説明

電力量計

【課題】電源からのノイズを除去するフィルタ部を電力量計部に組み込むことで、別途電源フィルタ部を設置するための新たなスペースや工事を不要とする電力量計を提供する。
【解決手段】この発明に係る電力量計は、電力線に接続された負荷の消費する電力量を計測する電力計測部と、前記電力計測部に電源を供給する電源部とを備えた電力量計部、前記電力線を伝送路として通信を行なう電力線通信部、前記電力線通信の信号を電源側と前記負荷側とに分離ブロッキングフィルタ部、前記電力量計部に組み込まれ、前記電源部のノイズを除去するフィルタ部を備えたものであり、別途電源フィルタ部を設置するための新たなスペースや工事を不要とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力量計、特に、電力線を通信線路として通信を行う電力線通信の機能と、この電力線通信の信号を電源側と宅内側に分離する通信信号遮断の機能とを有する電力量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、例えば特許文献1に示された従来の電力量計を示すブロック図である。図4に於いて、電力量計部31は、電源側電力線接続端子33を介して電源側電力線39に接続されると共に負荷側電力線接続端子34を介して負荷側電力線40に接続され、負荷(図示せず)の電力量を計測する。また、電力量計部31は、電源側電力線39及び負荷側電力線40に接続された電力線通信装置35、36、37、38に接続されており、電力線を通信線路として例えば自動検針の情報を電力会社の検針センターに伝送することができるように構成されている。ブロッキングフィルタ部32は、電力線通信の信号を電源側と宅内側に分離し、宅内での通信信号が他の場所へ漏洩するのを防止する通信信号遮断の機能を有する。
【0003】
このように構成された従来の電力量計は、電力線を通信線路として利用して通信を行う電力線通信の機能と、この電力線通信の信号を電源側と宅内側に分離する信号遮断の機能とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−33880号公報(第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の従来の電力量計は、電力を計測する電力計測部31及び電力計測部31内の電源部から生じるノイズに含まれる周波数成分が電力線通信信号の周波数帯に重なるなどに起因して、電力線通信において通信エラーが発生したり、通信速度が低下するなどの問題があり、これを回避するために、電源部からのノイズを除去するためにフィルタ回路を電力量計の付近(メータボックス等)や外部の各電力線通信装置付近(コンセントボックス等)に設置する必要がある。
【0006】
しかしながら、住宅のメータボックス等の電力量計付近に十分なスペースがない場合には、前述のフィルタ回路を設置することができない。また、そのフィルタ回路を住宅に電力を供給している線路へ取り付ける場合、停電なしにフィルタ回路を設置しようとすれば非常に工事が煩雑となり、コストがかかるという課題があった。
【0007】
この発明は、従来の電力量計における前述のような課題を解決するためになされたものであり、電源からのノイズを除去するフィルタ部を電力量計部に組み込むことで、別途電源フィルタ部を設置するための新たなスペースや工事を不要とする電力量計を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による電力量計は、電力線に接続された負荷の消費する電力量を計測する電力計測部と、前記電力計測部に電源を供給する電源部とを備えた電力量計部、前記電力線を伝送路として通信を行なう電力線通信部、前記電力線通信の信号を電源側と前記負荷側とに分離ブロッキングフィルタ部、前記電力量計部に組み込まれ、前記電源部のノイズを除去するフィルタ部を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明による電力量計によれば、電力線に接続された負荷の消費する電力量を計測する電力計測部と、前記電力計測部に電源を供給する電源部とを備えた電力量計部、前記電力線を伝送路として通信を行なう電力線通信部、前記電力線通信の信号を電源側と前記負荷側とに分離ブロッキングフィルタ部、前記電力量計部に組み込まれ、前記電源部のノイズを除去するフィルタ部を備えているので、電源フィルタ部を設置するための新たなスペースや工事などが不要となる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1による電力量計を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態2による電力量計を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態2による電力量計におけるプラグ型ブロッキングフィルタ部の挿抜イメージを示す説明図である。
