説明

電動ブレーキ用モータシリンダ装置

【課題】 ギヤハウジングの撓み強度の向上や軽量化を実現した電動ブレーキ用モータシリンダ装置を提供する。
【解決手段】 第1ギヤハウジングハーフ35には、1つの上部締結部71と、左右一対の中間締結部72,73と、これも左右一対の下部締結部74,75とが形成されている。上部締結部71は、モータ保持凹部61におけるドライブギヤ挿入孔76の直上に形成されたボルト収容凹部77内に位置している。また、中間締結部72,73は上下方向でアイドラギヤ42とドリブンギヤ43との噛み合い部位に位置している。そして、下部締結部74,75は、第1ギヤハウジングハーフ35の下端に位置している。各締結部71〜75には、第2ギヤハウジングハーフ36に形成された雌ねじ孔に螺合するボルト78のシャンクが貫通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される電動ブレーキ装置に係り、詳しくはモータシリンダを構成するギヤハウジングの撓み強度の向上や軽量化を実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータによって走行する電気自動車やハイブリッド自動車では、ブレーキの倍力装置として内燃機関の吸気負圧を駆動源とするマスターバックを採用できないことから、運転者のペダル踏込操作によって作動するマスタシリンダとは別に、電動式のアクチュエータを用いたモータシリンダによってブレーキ圧を発生させるブレーキ・バイ・ワイヤ式の電動ブレーキ装置が一般に採用されている。モータシリンダでは、電気モータの回転力を減速ギヤ機構を介してラジアル−スラスト変換を行うボールねじ機構に伝達し、ボールねじ機構のねじ軸によってシリンダ本体内のピストンを押圧してブレーキ液圧を発生させる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−184057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動ブレーキ装置は、減速ギヤ機構に高価なベベルギヤを採用しているため、製品コストが高くなる他、高い工作精度や組付精度が要求される等の欠点を有していた。そこで、本発明者等は、減速ギヤ機構を製造容易かつ安価な平歯車(スパーギヤ:以下、単にギヤと記す)の組み合わせ(以下、ギヤ列と記す)によって構成することを試みたが、モータの出力軸(モータシャフト)とボールねじ機構の中心軸とが平行になることに起因する問題が生じることが判明した。すなわち、減速ギヤ機構を構成するギヤ列は、シリンダ本体の端部に連結された2つ割りの(すなわち、一対のギヤハウジングハーフからなる)ギヤハウジングに収納されるため、電動ブレーキ装置の作動時にボールねじ機構からの反力を受け、電気モータのシャフトに固着された片持ちのドライブギヤに大きな斥力が作用することがある。その結果、電気モータが取り付けられた側のギヤハウジングハーフが撓み変形することで(ギヤハウジングに口開きが生じることで)、このギヤハウジングハーフに固定された電気モータが軸方向倒れを起こしてしまい、ドライブギヤとドリブンギヤ(あるいは、アイドラギヤ)との噛み合いが浅くなり、両ギヤが摩耗することで減速ギヤ機構の耐久性が低下する虞があった。
【0005】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、ギヤハウジングの撓み強度の向上や軽量化を実現した電動ブレーキ用モータシリンダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面では、運転者によるブレーキペダル(11)の踏込操作に応じて駆動制御される電気モータ(12)と、当該電気モータのシャフト(12a)に固着されたドライブギヤ(41)のトルクをドリブンギヤ(43)に伝達する減速ギヤ機構(18)と、当該ドリブンギヤのトルクをねじ軸(19)の推力に変換するボールねじ機構(29)と、当該ねじ軸の推力を受けてブレーキ液圧を発生するブレーキシリンダとを備えた電動ブレーキ用モータシリンダ装置(13)であって、前記ブレーキシリンダの外郭をなすシリンダ本体(13)と、前記