説明

電力変換装置

【課題】過大なサージ電圧から負荷や電源の絶縁劣化を防ぐことができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】インバータ2と電動機4との間にLC回路が存在する電動機駆動システムにおいて、インバータ2の出力電流が正極性のときは直流電源の高電位側端子に接続されているスイッチング素子をオンオフ動作させ、出力電流が負極性のときは直流電源の低電位側端子に接続されているスイッチング素子をオンオフ動作させるとともに、スイッチング素子をオン動作させる制御信号を第1のオン信号、第2のオン信号および第3のオン信号で構成し、スイッチング素子をオフ状態からオンオフ動作状態に移行させるとき、オフ状態後の第1のオン信号を所定の休止時間後に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子のオンオフ動作に起因して生じるサージ電圧を抑制することを可能にする電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、交流電動機を駆動する場合、直流電源の電圧をパルス幅変調することにより正弦波と等価なパルス電圧列(スイッチング周波数以上の成分を取り除くと正弦波となる波形)に変換し、このパルス幅変調された正弦波状の電圧が電動機に印加される。図8は、このような方式で電動機を駆動するシステムの概略構成図である。図において、1は直流電源、2は直流電源1に接続された3相電圧形PWMインバータ(以下インバータとする。)、3はインバータ2を制御するための制御装置、4はインバータ2で駆動される電動機である。
【0003】
インバータ2は、スイッチング素子Q1とQ2を直列に接続したU相アーム、スイッチング素子Q3とQ4を直列に接続したV相アームおよびスイッチング素子Q5とQ6を直列に接続したW相アームとからなる3相のブリッジで構成されている。U相アーム、V相アームおよびW相アームは、それぞれ直流電源1の高電位側端子Pと低電位側端子Nの間に並列に接続されている。また、スイッチング素子Q1〜Q6は、自己消弧機能を有する半導体素子の1つであるIGBTであり、それぞれに逆並列にダイオードが接続されている。
【0004】
各相アームの接続中点は、インバータ2の出力端子でもある。以下では、それぞれを出力端子U,V,WまたはU,V,W端子という。U端子は電動機4の端子Umに接続されている。V端子は電動機4の端子Vmに接続されている。W端子は電動機4の端子Wmに接続されている。
【0005】
インバータ2と電動機4との間の接続は配線で行われ、この配線には抵抗成分とインダクタンス成分とが存在する。さらに、インバータ2と電動機4との間の各相の配線間および各相の配線と大地または基準電位との間には浮遊容量が存在する。図8において、Lsはインバータ2と電動機4との間の配線のインダクタンスを示し、Csは各相の配線と大地または基準電位との間の浮遊容量を示す。なお、各相の配線などが有する抵抗成分はその記載を省略している。
【0006】
このような電動機駆動システムにおいて、制御装置3は、正弦波(変調信号)と三角波(キャリア信号)との大小比較をするパルス幅変調演算により、インバータ2内のスイッチング素子Q1〜Q6をオンオフ動作させるための制御信号G1〜G6を生成する。インバータ2は、制御信号G1〜G6に従ってスイッチング素子Q1〜Q6のオンオフ状態を切り換えることにより、直流電源1の電圧をパルス幅変調されたパルス状の矩形波電圧に変換する。パルス幅変調されたパルス状の矩形波電圧は、インバータ2の出力端子U,V,Wに出力され、配線を介して電動機4の入力端子Um,Vm,Wmに印加される。
【0007】
ところで、図に示すようにインバータ2と電動機4との間の配線には、インダクタンスLsと浮遊容量Csが存在する。パルス幅変調されたパルス状の矩形波電圧がこのインダクタンスLsと浮遊容量Csとで構成されるLC回路に印加されると、インバータ2とLC回路との間で共振現象が生じる。
【0008】
図9は、インバータ2のスイッチング素子Q1がオンオフ動作をしたときの電動機4の入力端子Um−N間に生じる共振電圧を示した図である。
以下、各端子の電位基準点は、直流電源1の低電位側端子N(以下、N端子ともいう。)の電位とする。
【0009】
スイッチング素子Q1の制御信号G1がLowからHighに変化すると、スイッチング素子Q1がオフ状態からオン状態に変化する。スイッチング素子Q1がオフ状態からオン状態に変化すると、インバータ2の出力端子Uの電位が0[V]から直流電源1の電圧Ed[V]に変化する。このインバータ2の出力端子Uの電位が、電動機4の入力端子Umに印加される。このとき、インバータ2とインダクタンスLsと浮遊容量Csの間でLC共振が発生し、電動機4のUm−N端子間には共振電圧が印加される。
【0010】
この共振電圧は、インバータ2と電動機4との間の配線などが有する抵抗成分(図示せず。)により時間とともに減衰振動するサージ電圧となるが、その最大値は、直流電源1の電圧Ed[V]の約2倍に達する。そして、この過大なサージ電圧およびその時間変化率dv/dtは、電動機4の絶縁破壊を引き起こすことが知られている。
【0011】
