説明

電力線通信システム

【課題】所定の電力線通信をエアギャップを介して非接触で行いつつ非接触で電力エネルギーの授受も簡易且つ適切に行い得る新たな電力線通信システムを提供する。
【解決手段】電磁誘導または磁気共鳴等により非接触で双方向給電を行う非接触給電部1と、非接触給電部1にそれぞれ接続されるとともにインバータ又はコンバータとしてそれぞれ動作する電力変換装置2,3と、各電力変換装置2,3にそれぞれ接続されてDC電源4,6又は負荷5,7となる電源/負荷と、電場を介して非接触の電力線通信を行うようエアギャップを介し相対向させて配設されている平板電極(11A,11C)、(11B,11D)と、平板電極(11A,11C)、(11B,11D)に電力線12A,12B,13A,13Bを介して接続されているPLCアダプタ14,15及び平板電極(11A,11C)、(11B,11D)を介して相手側の機器の制御を行う制御手段であるパソコン17,18とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力線通信システムに関し、特にエアギャップを介して非接触で所定の通信とエネルギーの授受を行う場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
電力線通信(Power Line Communication:PLC)を電力線に適用すると、2本の導体で通信とエネルギー伝送を同時に行えることから、スマートグリッドを実現するインターフェイスの一つとして注目されている。また、これは交流送配電網に用いる有線通信として古くから知られている技術でもある。
【0003】
RJ−45コネクタを用いた有線LANは、代表的な通信手段であるが、一般家庭の視点に立つと、現状では電力線ほど必要とはされない屋内配線の一つであると考えられている。このため、一般家庭では配線工事の要らない無線LANが最も普及している通信手段である。ただし、無線LANではエネルギー伝送ができないため、結局のところ電力線が必要となり、PLCは交流配電網が存在する限り本質的な通信手段であると言える。
【0004】
しかしながら、近年は直流給電やプラグインハイブリッド自動車(Plug−in Hybrid Vehicle;PHV)や電気自動車(Electricle Vehicle;EV )に関連して非接触給電技術の開発が盛んに行われており、前述の如きPLCの本質性が失われる系統事例が認められるようになってきた。
【0005】
これまで、一般家庭の屋内配線には負荷のみが接続され、交流をそのまま利用したり、必要に応じて順変換(整流)したりされてきた。しかしながら、近年は太陽電池、燃料電池、EV等、負荷以外のパワーエレクトロニクス機器が接続される事例が増加し、交流配電網そのものを根本的に見直す試みがなされている。
【0006】
太陽電池、燃料電池、EVは、いずれも本質的な直流電源であることや、白熱電球や誘導電動機など交流をそのまま利用する家電が減少していることから、順変換回路(整流回路)を省いた直流給電が主流となると、PLCの本質性が失われる可能性がある。
【0007】
さらに、安全・簡便に屋外EVへエネルギー伝送できる非接触給電は、そもそも導体を介さないため、元来、有線通信であるPLCとは相容れない系統となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−236355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
有線であればエネルギー伝送も通信も可能であるが、非接触給電の場合のように導体が接触しない場合には電力線通信ができなかった。
【0010】
そこで、電力線通信の概念を拡張し、エアギャップを介して非接触で所定の通信とエネルギーの授受を行い得る新たな電力線通信システムの出現が待望されている。
【0011】
本発明は、上記従来技術に鑑み、所定の電力線通信をエアギャップを介して非接触で行いつつ非接触で電力エネルギーの授受も簡易且つ適切に行い得る新たな電力線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、一方側と他方側とで非接触で双方向の電気エネルギーの授受を行うよう相互に離隔して配設されている前記一方側及び他方側のコイルを有する非接触給電部と、前記各コイルにそれぞれ接続されるとともにインバータ又はコンバータとしてそれぞれ動作する一方側及び他方側の電力変換装置と、前記各電力変換装置にそれぞれ接続されて電源又は負荷となる電源/負荷と、前記一方側と前記他方側とで電場を介して非接触の電力線通信を行うようエアギャップを介し相対向させてある平板電極と、前記平板電極に、電力線を介して接続されている電力線通信用のアダプタと、前記アダプタ及び前記平板電極を介して相手側との通信を行うことにより前記相手側の機器の制御を行うよう前記少なくとも一方に配設された制御手段とを有することを特徴とする電力線通信システムにある。
