説明

電動アクチュエータの制御装置

【課題】電源の電圧変動範囲を超える電圧と、その電圧変動範囲を超えない平常電圧を認識し、電動アクチュエータの給電をON、OFFする電動アクチュエータの制御装置を提供する。
【解決手段】 キーロックソレノイド13を給電する機能と、出力パルスのデューティ比の可変機能とを有するキーロック出力回路14と、車載バッテリー16の電圧変動範囲において電圧検出するIG/ACC電圧検出回路15と、検出電圧値Bvsに対応してキーロック出力回路14のデューティ比を変える制御回路17とを備え、前記制御回路17が、最新の検出電圧値Bvsの平均値ABvsと、この最新の検出電圧値を含む先行した3つの検出電圧値Bvsの平均電圧値4ABvsとの関係が、ABvs>4ABvsでは出力信号の出力を停止、ABvs<4ABvsでは出力信号を出力させる機能を有する構成と成っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーシリンダをロック状態にしてキーシリンダがキー引き抜き位置まで回動するのを不可能にするキーシリンダロック機構、或いは、シフトレバーをパーキング位置でロックするシフトロック機構などのように電動アクチュエータを動作させてロックとし、或いは、アンロックとする制御装置に関し、特に、車載バッテリーを電源とする給電電圧の変動に影響を受けることなく高い精度で電動アクチュエータを給電制御する電動アクチュエータ制御装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
オートマチックトランスミッション付きの自動車には、シフトロック機構とキーシリンダロック機構とを有するシフトロック装置が備えられている。
シフトロック機構は、シフトレバーがパーキング位置にあるときにブレーキペダルを踏み込むことでアンロック状態となり、シフトレバーをパーキング位置以外の位置に移動させることができる。
【0003】
また、キーシリンダロック機構は、例えば、キーシリンダのOFF位置への戻り回動を許容するプッシュスイッチが設けられている場合には、シフトレバーがパーキング位置にあるときに、プッシュスイッチの押動操作を可能にしてアンロック状態とし、キーシリンダをキーの引き抜き位置まで回動可能とすると共に、シフトレバーがパーキング位置以外にあるときに、前記プッシュスイッチの動きをソレノイドによって規制することによって、キーシリンダがキー引き抜き位置まで回動するのを不可能にするように構成されているものがある。
なお、このようなプッシュスイッチを設けず、シフトレバーがパーキング位置以外ではソレノイドによってキーシリンダがキー引き抜き位置まで回動するのを阻止するものもある。
【0004】
上記したようなシフトロック機構とキーシリンダロック機構は、ロック或いは、アンロックとする駆動源として電動アクチュエータであるソレノイドを備えている。
具体的には、シフトロックソレノイド、キーロックソレノイドとして備え、マイクロコンピュータにより制御されるスイッチ回路の動作下に車載バッテリーを電源として給電される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4―171357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、12V仕様のバッテリーを搭載する車輌が主流であるが、近年では車載電装品の増加に伴い24V仕様のバッテリーを搭載する車輌も存在する。
よって、これら車輌にソレノイド付きのシフトロック装置(シフトロックソレノイド及びキーロックソレノイド)を搭載する際には、バッテリー12V搭載の車輌用のソレノイドと、バッテリー24V搭載の車輌用のソレノイドを設けて、2種類の仕様を用意する必要がある。
すなわち、ソレノイドが過電圧給電又は低電圧給電となることで、ソレノイド動作が不十分となることを回避する必要がある。
【0007】
また、車載バッテリーは公称電圧が12V或いは24Vであるが、そのバッテリーを電源とする場合には、その給電電圧が、レギュレータ故障、コネクタの瞬間的断線、IGスイッチのチャタリング、バッテリーの着脱などによって大きく電圧変動する他に、スターター起動時やIGキー操作による単発瞬断や瞬低などによっても大きく電圧変動する。
したがって、上記したシフトロック装置のソレノイドはバッテリーを電源として給電されるため、このような大きな電圧変動に対して充分に耐えるものでなければならない。
【0008】