このような過大なサージ電圧による電動機の絶縁破壊を防止する方策として、電動機の入力端子部にダイオードブリッジで構成した整流器とその直流端子の両端にコンデンサと抵抗を並列接続してなるサージ電圧抑制装置が提案されている(例えば特許文献1参照。)。また、これを改良したものとして、整流器の直流端子に接続した抵抗に流れる電流をスイッチング素子で制御するサージ電圧抑制装置が提案されている(例えば特許文献2参照。)。また、整流器の直流端子をインバータの入力端子に接続してサージ電圧のエネルギーを電源に回生するサージ電圧抑制方式などが提案されている(例えば特許文献3参照。)。また、インバータと電動機との間にリアクトルを接続し、このリアクトルに抵抗とコンデンサの直列体を並列接続するサージ電圧抑制方法が提案されている(例えば特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−23682号公報
【特許文献2】特開2006−115667号公報
【特許文献3】特開2010−136564号公報
【特許文献4】特開2007−166708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記方策では、サージ電圧を抑制するために整流器、抵抗、コンデンサなどからなるサージ電圧抑制装置や、リアクトル、抵抗、コンデンサからなるサージ電圧抑制回路を追加する必要があり、装置の大型化、高価格化を招くことになる。
【0014】
本発明は、このような従来のサージ電圧抑制装置が有していた問題を解決しようとするものであり、その目的は、特別な部品を追加することなく、または最小限の部品の追加により、電動機に印加されるサージ電圧を抑制することができる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る制御装置は、直流電源の高電位側端子と低電位側端子との間に直列に接続されたスイッチング素子をオンオフ動作させて直流電源の電圧をパルス列の電圧に変換した後、フィルタ回路で波形整形して負荷に供給する電力変換装置を制御するものである。すなわち、本発明に係る制御装置は、直列接続されたスイッチング素子群から正極性の電流を出力する期間のとき、該スイッチング素子群のうち直流電源の高電位側端子に接続されているスイッチング素子をオンオフ動作させるための制御信号と、低電位側端子に接続されているスイッチング素子をオフ状態にするための制御信号とを生成する。一方、本発明に係る制御装置は、直列接続されたスイッチング素子群から負極性の電流を出力する期間のとき、該スイッチング素子群のうち直流電源の低電位側端子に接続されているスイッチング素子をオンオフ動作させるための制御信号と、高電位側端子に接続されているスイッチング素子をオフ状態にするための制御信号とを生成する。そして、本発明に係る制御装置は、スイッチング素子をオンさせるための制御信号を、第1オフ時間オフの後、第1オン時間オンする第1のオン信号と、前記第1のオン信号に続き第2オフ時間オフの後、第2オン時間オンする第2のオン信号とで構成している。
【0016】
さらに、第1オフ時間は、直流電源の高電位側端子に接続されているスイッチング素子と低電位側端子に接続されているスイッチング素子との間で短絡が生じないようにするために両スイッチング素子が同時にオフしている時間に設定される。
【0017】
さらに、第1オン時間と第2オフ時間とは、フィルタ回路が有する共振周期の1/6の時間幅に設定される。
また、スイッチング素子をオンさせるための制御信号は、第1のオン信号と第2のオン信号に加えて第3のオン信号とで構成することができる。
【0018】
第3のオン信号は、第2のオン信号に続き、第3オフ時間オフ後、第3オン時間オンする信号である。
さらに、第3オフ時間と第3オン時間とは、フィルタ回路が有する共振周期の1/6の時間幅に設定される。
【0019】
また、本発明に係る制御装置は、第1オン時間と第2オフ時間および第3オフ時間と第3オン時間を、フィルタ回路が有する共振周期の変化に応じて調節することができる。
すなわち、本発明に係る制御装置は、第1オン時間と第2オフ時間および第3オフ時間と第3オン時間を、直列接続されたスイッチング素子群から出力される電流の大きさまたはフィルタ回路を構成するリアクトルのインダクタンス値に応じて調節することができる。
【0020】
また、本発明に係る電力変換装置は、上記の制御装置で生成された制御信号に基づいて直流電源の高電位側端子と低電位側端子との間に直列に接続されたスイッチング素子群をオンオフ動作させ、該直流電源の電圧をパルス列の電圧に変換した後フィルタ回路で波形整形して負荷に供給するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る電力変換装置は、直流電源の高電位側端子または低電位側端子に接続されたスイッチング素子を高周波数でオンオフ動作させるときに、上下アームの短絡を防止できるとともに、スイッチング素子のオンオフ動作時にフィルタ回路で生じる振動電圧を打ち消すことにより、電動機などの負荷の入力端に生じるサージ電圧を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る電力変換装置の実施形態を説明するための図である。
【図2】スイッチング素子Q1の制御信号G1を生成するブロック図を説明するための図である。
【図3】U相電流の極性が正のときのPWM信号とスイッチング素子の制御信号との関係を説明するための図であり、(a)はPWM信号PWMu、(b)は制御信号G1、(c)は制御信号G2である。
【図4】U相電流の極性が負のときのPWM信号とスイッチング素子の制御信号との関係を説明するための図であり、(a)はPWM信号PWMu、(b)は制御信号G1、(c)は制御信号G2である。
