電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所
【課題】風力などの自然エネルギー利用発電装置と電力貯蔵装置で構成される自然エネルギー利用発電所の受電電力量を低減する技術を提供する。
【解決手段】風力発電システム1と電力貯蔵装置2と制御器3で構成する風力発電所11であって、風力発電所11が電力系統に接続する地点に風力発電所が受電する一定期間内の受電電力量を測定する手段10を備え、測定した受電電力量を制御器3に伝送し、制御器3は受信した受電電力量を所定値と比較し、受電電力量が所定値よりも大きいと判断した場合は、発電所が発電状態または発電所の出力電力が零となるように、制御器3が電力貯蔵装置2における蓄電装置の充放電電力指令を補正する。
【解決手段】風力発電システム1と電力貯蔵装置2と制御器3で構成する風力発電所11であって、風力発電所11が電力系統に接続する地点に風力発電所が受電する一定期間内の受電電力量を測定する手段10を備え、測定した受電電力量を制御器3に伝送し、制御器3は受信した受電電力量を所定値と比較し、受電電力量が所定値よりも大きいと判断した場合は、発電所が発電状態または発電所の出力電力が零となるように、制御器3が電力貯蔵装置2における蓄電装置の充放電電力指令を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所にかかり、特に、風力発電システムや太陽光発電システムなどの自然エネルギーを利用した発電システムと電力貯蔵装置とを並列に電力系統に接続し、自然エネルギーを利用した発電システムと連携して電力貯蔵装置の充放電を行うようにした電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界に存在する再生可能なエネルギーを電力エネルギーに変換する手段として、風力発電システムや太陽光発電システムが利用されている。風力発電システムや太陽光発電システムのエネルギー源は、時間的に変動する風のエネルギーや太陽光エネルギーであるため、発電システムの発電電力も時間的に変動する。
【0003】
電力系統は、電力需要の大きさに応じて火力発電所や水力発電所,揚水発電所等の発電電力を調整することで、電力需給のバランスを保っている。このため、風力発電システムや太陽光発電システム等の変動の大きな電源が大量に電力系統に連系した場合、需給バランスの調整力不足や、周波数変動の拡大が懸念される。
【0004】
風力発電システムの電力変動が電力系統に与える悪影響を緩和するため、風力発電システムに電力貯蔵装置を併設し、風力発電システムの変動する発電電力を、電力貯蔵装置が充放電することで、電力系統に出力する電力変動を緩和するなどの手段が必要となる。
【0005】
自然エネルギーを利用した発電システムの電力変動を緩和する技術として、特許文献1には風力発電機に電力貯蔵手段(蓄電池)を併設し、風力発電機から電力線へ給電する電力の安定化を図る技術が記載されている。特許文献1では微小単位時間内における風力発電機の発生電力の平均値を求め、この平均値と風力発電機の発生電力とを対比して、電力貯蔵手段から電力線へ給電、または、風力発電機の発生電力を電力貯蔵手段へ給電するようにして、電力線へ給電する電力の安定化を図る方法が記載されている。
【0006】
また特許文献2には自然エネルギー発電機と出力補償装置(電力貯蔵装置)を組合せることで、合成出力電力を目標値(一定値)に一致するように制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−299106号公報(特許第3758359号)
【特許文献2】特開2008−54385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
風力発電システムと電力貯蔵装置で構成される風力発電所において、風力発電システムの風力発電装置周囲の風速が小さい場合、風力発電装置は待機モードに移行するのが一般である。風力発電装置は待機モードであっても、風力発電装置の制御電源や、風力発電装置を構成する機械系は接続した電力系統から電力を受電し、電気エネルギーを消費している。また風力発電装置を構成する変圧器は、風力発電装置が待機モードであっても電力系統に接続している場合が一般的であり、待機モードの間、無負荷損と呼ばれる損失を発生している。変圧器の無負荷損失は、接続した電力系統から供給される。このため風力発電所が受電状態となる状況が発生しうる。
【0009】
また、待機モードではない場合でも発電電力が小さい場合、風力発電装置の制御電源や機械系、変圧器などを含む風力発電所の構内負荷が大きい場合には、受電状態となる状況が発生しうる。
【0010】
風力発電所と電力系統との接続点には電力量計が備えられており、風力発電所の発電電力量を測定すると同時に、受電電力量を測定する。風力発電所を運営する風力発電事業者は電力系統運用会社(あるいは一般電気事業者)に対して、受電電力量に応じた料金(以下電気料金)を支払う必要がある。電気料金の増大は風力発電所の事業性を悪化するため、自然エネルギーを利用した風力発電所導入の妨げとなる。
【0011】
特許文献1、および特許文献2では発電所の出力電力の変動緩和のみを目的としているため、低風速状態が長時間継続した場合、風力発電所の受電電力量が増大する恐れがあるが、この点については何等配慮されていない。
【0012】
風力発電所以外に時間的に変動する自然エネルギーを利用した発電所、例えば、大規模太陽光発電所や波力発電所においても同様な課題が生ずる。即ち、電力貯蔵装置を併設した波力発電所や電力貯蔵装置を併設した太陽光発電所においても待機モードに移行する場合がある。波力発電所であれば波の大きさが小さい期間において、太陽光発電所であれば太陽光が無くなる夜間において待機モードに移行する。波力発電所,太陽光発電所であっても制御機器,変圧器を構成要素にもつため、待機モード期間において受電状態となる状況が発生しうる。また、発電所の構内負荷が発電電力よりも大きく受電状態となる状況が同様に発生しうる。
【0013】
本発明は、自然エネルギー利用発電所において、電力系統運用会社あるいは一般電気事業者からの受電電力量を低減することが可能な自然エネルギー利用発電所を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の自然エネルギー利用発電所(風力発電所など)は、自然エネルギー利用発電システム(風力発電システムなど)と、電力貯蔵装置と、これらを制御する制御器を備え、自然エネルギー利用発電所が電力系統に接続する地点において自然エネルギー利用発電所が一定期間内に受電する受電電力量を測定し、測定した受電電力量が所定値以上と判断した場合、発電所が発電状態又は発電所出力が零となるように、制御器から電力貯蔵装置への充放電電力指令を補正するようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本発明の自然エネルギー利用発電所(風力発電所など)は、自然エネルギー利用発電システム(風力発電システムなど)と、電力貯蔵装置と、これらを制御する制御器を備え、自然エネルギー利用発電所が電力系統に接続する地点において自然エネルギー利用発電所が一定期間内に受電する受電電力量を測定し、測定した受電電力量が所定値以上と判断した場合、電力貯蔵装置への充放電電力を放電方向か充電電力が減少する方向に制御するようにしたことを特徴とする。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明の自然エネルギー利用発電所(風力発電所など)は、自然エネルギー利用発電システム(風力発電システムなど)と、電力貯蔵装置と、これらを制御する制御器を備え、自然エネルギー利用発電所が電力系統に接続する地点において自然エネルギー利用発電所が一定期間内に受電する受電電力量を測定し、測定した受電電力量が所定値以上と判断した場合、発電所が発電状態又は発電所出力が零となるように、発電所を構成する補機が運転している状態の場合には、補機を停止または待機状態に変化させる指令、および/または、電力貯蔵装置の蓄電装置が回復充電を実施している回復充電状態の場合には、回復充電をやめる指令を、制御器から補機および/または蓄電装置に出すようにすることを特徴とする。
【0017】
尚、本発明において、発電所が発電状態とは、電力系統に向かって有効電力を出力する状態をいう。具体的には、例えば、後述の実施例における電力計9の計測値である発電所出力電力PRが零より大きい値となる状態をいう。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、発電所の一定期間内の受電電力量が所定値を超過した場合、発電所が発電状態又は発電所出力が零となるように制御しているので、風力発電所の受電電力量が所定値より大きくなることを防止でき、受電電力量を低減することができる。
【0019】
また、本発明では、発電所の一定期間内の受電電力量が所定値を超過した場合、電力貯蔵装置への充放電電力を放電方向か充電電力が減少する方向に制御するようにしているので、風力発電所の受電電力量が所定値に達してからの増加を抑制することができ、受電電力量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例である風力発電所の構成を示した図。
【図2】本発明の一実施例である風力発電所を構成する風力発電装置の一例を示した図。
【図3】本発明の一実施例である風力発電所を構成する蓄電装置の一例を示した図。
【図4】本発明の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成を示した図。
【図5】本発明の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成要素である発電所出力目標値演算器の一例を示した図。
【図6】本発明の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成要素である発電所出力目標値演算器の別の一例を示した図。
【図7】本発明の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成要素である充放電指令補正演算器の構成を示した図。
【図8】本発明の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成要素である充放電指令補正演算器の別の一例を示した図。
【図9】本発明の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成要素である比較演算器の構成を示した図。
【図10】本発明の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成要素である充放電電力指令分配器の構成を示した図。
【図11】本発明の一実施例である風力発電所の動作例を示した図。
【図12】本発明の他の一実施例である風力発電所の構成を示した図。
【図13】本発明の他の一実施例である風力発電所を構成する風力発電装置の一例を示した図。
【図14】本発明の他の一実施例である風力発電所を構成する蓄電装置の一例を示した図。
【図15】本発明の他の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成を示した図。
【図16】本発明の他の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成要素である補機運転指令演算器の構成を示した図。
