説明

電動アシスト装置

【課題】ハウジングを組み立てるべく、それぞれが合成樹脂製である第一、第二両ハウジング素子同士を結合した状態で、これら第一、第二両ハウジング素子同士の同軸度を十分に確保できる構造を実現する。
【解決手段】前記第一ハウジング素子16aの端部に円環状の第一芯合わせ用金具35を、インサート成形により、この第一ハウジング素子16aと同心に固定する。前記第二ハウジング素子17aの外周部に円環状の第二芯合わせ用金具36を、インサート成形により、この第二ハウジング素子17aと同心に固定する。そして、前記第一、第二両芯合わせ用金具35、36同士を嵌合させた状態で、前記第一、第二両ハウジング素子16a、17a同士を、複数本のボルト18、18により結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トルクセンサやウォーム式減速機等を収納したハウジングの軽量化並びに低コスト化を図る為に、このハウジングを合成樹脂製とした、電動式パワーステアリング装置を構成する電動アシスト装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
図8〜10は、電動式パワーステアリング装置の従来構造の1例を示している。尚、本明細書に於いて、前後方向は、自動車の進行方向によるもので、図1、5、8、9の左側が「前側」となり、同じく右側が「後側」となる。図8〜10に示した従来構造の場合、後端部にステアリングホイール1を固定したステアリングシャフト2を、円筒状のステアリングコラム3の内側に、回転自在に支持している。操舵時に前記ステアリングホイール1の動きは、前記ステアリングシャフト2、電動アシスト装置4、自在継手5a、中間シャフト6、別の自在継手5bを介して、ステアリングギヤユニット7の入力軸8に伝達される。そして、この入力軸8が回転すると、このステアリングギヤユニット7の両側に配置された1対のタイロッド9、9が押し引きされて左右1対の操舵輪に、前記ステアリングホイール1の操作量に応じた舵角が付与される。
【0003】
前記電動アシスト装置4は、図9〜10に詳示する様に、補助動力源である電動モータ10と、この電動モータ10を支持した、金属製で中空状のハウジング11と、それぞれがこのハウジング11の内部に配置された、被アシスト軸である出力軸12と、トーションバー13と、トルク検出器14と、ウォーム式減速機15とを備える。このうちのハウジング11は、前後方向に2分割可能な、分割タイプのものである。即ち、このハウジング11は、中間部乃至後端部を構成する中空状の第一ハウジング素子16と、前端部を構成する円輪状の第二ハウジング素子17とを、互いの前端部と後端部とを嵌合させる事により、互いの同軸度を十分に確保した状態で、結合手段である複数本(図示の例では2本)のボルト18、18により、互いに結合して成る。そして、前記第一ハウジング素子16の上下面又は側面に前記電動モータ10を、同じく後端面に前記ステアリングコラム3の前端部を、それぞれ複数本のボルト19a、19bにより結合固定している。
【0004】
又、前記出力軸12は、前後方向に配設された状態で、それぞれがウォームホイール側転がり軸受である、第一、第二玉軸受20、21により、前記ハウジング11の内側に回転自在に支持されている。これら両玉軸受20、21のうちの一方の玉軸受20を構成する外輪22は、前記第一ハウジング素子16の中間部前端寄り部分に内嵌固定されており、他方の玉軸受21を構成する外輪23は、前記第二ハウジング素子17に内嵌固定されている。そして、前記出力軸12に、前記ステアリングシャフト2の前端部を、前記トーションバー13を介して連結している。これと共に、前記出力軸12の前端部で、前記ハウジング11の外部に突出した部分に、前記自在継手5a(図8)を結合している。
【0005】
又、前記トルク検出器14は、前記ステアリングシャフト2の前端部に外嵌固定した状態で、前記出力軸12の後端部の周囲に配置したトルク検出用スリーブ24と、このトルク検出用スリーブ24の周囲に配置した状態で、前記第一ハウジング素子16の後端寄り部分に内嵌固定した円環状のトルクセンサ25とを備える。このうちのトルクセンサ25は、軸方向両端部に内向鍔部を有する円筒状のセンサケース26の内側に、センサコイル等の他の構成部品を保持して成る。この様なトルクセンサ25は、前記第一ハウジング素子16の内周面の後端寄り部分に設けられた段部27と、前記第一玉軸受20の外輪22の側面に重ね合わせた皿ばね28との間に挟持される事により、軸方向の位置決めを図られた状態で、前記第一ハウジング素子16に内嵌固定されている。
【0006】
又、前記ウォーム式減速機15は、ウォームホイール29と、ウォーム軸30の中間部に設けたウォーム31とを、互いに噛合させて成る。このうちのウォームホイール29は、前記出力軸12の中間部で、前記第一、第二両玉軸受20、21同士の間に挟まれた部分に、セレーション係合等により外嵌固定されている。又、前記ウォーム軸30は、その両端部を、それぞれがウォーム側転がり軸受である、第三、第四玉軸受32、33により、前記第一ハウジング素子16の下部の左右両端部に対し、回転自在に支持されている。そして、前記ウォーム軸30の基端部(図10に於ける上端部)に、前記電動モータ10の出力軸34を、回転力の伝達を可能に結合している。
【0007】
上述の様に構成する電動式パワーステアリング装置の場合、操舵時に前記ステアリングホイール1から前記ステアリングシャフト2にトルクが加わると、このトルクの方向及び大きさを、前記トルク検出器14が検出する。即ち、前記ステアリングホイール1から前記ステアリングシャフト2にトルクが加わると、このステアリングシャフト2と前記出力軸12とを連結する、前記トーションバー13が、捻り方向に弾性変形する。そして、この弾性変形に伴い、前記ステアリングシャフト2と前記出力軸12とが相対回転する。この相対回転量と前記トルクの方向及び大きさとの間には、相関関係がある。そこで、前記トルク検出器14は、前記相対回転量に基づいて、前記トルクの方向と大きさとを検出する。そして、このトルクの検出結果に基づき、前記電動モータ10が、前記ウォーム式減速機15を介して前記出力軸12を、前記ステアリングホイール1から前記ステアリングシャフト2に入力されたトルクよりも大きなトルクで回転させる。従って、前記左右1対の操舵輪に舵角を付与する際に必要となる、前記ステアリングホイール1の操作力を軽減する事ができる。