【図5】スイッチング素子がオンするときに発生するサージ電圧の抑制を説明するための図であり、(a)はPWM信号PWMu、(b)は制御信号G1、(c)はU−N端子間電圧波形、(d)は第1のステップ電圧波形、(e)は第2のステップ電圧波形、(f)は第3のステップ電圧波形、(g)は各ステップ電圧により生じる共振電圧波形、(h)はUm−N端子間の電圧波形である。
【図6】スイッチング素子がオフするときに発生するサージ電圧の抑制を説明するための図であり、(a)はPWM信号PWMu、(b)は制御信号G1、(c)はU−N端子間電圧波形、(d)は第4のステップ電圧波形、(e)は第5のステップ電圧波形、(f)は第6のステップ電圧波形、(g)は各ステップ電圧により生じる共振電圧波形、(h)はUm−N端子間の電圧波形である。
【図7】リアクトルのインダクタンス値と電流との関係を説明するための図である。
【図8】従来技術に係る電力変換装置を説明するための図である。
【図9】図8に示す電力変換装置で電動機を駆動したときの電動機入力端子に発生するサージ電圧を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図7に基づいて詳細に説明する。なお、図1〜図7において、図8に示した構成要素と共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略する。
【0024】
図1は本発明に係る電力変換装置の実施形態を説明するための図である。図において、直流電源1、インバータ2、電動機4、配線のインダクタンスLsおよび浮遊容量Csは、図8に示した構成要素と同じである。
【0025】
インバータ2の出力部にはリアクトルLfとコンデンサCfとからなるフィルタ回路が設けられている。リアクトルLfはインバータ2の出力端子U,V,Wと電動機4の入力端子Um,Vm,Wmとの間に挿入される。また、コンデンサCfは、その各一端がリアクトルLfの各端子U1、V1,W1に接続され、それぞれの他端は一括して直流電源1のN端子側に接続されている。
【0026】
フィルタ回路と電動機4との間には電動機4に流れるU相電流,V相電流,W相電流を検出するための電流検出器5が設けられている。電流検出器5で検出された各相電流の検出信号Iu,Iv,Iwは、制御装置3aに入力される。
【0027】
制御装置3aは、各電動機の相電流検出信号Iu,Iv,Iwが各相電流の指令値と一致するように調節演算を行って、各相の出力電圧指令を生成する。さらに、生成した各相の出力電圧指令を用いてパルス幅変調演算を行い、後述する制御信号G1〜G6を生成する。
【0028】
インバータ2のスイッチング素子Q1〜Q6は、制御装置3aで生成された制御信号G1〜G6にしたがって、オンオフ動作を行う。すなわち、制御信号G1〜G6がHighのとき、スイッチング素子Q1〜Q6はオンし、制御信号G1〜G6がLowのとき、スイッチング素子Q1〜Q6はオフする。
【0029】
スイッチング素子Q1〜Q6がオンオフ動作を行った結果、インバータ2から三相交流電圧(パルス幅変調された矩形波状のパルス電圧列)が出力される。
インバータから出力されるパルス幅変調された矩形波状のパルス電圧列は、上述のフィルタ回路によってほぼ正弦波状の三相交流電圧に波形整形されて、電動機4に印加される。
【0030】
ここで、リアクトルLfのインダクタンス値およびコンデンサCfのキャパシタンス値を配線のインダクタンスLsのインダクタンス値および浮遊容量Csのキャパシタンス値の概ね10倍またはこれ以上の値に選べば、インダクタンスLsと浮遊容量Csとで構成されるLC回路に印加される電圧の立ち上がりと立ち下がりは緩やかになる。その結果、インダクタンスLsと浮遊容量Csとで構成されるLC回路の共振を抑制することができる。
【0031】
しかし、挿入したフィルタ回路とインバータ2との間で共振が発生することが考えられる。フィルタ回路の共振周期Tは、リアクトルLfのインダクタンス値L[H]およびコンデンサCfのキャパシタンス値C[F]で定まり、T=2π√(LC)[s]である。
【0032】
そこで、制御装置3aは、フィルタ回路で生じる共振を打ち消すために、生成する各スイッチング素子の制御信号を、それぞれ第1のオン信号G01、第2のオン信号G02および第3のオン信号G03で構成する。
【0033】
以下では、スイッチング素子の制御信号を生成する方法および制御信号の構成について説明する。
図2は、直流電源1の高電位側端子と低電位側端子の間に直列接続されたスイッチング素子Q1,Q2の制御信号G1,G2を生成する制御ブロック図である。
【0034】
図3は、U相電流の極性が正(極性信号IupがHigh)の期間において生成されたPWM信号PWMuの1パルス(Low状態から所定時間Highとなった後に再びLowになる信号)と,このPWM信号PWMuに基づいて生成される制御信号G1および制御信号G2の関係をタイミングチャートで表したものである。
【0035】
図2において、301は休止時間Tdの付加手段、302はパルス信号生成手段、303は遅延信号生成手段、304は排他的論理演算手段(XOR)、305は論理積演算手段(AND)である。この論理積演算手段305の出力が、スイッチング素子Q1の制御信号G1となる。
【0036】
まず、図示しないPWM信号生成手段により、U相のPWM信号PWMuが生成される。PWM信号PWMuは、U相の出力電圧指令を直流電源1の電圧で正規化した正弦波信号(変調信号)と三角波信号(キャリア信号)との大小比較をすることにより得られる。
【0037】