シフトロック装置のソレノイドが動作不十分となったり、過電圧給電により焼き付き断線したりした場合には、シフトロック機構やキーシリンダロック機構が動作不能となるために、シフトレバーをパーキング位置から移動させることができなくなったり、また、キーをキーシリンダから引き抜くことができなくなったり、シフトレバーがパーキング位置以外でもIGキーを引き抜くことができるなどの重大な問題が発生する。
また、逆にバッテリーからの給電が低い場合には、ソレノイドの動作が不十分となったり、シフトロック装置の起動に時間がかかったりする問題がある。
【0009】
そこで、上記の実情にかんがみ、本発明では、電源の給電電圧が予め定めた電圧変動範囲を超える電圧となったときは電動アクチュエータの給電を停止し、その電圧変動範囲を超えない平常電圧で電動アクチュエータを給電し、電源の電圧変動による影響を軽減させ、安定した確実動作の電動アクチュエータの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明では第1の発明として、電源から給電される電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータの給電と給電停止との切り換え機能を有する出力手段と、前記電源の給電電圧値を所定の時間間隔で連続的に検出する電圧検出手段とを備える電動アクチュエータの制御装置であって、前記電圧検出手段による最新の検出電圧値と、この最新の検出電圧値を含み、当該最新の検出電圧値に先行した過去数回の検出電圧値の平均電圧値とを比較して大きいか又は小さいかの電圧値を採用するように判定する機能を有し、かつ、採用した前記電圧値に対応させて前記出力手段を出力制御する制御部を備える構成としたことを特徴とする電動アクチュエータの制御装置を提案する。
【0011】
第2の発明としては、上記した第1の発明の電動アクチュエータの制御装置において、前記制御部が、前記電圧検出手段による最新の検出電圧値と、この最新の検出電圧値を含み、当該最新の検出電圧値に先行した過去数回の検出電圧値の平均電圧値とを比較して大きい電圧値を採用する機能と、比較により最新の電圧値が採用され、この電圧値が前記電源の予め定めた電圧変動範囲の上限値を超えるときは前記出力手段を給電停止に、また、比較により平均電圧値が採用され、この電圧値が前記電源の電圧変動範囲の上限値を超えないときは前記出力手段を給電に各々切換制御する機能とを有する構成としたことを特徴とする電動アクチュエータの制御装置を提案する。
【0012】
第3の発明としては、上記した請求項2に記載した電動アクチュエータの制御装置において、前記制御部が、前記電圧検出手段の検出電圧値にしたがって前記出力手段をデューティ比制御し、前記出力手段が、出力パルスのデューティ比を可変する構成としたことを特徴とする電動アクチュエータの制御装置を提案する。
【0013】
第4の発明としては、上記した請求項3に記載した電動アクチュエータの制御装置において、前記電動アクチュエータとして車輌に搭載された車載バッテリーを電源として給電されるキーロックソレノイドを備え、キーの引き抜き位置までのキーシリンダの回動を前記キーロックソレノイドで規制するキーシリンダロック機構としたことを特徴とする電動アクチュエータの制御装置を提案する。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明の電動アクチュエータの制御装置は、電圧検出手段が電源の給電電圧値を所定の時間間隔で連続的に電圧値を検出する。
そして、上記の制御部は、最も新しく検出した検出電圧値と、この最新の検出電圧値に先行した過去数回の検出電圧値の平均電圧値とを求め、さらに、これら最新の検出電圧値と平均電圧値とを比較し、比較結果に基づいて出力手段を制御する。
この結果、電源電圧の変動によって電動アクチュエータが故障したり、作動不良となることを防ぐことができる。
【0015】
第2の発明の電動アクチュエータの制御装置は、上記した第1の発明の電動アクチュエータの制御装置において、比較の結果より、最新の検出電圧値が大きいときは、給電電圧が増大したと判断し、この検出電圧値が電源の電圧変動範囲の上限値を超えているか否かを判断し、超えている検出電圧値である場合は、過電圧の給電に入ったとして出力手段の出力を遮断制御する。
【0016】
一方、比較の結果より、平均電圧値が大きいときは、給電電圧が減少したと判断し、平均電圧値が電源の電圧変動範囲の上限値を超えていない場合は、過電圧が平常電圧に回復したと判断し、出力手段によって電動アクチュエータを給電する。
【0017】