【図4】従来の電力量計を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による電力量計について詳細に説明する。図1は、この発明の実施の形態1による電力量計を示すブロック図である。図1において、電力量計10は、電力計測部111と電源部112と電源フィルタ部113とを備えた電力量計部11と、電源側高インピーダンス部121と負荷側高インピーダンス部122とを備えたブロッキングフィルタ部12と、電力線通信部13とを備えている。電力量計10は、1S、2S、3Sからなる電源側端子14と、1L、2L、3Lからなる負荷側端子15を備えたメータボックス内に収納されている。
【0012】
電力計測部111の電源側端子は、メータボックスの電源側端子14における1Sおよび3Sを介して電源側電力線16のA相およびB相に接続されている。ブロッキングフィルタ部12の負荷側端子は、メータボックスの負荷側端子15における3Lおよび1Lを介して負荷側電力線17のA相およびB相に接続されている。電力計測部111のA相およびB相の負荷側端子は、ブロッキングフィルタ部12のA相およびB相の電源側端子に接続されており、これ等の端子は電源側電力線16および負荷側電力線17のA相およびB相に対応する。
【0013】
電源側端子14の2Sを介して電源側電力線16の中性線に接続された電源部112は、電力計測部111に電源を供給する。電力計測部111は、電源部112からの電源の供給を受けて動作し、負荷(図示せず)の消費する電力量を計測すると共にその計測値を表示する機能を有する。電源フィルタ部113は、電源側端子14の3Sを介して電源側電力線16のB相に接続されると共に電源部112に接続されており、電源部112および電力計測部111により発生するノイズを除去し、電力線通信部13から見た電源部112側のインピーダンスの変動を抑えてインピーダンスを高くみせる機能を有する。
【0014】
ブロッキングフィルタ部12の電源側高インピーダンス部121は、電力線通信部13の通信機能に影響を与えないように、ブロッキングフィルタ部12の電力線通信部側のインピーダンスを高く見せる機能を有し、負荷側高インピーダンス部122は、電力量計10を設置した建物内に設けられている負荷側電力線通信装置30が使用されたときに、ブロッキングフィルタ部12のインピーダンスが建物内の電力線通信装置30の通信に影響を与えないようにするための高インピーダンス機能を具備する。従って、電力線を伝送路とする電力線通信の通信信号が電力量計10から遮断される。
【0015】
電力線通信部13は、通信線114を介して電力計測部111に接続されると共に、電源側端子14の1Sおよび3Sを介して電源側電力線16のA相およびB相に接続されている。この電力線通信部13は、電源側電力線16を通信線として電源側電力線16に接続されている電源側電力線通信装置40との間で通信を行なう機能を有する。
【0016】
ここで、ブロッキングフィルタ部12の減衰量をL[dB]、負荷側電力線通信装置30の出力をZ[dBm]、負荷側電力線通信装置30からブロッキングフィルタ部12までの減衰量をA[dB]、電力線通信部13の最低受信感度をX[dBm]、最低雑音感度比S/NをY[dB]とすると、次式(1)が成立するように設定されている。

L≧Z−A−X+Y ・・・・・・・・・・・・・・・・式(1)

【0017】
ブロッキングフィルタ部12の減衰量Lを、式(1)の特性にすることで、電力線通信部13を用いて行われる電力線通信の信号と負荷側電力線通信装置30を用いて行われる電力線通信の信号とが、確実に互いに干渉しないように設計することができ、電力線通信の信頼性を更に高めることが可能となり、通信性能を保障することができる。
【0018】
電力計測部111により計測した負荷の消費する電力量は、電力計測部111の表示部に表示される。また、例えば電力会社若しくは検針センターから光回線等により電力線通信部13を介して、電力計測部111により計測された電力量を自動検針することができる。
【0019】
更に、電源フィルタ部113は、電力線通信部13から見た電源部112側のインピーダンスの変動を抑えてインピーダンスを高くみせる機能を有するので、電源部112および電力計測部111により発生するノイズが除去される。従って、電力計測部111及び電源部112から生じるノイズに含まれる周波数成分が電力線通信信号の周波数帯に重なるなどに起因して、電力線通信部13を用いた電力線通信において通信エラーが発生したり、通信速度が低下するなどの問題を回避することができる。
【0020】