シリンダ本体における前記ボールねじ機構側の端部に連結された第1ギヤハウジングハーフ(35)と、複数のギヤハウジング締結部(71〜75)において前記第1ギヤハウジングハーフの前記シリンダ本体から離反する側に締結され、少なくとも前記減速ギヤ機構を収容するギヤハウジング(32)を当該第1ギヤハウジングハーフとともに構成する第2ギヤハウジングハーフ(36)とを有し、前記電気モータは、前記第1ギヤハウジングハーフと第2ギヤハウジングハーフとのどちらか一方に設けられた複数のモータ締結部(63〜66)に締結され、前記ギヤハウジング締結部の少なくとも1つは、前記ドライブギヤを挟んで前記ドリブンギヤと反対側に配置された第1ギヤハウジング締結部(71)である。
【0007】
また、第2の側面では、前記第1ギヤハウジングハーフと第2ギヤハウジングハーフとのうち、前記電気モータが締結される方には当該電気モータの端部が嵌入するモータ保持凹部(61)が形成され、前記第1ギヤハウジング締結部での締結に供されるボルト(78)の頭部は、前記モータ保持凹部内で前記電気モータの端面と対峙する。
【0008】
また、第3の側面では、前記ギヤハウジング締結部が前記ギヤハウジングの外周から外側に突出した複数の第2ギヤハウジング締結部を含み、前記第2ギヤハウジング締結部と前記第1ギヤハウジングハーフにおけるドリブンギヤ収納部位(58)の外周とを繋ぐ連結リブ(85,86)が設けられた。
【0009】
また、第4の側面では、前記電気モータは、前記第1ギヤハウジングハーフに設けられた複数のモータ締結部(63〜66)に締結され、前記モータ締結部は、前記ドライブギヤを挟んで前記ドリブンギヤと反対側で前記第1ギヤハウジングハーフの外周から突出した第1モータ締結部(63,64)と、当該第1モータ締結部の下方で当該第1ギヤハウジングハーフの外周から突出した第2モータ締結部(65,66)とを含み、前記第1ギヤハウジングハーフには、前記第1モータ締結部と前記第2モータ締結部と繋ぐ連結リブ(81,82)が設けられた。
【0010】
また、第5の側面では、前記第1ギヤハウジングハーフには、前記第2モータ締結部と前記第1ギヤハウジングハーフにおけるドリブンギヤ収納部位の外周とを繋ぐ連結リブ(83,84)が設けられた。
【0011】
また、第6の側面では、前記第2ギヤハウジングハーフは、前記シリンダ本体から離反する側の面に複数の肉抜き凹部(91〜99)を有する。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、減速ギヤ機構からボールねじ機構に入力した反力によってドライブギヤに大きな斥力が作用しても、ドライブギヤを挟んでドリブンギヤと反対側に配置された第1ギヤハウジング締結部で締結されていることによってギヤハウジングに口開きが生じ難くなり、ドライブギヤとドリブンギヤ(あるいは、アイドラギヤ)との噛み合い不良に起因する耐久性の低下が抑制される。また、第2の発明によれば、第1ギヤハウジング締結部がドライブギヤの比較的近傍に位置するためにギヤハウジングの口開きがより生じ難くなるとともに、その締結に供されるボルトの脱落等も生じ難くなる。また、第3の発明によれば、第2ギヤハウジング締結部の撓みに起因するギヤハウジングの口開きが生じ難くなる。また、第4の発明によれば、第1モータ締結部および第2モータ締結部の撓みに起因する電気モータの軸方向倒れ等が生じ難くなる。また、第5の発明によれば、第2モータ締結部の撓みに起因する電気モータの軸方向倒れ等がより生じ難くなる。また、第6の発明によれば、第2ギヤハウジングハーフ(すなわち、モータシリンダ装置)の軽量化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る電気自動車の概略図である。
【図2】実施形態に係るブレーキ液圧発生装置の油圧回路図である。
【図3】実施形態に係るモータシリンダの斜視図である。
【図4】実施形態に係るモータシリンダの要部を断面した側面図である。
【図5】実施形態に係るギヤハウジングの正面図である。
【図6】実施形態に係るギヤハウジングの斜め前方からの斜視図である。
