説明

電力量計用バイパス工具

【課題】 第1回目の電力量計の交換作業や修理作業時から、危険性を伴う電線の抜き差し作業を全く必要とすることなく、無停電状態を維持しながら、極めて迅速に短時間に電力量計の交換作業や修理作業を完了することができる電力量計用バイパス工具の提供。
【解決手段】 一端に複数の入力端子aと複数の出力端子bとを備え、この表面を覆っている危険防止カバーcを除去すると、これらの各端子a,bを露出させることができる構造とした電力量計Aを対象として使用する工具であって、全体を絶縁構造とした横長の容器本体1の内部に導電体製の2つのバイパス金具2,3を互いに非接触状態に収容し、これら両金具2,3のそれぞれに前記電力量計Aにおける入力端子aの一つと出力端子bの一つとに接触させる接触ピン4,4を連結し、その先端部を容器本体1の背面側に突出させ、該容器本体1の長手方向両端近く部分に固定用ピン穴6,6を形成したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力使用量を計量する電力量計の電線接続部側に取り付けて、電力量計を無停電交換するために使用するバイパス工具である。
【背景技術】
【0002】
従来、一般家庭や各種の事業所で使用されている電力量は、各戸や各事業所毎に個別に取り付けられた電力量計によって使用量が計測され、その計測データに基づいて電力料金が電力会社に支払われている。したがって、この電力量計は誤作動なく常に正確な電力量を計量できるものとしておかなければならないものであり、この正確さを維持し続けることができるものでなければならない。そのため、電力量計は、約10年程度のサイクルで新品と交換されているのが現状である。
【0003】
しかしながら、この定期交換時や補修時には、一時的にではあっても、電力量計に接続されている外部電線と室内引込用の内部電線とを、電力量計から取り外さなければならない。殊に、外部電線は活線であるから常に危険性を孕んでいるため、事故を伴わないように各電線を絶縁しなければならないため相当な時間を必要としていた。そのため、何10分間か又はそれ以上の時間の停電が余儀なくされ、電力使用者に対して大変な迷惑をかけていた。このことは、事業所は言うまでもなく一般家庭であっても、パソコン等を使用してネットワーク通信等を行っている場合や、時刻設定されている各種の機器には、この電力量計の交換時や修理時の停電によって生ずる負担は決して小さいものとはいえない。
【0004】
そこで、このような課題を解決することを目的とした技術として、下記特許文献1及び2に記載のような、電力量計における電線接続用入出力端子に対して電線を取り外した後に差し込む突起状接続部と、取り外した電線を差し込む穴状電線接続部とを形成した端子金具を複数対備えたアダプタ本体と、このアダプタ本体を利用して対応する個々の入出力端子どうしを短絡状態と非短絡状態とに切り替え操作するコネクタとによって、第2回目以降の電力量計の無停電交換や無停電修理を行うことを可能とした技術が提案され、既に特許されている。
【特許文献1】特許第3079289号公報
【特許文献2】特許第3404553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの先行技術の電力量計アダプタにあっては、第1回目の電力量計の交換時や修理時には、前記のように、電力量計の電線接続用入出力端子から一旦電線を取り外して、その取り外した電線穴に端子金具の突起状接続部を差し込む作業と、取り外した電線を端子金具の電線差し込み穴に電線を差し込む作業とを必要とし、この作業中は停電を余儀なくされるという課題を有するものであった。更に、この電線抜き差し作業は入力電線が活線である場合に短絡事故の危険性をも含んでいるものであった。
【0006】
そこで本発明は、このような先行技術が有していた課題を払拭して、第1回目の電力量計の交換作業時や修理作業時から、危険性を伴う電線の抜き差し作業を全く必要とすることなく、簡単なバイパス工具のみを使用して、無停電状態を維持しながら、極めて迅速に短時間に電力量計の交換作業や修理作業を完了することができる電力量計用バイパス工具の提供とその作業手段を開示しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