一方、ブロッキングフィルタ部12の電源側高インピーダンス部121は、ブロッキングフィルタ部12の電力線通信部側のインピーダンスを高く見せる機能を有しているので、電力線通信部13の通信機能に影響を与えることがなく、更に負荷側高インピーダンス部122は、負荷側のインピーダンスを高く見せる機能を有するので、ブロッキングフィルタ部12のインピーダンスが電力量計10を設置した建物内に接地された電力線通信装置30を用いた電力線通信に影響を与えることがない。
【0021】
以上述べたこの発明の実施の形態1による電力量計によれば、電源部からのノイズを除去する電源フィルタ部を電力量計部に組み込むようにしているので、電力計量部の電源部から出る雑音が電力線通信部に影響を与えないだけでなく、電源部のインピーダンスの影響も電力線通信部に与えることがないので、従来に比べて電力線通信部の通信性能を向上させることができる。
【0022】
更に、電源部からのノイズを除去する電源フィルタ部を電力量計部に組み込むようにしているので、電源フィルタ部を別途設置するための新たなスペースや工事が不要となる効果を有する。
【0023】
また、ブロッキングフィルタ部の電源側が電力量計部の負荷側のA相およびB相だけに接続され、ブロッキングフィルタ部の負荷側も、負荷側電力線のA相およびB相だけに接続されている。従って、従来の装置のようにブロッキングフィルタ部がA相と中性線との間に1個、およびB相と中性線との間に1個夫々接続していた場合に比べ、この発明の実施の形態1による電力量計によれば、ブロッキングフィルタ部を1個入れるだけで従来の装置と同様の効果が得られるため、低コストでブロッキングフィルタ部の機能を実現することができる。
【0024】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2による電力量計を示すブロック図である。図2において、プラグ型ブロッキングフィルタ部123は、電力量計10内に搭載されたブロッキングフィルタ接続用ジャック124にプラグインされることにより、その電源側端子が電力計測部111のA相およびB相の負荷側端子に接続され、負荷側端子がメータボックスの負荷側端子15の3L、1Lを介して負荷側電力線17のA相およびB相に接続されている。
【0025】
図3は、この発明の実施の形態2による電力量計におけるプラグ型ブロッキングフィルタ部の挿抜イメージを示す説明図である。図3において、ブロッキングフィルタ接続用ジャック124は、一対の電源側接続穴124a、124bと、一対の負荷側接続穴124c、124dを備えている。これらの電源側接続穴124a、124b、及び負荷側接続穴124c、124dの内面には導電部が設けられている。
【0026】
ブロッキングフィルタ接続用ジャック124の一方の電源側接続穴124aに設けられた導電部は、電力計測部111のB相の負荷側端子に接続され、他方の電源側接続穴124bに設けられた導電部は、電力計測部111のA相の負荷側端子に接続されている。また、ブロッキングフィルタ接続用ジャック124の一方の負荷側接続穴124cに設けられた導電部は、メータボックスの負荷側端子15の1Lを介して負荷側電力線17のB相に接続され、他方の負荷側接続穴124dに設けられた導電部は、メータボックスの負荷側端子15の3Lを介して負荷側電力線17のA相に接続されている。
【0027】
プラグ型ブロッキングフィルタ部123は、一対の電源側端子123a、123bと、一対の負荷側端子123c、123dを備えている。これらの電源側端子123a、123b、及び負荷側端子123c、123dは、プラグ型ブロッキングフィルタ部123の裏面から突出している。
【0028】
このように構成されたプラグ型ブロッキングフィルタ部123は、図3に示すように、その電源側端子123a、123b、及び負荷側端子123c、123dが、ブロッキングフィルタ接続用ジャック124の夫々対応する電源側接続穴124a、124b、及び負荷側接続穴124c、124dに挿入されることにより、ブロッキングフィルタ接続用ジャック124に装着される。
【0029】
電源側接続穴124a、124b、及び負荷側接続穴124c、124dに挿入された電源側端子123a、123b、及び負荷側端子123c、123dは、電源側接続穴124a、124b、及び負荷側接続穴124c、124dに夫々設けられた前述の導電部に接続され、これらの導電部を介して電力計測部111の負荷側のA相およびB相と、負荷側電力線17のA相およびB相との間に接続される。
【0030】
その他の構成および動作は、実施の形態1による電力量計と同様である。
【0031】
以上述べたこの発明の実施の形態2による電力量計によれば、電源部からのノイズを除去する電源フィルタ部を電力量計部に組み込むようにしているので、電力計量部の電源部から出る雑音が電力線通信部に影響を与えないだけでなく、電源部のインピーダンスの影響も電力線通信部に与えることがないので、従来に比べて電力線通信部の通信性能を向上させることができる。