【0013】
本態様によれば、一方側のコイルと他方側のコイルとの間の磁場結合により一方側と他方側との間で電力エネルギーの伝送を行わせることができる。同時に、アダプタ及び平板電極を介して比較的限定された近距離空間であるエアギャップを介した相手側との電力線通信を行うことにより相手側の機器の制御を行うことで、一方の電力変換装置をインバータとして機能させるとともに、他方の電力機器をコンバータとして機能させることができる。
【0014】
この結果、電波を用いることなく、所定の通信を行うことができ、電力線通信を空間的に離隔された状態での非接触通信に適用して非接触給電との組み合わせにより実質的な非接触の電力線通信システムを構築することができる。
【0015】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する電力線通信システムにおいて、前記制御手段を、他方側にも配設し、他方側からも相手側の機器の制御を行うよう構成したことを特徴とする電力線通信システムにある。
【0016】
本態様によれば、一方側にも他方側にも制御手段があるため、一方側から他方側の機器の制御も、他方側から一方側の機器の制御も容易且つ適正に行うことができる。
【0017】
この結果、一方側も他方側も互いに対等な構成となり、冗長性を備えたシステムが実現し得る。
【0018】
本発明の第3の態様は、第1の態様又は第2の態様の何れか一つに記載する電力線通信システムにおいて、前記各電力変換装置は、同様のスイッチング素子と、前記スイッチング素子の電流方向に対する逆方向が順方向となるように前記スイッチング素子に並列に接続された同様のダイオードとを有する同様のスイッチングユニットを4個組み合わせ、さらに電解コンデンサにより直流電圧を安定にした前記電源/負荷の一方が供給する直流電力を交流電力に変換するインバータ回路か、前記電源/負荷の他方に直流電力を供給する全波整流回路として機能するように構成したことを特徴とする電力線通信システムにある。
【0019】
本態様によれば、良好な交流電圧と良好な直流電圧とを適切に得ることができる。
【0020】
本発明の第4の態様は、第1乃至第3の態様の何れか一つに記載する電力線通信システムにおいて、前記各平板電極には前記電力線からの交流電力の供給を遮断するコンデンサを直列にそれぞれ接続したことを特徴とする電力線通信システムにある。
【0021】
本態様によれば、電力線の商用周波数の交流を良好に遮断することができる。
【0022】
本発明の第5の態様は、第1乃至第4の態様の何れか一つに記載する電力線通信システムにおいて、前記各コイルと前記各電力変換装置との間に直列にコンデンサを接続し、各コンデンサによる静電容量と前記各コイルの漏れインダクタンスとがそれぞれ等しくなるように構成したことを特徴とする電力線通信システムにある。
【0023】
本態様によれば、静電容量と漏れインダクタンスとの組み合わせにより共振条件を満足させることができるので、電力エネルギーの伝送効率が最も良好なものとなる。
【0024】
本発明の第6の態様は、第1乃至第5の態様の何れか一つに記載する電力線通信システムにおいて、前記各平板電極は、前記各コイルの内周側又は外周側に配設された平行平板で構成したことを特徴とする電力線通信システムにある。
【0025】
本態様によれば平板電極とコイルとをほぼ同一面内に配設することができるので、スペースファクタを良好にすることができる。
【0026】
本発明の第7の態様は、第1乃至第5の態様の何れか一つに記載する電力線通信システムにおいて、前記各平板電極は、前記各コイルの導体を兼用させて構成されていることを特徴とする電力線通信システムにある。
【0027】
本態様によれば、コイルを平板電極としても機能させることができるので、非接触部分の構造を最も簡潔にすることができる。
【0028】
本発明の第8の態様は、第1乃至第6の態様の何れか一つに記載する電力線通信システムにおいて、前記平板電極は、前記電力線通信における往路の一部を形成する一対の平板電極と、復路の一部を形成する他の一対の平板電極で構成したことを特徴とする電力線通信システムにある。