該目的を達成するために講じた本発明に係る請求項1に記載の電力量計用バイパス工具にあっては、一端に複数の入力端子aと複数の出力端子bとを備え、この表面を覆っている危険防止カバーcを除去すると、これらの各端子a,bを露出させることができる構造とした電力量計Aを対象として使用する工具であって、全体を絶縁構造とした横長の容器本体1の内部に導電体製の2つのバイパス金具2,3を互いに非接触状態に収容し、これら両金具2,3のそれぞれに前記電力量計Aにおける入力端子aの一つと出力端子bの一つとに接触させる接触ピン4,4を連結し、その先端部を容器本体1の背面側に突出させ、該容器本体1の長手方向両端近く部分に固定用ピン穴6,6を形成してある構成としたものである。
【0008】
請求項2に記載の構成は、請求項1に記載の電力量計用バイパス工具における接触ピン4,4が、それぞれスプリング4sを介して取り付けられ、容器本体1の内方に向かって移動可能に形成されている構成としたものである。
【0009】
請求項3に記載の構成は、請求項1又は2に記載の電力量計用バイパス工具における容器本体1の両端近くに形成してある固定用ピン穴6,6が、電力量計Aにおける端子面の危険防止カバーcの両端近くに形成してある取付穴h,hの間隔とほぼ同間隔箇所に横長穴として形成してある構成としたものである。
【0010】
請求項4に記載の構成は、請求項1乃至3の何れかに記載の電力量計用バイパス工具における固定用ピン穴6,6が、容器本体1の厚さ方向中間部に空洞部61を備えていて、容器本体固定用ピン5の長手方向中間部51に軸方向相対移動可能に装着されたアジャストリング54が、該空洞部61に横移動自在に保持されている構成としたものである。
【0011】
請求項5に記載の構成は、請求項1乃至4の何れかに記載の電力量計用バイパス工具における容器本体1が、内部透視可能な透明素材で形成されている構成としたものである。
【0012】
請求項6に記載の構成は、請求項1乃至5の何れかに記載の電力量計用バイパス工具における容器本体1が、表面側に偏った箇所に前方に向かって突出する突出部8を備えている構成としたものである。
【0013】
請求項7に記載の構成は、請求項1乃至6の何れかに記載の電力量計用バイパス工具における容器本体1が、非使用時は下端部91が容器本体1の背面側に少許突出していて、該下端部91が外力を受けると弾性体93の押圧力に抗して、上端部92が容器本体1の表面側に少許突出する構造とされた設置状態確認ピン9を備えている構成としたものである。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明は、一端に複数の入力端子と複数の出力端子とを備えていて、この表面を覆っている危険防止カバーを除去すると、これらの各端子を露出させることができる構造としてある電力量計を対象として使用する工具であって、全体を絶縁構造とした横長の容器本体の内部に導電体製の2つのバイパス金具を互いに非接触状態に収容し、これら両金具のそれぞれに電力量計における入力端子の一つと出力端子の一つとに接触させる接触ピンを連結し、その先端部を容器本体の背面側に突出させてあるものとし、該容器本体の長手方向の両端近く部分に固定用ピン穴を形成してある構造としてあるので、電力量計の交換作業時や修理作業時には、電力量計の端子部分を覆っている危険防止カバーを取り外して、バイパス金具を端子の表面に当てつけて両端近くの固定用ピン穴を利用して、好ましくは危険防止カバーを取り外した後のカバー固定用ねじ穴を利用してねじ固定すればよい。このとき、2つのバイパス金具に連結させてある各接触ピンをそれぞれの入力端子と出力端子とに接触させてバイパス回路を形成させる。
【0015】
このようにして、バイパス回路を形成させた後、電力量計本体をベースから取り外して新品と取り替えるか、簡単な修理ならその場で修理すればよいが、別の修理品と取り替えればよい。言うまでもなく、電力量計本体の取り替えを終えれば、直ちにバイパス工具を取り外して、端子の表面に危険防止カバーを取り付けて原状に回復させればよい。
【0016】
本発明にいうバイパス工具を使用すれば、入出力電線の抜き差し操作を必要としないため、これらの電線に直接触れることなく、短絡事故の危険性を最小限に抑えて、無停電状態下において、極めて簡単迅速に、短時間に電力量計の交換作業や修理作業を完了することができるという顕著な効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、上記の構成としたものであるから、その実施に当たっては、請求項2のように、電力量計用バイパス工具における接触ピンが、それぞれスプリングを介して取り付けられていて、容器本体の内方に向かって移動可能に形成されているものとしておくことによって、各接触ピンが他の接触ピンの影響を受けることなく対応する入出力端子に対して個々に確実に接触させることができ、確実な通電を行わせることができる。