休止時間付加手段301は、U相のPWM信号PWMuに対して休止時間Tdを付加する。この休止時間は、PWM信号PWMuがLowからHighに変化するときにのみ付加される。休止時間Tdは、スイッチング素子Q1とQ2が同時にオンして短絡を起こさないようにするために設けられるオフ期間、すなわち、スイッチング素子Q1とQ2が同時にオフしている期間である。
【0038】
したがって、休止時間Tdを付加されたPWM信号PWMu’は、元のPWM信号PWMuから休止時間Tdだけ遅れてHighになり、元のPWM信号PWMuと同時にLowとなる信号である。
【0039】
パルス信号生成手段302は、休止時間Tdを付加されたPWM信号PWMu’の立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングにおいて、時間T1だけHighになる信号Gt1を生成する。時間T1は、フィルタ回路の共振周期の1/6の時間である。
【0040】
遅延信号生成手段303は、休止時間Tdを付加されたPWM信号PWMu’の立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングを時間T2だけ遅れた信号Gt2を生成する。時間T2は、時間T1の2倍の時間に設定されている。
【0041】
排他的論理演算手段304は、パルス信号生成手段32から出力される信号Gt1と遅延信号生成手段303から出力される信号Gt2との間で排他的論理演算を行う。
論理積演算手段305は、排他的論理演算手段304から出力される信号とU相電流の極性信号Iupとの間の論理積演算を行い、スイッチング素子Q1の制御信号G1を生成する。
【0042】
このように演算することにより、High状態から所定時間Lowとなった後に再びHighとなるU相のPWM信号PWMu(図3(a))に対して、第1のオン信号G01、第2のオン信号G02および第3のオン信号G03で構成された制御信号G1(図3(b))が生成される。
【0043】
具体的には、第1のオン信号G01は、PWM信号PWMuがHighになってから第1オフ時間オフする信号と、その後第1オン時間オンする信号とで構成される。第1オフ時間は、休止時間Tdである。第1オン時間は、時間T1である。
【0044】
第2のオン信号G02は、第1のオン信号G01の第1オン時間経過後第2オフ時間オフする信号と、その後第2オン時間オンする信号とで構成される。第2オフ時間は、時間T1である。第2オン時間は、第2オフ時間経過後、PWM信号PWMuがLowになるまでの時間である。
【0045】
第3のオン信号G03は、第2のオン信号G02の第2オン時間経過後第3オフ時間オフする信号と、その後第3オン時間オンする信号とで構成される。第3オフ時間と第3オン時間は、時間T1である。
【0046】
一方、スイッチング素子Q2の制御信号G2は、U相電流の極性が正であるため、常にLowである(図3(c))。
次に、U相電流の極性が負(極性信号IupがLow)のとき、スイッチング素子Q2の制御信号G2は、U相電流の極性信号Iupを論理反転演算子311でHighとLowを反転した信号とPWM信号PWMuを論理反転演算子312でHighとLowを反転した信号を用いることにより、生成することができる。
【0047】
スイッチング素子Q2の制御信号G2の生成方法は、U相電流の極性信号Iupの反転信号とPWM信号PWMuの反転信号を用いる以外は上記スイッチング素子Q1の制御信号G1の生成方法と同様であるので、その説明は省略する。
【0048】
図4は、U相電流の極性が負(極性信号IupがLow)の期間において生成されたPWM信号PWMuの1パルスと,このPWM信号PWMuに基づいて生成される制御信号G1および制御信号G2の関係をタイミングチャートで表したものである。
【0049】
図4(a)は、High状態から所定時間Lowとなった後に再びHighとなるPWM信号PWMuである。
図4(b)は、スイッチング素子Q1の制御信号G1を示す。スイッチング素子Q2の制御信号G2は、U相電流の極性が負であるため、常にLowである。
【0050】
図4(c)は、スイッチング素子Q2の制御信号G2を示す。スイッチング素子Q2の制御信号G2は、第1のオン信号G01、第2のオン信号G02および第3のオン信号G03で構成された信号となる。
【0051】
具体的には、第1のオン信号G01は、PWM信号PWMuがLowになってから第1オフ時間オフする信号と、その後第1オン時間オンする信号とで構成される。第1オフ時間は、休止時間Tdである。第1オン時間は、時間T1である。
【0052】
第2のオン信号G02は、第1のオン信号G01の第1オン時間経過後第2オフ時間オフする信号と、その後第2オン時間オンする信号とで構成される。第2オフ時間は、時間T1である。第2オン時間は、第2オフ時間経過後、PWM信号PWMuがHighになるまでの時間である。
【0053】
第3のオン信号G03は、第2のオン信号G02の第2オン時間経過後第3オフ時間オフする信号と、その後第3オン時間オンする信号とで構成される。第3オフ時間と第3オン時間は、時間T1である。
【0054】
なお、休止時間付加手段301は、U相電流の極性信号IupがLowからHighになった後、最初にPWM信号PWMuがLowからHighになるときにのみ、休止時間Tdを付加するようにしても良い。同様に、休止時間付加手段321は、U相電流の極性信号IupがHighからLowになった後、最初にPWM信号PWMuがHighからLowになるときにのみ、休止時間Tdを付加するようにしても良い。