【図17】本発明の他の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成要素である蓄電装置運転状態指令演算器の構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施例(第一の実施例)を図1から図11を用いて説明する。
【0022】
本実施例は、自然エネルギー利用発電所として風力発電所に本発明を適用したものである。風力発電所11は、主に風力発電システム1と電力貯蔵装置2、およびこれらを制御する制御器で構成される。風力発電所11はこの他に、電力計7,8,9,電力量計10,変圧器6,構内負荷4等を構成要素に持つ。なお構内負荷4とは、発電所所内で使用する照明,ファンなどで構成する。風力発電システム1および電力貯蔵装置2は同一の電力系統5に送電線、変圧器6を介して電気的に接続し、発電電力を電力系統5に送電する。風力発電システムは1台以上の風力発電装置1−1,1−2,1−3で構成する。図1では風力発電装置として3台の例を示したが、風力発電装置の台数は本発明の効果に影響を与えない。なお本実施例においては、説明のため風力発電装置1台あたりの定格出力電力を2MWと仮定する。よって風力発電所の定格出力電力は6MWとなる。電力貯蔵装置2は蓄電装置2−1,2−2,2−3で構成する。図1では電力貯蔵装置2を構成する蓄電装置が3台の例を示したが、蓄電装置の台数も本発明の効果に影響を与えない。
【0023】
風力発電システム1の発電電力は電力計7で計測され、計測した発電電力値PWは制御器3が検出する(即ち、計測値は制御器3に伝送される。)。同様に風力発電システム1と電力貯蔵装置2の合成電力も電力計8で計測され、計測した合成電力PSysは制御器3が検出する。この他に風力発電所11が電力系統5に接続する地点にも、電力計9および電力量計10を設置し、それぞれ発電所出力電力PRと発電所の受電電力量Whを計測し、制御器3が検出する。なお電力量計10は、所定時間ごとに(例えば30分ごとに)発電所受電電力量WRを0にリセットする。また電力量計10は受電方向の電力量のみを計測し、発電方向の電力量は図1に図示していない別の電力量計で測定する。このため計測した発電所受電電力量WRは常に0以上の値である。制御器3は受信したPW,PSys,PR,WR等から電力貯蔵装置2が充放電すべき充放電電力指令PBC1,PBC2,PBC3を演算し、各蓄電装置2−1,2−2,2−3に送信する。各蓄電装置2−1,2−2,2−3は充放電電力指令PBC1,PBC2,PBC3に従って充放電を行うことで、風力発電所11の出力電力変動を緩和する。以降で本実施形態の風力発電所11を構成する個々の要素について詳細に説明する。
【0024】
図2を用いて風力発電システム1を構成する風力発電装置1−1について詳細に説明する。風力発電装置1−1は、ブレード1−1−1で風を受け、風のエネルギーを回転エネルギーに変換する。回転エネルギーは、発電機に伝達される。図2では発電機として、直流励磁型同期発電機1−1−4を示している。直流励磁型同期発電機1−1−4の固定子端子は、電力変換器1−1−6,電力変換器1−1−7,連系変圧器1−1−8,遮断器1−1−9を介して、電力系統に連系される。また、直流励磁型同期発電機1−1−4の回転子も、励磁装置1−1−5を介して固定子に接続されており、電力変換器(交直)1−1−6と励磁装置1−1−5を制御して可変速運転を実現している。なお図2に示した風力発電装置1−1の他に、永久磁石発電機を用いた風力発電装置,誘導機を用いた風力発電システム等があるが、風力発電装置1−1,1−2,1−3がこれらの風力発電装置、あるいはこれらの風力発電装置の組み合わせによって構成されても、本発明の効果は同じである。
【0025】
次に風力発電所11を構成する蓄電装置2−1,2−2,2−3について、図3を用いて説明する。蓄電装置2−1は、二次電池2−1−1と、電力変換器2−1−2,連系変圧器2−1−3,遮断器2−1−4等で構成される。二次電池2−1−1は複数の二次電池単位セルの直列接続,並列接続で構成する。二次電池2−1−1の端子は電力変換器2−1−2の直流器に電気的に接続する。電力変換器2−1−2は、制御器3からの充放電電力指令PBC1に従って、二次電池2−1−1の充放電電力を制御する。他の蓄電装置2−2,2−3の構成は、図2に示した蓄電装置2−1の構成と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0026】
次に風力発電所11を構成する制御器3の構成について図4から図10を用いて説明する。制御器3はマイクロプロセッサ等で構成され、風力発電システム1の状態量(発電電力値PW)と電力貯蔵装置2の状態量(充電率,温度,充放電電力など。図示省略。)をそれぞれ検出し、蓄電装置2−1,2−2,2−3が充放電すべき充放電電力の指令PBC1,PBC2,PBC3を演算する役割を担う。以下で制御器3の具体的な動作について詳細に説明する。
【0027】
制御器3は電力計7で計測した風力発電システム1の発電電力計測値PWから、発電所出力目標値演算器3−1において発電所が出力すべき発電所出力の目標値PSysTを演算する。発電所出力の目標値PSysTは、風力発電システム1の発電電力PWに対して、PWの時間的な変動を緩和した値として決定する。発電所出力目標値演算器3−1の具体的な動作の一例を、図5を用いて説明する。図5に示した発電所出力目標値演算器3−1は、風力発電システム発電電力PWに一次遅れ演算(あるいは一次遅れフィルタ)を施すことで、変動を平滑化した発電所出力目標値PSysTを演算する。なお図5では一次遅れ時定数をTmにした例を示している。
【0028】
発電所出力目標値演算器3−1の別の構成例を図6に示す。図6に示した発電所出力目標値演算器3−1aは、風力発電システム発電電力PWに対して出力可能な上限値と下限値を設け、上下限で制限した値を発電所出力目標値PSysTとして演算する。上限値と下限値は過去に測定した合成電力PSysから演算する。所定の期間(例えば19分間)前から、現在の時刻までの、風力発電システムの出力電力PSysの出力変動幅から、次の制御期間(例えば1分間)におけるPSysの出力可能範囲(上限値と下限値)を設定する。例えば、所定の期間の過去におけるPSysの最小値に10%を加えたものを上限値に設定し、所定の期間の過去におけるPSysの最大値から10%を減算した値を下限値に設定する。なお発電所出力目標値演算器3−1aにおけるこの上限値および下限値の演算方法は、本発明者等が以前に提案した特開2009−079559号公報においてより詳細に説明されている。
【0029】
本実施例では発電所出力目標値PSysTの演算方式として図5,図6に示した二例を挙げたが、いずれの方式においても風力発電システムの発電電力PWの時間的な変動を緩和した発電所出力目標値PSysTを演算するという効果は達せられており、いずれの手法を用いても本発明の効果は発揮される。また同様に風力発電システムの発電電力PWの時間的な変動を緩和する発電所出力目標値PSysTを演算する手段であれば、本実施例に示した以外の発電所出力目標値演算方式であっても本発明の効果は発揮できる。
【0030】
図4に示す減算器3−2は、発電所出力目標値演算器3−1が演算した発電所出力目標値PSysTから風力発電システム発電電力PWを減算することで、変動緩和のための充放電電力指令PBMitiCを決定する。変動緩和のための充放電電力指令PBMitiCは、風力発電システムの発電電力PWの変動を緩和するために電力貯蔵装置2が充放電すべき充放電電力値を表す値である。
【0031】
次に制御器3における受電電力量を考慮した充放電電力指令を補正する方法について説明する。図7は制御器3を構成する充放電指令補正演算器3−5の構成を示したものである。充放電指令補正演算器3−5は減算器3−5−1において、所定値(図7中では0kW)から風力発電所出力電力検出値PRを減算することで、補正電力指令PBHC1を演算する。この図7の例では、所定値を0kWと設定しているので、風力発電所出力電力検出値PRに対応する電力を補正電力指令PBHC1として出力している。後述の図11に示すように、待機状態で発電電力PWが零となった場合には、変動緩和のための充放電電力指令PBMitiCも零となり、風力発電所出力電力検出値PRに対応する電力を蓄電装置に放電させ、発電所出力が零、そして、受電電力も零となるようにする。これにより受電電力量が所定値より増大しなくなる(詳細は後述)。
【0032】
充放電指令補正演算器3−5の別の構成例を示したものが図8である。図8に示した充放電指令補正演算器3−5aは補正電力指令PBHC1として固定値を設定する。補正電力指令PBHC1の固定値は、風力発電所全体が消費する最大消費電力値より大きな値に設定する。例えば風力発電所全体の最大消費電力量が100kWであった場合、補正電力指令PBHC1の固定値はそれよりも大きな値(本実施例では200kW)とする。即ち、図8の例では、受電する電力は発電所の構内負荷に略対応するので、それに余裕を持たせた値を補正電力指令PBHC1としている。この場合は、発電所が有効電力を電力系統に出力することになる(発電所が発電状態となる。)。
【0033】
図4に示した比較演算器3−7は、充放電電力を補正するか否かの判断を行う。比較演算器3−7の構成について図9を用いて説明する。比較演算器3−7を構成する比較器3−7−1は、風力発電所受電電力量WRと予め定めた所定値(本実施例では30kWhとする)の大きさを比較する。この所定値は、構内負荷の電力の大きさと、蓄電池容量,許容できる受電料金に応じて適宜定める。風力発電所受電電力量WRが所定値よりも小さい場合は、通常の変動緩和制御を継続するような信号(本実施例では0)を出力する。一方風力発電所受電電力量WRが所定値以上の場合は、受電電力量のさらなる増大を防止するため、変動緩和制御から受電電力低減制御に移行するような信号(本実施例では1)を出力する。比較演算器3−7が出力した信号は図4に示した切り換え器3−6が受信する。切り換え器3−6は、比較演算器3−7の信号に応じて、変動緩和制御時は0kW指令を、受電電力低減制御時は充放電指令補正演算器3−5の演算結果PBHC1を選択し、充放電補正指令PBHCとして出力する。
【0034】
切り換え器3−6が出力した充放電補正指令PBHCは、図4に示した加算器3−3が充放電電力指令PBMitiCと足し合わせることで、電力貯蔵装置2が充放電すべき充放電指令PBCとなる。なお充放電補正指令PBHCは常に0以上の値なので、合成された充放電指令PBCは充電電力が減少する方向、あるいは放電方向電力が増加する方向に補正される。
【0035】
また、電力貯蔵装置2は一般に、複数台の蓄電装置で構成されるため、充放電指令PBCを各蓄電装置に分配する必要がある。図4に示した充放電電力指令分配器3−4は、充放電指令PBCを分配する役割を持つ。充放電電力指令分配器3−4の構成について、図10を用いて説明する。充放電電力指令分配器3−4は、充放電指令PBCを蓄電装置の台数(本実施例では3)で除算することで、各蓄電装置が充放電すべき充放電電力指令PBC1,PBC2,PBC3を演算する。図10に示した充放電電力指令分配器3−4は、充放電指令PBCを複数の蓄電装置に均等に分配するが、分配の方法として異なる方式を採用しても本発明の効果は失われない。充放電電力指令PBCの他の振り分け方法としては、本発明者等が以前に提案した方式(PCT/JP2009/004488)等がある。
【0036】
