説明

電力線通信システム及び接続装置

【課題】通信速度が向上した電力線通信システム及び電力通信装置の通信速度を向上することができる接続装置を提供する。
【解決手段】電気プラグ21をコンセント11に接続して電力線通信装置20を交流配電網40に接続し、交流配電網40とは別の共通導体13(既設のアンテナ線、電話線など)にキャパシタ15を介して電力線16を接続し、キャパシタ15の容量を電力線通信装置20の高周波信号を選択的に伝達するものとする。これにより、照明1、2や火災警報器3、4等の交流負荷を発生源とするノイズによる通信速度の低下を回避し、通信速度を向上する。また、共通導体13は芯線13aとシールド13bとからなり、芯線13a及びシールド13bに2本の電力線16をそれぞれ接続することでディファレンシャルモードとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力線通信システム及び接続装置に関し、特に、交流配電網が構築された建物等において電力線通信を行う場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電力線通信が一般家庭を中心に普及しつつある(例えば、特許文献1参照)。電力線通信は、既設の交流配電網を通信回線として利用するため、屋内に新たに通信用の配線を行うことなくLANを構築できるという利点を有する。特に、無線LANでは十分な通信速度が得られない又は通信できないという環境においては、電力線通信は有用な代替手段となる。
【0003】
このような電力線通信が適用される交流配電網には、交流負荷や、ACアダプタを介して直流負荷が接続されるが、これらの交流負荷やACアダプタから交流配電網にノイズが乗ってしまい、電力線通信の速度低下の原因となる。
【0004】
交流負荷等からのノイズ対策として、電気プラグの差し込み口に追加増設できるノイズフィルタがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、交流負荷は必ずしも電気プラグを介して交流配電網に接続されるものばかりではない。例えば、天井に配設される照明や火災警報器や浴室の換気扇等は電気プラグを介さず直接に交流配電網に接続される。このような交流配電網にコンセントを介さず直接接続される交流負荷からのノイズにより、電力線通信の速度が低下するため、ノイズフィルタの適用だけでは万全の対策とは言えないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−236355号公報
【特許文献2】特開2009−206964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、通信速度が向上した電力線通信システム及び電力通信装置の通信速度を向上することができる接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1の態様は、交流負荷が接続された交流配電網と、前記交流配電網に接続された複数の電力線通信装置と、前記各電力線通信装置を接続し、前記電力線通信装置が変調した高周波信号を伝達する共通導体とを備え、前記交流配電網の前記各電力線通信装置間に前記交流負荷が接続され、前記共通導体には、ノイズ源となる交流負荷が接続されておらず、且つ前記高周波信号を選択的に伝達する回路が設けられていることを特徴とする電力線通信システムにある。
【0009】
かかる第1の態様では、交流配電網に接続される電力線通信装置の相互間において、交流負荷を発生源とするノイズにより通信速度が低下するという事態を回避し、電力線通信装置間の通信速度を向上することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する電力線通信システムにおいて、前記共通導体は、屋内に配設された電話網又はアンテナ線であることを特徴とする電力線通信システムにある。
【0011】
かかる第2の態様では、共通導体として既設の電話網やアンテナ線を用いることができるため、新たな共通導体を設けるコストを削減できる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載する電力線通信システムにおいて、前記交流配電網と前記交流負荷とを接続する電力線を二本備え、前記共通導体は、二本の導体であり、前記各電力線は、分岐して前記共通導体の各導体にそれぞれ接続されていることを特徴とする電力線通信システムにある。
【0013】
かかる第3の態様では、各電力通信装置との間の通信は、二本の導体からなる共通導体を用いたディファレンシャルモードでの通信形態となる。このため、ループ面積が小さくなり、周囲に対するノイズの影響を小さくすることができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1又は第2の態様に記載する電力線通信システムにおいて、前記交流配電網と前記交流負荷とを接続する電力線を二本備え、前記各電力線のうち一本が、前記共通導体に接続されていることを特徴とする電力線通信システムにある。