したがって、電源の給電電圧が何らかの原因によって所定の電圧変動範囲を超えて過電圧となった場合は、制御手段が出力手段の出力を即時に停止させ、また、過電圧状態から回復する際には、即時に回復させずに所定の遅延時間を待った後で制御部が出力手段を出力させるから、給電電圧が不安定な状態で電動アクチュエータを給電してしまうリスクを低減することができる。
この結果、電源電圧の過電圧変動によって電動アクチュエータが焼き付いたり、断線したりして生ずる電動アクチュエータの故障を確実に防ぐことができる。
【0018】
第3の発明の電動アクチュエータの制御装置は、上記した第2の発明の電動アクチュエータの制御装置において、搭載バッテリーを電源とする給電電圧を所定の変動範囲で検出し、その電圧変動範囲についてパルス出力手段のデューティ比を変える構成としてある。
すなわち、給電電圧がその変動範囲の下限電圧値以下となるときは、デューティ比を非制御とし、100%のデューティ比の出力パルスとし、また、その変動電圧の上限電圧値となるときは、上記のように出力パルスを遮断する。
このように、第3の発明の電動アクチュエータの制御装置では、電源の所定の電圧変動範囲を定め、その電圧変動範囲の検出電圧値に相応してパルス出力手段のデューティ比を制御するので、電源電圧の変動を精度高く検出することができる。
したがって、パルス出力手段の出力パルスが、バッテリーを電源とする電圧変動に係わらず、電動アクチュエータを最も適する一定平均電圧値となる。
【0019】
第4の発明の電動アクチュエータの制御装置は、上記した第3の発明の電動アクチュエータの制御装置において、電動アクチュエータとして、キーの引き抜き位置までのキーシリンダの回動を規制するキーロックソレノイドを備えたキーシリンダロック機構となっている。
その上、キーロックソレノイドは適当な一定平均電圧値の出力パルスをもって給電する構成としたので、ロック装置のキーロックソレノイドとしては、バッテリー12V仕様の車輌とバッテリー24仕様の車輌とで別々に用意する必要がなく、共通化することができ、経済的に、また、取り付け作業において有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、シフトロック装置に備えるキーシリンダロック機構の構成例を示すブロック図である。
【図2】12V仕様のバッテリーを搭載した車輌における給電電圧と出力パルス制御のデューティ比との関係を示す図である。
【図3】12V仕様のバッテリーを搭載した車輌における給電電圧と出力パルスの電圧平均値との関係を示す図である。
【図4】24V仕様のバッテリーを搭載した車輌における給電電圧と出力パルス制御のデューティ比との関係を示す図である。
【図5】24V仕様のバッテリーを搭載した車輌における給電電圧と出力パルスの電圧平均値との関係を示す図である。
【図6】上記したシフトロック装置に備える制御回路の動作を示したフローチャートである。
【図7】(A)図は、12V仕様の車載バッテリーを電源とする給電の過電圧を検出する状態を示すタイムチャート、(B)図は、電源の給電が過電圧に入った場合のキーロック出力回路の出力を示すタイムチャートである。
【図8】(A)図は、12V仕様の車載バッテリーを電源とする給電が過電圧から回復した平常電圧を検出する状態を示すタイムチャート、(B)図は、給電電圧が過電圧から平常電圧に回復した場合のキーロック出力回路の出力を示すタイムチャートである。
【図9】車載バッテリーを電源とする給電電圧の検出動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を車輌用のシフトロック装置として実施した一実施形態について図面に沿って説明する。
図1はシフトロック装置11を示し、このシフトロック装置11は、キーシリンダロック機構12を備えている。
そして、上記したキーシリンダロック機構12は、電動アクチュエータとしてのキーロックソレノイド13、出力パルスのデューティ比を可変としたキーロック出力回路(パルス出力手段)14、電圧検出手段としてのIG/ACC電圧検出回路(IG:イグニション・スイッチ、ACC:アクセサリ・スイッチ)15を備えている。
なお、キーシリンダロック機構12は、バッテリー16を電源とする給電電圧が給電されており、バッテリー電源がイグニッション・スイッチIGやアクセサリ・スイッチACCを介して供給される供給電圧により作動する構成となっている。
【0022】
キーロックソレノイド13は、既に述べたように、キーの引き抜きが可能な位置へのキーシリンダの回動を規制するもので、イグニション・スイッチIGやアクセサリ・スイッチACCを介して車載バッテリー16を電源として給電されるが、本実施形態では、バッテリー16を電源として給電されて動作するキーロック出力回路14の出力パルスをもって給電する。