【0029】
本態様によれば、電力線通信における往路の非接触部分と復路の非接触部分とを何れも相対向する平板電極で構成することができるので、閉じた伝送路を容易且つ適確に構成することができる。また、非接触部分の情報の漏洩も可及的に低減し得るので、システム間の干渉等による誤制御も未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、元来有線通信である電力線通信の非接触化ができ、エアギャップが存在してもエネルギーと通信の授受が可能となる。さらに、通信の授受を行う範囲がエアギャップという比較的限定された近距離空間であるため、電波を用いることなく所定の通信が可能となる。
【0031】
このように、本発明によれば、電波を用いることなく、所定の通信を行うことができるので、1)漏洩電波の被曝を最少にできる、2)セキュリティーが強固なものとなる、3)隣接する同様のシステムとの干渉を生起する可能性を可及的に低減し得るという効果を奏する。ちなみに、2)及び3)に関しては無線LANの問題点として指摘されている。
【0032】
この結果、本発明によれば、多方面への応用が期待されている電力線通信を空間的に離隔された状態での非接触通信に適用でき、非接触給電との組み合わせにより実質的な非接触の電力線通信システムを構築することができる。すなわち、電力の伝送及び通信を二本の導体を介して行う電力線通信の概念を非接触の態様にまで拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態に係る電力線通信システムの全体を示すブロック線図である。
【図2】電力変換装置の具体的な構成例を、非接触給電部とともに抽出して示すブロック線図である。
【図3】図1のA部(非接触給電部及び非接触通信部)を抽出してその概略をさらに具体的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0035】
図1は本発明の実施の形態に係る電力線通信システムの全体を示すブロック線図である。同図に示すように、非接触給電部1は一方側と他方側とで磁場により非接触で双方向の電気エネルギーの授受を行うよう相互に離隔して配設されている一方側及び他方側のコイル1A,1Bを有する。
【0036】
一方側及び他方側の電力変換装置2,3は各コイル1A,1Bにそれぞれ接続されるとともに一方側がインバータとして動作される場合には他方側がコンバータとして動作される。
【0037】
ここで、各コイル1A,1Bと各電力変換装置2,3との間には直列にコンデンサC1,C2が接続されており、各コンデンサC1,C2による静電容量と各コイル1A,1Bの漏れインダクタンスとがそれぞれ等しくなるように調整してある。このように、コンデンサC1,C2を設けることは本発明において必須ではないが、適切な静電容量のコンデンサC1,C2を設けることにより、静電容量と漏れインダクタンスとの組み合わせにより共振条件を満足させることができるので、この場合の非接触給電における電力エネルギーの伝送効率を可及的に良好なものとすることができる。
【0038】
DC電源4、6は本形態においては、例えば蓄電池等の直流電源で構成してある。負荷5,7は本形態においては、例えば抵抗等の直流負荷で構成してある。ここで、DC電源4及び負荷5は何れか一方が動作されるようになっている。すなわち、リレー開閉器19でON/OFF制御されるリレー8,9により何れか一方が選択的に動作されるように制御される。同様に、DC電源6及び負荷7は何れか一方が動作されるようにリレー開閉器21でON/OFF制御されるリレー10,11により何れか一方が選択的に動作されるように制御される。
【0039】
パルス発生器20,22は電力変換装置2,3にインバータ動作をさせる場合のスイッチングパルスを供給するものである。かかるパルス発生器20,22は何れか一方がON状態とされて電力変換装置2,3にスイッチングパルスを供給してインバータ動作を行わせる。残りのパルス発生器22,20はOFF状態とされる。この結果、電力変換装置3,2には何の信号も供給されないのでコンバータとして動作される。すなわち、何れか一方がスイッチングパルスによりインバータ動作される場合には他方はコンバータとして動作される。
【0040】