【0032】
更に、電源部からのノイズを除去する電源フィルタ部を電力量計部に組み込むようにしているので、電源フィルタ部を別途設置するための新たなスペースや工事が不要となる効果を有する。
【0033】
また、ブロッキングフィルタ部の電源側が電力量計部の負荷側のA相およびB相だけに接続され、ブロッキングフィルタ部の負荷側も、負荷側電力線のA相およびB相だけに接続されている。従って、従来の装置のようにブロッキングフィルタ部がA相と中性線との間に1個、およびB相と中性線との間に1個夫々接続していた場合に比べ、この発明の実施の形態1による電力量計によれば、ブロッキングフィルタ部を1個入れるだけで従来の装置と同様の効果が得られるため、低コストでブロッキングフィルタ部の機能を実現することができる。
【0034】
更に、電力量計10内にブロッキングフィルタ接続用ジャック124を搭載し、プラグ型ブロッキングフィルタ部123をこのブロッキングフィルタ接続用ジャック124に接続するようにしたので、プラグイン型ブロッキングフィルタ部123の交換が簡単になり、電力量計10の周囲環境や電力線通信のノイズ成分に対応した減衰特性によってプラグイン型ブロッキングフフィルタ部123を選定することが可能となる。これにより、ノイズの影響を精度よく抑えることが可能となり、システム全体の通信信頼性を更に高めることが可能となる。また、幅広い周波数に対応した減衰特性を有する高価なブロッキングフィルタを使用する必要がなくなるので、電力量計10の全体コストを低減させることが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
10 電力量計 11 電力量計部
111 電力計測部 112 電源部
113 電源フィルタ部 114 通信線
12 ブロッキングフィルタ部 121 電源側高インピーダンス部
122 負荷側高インピーダンス部 13 電力線通信部
14 電源側端子 15 負荷側端子
16 電源側電力線 17 負荷側電力線
40 電源側電力線通信装置 30 負荷側電力線通信装置
20 分電盤
123 ブロッキングフィルタ接続用ジャック
123a、123b 電源側接続端子 123c、123d 負荷側接続端子
124 プラグ型ブロッキングフィルタ部
124a、124b 電源側接続穴 124c、124d 負荷側接続穴



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線に接続された負荷の消費する電力量を計測する電力計測部と、前記電力計測部に電源を供給する電源部とを備えた電力量計部、
前記電力線を伝送路として通信を行なう電力線通信部、
前記電力線通信の信号を電源側と前記負荷側とに分離ブロッキングフィルタ部、
前記電力量計部に組み込まれ、前記電源部のノイズを除去するフィルタ部、
を備えたことを特徴とする電力量計。
【請求項2】
前記ブロッキングフィルタ部は、当該ブロッキングフィルタの電源側のインピーダンスを高くする電源側高インピーダンス部と、前記負荷側のインピーダンスを高くする負荷側高インピーダンス部とを具備する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力量計。
【請求項3】
前記ブロッキングフィルタ部は、前記電力線の2つの相の間にのみ接続されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電力量計。
【請求項4】
前記ブロッキングフィルタ部は、前記ブロッキングフィルタ部の負荷側に接続された電力線通信装置の出力をZ、前記負荷側に接続された電力線通信装置から前記ブロッキングフィルタ部までの減衰量をA、前記電力線通信部の最低受信感度をX、S/NをYとしたとき、
L≧Z-A-X+Y
を満足する減衰量Lを備えている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の電力量計。
【請求項5】
前記ブロッキングフィルタ部は、異なる減衰量を有する別のブロッキングフィルタと交換可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の電力量計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−175717(P2012−175717A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31899(P2011−31899)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】