【0015】
かかる第4の態様では、各電力通信装置との間の通信は、一本の導体からなる共通導体を用いればよいため、共通導体の配線を簡略化することができる。
【0016】
本発明の第5の態様は、交流負荷が接続される交流配電網と電力線通信装置とを接続する接続装置であって、前記電力線通信装置が接続されると共に前記交流配電網に接続される第1のプラグと、複数の電力線通信装置を接続し、前記電力線通信装置が変調した高周波信号を伝達する共通導体に接続される第2のプラグと、前記高周波信号を選択的に伝達する回路とを備え、前記第1のプラグ及び前記電力線通信装置間の電力線が前記回路を介して前記第2のプラグにも接続されていることを特徴とする接続装置にある。
【0017】
かかる第5の態様では、交流配電網に接続装置を介して接続される電力線通信装置の相互間において、交流負荷を発生源とするノイズにより通信速度が低下するという事態を回避し、電力線通信装置間の通信速度を向上することができる。
【0018】
また、接続装置を交流配電網に追加増設するだけで、電力線通信装置による通信速度の向上が可能であるので、交流配電網自体に施工する必要はなく、安価に、通信速度が向上した電力線通信を実現することができる。
【0019】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載する接続装置において、前記交流配電網と前記交流負荷とを接続する電力線を二本備え、前記共通導体は、二本の導体であり、前記各電力線は、分岐して前記共通導体の各導体にそれぞれ接続されていることを特徴とする接続装置にある。
【0020】
かかる第6の態様では、各電力通信装置との間の通信は、二本の導体からなる共通導体を用いたディファレンシャルモードでの通信形態となる。このため、ループ面積が小さくなり、周囲に対するノイズの影響を小さくすることができる。
【0021】
本発明の第7の態様は、第5の態様に記載する接続装置において、前記交流配電網と前記交流負荷とを接続する電力線を二本備え、前記各電力線のうち一本が、前記共通導体に接続されていることを特徴とする接続装置にある。
【0022】
かかる第7の態様では、各電力通信装置との間の通信は、一本の導体からなる共通導体を用いればよいため、共通導体の配線を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、通信速度が向上した電力線通信システム及び電力通信装置の通信速度を向上することができる接続装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】交流負荷が配置された家屋の構成図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る接続装置を説明するための概略図である。
【図3】交流配電網及びこれに接続された接続装置、交流負荷等の構成図である。
【図4】共通導体に設けられるコンデンサの容量と通信速度との関係を表すグラフである。
【図5】変形例に係る交流配電網及びこれに接続された接続装置、交流負荷等の構成図である。
【図6】ディファレンシャルモード及びコモンモードの接続形態を説明するための接続装置の回路構成を示す図である。
【図7】共通導体及びキャパシタの態様について説明するための概略構成図である。
【図8】本発明の実施形態2に係る接続装置の概略構成図である。
【図9】本発明の実施形態2に係る接続装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〈実施形態1〉
図1に基づいて、本実施形態に係る接続装置を利用するための前提となる交流配電網について説明する。図1に示すように、一般家屋には、交流配電網40が配設されている。交流配電網40は、位相が互いに180度異なる電力線L1及び電力線L2並びに中性線Nからなる単相三線電力線である。中性線Nは二又に分岐して一階と二階にそれぞれ配設され、電力線L1は一階に、電力線L2は二階に配設されている。また、詳細は後述するが、一階と二階に亘り共通導体13が配設されている。本実施形態では、共通導体13は、既設のアンテナ線である。
【0026】
家屋の各階には、交流負荷の一例である照明1、2や火災警報器3、4が設置され、それぞれL1線と中性線N、若しくはL2線と中性線Nに接続されている。また、各階には、交流配電網40に接続された接続装置10(詳細は後述する)がそれぞれ設けられており、接続装置10には、電力線通信を行うための電力線通信装置20が接続されている。また、各電力線通信装置20には、データの送受信を行うパソコン30、及び記憶装置(ストレージ)31が通信ケーブルを介してそれぞれ接続されている。