次に本発明の風力発電所の動作について、図11を用いて説明する。図11は本発明の風力発電所の電力,電力量の時間変化を示した図である。図11(a)は風力発電システムの発電電力PWと合成電力PSysの時間変化を示した図である。時刻0:50以前では、風力発電システム1は発電動作をしている。風力発電所を構成する電力貯蔵装置2は図11(b)に示すような充放電動作を行うことで、合成出力PSysの変動を緩和している。一方時刻0:50以降は風力発電装置1−1,1−2,1−3周辺での風速が小さくなったため、風力発電装置1−1,1−2,1−3は待機モードに移行する。風力発電装置1−1,1−2,1−3は待機モードであっても、風力発電装置1−1,1−2,1−3を構成する制御電源や機械系電源は常に電力を消費する。また図1に示した変圧器6,構内負荷4も電力を消費しており、図11(c)に示したように接続点電力PRが受電(負値)になる。風力発電所11が受電状態となるため、図11(d)に示した電力量計10が計測した受電電力量WRも増加する。なお受電電力量WRは所定時間ごとに(本実施例では30分ごとに)0にリセットする。受電電力量WRが大きくなると、風力発電所11を運営する風力発電事業者は、電力系統運用会社(あるいは一般電気事業者)に支払う電気料金増大するため、受電電力量WRが大きくならないことが望ましい。本実施例の風力発電所11は構成要素である制御器3が受電電力量WRを観測しており、WRが所定値(本実施例では30kWh)に達した時点で、図11(e)に示すように比較演算器3−7が受電電力低減制御への切り換え信号を出力する。図4に示したように切り換え信号により、電力貯蔵装置2の充放電電力指令が補正をうけ、制御器3は図11(c)に示すように風力発電所出力電力PRを0付近に制御する。風力発電所出力電力PRが零あるいは正となるため、受電電力量WRは所定値30kWhより増大しなくなる。受電電力量WRは一定時間ごとに(本実施例では30分ごとに)0にリセットされるため(国内電力会社の受電電力量の計測形態は、現状、30分でリセットされるようになっている。)、時刻1:30に受電電力低減制御は変動緩和制御に移行する。変動緩和制御移行後、受電電力量WRが所定値30kWhより大きくなれば、再び受電電力低減制御に移行する。
【0037】
なお図11では、風力発電装置1−1,1−2,1−3が待機している状況において、発電所が受電状態になる状況を示したが、風力発電装置1−1,1−2,1−3が発電動作を実施している場合であっても、風力発電装置1−1,1−2,1−3の発電電力PWが小さく、かつ発電所を構成する変圧器6の損失や発電所を構成する補機の損失が大きい場合、風力発電所11が受電状態(PRが負)になる状況が発生する場合がある。このとき蓄電装置2−1,2−2,2−3が変動緩和のため放電している場合(PBC1,PBC2,PBC3が正)も発生しうるが、この場合であっても本発明の効果は実現される。具体的には制御器3が受電電力量WRを観測しており、WRが所定値(本実施では30kWh)に達した時点で、図4に示した比較演算器3−7が受電電力低減制御への切り換え信号を出力する。切り換え器3−6の動作により、変動緩和のための放電指令PBMitiCに補正電力指令PBHCがさらに加算される。このため蓄電装置2−1,2−2,2−3の放電電力が、受電電力低減制御へ移行したことにより増大するため、発電所の受電電力を0以下に制御することが可能となる。
【0038】
また、上述の受電電力量低減制御では、蓄電装置2−1,2−2,2−3が放電状態になる例について示したが、蓄電装置2−1,2−2,2−3の充電電力を低減することにより、本発明の目的を達することもできる。具体的には風力発電装置1−1,1−2,1−3が発電動作を実施している場合であって、風力発電装置1−1,1−2,1−3の発電電力PWが小さく、かつ発電所を構成する変圧器6の損失や発電所を構成する補機の損失が大きい場合、風力発電所11が受電状態(PRが負)になる状況が発生する。このとき蓄電装置2−1,2−2,2−3が変動緩和のため充電している場合(PBC1,PBC2,PBC3が負)も発生しうる。この際WRが所定値(本実施では30kWh)に達した時点で、図4に示した比較演算器3−7が受電電力低減制御への切り換え信号を出力する。切り換え器3−6の動作により、変動緩和のための放電指令PBMitiC(負値)に補正電力指令PBHC(正値)が加算されるため、蓄電装置2−1,2−2,2−3の充放電電力指令PBC1,PBC2,PBC3が放電側(正値)に近づく。この際補正電力指令PBHC(正値)が小さな値であれば、充放電電力指令PBC1,PBC2,PBC3は負値のままであり、結果的に蓄電装置2−1,2−2,2−3の充電電力が減る方向に補正される。このように蓄電装置の充電電力が減少するように充放電電力指令を補正するのみだけでも、本発明の効果が得られる。なお補正電力指令PBHC(正値)が大きく、充放電電力指令PBC1,PBC2,PBC3が正値(放電側)になる場合については、先に記載した動作と同一である。
【0039】
本実施例の風力発電所11は風力発電所の受電電力量WRを予め定めた所定値と比較し、受電電力量WRが所定値以上になった場合は、風力発電所11を構成する電力貯蔵装置2の充放電電力を補正する。本発明の効果により、風力発電所11の受電電力量が所定値より大きくなることを回避できる。このため風力発電所11の運用事業者が、電力系統運用会社(あるいは一般電気事業者)に支払う電気料金が減少し、風力発電所11の事業性が改善する。事業性の改善により風力発電所の導入が容易となり、結果的に自然エネルギーの有効利用に繋がる。
【0040】
また、上述の実施例では、発電所の一定期間内の受電電力量が所定値を超過した場合、発電所が発電状態又は発電所出力が零となるように電力貯蔵装置への充放電電力を制御して、風力発電所の受電電力量が所定値より大きくなることを防止し、受電電力量を低減するようにしているが、所定値を低めに設定しておけば、発電所の一定期間内の受電電力量が所定値を超過した場合に、電力貯蔵装置への充放電電力を放電方向か充電電力が減少する方向に制御することにより、風力発電所の受電電力量が所定値に達してからの増加を抑制し、一定期間内に本来の所定値に達するのを防止できる。これにより、受電電力量の低減が図れる。
【0041】
また、上述の実施例では発電所を構成する発電装置として風力発電装置を例に挙げて説明したが、風力発電装置の代わりに太陽光発電装置,太陽熱を利用した発電装置,波力発電装置等の出力が不安定な自然エネルギーを利用した発電装置で構成した発電所、あるいはこれら装置の組み合わせで構成した発電所であっても、電力貯蔵装置を併設した発電所とし、上述の実施例と同様な制御を適用することにより、本発明の効果は同様に発揮できる。
【0042】
本発明の他の実施例(第二の実施例)について図12から図17を用いて説明する。以降の図中で第一の実施例と番号が同一のものは、同じ構成要素を示し、詳細な説明は省略する。
【0043】
図12は本発明の風力発電所11bの構成を示した図である。第二の実施例の第一の実施例との違いは、風力発電所11bを構成する制御器3bが、風力発電所11bを構成する補機の運転状態を決定し、運転状態に応じて補機が運転を停止する点である。さらに風力発電所11bを構成する蓄電装置2−1b,2−2b,2−3bが制御器3bの指令に応じて、回復充電状態と通常運転状態を切り替える点である。以下で本発明の風力発電所11bの構成要素について詳細に説明する。
【0044】
図13は本発明の風力発電所11bを構成する風力発電装置1−1bを示す。風力発電装置1−1bの第一の実施例との違いは、風力発電装置1−1bを構成する補機が、制御器3からの指令HMCに応じて、運転,停止状態を切り替える点である。風力発電装置1−1bには、電力を消費しながら動作する補機が存在する。補機の例として例えば電力変換器1−1−6,1−1−7を冷却するための冷却ファン1−1−10,1−1−11が存在する。冷却ファン1−1−10,1−1−11は送風により電力変換器1−1−6,1−1−7を冷却する。冷却ファン1−1−10,1−1−11は風力発電装置1−1bの周囲の風速が小さく、風力発電装置1−1bが発電運転していない際でも動作する場合があり、電力を消費する。補機のほかの例として、ナセル角を変化させるナセル角調整電動機1−1−12がある。ナセル角調整電動機1−1−12はナセル1−1−3を水平面内で回転させる役割を担う。ナセル角調整電動機1−1−12も、風力発電装置1−1bが発電運転していない間も動作し、電力を消費する場合がある。風力発電装置1−1bが発電運転していない場合は、これらの補機の中には、必ずしも動作する必要がなく、受電電力量低減のために停止しても発電所の運用に大きな影響を与えない機器がある。本発明の風力発電所11bは、これら補機が制御器3からの補機運転指令HMCにより、運転状態を切り替える。つまり制御器3からの補機運転指令HMCが“運転”の場合、補機は通常の運転を継続する。一方補機運転指令HMCが“停止”の場合、補機は運転を停止する(若しくは待機状態にする)ことで電力の消費を停止(若しくは低減)する。なお風力発電所11bを構成する他の風力発電装置1−2b,1−3bも風力発電装置1−1bと同じ構成と動作をするため、説明は省略する。また、この例では、全ての補機を停止しているが、負荷の大きなもの、または、停止しても影響が少ないものから、受電電力量が増加しないように、選択的に補機を停止させるようにしても良い。
【0045】
次に図14を用いて本発明の蓄電装置2−1bの構成と動作を説明する。蓄電装置2−1bは図13の風力発電装置1−1bと同様に補機を持つ。蓄電装置2−1bの補機の例としては、例えば冷却ファン2−1−5,2−1−6とヒーター2−1−7が挙げられる。冷却ファン2−1−5および2−1−6は、蓄電装置2−1bを構成する二次電池2−1−1,電力変換器2−1−2をそれぞれ冷却する。またヒーター2−1−7は二次電池2−1−1を暖機するために取り付ける。これは二次電池2−1−1は低温状態になるとその充放電性能が低下するため、二次電池2−1−1を暖気し充放電性能を維持するためである。蓄電装置2−1bを構成する補機2−1−5,2−1−6,2−1−7も蓄電装置2−1bが動作していない間も動作し、電力を消費する場合がある。本発明の風力発電所11bは制御器3の補機運転指令HMCに従って、補機2−1−5,2−1−6,2−1−7が運転状態と停止状態を切り替える。制御器3からの補機運転指令HMCが“運転”の場合、補機は通常の運転を継続する。一方補機運転指令HMCが“停止”の場合、補機は運転を停止することで電力の消費を停止する。また、風力発電装置の補機の場合と同様に、負荷の大きなもの、または、停止しても影響が少ないものから、受電電力量が増加しないように、選択的に停止させるようにしても良い。
【0046】
図14に示す蓄電装置2−1bが第一の実施例と異なるもう一つの点は蓄電装置2−1bが制御器3からの指令BMC1に従って回復充電を一時的に停止する点である。
【0047】
回復充電について簡単に説明する。本実施例では二次電池2−1−1として鉛蓄電池を利用する。鉛蓄電池は部分放電状態で放置すると鉛蓄電池の電極の表面に硫酸鉛が結晶化する。鉛蓄電池電極表面の硫酸鉛結晶は、結晶後早い段階で充電を行うことで、再び電解液に溶け出す。しかしながら鉛蓄電池を放電状態で長期間放置すると、鉛蓄電池電極表面上に硬い硫酸鉛結晶が出現する、いわゆるサルフェーション現象が発生する。サルフェーション化した硬い硫酸鉛結晶は溶解度が低いため、再び充放電のサイクルで電解液に溶け出しにくい。このためサルフェーションが発生すると鉛蓄電池の充放電容量が低下し、鉛蓄電池の寿命が短くなる。本実施例のように鉛蓄電池を電力変動緩和を目的として使用する際は、サルフェーション防止のため回復充電(あるいはリセット充電)を行うのが一般的である。回復充電とは2週間に1回程度鉛蓄電池を満充電状態、あるいは過充電状態にすることで、サルフェーションの発生を防止することである。回復充電には1回でおよそ6〜8時間の期間が必要であり、また回復充電中は一定電流・一定電圧充電方式によって充電を行う。このため風力発電システム1bが発電を行っていない場合、回復充電のための電力を電力系統5から充電する場合が発生する。
