説明

電力線通信システムおよび電力線通信システムにおける通信対象特定方法

【課題】セキュリティ設定が容易な電力線通信システムを提供する。
【解決手段】電力線通信システムは、第一の電力線通信端末10と、当該第一の電力線通信端末10と電力線PLを介して接続可能な第二の電力線通信端末20とを備えている。第一の電力線通信端末10は、切替手段2を備えている。切替手段2は、登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20が接続されると、ACプラグ4がフィルターユニット3を介して登録用コンセント5およびPLCユニット1と接続されるように接続切替を行う。また切替手段2は、登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20が接続されていないとき、ACプラグ4がフィルターユニット3を介さずに登録用コンセント5およびPLCユニット1と接続されるように接続切替を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力線通信システムおよび電力線通信システムにおける通信対象特定方法に係る発明であり、特に、電力線通信に先立って、電力線通信を行う端末を特定する処理を実施する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力線を用いた電力線通信(PLC:Power Line Communication)に関する技術は、従来より存在する(たとえば、特許文献1,2)。また、電力線通信システムは、たとえば電力線インフラが整備されている、一般企業や一般家庭において構築される。
【0003】
しかし、電力線は、セキュリティ的に無防備な状態で配設されている。つまり、電力線通信システムでは、たとえば隣接する家屋に情報が用意に漏洩する。したがって、電力線通信システムでは、他の通信端末による通信内容の傍受や成りすまし行為を防止するための仕組みが必要とされる。
【0004】
なお、無線LANシステムにおいて、上記通信内容の傍受や成りすまし行為を防止する先行技術として、特許文献3,4が存在する。
【0005】
【特許文献1】特開2005−244281号公報
【特許文献2】特開2007−208385号公報
【特許文献3】特開2004−215232号公報
【特許文献4】特開2006−100957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的に、他の通信端末による通信内容の傍受や成りすまし行為を防止するための仕組みは操作に手間がかかる。したがって、当該セキュリティ設定操作が煩わしい電力線通信システムは、ユーザに受け入れられ難いという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、セキュリティ設定が容易な電力線通信システムを提供、および当該電力線通信システムにおける通信対象特定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の電力線通信システムは、第一の電力線通信端末と、前記第一の電力線通信端末と電力線を介して接続可能な、少なくとも1以上の第二の電力線通信端末とを、備えており、前記第一の電力線通信端末は、前記電力線と接続される側の第一の端子部と、電力線通信機能を有するPLCユニットと、前記第一の端子部および前記PLCユニットと接続される第二の端子部と、通信に関する信号を減衰させるフィルターユニットと、前記第二の端子部に前記第二の電力線通信端末が接続されているときには、前記第一の端子部が前記フィルターユニットを介して前記第二の端子部および前記PLCユニットと接続され、前記第二の端子部に第二の電力線通信端末が接続されていないときには、前記第一の端子部が前記フィルターユニットを介さずに前記第二の端子部および前記PLCユニットと接続されるように、接続切替を行う切替手段を、備えている。
【0009】
また、本発明に係る請求項2に記載の電力線通信システムは、請求項1に記載の電力線通信システムであって、前記切替手段は、前記第二の端子部の端子口に配設される板バネであり、前記板バネは、前記第二の電力線通信端末と電気的に接続されている外部端子が前記第二の端子部へ挿通されるときの、前記板バネと前記外部端子との接触動作、および、前記外部端子が前記第二の端子部へ挿通されていない状態における、前記板バネと前記外部端子との非接触動作に応じて、前記接続切替を行う。
【0010】
また、本発明に係る請求項3に記載の電力線通信システムは、請求項1に記載の電力線通信システムであって、前記切替手段は、前記第二の電力線通信端末と電気的に接続されている外部端子の、前記第二の端子部への挿通の有無を感知するセンサーと、前記センサーからの出力信号に応じて前記接続切替を行うリレーとを、有する。
【0011】
また、本発明に係る請求項4に記載の電力線通信システムは、請求項1に記載の電力線通信システムであって、前記第二の電力通信端末は、電化機器と電力供給口との間に配設され、前記電化機器に供給される電力若しくは電流を計測することができる。
