きさを制限するフィルタ処理を施すようになる。これにより、瞬低が発生したと判定されたときには、制限値Limを超えないように出力電流指令値が制限され、電力変換装置1の出力電流の大きさが抑えられることになる。その結果、過電流防止回路14による過電流防止機能が作動することを、出来るだけ回避することが可能となる。
【0053】
また、「瞬低発生(位相跳躍小)」を表す系統状態判定信号Sdが単独運転検知部26に入力されることにより、単独運転検知部26は、受動的検知方式による単独運転の発生の検知結果に関わらず、解列信号Srを出力しない状態となる。これにより、瞬低の発生に起因した不要な解列を、未然に回避することが可能となる。このように単独運転検知部26は、瞬低が発生したと判定されたときには、単独運転の発生の検知結果に関わらず、解列を禁止する(解列が行われないようにする)。
【0054】
また角加速度の大きさ|dω/dt|が閾値Cより大きい場合(ステップS14のY)、系統状態が「瞬低発生(位相跳躍大)」と判定される。このように判定されたときには、制御装置15の動作形態は「第2瞬低対応モード」となる(ステップS17)。
【0055】
「第2瞬低対応モード」では、系統状態判定部25がゲートブロック信号Sbを送出することにより、インバータ12においてゲートブロックが行われることになる。これにより、電力変換装置1の出力電流が抑えられ、過電流防止回路14による過電流防止機能が作動することを、出来るだけ回避することが可能となる。
【0056】
なお「瞬低発生(位相跳躍大)」の場合には、「瞬低発生(位相跳躍小)」の場合に比べて電力系統3の異常の度合が高く、その影響を受けて、出力電流の異常が大きいものとなり易い。そのため「第2瞬低対応モード」では、ゲートブロックの実行により出力電流がほぼゼロとなるようにして、「第1瞬低対応モード」の場合に比べて出力電流がより強く抑えられるようになっている。
【0057】
また単独運転検知部26は、「瞬低発生(位相跳躍大)」を表す系統状態判定信号Sdが入力された場合にも、受動的検知方式による単独運転の検知に関わらず、解列信号Srを出力しないように設定されていても構わない。これにより「第2瞬低対応モード」においても、瞬低の発生に起因した不要な解列を、未然に回避することが可能となる。
【0058】
また角加速度の大きさ|dω/dt|が閾値A以下である場合(ステップS12のN)、系統状態が「通常」と判定される。このように判定されたときには、制御装置15の動作形態は「通常モード」となる(ステップS18)。
【0059】
「通常モード」では、出力電流指令値の制限やゲートブロック信号Sbの送出がなされることなく、制御装置15は通常通りの動作を行う。なお「第1瞬低対応モード」から「通常モード」に移行したときには、これまで行われていた出力電流指令値の制限は解除される。すなわち、出力電流指令値が制限されている際に、角加速度の大きさ|dω/dt|が閾値A以下となったときには、この出力電流指令値の制限は解除される。
【0060】
また「第2瞬低対応モード」から「通常モード」に移行したときには、これまで行われていたゲートブロック信号Sbの送出が停止され、ゲートブロックは解除される。すなわち、ゲート信号Sgの送出が停止されている際に、角加速度の大きさ|dω/dt|が閾値A以下となったときには、ゲート信号Sgの送出の遮断は解除される。このように「通常モード」となった場合には、系統状態が通常の状態に復帰したとみなされ、制御装置15の動作形態は通常の形態に回復する。
【0061】
なお上述した一連の動作(ステップS11〜S18)は、電力変換装置1が電力系統3から解列した場合等を除き、制御装置15におけるAD変換の周期、或いはこれに準じた周期ごとに繰り返される。そのため制御装置15は、非常に短い周期で系統状態を判定し、この判定結果に適応した動作を行うことが可能である。
【0062】
また単独運転検知部26が解列信号Srを出力する条件等は、上述した形態には限られない。例えば単独運転検知部26は、受動的検知方式により単独運転を検知した際には基本的に解列信号Srを出力することとし、例外的に瞬低が発生したと判定された場合には、当該検知結果に関わらず解列信号Srを出力しないようにしても良い。これにより、瞬低の発生に起因した不要な解列を、未然に回避することが可能となる。