具体的には、キーロック出力回路14は、出力パルスのデューティ比を可変とした出力パルス手段として構成してあり、このキーロック出力回路14がバッテリー22を電源とする給電電圧により動作し、その出力パルスによってキーロックソレノイド13を給電する。
【0023】
また、IG/ACC電圧検出回路15は、バッテリー16を電源とする給電電圧の電圧検出回路として設けたもので、イグニション・スイッチIGやアクセサリ・スイッチACCを介して供給されるバッテリー電源の給電電圧を検出し、その電圧検出信号を制御回路17に送る。
すなわち、制御回路17が入力された電圧検出信号から電源電圧を監視し、その監視にしたがって電源電圧に相応するデューティ比を演算し、デューティ比可変制御信号を制御線路18を介してキーロック出力回路14に送り、キーロック出力回路14の出力パルスのデューティ比を制御する。
【0024】
なお、制御回路17は、CPU,ROM、RAM、カウンタなどを備えるマイクロコンピュータで、IG/ACC電圧検出回路15から入力するサンプリング電圧、すなわち、バッテリー16を電源とする給電電圧をサンプリングし、給電電圧に相応するサンプリング電圧を入力してデューティ比を演算し、このデューティ比にしたがってキーロック出力回路14から一定の平均電圧値となる出力パルスを出力するように制御し、一定の平均電圧値の出力パルスをもってキーロックソレノイド13を給電する。
したがって、キーロック出力回路14の出力パルスについては、キーロックソレノイド13に最適となる一定の給電電圧値となるように予め定めることができる。
【0025】
上記した制御回路17は、バッテリー16が12V仕様のバッテリーか、24V仕様のバッテリーかを機種判定回路19の判定信号を入力して認識し、その認識に基づいてキーロック出力回路14を制御する給電電圧の変動範囲を定める。
すなわち、12V仕様のバッテリーと24V仕様のバッテリーとで分解能を同等とし、デューティ比の演算精度を高めている。
【0026】
その他、シフトロック出力回路20によって給電されるシフトロックソレノイド21は、シフトロック機構に備え、シフトレバーがパーキング位置にあるときにブレーキペダルを踏み込むことでアンロック状態とし、シフトレバーをパーキング位置以外の位置に移動可能とするもので、上記したシフトロック機構に備えるものである。
【0027】
また、22はバッテリー(+B)に接続されたIGスイッチ、23はバッテリー(+B)に接続されたACCスイッチ、24はブレーキペダルスイッチ、25はパーキングレンジ検出スイッチ(パーキング位置検出SW25a、パーキング位置以外検出SW25b)であり、26〜30はそれらスイッチの動作信号を制御回路17に入力するための入力回路である。
【0028】
さらに、制御回路17は、バッテリー入力回路31と定電圧回路32を介してバッテリー16によって給電される。
なお、定電圧回路32には電流容量切換回路33が設けてある。
その他、制御回路17には、書き込み用コネクタ34、リセット回路35などが備えてある。
【0029】
続いて、一実施形態として示したシフトロック装置11の動作について図2〜図9を参照して説明する。
キーシリンダロック機構12は、シフトレバーをパーキング位置に操作すると、パーキング位置検出SW25aの検出信号(またはパーキング位置以外検出SW25bのOFF信号)が制御回路17に入力することから、この検出信号を認識した制御回路17が制御線路18を介して給電停止信号をキーロック出力回路14に出力する。
【0030】
したがって、キーロック出力回路14がパルス出力を停止し、キーロックソレノイド13が無給電となるため、キーシリンダの規制溝からプランジャがばね勢力で後退し、ロック状態からアンロックに切り替わる。
この結果、キーの引き抜き位置(OFF位置)までのキーシリンダの回動が可能となり、この状態でキーを差し入れたり、引き抜くことができる。
【0031】
また、ブレーキペダルを踏み込みシフトレバーをパーキング位置以外の位置に移動させると、パーキング位置以外検出SW25bの検出信号(またはパーキング位置検出SW25aのOFF信号)が制御回路17に入力し、制御回路17がその検出信号を認識し、キーロック出力回路14から出力パルスを出力させるように制御する。
したがって、キーロックソレノイド13が給電され、そのプランジャがソレノイド13の励磁によりキーシリンダの規制溝に向かって突出するため、ロック可能状態となり、この状態でキーを差し入れたキーシリンダをOFF以外の位置に回動させれば、プランジャが規制溝に突入するため、キーシリンダのOFF位置への回動がロックされ、キーの引き抜きが不可能になる。