本実施形態における平板電極(11A,11B)、(11C,11D)は、一方側と他方側とで各2枚ずつがエアギャップを介して配設されており、電力線(12A,12B)、(13A,13B)を介してPLCアダプタ14,15にそれぞれ接続されている。この結果、平板電極(11A,11B)、(11C,11D)間にエアギャップが存在していても、電力線通信に使用される高周波帯では、これらが平行平板コンデンサとして機能し、電場を介して非接触の電力線通信を行い得る。すなわち、平板電極(11A,11B)で電力線通信における往路の伝送路の一部がエアギャップを介して形成されるとともに、平板電極(11C,11D)が復路の伝送路の一部がエアギャップを介して形成されている。
【0041】
本形態においては、片側2枚ずつの平板電極(11A,11C)、(11B,11D)を有するので、閉じた伝送路を容易且つ適確に構成することができる。ただ、本形態のように片側2枚ずつの平板電極(11A,11C)、(11B,11D)で伝送路の非接触部分を構成することは,必須ではない。一方側と他方側とにそれぞれ配設される平板電極11A,11Bを相対向させるだけでもエアギャップを介しての所定の電力線通信は可能である。この場合には、電力線12B,13Bが大地に対して浮かしてあるので、電力線12B,13Bと大地との間で形成される浮遊容量が復路のコンデンサとなるからである。ただ、この場合には、形成される電場の領域が広がるので、若干の情報の漏洩は発生する。
【0042】
すなわち、片側2枚ずつの平板電極(11A,11C)、(11B,11D)を有する本形態によれば、閉じた伝送路を容易且つ適確に構成することができるばかりでなく、非接触部分の情報の漏洩も可及的に低減し得るので、システム間の干渉等による誤制御も未然に防止することができる。
【0043】
また、本形態において、電力線12A,13AにはコンデンサC3,C4が、また電力線12B,13BにはコンデンサC5,C6が、それぞれ直列に接続してあり、電力線12A,12B,13A,13Bの商用周波数の交流を平板電極11A乃至11Dから良好に遮断するようになっている。すなわち、万一平板電極(11A,11B)、(11C,11D)同士が接触しても、平板電極(11A,11B)、(11C,11D)間の電力線短絡が発生しないように構成してある。なお、コンデンサC3乃至C6を接続する代わりに平板電極(11A,11B)、(11C,11D)の表面に絶縁性の塗料を塗布するか、または平板電極(11A,11B)、(11C,11D)の各表面を絶縁部材で覆う等の対策により同様の効果を得ることができる。
【0044】
PLCアダプタ14,15の一つの端子には制御装置としてのパソコン17,18が接続してある。この結果、パソコン17,18は、PLCアダプタ14,15を介して電力線通信により相手側の機器に所定の制御信号を送出することができ、かかる制御信号で相手側の機器を適宜制御することができるようになっている。PLCアダプタ14,15の残りの二つの端子にはLANケーブル23,24,25,26が接続されており、各LANケーブル23乃至26がリレー開閉器19,パルス発生器20,リレー開閉器21,パルス発生器22にそれぞれ接続されている。かくして、パソコン17,18はリレー開閉器19,21及びパルス発生器20,22の動作を制御する制御装置としても機能する。
【0045】
かかる制御装置として機能するパソコン17,18による各機器の制御は種々の態様が考えられる。具体例を挙げれば次の通りである。
【0046】
例えばパソコン17のみを用いて電力変換装置2をインバータとして動作させるとともに、電力変換装置3をコンバータとして動作させるように制御する場合には、パソコン17でリレー開閉器19を制御してリレー開閉器19でリレー8を動作させることによりDC電源4を電力変換装置2に接続するとともに、パルス発生器20をONする。このことによりパルス発生器20は所定のスイッチングパルスを発生して電力変換装置2の各素子(後で詳述する)を所定のタイミングでON/OFFさせる。この結果、電力変換装置2がインバータとして動作される。
【0047】
同時にパソコン17は、PLCアダプタ14、電力線12A、平板電極11A,11B、電力線13A、PLCアダプタ15、電力線13B、平板電極11D,11C、電力線12Bを介した非接触の電力線通信によりリレー開閉器21の制御信号を送出する。すなわち、パソコン17から送出された制御信号は電力線12A、平板電極11A,11B、電力線13A,PLCアダプタ15及びLANケーブル25を介してリレー開閉器21に送出される。この結果リレー開閉器21を介してリレー11を動作させることにより負荷7、または充電のためのDC電源6が電力変換装置3に接続される。