【図7】実施形態に係るギヤハウジングの斜め後方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を電気自動車の電動ブレーキ装置に適用した一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
≪実施形態の構成≫
<自動車の全体構成>
図1に示される電気自動車(以下、単に自動車と記す)1は、左右一対の前輪2と左右一対の後輪3とを有しており、左右前輪2に連結されたドライブシャフト4,4(左右ハーフシャフト)には図示しない差動機構を介してモータ・ジェネレータ5が連結されている。
【0016】
モータ・ジェネレータ5は、走行用モータと回生用ジェネレータとを兼ねたものであり、二次電池であるバッテリ7を蓄電手段として、インバータ10によってバッテリ7からの電力供給とバッテリ7に対する電力供給(充電)とを制御され、減速時には減速エネルギを電力に変換回生して回生制動力を発生する。
【0017】
また、自動車1には、CPUや各種電装部品を用いた制御回路を備え、制動力配分を含む各種制御を行うECU(電子制御ユニット)6が設けられている。ECU6には、上記インバータ10が電気的に接続されている。なお、電気自動車の場合にはこの構成(あるいは、後輪3を駆動するモータ・ジェネレータを設けた構成)でよいが、ハイブリッド自動車の場合にはドライブシャフト4に二点鎖線で示されるエンジンEの出力軸が連結される。図1の自動車1は前輪駆動の例であるが、4輪駆動とすることもできる。
【0018】
前輪2および後輪3の各車輪には、摩擦制動を行う摩擦制動手段として、車輪(前輪2,後輪3)と一体に回転するブレーキディスク2a,3aとブレーキディスク2a,3aを挟圧するブレーキキャリパ2b,3bとにより構成されるディスクブレーキが設けられている。ブレーキキャリパ2b,3bには、公知のブレーキ配管を介してブレーキ液圧発生装置8が接続されている。ブレーキ液圧発生装置8は、各車輪2,3ごとに異なるブレーキ圧を配分可能な油圧回路で構成されている。前輪2および後輪3には車輪速を検出する車輪速センサ9がそれぞれ設けられる一方、ブレーキペダル11には踏込操作量を検出するストロークセンサ11aが設けられており、これら各車輪速センサ9およびストロークセンサ11aの検出信号がECU6に入力する。
【0019】
ECU6は、ブレーキペダル11が踏み込まれた場合(すなわち、ストロークセンサ11aの出力信号が所定値を超えた場合)、制動指令が発生したと判断して制動制御を行う。本図示例では、ブレーキ・バイ・ワイヤシステムにより、回生制動と油圧制動とを併用する回生協調制御が行われる。
【0020】
<ブレーキ液圧発生装置>
次に、図2を参照してブレーキ液圧発生装置8について説明する。本実施形態のブレーキ液圧発生装置8は、制動操作部材としてのブレーキペダル11の操作を機械的にマスタシリンダに伝達してブレーキ液圧を発生させるのではなく、ブレーキペダル11の操作量(ペダル変位量)をストロークセンサ11aにより検出し、その検出値に基づいて電動サーボモータ(以下、電気モータと記す)12を駆動源とするモータシリンダ13によりブレーキ液圧を発生させる、いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤにより構成されている。
【0021】
図1に示されるように、車体に回動自在に支持されたブレーキペダル11にはその円弧運動を略直線運動に変換するロッド14の一端が連結されており、ロッド14の他端は、マスタシリンダ15の第1マスタシリンダピストン15aを押し込むように係合している。マスタシリンダ15には第1マスタシリンダピストン15aに対してロッド14とは相反する側に第2マスタシリンダピストン15bが直列に配設されており、両マスタシリンダピストン15a,15bはそれぞれロッド14側にばね付勢されている。なお、ブレーキペダル11は、戻り方向に常時ばね付勢されており、踏込操作されていない場合には、図示しないストッパによって初期位置(図1の位置)に係止されている。
【0022】