【0055】
このようにすれば、その後のU相電流の極性信号IupがHighおよびLowの期間において、PWM信号PWMuとPWM信号PWMu’を一致させることができ、より出力電圧指令に近い電圧をU端子に発生させるための制御信号G1,G2を生成することができる。
【0056】
また、制御装置3aは、V相のPWM信号PWMvを用いてスイッチング素子Q3,Q4の制御信号G3,G4を生成するとともに、W相のPWM信号PWMwを用いてスイッチング素子Q5,Q6の制御信号G5,G6を生成する。
【0057】
スイッチング素子Q3とQ4の制御信号G3とG4およびスイッチング素子Q5とQ6の制御信号G5とG6は、図2に示したブロック図とほぼ同様の機能を用いて生成することができる。
【0058】
インバータ2のスイッチング素子Q1〜Q6は、このようにして生成された制御信号G1〜G6に従ってオンオフ動作を行う。したがって、スイッチング素子Q1〜Q6は、同一相の他方のスイッチング素子が必ずオフしているので、高周波数のオンオフ動作を行うことができる。
【0059】
直流電源1の電圧は、スイッチング素子Q1〜Q6のオンオフ動作によって、パルス幅変調された矩形波状のパルス電圧列に変換される。このパルス電圧列は、インバータ2の出力端子U,V,Wに出力され、リアクトルLfとコンデンサCfとからなるフィルタ回路によって波形整形された後、電動機4の入力端子Um,Vm,Wmに印加される。
【0060】
なお、図2は、本発明に係る制御装置においてスイッチング素子の制御信号を生成するための制御ブロック図の一例である。したがって、図3及び図4に示したスイッチング素子の制御信号を生成することができれば、図2の制御ブロック図に制限されず、他の方法によって制御信号を生成するものであっても良い。
【0061】
次に、図5(a)〜(h)を用いて、図1に示した電動機駆動システムにおいて、スイッチング素子Q1がオフ状態からオン状態に移行するときに発生するサージ電圧が抑制される原理を説明する。各端子の電位の基準点は、直流電源1のN端子の電位である。
【0062】
図5(a)は、U相のPWM信号PWMuを示す。
図5(b)は、スイッチング素子Q1の制御信号G1を示す。ここでは、図3(b)に示した制御信号G1のうち、第1のオン信号G01と第2のオン信号G02を示している。第1のオン信号G01がLowからHighになるタイミングを第1のタイミング、第1のオン信号G01がHighからLowになるタイミングを第2のタイミング、第2のオン信号G02がLowからHighになるタイミングを第3のタイミングとする。
【0063】
第3のオン信号G03は、スイッチング素子Q1がオン状態からオフ状態に移行するときにサージ電圧を抑制するための信号であるため、その詳細は後述することとし、ここではその説明を省略する。
【0064】
図5(c)は、スイッチング素子Q1がオンオフ動作した結果、U端子とN端子の間に現れる電圧波形を示す。
スイッチング素子Q1は、オフ状態から、制御信号G1にしたがって、第1のタイミングでオンの状態、第2のタイミングでオフの状態、第3のタイミングでオンの状態に順次移行する。その結果、インバータ2のU−N端子間電圧は、制御信号G1に対応して、0[V]→Ed[V]→0[V]→Ed[V]と変化する。
【0065】
ここで、第1,第2,第3のタイミングにおける電圧の変化を、それぞれ第1のステップ電圧、第2のステップ電圧、第3のステップ電圧とする。
インバータ2のU−N端子間に出力される電圧は、図5(d)〜(f)に示す第1のステップ電圧,第2のステップ電圧および第3のステップ電圧の合成電圧として捉えることができる。
【0066】
第1のステップ電圧は、初期電圧0[V]から第1のタイミングで正側振幅値Ed[V]となる矩形波電圧である(図5(d))。第2のステップ電圧は、初期電圧0[V]から第2のタイミングで負側振幅値−Ed[V]となる矩形波電圧である(図5(e))。第3のステップ電圧は、初期電圧0[V]から第3のタイミングで正側振幅値Ed[V]となる矩形波電圧である(図5(f))。
【0067】
第1から第3のタイミングにおける電圧の各ステップ変化は、図1に示したリアクトルLfとコンデンサCfとからなるフィルタ回路の共振を引き起こす。
図5(g)に示すように、第1のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr1は、初期電圧0[V]、中心電圧Ed[V]、振幅値Ed[V]となる正弦波電圧である。第2のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr2は、初期電圧0[V]、中心電圧−Ed[V]、振幅Ed[V]となる正弦波電圧である。第3のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr3は、初期電圧0[V]、中心電圧Ed[V]、振幅Ed[V]となる正弦波電圧である。
【0068】
また、リアクトルLfのインダクタンス値をL[H]、コンデンサCfのキャパシタンス値をC[F]とすると、第1から第3のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr1〜Vr3の周期TはT=2π√(LC)[s]で表される。したがって、共振周波数fは1/T[Hz]であり、角周波数ωは2πf[rad/s]となる。
【0069】