【0063】
2.第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。なお第2実施形態は、電力系統3の電圧低下量に応じて制限値Limが決定される点などを除き、基本的には第1実施形態と同等である。以下の説明では、第1実施形態と異なる部分の説明に重点を置き、第1実施形態と同等の部分については説明を省略することがある。
【0064】
図4は、第2実施形態に係る電力変換装置1aの構成図である。電力変換装置1aが有する制御装置15には、制限値決定部35が設けられている。
【0065】
制限値決定部35は、系統状態判定部25から系統状態判定信号Sdが入力されるとともに、周波数/位相/振幅算出部22から系統電圧の振幅Vの信号が入力される。そして制限値決定部35は、「瞬低発生(位相跳躍小)」の系統状態判定信号Sdを受けているときに、振幅Vの信号に基づいて制限値Limを決定し、決定した制限値Limの信号をリミッタ28に送出する。
【0066】
より具体的には、制限値決定部35は、振幅Vの信号に基づいて電力系統3の電圧低下量を認識し、この電圧低下量が大きい程、制限値Limをより厳しい値(より小さい値)に決定する。なお制限値Limの決定に際しては、例えば、予め適切に設定された算出式やLUTが用いられるようにしても良い。上述したように制限値決定部35は、瞬低が発生したと判定されたときに、電力系統3の電圧低下量に応じて制限値Limを決定するようになっている。
【0067】
またリミッタ28は、制限値決定部35から制限値Limの信号を受けているときに、入力された有効電流指令値i*の信号にその大きさを制限するフィルタ処理を施して、フィルタ処理済の信号を有効電流制御部29へ出力する。一方、制限値Limの信号を受けていないときには、リミッタ28は、入力された有効電流指令値i*の信号をそのまま有効電流制御部29へ出力する。なお第1実施形態の場合と同様、リミッタ28が行うフィルタ処理は、有効電流指令値i*の大きさが制限値Limを超えないようにする処理である。
【0068】
電力系統3の電圧低下量が大きいときは、その分、系統電圧等の異常の度合が高く、電力変換装置1の動作が不安定になり易いと想定される。そのため過電流防止回路14による過電流防止機能の作動を極力回避させるにあたっては、電力系統3の電圧低下量が大きい程、有効電流指令値i*の大きさをより十分に制限する必要がある。第2実施形態の電力変換装置1aによれば、このような趣旨に沿って、制限値Limを適切に設定することが可能である。
【0069】
3.第3実施形態
次に第3実施形態について説明する。なお第3実施形態は、系統状態の判定手法などを除き、基本的には第2実施形態と同等である。以下の説明では、第2実施形態と異なる部分の説明に重点を置き、第2実施形態と同等の部分については説明を省略することがある。
【0070】
図5は、第3実施形態に係る電力変換装置1bの構成図である。電力変換装置1bが有する系統状態判定部25は、系統電圧の角加速度dω/dtの信号が入力されるとともに、周波数/位相/振幅算出部22から、系統電圧の周波数ω、位相θ、および振幅Vの各信号が入力されるようになっている。
【0071】
そして系統状態判定部25は、角加速度dω/dtに加えて、周波数ω、位相θ、および振幅Vにも基づいて、系統状態の判定(瞬低の発生の判定を含む)を行うようになっている。なお系統状態判定部25が、これらの情報に基づいてどのような手順で系統状態を判定するかについては、様々な形態が採用され得る。系統状態の判定手順の具体例については、例えば以下に示す第1の例から第3の例が挙げられる。
【0072】
第1の例では、図6に示す各判定条件を用いて系統状態が判定される。なお図6に示す各判定条件は、系統状態の項目(「通常」、「単独運転」、「瞬低発生(位相跳躍小)」、「瞬低発生(位相跳躍大)」)ごとに、各パラメータ(角加速度の大きさ|dω/dt|、周波数ω、位相θ、振幅V)の判定条件が設定されたものである。