【0048】
本発明の蓄電装置2−1bは制御器3の指令BMC1に従って運転状態を変化させる。制御器3bからの指令BMC1が“運転”の場合、蓄電装置2−1bは制御器3bからの充放電指令PBC1に従って充放電電力を制御する。一方制御器3bからの指令BMC1が“回復充電”の場合、蓄電装置2−1bは制御器3bから指令PBC1には従わず、回復充電のための一定電流・一定電圧充電を、電力変換器2−1−2が自動で実施する。ここでの“運転”と“回復充電”との切換えは、図17に示す回復充電指令演算器3−9−1のスケジューリング機能により行われる(詳細は後述)。また、制御器3bは風力発電所11bの受電電力量が所定値を超過した場合、指令BMC1を“運転”にするため、蓄電装置2−1bは回復充電を一時的に停止し、充放電指令PBC1に追従する運転状態となる。蓄電装置2−1bが回復充電を一時的に停止することで、電力系統5からの充電電力を低減する。なお風力発電所11bを構成する他の蓄電装置2−2b,2−3bも蓄電装置2−1bと同じ構成と動作をするため、説明は省略する。また、補機の場合と同様に、受電電力量が増加しないように、複数の蓄電装置の回復充電を選択的に停止させるようにしても良い。
【0049】
次に図15を用いて本発明の制御器3bの構成と動作を説明する。制御器3bの構成要素のうち第一の実施例と番号が同一のものは同じ構成要素を示すため、説明は省略する。第二の実施例における制御器3bの第一の実施例との違いは、制御器3bが補機運転指令演算器3−8と蓄電装置運転状態指令演算器3−9を持つ点である。補機運転指令演算器3−8は比較演算器3−7の演算結果に従って、補機の運転状態指令HMCを演算する。また蓄電装置運転状態指令演算器3−9は比較演算器3−7の演算結果に従って、蓄電装置2−1b,2−2b,2−3bの運転状態指令BMC1,BMC2,BMC3を演算する。以降でそれぞれの動作について詳細に説明する。
【0050】
図16は補機運転指令演算器3−8の構成について示した図である。補機運転指令演算器3−8は切り替え器3−8−1を有しており、図15に示した比較演算器3−7の結果に従って、補機の運転状態指令HMCを切り替える。具体的には比較演算器3−7の結果が変動緩和制御(本実施例では0に対応)であれば、補機運転状態指令HMCとして運転を選択し、また比較演算器3−7の結果が受電電力低減制御(本実施例では1に対応)であれば、補機運転状態指令HMCとして停止を選択する。図13および図14に示した風力発電所11bを構成する補機は、補機運転状態指令HMCに従って運転,停止を切り替えるため、受電電力低減制御時は補機が運転を停止し、風力発電所11b全体の消費電力が低減する。
【0051】
次に図17を用いて蓄電装置運転状態指令演算器3−9の構成について説明する。蓄電装置運転状態指令演算器3−9は切り替え器3−9−2,3−9−3,3−9−4を構成要素に持ち、比較演算器3−7の演算結果に従って蓄電装置2−1b,2−2b,2−3bの運転状態指令BMC1,BMC2,BMC3を切り替える。比較演算器3−7の演算結果が変動緩和制御(本実施例では0に対応)の場合、切り替え器3−9−2,3−9−3,3−9−4は回復充電指令演算器3−9−1が演算した運転状態指令BMC1,BMC2,BMC3を選択する。回復充電指令演算器3−9−1は各蓄電装置2−1b,2−2b,2−3bの回復充電を計画的に遂行する役割を担う部分であり、約2週間ごとに回復充電を実施するよう運転状態指令BMC1,BMC2,BMC3を作成する。また回復充電が必要なければ、回復充電指令演算器3−9−1は運転状態指令BMC1,BMC2,BMC3として“運転”を選択する。一方、比較演算器3−7の演算結果が受電電力低減制御(本実施例では1に対応)の場合、切り替え器3−9−2,3−9−3,3−9−4は運転状態指令BMC1,BMC2,BMC3として常に“運転”を選択する。蓄電装置運転状態指令演算器3−9の動作により、受電電力低減制御時は蓄電装置2−1b,2−2b,2−3bが回復充電を一時停止し、電力指令に追従する運転状態となる。このため電力貯蔵装置2b全体としての充電電力が低減するため、風力発電所11bが受電状態になりにくくなる。なお受電電力量WRが再び所定値を下回った場合は、切り替え器3−9−2,3−9−3,3−9−4は再び回復充電指令演算器3−9−1が演算した運転状態指令BMC1,BMC2,BMC3を選択するため、本来回復充電すべきであった蓄電装置2−1b,2−2b,2−3bは再び回復充電状態に遷移し、回復充電を完遂する。
【0052】
以上で説明したように第二の実施例における風力発電所11bは、電力量計10で計測した受電電力量WRが所定値を超過した場合、風力発電所11bを構成する補機が運転を停止することで消費電力を低減し、かつ蓄電装置2−1b,2−2b,2−3bが回復充電を一時停止することで電力貯蔵装置2bの充電電力が低減する。これらの消費電力低減効果と充電電力低減効果が、第一の実施例に示した充放電電力補正効果と組み合わされることにより、より確実に受電電力量が低減できる。このため風力発電所11の運用事業者が、電力系統運用会社(あるいは一般電気事業者)に支払う電気料金が減少し、風力発電所11の事業性が改善する。事業性の改善により風力発電所の導入が容易となり、結果的に自然エネルギーの有効利用に繋がる。
【0053】
なお、上述の実施例では、補機などの運転停止と蓄電装置の回復充電の一時停止の両者の機能を含んでいるが、いずれか一方のみでも良い。また、上述の実施例では、第一の実施例の電力貯蔵装置の充放電電力の制御と、補機などの運転停止や蓄電装置の回復充電の一時停止を組み合わせているが、補機などの運転停止や蓄電装置の回復充電の一時停止の機能だけでも受電電力量低減の効果は期待できる。
【0054】
また、上述の実施例でも、発電所を構成する発電装置として風力発電装置を例に挙げて説明したが、風力発電装置の代わりに太陽光発電装置,太陽熱を利用した発電装置,波力発電装置等の出力が不安定な自然エネルギーを利用した発電装置で構成した発電所、あるいはこれら装置の組み合わせで構成した発電所であっても、電力貯蔵装置を併設した発電所とし、上述の実施例と同様な制御を適用することにより、本発明の効果は同様に発揮できる。
【符号の説明】
【0055】
1,1b 風力発電システム
1−1,1−2,1−3,1−1b,1−2b,1−3b 風力発電装置
1−1−1 ブレード
1−1−2 風速計
1−1−3 ナセル
1−1−4 直流励磁型同期発電機
1−1−5 直流励磁装置
1−1−6,1−1−7,2−1−2 電力変換器
1−1−8,2−1−3,6 変圧器
1−1−9,2−1−4 遮断器
1−1−10,1−1−11 冷却ファン
1−1−12 ナセル角調整電動機
2 電力貯蔵装置
2−1,2−2,2−3,2−1b,2−2b,2−3b 蓄電装置
2−1−1 二次電池
2−1−5,2−1−6 冷却ファン
2−1−7 ヒーター
3,3b 制御器
3−1,3−1a 発電所出力目標値演算器
3−2,3−5−1 減算器
3−3 加算器
3−4 充放電電力指令分配器
3−4−1 除算器
3−5,3−5a 充放電指令補正演算器
3−6,3−8−1,3−9−2,3−9−3,3−9−4 切り替え器
3−7 比較演算器
3−7−1 比較器
3−8 補機運転指令演算器
3−9 蓄電装置運転状態指令演算器
3−9−1 回復充電指令演算器
4 構内負荷
5 電力系統
7,8,9 電力計
10 電力量計
11,11b 風力発電所
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所にかかり、特に、風力発電システムや太陽光発電システムなどの自然エネルギーを利用した発電システムと電力貯蔵装置とを並列に電力系統に接続し、自然エネルギーを利用した発電システムと連携して電力貯蔵装置の充放電を行うようにした電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界に存在する再生可能なエネルギーを電力エネルギーに変換する手段として、風力発電システムや太陽光発電システムが利用されている。風力発電システムや太陽光発電システムのエネルギー源は、時間的に変動する風のエネルギーや太陽光エネルギーであるため、発電システムの発電電力も時間的に変動する。
【0003】
電力系統は、電力需要の大きさに応じて火力発電所や水力発電所,揚水発電所等の発電電力を調整することで、電力需給のバランスを保っている。このため、風力発電システムや太陽光発電システム等の変動の大きな電源が大量に電力系統に連系した場合、需給バランスの調整力不足や、周波数変動の拡大が懸念される。
【0004】
風力発電システムの電力変動が電力系統に与える悪影響を緩和するため、風力発電システムに電力貯蔵装置を併設し、風力発電システムの変動する発電電力を、電力貯蔵装置が充放電することで、電力系統に出力する電力変動を緩和するなどの手段が必要となる。
【0005】
自然エネルギーを利用した発電システムの電力変動を緩和する技術として、特許文献1には風力発電機に電力貯蔵手段(蓄電池)を併設し、風力発電機から電力線へ給電する電力の安定化を図る技術が記載されている。特許文献1では微小単位時間内における風力発電機の発生電力の平均値を求め、この平均値と風力発電機の発生電力とを対比して、電力貯蔵手段から電力線へ給電、または、風力発電機の発生電力を電力貯蔵手段へ給電するようにして、電力線へ給電する電力の安定化を図る方法が記載されている。
【0006】
また特許文献2には自然エネルギー発電機と出力補償装置(電力貯蔵装置)を組合せることで、合成出力電力を目標値(一定値)に一致するように制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−299106号公報(特許第3758359号)
【特許文献2】特開2008−54385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
風力発電システムと電力貯蔵装置で構成される風力発電所において、風力発電システムの風力発電装置周囲の風速が小さい場合、風力発電装置は待機モードに移行するのが一般である。風力発電装置は待機モードであっても、風力発電装置の制御電源や、風力発電装置を構成する機械系は接続した電力系統から電力を受電し、電気エネルギーを消費している。また風力発電装置を構成する変圧器は、風力発電装置が待機モードであっても電力系統に接続している場合が一般的であり、待機モードの間、無負荷損と呼ばれる損失を発生している。変圧器の無負荷損失は、接続した電力系統から供給される。このため風力発電所が受電状態となる状況が発生しうる。
【0009】
また、待機モードではない場合でも発電電力が小さい場合、風力発電装置の制御電源や機械系、変圧器などを含む風力発電所の構内負荷が大きい場合には、受電状態となる状況が発生しうる。
【0010】
風力発電所と電力系統との接続点には電力量計が備えられており、風力発電所の発電電力量を測定すると同時に、受電電力量を測定する。風力発電所を運営する風力発電事業者は電力系統運用会社(あるいは一般電気事業者)に対して、受電電力量に応じた料金(以下電気料金)を支払う必要がある。電気料金の増大は風力発電所の事業性を悪化するため、自然エネルギーを利用した風力発電所導入の妨げとなる。
【0011】
特許文献1、および特許文献2では発電所の出力電力の変動緩和のみを目的としているため、低風速状態が長時間継続した場合、風力発電所の受電電力量が増大する恐れがあるが、この点については何等配慮されていない。
【0012】