ここで、時間T1を共振周期Tの1/6の時間に設定すれば、第2のステップ電圧と第3のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr2とVr3は、第1のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr1に対して、それぞれ位相が(4π/3)[rad]遅れ、(2π/3)[rad]遅れの関係になる。
【0070】
したがって、第1から第3のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr1〜Vr3は、Vr1=Ed{1+sin[ωt]}、Vr2=−Ed{1−sin[ωt−(4π/3)]}、Vr3=Ed{1+sin[ωt−(2π/3)]}で表される。
【0071】
上記から、第1のタイミングから第3のタイミングまでの間にフィルタ回路のU1端子とN端子の間に生じる電圧は、第1のステップ電圧によって生じた共振電圧Vr1と第2のステップ電圧によって生じた共振電圧Vr2とを合成した電圧となる(図5(h))。したがって、この期間にU1−N端子間に生じる電圧は、図9に示した共振電圧よりも緩やかな立ち上がりを有する電圧となる。
【0072】
また、第3のタイミング以降にU1−N端子間に生じる電圧は、共振電圧Vr1〜Vr3を合成した電圧である。したがって、第3のタイミング以降にU1−N端子間に生じる電圧は、その大きさがEd[V]の直流となる(図5(h))。
【0073】
以上のように、本発明に係る電力変換装置では、スイッチング素子がオフ状態からオン状態に移行するとき、所定時間幅でオンオフ動作を行うようにしたので、フィルタ回路で発生する共振電圧が打ち消される。これにより、フィルタ回路のU1端子とN端子間の電圧は、0[V]から直流電源1の電圧Ed[V]まで緩やかに立ち上がる電圧となる。その結果、電動機4の入力端子Um,Vm,Wmにはサージ電圧が抑制された電圧が印加されることになる。
【0074】
次に、図1に示した電動機駆動システムにおいて、インバータ2のスイッチング素子Q1がオフ状態に移行するときに発生するサージ電圧が抑制される原理を、図6(a)〜(h)を用いて説明する。各端子の電位基準点は、直流電源1のN端子の電位である。
【0075】
図6(a)は、U相のPWM信号PWMuを示す。
図6(b)は、スイッチング素子Q1の制御信号G1を示す。ここでは、図3(b)に示した信号のうち、第2のオン信号G02と第3のオン信号G03を示している。第2のオン信号G02がHighからLowになるタイミングを第4のタイミング、第3のオン信号G03がLowからHighになるタイミングを第5のタイミング、第3のオン信号G03がHighからLowになるタイミングを第6のタイミングとする。
【0076】
図6(c)は、スイッチング素子Q1がオンオフ動作した結果、U端子とN端子の間に現れる電圧波形を示す。
スイッチング素子Q1は、オン状態から、制御信号G1にしたがって、第4のタイミングでオフの状態、第5のタイミングでオンの状態、第6のタイミングでオフの状態に順次移行する。その結果、インバータ2のU−N端子間電圧は、制御信号G1に対応して、Ed[V]→0[V]→Ed[V]→0[V]と変化する。
【0077】
ここで、第4,第5,第6のタイミングにおける電圧の変化を、それぞれ第4のステップ電圧、第5のステップ電圧、第6のステップ電圧とする。
図6(c)〜(f)に示すように、インバータ2のU−N端子間に出力される電圧は、第4のステップ電圧、第5のステップ電圧、第6のステップ電圧の合成電圧として捉えることができる。
【0078】
第4のステップ電圧は、初期電圧Ed[V]から第1のタイミングで0[V]となる矩形波電圧である。第5のステップ電圧は、初期電圧−Ed[V]から第2のタイミングで0[V]となる矩形波電圧である。第6のステップ電圧は、初期電圧Ed[V]から第3タイミングで0[V]となる矩形波電圧である。
【0079】
ところで、第4から第6のタイミングにおける電圧のステップ変化は、図1に示したリアクトルLfとコンデンサCfとからなるフィルタ回路の共振を引き起こす。
図6(g)に示すように、第4のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr4は、初期電圧Ed[V]、中心電圧0[V]、振幅Ed[V]となる正弦波電圧である。第5のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr5は、初期値−Ed[V]、中心電圧0[V]、振幅Ed[V]となる正弦波電圧である。第6のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr6は、初期電圧Ed[V]、中心電圧0[V]、振幅Ed[V]となる正弦波電圧である。
【0080】
また、第4から第6のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr4〜Vr6の周期TはT=2π√(LC)[s]である。したがって、共振周波数fは1/T[Hz]であり、角周波数ωは2πf[rad/s]となる。
【0081】
ここで、時間T1をVr4〜Vr6の共振周期Tの1/6に設定すれば、第5のステップ電圧と第6のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr5とVr6は、第4のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr4に対し、それぞれ位相が(4π/3)[rad]遅れ、(2π/3)[rad]遅れの関係になる。
【0082】