【0008】
上述した様な電動式パワーステアリング装置を構成する電動アシスト装置4に関しては、従来から、前記ハウジング11の軽量化並びに低コスト化を図る為に、このハウジング11を合成樹脂製とする事が考えられている。例えば、特許文献1には、電動アシスト装置に関して、ハウジングを構成する1対のハウジング素子のうち、一方のハウジング素子を金属製とすると共に、他方のハウジング素子を合成樹脂製とする構造が記載されている。ところが、この特許文献1に記載された従来構造の場合には、前記ハウジングを組み立てるべく、前記両ハウジング素子の端部同士を嵌合させた状態で、これら両ハウジング素子同士の同軸度を十分に確保できない可能性がある。即ち、前記合成樹脂製のハウジング素子の形状精度及び寸法精度は、前記金属製のハウジング素子の形状精度及び寸法精度に比べて劣る。この為、この合成樹脂製のハウジング素子の端部の形状精度及び寸法精度を十分に確保できなかった場合には、これら両ハウジング素子の端部同士を嵌合させた状態で、これら両ハウジング素子同士の同軸度を十分に確保できなくなる。
【0009】
又、特許文献2には、電動アシスト装置に関して、ハウジングを構成する1対のハウジング素子を両方とも合成樹脂製とし、且つ、これら両ハウジング素子の端部同士の嵌合部の近傍部分を溶着する構造が記載されている。この特許文献2に記載された従来構造の場合には、前記両ハウジング素子が両方とも合成樹脂製である為、上述の様な理由でこれら両ハウジング素子同士の同軸度を十分に確保できなくなる可能性が、より高くなる。
【0010】
何れにしても、前記両ハウジング素子同士の同軸度を十分に確保できない場合には、一方のハウジング素子の内側に組み付けた構成部材と、他方のハウジング素子の内側に組み付けた構成部材とのうち、互いに同心に配置すべき各構成部材(軸受、被アシスト軸、トーションバー、トルク検出用スリーブ、トルクセンサ等)同士の同軸度も十分に確保できなくなる。この結果、電動アシスト装置の運転時に、当該各構成部材に無理な力が加わって、これら各構成部材の耐久性が低下すると言った不都合や、トルク検出器によるトルクの検出精度が悪化すると言った不都合を生じる可能性がある。又、著しい場合には、電動アシスト装置の組み立て自体を行えなくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−172433号公報
【特許文献2】特開2009−298246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、ハウジングを構成する1対のハウジング素子の少なくとも一方を合成樹脂製とする場合に、これら両ハウジング素子の端部同士を嵌合させた状態で、これら両ハウジング素子同士の同軸度を十分に確保できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の電動アシスト装置は、前述の図9〜10に示した従来構造の場合と同様、電動モータと、減速機と、環状のトルクセンサと、その内部にこれら減速機とトルクセンサとを配置したハウジングとを備える。又、このハウジングは、このトルクセンサの軸方向に関して2分割された1対のハウジング素子を、互いの一部分同士を嵌合させた状態で、ボルト等の結合手段により互いに結合して成る。
特に、本発明の電動アシスト装置に於いては、前記両ハウジング素子のうちの少なくとも一方のハウジング素子を、合成樹脂製としている。又、この合成樹脂製のハウジング素子の一部分で、相手ハウジング素子の一部分に嵌合させる部分に、円環状の芯合わせ用金具を、インサート成形により、前記合成樹脂製のハウジング素子と同心に固定(モールド)している。即ち、前記両ハウジング素子のうちの何れか一方のハウジング素子のみを合成樹脂製としている場合には、この一方のハウジング素子に固定した前記芯合わせ用金具を、他方のハウジング素子の一部分に嵌合させる。又、前記両ハウジング素子を両方とも合成樹脂製としている場合には、これら両ハウジング素子のそれぞれに固定した前記芯合わせ用金具同士を互いに嵌合させる。
【0014】
又、前記減速機が、ウォーム式減速機であり、且つ、前記ハウジングの内部に、このウォーム式減速機を構成するウォームホイールを外嵌固定した被アシスト軸が、前記トルクセンサの軸方向に配設されており、且つ、前記両ハウジング素子のそれぞれに対して、それぞれが前記被アシスト軸を回転自在に支持する為のウォームホイール側転がり軸受が内嵌支持されている電動アシスト装置に関して、本発明を適用する場合に、好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、前記合成樹脂製のハウジング素子の一部分で、前記ウォームホイール側転がり軸受を構成する外輪の周囲部分に、金属製で円環状のウォームホイール側ホルダを、前記芯合わせ用金具と同心に固定すると共に、このウォームホイール側ホルダに前記ウォームホイール側転がり軸受を構成する外輪を内嵌固定する。
尚、前記合成樹脂製のハウジング素子に対する前記ウォームホイール側ホルダの固定方法としては、インサート成形による固定方法を採用するのが好ましいが、接着や締り嵌め(圧入)等による固定方法を採用する事もできる。
【0015】
又、上述の請求項2に記載した発明を実施する場合に、好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、前記芯合わせ用金具と前記ウォームホイール側ホルダとを、互いに一体に造る。