【0032】
すなわち、車輌の運転中はキーの引き抜きが不可能となり、また、車輌を停止し、シフトレバーをパーキング位置に移動させたときにキーシリンダをOFF位置に回動させてエンジンを止め、キーを引き抜くことができる。
【0033】
したがって、本実施形態では、キーロックソレノイド13は、キーシリンダがキー引き抜き位置以外で且つシフトレバーがパーキング位置以外にあるときに給電され、キーシリンダロック機構12をロック状態に保持するように構成されている。
図2、図3は、車載されたバッテリー16が12V仕様のバッテリーであるときに、キーロックソレノイド13に印加される給電状態を示す。
【0034】
この場合は、図2に示すように、バッテリーを電源とする給電電圧が7.5V〜20.0Vの範囲で変動したときに、キーロック出力回路14の出力パルスをデューティ比制御し、図3に示すところの一定の出力電圧平均値(Vs=7.5V)をもって給電する。
【0035】
すなわち、バッテリーの給電電圧が変動した場合には、7.5V〜20.0Vの範囲を、例えば、0〜3.5Vの範囲に分圧してサンプリングを行い、制御回路17はサンプリング電圧に応じたデューティ比を演算すると共に、これらのデューティ比制御によりPWM変調されたキーロック出力回路14の出力パルスが一定電圧の平均電圧値(7.5V)となるように設定してある。
【0036】
バッテリー16を電源とする給電電圧は、レギュレータ故障、コネクタの瞬間的断線、IGスイッチのチャタリング、バッテリーの着脱などが原因して大きく変動することがあるが、本実施形態では、その給電電圧を7.5V〜20.0Vの変動範囲に定め、その変動範囲の電圧値を検出し、検出した電圧値に対応したデューティ比にしたがってキーロック出力回路14の出力パルスをPWM変調する。
【0037】
なお、PWM変調の出力パルスを出力する給電電圧範囲を7.5V〜20.0Vの変動範囲に定めたのは、0〜3.5Vの範囲のサンプリング電圧で充分に信頼のあるデューティ比が得られること、また、この範囲ならば過電圧とならないことなどに基づくものである。
したがって、バッテリーを電源とする給電電圧が20.0V以上となるときは、過電圧としてキーロック出力回路14のパルス出力を停止させるように制御回路17が制御し、また、給電電圧が7.5V以下となるときは制御回路17はデューティ制御しない。
【0038】
キーロック出力回路14の出力パルスの平均電圧値を7.5Vの一定電圧値としたのは、使用電圧範囲が6V〜9Vのシフトロックソレノイド13に合わせてセンター値である7.5Vに定めた電圧値であるから、その他の使用電圧範囲を持つシフトロックソレノイドについてはその使用電圧範囲にしたがって定めた平均電圧値とすることができる。
なお、バッテリー16を電源とする給電電圧の変動をデューティ比に演算する図2のデューティ比曲線Pは試験によって定めたもので、図3に示すように、シフトロックソレノイド13に最も適する給電電圧Vs=7.5Vに設定することができる。
【0039】
したがって、本実施形態によれば、バッテリーを電源とする給電電圧が、レギュレータ故障、コネクタの瞬間的断線、IGスイッチのチャタリングなどが原因して大きく変動したとしても、キーロックソレノイド13は一定平均電圧値の出力パルスで給電される。
これより、キーロックソレノイド13がバッテリー電源の電圧変動に関係なく確実に動作するので、確実に安定動作するキーシリンダロック機構となる。
【0040】
図4、図5は、車載されたバッテリー16が24V仕様のバッテリーであるときに、キーロックソレノイド13に印加される給電状態を示す。
この場合は、図4に示すように、バッテリー16を電源とする給電電圧が7.5V〜35.0Vの範囲で給電されたときに、キーロック出力回路14の出力パルスをデューティ制御し、図5に示すところの一定の出力電圧平均値(Vs=7.5V)の出力パルスをもって給電するようにしてある。
その他は、12Vバッテリー仕様の場合と同様となる。
【0041】
図6は制御回路17の動作を示したフローチャートである。
図示する如く、機種判定回路19の判定信号にしたがって12Vバッテリー仕様の車輌か24Vバッテリー仕様の車輌かを判定し、そのバッテリー種類にしたがう動作となる。(ST100)
続いて、IG/ACC電圧検出回路15によりバッテリーを電源とする給電電圧が検出され、電圧検出信号が制御回路17に入力される。(ST101)
【0042】
そして、次のステップでは、電圧検出信号に対応したデューティ比が演算されてデューティ比可変制御信号が出力される。(ST102)