そうすると、第4から第6のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr4〜Vr6は、
Vr4=Edsin[ωt]、Vr5=Edsin[ωt−(4π/3)]、Vr6=Edsin[ωt−(2π/3)]で表される。
【0083】
上記から、第4のタイミングから第6のタイミングまでの間にフィルタ回路のU1端子とN端子の間に生じる電圧は、第4のステップ電圧によって生じた共振電圧Vr4と第5のステップ電圧によって生じた共振電圧Vr5が合成された電圧となる(図6(h))。したがって、この期間にU1−N端子間に生じる電圧は、図9に示した共振電圧よりも緩やかな立ち下がりを有する電圧となる。
【0084】
また、第6のタイミング以降にU1−N端子間に生じる電圧は、共振電圧Vr4〜Vr6が合成された電圧である。したがって、第6のタイミング以降にU1−N端子間に生じる電圧は、その大きさが0[V]の直流となる(図6(h))。
【0085】
すなわち、本発明に係る電力変換装置では、スイッチング素子Q1がオン状態からオフ状態に移行するとき、所定時間幅でオンオフ動作を行うようにしたので、フィルタ回路で発生する共振電圧が打ち消される。これにより、フィルタ回路のU1端子とN端子の間の電圧は、直流電源1の電圧Ed[V]から0[V]まで緩やかに立ち下がる電圧となる。その結果、電動機4の入力端子Um,Vm,Wmにはサージ電圧が抑制された電圧が印加されることになる。
【0086】
上述したように、スイッチング素子Q1がオフ状態からオン状態に変化する場合およびオン状態からオフ状態に変化する場合において、フィルタ回路のU1端子とN端子の間の電圧は緩やかに変化する。他のスイッチング素子Q2〜Q6がオフ状態からオン状態に変化する場合およびオン状態からオフ状態に変化する場合においても、ほぼ同様の原理により、フィルタ回路のU1端子,V1端子およびW1端子の各端子とN端子の間の電圧は緩やかに変化する。その結果、電動機4の入力端子Um,Vm,Wmにはサージ電圧が抑制された電圧が印加されることになる。
【0087】
次に、フィルタ回路の共振周期Tが回路動作状態によって変化する場合にも、フィルタ回路で発生する共振電圧を打ち消す方法について説明する。
リアクトルLfとコンデンサCfとからなるフィルタ回路の共振周期TはT=2π√(LC)[s]で表される。すなわち、共振周期TはリアクトルLfのインダクタンス値Lの平方根に正比例する。
【0088】
また、リアクトルLfのインダクタンス値LとリアクトルLfのコイルに流れる電流Ifとの間には図7に示す関係があることが知られている。リアクトルLfの鉄心材料にはフェライト磁石やアモルファス合金に代表される磁性材料が用いられている。このような磁性材料を鉄心に用いたリアクトルは、コイルに流れる電流Ifの値が大きくなるとインダクタンス値Lが低下するという特性を有する。
【0089】
コイルに流れる電流Ifの値が大きくなるにしたがってインダクタンス値Lが変化すると、設定されているフィルタ回路の共振周期Tと実際に発生する共振電圧Vr1〜Vr3,Vr4〜Vr6の周期にずれが生じる。その結果、フィルタ回路で発生する共振電圧が十分に打消されず、サージ電圧の抑制効果が低減する。
【0090】
そこで、フィルタ回路の共振周期Tの長さに正比例して時間T1,T2を調節し、共振電圧が確実に打ち消されるようにする必要がある。
フィルタ回路の共振周期Tは、上記のとおりリアクトルLfのインダクタンス値Lの平方根に正比例する。したがって、リアクトルLfのインダクタンス値Lの平方根に正比例するように時間T1,T2を調節すれば、共振電圧が効果的に打消される。また、リアクトルLfのインダクタンス値Lに時間T1,T2の二乗値が正比例するように調節しても、共振電圧が効果的に打消される。
【0091】
リアクトルLfのインダクタンス値Lは、例えば、制御装置3a内に図7に示すリアクトルLfのインダクタンス値Lとコイルに流れる電流値との関係を示すデータテーブルを備えることにより、リアクトルLfに流れる電流値に基づいて求めることができる。
【0092】
リアクトルLfに流れる電流値は、図1に示すように、リアクトルLfとコンデンサCfとからなるフィルタ回路と電動機4との間に設けた電流検出器5で検出された電流値を用いることができる。リアクトルLfに流れる電流のうちコンデンサCfに流れる電流の比率が小さい場合、時間T1を共振周期Tの1/6の時間にほぼ一致させることができる。時間T2は時間T1の2倍の時間に設定されるため、共振周期Tの1/3の時間にほぼ一致する。
【0093】
リアクトルに流れる電流をより正確に検出するためには、電流検出器5をインバータ2とリアクトルLfとの間またはリアクトルLfとU1端子〜W1端子の間に設ければ良い。時間T1を共振周期Tの1/6の時間により正確に一致させることができる。同様に、時間T2を共振周期Tの1/3の時間により正確に一致させることができる。
【0094】
また、上記により求めたリアクトルLfのインダクタンス値LとコンデンサCfのキャパシタンス値Cとからフィルタ回路の共振周期Tを算出し、この算出した共振周期Tに正比例して時間T1,T2を調節することもできる。
【0095】
さらに、上記により求めたフィルタ回路の共振周期Tとリアクトルに流れる電流値との相間を示すデータテーブルを予め作成して制御装置3a内に備え、リアクトルLfに流れる電流値に基づいてこのテーブルを参照し、テーブルを参照することにより得られた共振周期に正比例して時間T1,T2を調節することもできる。
【0096】