【0018】
また、請求項3のように、バイパス工具における容器本体の両端近くに形成してある固定用ピン穴を、電力量計における端子面の危険防止カバーの両端近くに形成してある取付穴の間隔とほぼ同間隔箇所に横長穴として形成してあるものとしておくことによって、固定用穴又は固定用ねじ穴を別途形成する必要がなく、危険防止カバーの固定用穴又は固定用ねじ穴に対して、当該横長穴を利用して位置調整しながら確実な取り付けを行うことができる。
【0019】
請求項4のように、容器本体の固定用ピン穴を、容器本体の厚さ方向中間部に空洞部を備えているものとし、容器本体固定ねじの長手方向中間部に軸方向相対移動可能に装着させたアジャストリングを、該空洞部に横移動自在に保持させてあるものとしておくことによって、容器本体固定ねじを常時容器本体の固定用ピン穴に保持させておくことができるので、容器本体を電力量計における端子面上に当てつけたとき、直ちにねじの位置合わせをしてねじ締め作業ができるので、容器本体の固定、ひいてはバイパス回路の形成作業を迅速に行うことができる。
【0020】
請求項5のように、電力量計用バイパス工具の容器本体を、内部透視可能な透明素材で形成されているものとしておくことによって、容器本体上から電力量計の入力側端子群を透視確認することができるので、入力側端子群に対して確実にかつ迅速に容器本体を固定させることができる。
【0021】
請求項6のように、電力量計用バイパス工具における容器本体を、表面側に偏った箇所に前方に向かって突出する突出部を備えているものとしておくことによって、この突出部を電力量計本体を覆う本体カバーの周縁突出部の外周面や上面に接触する構造とし、本体カバーを外さない限り、バイパス作業が行い得ないものとすることができる。このようにしておくと、バイパス工具によるバイパス回路形成後に、当該本体カバーの取り外し作業を行うという作業手順を自動的に回避させて、バイパス回路の形成時間を最小限に抑え、電力量計本体の取り替え作業後においては、バイパス工具を取り外した後でなければ、当該本体カバーの取り付け作業ができないものとしておくことができ、バイパス回路形成時間を最小限に抑えるようにして作業を終えることができる。
【0022】
また、他の手段として、端子面を覆う危険防止カバーの一部を本体カバーで覆う構造とし、本体カバーを先行して除去しなければ端子面の危険防止カバーを取り外すことができない構造としたり、本体カバーと端子面を覆う危険防止カバーとを一体構造として、本体カバーを取り外さなければ端子面を解放することができない構造として実施することができ、このようにした場合にも、バイパス回路形成時間を最小限に抑えることができる。
【0023】
請求項7のように、電力量計用バイパス工具における容器本体を、非使用時は下端部が容器本体の背面側に少許突出していて、該下端部が外力を受けると弾性体の押圧力に抗して、上端部が容器本体の表面側に少許突出する構造とされた設置状態確認ピンを備えているものとしておくことによって、ピンの表面側への突出状態を視認のみならず指先による接触確認もできるので、バイパス工具の取付が適正であるか否かの確認を確実に行うことができ、危険性のない安全な作業を行うことができる。
【実施例】
【0024】
以下本発明の実施例について図面に基づいて説明する。図中、図1及び図2は、本発明の電力量計用バイパス工具を使用する対象構造を備えた代表的な電力量計を説明する図であって、図1は端子部を覆う危険防止カバーを取り除いた状態の電力量計全体の平面図、図2はその右側から見た側面図である。
【0025】
該電力量計Aは、平面図において、平面視横長とした通信回路形成器31と、電力量計本体32と、昼夜間電力切り替え用タイマー33との3体を上下方向に設置し、これらの全体を透明な本体カバー34で覆ってある。また、これらの下方部分には、3本の外線入力端子aと同じく3本の内線引出端子bとを左右方向に並列配置してあり、その左右端には、該端子群の上面部分を覆う危険防止カバーcをねじ止めするための取付穴h,hを形成してあり、この取付穴h,hを利用して危険防止カバーcをねじ止めするようにしてある。
【0026】