風力発電所以外に時間的に変動する自然エネルギーを利用した発電所、例えば、大規模太陽光発電所や波力発電所においても同様な課題が生ずる。即ち、電力貯蔵装置を併設した波力発電所や電力貯蔵装置を併設した太陽光発電所においても待機モードに移行する場合がある。波力発電所であれば波の大きさが小さい期間において、太陽光発電所であれば太陽光が無くなる夜間において待機モードに移行する。波力発電所,太陽光発電所であっても制御機器,変圧器を構成要素にもつため、待機モード期間において受電状態となる状況が発生しうる。また、発電所の構内負荷が発電電力よりも大きく受電状態となる状況が同様に発生しうる。
【0013】
本発明は、自然エネルギー利用発電所において、電力系統運用会社あるいは一般電気事業者からの受電電力量を低減することが可能な自然エネルギー利用発電所を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の自然エネルギー利用発電所(風力発電所など)は、自然エネルギー利用発電システム(風力発電システムなど)と、電力貯蔵装置と、これらを制御する制御器を備え、自然エネルギー利用発電所が電力系統に接続する地点において自然エネルギー利用発電所が一定期間内に受電する受電電力量を測定し、測定した受電電力量が所定値以上と判断した場合、発電所が発電状態又は発電所出力が零となるように、制御器から電力貯蔵装置への充放電電力指令を補正するようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本発明の自然エネルギー利用発電所(風力発電所など)は、自然エネルギー利用発電システム(風力発電システムなど)と、電力貯蔵装置と、これらを制御する制御器を備え、自然エネルギー利用発電所が電力系統に接続する地点において自然エネルギー利用発電所が一定期間内に受電する受電電力量を測定し、測定した受電電力量が所定値以上と判断した場合、電力貯蔵装置への充放電電力を放電方向か充電電力が減少する方向に制御するようにしたことを特徴とする。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明の自然エネルギー利用発電所(風力発電所など)は、自然エネルギー利用発電システム(風力発電システムなど)と、電力貯蔵装置と、これらを制御する制御器を備え、自然エネルギー利用発電所が電力系統に接続する地点において自然エネルギー利用発電所が一定期間内に受電する受電電力量を測定し、測定した受電電力量が所定値以上と判断した場合、発電所が発電状態又は発電所出力が零となるように、発電所を構成する補機が運転している状態の場合には、補機を停止または待機状態に変化させる指令、および/または、電力貯蔵装置の蓄電装置が回復充電を実施している回復充電状態の場合には、回復充電をやめる指令を、制御器から補機および/または蓄電装置に出すようにすることを特徴とする。
【0017】
尚、本発明において、発電所が発電状態とは、電力系統に向かって有効電力を出力する状態をいう。具体的には、例えば、後述の実施例における電力計9の計測値である発電所出力電力PRが零より大きい値となる状態をいう。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、発電所の一定期間内の受電電力量が所定値を超過した場合、発電所が発電状態又は発電所出力が零となるように制御しているので、風力発電所の受電電力量が所定値より大きくなることを防止でき、受電電力量を低減することができる。
【0019】
また、本発明では、発電所の一定期間内の受電電力量が所定値を超過した場合、電力貯蔵装置への充放電電力を放電方向か充電電力が減少する方向に制御するようにしているので、風力発電所の受電電力量が所定値に達してからの増加を抑制することができ、受電電力量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例である風力発電所の構成を示した図。
【図2】本発明の一実施例である風力発電所を構成する風力発電装置の一例を示した図。
【図3】本発明の一実施例である風力発電所を構成する蓄電装置の一例を示した図。
【図4】本発明の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成を示した図。
【図5】本発明の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成要素である発電所出力目標値演算器の一例を示した図。
【図6】本発明の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成要素である発電所出力目標値演算器の別の一例を示した図。
【図7】本発明の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成要素である充放電指令補正演算器の構成を示した図。
【図8】本発明の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成要素である充放電指令補正演算器の別の一例を示した図。
【図9】本発明の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成要素である比較演算器の構成を示した図。
【図10】本発明の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成要素である充放電電力指令分配器の構成を示した図。
【図11】本発明の一実施例である風力発電所の動作例を示した図。
【図12】本発明の他の一実施例である風力発電所の構成を示した図。
【図13】本発明の他の一実施例である風力発電所を構成する風力発電装置の一例を示した図。
【図14】本発明の他の一実施例である風力発電所を構成する蓄電装置の一例を示した図。
【図15】本発明の他の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成を示した図。
【図16】本発明の他の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成要素である補機運転指令演算器の構成を示した図。
【図17】本発明の他の一実施例である風力発電所を構成する制御器の構成要素である蓄電装置運転状態指令演算器の構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施例(第一の実施例)を図1から図11を用いて説明する。
【0022】
本実施例は、自然エネルギー利用発電所として風力発電所に本発明を適用したものである。風力発電所11は、主に風力発電システム1と電力貯蔵装置2、およびこれらを制御する制御器で構成される。風力発電所11はこの他に、電力計7,8,9,電力量計10,変圧器6,構内負荷4等を構成要素に持つ。なお構内負荷4とは、発電所所内で使用する照明,ファンなどで構成する。風力発電システム1および電力貯蔵装置2は同一の電力系統5に送電線、変圧器6を介して電気的に接続し、発電電力を電力系統5に送電する。風力発電システムは1台以上の風力発電装置1−1,1−2,1−3で構成する。図1では風力発電装置として3台の例を示したが、風力発電装置の台数は本発明の効果に影響を与えない。なお本実施例においては、説明のため風力発電装置1台あたりの定格出力電力を2MWと仮定する。よって風力発電所の定格出力電力は6MWとなる。電力貯蔵装置2は蓄電装置2−1,2−2,2−3で構成する。図1では電力貯蔵装置2を構成する蓄電装置が3台の例を示したが、蓄電装置の台数も本発明の効果に影響を与えない。
【0023】
風力発電システム1の発電電力は電力計7で計測され、計測した発電電力値PWは制御器3が検出する(即ち、計測値は制御器3に伝送される。)。同様に風力発電システム1と電力貯蔵装置2の合成電力も電力計8で計測され、計測した合成電力PSysは制御器3が検出する。この他に風力発電所11が電力系統5に接続する地点にも、電力計9および電力量計10を設置し、それぞれ発電所出力電力PRと発電所の受電電力量Whを計測し、制御器3が検出する。なお電力量計10は、所定時間ごとに(例えば30分ごとに)発電所受電電力量WRを0にリセットする。また電力量計10は受電方向の電力量のみを計測し、発電方向の電力量は図1に図示していない別の電力量計で測定する。このため計測した発電所受電電力量WRは常に0以上の値である。制御器3は受信したPW,PSys,PR,WR等から電力貯蔵装置2が充放電すべき充放電電力指令PBC1,PBC2,PBC3を演算し、各蓄電装置2−1,2−2,2−3に送信する。各蓄電装置2−1,2−2,2−3は充放電電力指令PBC1,PBC2,PBC3に従って充放電を行うことで、風力発電所11の出力電力変動を緩和する。以降で本実施形態の風力発電所11を構成する個々の要素について詳細に説明する。
【0024】
図2を用いて風力発電システム1を構成する風力発電装置1−1について詳細に説明する。風力発電装置1−1は、ブレード1−1−1で風を受け、風のエネルギーを回転エネルギーに変換する。回転エネルギーは、発電機に伝達される。図2では発電機として、直流励磁型同期発電機1−1−4を示している。直流励磁型同期発電機1−1−4の固定子端子は、電力変換器1−1−6,電力変換器1−1−7,連系変圧器1−1−8,遮断器1−1−9を介して、電力系統に連系される。また、直流励磁型同期発電機1−1−4の回転子も、励磁装置1−1−5を介して固定子に接続されており、電力変換器(交直)1−1−6と励磁装置1−1−5を制御して可変速運転を実現している。なお図2に示した風力発電装置1−1の他に、永久磁石発電機を用いた風力発電装置,誘導機を用いた風力発電システム等があるが、風力発電装置1−1,1−2,1−3がこれらの風力発電装置、あるいはこれらの風力発電装置の組み合わせによって構成されても、本発明の効果は同じである。
【0025】
次に風力発電所11を構成する蓄電装置2−1,2−2,2−3について、図3を用いて説明する。蓄電装置2−1は、二次電池2−1−1と、電力変換器2−1−2,連系変圧器2−1−3,遮断器2−1−4等で構成される。二次電池2−1−1は複数の二次電池単位セルの直列接続,並列接続で構成する。二次電池2−1−1の端子は電力変換器2−1−2の直流器に電気的に接続する。電力変換器2−1−2は、制御器3からの充放電電力指令PBC1に従って、二次電池2−1−1の充放電電力を制御する。他の蓄電装置2−2,2−3の構成は、図2に示した蓄電装置2−1の構成と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0026】
次に風力発電所11を構成する制御器3の構成について図4から図10を用いて説明する。制御器3はマイクロプロセッサ等で構成され、風力発電システム1の状態量(発電電力値PW)と電力貯蔵装置2の状態量(充電率,温度,充放電電力など。図示省略。)をそれぞれ検出し、蓄電装置2−1,2−2,2−3が充放電すべき充放電電力の指令PBC1,PBC2,PBC3を演算する役割を担う。以下で制御器3の具体的な動作について詳細に説明する。
【0027】
制御器3は電力計7で計測した風力発電システム1の発電電力計測値PWから、発電所出力目標値演算器3−1において発電所が出力すべき発電所出力の目標値PSysTを演算する。発電所出力の目標値PSysTは、風力発電システム1の発電電力PWに対して、PWの時間的な変動を緩和した値として決定する。発電所出力目標値演算器3−1の具体的な動作の一例を、図5を用いて説明する。図5に示した発電所出力目標値演算器3−1は、風力発電システム発電電力PWに一次遅れ演算(あるいは一次遅れフィルタ)を施すことで、変動を平滑化した発電所出力目標値PSysTを演算する。なお図5では一次遅れ時定数をTmにした例を示している。
【0028】