又、上述の請求項2〜3に記載した発明を実施する場合に、好ましくは、請求項4に記載した発明の様に、前記トルクセンサを、前記合成樹脂製のハウジング素子に対し、前記ウォームホイール側ホルダにより軸方向の位置決めを図った状態で固定する。
【0016】
又、前記減速機が、ウォーム式減速機であり、且つ、このウォーム式減速機を構成するウォーム軸の両端部が、前記合成樹脂製のハウジング素子に対して、それぞれウォーム側転がり軸受により回転自在に支持されている電動アシスト装置に関して、本発明を適用する場合に、好ましくは、請求項5に記載した発明の様に、前記合成樹脂製のハウジング素子の一部分で、前記両ウォーム側転がり軸受を構成する外輪の周囲部分に、それぞれ金属製で円環状のウォーム側ホルダを、互いに同心に固定すると共に、これら両ウォーム側ホルダに前記両ウォーム側転がり軸受を構成する外輪を内嵌固定する。
尚、前記合成樹脂製のハウジング素子に対する前記両ウォーム側ホルダの固定方法としては、インサート成形による固定方法を採用するのが好ましいが、接着や圧入(締り嵌め)等による固定方法を採用する事もできる。
【発明の効果】
【0017】
上述の様に構成する本発明の電動アシスト装置の場合には、ハウジングの軽量化並びに低コスト化を図るべく、このハウジングを構成する1対のハウジング素子のうちの、少なくとも一方のハウジング素子を合成樹脂製とした構造を有していながらも、前記ハウジングを構成すべく、前記両ハウジング素子の一部分同士を嵌合させた状態で、これら両ハウジング素子同士の同軸度を十分に確保できる。
即ち、前記合成樹脂製のハウジング素子の一部分で、相手ハウジング素子の一部分に嵌合させる部分には、円環状の芯合わせ用金具を、インサート成形により、前記合成樹脂製のハウジング素子と同心に固定している。この芯合わせ用金具は、金属製の部品であり、合成樹脂製の部品に比べて、形状精度及び寸法精度を良好に造れる。この為、前記ハウジングを組み立てるべく、前記両ハウジング素子の一部分同士を嵌合させた状態で、これら両ハウジング素子同士の同軸度を十分に確保できる。従って、一方のハウジング素子の内側に組み付ける構成部材と、他方のハウジング素子の内側に組み付ける構成部材とのうち、互いに同心に配置すべき各構成部材(軸受、被アシスト軸、トルクセンサ等)同士の同軸度を、十分に確保できる。この結果、運転時に、これら各構成部材に無理な力が加わり、これら各構成部材の耐久性が低下すると言った不都合や、前記トルクセンサによるトルクの検出精度が悪化すると言った不都合が発生する事を防止できる。
【0018】
又、請求項2に記載した発明の場合には、ウォームホイール側転がり軸受を構成する外輪を、合成樹脂製のハウジング素子に固定したウォームホイール側ホルダに内嵌固定している。このウォームホイール側ホルダは、前記合成樹脂製のハウジング素子に対し、前記芯合わせ用金具と同心に固定されている。又、前記ウォームホイール側ホルダは、金属製の部品であり、合成樹脂製の部品に比べて、形状精度及び寸法精度を良好に造れる。この為、前記ハウジングを組み立てた状態で、前記両ハウジング素子のそれぞれに内嵌支持したウォームホイール側転がり軸受同士の同軸度を十分に確保できる。
【0019】
又、請求項3に記載した発明の場合には、芯合わせ用金具とウォームホイール側ホルダとが一体に造られている為、これら芯合わせ用金具とウォームホイール側ホルダとが別体である場合に比べて、これら芯合わせ用金具とウォームホイール側ホルダとの同軸度をより十分に確保できる。従って、前記両ハウジング素子のそれぞれに内嵌支持したウォームホイール側転がり軸受同士の同軸度を、より十分に確保できる。又、前記芯合わせ用金具と前記ウォームホイール側ホルダとが一体に造られている為、このウォームホイール側ホルダの剛性を向上させる事ができる。従って、被アシスト軸から、前記ウォームホイール側転がり軸受を介して、前記ウォームホイール側ホルダに作用する荷重の支承能力を高められる。又、前記芯合わせ用金具と前記ウォームホイール側ホルダとが一体に造られている為、前記合成樹脂製のハウジング素子が、吸水や温度変化等の環境変化による影響で変形しようとしても、前記ウォームホイール側ホルダの位置が維持される。従って、前記両ハウジング素子のそれぞれに内嵌支持したウォームホイール側転がり軸受同士の同軸度を維持できる。又、前記合成樹脂製のハウジング素子の場合には、この合成樹脂の射出成形時に、この合成樹脂の冷却・収縮に伴って生じるヒケと呼ばれる変形により、各部の形状精度及び寸法精度を十分に高める事が難しくなる。これに対し、請求項3に記載した発明の場合には、前記芯合わせ用金具と前記ウォームホイール側ホルダとが一体に造られている為、前記合成樹脂製のハウジング素子に対してインサートされる一部品の大きさが大きくなる。従って、前記ヒケによる変形量を抑える事ができ、その分だけ、前記合成樹脂製のハウジング素子の形状精度及び寸法精度を高められる。
【0020】
又、請求項4に記載した発明の場合には、合成樹脂製のハウジング素子に対して、トルクセンサの軸方向の位置決めを図る為にのみ用いる部材を組み付ける必要がなくなる。この為、部品点数の減少に伴うコスト低減を図れる。
【0021】
又、請求項5に記載した発明の場合には、1対のウォーム側転がり軸受を構成する外輪を、それぞれ合成樹脂製のハウジング素子に固定したウォーム側ホルダに内嵌固定している。これら両ウォーム側ホルダは、前記合成樹脂製のハウジング素子に対し、互いに同心に固定されている。又、これら両ウォーム側ホルダは、金属製の部品であり、合成樹脂製の部品に比べて、形状精度及び寸法精度を良好に造れる。この為、前記両ウォーム側転がり軸受同士の同軸度を十分に確保できる。
【0022】
又、請求項2、5に記載した発明の場合には、合成樹脂製のハウジング素子に内嵌支持する転がり軸受(ウォームホイール側転がり軸受又はウォーム側転がり軸受)に関して、この転がり軸受を構成する外輪を、前記合成樹脂製のハウジング素子に対して直接内嵌固定しておらず、金属製で円環状のホルダ(ウォームホイール側ホルダ又はウォーム側ホルダ)を介して内嵌固定している。この為、以下の様な効果を得られる。