【0027】
図2及び図3を用いて、本発明に係る接続装置10を詳細に説明する。図2は、接続装置の概略構成を説明するための斜視図であり、図3は、交流配電網及びこれに接続された接続装置、交流負荷等の構成図である。
【0028】
図2に示すように、接続装置10は、電力線通信装置20と交流配電網40(図では、電力線L1、L2及び中性線Nを一体的に表している)との間で接続を仲介する機器である。室内の壁には、交流配電網40に接続するためのコンセント52と、共通導体13に接続するための端子50が設けられている。
【0029】
接続装置10は、筐体部12を備え、筐体部12には、コンセント52に接続される第1のプラグ53と、端子50に接続される第2のプラグ51が設けられている。筐体部12の内部は、交流配電網40からコンセント52及び第1のプラグ53を介して電力線通信装置20に交流電力が供給されるように構成され、かつ電力線通信装置20と共通導体13との間で端子50及び第2のプラグ51を介して高周波信号が流れるように構成されている。
【0030】
このような接続装置10には、コンセント11に電力線通信装置20の電気プラグ21が接続され、電力線通信装置20には、そのLANインタフェース22(RJ−45等)を介してパソコン30や記憶装置31が接続される。
【0031】
電力線通信装置20は、パソコン30等の情報処理機器の情報を変調し、この変調した信号を交流の電力線に重畳して送信すると共に、他の電力線通信装置20により交流の電力線に重畳された信号を受信して復調し、この復調した信号を情報処理機器に送信する機器である。以降、電力線通信装置20が、交流の電力線に重畳した信号を高周波信号と称する。一般的に使用される電力線通信装置20では、高周波信号の周波数は2〜30MHz程度である。
【0032】
また、記憶装置31は、記憶媒体と通信手段を備える装置であって、電力線通信を介してパソコン30から受け取った指令に応じてパソコン30からのデータを記憶媒体に記録し、若しくは記録媒体からデータを読み出しパソコン30に送信するものである。
【0033】
次に、図3に基づいて、接続装置10を用いた電力線通信について説明する。図示するように、共通導体13は、各接続装置10における電力線16同士を接続し、電力線通信装置20の高周波信号が伝送される伝送路である。本実施形態では、既設の同軸のアンテナ線の芯線13a及び当該芯線を覆うシールド13bの一対が共通導体13をなしている。共通導体13の他の態様としては、6極4芯の電話線(RJ−11)が既に配設されている場合、その未使用の2芯を共通導体として用いることができる。また、当然ながら、既設のアンテナ線や電話線に限らず独立した導体を共通導体として新設してもよく、高周波信号を伝達しうるものであれば特に限定されない。なお、アンテナ線を用いる場合は、アンテナ線に伝達されるテレビ放送などの信号(地上デジタル放送:470〜710MHz)は電力線通信の周波数2〜30MHzと異なるため、共存可能である。
【0034】
各接続装置10のコンセント11は、電力線16で交流配電網40に接続されている。詳細には、2本の電力線16のそれぞれの一端が、中性線Nと電力線L1(又は電力線L2)に接続され、他端がコンセント11に接続されている。また、2本の電力線16のそれぞれは、途中で分岐し、共通導体13の芯線13a及びシールド13bにキャパシタ15を介して接続されている。
【0035】
キャパシタ15は、交流電力を遮断すると共に高周波信号を選択的に伝達する回路の一例である。電力線16がキャパシタ15を介して共通導体13に接続されることで、電力線通信装置からの高周波信号が選択的に共通導体13に伝達する。
【0036】
このような接続装置10によれば、電力に関しては、コンセント11に電気プラグ21を接続した電力線通信装置20に対して、交流配電網40から交流電力が供給される。
【0037】
一方、信号に関しては、接続装置10では、共通導体13が信号の伝送路となり、電力線通信装置20間での通信が可能となる。パソコン30と記憶装置31との間の通信を例に取り詳言すると、電力線通信装置20が、パソコン30から受信したデータを交流の電力線16に重畳するために変調した高周波信号は、電気プラグ21及びこれに接続されたコンセント11を介して電力線16に伝達される。このとき、キャパシタ15により、各接続装置10の電力線16における50〜60Hzの交流電力は遮断され、高周波信号はキャパシタ15を通過し共通導体13に伝達する。そして、共通導体13に伝達した高周波信号は、他の接続装置10のキャパシタ15を通過し、電力線16を介して他の電力線通信装置20に伝達されると共に復調され、記憶装置31が復調されたデータを受信する。
【0038】