【0012】
また、本発明に係る請求項5に記載の電力線通信システムにおける通信対象特定方法は、請求項1に記載の電力線通信システムを利用した通信対象特定方法であって、(A)前記第二の端子部に前記第二の電力線通信端末を接続するステップと、(B)前記第一の電力線通信端末と前記第二の端子部に接続された前記第二の電力線通信端末との間で、電力線通信を行う端末を特定する通信対象特定処理を実施するステップと、(C)前記ステップ(B)後、前記第二の端子部に対する前記第二の電力線通信端末の接続を解除し、前記第二の電力線通信端末を、前記電力線を介して前記第一の端子部に接続するステップと、(D)前記第一の電力線通信端末と前記ステップ(B)後の前記第二の電力線通信端末との間で、前記電力線通信を実施するステップとを、備えている。
【0013】
また、本発明に係る請求項6に記載の電力線通信システムにおける通信対象特定方法は、請求項5に記載の電力線通信システムにおける通信対象特定方法であって、前記ステップ(B)は、(B−1)所定の接続仲介部材を介して、前記第二の端子部に複数の前記第二の電力線通信端末を電気的に接続し、前記第一の電力通信端末と各前記第二の電力線通信端末との間で、同時に前記通信対象特定処理を実施するステップである。
【0014】
本発明に係る請求項7に記載の電力線通信システムにおける通信対象特定方法は、請求項5に記載の電力線通信システムにおける通信対象特定方法であって、前記ステップ(B)は、前記第一の電力通信端末に、前記第二の電力線通信端末の通信アドレスを登録する、ステップであり、前記ステップ(D)は、前記第一の電力線通信端末は、前記ステップ(B)で登録された前記通信アドレスを有する前記第二の電力線通信端末とのみ、前記電力線通信を実施するステップである。
【0015】
本発明に係る請求項8に記載の電力線通信システムにおける通信対象特定方法は、請求項5に記載の電力線通信システムにおける通信対象特定方法であって、前記ステップ(B)は、前記第一の電力通信端末と前記第二の電力線通信端末との間で、暗号キーの設定を行うステップであり、前記ステップ(D)は、前記第一の電力線通信端末と前記第二の電力線通信端末との間で、前記暗号キーを用いた前記電力線通信を実施するステップである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載の電力線通信システムは、第一の電力線通信端末と、前記第一の電力線通信端末と電力線を介して接続可能な、少なくとも1以上の第二の電力線通信端末とを、備えており、前記第一の電力線通信端末は、前記電力線と接続される側の第一の端子部と、電力線通信機能を有するPLCユニットと、前記第一の端子部および前記PLCユニットと接続される第二の端子部と、通信に関する信号を減衰させるフィルターユニットと、前記第二の端子部に前記第二の電力線通信端末が接続されているときには、前記第一の端子部が前記フィルターユニットを介して前記第二の端子部および前記PLCユニットと接続され、前記第二の端子部に第二の電力線通信端末が接続されていないときには、前記第一の端子部が前記フィルターユニットを介さずに前記第二の端子部および前記PLCユニットと接続されるように、接続切替を行う切替手段を、備えている。
【0017】
したがって、第二の電力線通信端末を第二の端子部に接続させるだけで、第一の電力線通信端末と電力線通信を行うことができる通信対象(端末)を特定(限定)することができる。つまり、セキュリティ設定が容易な電力線通信システムを提供することができる。なお、通信対象(端末)を特定(限定)する際には、当該通信対象(端末)を特定(限定)するための情報が、電力線側に漏洩することも無い。
【0018】
また、本発明に係る請求項2に記載の電力線通信システムでは、前記切替手段は、前記第二の端子部の端子口に配設される板バネであり、前記板バネは、前記第二の電力線通信端末と電気的に接続されている外部端子が前記第二の端子部へ挿通されるときの、前記板バネと前記外部端子との接触動作、および、前記外部端子が前記第二の端子部へ挿通されていない状態における、前記板バネと前記外部端子との非接触動作に応じて、前記接続切替を行う。
【0019】
したがって、簡易な機構により、切替手段を構成することができる。また、切替手段の大型化を防止することができる。
【0020】
また、本発明に係る請求項3に記載の電力線通信システムでは、前記切替手段は、前記第二の電力線通信端末と電気的に接続されている外部端子の、前記第二の端子部への挿通の有無を感知するセンサーと、前記センサーからの出力信号に応じて前記接続切替を行うリレーとを、有する。
【0021】
したがって、電気回路機構により切替手段を構成しているので、機械的機構を利用した切替手段よりも長寿命が可能となる。
【0022】
また、本発明に係る請求項4に記載の電力線通信システムでは、前記第二の電力通信端末は、電化機器と電力供給口との間に配設され、前記電化機器に供給される電力若しくは電流を計測することができる。
【0023】