即ち、前記合成樹脂製のハウジング素子に前記外輪を、インサート成形により固定する場合には、このインサート成形により発生する熱や圧力によって、前記転がり軸受を構成する各部材が変形若しくは脱落したり、この転がり軸受の内部に封入したグリースが劣化若しくは漏洩すると言った不都合が発生する可能性がある。これに対し、請求項2、5に記載した発明の場合には、この様な不都合が発生する事を回避できる。
又、前記外輪を前記合成樹脂製のハウジング素子に対して、締り嵌めで内嵌固定する場合には、嵌合部でクリープ(周方向の滑り)が発生し易くなる。これに対し、請求項2、5に記載した発明の場合には、前記外輪を前記ホルダに対して、締り嵌めで内嵌固定しても、嵌合部でクリープを発生しにくくできる。
又、請求項2、5に記載した発明の場合、前記ホルダの軸方向寸法を、前記外輪の軸方向寸法よりも大きくする事により、このホルダの、前記合成樹脂製のハウジング素子に対する接合面積を広くすれば、この合成樹脂製のハウジング素子に対する前記ホルダの結合強度を高められる。従って、この合成樹脂製のハウジング素子に対する前記外輪の(前記ホルダを介しての)結合強度を高められる。尚、前記ホルダに、切り欠き若しくは凹溝を形成し、これら切り欠き若しくは凹溝に、前記ハウジング素子を構成する合成樹脂の一部を進入し固化すれば、このハウジング素子に対する前記ホルダの結合強度(耐クリープ性)をより高められる。
又、前記外輪の軸方向の位置決めを、止め輪によって行う場合、この止め輪を係止する為の係止溝を、前記合成樹脂製のハウジング素子の内周面に形成すると、この合成樹脂の線膨張係数や自己潤滑性の影響により、前記止め輪による強固な位置決めを行う事が難しくなる。これに対し、請求項2、5に記載した発明の場合、前記係止溝を、前記ホルダの内周面に形成すれば、前記止め輪による強固な位置決めを行える。尚、このホルダの内周面に前記係止溝を形成する作業は、このホルダを前記合成樹脂製のハウジングに固定する前の単品の状態で行う事により、容易に行える。
又、請求項2、5に記載した発明の場合には、前記ホルダの一部にかしめ部を形成し、このかしめ部により、前記外輪の軸方向の位置決めを行う事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、図8の拡大B−B断面に相当する図。
【図2】一部を図1のA−A線で切断した状態で示す、図1の左側から見た図。
【図3】第一ハウジング素子の一部、並びに、この第一ハウジング素子に固定した第一ホルダ及び第一玉軸受のみを取り出して、図2と同方向から見た図。
【図4】第二ハウジング素子、並びに、この第二ハウジング素子に固定した第二ホルダ及び第二玉軸受のみを取り出して図2と同方向から見た図。
【図5】本発明の実施の形態の第2例を示す、図1と同様の図。
【図6】同じく、図3と同様の図。
【図7】同じく、図4と同様の図。
【図8】電動式パワーステアリング装置の1例を示す、部分切断側面図。
【図9】図8の拡大B−B断面図。
【図10】一部を図9のC−C線で切断した状態で示す、図9の左側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施の形態の第1例]
図1〜4は、請求項1、2、4、5に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、ハウジング11aを構成する第一、第二両ハウジング素子16a、17aの材質と、これら第一、第二両ハウジング素子16a、17a同士の結合部の構造と、これら第一、第二両ハウジング素子16a、17aに対する他の構成部材の組み付け部の構造とにある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図8〜10に示した従来構造の場合と同様である。この為、同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0025】
本例の場合、前記ハウジング11aを構成する第一、第二両ハウジング素子16a、17aを、それぞれ合成樹脂製としている。尚、図1〜4では、これら合成樹脂製の第一、第二両ハウジング素子16a、17aに対応する部分に、斜格子を付している。又、本例の場合、前記第一、第二両ハウジング素子16a、17a同士を、第一、第二両芯合わせ用金具35、36を介して結合している。即ち、本例の場合、前記第一ハウジング素子16aの前端部に、円環状の前記第一芯合わせ用金具35を、インサート成形により、この第一ハウジング素子16aと同心に固定している。この第一芯合わせ用金具35は、第一円筒部37と、この第一円筒部37の前端縁の径方向反対側となる2箇所位置から外径側に直角に折れ曲がった1対の第一取付板部38、38と、これら両第一取付板部38、38の中央部に形成したねじ孔39、39とを備える。尚、図示の例では、前記第一ハウジング素子16aの前端部で、これら両ねじ孔39、39と整合する部分に、これら両ねじ孔39、39と連続するねじ孔39a、39aを形成している。但し、これら各ねじ孔39a、39aは、単なる通孔とする事もできる。
【0026】
又、前記第二ハウジング素子17aの外周部分に、円環状の前記第二芯合わせ用金具36を、インサート成形により、この第二ハウジング素子17aと同心に固定している。この第二芯合わせ用金具36は、第二円筒部40と、この第二円筒部40の前端縁から外径側に直角に折れ曲がった円輪状の鍔部41と、この鍔部41の径方向反対側となる2箇所位置から外径側に突出した1対の第二取付板部42、42と、これら両第二取付板部42、42の中央部に形成した通孔43、43とを備える。そして、前記第一円筒部37を前記第二円筒部40にがたつきなく外嵌すると共に、前記両第一取付板部38、38と前記両第二取付板部42、42との互いに対向する側面同士を当接させている。更に、この状態で、これら両第二取付板部42、42に形成した通孔43、43に挿通した、結合手段である1対のボルト18、18の杆部を、前記両第一取付板部38、38に形成したねじ孔39、39に螺合し、更に締め付けている。これにより、前記第一、第二両ハウジング素子16a、17a同士を結合している。