また、マスタシリンダ15には、各マスタシリンダピストン15a,15bの変位に応じてブレーキ液を給排するリザーバタンク16が設けられている。なお、各マスタシリンダピストン15a,15bには、リザーバタンク16と連通する各油路16a,16bとの間をシールするためのシール部材が適所に設けられている。そして、マスタシリンダ15の筒内には、第1マスタシリンダピストン15aと第2マスタシリンダピストン15bとの間に第1液室17aが形成され、第2マスタシリンダピストン15bの第1マスタシリンダピストン15aとは相反する側に第2液室17bが形成されている。
【0023】
一方、モータシリンダ13には、電気モータ12と、電気モータ12に連結された減速ギヤ機構18と、電気モータ12の回転力が減速ギヤ機構18およびボールねじ機構29を介して伝達されることで軸線方向に変位するねじ軸19と、ねじ軸19と同軸かつ直列に配設された第1モータシリンダピストン21aおよび第2モータシリンダピストン21bとが設けられている。
【0024】
なお、第2モータシリンダピストン21bには第1モータシリンダピストン21a側に延出する連結部材27の一端部が固設されており、連結部材20の他端部は第1モータシリンダピストン21aに対して相対的に軸線方向に所定量変位可能に支持されている。これにより、第1モータシリンダピストン21aは、第2モータシリンダピストン21bとは独立して前進(第2モータシリンダピストン21b側への移動)できるが、図2の初期状態に戻る後退時には連結部材20を介して第2モータシリンダピストン21bも初期位置に引き戻される。なお、両モータシリンダピストン21a,21bは、それぞれに対応して設けられた両戻しばね27a,27bによりねじ軸19側に常時付勢されている。
【0025】
また、モータシリンダ13には、前述したリザーバタンク16に連通路22を介してそれぞれ連通する2つの油路22a,22bが設けられており、両モータシリンダピストン21a,21bには、両油路22a,22bとの間をシールするためのシール部材が適所に設けられている。モータシリンダ13の筒内には、第1モータシリンダピストン21aと第2モータシリンダピストン21bとの間に第1液圧発生室23aが形成され、第2モータシリンダピストン21bの第1モータシリンダピストン21aとは相反する側に第2液圧発生室23bが形成されている。
【0026】
本実施形態の場合、マスタシリンダ15の第1液室17aが常開型の電磁弁24aを介してモータシリンダ13の第1液圧発生室23aと連通し、第2液室17bが常開型の電磁弁24bを介してモータシリンダ13の第2液圧発生室23bと連通するようにそれぞれ配管されている。なお、第1液室17aと電磁弁24aとの間にはマスタシリンダ15側のブレーキ圧センサ25aが接続され、電磁弁24bと第2液圧発生室23bとの間にはモータシリンダ13側のブレーキ圧センサ25bが接続されている。
【0027】
また、第2液室17bと電磁弁24bとの間に、常閉型の電磁弁24cを介して踏込反力発生用のシミュレータ28が接続されている。シミュレータ28には、そのシリンダ内を衝動自在に区画するピストン28aが内装されており、ピストン28aの電磁弁24b側に貯液室28bが形成され、ピストン28aの貯液室28a側とは相反する側には圧縮コイルばね28cが収容されている。両電磁弁24a,24bが閉じかつ電磁弁24cが開いている状態で、ブレーキペダル11を踏み込んで第2液室17b内のブレーキ液が貯液室28bに入り込むことにより、圧縮コイルばね28cの付勢力がブレーキペダル11に伝達され、それにより公知のマスタシリンダとホイールシリンダとが直結されているブレーキ装置と同様の踏み込みに対する反力(ペダル踏力)が得られるようになっている。
【0028】
さらに、モータシリンダ13の第1液圧発生室23aと第2液圧発生室23bとが、それぞれVSA装置26が設けられた油路22e,22fを介して複数(図示例では4つ)の各ブレーキキャリパ2b,3bに連通するように配管がされている。なお、VSA装置26は、ブレーキ時の車輪ロックを防ぐABS、加速時等の車輪空転を防ぐTCS(トラクション・コントロール・システム)、旋回時のヨーモーメント制御、ブレーキアシスト機能、衝突回避、レーンキープ等のための自動ブレーキ機能等を備えた車両挙動安定化制御システムとして公知のものであるため、その詳細な構造の説明は省略する。なおVSA装置26には、前輪の両ホイールシリンダ2bに対応する第1系統と、後輪の両ホイールシリンダ3bに対応する第2系統とをそれぞれ構成する各種油圧素子を用いた各ブレーキアクチュエータと、それらを制御するVSA制御ユニット26aとにより構成されている。