したがって、ユーザは、第二の電力通信端末に接続されている個々の電化機器の消費電力量を知ることができる。
【0024】
また、本発明に係る請求項5に記載の電力線通信システムにおける通信対象特定方法は、(A)前記第二の端子部に前記第二の電力線通信端末を接続するステップと、(B)前記第一の電力線通信端末と前記第二の端子部に接続された前記第二の電力線通信端末との間で、電力線通信を行う端末を特定する通信対象特定処理を実施するステップと、(C)前記ステップ(B)後、前記第二の端子部に対する前記第二の電力線通信端末の接続を解除し、前記第二の電力線通信端末を、前記電力線を介して前記第一の端子部に接続するステップと、(D)前記第一の電力線通信端末と前記ステップ(B)後の前記第二の電力線通信端末との間で、前記電力線通信を実施するステップとを、備えている。
【0025】
したがって、上記(A)、(B)のステップを実施するだけで、ステップ(D)において第一の電力線通信端末と電力線通信できる第二の電力線通信端末を特定・限定することができる。つまり、簡単かつ手軽な処理により、電力線通信システムのセキュリティを向上させることができる。そして、通信対象特定処理に関する情報が、電力線側に漏洩することも無い。
【0026】
また、本発明に係る請求項6に記載の電力線通信システムにおける通信対象特定方法では、前記ステップ(B)は、(B−1)所定の接続仲介部材を介して、前記第二の端子部に複数の前記第二の電力線通信端末を電気的に接続し、前記第一の電力通信端末と各前記第二の電力線通信端末との間で、同時に前記通信対象特定処理を実施するステップである。
【0027】
したがって、一度に、複数の第二の電力線通信端末に対して、通信対象特定処理を実施することができる。換言すれば、複数の第二の電力線通信端末に対する通信対象特定処理を、より短時間で実施することができる。
【0028】
また、本発明に係る請求項7に記載の電力線通信システムにおける通信対象特定方法では、前記ステップ(B)は、前記第一の電力通信端末に、前記第二の電力線通信端末の通信アドレスを登録する、ステップであり、前記ステップ(D)は、前記第一の電力線通信端末は、前記ステップ(B)で登録された前記通信アドレスを有する前記第二の電力線通信端末とのみ、前記電力線通信を実施するステップである。
【0029】
したがって、簡単なアドレス登録処理のみにより、電力線通信システムのセキュリティ化を図ることができる。
【0030】
また、本発明に係る請求項8に記載の電力線通信システムにおける通信対象特定方法は、前記ステップ(B)は、前記第一の電力通信端末と前記第二の電力線通信端末との間で、暗号キーの設定を行うステップであり、前記ステップ(D)は、前記第一の電力線通信端末と前記第二の電力線通信端末との間で、前記暗号キーを用いた前記電力線通信を実施するステップである。
【0031】
したがって、簡単な暗号キー設定処理のみにより、電力線通信システムのセキュリティ化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0033】
<実施の形態>
図1は、家屋等に設置される電力線通信システム100の概略構成を示す図である。
【0034】
図1に示すように、電力線通信システム100は、第一の電力線通信端末10と、少なくとも1以上の第二の電力線通信端末20とから、構成されている。ここで、第二の電力線通信端末20は、電力線PLを介して第一の電力線通信端末10と接続されることができる。
【0035】
第一の電力線通信端末10および第二の電力線通信端末20は各々、電力線通信ユニット(PLCユニット)を備えている。したがって、第一の電力線通信端末10と複数の第二の電力線通信端末20との相互間において、電力線通信(PLC)によるデータの送受信が行われる。
【0036】
第一の電力線通信端末10は、各第二の電力線通信端末20から送信されるデータの収集、当該収集結果を用いた所定の判断処理、データの管理処理等を実施する。また、第一の電力線通信端末10は、ゲートウェイ機能を有しており、電力線通信プロトコルと他の通信プロトコルとの間における通信を可能せしめる。
【0037】
また、各第二の電力線通信端末20は、電化機器30とコンセント(電力供給口と把握できる)との間に配設される。そして、各第二の電力線通信端末20は、自機20に接続される電化機器30に供給される電力若しくは電流を計測することができ、当該計測結果を自機20において表示することもできる。当該電力量等の計測に関する技術として、特開2000−241465号公報に開示されている技術を採用できる。
【0038】
図2は、本実施の形態に係る第一の電力線通信端末10の構成を示す図である。
【0039】
図2に示すように、第一の電力線通信端末10は、電力線通信ユニット(PLCユニット)1、切替手段2、フィルターユニット3、ACプラグ(第一の端子部と把握できる)4、および登録用コンセント(第二の端子部と把握できる)5を備えている。
【0040】