【0027】
又、本例の場合、それぞれが出力軸12を回転自在に支持する為のウォームホイール側転がり軸受である、第一、第二両玉軸受20、21を構成する外輪22、23を、前記第一、第二両ハウジング素子16a、17aに対し、それぞれがウォームホイール側ホルダである、第一、第二ホルダ44、45を介して内嵌固定している。即ち、本例の場合、前記第一ハウジング素子16aの一部分で、前記第一玉軸受20の外輪22の周囲部分である、この外輪22の外周面及び後端面と対向する部分に、金属製で円環状の前記第一ホルダ44を、インサート成形により、前記第一芯合わせ用金具35と同心に固定している。この第一ホルダ44は、円筒部46と、この円筒部46の後端部から内径側に直角に折れ曲がった円輪部47とを備える。そして、このうちの円筒部46に、前記第一玉軸受20の外輪22を締り嵌めで内嵌している。又、この状態で、前記円輪部47の前側面に、この外輪22の後端面を当接させる事により、この外輪22の軸方向の位置決めを図っている。尚、本例の場合、前記第一ホルダ44に関しては、前記第一ハウジング素子16aに対し、前記円筒部46の外周面だけでなく、前記円輪部47の後側面をも接合する事により、この接合部分の面積を広くする事で、前記第一ハウジング素子16aに対する接合強度を十分に確保している。前記円筒部46の外周面に、軸方向の凹溝を形成し、前記第一ハウジング素子16aを構成する合成樹脂をこの凹溝内に進入し固化させれば、前記接合強度をより高くできる。
【0028】
又、前記第二ハウジング素子17aの一部分で、前記第二玉軸受21の外輪23の周囲部分である、この第二ハウジング素子17aの内周部に、金属製で円環状の前記第二ホルダ45を、インサート成形により、前記第二芯合わせ用金具36と同心に固定している。この第二ホルダ45は、円筒部48と、この円筒部48の前端部から内径側に直角に折れ曲がった円輪部49とを備える。そして、このうちの円筒部48に、前記第二玉軸受21の外輪23を締り嵌めで内嵌している。又、この状態で、この外輪23を、前記円輪部49と、前記円筒部48の内周面の後端寄り部分に形成した係止溝50に係止した止め輪51との間で、軸方向両側から挟持する事により、前記外輪23の軸方向の位置決めを図っている。尚、本例の場合、前記第二ホルダ45に関しては、前記第一ハウジング素子16aに対する接合部分の軸方向寸法を、前記第二玉軸受21の外輪23の軸方向寸法よりも大きくする事により、当該接合部分の面積を広くする事で、前記第一ハウジング素子16aに対する接合強度を十分に確保している。前記円筒部48の外周面に関しても、この接合強度向上の為の凹溝を形成する事もできる。
【0029】
又、本例の場合、前記第一ハウジング素子16aの内周部の中間部後端寄り部分にトルクセンサ25を、インサート成形により、前記第一芯合わせ用金具35と同心に固定している。更に、この状態で、前記トルクセンサ25を構成するセンサケース26の前端面を、前記第一ホルダ44を構成する円輪部47の後側面に当接させている。これにより、前記トルクセンサ25の軸方向の位置決めを図っている。
【0030】
又、本例の場合、それぞれがウォーム軸30の両端部を回転自在に支持する為のウォーム側転がり軸受である、第三、第四両玉軸受32、33を構成する外輪52、53を、前記第一ハウジング素子16aに対し、それぞれがウォーム側ホルダである、第三、第四ホルダ54、55を介して内嵌固定している。即ち、本例の場合、前記第一ハウジング素子16aの一部分で、前記ウォーム軸30の基端部(図2に於ける上端部)及び前記第三玉軸受32の周囲部分に、金属製で円環状の前記第三ホルダ54を、同じく前記ウォーム軸30の先端部(図2に於ける下端部)及び前記第四玉軸受33の周囲部分に、金属製で円環状の前記第四ホルダ55を、それぞれ互いに同心に固定(インサート成形により固定、又は、締り嵌め若しくは接着により内嵌固定)している。又、このうちの第三ホルダ54は、円筒部56と、この円筒部56の一端部(図2に於ける下端部)から内径側に直角に折れ曲がった円輪部57とを備える。そして、このうちの円筒部56に、前記第三玉軸受32の外輪52を締り嵌めで内嵌している。又、この状態で、この外輪52を、前記円輪部57と、前記円筒部56の内周面の中間部に形成した係止溝58に係止した止め輪59との間で、軸方向両側から挟持する事により、前記外輪52の軸方向の位置決めを図っている。尚、本例の場合、前記第三ホルダ54に関しては、少なくとも前記第一ハウジング素子16aに対する接合部分若しくは当接部分の軸方向寸法を、前記第三玉軸受32の外輪52の軸方向寸法よりも大きくする事により、当該接合部分若しくは当接部分の面積を広くする事で、前記第一ハウジング素子16aに対する接合強度を十分に確保している。
【0031】
又、前記第四ホルダ55は、軸方向一端部(図2に於ける上端部)に円筒部60を有する。そして、この円筒部60に、前記第四玉軸受33の外輪53を締り嵌めで内嵌している。又、この状態で、この外輪53を、前記第四ホルダ55の内周面の中間部に形成した段部61と、この第四ホルダ55の内周面の一端縁部分を内径側に塑性変形させて形成したかしめ部62との間で、軸方向両側から挟持する事により、前記外輪53の軸方向の位置決めを図っている。尚、本例の場合、前記第四ホルダ55に関しては、少なくとも前記第一ハウジング素子16aに対する接合部分若しくは当接部分の軸方向寸法を、前記第四玉軸受33の外輪53の軸方向寸法よりも大きくする事により、当該接合部分若しくは当接部分の面積を広くする事で、前記第一ハウジング素子16aに対する接合強度を十分に確保している。
【0032】