【0048】
かかる態様の制御はパソコン18を使用すれば全く逆の態様で同様に行うことができる。
【0049】
一方、上述の場合と同様に、電力変換装置2をインバータとして動作させるとともに、電力変換装置3をコンバータとして動作させる場合、パソコン17で、上述の如き非接触の電力線通信によりパソコン18を遠隔操作し、当該パソコン18が自己の側のリレー開閉器21を所定通り制御するようにしても良い。
【0050】
何れにしても、パソコン17,18をPLCアダプタ14,15に接続する制御装置として利用することにより非接触の電力線通信により電力変換装置2,3を制御し、コイル1A,1Bを介した双方向の電力エネルギーの伝送を良好に行うことができる。
【0051】
図2は電力変換装置の具体的な構成例を、非接触給電部とともに抽出して示すブロック線図である。本実施例に係る電力変換装置2,3は、同様のスイッチング素子と、該スイッチング素子の電流方向に対する逆方向が順方向となるように前記スイッチング素子に並列に接続された同様のダイオードとを有するスイッチングユニットGU1,GV1,GX1,GY1,GU2,GV2,GX2,GY2をそれぞれ4個組み合わせてDC電源4又はDC電源6の一方が供給する直流電力を交流電力に変換するインバータ回路か、負荷7又は負荷5、さらには、充電のためのDC電源4又はDC電源6に直流電力を供給する全波整流回路として機能するように構成したものである。なお、電解コンデンサC7,C8は平滑用のコンデンサであり、これらにより直流電圧の安定化を図っている。
【0052】
かかる本実施例において電力変換装置2がインバータとして動作される際には、スイッチングユニット(GU1,GY1),および(GV1,GX1)が順次この順序で導通されて交流電流に変換され、このときコンバータとして動作される電力変換装置3がスイッチングユニット(GU2,GY2),および(GV2,GX2)のダイオードを介して順次この順序で電流を流すことにより交流電流が全波整流されて直流電流に変換される。電力変換装置2,3のインバータ、コンバータの機能を逆転させた場合には、逆の動作により同態様の電力変換が行われる。したがって、本実施例によれば、良好な交流電流と良好な直流電流を適切に得ることができる。
【0053】
上記実施の形態におけるコイル1A,1B及び平板電極11A,11Bの構造は種々考えられるが、代表的な3種類に関し、図3に基づき、実施例1乃至実施例3として説明しておく。
【0054】
図3(a)に示す実施例1は、磁場結合されるように相対向させたコイル1A、1Bと電場結合されるように相対向させた平板電極(11A,11C)、(11B,11D)とを独立させて別々に配設したものである。本実施例1は最も原理的な構成ではあるが、確実に非接触給電及び非接触の電力線通信を行うことができる。
【0055】
図3(b)に示す実施例2は、各平板電極(11A,11C)、(11B,11D)を、各コイル1A,1Bの内周側および外周側にそれぞれ配設された一対の平行平板コンデンサで構成したものである。本実施例2によれば平板電極(11A,11C)、(11B,11D)とコイル1A,1Bとをほぼ同一面内に配設することができるので、スペースファクタを良好にすることができる。
【0056】
図3(c)に示す実施例3は、各平板電極11A,11Bを、各コイル1A,1Bの導体を兼用させて構成したものである。本実施例3では各コイル1A,1Bを導体の塊として等価的な平行平板が形成されていると見做すことができる。本実施例3によれば、コイル1A,1Bを平板電極11A,11Bとしても機能させることができるので、非接触部分の構造を最も簡潔にすることができる。
【0057】
なお、実施例1および実施例2においては各平板電極11C、11Dを省略し、2枚の相対向する平板電極として構成することもできる。実施例3は、はじめからこの構成となる。
【0058】
また、上記実施の形態においては、一方側から他方側、他方側から一方側を相互に制御し得るように、制御装置であるパソコン17,18を一方側及び他方側の両側にそれぞれ設けたが、これは何れか一方側のみでも成立する。本発明によれば制御装置がたとえ一方のみでも非接触の電力線通信により相手側の機器を適切に制御するように構成することが可能であるからである。
【0059】