続いて、本発明にいうバイパス工具の実施例について説明する。図中、図4乃至図12は、同バイパス工具の第1実施例を示す図であって、図3は主要部品を上下方向に分解して示した部品分解正面図、図4は主要部品を組み立てた状態を示す内部構造縦断面図、図5は平面図、図6は下半部材の平面図、図7は底面図、図8は正面図、図9は図5におけるA−A断面図、図10は同B−B断面図、図11は同C−C断面図、図12は同D−D断面図である。
【0027】
また、図13乃至図17は各部の部品図であって、図13及び14はバイパス金具の説明図、図15は接触ピンと関連部材の説明図、図16は容器本体固定ねじと関連部材の説明図、図17は動作確認ピンと関連部材の説明図である。
【0028】
該実施例に示したバイパス工具は、図5にみられるように、平面視形状を横長の長方形状とし、図3,4及び8にみられるように、厚さ方向のほぼ中間部分で上下に分割された上半部材1aと下半部材1bとの2つの部材からなっていて、透明性を備えた絶縁樹脂部材で形成してある。また、これらの上下部材1a,1bは、3本の連結ビス10で連結してあり、これらの連結ビス10は、図7の底面図に示したように、下端面はビス受け部10aで受け止められていて、底面側には突出しないようにしてある。
【0029】
これらの両部材間には、次のバイパス金具2,3、接触ピン4、固定用ピン5及び取付状態確認ピン9とを介在させる。一つ目のバイパス金具2は、図13に斜視図として示したように、平面形状を略コの字形としてあり、長手方向の中間部に凹み部分2aを備えていて、両端部分に接触ピン4,4を連結するための連結穴2h,2hを備えた導電板製の金具である。他のバイパス金具3は、図14に斜視図として示したように、横長の長方形状で、中間部を避けた左右部分に接触ピン4,4の連結穴3h,3hを備えた導電板製の金具である。
【0030】
これらのバイパス金具2,3は、図6に示したように、容器本体1の下半部材1bにおけるコの字形とした区画壁11と周壁12との間に形成してある小形凹部13内にバイパス金具3を配置し、その外側に形成してある大形凹部14にバイパス金具2を配置して、互いに接触しない状態で収容させるようにしてある。
【0031】
前記接触ピン4は、図15に示したように、最下端に電力量計Aにおける外線入力端子aと内線引出端子bとに、より詳しくは、これらの入出力線を締め付け固定するための締め付けビスの頭部と接触させる接触面41を備えた軸42と、リング状フランジ部43の上部にボルト部44を形成してある。このボルト部44を前記バイパス金具2,3のピン連結穴2h,3hに挿通し、その上部を図15に示した締め付けナット4nで固定し、図3のように、それぞれのバイパス金具2,3に連結する。また、該ナット4nの上部には圧縮用コイルスプリング4sを配置し、図3に示した容器本体1の下半部材1bに形成してある4つの接触ピン保持穴15…にそれぞれ軸42を挿入させ、その上部を上半部材1aで覆わせて、図4に示したように、上下部材1a,1b間に介在させ、各接触ピン4の軸42をピン保持穴15…から底面側に突出させる。この状態は、図7の底面図及び図8の正面図によっても確認できる。
【0032】
容器本体1の両端近く部分には、それぞれ固定用ピン穴6,6を形成してある。このピン穴6,6は、図5,6にみられるように、横長穴としてあり、電力量計Aにおける端子面の危険防止カバーcに形成されている取付穴h,hの間隔とほぼ同じ間隔箇所に形成してあり、前記危険防止カバーcを取り外したとき、同危険防止カバーcの固定ねじの取り外しねじ穴を利用して、容器本体1を固定用ピン5で固定することができる位置に形成してある。
【0033】
この固定用ピン穴6,6は、上半部材1aと下半部材1bとの合わせ面に面して、図3及び図6に示したように、下半部材1bの上面部にピン穴6と相似形でピン穴6よりも広幅の皿穴を形成し、上半部材1aと下半部材1bとを合体させたとき、両部材1a,1bの間に、容器本体1の厚さ方向中間箇所に空洞部61を形成させてある。他方、容器本体1の固定用ピン5は、図16に示したように、周面に滑り止めを施し、上面にドライバー溝を形成した皿形の締め付け部52を上端部に備え、下端部に螺旋ねじ53を備えたピン軸51の上下方向適宜の中間部に、中央に嵌合穴55を形成したドーナツ形のアジャストリング54を軸方向相対移動可能に装着させてあるものとし、図4に示したように、このアジャストリング54を前記空洞部61に横移動自在に嵌め込んで保持させ、固定用ピン5を常時ピン穴6に維持させてある。