また、交流配電網40における各電力線通信装置20の間には、照明2が接続されている。このように、交流配電網40の電力線通信装置20の間に照明2、すなわちノイズ源が存在する場合において、共通導体13を用いずに交流配電網40を用いて電力線通信を行うと、電力線通信装置20の一方から他方に送信される信号と、照明2からのノイズとのS/N比が悪化し、通信速度が低下する。
【0039】
しかしながら、本実施形態では、交流配電網40には、照明1、2や火災警報器3、4で生じたノイズが存在するが、共通導体13にはノイズ源が存在しない。すなわち、高周波信号は、ノイズ源が存在しない共通導体13を介して他の接続装置10に伝達することができる。これにより、ノイズの影響による通信速度の低下を回避することができ、通信速度が向上した電力線通信を行うことができる。
【0040】
また、共通導体13として既設のアンテナ線を用いたため、新たな共通導体を設けるコストを削減することができる。
【0041】
ここで、キャパシタ15の容量とパソコン30間の通信速度との関係について説明する。図4は、キャパシタの容量と、電力線通信装置に接続されたパソコン間での通信速度との関係を示すグラフである。キャパシタ15の容量が1〜10pFまでの間においては、通信速度が0〜30Mbpsに至るまで漸増し、10〜10pFまでの間においては、ほぼ30Mbpsで一定している。なお、容量が10pF以上である場合、キャパシタ15からは異音が発生したり、故障が生じる虞がある。
【0042】
ここでいうキャパシタ15の容量とは、共通導体13から各電力線通信装置20(電力線16)との間に配設されたキャパシタ15の容量をいう。本実施形態では、各キャパシタ15の容量を100pFとした。この場合、同グラフによれば、各パソコン30及び記憶装置31は、100pFに対応する通信速度である30Mbpsでデータ通信をすることができる。
【0043】
以上に説明したように、本発明に係る接続装置10では、共通導体13を信号の伝送路として用い、高周波信号を選択的に伝達するキャパシタ15を設けた。これにより、交流配電網40に接続される電力線通信装置20の相互間において、照明1、2や火災警報器3、4などの交流負荷を発生源とするノイズにより通信速度が低下するという事態を回避し、電力線通信装置20間の通信速度を向上することができる。
【0044】
また、接続装置10を交流配電網40に追加増設するだけで、電力線通信装置20による通信速度の向上が可能であるので、既存の電力線通信装置20をそのまま使用することができ、新たな通信装置を導入してLANを構築するための費用が不要となる。
【0045】
さらに、本実施形態に係る接続装置10では、3台(若しくは3台以上)の電力線通信装置20のうち2台を一組とするあらゆる組み合わせごとに共通導体13を接続する必要が無い。すなわち、一本の共通導体13を設ければよいので、共通導体13の敷設に係る手間やコストを低減することができる。
【0046】
ここで、上述した実施形態に係る接続装置10では、芯線13a及びシールド13bの一対の共通導体13に、2本の電力線16のそれぞれがキャパシタ15を介して接続されていたが、このような接続形態に限られず、2本の電力線16の何れか一本が共通導体13に接続されていてもよい。
【0047】
図5は、変形例に係る交流配電網及びこれに接続された接続装置、交流負荷等の構成図である。なお、図1〜図3と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図示するように、接続装置10は、交流配電網40とコンセント11とを接続する2本の電力線16を有している。この2本の電力線16のうち一本がキャパシタ15を介して共通導体13を構成する芯線13aに接続されている。
【0048】
このような共通導体13と接続装置10との接続形態においても、共通導体13が信号の伝送路となり、電力線通信装置20間での通信が可能となる。すなわち、電力線通信装置20から送信された高周波信号は、電気プラグ21及びこれに接続されたコンセント11を介して電力線16に伝達され、高周波信号はキャパシタ15を通過し共通導体13に伝達する。そして、共通導体13に伝達した高周波信号は、他の接続装置10のキャパシタ15を通過し、電力線16を介して他の電力線通信装置20に伝達される。
【0049】
ここで、(A)2本で一対の共通導体13に対して2本の電力線16がそれぞれキャパシタ15を介して接続された接続装置10(図3参照)と、(B)2本で一対の共通導体13に対して2本の電力線16のうち一本がキャパシタ15を介して接続された接続装置10(図5参照)との接続形態について説明する。図6(a)は、(A)の接続装置10の回路構成を示し、図6(b)は、(B)の接続装置10の回路構成を示す図である。
【0050】
図6(a)に示すように、共通導体13を成す2つの導体である芯線13a及びシールド13bの双方に、キャパシタ15を介して電力線16が接続されている。すなわち、2本の芯線13a及びシールド13bを高周波信号の伝送路として用いている。この場合、一方の芯線13a(又はシールド13b)が信号の往路となり、他方のシールド13b(又は芯線13a)が信号の帰路(シグナルグランド)となるディファレンシャルモードで、接続装置10間の通信が行われることになる。