又、本例の場合、前記第一ハウジング素子16aの一端部(図1〜2に於ける上端部)に、中心孔を有する楕円板状の取付用金具63を、インサート成形により、前記第三、第四両ホルダ54、55の軸方向に対し直角に固定している。そして、この取付用金具63に、電動モータ10aを構成する金属製のモータハウジング64を、複数本のボルト19a、19aにより結合固定している。この為に、このモータハウジング64の一部で、これら各ボルト19a、19aを配置する部分に、これら各ボルトボルト19a、19aの杆部を挿通する為の、図示しない通孔を設けると共に、前記取付用金具63の一部で、これら各通孔と整合する部分に、前記各ボルト19a、19aの杆部を螺合する為の、図示しないねじ孔を設けている。又、本例の場合、前記モータハウジング64の先端部(図2に於ける下端部)に芯合わせ用円筒部65を、前記電動モータ10aの出力軸34と同心に設けている。そして、この芯合わせ用円筒部65を、前記第三ホルダ54を構成する円筒部56の他端部(図2に於ける上端部)に、がたつきなく内嵌している。これにより、前記第三玉軸受32と前記出力軸34との同軸度を十分に確保している。又、本例の場合、前記第一ハウジング素子16aの後端部に、ステアリングコラム3の前端部を固定する為に使用する複数本のボルト19b、19bの杆部を螺合可能な、複数の金属製のナット筒66、66を、インサート成形により埋設している。
【0033】
尚、本例の場合、前記第一ハウジング素子16aの射出成形(インサート成形)を行う際には、この射出成形用の金型内に、この第一ハウジング素子16aに対してインサート成形により固定すべき各構成部材を、前記第一芯合わせ用金具35が基準となる様に設置する。そして、この状態で、前記第一ハウジング素子16aの射出成形を行う事により、当該各構成部材同士の位置精度を十分に確保する。又、前記第二ハウジング素子17aの射出成形(インサート成形)を行う際には、この射出成形用の金型内に、それぞれがこの第二ハウジング素子17aに対してインサート成形により固定すべき部材である、前記第二芯合わせ用金具36と前記第二ホルダ45とを、この第二芯合わせ用金具36が基準となる様に設置する。そして、この状態で、前記第二ハウジング素子17aの射出成形を行う事により、前記第二芯合わせ用金具36と前記第二ホルダ45との位置精度を十分に確保する。
【0034】
又、本例の場合、前記第一、第二両ハウジング素子16a、17aを構成する合成樹脂の種類は、必要とする強度、剛性、耐久性を確保できるものであれば、特に問わない。例えば、ガラス繊維や炭素繊維等の補強材を混入した、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6T/6−6、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/6I/6−6、ポリアミド6T/M−5T、ポリアミド9T等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性樹脂が、好ましく使用できる。
【0035】
又、本例の場合、前記第一、第二両芯合わせ用金具35、36、及び、前記第一〜第四ホルダ44、45、54、55は、それぞれプレス成形品である。これら各プレス成形品を構成する金属材料の種類は、必要とする強度、剛性、耐久性を確保できるものであれば、特に問わない。例えば、機械構造用炭素鋼、軸受鋼、冷間圧延鋼板(SPCC)、熱間圧延鋼板(SPHC)、ステンレス鋼(SUS430、SUS410等)等の鉄系合金が使用できる他、軽量化を考慮すると、アルミニウム系合金、マグネシウム系合金等の軽金属が、好ましく使用できる。
【0036】
上述の様に構成する本例の電動アシスト装置の場合には、前記ハウジング11aの軽量化並びに低コスト化を図るべく、このハウジング11aを構成する第一、第二両ハウジング素子16a、17aを合成樹脂製とした構造を有していながらも、前記ハウジング11aを構成すべく、これら第一、第二両ハウジング素子16a、17a同士を組み合わせた状態で、これら第一、第二両ハウジング素子16a、17a同士の同軸度を十分に確保できる。即ち、本例の場合、これら第一、第二両ハウジング素子16a、17a同士を組み合わせる際に、互いに嵌合させる部分に、前記第一、第二両芯合わせ用金具35、35を固定している。具体的には、このうちの第一芯合わせ用金具35を、前記第一ハウジング素子16aに対し、インサート成形により、この第一ハウジング素子16aと同心に固定している。又、第二芯合わせ用金具36を、前記第二ハウジング素子17aに対し、インサート成形により、この第二ハウジング素子17aと同心に固定している。又、これら第一、第二両芯合わせ用金具35、36は、それぞれ金属製の部品であり、合成樹脂製の部品に比べて、形状精度及び寸法精度を良好に造れる。この為、本例の場合には、前記第一、第二両ハウジング素子16a、17a同士を組み合わせるべく、図1に示す様に前記第一、第二両芯合わせ用金具35、36同士を互いに嵌合させた状態で、前記第一、第二両ハウジング素子16a、17a同士の同軸度を十分に確保できる。従って、この第一ハウジング素子16aの内側に組み付ける構成部材と、前記第二ハウジング素子17aの内側に組み付ける構成部材とのうち、互いに同心に配置すべき各構成部材(前記第一、第二両玉軸受20、21、前記トルクセンサ25、前記出力軸12、トーションバー13、トルク検出用スリーブ24等)同士の同軸度を、十分に確保できる。
【0037】