【0073】
第1の例によれば、例えば、角加速度の大きさ|dω/dt|が閾値A以下であり、周波数ωに基準値を超える変化が無く、位相θの跳躍が無く、振幅Vが通常の100%であれば、系統状態が「通常」と判定される。
【0074】
また角加速度の大きさ|dω/dt|が閾値Aより大きく閾値B以下であり、周波数ωに基準値を超える変化が有り、位相θの跳躍が0〜Xの範囲にあり、振幅Vが0%であれば、系統状態が「単独運転」と判定される。
【0075】
また角加速度の大きさ|dω/dt|が閾値Bより大きく閾値C以下であり、周波数ωに基準値を超える変化が有り、位相θの跳躍がX〜Yの範囲にあり、振幅Vが0〜100%であれば、系統状態が「瞬低発生(位相跳躍小)」と判定される。
【0076】
また角加速度の大きさ|dω/dt|が閾値Cより大きく、周波数ωに基準値を超える変化が有り、位相θの跳躍がY〜180degの範囲にあり、振幅Vが0〜100%であれば、系統状態が「瞬低発生(位相跳躍大)」と判定されるようにする。なお上記においてXおよびYは、0<X<Y<180degを満たすように予め設定された値である。例えば、Xは10〜30degの範囲における何れかの値であり、Yは30〜90degの範囲における何れかの値である。
【0077】
また全パラメータの判定条件を満たす項目が無い場合、系統状態は、最も多くのパラメータの判定条件を満たす項目に判定されるようにしても良い。この場合、例えば角加速度の大きさ|dω/dt|が閾値A以下であり、周波数ωに基準値を超える変化が無く、位相θの跳躍が無く、振幅Vが100%未満であれば、系統状態は、3個のパラメータ(角加速度の大きさ|dω/dt|、周波数ω、位相θ)の判定条件が満たされる「通常」と判定される。
【0078】
また第2の例では、周波数ω、位相θ、および振幅Vの各々に対して、所定の瞬低判定条件が設定される。そして、周波数ω、位相θ、および振幅Vの何れもが瞬低判定条件を満たしている状況において、角速度の大きさ|dω/dt|が閾値Bより大きく閾値C以下であれば「瞬低発生(位相跳躍小)」と判定され、角速度の大きさ|dω/dt|が閾値Cを超えていれば「瞬低発生(位相跳躍大)」と判定されるようにする。
【0079】
また第3の例では、角速度の大きさ|dω/dt|、周波数ω、位相θ、および振幅Vの重み付けを考慮した相加平均が算出され、この算出結果に基づいて系統状態が判定されるようにする。
【0080】
なお系統状態判定部25は、角加速度dω/dtに加えて、周波数ω、位相θ、および振幅Vの全てではなく、これらのうちの何れか一つ或いは二つに基づいて、系統状態を判定するようになっていても良い。第3実施形態の電力変換装置1bによれば、角加速度dω/dtだけではなく、更に系統電圧に関する他の情報にも基づくことにより、系統状態をより精度良く判定することが可能である。
【0081】
4.その他
以上に説明した通り、本実施形態に係る電力変換装置は、電力系統3に連系し、直流電力を交流電力に変換して電力系統3に出力するものであって、系統電圧の角加速度dω/dtの情報を得る角加速度情報取得部(周波数/位相/振幅算出部22や角加速度算出部24など)と、角加速度dω/dtに基づいて瞬低の発生を判定する系統状態判定部(系統状態判定部25など)と、を備えている。なお本実施形態では、系統状態が「瞬低発生(位相跳躍小)」或いは「瞬低発生(位相跳躍大)」と判定されたときが、瞬低の発生が判定されたときに相当する。
【0082】
このように本実施形態に係る電力変換装置は、角加速度dω/dtに基づいて瞬低の発生を判定するため、瞬低の発生を早く的確に判定することが容易となっている。
【0083】
例えば、系統電圧のゼロクロスのタイミングから周波数や位相を検出し、この検出結果に基づいて瞬低の発生を判定する方式では、系統電圧波形の半周期の間に生じた瞬低を検知することは難しく、また、瞬低の発生を判定するタイミングが遅れ易いという問題がある。しかし本実施形態に係る電力変換装置によれば、系統電圧波形の半周期よりも短い間隔で角加速度dω/dtの情報を取得し、瞬低の発生を判定することが可能であるため、このような問題が起こり難くなっている。