発電所出力目標値演算器3−1の別の構成例を図6に示す。図6に示した発電所出力目標値演算器3−1aは、風力発電システム発電電力PWに対して出力可能な上限値と下限値を設け、上下限で制限した値を発電所出力目標値PSysTとして演算する。上限値と下限値は過去に測定した合成電力PSysから演算する。所定の期間(例えば19分間)前から、現在の時刻までの、風力発電システムの出力電力PSysの出力変動幅から、次の制御期間(例えば1分間)におけるPSysの出力可能範囲(上限値と下限値)を設定する。例えば、所定の期間の過去におけるPSysの最小値に10%を加えたものを上限値に設定し、所定の期間の過去におけるPSysの最大値から10%を減算した値を下限値に設定する。なお発電所出力目標値演算器3−1aにおけるこの上限値および下限値の演算方法は、本発明者等が以前に提案した特開2009−079559号公報においてより詳細に説明されている。
【0029】
本実施例では発電所出力目標値PSysTの演算方式として図5,図6に示した二例を挙げたが、いずれの方式においても風力発電システムの発電電力PWの時間的な変動を緩和した発電所出力目標値PSysTを演算するという効果は達せられており、いずれの手法を用いても本発明の効果は発揮される。また同様に風力発電システムの発電電力PWの時間的な変動を緩和する発電所出力目標値PSysTを演算する手段であれば、本実施例に示した以外の発電所出力目標値演算方式であっても本発明の効果は発揮できる。
【0030】
図4に示す減算器3−2は、発電所出力目標値演算器3−1が演算した発電所出力目標値PSysTから風力発電システム発電電力PWを減算することで、変動緩和のための充放電電力指令PBMitiCを決定する。変動緩和のための充放電電力指令PBMitiCは、風力発電システムの発電電力PWの変動を緩和するために電力貯蔵装置2が充放電すべき充放電電力値を表す値である。
【0031】
次に制御器3における受電電力量を考慮した充放電電力指令を補正する方法について説明する。図7は制御器3を構成する充放電指令補正演算器3−5の構成を示したものである。充放電指令補正演算器3−5は減算器3−5−1において、所定値(図7中では0kW)から風力発電所出力電力検出値PRを減算することで、補正電力指令PBHC1を演算する。この図7の例では、所定値を0kWと設定しているので、風力発電所出力電力検出値PRに対応する電力を補正電力指令PBHC1として出力している。後述の図11に示すように、待機状態で発電電力PWが零となった場合には、変動緩和のための充放電電力指令PBMitiCも零となり、風力発電所出力電力検出値PRに対応する電力を蓄電装置に放電させ、発電所出力が零、そして、受電電力も零となるようにする。これにより受電電力量が所定値より増大しなくなる(詳細は後述)。
【0032】
充放電指令補正演算器3−5の別の構成例を示したものが図8である。図8に示した充放電指令補正演算器3−5aは補正電力指令PBHC1として固定値を設定する。補正電力指令PBHC1の固定値は、風力発電所全体が消費する最大消費電力値より大きな値に設定する。例えば風力発電所全体の最大消費電力量が100kWであった場合、補正電力指令PBHC1の固定値はそれよりも大きな値(本実施例では200kW)とする。即ち、図8の例では、受電する電力は発電所の構内負荷に略対応するので、それに余裕を持たせた値を補正電力指令PBHC1としている。この場合は、発電所が有効電力を電力系統に出力することになる(発電所が発電状態となる。)。
【0033】
図4に示した比較演算器3−7は、充放電電力を補正するか否かの判断を行う。比較演算器3−7の構成について図9を用いて説明する。比較演算器3−7を構成する比較器3−7−1は、風力発電所受電電力量WRと予め定めた所定値(本実施例では30kWhとする)の大きさを比較する。この所定値は、構内負荷の電力の大きさと、蓄電池容量,許容できる受電料金に応じて適宜定める。風力発電所受電電力量WRが所定値よりも小さい場合は、通常の変動緩和制御を継続するような信号(本実施例では0)を出力する。一方風力発電所受電電力量WRが所定値以上の場合は、受電電力量のさらなる増大を防止するため、変動緩和制御から受電電力低減制御に移行するような信号(本実施例では1)を出力する。比較演算器3−7が出力した信号は図4に示した切り換え器3−6が受信する。切り換え器3−6は、比較演算器3−7の信号に応じて、変動緩和制御時は0kW指令を、受電電力低減制御時は充放電指令補正演算器3−5の演算結果PBHC1を選択し、充放電補正指令PBHCとして出力する。
【0034】
切り換え器3−6が出力した充放電補正指令PBHCは、図4に示した加算器3−3が充放電電力指令PBMitiCと足し合わせることで、電力貯蔵装置2が充放電すべき充放電指令PBCとなる。なお充放電補正指令PBHCは常に0以上の値なので、合成された充放電指令PBCは充電電力が減少する方向、あるいは放電方向電力が増加する方向に補正される。
【0035】
また、電力貯蔵装置2は一般に、複数台の蓄電装置で構成されるため、充放電指令PBCを各蓄電装置に分配する必要がある。図4に示した充放電電力指令分配器3−4は、充放電指令PBCを分配する役割を持つ。充放電電力指令分配器3−4の構成について、図10を用いて説明する。充放電電力指令分配器3−4は、充放電指令PBCを蓄電装置の台数(本実施例では3)で除算することで、各蓄電装置が充放電すべき充放電電力指令PBC1,PBC2,PBC3を演算する。図10に示した充放電電力指令分配器3−4は、充放電指令PBCを複数の蓄電装置に均等に分配するが、分配の方法として異なる方式を採用しても本発明の効果は失われない。充放電電力指令PBCの他の振り分け方法としては、本発明者等が以前に提案した方式(PCT/JP2009/004488)等がある。
【0036】
次に本発明の風力発電所の動作について、図11を用いて説明する。図11は本発明の風力発電所の電力,電力量の時間変化を示した図である。図11(a)は風力発電システムの発電電力PWと合成電力PSysの時間変化を示した図である。時刻0:50以前では、風力発電システム1は発電動作をしている。風力発電所を構成する電力貯蔵装置2は図11(b)に示すような充放電動作を行うことで、合成出力PSysの変動を緩和している。一方時刻0:50以降は風力発電装置1−1,1−2,1−3周辺での風速が小さくなったため、風力発電装置1−1,1−2,1−3は待機モードに移行する。風力発電装置1−1,1−2,1−3は待機モードであっても、風力発電装置1−1,1−2,1−3を構成する制御電源や機械系電源は常に電力を消費する。また図1に示した変圧器6,構内負荷4も電力を消費しており、図11(c)に示したように接続点電力PRが受電(負値)になる。風力発電所11が受電状態となるため、図11(d)に示した電力量計10が計測した受電電力量WRも増加する。なお受電電力量WRは所定時間ごとに(本実施例では30分ごとに)0にリセットする。受電電力量WRが大きくなると、風力発電所11を運営する風力発電事業者は、電力系統運用会社(あるいは一般電気事業者)に支払う電気料金増大するため、受電電力量WRが大きくならないことが望ましい。本実施例の風力発電所11は構成要素である制御器3が受電電力量WRを観測しており、WRが所定値(本実施例では30kWh)に達した時点で、図11(e)に示すように比較演算器3−7が受電電力低減制御への切り換え信号を出力する。図4に示したように切り換え信号により、電力貯蔵装置2の充放電電力指令が補正をうけ、制御器3は図11(c)に示すように風力発電所出力電力PRを0付近に制御する。風力発電所出力電力PRが零あるいは正となるため、受電電力量WRは所定値30kWhより増大しなくなる。受電電力量WRは一定時間ごとに(本実施例では30分ごとに)0にリセットされるため(国内電力会社の受電電力量の計測形態は、現状、30分でリセットされるようになっている。)、時刻1:30に受電電力低減制御は変動緩和制御に移行する。変動緩和制御移行後、受電電力量WRが所定値30kWhより大きくなれば、再び受電電力低減制御に移行する。
【0037】
なお図11では、風力発電装置1−1,1−2,1−3が待機している状況において、発電所が受電状態になる状況を示したが、風力発電装置1−1,1−2,1−3が発電動作を実施している場合であっても、風力発電装置1−1,1−2,1−3の発電電力PWが小さく、かつ発電所を構成する変圧器6の損失や発電所を構成する補機の損失が大きい場合、風力発電所11が受電状態(PRが負)になる状況が発生する場合がある。このとき蓄電装置2−1,2−2,2−3が変動緩和のため放電している場合(PBC1,PBC2,PBC3が正)も発生しうるが、この場合であっても本発明の効果は実現される。具体的には制御器3が受電電力量WRを観測しており、WRが所定値(本実施では30kWh)に達した時点で、図4に示した比較演算器3−7が受電電力低減制御への切り換え信号を出力する。切り換え器3−6の動作により、変動緩和のための放電指令PBMitiCに補正電力指令PBHCがさらに加算される。このため蓄電装置2−1,2−2,2−3の放電電力が、受電電力低減制御へ移行したことにより増大するため、発電所の受電電力を0以下に制御することが可能となる。
【0038】
また、上述の受電電力量低減制御では、蓄電装置2−1,2−2,2−3が放電状態になる例について示したが、蓄電装置2−1,2−2,2−3の充電電力を低減することにより、本発明の目的を達することもできる。具体的には風力発電装置1−1,1−2,1−3が発電動作を実施している場合であって、風力発電装置1−1,1−2,1−3の発電電力PWが小さく、かつ発電所を構成する変圧器6の損失や発電所を構成する補機の損失が大きい場合、風力発電所11が受電状態(PRが負)になる状況が発生する。このとき蓄電装置2−1,2−2,2−3が変動緩和のため充電している場合(PBC1,PBC2,PBC3が負)も発生しうる。この際WRが所定値(本実施では30kWh)に達した時点で、図4に示した比較演算器3−7が受電電力低減制御への切り換え信号を出力する。切り換え器3−6の動作により、変動緩和のための放電指令PBMitiC(負値)に補正電力指令PBHC(正値)が加算されるため、蓄電装置2−1,2−2,2−3の充放電電力指令PBC1,PBC2,PBC3が放電側(正値)に近づく。この際補正電力指令PBHC(正値)が小さな値であれば、充放電電力指令PBC1,PBC2,PBC3は負値のままであり、結果的に蓄電装置2−1,2−2,2−3の充電電力が減る方向に補正される。このように蓄電装置の充電電力が減少するように充放電電力指令を補正するのみだけでも、本発明の効果が得られる。なお補正電力指令PBHC(正値)が大きく、充放電電力指令PBC1,PBC2,PBC3が正値(放電側)になる場合については、先に記載した動作と同一である。
【0039】
本実施例の風力発電所11は風力発電所の受電電力量WRを予め定めた所定値と比較し、受電電力量WRが所定値以上になった場合は、風力発電所11を構成する電力貯蔵装置2の充放電電力を補正する。本発明の効果により、風力発電所11の受電電力量が所定値より大きくなることを回避できる。このため風力発電所11の運用事業者が、電力系統運用会社(あるいは一般電気事業者)に支払う電気料金が減少し、風力発電所11の事業性が改善する。事業性の改善により風力発電所の導入が容易となり、結果的に自然エネルギーの有効利用に繋がる。
【0040】