【0051】
一方、図6(b)に示すように、共通導体13を成す2つの導体の一方である芯線13aに、キャパシタ15を介して2本の電力線16のうちの1本が接続されている。この場合、芯線13aが信号の往路となり、交流配電網40の中性線Nや浮遊容量18を介して接続されたグランド17が信号の帰路となるコモンモードで、接続装置10間の通信が行われることになる。
【0052】
ディファレンシャルモード、及びコモンモードの何れの通信形態であっても、電力線通信装置20同士の通信は可能であるが、ノイズの観点からは、ディファレンシャルモード、すなわち、図3に示したように共通導体13を成す2本の芯線13a及びシールド13bの双方にキャパシタ15を介して電力線16を接続した接続装置10を用いることが好ましい。ディファレンシャルモードでは、芯線13aとシールド13bからなる閉回路が形成されるが、当該閉回路は、コモンモードにおける芯線13aと中性線Nやグランド17からなる閉回路よりもループ面積が小さいため、ディファレンシャルモードの閉回路から発せられるノイズの影響は、コモンモードの閉回路から発せられるノイズよりも小さくなるからである。
【0053】
したがって、ディファレンシャルモードの接続装置10は、コモンモードよりもノイズの影響を少なくすることができ、コモンモードの接続装置10は、配線をさらに簡略化できるメリットがある。
【0054】
〈実施形態2〉
本発明に係る接続装置10は、実施形態1に説明した構成に限られない。接続装置として採用できる共通導体及びキャパシタの様々な構成について説明する。
【0055】
図7は、共通導体及びキャパシタの態様について説明するための概略構成図である。図示するように、共通導体13を中心として各接続装置に対して1つのキャパシタ15が設けられており、それぞれの容量を100pFとすることで30Mbpsの通信速度を実現できる(図4参照)。ただし、図示しない浮遊容量も100pFとしている。
【0056】
このとき、図7(b)に示すように、2つの接続装置10に着目すれば、共通導体13は、2つのキャパシタ15間に配置されている。直列に接続された2つのキャパシタ15は、図7(c)に示すように、これらの2つの合成容量を有する1つのキャパシタ15と電気回路的に等価である。この場合、共通導体13は、キャパシタ15の内部に埋め込まれていると考えることができる。すなわち、図7(c)に示すように、共通導体13は、キャパシタ15に含まれた態様であってもよい。
【0057】
このような共通導体13がキャパシタ15に含まれた態様の接続装置を示す。
【0058】
図8は、共通導体がキャパシタに含まれる接続装置の構成図である。同図に示すように、各接続装置10は、電力線16同士がキャパシタ15Aで接続されている。図7(c)に示すように、共通導体13はキャパシタ15A内部に含まれている。
【0059】
実施形態1では、共通導体13と各接続装置10との間に配設されるキャパシタ15の容量は、100pFであったが、本実施形態では、キャパシタ15Aの容量は、そのような2つのキャパシタ15を合成したものに相当する。すなわち、キャパシタ15Aの容量を、50pF(1/100[pF−1]+1/100[pF−1]=50[pF−1])とすることで、実施形態1の100pFのキャパシタ15を用いた場合と同様に、照明1、2や火災警報器3、4からのノイズの影響を受けることなく、30Mbpsの通信速度を実現することができる。
【0060】
また、図8に示した各接続装置10では、2本の電力線16のうち1本がキャパシタ15A(共通導体13)を介して他の接続装置10に接続されている。すなわち、その1本の電力線16、キャパシタ15A(共通導体13)と、交流配電網40の中性線Nや浮遊容量で接続されたグランド(特に図示せず)とからなる閉回路が形成され、コモンモードでの通信形態となる。
【0061】
図9は、共通導体がキャパシタに含まれる態様であってキャパシタを2つ用いた接続装置の構成図である。同図に示すように、2つのキャパシタ15Bのそれぞれは、各接続装置10の電力線16同士を接続している。キャパシタ15Bの容量は共に50pFである。この場合、2つのキャパシタ15Bのうち一方は浮遊容量100pFの合成容量となる。したがって、同図に示した接続装置10においても、照明1、2や火災警報器3、4からのノイズの影響を受けることなく、30Mbps(図4参照)の通信速度で、パソコン30間の通信を行うことができる。
【0062】
図9に示した各接続装置10では、2本の電力線16のそれぞれがキャパシタ15B(共通導体13)を介して他の接続装置10に接続されている。すなわち、その2本の電力線16、キャパシタ15B(共通導体13)とからなる閉回路が形成され、ディファレンシャルモードでの通信形態となる。