電力線通信ユニット1は、電力線通信を可能とさせる機能を有する回路である。フィルターユニット3は、受信した電力通信に関する信号(PLC信号)を減衰させることができる。したがって、フィルターユニット3が受信したPLC信号は、フィルターユニット3の出力部から出力されない。これに対して、フィルターユニット3は、供給された電力・電流を減衰させることは無い。
【0041】
ACプラグ4は、図1に示す電力線PLに接続される側の端子部である。つまり、ACプラグ4をACコンセントに差し込むことにより、第一の電力線通信端末10は、電力線PLから電力の供給を受けることができ、かつ、当該電力線PLを介した電力線通信が可能となる。
【0042】
登録用コンセント5は、電力線通信のセキュリティ確保の観点から、第一の電力線通信端末10との電力線通信を可能とする通信対象(第二の電力線通信端末20)を特定する際に用いられる端子部である。したがって、登録用コンセント5には、第二の電力線通信端末20からの端子部(プラグ)が挿通される。なお、延長コード等の仲介部材を介して、登録用コンセント5が、第二の電力線通信端末20からの端子部(プラグ)と電気的に接続されても良い。
【0043】
切替手段2は、登録用コンセント5へのプラグの挿通・引抜に起因して、接続先を切り替える。図2,3を用いて、当該切替手段2の接続切替動作を説明する。ここで、図2,3では明記されていないが、第一の電力線通信端末10のACプラグ4は、電力線PLに接続されている状態である。
【0044】
図2は、登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20(より具体的には、当該端末20の端子)が接続されていないときの様子を示す図である。登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20が接続されていないときには、切替手段2の接続先は端子t1となる。つまり、登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20が接続されていないときには、PLCユニット1は、経路Laを介して、ACプラグ4と接続される。なお、図2に示すように、PLCユニット1は、登録用コンセント5と接続されている。当該接続状況から分かるように、登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20が接続されていないときには、切替手段2の接続切替により、ACプラグ4は、フィルターユニット3を介さずに、PLCユニット1および登録用コンセント5と直接接続される。
【0045】
図2に示す態様では、第一の電力線通信端末10は、電力線PLを介して電力線通信を行うことができ、電力線PLを介して電力の供給も受けることができる。
【0046】
図3は、登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20(より具体的には、当該端末20の端子20a)が接続されているときの様子を示す図である。登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20の端子20aが接続されると、切替手段2の接続先は端子t2となる。つまり、登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20が接続されると、PLCユニット1は、フィルターユニット3を介して、ACプラグ4と接続される。なお、図3に示すように、PLCユニット1は、登録用コンセント5と接続されている。当該接続状況から分かるように、登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20が接続されると、切替手段2の接続切替により、ACプラグ4は、フィルターユニット3を介して、PLCユニット1および登録用コンセント5と接続される。
【0047】
図3に示す態様では、第一の電力線通信端末10および第二の電力線通信端末20は、電力線PLを介して他の端末との間で電力線通信を行うことができないが、電力線PLを介して電力の供給を受けることはできる。
【0048】
なお、図2,3に示すように、登録用コンセント5への第二の電力線通信端末20の接続の有無に係らず(切替手段2の接続切替動作に依らず)、登録用コンセント5は、ACプラグ4およびPLCユニット1と接続される。
【0049】
<接続切替機構>
次に、登録用コンセント5への第二の電力線通信端末20の接続の有無に応じて、切替手段2の接続切替を変化させる機構について説明する。
【0050】
まず、切替手段2が、登録用コンセント5の端子口5t付近に配設される板バネ2である場合について説明する。
【0051】
図4に示すように、板バネ2の一方端は、登録用コンセント5の内部側において、端子口5tに配設されている。また、図4に示すように、登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20と電気的に接続されている端子20aが挿通されていない状態において、板バネ2の他方端は、当該板バネ2の付勢力により、図2に示したように、端子t1に接続されている。
【0052】