【0029】
ブレーキ液圧発生装置8は、ECU6により総合的に制御される。ECU6には、ストロークセンサ11aと両ブレーキ圧センサ25a,25bとの各検出信号が入力し、また車両の挙動を検出するための各種センサ(図示せず)からの検出信号も入力している。ECU6では、ストロークセンサ11aからの検出信号に基づき、かつこれら各種センサからの検出信号から判断した走行状況等に応じて、モータシリンダ13により発生するブレーキ液圧を制御する。さらに、本実施形態の対象車両となるハイブリッド車(または電気自動車)の場合には、モータ・ジェネレータによる回生制御を行うようにしており、ECU6では、回生制御を行う場合の回生の大きさに対するモータシリンダ13によるブレーキ液圧の大きさの配分制御も行う。
【0030】
<モータシリンダの外郭>
次に、図3〜図7を参照しながら、モータシリンダ13の外郭(ハウジング)を説明する。なお、ハウジングを構成する各部材については、図3中に上下・左右・前後を矢印で示し、位置や方向をこれらに沿って表記する。
【0031】
図3,図4に示すように、モータシリンダ13は、シリンダ本体31と、シリンダ本体31の後端に締結されたギヤハウジング32と、ギヤハウジング32の前面上部に締結されたモータアセンブリ33と、シリンダ本体31の上部に固定されたリザーバ34(図4には示さず)とから外郭が形成されている。本実施形態のギヤハウジング32は、シリンダ本体31やモータアセンブリ33が締結される第1ギヤハウジングハーフ35と、第1ギヤハウジングハーフ35の後面に締結された第2ギヤハウジングハーフ36とから構成されている。
【0032】
図2に示すように、シリンダ本体31には、両モータシリンダピストン21a,21bが摺動自在に保持される他、連結部材20や戻しばね27a,27bが収容されている。また、ギヤハウジング32はボールねじハウジングを兼ねており、図2,図4に示すように、両ギヤハウジングハーフ35,36の間(内部)には、減速ギヤ機構18とボールねじ機構29とが保持されている。
【0033】
図4に示すように、モータアセンブリ33は、シャフト12aの先端にドライブギヤ41が固着された電気モータ12と、電気モータ12を第1ギヤハウジングハーフ35に固定するためのモータマウント37とを有している。なお、モータマウント37は、ECU6からの電力を電気モータ12に供給する給電回路や、電気モータ12の回転状態を検出してその検出信号をECU6に出力する回転センサを内装している。
【0034】
減速ギヤ機構18は、上述したドライブギヤ41と、第1,第2ギヤハウジングハーフ35,36によって回転自在に支持されたアイドラギヤ42と、ボールねじ機構29のナット46(後述)の外周に形成された比較的大径のドリブンギヤ43とをこの順に噛み合わせたものであり、電気モータ12の回転を減速して(すなわち、トルクを増大させて)ボールねじ機構29に伝達する。
【0035】
ボールねじ機構29は、一対のラジアルベアリング45を介して第1,第2ギヤハウジングハーフ35,36に回転自在に支持されたナット46と、図示しないボールを介してナット46に螺合するねじ軸19とから構成されており、ナット46が減速ギヤ機構18を介して電気モータ12に回転駆動されることでねじ軸19を軸方向に進退させる。図中、符号47で示す部材はねじ軸19の後端に圧入されたガイドピンであり、ねじ軸19の回転を防止すべく、第2ギヤハウジングハーフ36の内部に形成されたガイド溝48に軸方向摺動自在に係合する。
【0036】
<第1ギヤハウジングハーフ>