続いて、電圧検出信号から、12Vバッテリーの仕様では20V、24Vバッテリー仕様では35.0Vを超えた過電圧であるか否かが判断され、過電圧でないときは、バッテリー電圧が7.5V以上か否かが判断される。(ST103、ST104)
【0043】
バッテリーを電源とする給電電圧が7.5V以上の場合は、キーロック出力回路14をデューティ比可変制御信号によって制御し、デューティ制御されたPMW変調の出力パルスを出力させる。(ST105)
ST103のステップにおいて、過電圧であると判断したときは、出力パルスの出力を停止させるようにキーロック出力回路14を制御し、ST104のステップにおいて、バッテリー電圧が7.5V以下と判断したときは、デューティ制御することなく、キーロック出力回路14からはデューティ比100%の出力パルスを出力させる。(ST106、ST107)
【0044】
図7、図8は、バッテリー16を電源とする給電電圧の検出動作を示すタイムチャート、つまり、図6のフローチャートのステップST101(電圧値検出ステップ)の動作を説明するタイムチャート、図9は電源の電圧検出動作を示すフローチャートである。
また、このタイムチャートは、バッテリー12V仕様の場合を示し、図7は過電圧の検出動作の説明図で、図8は過電圧から回復した定常電圧の検出動作の説明図である。
【0045】
12Vバッテリー仕様を電源とする給電電圧は、既に説明した通り、7.5V〜20.0Vの電圧変動範囲について検出する。
すなわち、本実施形態では、図7(A)に示すように、IG/ACC電圧検出回路15が、給電電圧を周波数50μ秒のサンプリング電圧を10ms間隔で連続して検出し、検出した電圧0〜3.5Vの範囲に分圧した値であるBvsを検出電圧信号として制御回路17に出力する。(図9、ST200、ST201)
【0046】
制御回路17は、電圧検出信号を入力し、入力する各々のサンプリング電圧Bvsを平均化(ABvs)すると共に、サンプリング電圧Bvsを入力する毎に、最も新しく検出した平均電圧(最新の検出電圧値ABvs)と、この最新の検出電圧値を含む先行した3つのサンプリング電圧の平均電圧値(4ABvs)とを比較し、比較した結果、高い方の電圧値に合わせた制御を行う。
【0047】
具体的には、図7(A)に示すように、時間Tnのサンプリング電圧Bvsを入力した時は、このサンプリング電圧Bvsを平均化して最新の検出電圧値ABvsを求め、さらに、時間Tn−3、Tn−2、Tn−1、Tnで検出したサンプリング電圧Bvsの平均電圧値(4ABvs)を求める。(図9、ST202、ST203)
【0048】
続いて、上記の最新の検出電圧値ABvsと平均電圧値4ABvsを比較する。
(図9、ST204)
比較の結果、最新の検出電圧値ABvsが大きい場合は、すなわち、ABvs>4ABVsとなるときは、時間Tnで検出した最新の検出電圧値ABvsを採用し、この最新の検出電圧値ABvsが給電電圧の変動範囲の上限値である20.0Vを超えている場合には、過電圧に入ったと判断し、図7(B)に示すように、キーロック出力回路14の出力パルスPVを停止させる。(図9、ST205、図6、ST102、ST103、ST106)
【0049】
このように、過電圧に入った直後の時間Tnのサンプリング電圧Bvsを採用して出力パルスPVの出力を停止させるので、過電圧状態を即時に検出し、供給電圧を遮断することができるため、キーロックソレノイド13が破損するリスクを低減でき、突発的な電圧変動に対しても安定動作のキーロック装置となる。
なお、ABvs≦4ABVsとなるときは、デューティ制御の出力パルスPVを継続して出力させる。(図9、ST206、図6、ST103〜ST105)
【0050】
過電圧が回復する場合は図8に示す動作となる。
すなわち、時間Tnで検出した最新の検出電圧値ABvs(サンプリング電圧Bvsの平均値)と、Tn−3、Tn−2、Tn−1、Tnで検出したサンプリング電圧Bvsの平均電圧値4ABvsとを比較する。(図9、ST201〜ST203)
【0051】
そして、ABvs≧4ABvsとなるときは、最新の検出電圧値ABvsを採用し、この電圧値ABvsが電圧変動範囲の上限値20.0Vを超えていれば、図8(B)に示すように、出力パルスの停止を継続させ、また、ABvs<4ABvsとなるときは、平均電圧値4ABvsを採用し、この平均電圧値4ABvsが電圧変動範囲の上限値である20.0Vを超えていなければ、過電圧が回復したと判断し、キーロック出力回路14からデューティ制御の出力パルスPVを出力させる。(図9、ST204〜ST206、図6、ST103〜ST106)