特に、本例の場合、前記第一、第二両玉軸受20、21の外輪22、23は、前記第一、第二両ハウジング素子16a、17aに対し、それぞれ前記第一、第二両ホルダ44、45を介して内嵌固定している。又、このうちの第一ホルダ44は、前記第一ハウジング素子16aに対し、インサート成形により、前記第一芯合わせ用金具35と同心に固定している。又、前記第二ホルダ45は、前記第二ハウジング素子17aに対し、インサート成形により、前記第二芯合わせ用金具36と同心に固定している。又、これら第一、第二両ホルダ44、45は、それぞれ金属製の部品であり、合成樹脂製の部品に比べて、形状精度及び寸法精度を良好に造れる。この為、前記第一、第二両ハウジング素子16a、17a同士を組み合わせるべく、図1に示す様に前記第一、第二両芯合わせ用金具35、36同士を互いに嵌合させた状態で、前記第一、第二両玉軸受20、21同士の同軸度を十分に確保できる。又、本例の場合、前記トルクセンサ25は、前記第一ハウジング素子16aに対し、インサート成形により、前記第一芯合わせ用金具35と同心に固定している。この為、前記トルクセンサ25と前記第一、第二両玉軸受20、21との同軸度も、十分に確保できる。
【0038】
以上の様に、本例の場合には、前記第一ハウジング素子16aの内側に組み付ける構成部材と、前記第二ハウジング素子17aの内側に組み付ける構成部材とのうち、互いに同心に配置すべき各構成部材同士の同軸度を、十分に確保できる。従って、運転時に、これら各構成部材に無理な力が加わり、これら各構成部材の耐久性が低下すると言った不都合や、前記トルクセンサ25によるトルクの検出精度が悪化すると言った不都合が発生する事を防止できる。
【0039】
又、本例の場合には、前記第一ハウジング素子16aに対する、前記トルクセンサ25の軸方向の位置決めを、前記第一ホルダ44により図っている。この為、前記第一ハウジング素子16aに対して、前記トルクセンサ25の軸方向の位置決めを図る為にのみ用いる部材を組み付ける必要がなくなる。従って、部品点数の減少に伴うコスト低減を図れる。又、本例の場合、前記第一ハウジング素子16aに対する、前記トルクセンサ25の固定を、インサート成形により行う為、このトルクセンサ25を含んで構成されるトルク検出器14の組立作業を容易に行える。
【0040】
又、本例の場合、前記第三、第四両玉軸受32、33の外輪52、53を、前記第一ハウジング素子16aに対し、前記第三、第四両ホルダ54、55を介して内嵌固定している。これら第三、第四両ホルダ54、55は、それぞれ前記第一ハウジング素子16aに対し、互いに同心に固定している。又、これら第三、第四両ホルダ54、55は、それぞれ金属製の部品であり、合成樹脂製の部品に比べて、形状精度及び寸法精度を良好に造れる。この為、前記第三、第四両玉軸受32、33同士の同軸度を十分に確保できる。
【0041】
又、本例の場合、前記第一〜第四玉軸受20、21、32、33を構成する各外輪22、23、52、53を、それぞれが合成樹脂製である、前記第一、第二両ハウジング素子16a、17aに対し、直接内嵌固定せず、それぞれが金属製である、前記第一〜第四ホルダ44、45、54、55を介して内嵌固定している。この為、これら第一〜第四ホルダ44、45、54、55の内周面と前記各外輪22、23、52、53の外周面との嵌合部でクリープを発生する事を防止できる。又、前記第二〜第四玉軸受21、32、33を構成する各外輪23、52、53に関しては、前述した各止め輪51、59やかしめ部62により、軸方向に関する強固な位置決めを図れる。又、前記第一ハウジング素子16aと、前記電動モータ10a及び前記ステアリングコラム3の前端部との結合部に関しても、前記取付用金具63及び前記各ナット筒66、66の存在に基づき、金属同士の強固な結合状態を実現できる。
【0042】
[実施の形態の第2例]
図5〜7は、請求項1〜5に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合、第一ハウジング素子16bに固定した、第一芯合わせ用金具35と第一ホルダ44とを、互いに一体に造られた、一体成形品としている。この為に、本例の場合には、前記第一芯合わせ用金具35を構成する第一円筒部37の後端縁と、前記第一ホルダ44を構成する円筒部の軸方向中間部との、周方向の位相が互いに一致する複数箇所同士を、それぞれL字形の連結部67、67により互いに連結している。更に、本例の場合、第二ハウジング素子17bに固定した、第二芯合わせ用金具36と第二ホルダ45とを、互いに一体に造られた、一体成形品としている。この為に、本例の場合には、前記第二芯合わせ用金具36を構成する第二円筒部40の後端縁と、前記第二ホルダ45を構成する円筒部48の後端縁との、周方向の位相が互いに一致する複数箇所同士を、それぞれ直線状の連結部68、68により互いに連結している。
【0043】
上述の様に構成する本例の電動アシスト装置の場合には、前記第一芯合わせ用金具35(前記第二芯合わせ用金具36)と前記第一ホルダ44(前記第二ホルダ45)とが一体に造られている為、これら両部材35、44(36、45)が別体である場合に比べて、これら両部材35、44(36、45)の同軸度をより十分に確保できる。従って、前記第一、第二両ハウジング素子16b、17bのそれぞれに内嵌支持した第一、第二両玉軸受20、21同士の同軸度を、より十分に確保できる。又、前記第一芯合わせ用金具35(前記第二芯合わせ用金具36)と前記第一ホルダ44(前記第二ホルダ45)とが一体に造られている為、これら第一、第二両ホルダ44、45の剛性を向上させる事ができる。従って、出力軸12から、前記第一、第二両玉軸受20、21介して、前記第一、第二両ホルダ44、45に作用する荷重の支承能力を高められる。又、前記第一芯合わせ用金具35(前記第二芯合わせ用金具36)と前記第一ホルダ44(前記第二ホルダ45)とが一体に造られている為、前記第一ハウジング素子16b(前記第二ハウジング素子17b)が、吸水や温度変化等の環境変化による影響で変形しようとしても、前記第一ホルダ44(前記第二ホルダ45)の位置が維持される。従って、これら第一、第二両ホルダ44、45のそれぞれに内嵌した、前記第一、第二両玉軸受20、21同士の同軸度を維持できる。又、前記第一芯合わせ用金具35(前記第二芯合わせ用金具36)と前記第一ホルダ44(前記第二ホルダ45)とが一体に造られている為、前記第一ハウジング素子16b(前記第二ハウジング素子17b)に対してインサートされる一部品の大きさが大きくなる。従って、前記第一ハウジング素子16b(前記第二ハウジング素子17b)の射出成形時に、合成樹脂の冷却・収縮に伴って生じるヒケと呼ばれる変形の量を抑えられ、その分だけ、前記第一ハウジング素子16b(前記第二ハウジング素子17b)の形状精度及び寸法精度を高められる。その他の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