図5,図6に示すように、第1ギヤハウジングハーフ35の前面下部にはシリンダ本体31の後端部が内嵌するシリンダ支持部51が前方に突設されており、このシリンダ支持部51の後端からは雌ねじ孔53をそれぞれ有する左右一対のシリンダ締結部54,55が延設されている。図3,図4に示すように、シリンダ締結部54,55の雌ねじ孔53には、シリンダ本体31を締結するための六角ボルト(以下、単にボルトと記す)56が螺合する。なお、ギヤハウジング32の下部には、ドリブンギヤ43を収容すべく、比較的大径のドリブンギヤ収納部位58が設けられており、ドリブンギヤ収納部位58の後端にはねじ軸19を収容するねじ軸収容凸部59が突設されている。
【0037】
図5,図6に示すように、第1ギヤハウジングハーフ35の前面上部には電気モータ12の後端が嵌入するモータ保持凹部61が形成されており、このモータ保持凹部61の外周側には雌ねじ孔62をそれぞれ有する上部モータ締結部63,64および下部モータ締結部65,66が径方向外側に向けて突設されている。なお、上部モータ締結部63,64は、第1ギヤハウジングハーフ35の上端に位置し、下部モータ締結部65,66は上下方向でモータ保持凹部61の中心と略同一の位置に形成されている。図3に示すように、3つのモータ締結部63,65,66には、モータアセンブリ33を締結するためのボルト67が螺合する。なお、本実施形態の場合、右側の上部モータ締結部64は使用されていない。
【0038】
図5に破線で示すように、第1ギヤハウジングハーフ35には、1つの上部締結部71(ボルト孔)と、左右一対の中間締結部72,73(ボルト孔)と、これも左右一対の下部締結部(ボルト孔)74,75とが形成されている。上部締結部71は、モータ保持凹部61におけるドライブギヤ挿入孔76の直上に形成されたボルト収容凹部77内に位置している。また、中間締結部72,73は、図4,図6から判るように、上下方向でアイドラギヤ42とドリブンギヤ43との噛み合い部位に位置している。そして、下部締結部74,75は、第1ギヤハウジングハーフ35の下端に位置している。各締結部71〜75には、第2ギヤハウジングハーフ36に形成された雌ねじ孔(図示せず)に螺合するボルト78のシャンクが貫通する。
【0039】
図5,図6に示すように、第1ギヤハウジングハーフ35では、左側の上部モータ締結部63と下部モータ締結部65とが連結リブ81によって連結され、右側の上部モータ締結部64と下部モータ締結部66とが連結リブ82によって連結されている。また、左側の下部モータ締結部65とドリブンギヤ収納部位58とが連結リブ83によって連結され、右側の下部モータ締結部66とドリブンギヤ収納部位58とが連結リブ84によって連結されている。
【0040】
<第2ギヤハウジングハーフ>
図6,図7に示すように、第2ギヤハウジングハーフ36では、第1ギヤハウジングハーフ35の左側の下部モータ締結部65に対応する部位とドリブンギヤ収納部位58とが連結リブ85によって連結され、右側の下部モータ締結部66に対応する部位とドリブンギヤ収納部位58とが連結リブ86によって連結されている。
【0041】
また、図7に示すように、第2ギヤハウジングハーフ36の後面には、ドリブンギヤ収納部位58の直上で上下方向に延びる3条の中央肉抜凹部91〜93と、これら中央肉抜凹部91〜93の左右に形成された側方肉抜凹部94,95と、側方肉抜凹部94,95の斜め側方に形成された側端肉抜凹部96,97と、側方肉抜凹部94,95の下方に形成された下方肉抜凹部98,99とが形成されている。
【0042】
≪実施形態の作用≫
自動車の走行時に運転者がブレーキペダル11を踏み込むと、ECU6はストロークセンサ11aによって検出された踏込操作量や各車輪速センサ9の検出値から求めた車速に基づいて制動制御量を決定し、モータシリンダ13の電気モータ12に駆動電流を出力する。すると、モータシリンダ13では、電気モータ12が回転を始めてそのトルクが減速ギヤ機構18を介してボールねじ機構29に伝達され、ねじ軸19が図4中で左方向に移動して両モータシリンダピストン21a,21bを押圧する。これにより、モータシリンダ13内では所定のブレーキ液圧が生成され、ブレーキキャリパ2b,3bにブレーキフルードが供給されて各車輪2,3が所定の制動力をもって制動される。
【0043】