【0063】
また、以上に説明した実施形態1及び実施形態2では、共通導体13及びキャパシタ15、15A、15Bを備える接続装置10を用いたが、このような場合に限らない。すなわち、各電力線通信装置20は、キャパシタ15を介して共通導体13に接続されていればよい。
【0064】
例えば、キャパシタ15は、接続装置10の筐体部12に配設されていたが、共通導体13に設けられていれば物理的な配置場所は特に限定されない。つまり、全体構成として、交流配電網40と、交流配電網40に接続された電力線通信装置20と、各電力線通信装置20を接続する共通導体13とを備え、共通導体13は、キャパシタ15を介して電力線通信装置に接続されていればよい。
【0065】
このような構成からなる電力線通信システムによれば、交流配電網40に接続される電力線通信装置20の相互間において、照明1、2や火災警報器3、4などの交流負荷を発生源とするノイズにより通信速度が低下するという事態を回避し、電力線通信装置20間の通信速度を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、交流配電網が敷設された施設において電力線通信を提供する産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
L1、L2 電力線
N 中性線
1、2 照明
3、4 火災警報器
10 接続装置
11、52 コンセント
12 筐体部
13 共通導体
15、15A、15B キャパシタ
16 電力線
17 グランド
18 浮遊容量
20 電力線通信装置
21 電気プラグ
22 インタフェース
30 パソコン
31 記憶装置
40 交流配電網
50 端子
51 第2のプラグ
53 第1のプラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流負荷が接続された交流配電網と、
前記交流配電網に接続された複数の電力線通信装置と、
前記各電力線通信装置を接続し、前記電力線通信装置が変調した高周波信号を伝達する共通導体とを備え、
前記交流配電網の前記各電力線通信装置間に前記交流負荷が接続され、
前記共通導体には、ノイズ源となる交流負荷が接続されておらず、且つ前記高周波信号を選択的に伝達する回路が設けられている
ことを特徴とする電力線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載する電力線通信システムにおいて、
前記共通導体は、屋内に配設された電話網又はアンテナ線である
ことを特徴とする電力線通信システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する電力線通信システムにおいて、
前記交流配電網と前記交流負荷とを接続する電力線を二本備え、
前記共通導体は、二本の導体であり、
前記各電力線は、分岐して前記共通導体の各導体にそれぞれ接続されている
ことを特徴とする電力線通信システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載する電力線通信システムにおいて、
前記交流配電網と前記交流負荷とを接続する電力線を二本備え、
前記各電力線のうち一本が、前記共通導体に接続されている
ことを特徴とする電力線通信システム。
【請求項5】
交流負荷が接続される交流配電網と電力線通信装置とを接続する接続装置であって、
前記電力線通信装置が接続されると共に前記交流配電網に接続される第1のプラグと、
複数の電力線通信装置を接続し、前記電力線通信装置が変調した高周波信号を伝達する共通導体に接続される第2のプラグと、
前記高周波信号を選択的に伝達する回路とを備え、
前記第1のプラグ及び前記電力線通信装置間の電力線が前記回路を介して前記第2のプラグにも接続されている
ことを特徴とする接続装置。
【請求項6】
請求項5に記載する接続装置において、
前記交流配電網と前記交流負荷とを接続する電力線を二本備え、
前記共通導体は、二本の導体であり、
前記各電力線は、分岐して前記共通導体の各導体にそれぞれ接続されている
ことを特徴とする接続装置。
【請求項7】
請求項5に記載する接続装置において、
前記交流配電網と前記交流負荷とを接続する電力線を二本備え、
前記各電力線のうち一本が、前記共通導体に接続されている
ことを特徴とする接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−205604(P2011−205604A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100391(P2010−100391)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】