このように時間T1をフィルタ回路の共振周期の1/6となるように調整し、時間T2を時間T1の2倍の時間となるように調節すれば、フィルタ回路における共振電圧の打ち消し効果を確実に発揮することができる。その結果、電動機4の入力端子に生じるサージ電圧を効果的に抑制することができる。
【0097】
なお、時間T1と時間T2の調節は、図2に示す制御ブロック図のパルス信号生成手段302,322および遅延信号生成手段303,323で行われる。
なお、上述した本発明の実施形態では、3相電圧形PWMインバータによる電動機駆動システムを例にとって本発明の作用および効果を説明したが、インバータの負荷は電動機に限られず、電動機以外の電気回路または電気部品を負荷とするインバータであっても、同様の作用および効果を発揮することができる。また、インバータは3相インバータに限られず、単相または3相以上の多相インバータであってもよい。また、2レベルのインバータに限られず、3レベル以上の多レベルのインバータであってもよい。
【0098】
さらに、変調方式もPWM変調に限られず、矩形波状の電圧を負荷に対して出力する方式であればよい。
【符号の説明】
【0099】
1・・・直流電源、2・・・インバータ、3,3a・・・制御装置、4・・・電動機、5・・・電流検出器、Ls・・・配線のインダクタンス、Cs・・・配線の浮遊容量、Lf・・・リアクトル、Cf・・・コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の高電位側端子と低電位側端子との間に直列に接続されたスイッチング素子群をオンオフ動作させて該直流電源の電圧をパルス列の電圧に変換した後フィルタ回路で波形整形して負荷に供給する電力変換装置の制御装置であって、
前記直列接続されたスイッチング素子群から正極性の電流を出力する期間のとき、該スイッチング素子群のうち前記直流電源の高電位側端子に接続されているスイッチング素子をオンオフ動作させるための制御信号と、低電位側端子に接続されているスイッチング素子をオフ状態にするための制御信号とを生成し、
前記直列接続されたスイッチング素子群から負極性の電流を出力する期間のとき、該スイッチング素子群のうち前記直流電源の低電位側端子に接続されているスイッチング素子をオンオフ動作させるための制御信号と、高電位側端子に接続されているスイッチング素子をオフ状態にするための制御信号とを生成し、
前記スイッチング素子をオンさせるための制御信号を、第1オフ時間オフの後、第1オン時間オンする第1のオン信号と、前記第1のオン信号に続き第2オフ時間オフの後、第2オン時間オンする第2のオン信号とで構成したことを特徴とする電力変換装置の制御装置。
【請求項2】
前記第1オフ時間は、前記直流電源の高電位側端子に接続されているスイッチング素子と低電位側端子に接続されているスイッチング素子との間で短絡が生じないようにするために両スイッチング素子が同時にオフしている時間であることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項3】
前記第1オン時間と前記第2オフ時間を、前記フィルタ回路が有する共振周期の1/6の時間幅に設定することを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項4】
前記スイッチング素子をオンさせるための制御信号を、前記第1のオン信号と前記第2のオン信号に加えて第3のオン信号とで構成し、前記第3のオン信号は、前記第2のオン信号に続き第3オフ時間オフ後、第3オン時間オンすることを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項5】
前記第3オフ時間と前記第3オン時間を、前記フィルタ回路が有する共振周期の1/6の時間幅に設定することを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項6】
前記フィルタ回路は、リアクトルとコンデンサからなる回路であることを特徴とする請求項1乃至請求5に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項7】
前記第1オン時間と前記第2オフ時間および前記第3オフ時間と前記第3オン時間を、前記フィルタ回路が有する共振周期の変化に応じて調節することを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項8】
前記第1オン時間と前記第2オフ時間および前記第3オフ時間と前記第3オン時間を、前記直列接続されたスイッチング素子群から出力される電流の大きさに応じて調節することを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項9】
前記第1オン時間と前記第2オフ時間および前記第3オフ時間と前記第3オン時間を、前記リアクトルのインダクタンス値に応じて調節することを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9に記載の制御装置で生成された制御信号に基づいて直流電源の高電位側端子と低電位側端子との間に直列に接続されたスイッチング素子群をオンオフ動作させ、該直流電源の電圧をパルス列の電圧に変換した後フィルタ回路で波形整形して負荷に供給することを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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