また、上述の実施例では、発電所の一定期間内の受電電力量が所定値を超過した場合、発電所が発電状態又は発電所出力が零となるように電力貯蔵装置への充放電電力を制御して、風力発電所の受電電力量が所定値より大きくなることを防止し、受電電力量を低減するようにしているが、所定値を低めに設定しておけば、発電所の一定期間内の受電電力量が所定値を超過した場合に、電力貯蔵装置への充放電電力を放電方向か充電電力が減少する方向に制御することにより、風力発電所の受電電力量が所定値に達してからの増加を抑制し、一定期間内に本来の所定値に達するのを防止できる。これにより、受電電力量の低減が図れる。
【0041】
また、上述の実施例では発電所を構成する発電装置として風力発電装置を例に挙げて説明したが、風力発電装置の代わりに太陽光発電装置,太陽熱を利用した発電装置,波力発電装置等の出力が不安定な自然エネルギーを利用した発電装置で構成した発電所、あるいはこれら装置の組み合わせで構成した発電所であっても、電力貯蔵装置を併設した発電所とし、上述の実施例と同様な制御を適用することにより、本発明の効果は同様に発揮できる。
【0042】
本発明の他の実施例(第二の実施例)について図12から図17を用いて説明する。以降の図中で第一の実施例と番号が同一のものは、同じ構成要素を示し、詳細な説明は省略する。
【0043】
図12は本発明の風力発電所11bの構成を示した図である。第二の実施例の第一の実施例との違いは、風力発電所11bを構成する制御器3bが、風力発電所11bを構成する補機の運転状態を決定し、運転状態に応じて補機が運転を停止する点である。さらに風力発電所11bを構成する蓄電装置2−1b,2−2b,2−3bが制御器3bの指令に応じて、回復充電状態と通常運転状態を切り替える点である。以下で本発明の風力発電所11bの構成要素について詳細に説明する。
【0044】
図13は本発明の風力発電所11bを構成する風力発電装置1−1bを示す。風力発電装置1−1bの第一の実施例との違いは、風力発電装置1−1bを構成する補機が、制御器3からの指令HMCに応じて、運転,停止状態を切り替える点である。風力発電装置1−1bには、電力を消費しながら動作する補機が存在する。補機の例として例えば電力変換器1−1−6,1−1−7を冷却するための冷却ファン1−1−10,1−1−11が存在する。冷却ファン1−1−10,1−1−11は送風により電力変換器1−1−6,1−1−7を冷却する。冷却ファン1−1−10,1−1−11は風力発電装置1−1bの周囲の風速が小さく、風力発電装置1−1bが発電運転していない際でも動作する場合があり、電力を消費する。補機のほかの例として、ナセル角を変化させるナセル角調整電動機1−1−12がある。ナセル角調整電動機1−1−12はナセル1−1−3を水平面内で回転させる役割を担う。ナセル角調整電動機1−1−12も、風力発電装置1−1bが発電運転していない間も動作し、電力を消費する場合がある。風力発電装置1−1bが発電運転していない場合は、これらの補機の中には、必ずしも動作する必要がなく、受電電力量低減のために停止しても発電所の運用に大きな影響を与えない機器がある。本発明の風力発電所11bは、これら補機が制御器3からの補機運転指令HMCにより、運転状態を切り替える。つまり制御器3からの補機運転指令HMCが“運転”の場合、補機は通常の運転を継続する。一方補機運転指令HMCが“停止”の場合、補機は運転を停止する(若しくは待機状態にする)ことで電力の消費を停止(若しくは低減)する。なお風力発電所11bを構成する他の風力発電装置1−2b,1−3bも風力発電装置1−1bと同じ構成と動作をするため、説明は省略する。また、この例では、全ての補機を停止しているが、負荷の大きなもの、または、停止しても影響が少ないものから、受電電力量が増加しないように、選択的に補機を停止させるようにしても良い。
【0045】
次に図14を用いて本発明の蓄電装置2−1bの構成と動作を説明する。蓄電装置2−1bは図13の風力発電装置1−1bと同様に補機を持つ。蓄電装置2−1bの補機の例としては、例えば冷却ファン2−1−5,2−1−6とヒーター2−1−7が挙げられる。冷却ファン2−1−5および2−1−6は、蓄電装置2−1bを構成する二次電池2−1−1,電力変換器2−1−2をそれぞれ冷却する。またヒーター2−1−7は二次電池2−1−1を暖機するために取り付ける。これは二次電池2−1−1は低温状態になるとその充放電性能が低下するため、二次電池2−1−1を暖気し充放電性能を維持するためである。蓄電装置2−1bを構成する補機2−1−5,2−1−6,2−1−7も蓄電装置2−1bが動作していない間も動作し、電力を消費する場合がある。本発明の風力発電所11bは制御器3の補機運転指令HMCに従って、補機2−1−5,2−1−6,2−1−7が運転状態と停止状態を切り替える。制御器3からの補機運転指令HMCが“運転”の場合、補機は通常の運転を継続する。一方補機運転指令HMCが“停止”の場合、補機は運転を停止することで電力の消費を停止する。また、風力発電装置の補機の場合と同様に、負荷の大きなもの、または、停止しても影響が少ないものから、受電電力量が増加しないように、選択的に停止させるようにしても良い。
【0046】
図14に示す蓄電装置2−1bが第一の実施例と異なるもう一つの点は蓄電装置2−1bが制御器3からの指令BMC1に従って回復充電を一時的に停止する点である。
【0047】
回復充電について簡単に説明する。本実施例では二次電池2−1−1として鉛蓄電池を利用する。鉛蓄電池は部分放電状態で放置すると鉛蓄電池の電極の表面に硫酸鉛が結晶化する。鉛蓄電池電極表面の硫酸鉛結晶は、結晶後早い段階で充電を行うことで、再び電解液に溶け出す。しかしながら鉛蓄電池を放電状態で長期間放置すると、鉛蓄電池電極表面上に硬い硫酸鉛結晶が出現する、いわゆるサルフェーション現象が発生する。サルフェーション化した硬い硫酸鉛結晶は溶解度が低いため、再び充放電のサイクルで電解液に溶け出しにくい。このためサルフェーションが発生すると鉛蓄電池の充放電容量が低下し、鉛蓄電池の寿命が短くなる。本実施例のように鉛蓄電池を電力変動緩和を目的として使用する際は、サルフェーション防止のため回復充電(あるいはリセット充電)を行うのが一般的である。回復充電とは2週間に1回程度鉛蓄電池を満充電状態、あるいは過充電状態にすることで、サルフェーションの発生を防止することである。回復充電には1回でおよそ6〜8時間の期間が必要であり、また回復充電中は一定電流・一定電圧充電方式によって充電を行う。このため風力発電システム1bが発電を行っていない場合、回復充電のための電力を電力系統5から充電する場合が発生する。
【0048】
本発明の蓄電装置2−1bは制御器3の指令BMC1に従って運転状態を変化させる。制御器3bからの指令BMC1が“運転”の場合、蓄電装置2−1bは制御器3bからの充放電指令PBC1に従って充放電電力を制御する。一方制御器3bからの指令BMC1が“回復充電”の場合、蓄電装置2−1bは制御器3bから指令PBC1には従わず、回復充電のための一定電流・一定電圧充電を、電力変換器2−1−2が自動で実施する。ここでの“運転”と“回復充電”との切換えは、図17に示す回復充電指令演算器3−9−1のスケジューリング機能により行われる(詳細は後述)。また、制御器3bは風力発電所11bの受電電力量が所定値を超過した場合、指令BMC1を“運転”にするため、蓄電装置2−1bは回復充電を一時的に停止し、充放電指令PBC1に追従する運転状態となる。蓄電装置2−1bが回復充電を一時的に停止することで、電力系統5からの充電電力を低減する。なお風力発電所11bを構成する他の蓄電装置2−2b,2−3bも蓄電装置2−1bと同じ構成と動作をするため、説明は省略する。また、補機の場合と同様に、受電電力量が増加しないように、複数の蓄電装置の回復充電を選択的に停止させるようにしても良い。
【0049】
次に図15を用いて本発明の制御器3bの構成と動作を説明する。制御器3bの構成要素のうち第一の実施例と番号が同一のものは同じ構成要素を示すため、説明は省略する。第二の実施例における制御器3bの第一の実施例との違いは、制御器3bが補機運転指令演算器3−8と蓄電装置運転状態指令演算器3−9を持つ点である。補機運転指令演算器3−8は比較演算器3−7の演算結果に従って、補機の運転状態指令HMCを演算する。また蓄電装置運転状態指令演算器3−9は比較演算器3−7の演算結果に従って、蓄電装置2−1b,2−2b,2−3bの運転状態指令BMC1,BMC2,BMC3を演算する。以降でそれぞれの動作について詳細に説明する。
【0050】
図16は補機運転指令演算器3−8の構成について示した図である。補機運転指令演算器3−8は切り替え器3−8−1を有しており、図15に示した比較演算器3−7の結果に従って、補機の運転状態指令HMCを切り替える。具体的には比較演算器3−7の結果が変動緩和制御(本実施例では0に対応)であれば、補機運転状態指令HMCとして運転を選択し、また比較演算器3−7の結果が受電電力低減制御(本実施例では1に対応)であれば、補機運転状態指令HMCとして停止を選択する。図13および図14に示した風力発電所11bを構成する補機は、補機運転状態指令HMCに従って運転,停止を切り替えるため、受電電力低減制御時は補機が運転を停止し、風力発電所11b全体の消費電力が低減する。
【0051】
次に図17を用いて蓄電装置運転状態指令演算器3−9の構成について説明する。蓄電装置運転状態指令演算器3−9は切り替え器3−9−2,3−9−3,3−9−4を構成要素に持ち、比較演算器3−7の演算結果に従って蓄電装置2−1b,2−2b,2−3bの運転状態指令BMC1,BMC2,BMC3を切り替える。比較演算器3−7の演算結果が変動緩和制御(本実施例では0に対応)の場合、切り替え器3−9−2,3−9−3,3−9−4は回復充電指令演算器3−9−1が演算した運転状態指令BMC1,BMC2,BMC3を選択する。回復充電指令演算器3−9−1は各蓄電装置2−1b,2−2b,2−3bの回復充電を計画的に遂行する役割を担う部分であり、約2週間ごとに回復充電を実施するよう運転状態指令BMC1,BMC2,BMC3を作成する。また回復充電が必要なければ、回復充電指令演算器3−9−1は運転状態指令BMC1,BMC2,BMC3として“運転”を選択する。一方、比較演算器3−7の演算結果が受電電力低減制御(本実施例では1に対応)の場合、切り替え器3−9−2,3−9−3,3−9−4は運転状態指令BMC1,BMC2,BMC3として常に“運転”を選択する。蓄電装置運転状態指令演算器3−9の動作により、受電電力低減制御時は蓄電装置2−1b,2−2b,2−3bが回復充電を一時停止し、電力指令に追従する運転状態となる。このため電力貯蔵装置2b全体としての充電電力が低減するため、風力発電所11bが受電状態になりにくくなる。なお受電電力量WRが再び所定値を下回った場合は、切り替え器3−9−2,3−9−3,3−9−4は再び回復充電指令演算器3−9−1が演算した運転状態指令BMC1,BMC2,BMC3を選択するため、本来回復充電すべきであった蓄電装置2−1b,2−2b,2−3bは再び回復充電状態に遷移し、回復充電を完遂する。
【0052】
以上で説明したように第二の実施例における風力発電所11bは、電力量計10で計測した受電電力量WRが所定値を超過した場合、風力発電所11bを構成する補機が運転を停止することで消費電力を低減し、かつ蓄電装置2−1b,2−2b,2−3bが回復充電を一時停止することで電力貯蔵装置2bの充電電力が低減する。これらの消費電力低減効果と充電電力低減効果が、第一の実施例に示した充放電電力補正効果と組み合わされることにより、より確実に受電電力量が低減できる。このため風力発電所11の運用事業者が、電力系統運用会社(あるいは一般電気事業者)に支払う電気料金が減少し、風力発電所11の事業性が改善する。事業性の改善により風力発電所の導入が容易となり、結果的に自然エネルギーの有効利用に繋がる。
【0053】