図4で示した構造において、登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20と電気的に接続されている端子20aが挿通される。すると、端子20aと板バネ2とが接触し、端子20aの挿通に応じて、板バネ2は下方向に押圧される。そして、結果として、図5に示すように、板バネ2の一方端が登録用コンセント5の端子口5tに配設された状態を維持したまま、板バネ2の他方端は、図3に示したように、端子t2に接続される(接続先切替動作)。
【0053】
なお、登録用コンセント5から端子20aが完全に引抜かれると、板バネ2と端子20aとの非接触となり、当該板バネ2の付勢力により図4に示した状態に戻る。
【0054】
次に、切替手段2が、センサーSaとリレーRLから構成される場合について説明する。ここで、後述するように、リレーRLは、センサーSaの出力信号(感知結果)に応じて接続先の切替を行う。
【0055】
図6に示すように、センサーSaが、登録用コンセント5の外側において端子口5t付近に配設されている。ここで、センサーSaは、第二の電力線通信端末20と電気的に接続されている端子20aの、登録用コンセント5の端子口5tへの挿通の有無を感知することができる。また、センサーSaは、配線d1を介して検出回路Sfと接続されている。検出回路Sfは、センサーSaの上記挿通の有無を検出する回路である。また、検出回路Sfは、配線d2を介してリレーRLと接続されている。リレーRLは、検出回路Sfからの信号に応じて、電磁力を利用したスイッチ動作を行う回路である。
【0056】
図6に示すように、登録用コンセント5に端子20aが挿通されていない状態においては、図2に示したように、リレーRL内部では端子t1との接続が実現されている。
【0057】
図6で示した構造において、登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20と電気的に接続されている端子20aが挿通される(図7参照)。すると、センサーSaは、当該端子20aの挿通を感知する。そして、検出回路Sfは、当該センサーSaの感知結果を検出し、リレーRLは、当該検出回路Sfの検出結果に応じて、スイッチングが切り替わる。つまり、登録用コンセント5に端子20aが挿通されると、図3に示したように、リレーRL内部では端子t2との接続が実現される(接続先切替動作)。
【0058】
なお、登録用コンセント5から端子20aが完全に引抜かれると、センサーSaは当該端子20aが登録用コンセント5から引抜かれたことを感知する。そして、検出回路Sfは、当該センサーSaの感知結果を検出し、リレーRLは、当該検出回路Sfの検出結果に応じて、スイッチングが切り替わる。つまり、登録用コンセント5から端子20aが引抜かれると、図6に示した状態に戻る。
【0059】
<通信対象特定方法の説明>
次に、図2,3に示した構造を有する第一の電力線通信端末10を用いた、通信対象特定方法を説明する。当該通信対象特定方法を実施することにより、当該第一の電力線通信端末10と電力線通信を行うことができる第二の電力線通信端末20を特定(限定)することができる。ここで、図8は、当該通信対象特定方法の流れを示す図である。
【0060】
まずはじめに、図3に示すように、登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20を電気的に接続する(ステップS1)。上記でも説明したように、図3に示す状態では、フィルターユニット3を経由した経路が形成される。したがって、PLCユニット1から送受信されるPLC信号および登録用コンセント5において第二の電力線通信端末2から送受信されるPLC信号は、ACプラグ4を介して電力線PLへ送出されることは無い。
【0061】
次に、当該図3に示す状態において、第一の電力線通信端末10と第二の電力線通信端末20との間で、電力線PLを介した電力線通信を行う端末を特定する通信対象特定処理を、電力線通信を利用して実施する(ステップS2)。
【0062】
たとえば、第一の電力通信端末10のPLCユニット1に対して、第二の電力線通信端末20のPLCユニット(図示せず)から送信される、第二の電力線通信端末20の通信アドレスを登録する(第一の通信対象特定処理と称する)。なお、フィルターユニット3の存在により、電力線PL側には当該通信アドレス情報は流出しない。
【0063】
または、第一の電力通信端末10のPLCユニット1と第二の電力線通信端末20のPLCユニット(図示せず)との間で、所定の暗号キー(たとえばWEP(Wired Equivalent Privacy)キー)の設定を行う(第二の通信対象特定処理と称する)。なお、フィルターユニット3の存在により、電力線PL側には当該所定の暗号キー情報は流出しない。
【0064】
通信対象特定処理後、登録用コンセント5に対する第二の電力線通信端末20の電気的接続を解除する。当該接続解除により、図2に示す状態へと移行する。つまり、フィルターユニット3を経由しない経路(経路Laを経由する経路)が形成される。したがって、PLCユニット1から送受信されるPLC信号は、ACプラグ4を介して電力線PLへと送出される。つまり、第一の電力線通信端末20は、電力線PLを介して、当該電力線PLに接続される端末と電力線通信が可能となる。