【0034】
容器本体1は、図5に記載の記号A,B,C,Dの矢視部分の断面を示した図9〜図12に示したように、上半部材1aの表面側に偏った箇所に、図5及び図7のように、上半部材1aの全長さに亘って、前方に向かって突出する突出部8を一体的に備えているものとしてある。この突出部8の存在によって、前記発明を実施するための最良の形態の項で説明したように、バイパス回路形成作業時に、この突出部8が、電力量計本体を覆う本体カバーの周縁突出部の外周面や上面に接触し、本体カバーを外さない限り、バイパス作業が行い得ないものとし、バイパス回路形成時間を最小限に抑えるようにしてある。
【0035】
また、容器本体1には、図17に示した棒状の確認ピン9を、リングフランジ94に、弾性体93の下端を乗せ付けて弾性圧を付与させることによって、通常時には、図8のように、その下端部91が容器本体1の背面側に少許突出しているように組み込んである。
【0036】
前記図9は、図5におけるA−A線断面図であって、固定用ピン5の部分を示したものである。図10は同B−B線断面図であって、接触ピン4の部分を示したものである。図11は同C−C線断面図であって、連結ビス10の部分を示したものである。図12は同D−D線断面図であって、設置状態確認ピン9の部分を示したものである。
【0037】
次に、このような構造としたバイパス工具の使用手段を、図18に示した使用状態説明用底面図と、図19に示した使用状態説明用正面図とを用いて説明する。本実施例のバイパス工具を使用して電力量計Aのバイパス回路形成作業を行うには、まず、電力量計Aのカバーを取り外した後、危険防止カバーcを取り外して入出力線の端子面上に、容器本体1を当てつけ、両端の固定用ピン5,5を回転させて危険防止カバーcを固定してあったビス穴に固定する。この固定操作によって、各接触ピン4の下面を、記号Lで示した端子面に当てつけ、同時に、図18に斜線で示した工具当てつけ面Fに容器本体1の下面を当てつけ、設置状態確認ピン9,9の下端部91を押し上げる。この接当圧によってピン9は弾性体93の押圧力に抗して上方に移動し、図19のように、その上端部92が、容器本体1の表面側に少許突出する。この設置状態確認ピン9を、容器本体1の表面側に突出させることによって、目視のみならず、指先で設置状態の正否を確認する。この設置状態確認ピン9,9が容器本体1の表面側に突出していることを確認した後、電力量計Aの交換をする。
【0038】
以上の実施例説明では、バイパス工具における容器本体1を透明な素材で形成しておくことによって、電力量計Aに設けてある外線入力端子aと内線引出端子bとに対する各接触ピン4の接触操作を容器本体1を透過して外部から確認しながら行うことができることについて説明したが、この容器本体1は必ずしも透明体とする必要はなく、不透明材料で全体を形成したり、一部を不透明状態のものとして実施することもできる。
【0039】
この容器本体1の全体または一部を不透明材料で形成したものであっても、電力量計Aに設けてある外線入力端子aと内線引出端子bとに対する各接触ピン4の接触状態が正常であるかどうかの確認手段としては、前記実施例のように、設置状態確認ピン9を設けたものとしてあれば確認することができる。しかしながら、例えば、バイパス金具2,3のそれぞれとアース金具との間に、バイパス金具2,3と接触させるか接続させた導電線や導電体に通電表示ランプと抵抗素子とを直列に接続した回路を形成し、他端をアース接続させることによって、正常にバイパス形成がなされた時に通電表示ランプが点灯するようにし、この通電表示ランプを容器本体の表面に設けた凹み内で、または光透過ケース内で点灯させることによって、目視による確認ができるようにしてもよい。
【0040】
図20乃至22は、バイパス回路確認を目視で行うことができるようにしたバイパス工具を示した平面図、縦断面図及び回路図である。該実施例に示したバイパス工具は、前記のように、容器本体1の全体を不透明材料で形成し、内部状態の確認が出来ないものの場合であっても、正常にバイパス形成がなされたことを目視によって確認することが出来るようにした実施例のバイパス工具を示したものである。該実施例に示した容器本体1には、前記実施例に示したバイパス金具2,3が、入力端子aと出力端子bとの接触による接触ピン4の上昇移動にともなって上昇移動したとき、これらのバイパス金具2,3と接触する箇所にそれぞれ接触子71,71を配置し、容器本体1の上部に形成したボックス形の通電表示部7内の基盤72に設けてある配線73を介して通電表示ランプLEDと抵抗rとを直列回路74で接続したものである。該実施例の通電表示ランプLEDは、通電表示部7内の回路72に組み込んであり、各接触ピン4が入出力端子a,bと接触してバイパス金具2,3が上昇移動したとき、接触子71,71を介して通電回路が形成され点灯する。このようにしておくことによって、作業者はバイパス金具2,3の端子への正常な接触状態、ひいては正常なバイパス回路の形成確認を通電表示ランプLEDの点灯という目視によって行うことができ、安心して電力量計本体32の交換作業等を行うことが出来る。