さらに、上記実施の形態において電気エネルギーの非接触での授受は電磁誘導を利用して行うように構成したが、これに限るものではない。例えば磁気共鳴等を利用した構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は電力線通信システムを適用する、例えばスマートグリッド等を構築する配電線系統を有する電気事業において適用し得る。
【符号の説明】
【0061】
1 非接触給電部
1A,1B コイル
2,3 電力変換装置
4,6 電源
5、7 負荷
11A,11B,11C,11D 平板電極
12A,12B,13A,13B 電力線
14,15 PLCアダプタ
17,18 パソコン










【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側と他方側とで非接触で双方向の電気エネルギーの授受を行うよう相互に離隔して配設されている前記一方側及び他方側のコイルを有する非接触給電部と、
前記各コイルにそれぞれ接続されるとともにインバータ又はコンバータとしてそれぞれ動作する一方側及び他方側の電力変換装置と、
前記各電力変換装置にそれぞれ接続されて電源又は負荷となる電源/負荷と、
前記一方側と前記他方側とで電場を介して非接触の電力線通信を行うようエアギャップを介し相対向させてある平板電極と、
前記平板電極に、電力線を介して接続されている電力線通信用のアダプタと、
前記アダプタ及び前記平板電極を介して相手側との通信を行うことにより前記相手側の機器の制御を行うよう前記少なくとも一方に配設された制御手段とを有することを特徴とする電力線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載する電力線通信システムにおいて、
前記制御手段を、他方側にも配設し、他方側からも相手側の機器の制御を行うよう構成したことを特徴とする電力線通信システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する電力線通信システムにおいて、
前記各電力変換装置は、同様のスイッチング素子と、前記スイッチング素子の電流方向に対する逆方向が順方向となるように前記スイッチング素子に並列に接続された同様のダイオードとを有する同様のスイッチングユニットを4個組み合わせ、さらに電解コンデンサにより直流電圧を安定にした前記電源/負荷の一方が供給する直流電力を交流電力に変換するインバータ回路か、前記電源/負荷の他方に直流電力を供給する全波整流回路として機能するように構成したことを特徴とする電力線通信システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載する電力線通信システムにおいて、
前記各平板電極には前記電力線からの交流電力の供給を遮断するコンデンサを直列にそれぞれ接続したことを特徴とする電力線通信システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載する電力線通信システムにおいて、
前記各コイルと前記各電力変換装置との間に直列にコンデンサを接続し、各コンデンサによる静電容量と前記各コイルの漏れインダクタンスとがそれぞれ等しくなるように構成したことを特徴とする電力線通信システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載する電力線通信システムにおいて、
前記各平板電極は、前記各コイルの内周側又は外周側に配設された平行平板で構成したことを特徴とする電力線通信システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載する電力線通信システムにおいて、
前記各平板電極は、前記各コイルの導体を兼用させて構成されていることを特徴とする電力線通信システム。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載する電力線通信システムにおいて、
前記平板電極は、前記電力線通信における往路の一部を形成する一対の平板電極と、復路の一部を形成する他の一対の平板電極で構成したことを特徴とする電力線通信システム。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−234051(P2011−234051A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101416(P2010−101416)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】