【0065】
次に、第二の電力線通信端末20を、電力線PLに接続された所定のコンセントに接続する(ステップS3)。当該ステップS3により、第二の電力線通信端末20は、電力線PLを介してACプラグ4に電気的に接続される。
【0066】
そして、第二の電力線通信端末20が電力線PLを介してACプラグ4に接続されている状態で、第一の電力線通信端末10と第二の電力線通信端末20との間で、電力線PLを介した電力線通信を実施する。ここで、当該電力線通信は、第一の電力線通信端末10と、上記通信対象特定処理を実施した第二の電力線通信端末20との間でのみ、実現される。
【0067】
たとえば、ステップS2で第一の通信対象特定処理を実施した場合において、ステップS4で、ある第二の電力線通信端末20から、第一の電力線通信端末10へアクセスがあったとする。このとき、第一の電力線通信端末10のPLCユニット1は、アクセスしてきた第二の電力線通信端末20の通信アドレスの認証を行う。当該認証の結果、ステップS2で登録された通信アドレスを有する第二の電力線通信端末20からのアクセスであることが判明したとする。この場合には、第一の電力線通信端末10は、当該アクセスしてきた第二の電力線通信端末20と電力線通信を行う。これに対して、ステップS2で登録された通信アドレス以外の通信アドレスを有する第二の電力線通信端末20からのアクセスであることが判明したとする。この場合には、第一の電力線通信端末10は、当該アクセスしてきた第二の電力線通信端末20との電力線通信を拒否する。
【0068】
上記から分かるように、第一の電力線通信端末10は、ステップS2で登録された通信アドレスを有する第二の電力線通信端末20とのみ、電力線通信を実施することができる。
【0069】
また、ステップS2で第二の通信対象特定処理を実施した場合において、ステップS4で、ある第二の電力線通信端末20から、第一の電力線通信端末10へアクセスがあったとする。このとき、第一の電力線通信端末10のPLCユニット1は、上記所定の暗号キーを用いた暗号化を施したデータの送受信を行う。したがって、当該所定の暗号キーの設定がなされていない第二の電力線通信端末20からアクセスがあったとしても、第一の電力線通信端末10と当該第二の電力線通信端末20との間では、正常に電力線通信は成立しない。これに対して、ステップS2で所定の暗号キーの設定処理が実施された第二の電力線通信端末20からのアクセスがあったときには、第一の電力線通信端末10と当該第二の電力線通信端末20との間で、上記暗号キーを用いた暗号化が施されたデータの送受信が実現される。
【0070】
上記から分かるように、第一の電力線通信端末10は、ステップS2で暗号キーの設定が施された第二の電力線通信端末20とのみ、共通の暗号キーを用いた電力線通信を実施することができる。
【0071】
以上のように本実施の形態に係る電力線通信システム100は、第一の電力線通信端末10と、第一の電力線通信端末10と電力線PLを介して接続される、少なくとも1以上の第二の電力線通信端末20とを備えている。そして、第一の電力線通信端末10は、切替手段2を備えている。切替手段2は、登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20が接続されているときには、ACプラグ4がフィルターユニット3を介して登録用コンセント5およびPLCユニット1と接続されるように接続切替を行う。他方、切替手段2は、登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20が接続されていないときには、ACプラグ4がフィルターユニット3を介さずに登録用コンセント5およびPLCユニット1と接続されるように接続切替を行う。
【0072】
したがって、第二の電力線通信端末20を登録用コンセント5に接続させるだけで、第一の電力線通信端末10と電力線通信を行うことができる通信対象(端末)20を特定(限定)することができる。つまり、セキュリティ設定が容易な電力線通信システム100を提供することができる。なお、通信対象(端末)20を特定(限定)する際には、当該通信対象(端末)を特定(限定)するための情報が、電力線PL側に漏洩することも無い。
【0073】
また、本実施の形態に係る電力線通信システム100では、切替手段2として、板バネを採用できる。当該板バネ2は、板バネ2と端子20aとの接触・非接触動作に応じて、上記接続切替を行う。
【0074】
切替手段2として板バネを採用した場合には、簡易な機構により、切替手段2を構成することができる。また、切替手段2の大型化を防止することができる。
【0075】
また、本実施の形態に係る電力線通信システム100では、切替手段2が、センサーSaと、当該センサーSaからの出力信号に応じて上記接続切替を行うリレーRLとを、有する構成であっても良い。
【0076】