【0041】
図23乃至図25は、バイパス回路確認を目視で行うことができるようにしたバイパス工具の別構造を示した平面図、縦断面図及び回路図である。前記実施例に示したバイパス工具は、各接触ピン4が入出力端子a,bと正常に接触してバイパス回路が形成されている間、換言すると電力量計本体32の交換作業中、通電表示部7内に設けた通電表示ランプLEDが継続して点灯している構造としたものであるが、本発明にいうところのバイパス工具は、各接触ピン4が入出力端子a,bと正常に接触してバイパス回路が一旦形成されると、作業終了後における固定用ピン5の弛緩解除までの間は、バイパス回路が維持されるものであるため、バイパス工具の取付時にバイパス回路の正常な形成確認ができればよいという性質のものでもある。該実施例に示したバイパス工具は、前記実施例に示したバイパス工具における通電表示回路74中に、スイッチSWを組み込み、スイッチ釦75を押したときだけ回路が形成され、通電表示ランプLEDが点灯するようにしたものである。このスイッチ釦75を押して通電表示ランプLEDの点灯を確認した後は、安心して電力量計本体32の交換作業等を行うことが出来るようにしたものである。その他の点は前記図20乃至22に示した実施例と同様構造としたものである。本発明にいうバイパス工具は、このようにして実施することもできる。この通電表示ランプLEDの点灯表示手段は、前記透明素材で形成したバイパス工具に実施してもよい。
【0042】
これらの実施例に示したバイパス回路の正常な形成確認表示用の通電表示ランプLEDを備えたバイパス工具にあっては、前記主実施例において示した設置状態確認ピン9は、設けてあってもよいが、設けてないものであってもよい。また、前記実施例中にいうところの前記バイパス金具2,3は、必ずしも板体である必要はなく、例えば丸形の導線材やシールド線材等を用いてもよい。更にまた、該バイパス金具2,3は、水平面上で前後に区画配置したものとして示したが、絶縁体を介して上下方向に重合配置させることもできる。前記接触ピン4の下端面、即ち端子面との接触面41は、前記実施例のものにあっては、銀メッキしたものとしてあるが、他の超良導性金属を溶着したり、接着させてあるものとしてもよい。
【0043】
以上本発明の代表的と思われる実施例について説明したが、本発明は以上に示した実施例構造のもののみに限定されるものではなく、本発明にいうところの構成要件を備え、かつ、本発明にいうところの目的を達成し、効果を有する範囲内において適宜改変して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明にいう電力量計用バイパス工具は、電力量計が備えている入出力電線固定用の端子をそのまま利用して、完全無停電状態下で電力量計本体の交換や修理を行うことができるので、その工事は、あらゆる電気需用者に歓迎されることとなり、工事関係者に大いに使用される可能性の大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】電力量計全体の平面図。
【図2】図1における右側から見た側面図。
【図3】主要部品を上下方向に分解して示した部品分解正面図。
【図4】主要部品を組み立てた状態を示す内部構造縦断面図。
【図5】同平面図。
【図6】同下半部材の平面図。
【図7】同底面図。
【図8】同正面図。
【図9】図5におけるA−A断面図。
【図10】同B−B断面図。
【図11】同C−C断面図。
【図12】同D−D断面図。
【図13】バイパス金具の説明図。
【図14】バイパス金具の説明図。
【図15】接触ピンと関連部材の説明図。
【図16】容器本体固定ねじと関連部材の説明図。
【図17】動作確認ピンと関連部材の説明図。
【図18】使用状態説明用底面図。
【図19】同正面図。
【図20】別実施例を示す平面図。