【0084】
また本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0085】
1、1a、1b 電力変換装置
2 太陽電池
3 電力系統
11 コンデンサ
12 インバータ
13 連系リレー
14 過電流防止回路
15 制御装置
21 バンドパスフィルタ
22 周波数/位相/振幅算出部
23 座標変換部
24 角加速度算出部
25 系統状態判定部
26 単独運転検知部
27 直流電圧制御部
28 リミッタ
29 有効電流制御部
30 無効電流制御部
31 座標変換部
32 ゲート信号生成部
35 制限値決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に連系し、直流電力を交流電力に変換して電力系統に出力する電力変換装置であって、
系統電圧の角加速度の情報を得る角加速度情報取得部と、
前記角加速度に基づいて瞬低の発生を判定する系統状態判定部と、
を備えた電力変換装置。
【請求項2】
前記系統状態判定部の判定結果に基づいて前記変換の動作を制御する、動作制御部を備えた請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
電力系統に出力する電流の値が出力電流指令値に対応した値となるように、前記変換が行われる請求項2に記載の電力変換装置であって、
前記動作制御部は、
瞬低が発生したと判定されたとき、予め決められた制限値を超えないように前記出力電流指令値を制限する電力変換装置。
【請求項4】
前記動作制御部は、
電力系統の電圧低下量に応じて前記制限値を決定する請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記系統状態判定部は、
前記角加速度の大きさが予め設定された第1閾値を超えたときに、瞬低が発生したと判定する請求項2から請求項4の何れかに記載の電力変換装置。
【請求項6】
ゲート信号に応じて駆動するインバータを有し、該インバータを用いて前記変換を行う請求項5に記載の電力変換装置であって、
前記動作制御部は、
前記角加速度の大きさが第1閾値を超え、かつ、第1閾値より大きく設定された第2閾値を越えなかった場合には、前記制限値を超えないように前記出力電流指令値を制限し、
前記角加速度の大きさが第2閾値を越えた場合には、前記インバータへの前記ゲート信号の送出を遮断させる電力変換装置。
【請求項7】
単独運転の発生を検知する単独運転検知部を備えた請求項請求項6に記載の電力変換装置であって、
前記角加速度の大きさが第1閾値より小さく設定された第3閾値を超え、かつ、第1閾値を超えなかった場合において、単独運転の発生が検知されたときには、電力系統からの解列が行われるようにする電力変換装置。
【請求項8】
前記動作制御部は、
前記出力電流指令値を制限している際に、前記角加速度の大きさが第3閾値以下となったときには、該出力電流指令値の制限を解除し、
前記ゲート信号の送出を遮断している際に、前記角加速度の大きさが第3閾値以下となったときには、該ゲート信号の送出の遮断を解除する請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
単独運転の発生を検知し、該検知の結果に応じて電力系統からの解列が行われるようにする請求項1から請求項6の何れかに記載の電力変換装置であって、
瞬低が発生したと判定されたときには、前記解列を禁止する電力変換装置。
【請求項10】
前記系統状態判定部は、
系統電圧の角加速度に加えて、系統電圧の周波数、位相、および振幅の少なくとも一つの検出結果にも基づいて、瞬低の発生を判定する請求項1から請求項4の何れかに記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−78207(P2013−78207A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216641(P2011−216641)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】