この構成の場合には、電気回路機構により切替手段2が構成されるので、機械的機構を利用した切替手段2よりも長寿命が可能となる。
【0077】
また、本実施の形態に係る電力線通信システム100では、第二の電力通信端末20は、電化機器30と電力供給口(コンセント等)との間に配設され、電化機器30に供給される電力若しくは電流を計測することができる。
【0078】
したがって、ユーザは、第二の電力通信端末20に接続されている個々の電化機器30の消費電力量を知ることができる。
【0079】
また、本実施の形態に係る電力線通信システム100を用いた通信対象特定方法は、登録用コンセント5に第二の電力線通信端末20を接続した後に、通信対象特定処理を実施している。
【0080】
したがって、当該通信対象特定処理に関する情報が電力線PL側に漏れることも無く、かつ、第一の電力線通信端末10と電力線PLを介した電力線通信を行うことができる対象(端末)20を特定(限定)処理も手軽に行える。
【0081】
また、通信対象特定処理として、第一の電力通信端末10に、第二の電力線通信端末20の通信アドレスを登録する処理を採用することができる。
【0082】
この場合には、第一の電力線通信端末10は、上記登録された通信アドレスを有する第二の電力線通信端末20とのみ、電力線PLを介した電力線通信を実施することができる。したがって、簡単なアドレス登録処理のみにより、電力線通信システム100のセキュリティ化を図ることができる。
【0083】
また、通信対象特定処理として、第一の電力通信端末10と第二の電力線通信端末20との間で、暗号キーの設定を行う処理を採用することもできる。
【0084】
この場合には、第一の電力線通信端末10と第二の電力線通信端末20と間で、電力線PLを介して、当該暗号キーを用いた電力線通信を実施することができる。したがって、簡単な暗号キー設定処理のみにより、電力線通信システム100のセキュリティ化を図ることができる。
【0085】
なお、図9に示すように、接続仲介部材60を介して、登録用コンセント5に複数の第二の電力線通信端末20を電気的に接続した後に、第一の電力通信端末10と各第二の電力線通信端末20との間で、同時に通信対象特定処理を実施しても良い。
【0086】
図9では、接続仲介部材60の一方端であるプラグ側は、登録用コンセント5に接続されている。他方、接続仲介部材60の他方端には、複数のコンセントが形成されている。そして、第二の電力線通信端末20と電気的接続された外部端子(プラグ)が、各コンセントに接続されている。当該図9に示す状態において、第一の電力通信端末10のPLCユニット1と各第二の電力線通信端末20のPLCユニット(図示せず)との間で、同時に、電力線通信を利用した通信対象特定処理を実施する。
【0087】
なお、図9では明記されていないが、第一の電力線通信端末10のACプラグ4は、電力線PLに接続されている状態である。したがって、複数の第二の電力線通信端末20には、第一の電力線通信端末10および接続仲介部材60を介して、電力が供給される。また、フィルターユニット3は、電力は減衰させないが、PLC信号は減衰される。したがって、通信対象特定処理に関する情報が電力線PL側に漏洩されることが防止できる。
【0088】
上記図9に示す状態での通信対象特定処理を実施することにより、一度に、複数の第二の電力線通信端末20に対して、通信対象特定処理を実施することができる。換言すれば、複数の第二の電力線通信端末20に対する通信対象特定処理を、より短時間で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】電力線通信システムの構成を示す図である。
【図2】第一の電力線通信端末の内部構成を示す図である。
【図3】第一の電力線通信端末に第二の電力線通信端末が接続されている様子を示す図である。
【図4】切替手段の構成を示す図である。
【図5】切替手段の切替動作を説明するための図である。
【図6】切替手段の構成を示す図である。
【図7】切替手段の切替動作を説明するための図である。
【図8】通信対象特定方法の流れを示す図である。
【図9】複数の第二の電力線通信端末に対して通信対象特定処理を実施する様子を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1 PLCユニット
2 切替手段
3 フィルターユニット
4 ACプラグ(第一の端子部)
5 登録用コンセント(第二の端子部)
5t 端子口
10 第一の電力線通信端末
20 第二の電力線通信端末
20a 端子(外部端子)
60 接続仲介部材
t1,t2 端子
Sa センサー
Sf 検出回路
RL リレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電力線通信端末と、
前記第一の電力線通信端末と電力線を介して接続可能な、少なくとも1以上の第二の電力線通信端末とを、備えており、
前記第一の電力線通信端末は、
前記電力線と接続される側の第一の端子部と、
電力線通信機能を有するPLCユニットと、
前記第一の端子部および前記PLCユニットと接続される第二の端子部と、