【図21】同縦断面図。
【図22】同回路図。
【図23】更なる別実施例を示す平面図。
【図24】同縦断面図。
【図25】同回路図。
【符号の説明】
【0046】
1 容器本体
1a 上半部材
1b 下半部材
2 バイパス金具
3 バイパス金具
4 接触ピン
4s スプリング
5 固定用ピン
6 固定用ピン穴
8 突出部
9 設置状態確認ピン
91 下端部
92 上端部
93 弾性体
10 連結ビス
A 電力量計
a 入力端子
b 出力端子
c 危険防止カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に複数の入力端子(a)と複数の出力端子(b)とを備え、この表面を覆っている危険防止カバー(c)を除去すると、これらの各端子(a,b)を露出させることができる構造とした電力量計(A)を対象として使用する工具であって、
全体を絶縁構造とした横長の容器本体(1)の内部に導電体製の2つのバイパス金具(2,3)を互いに非接触状態に収容し、これら両金具(2,3)のそれぞれに前記電力量計(A)における入力端子(a)の一つと出力端子(b)の一つとに接触させる接触ピン(4,4)を連結し、その先端部を容器本体(1)の背面側に突出させ、該容器本体(1)の長手方向両端近く部分に固定用ピン穴(6,6)を形成してある電力量計用バイパス工具。
【請求項2】
接触ピン(4,4)が、それぞれスプリング(4s)を介して取り付けられ、容器本体(1)の内方に向かって移動可能に形成されている請求項1に記載の電力量計用バイパス工具。
【請求項3】
容器本体(1)の両端近くに形成してある固定用ピン穴(6,6)が、電力量計(A)における端子面の危険防止カバー(c)の両端近くに形成してある取付穴(h,h)の間隔とほぼ同間隔箇所に横長穴として形成してある請求項1又は2に記載の電力量計用バイパス工具。
【請求項4】
固定用ピン穴(6,6)が、容器本体(1)の厚さ方向中間部に空洞部(61)を備えていて、容器本体固定用ピン(5)の長手方向中間部(51)に軸方向相対移動可能に装着されたアジャストリング(54)が、該空洞部(61)に横移動自在に保持されている請求項1乃至3の何れかに記載の電力量計用バイパス工具。
【請求項5】
容器本体(1)が、内部透視可能な透明素材で形成されている請求項1乃至4の何れかに記載の電力量計用バイパス工具。
【請求項6】
容器本体(1)が、表面側に偏った箇所に前方に向かって突出する突出部(8)を備えているものとしてある請求項1乃至5の何れかに記載の電力量計用バイパス工具。
【請求項7】
容器本体(1)が、非使用時は下端部(91)が容器本体(1)の背面側に少許突出していて、該下端部(91)が外力を受けると弾性体(93)の押圧力に抗して、上端部(92)が容器本体(1)の表面側に少許突出する構造とされた設置状態確認ピン(9)を備えているものとしてある請求項1乃至6の何れかに記載の電力量計用バイパス工具。
【請求項8】
容器本体(1)が、電力量計(A)における端子(a),(b)と接触ピン(4,4)が正常に接触し、正常なバイパス回路の形成状態を点灯表示する通電表示ランプLEDを備えているものとしてある請求項1乃至6の何れかに記載の電力量計用バイパス工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−150753(P2009−150753A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328387(P2007−328387)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(591028773)株式会社ニチフ端子工業 (23)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(591277717)東北計器工業株式会社 (9)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(591147719)中部精機株式会社 (9)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(000164391)株式会社キューキ (15)
【出願人】(000205661)大崎電気工業株式会社 (61)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)