なお、本実施形態では、この場合に出力させる出力パルスPVは、時間Tn+1のサンプリング電圧を検出するまで待機し、その後に出力させるようにしてある。
これは、過電圧が平常電圧に回復して安定した後に出力パルスPVを出力させるためである。
【0052】
以上、本発明の好ましい一実施形態について説明したが、キーロックソレノイドの給電を停止させてキーの引き抜きをロックするように構成することもできる。
また、本発明は、キーシリンダロック機構にかぎらず、例えば、シフトレバーをパーキング位置でロックするシフトロック機構等、電動アクチュエータを備える装置についても同様に実施することができ、さらに、電動アクチュエータとしてモータを備える電動アクチュエータの制御装置としても実施することが可能である。
さらに、本発明では最新の検出電圧値ABvsと、この最新の検出電圧値を含む先行した3つのサンプリング電圧の平均電圧値(4ABvs)のうち高い方の電圧値を採用したが、逆に電動アクチュエータの供給電圧が低い場合に、ABvsと4ABvsを比較して低い方の電圧値を採用し、採用した検出電圧値が電動アクチュエータの電圧変動範囲の下限値を下回る場合には、例えば制御回路への給電の遮断等の制御を行って確実な動作を行う構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
車輌に搭載されるシフトロック装置のシフトロック機構やキーシリンダロック機構などとして適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
12 キーシリンダロック機構
13 キーロックソレノイド
14 キーロック出力回路
15 IG/ACC電圧検出回路
16 バッテリー
17 制御回路









【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から給電される電動アクチュエータと、
前記電動アクチュエータの給電と給電停止との切り換え機能を有する出力手段と、
前記電源の給電電圧値を所定の時間間隔で連続的に検出する電圧検出手段とを備える電動アクチュエータの制御装置であって、
前記電圧検出手段による最新の検出電圧値と、この最新の検出電圧値を含み、当該最新の検出電圧値に先行した過去数回の検出電圧値の平均電圧値とを比較して大きいか又は小さいかの電圧値を採用するように判定する機能を有し、かつ、採用した前記電圧値に対応させて前記出力手段を出力制御する制御部を備える構成としたことを特徴とする電動アクチュエータの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載した電動アクチュエータの制御装置において、
前記制御部が、前記電圧検出手段による最新の検出電圧値と、この最新の検出電圧値を含み、当該最新の検出電圧値に先行した過去数回の検出電圧値の平均電圧値とを比較して大きい電圧値を採用する機能と、
比較により最新の電圧値が採用され、この電圧値が前記電源の予め定めた電圧変動範囲の上限値を超えるときは前記出力手段を給電停止に、また、比較により平均電圧値が採用され、この電圧値が前記電源の電圧変動範囲の上限値を超えないときは前記出力手段を給電に各々切換制御する機能とを有する構成としたことを特徴とする電動アクチュエータの制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載した電動アクチュエータの制御装置において、
前記制御部が、前記電圧検出手段の検出電圧値にしたがって前記出力手段をデューティ比制御し、前記出力手段が、出力パルスのデューティ比を可変する構成としたことを特徴とする電動アクチュエータの制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載した電動アクチュエータの制御装置において、
前記電動アクチュエータとして車輌に搭載された車載バッテリーを電源として給電されるキーロックソレノイドを備え、キーの引き抜き位置までのキーシリンダの回動を前記キーロックソレノイドで規制するキーシリンダロック機構としたことを特徴とする電動アクチュエータの制御装置。

























【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−252585(P2011−252585A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128672(P2010−128672)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】