通信に関する信号を減衰させるフィルターユニットと、
前記第二の端子部に前記第二の電力線通信端末が接続されているときには、前記第一の端子部が前記フィルターユニットを介して前記第二の端子部および前記PLCユニットと接続され、前記第二の端子部に第二の電力線通信端末が接続されていないときには、前記第一の端子部が前記フィルターユニットを介さずに前記第二の端子部および前記PLCユニットと接続されるように、接続切替を行う切替手段を、備えている、
ことを特徴とする電力線通信システム。
【請求項2】
前記切替手段は、
前記第二の端子部の端子口に配設される板バネであり、
前記板バネは、
前記第二の電力線通信端末と電気的に接続されている外部端子が前記第二の端子部へ挿通されるときの、前記板バネと前記外部端子との接触動作、および、前記外部端子が前記第二の端子部へ挿通されていない状態における、前記板バネと前記外部端子との非接触動作に応じて、前記接続切替を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力線通信システム。
【請求項3】
前記切替手段は、
前記第二の電力線通信端末と電気的に接続されている外部端子の、前記第二の端子部への挿通の有無を感知するセンサーと、
前記センサーからの出力信号に応じて前記接続切替を行うリレーとを、有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力線通信システム。
【請求項4】
前記第二の電力通信端末は、
電化機器と電力供給口との間に配設され、前記電化機器に供給される電力若しくは電流を計測することができる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力線通信システム。
【請求項5】
第一の電力線通信端末と、前記第一の電力線通信端末と電力線を介して接続可能な、少なくとも1以上の第二の電力線通信端末とを、備えており、前記第一の電力線通信端末は、前記電力線と接続される側の第一の端子部と、電力線通信機能を有するPLCユニットと、前記第一の端子部および前記PLCユニットと接続される第二の端子部と、通信に関する信号を減衰させるフィルターユニットと、前記第二の端子部に前記第二の電力線通信端末が接続されているときには、前記第一の端子部が前記フィルターユニットを介して前記第二の端子部および前記PLCユニットと接続され、前記第二の端子部に第二の電力線通信端末が接続されていないときには、前記第一の端子部が前記フィルターユニットを介さずに前記第二の端子部および前記PLCユニットと接続されるように、接続切替を行う切替手段を、備えている、電力線通信システムにおける通信対象特定方法であって、
(A)前記第二の端子部に前記第二の電力線通信端末を接続するステップと、
(B)前記第一の電力線通信端末と前記第二の端子部に接続された前記第二の電力線通信端末との間で、電力線通信を行う端末を特定する通信対象特定処理を実施するステップと、
(C)前記ステップ(B)後、前記第二の端子部に対する前記第二の電力線通信端末の接続を解除し、前記第二の電力線通信端末を、前記電力線を介して前記第一の端子部に接続するステップと、
(D)前記第一の電力線通信端末と前記ステップ(B)後の前記第二の電力線通信端末との間で、前記電力線通信を実施するステップとを、備えている、
ことを特徴とする電力線通信システムにおける通信対象特定方法。
【請求項6】
前記ステップ(B)は、
(B−1)所定の接続仲介部材を介して、前記第二の端子部に複数の前記第二の電力線通信端末を電気的に接続し、前記第一の電力通信端末と各前記第二の電力線通信端末との間で、同時に前記通信対象特定処理を実施するステップである、
ことを特徴とする請求項5に記載の電力線通信システムにおける通信対象特定方法。
【請求項7】
前記ステップ(B)は、
前記第一の電力通信端末に、前記第二の電力線通信端末の通信アドレスを登録する、ステップであり、
前記ステップ(D)は、
前記第一の電力線通信端末は、前記ステップ(B)で登録された前記通信アドレスを有する前記第二の電力線通信端末と、前記電力線通信を実施するステップである、
ことを特徴とする請求項5に記載の電力線通信システムにおける通信対象特定方法。
【請求項8】
前記ステップ(B)は、
前記第一の電力通信端末と前記第二の電力線通信端末との間で、暗号キーの設定を行うステップであり、
前記ステップ(D)は、
前記第一の電力線通信端末と前記第二の電力線通信端末との間で、前記暗号キーを用いた前記電力線通信を実施するステップである、
ことを特徴とする請求項5に記載の電力線通信システムにおける通信対象特定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−278514(P2009−278514A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129451(P2008−129451)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】