なお、上述の実施例では、補機などの運転停止と蓄電装置の回復充電の一時停止の両者の機能を含んでいるが、いずれか一方のみでも良い。また、上述の実施例では、第一の実施例の電力貯蔵装置の充放電電力の制御と、補機などの運転停止や蓄電装置の回復充電の一時停止を組み合わせているが、補機などの運転停止や蓄電装置の回復充電の一時停止の機能だけでも受電電力量低減の効果は期待できる。
【0054】
また、上述の実施例でも、発電所を構成する発電装置として風力発電装置を例に挙げて説明したが、風力発電装置の代わりに太陽光発電装置,太陽熱を利用した発電装置,波力発電装置等の出力が不安定な自然エネルギーを利用した発電装置で構成した発電所、あるいはこれら装置の組み合わせで構成した発電所であっても、電力貯蔵装置を併設した発電所とし、上述の実施例と同様な制御を適用することにより、本発明の効果は同様に発揮できる。
【符号の説明】
【0055】
1,1b 風力発電システム
1−1,1−2,1−3,1−1b,1−2b,1−3b 風力発電装置
1−1−1 ブレード
1−1−2 風速計
1−1−3 ナセル
1−1−4 直流励磁型同期発電機
1−1−5 直流励磁装置
1−1−6,1−1−7,2−1−2 電力変換器
1−1−8,2−1−3,6 変圧器
1−1−9,2−1−4 遮断器
1−1−10,1−1−11 冷却ファン
1−1−12 ナセル角調整電動機
2 電力貯蔵装置
2−1,2−2,2−3,2−1b,2−2b,2−3b 蓄電装置
2−1−1 二次電池
2−1−5,2−1−6 冷却ファン
2−1−7 ヒーター
3,3b 制御器
3−1,3−1a 発電所出力目標値演算器
3−2,3−5−1 減算器
3−3 加算器
3−4 充放電電力指令分配器
3−4−1 除算器
3−5,3−5a 充放電指令補正演算器
3−6,3−8−1,3−9−2,3−9−3,3−9−4 切り替え器
3−7 比較演算器
3−7−1 比較器
3−8 補機運転指令演算器
3−9 蓄電装置運転状態指令演算器
3−9−1 回復充電指令演算器
4 構内負荷
5 電力系統
7,8,9 電力計
10 電力量計
11,11b 風力発電所
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然エネルギー発電システムと、電力貯蔵装置と、前記電力貯蔵装置の充放電電力を制御する制御器とを有する電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所であって、
前記発電所が電力系統に接続する地点において前記発電所が前記電力系統から受電する受電電力量を測定する電力量計を備え、
前記制御器は、
前記電力量計が測定した受電電力量を受信し、前記受電電力量を所定値と比較し、前記受電電力量が前記所定値以上であると判断した場合に、前記発電所が発電状態又は前記発電所の出力電力が零となるように、前記電力貯蔵装置の充放電電力を補正することを特徴とする電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所。
【請求項2】
自然エネルギー発電システムと、電力貯蔵装置と、前記電力貯蔵装置の充放電電力を制御する制御器とを有する電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所であって、
前記発電所が電力系統に接続する地点において前記発電所が前記電力系統から受電する受電電力量を測定する電力量計を備え、
前記制御器は、
前記電力量計が測定した受電電力量を受信し、前記受電電力量を所定値と比較し、前記受電電力量が前記所定値以上であると判断した場合に、前記電力貯蔵装置の充放電電力を充電電力が減少する方向かあるいは放電方向に制御することを特徴とする電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所。
【請求項3】
自然エネルギー発電システムと、電力貯蔵装置と、前記電力貯蔵装置の充放電電力を制御する制御器とを有する電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所であって、
前記発電所が電力系統に接続する地点において前記発電所が前記電力系統から受電する受電電力量を測定する電力量計を備え、
前記電力貯蔵装置は複数の蓄電装置で構成され、
前記制御器は、
前記複数の蓄電装置に対して回復充電を実施する回復充電状態と充放電指令に追従する運転状態を切り替える信号をそれぞれ出力し、前記受電電力量が前記所定値以上であると判断した場合に、前記複数の蓄電装置のうち回復充電状態である蓄電装置を前記制御器からの前記充放電指令に追従する運転状態に変化させることを特徴とする電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所。
【請求項4】
自然エネルギー発電システムと、電力貯蔵装置と、前記電力貯蔵装置の充放電電力を制御する制御器とを有する電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所であって、
前記発電所が電力系統に接続する地点において前記発電所が前記電力系統から受電する受電電力量を測定する電力量計を備え、
前記発電所は、発電所を構成する複数の補機を有し、該複数の補機は前記制御器から指令に基づき、運転状態,停止状態あるいは待機状態のいずれかの状態に制御され、
前記制御器は、
前記受電電力量が前記所定値以上であると判断した場合は、前記複数の補機の運転状態を停止あるいは待機状態に変化させることを特徴とする電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所。
【請求項5】
請求項4に記載の電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所において、
前記自然エネルギー利用発電システムは風力発電システムであり、
前記複数の補機は、前記風力発電システムの冷却ファン,前記風力発電システムの機械系の駆動電源,前記電力貯蔵装置の冷却ファン、及び前記電力貯蔵装置のヒーターの何れか一つを少なくとも含むことを特徴とする電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所。
【請求項6】
請求項1から請求項4の何れかに記載の電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所において、
前記自然エネルギー利用発電システムは、風力発電装置,太陽光発電装置,太陽熱発電装置,波力発電装置のいずれか、あるいはこれらの組み合わせで構成する発電システムであることを特徴とする電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所。
【請求項1】
自然エネルギー発電システムと、電力貯蔵装置と、前記電力貯蔵装置の充放電電力を制御する制御器とを有する電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所であって、
前記発電所が電力系統に接続する地点において前記発電所が前記電力系統から受電する受電電力量を測定する電力量計を備え、
前記制御器は、
前記電力量計が測定した受電電力量を受信し、前記受電電力量を所定値と比較し、前記受電電力量が前記所定値以上であると判断した場合に、前記発電所が発電状態又は前記発電所の出力電力が零となるように、前記電力貯蔵装置の充放電電力を補正することを特徴とする電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所。
【請求項2】
自然エネルギー発電システムと、電力貯蔵装置と、前記電力貯蔵装置の充放電電力を制御する制御器とを有する電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所であって、
前記発電所が電力系統に接続する地点において前記発電所が前記電力系統から受電する受電電力量を測定する電力量計を備え、
前記制御器は、
前記電力量計が測定した受電電力量を受信し、前記受電電力量を所定値と比較し、前記受電電力量が前記所定値以上であると判断した場合に、前記電力貯蔵装置の充放電電力を充電電力が減少する方向かあるいは放電方向に制御することを特徴とする電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所。
【請求項3】
自然エネルギー発電システムと、電力貯蔵装置と、前記電力貯蔵装置の充放電電力を制御する制御器とを有する電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所であって、
前記発電所が電力系統に接続する地点において前記発電所が前記電力系統から受電する受電電力量を測定する電力量計を備え、
前記電力貯蔵装置は複数の蓄電装置で構成され、
前記制御器は、
前記複数の蓄電装置に対して回復充電を実施する回復充電状態と充放電指令に追従する運転状態を切り替える信号をそれぞれ出力し、前記受電電力量が前記所定値以上であると判断した場合に、前記複数の蓄電装置のうち回復充電状態である蓄電装置を前記制御器からの前記充放電指令に追従する運転状態に変化させることを特徴とする電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所。
【請求項4】
自然エネルギー発電システムと、電力貯蔵装置と、前記電力貯蔵装置の充放電電力を制御する制御器とを有する電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所であって、
前記発電所が電力系統に接続する地点において前記発電所が前記電力系統から受電する受電電力量を測定する電力量計を備え、
前記発電所は、発電所を構成する複数の補機を有し、該複数の補機は前記制御器から指令に基づき、運転状態,停止状態あるいは待機状態のいずれかの状態に制御され、
前記制御器は、
前記受電電力量が前記所定値以上であると判断した場合は、前記複数の補機の運転状態を停止あるいは待機状態に変化させることを特徴とする電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所。
【請求項5】
請求項4に記載の電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所において、
前記自然エネルギー利用発電システムは風力発電システムであり、
前記複数の補機は、前記風力発電システムの冷却ファン,前記風力発電システムの機械系の駆動電源,前記電力貯蔵装置の冷却ファン、及び前記電力貯蔵装置のヒーターの何れか一つを少なくとも含むことを特徴とする電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所。
【請求項6】
請求項1から請求項4の何れかに記載の電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所において、
前記自然エネルギー利用発電システムは、風力発電装置,太陽光発電装置,太陽熱発電装置,波力発電装置のいずれか、あるいはこれらの組み合わせで構成する発電システムであることを特徴とする電力貯蔵装置を併設した自然エネルギー利用発電所。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−125171(P2011−125171A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282361(P2009−282361)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】
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