上述した各実施の形態では、ハウジングを構成する1対のハウジング素子を両方とも合成樹脂製としたが、本発明を実施する場合には、これら両ハウジング素子のうちの何れか一方のハウジング素子のみを合成樹脂製とする事もできる。
又、上述した各実施の形態では、ステアリングコラムの前端部に組み付けて使用する電動アシスト装置に本発明を適用したが、本発明は、ステアリングギヤユニットの入力部に組み付けて使用する電動アシスト装置(例えば、特許文献1の図1〜2参照)に適用する事もできる。
【符号の説明】
【0045】
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
3 ステアリングコラム
4 電動アシスト装置
5a、5b 自在継手
6 中間シャフト
7 ステアリングギヤユニット
8 入力軸
9 タイロッド
10 電動モータ
11、11a ハウジング
12 出力軸
13 トーションバー
14 トルク検出器
15 ウォーム式減速機
16、16a、16b 第一ハウジング素子
17、17a、17b 第二ハウジング素子
18 ボルト
19a、19b ボルト
20 第一玉軸受
21 第二玉軸受
22 外輪
23 外輪
24 トルク検出用スリーブ
25 トルクセンサ
26 センサケース
27 段部
28 皿ばね
29 ウォームホイール
30 ウォーム軸
31 ウォーム
32 第三玉軸受
33 第四玉軸受
34 出力軸
35 第一芯合わせ用金具
36 第二芯合わせ用金具
37 第一円筒部
38 第一取付板部
39、39a ねじ孔
40 第二円筒部
41 鍔部
42 第二取付板部
43 通孔
44 第一ホルダ
45 第二ホルダ
46 円筒部
47 円輪部
48 円筒部
49 円輪部
50 係止溝
51 止め輪
52 外輪
53 外輪
54 第三ホルダ
55 第四ホルダ
56 円筒部
57 円輪部
58 係止溝
59 止め輪
60 円筒部
61 段部
62 かしめ部
63 取付用金具
64 モータハウジング
65 芯合わせ用円筒部
66 ナット筒
67 連結部
68 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、この電動モータが発生したトルクを増大させる為の減速機と、ステアリングシャフトの後端部に取り付けられたステアリングホイールを介してこのステアリングシャフトに入力されたトルクを検出する為の環状のトルクセンサと、その内部に前記減速機とこのトルクセンサとを配置したハウジングとを備え、このハウジングは、前記トルクセンサの軸方向に関して2分割された1対のハウジング素子を、互いの一部分同士を嵌合させた状態で、結合手段により互いに結合して成るものである電動アシスト装置に於いて、前記両ハウジング素子のうちの少なくとも一方のハウジング素子を合成樹脂製とし、且つ、この合成樹脂製のハウジング素子の一部分で、相手ハウジング素子の一部分に嵌合させる部分に、円環状の芯合わせ用金具を、インサート成形により、前記合成樹脂製のハウジング素子と同心に固定している事を特徴とする電動アシスト装置。
【請求項2】
前記減速機が、前記電動モータの駆動軸に連結されたウォーム軸の中間部に設けられたウォームと、このウォームと噛合したウォームホイールとから成るウォーム式減速機であり、
前記ハウジングの内部に、前記ウォームホイールを外嵌固定した被アシスト軸が、前記トルクセンサの軸方向に配設されており、
前記両ハウジング素子のそれぞれに対して、それぞれが前記被アシスト軸を回転自在に支持する為のウォームホイール側転がり軸受が内嵌支持されており、
前記合成樹脂製のハウジング素子の一部分で、前記ウォームホイール側転がり軸受を構成する外輪の周囲部分に、金属製で円環状のウォームホイール側ホルダを、前記芯合わせ用金具と同心に固定すると共に、このウォームホイール側ホルダに前記ウォームホイール側転がり軸受を構成する外輪を内嵌固定している、
請求項1に記載した電動アシスト装置。
【請求項3】
前記芯合わせ用金具と前記ウォームホイール側ホルダとが、互いに一体に造られている、請求項2に記載した電動アシスト装置。
【請求項4】
前記トルクセンサが、前記合成樹脂製のハウジング素子に対し、前記ウォームホイール側ホルダにより軸方向の位置決めを図られた状態で固定されている、請求項2〜3のうちの何れか1項に記載した電動アシスト装置。
【請求項5】
前記減速機が、前記電動モータの駆動軸に連結されたウォーム軸の中間部に設けられたウォームと、このウォームと噛合したウォームホイールとから成るウォーム式減速機であり、
前記ウォーム軸の両端部は、前記合成樹脂製のハウジング素子に対して、それぞれウォーム側転がり軸受により回転自在に支持されており、
前記合成樹脂製のハウジング素子の一部分で、前記両ウォーム側転がり軸受を構成する外輪の周囲部分に、それぞれ金属製で円環状のウォーム側ホルダを、互いに同心に固定すると共に、これら両ウォーム側ホルダに前記両ウォーム側転がり軸受を構成する外輪を内嵌固定している、
請求項1〜4のうちの何れか1項に記載した電動アシスト装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−71590(P2013−71590A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211959(P2011−211959)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】