制動時において、減速ギヤ機構18においては、ボールねじ機構29を駆動する際の反力がアイドラギヤ42を介してドライブギヤ41に作用し、片持ちのドライブギヤ41に大きな斥力が作用する(すなわち、電気モータ12のシャフト12aを傾斜させる力が作用する)。しかしながら、本実施形態では、第1ギヤハウジングハーフ35と第2ギヤハウジングハーフ36とは、ドライブギヤ41の直上に設けられた上部締結部71で締結されているため、ドライブギヤ41に大きな斥力が作用してもその撓み(すなわち、ギヤハウジング32の口開き)が生じない。これにより、ドライブギヤ41とアイドラギヤ42との良好な噛み合いが確保され、減速ギヤ機構18(すなわち、モータシリンダ13)の耐久性低下が効果的に抑制される。なお、上部締結部71のボルト78は、モータ保持凹部61内で電気モータ12の端面と対峙するため、緩みに起因する脱落等が防止される。
【0044】
一方、自動車の悪路走行時等において、電気モータ12は、その慣性によってギヤハウジング32との間で相対振動を起こし、上述したドライブギヤ41とアイドラギヤ42との噛み合いを悪化させたり、ギヤハウジング32側の金属疲労を招いたりする虞がある。ところが、本実施形態では、第1ギヤハウジングハーフ35の左右のモータ締結部63〜65が連結リブ81,82によって相互に連結されるとともに、連結リブ83,84によってドリブンギヤ収納部位58に連結されているため、第2ギヤハウジングハーフ36側にも連結リブ85,86が存在することも相俟ってギヤハウジング32の剛性が非常に高くなり、上述した相対振動が効果的に抑制される。
【0045】
また、モータシリンダ13は、図示しないブラケットを介してボディパネルやクロスメンバに支持されるが、その重量が大きいとブラケット等に大きな剛性や強度が要求される。しかし、本実施形態では、第2ギヤハウジングハーフ36に多数の肉抜凹部91〜99が形成されているため、ギヤハウジング32(すなわち、モータシリンダ13)の重量を比較的小さくすることができ、ブラケット等に比較的小型かつ計量なものを採用できる。
【0046】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれら実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、ドライブギヤの直上に1つの上部締結部を設けたが、左右一対の上部締結部をドライブギヤの左右斜め上方に設けるようにしてもよいし、モータ保持凹部の上部に上部締結部を設けるようにしてもよい。その他、連結リブや肉抜凹部の設置部位等についても、上記実施形態と異なる形状や数を採用してもよいし、これらの少なくとも一方を省いてもよい。その他、モータシリンダやギヤハウジングの具体的構成や形状等についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設定可能である。
【符号の説明】
【0047】
12 電気モータ
13 モータシリンダ
18 減速ギヤ機構
19 ねじ軸
29 ボールねじ機構
31 シリンダ本体
32 ギヤハウジング
33 モータアセンブリ
35 第1ギヤハウジングハーフ
36 第2ギヤハウジングハーフ
37 モータマウント
41 ドライブギヤ
42 アイドラギヤ
43 ドリブンギヤ
46 ナット
56 ボルト
58 ドリブンギヤ収納部位
59 ねじ軸収容凸部
61 モータ保持凹部
62 雌ねじ孔
63,64 上部モータ締結部
65,66 下部モータ締結部
67 ボルト
71 上部締結部
72 中間締結部
74 下部締結部
77 ボルト収容凹部
78 ボルト
81〜86 連結リブ
91〜99 肉抜凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によるブレーキペダルの踏込操作に応じて駆動制御される電気モータと、当該電気モータのシャフトに固着されたドライブギヤのトルクをドリブンギヤに伝達する減速ギヤ機構と、当該ドリブンギヤのトルクをねじ軸の推力に変換するボールねじ機構と、当該ねじ軸の推力を受けてブレーキ液圧を発生するブレーキシリンダとを備えた電動ブレーキ用モータシリンダ装置であって、
前記ブレーキシリンダの外郭をなすシリンダ本体と、
前記シリンダ本体における前記ボールねじ機構側の端部に連結された第1ギヤハウジングハーフと、
複数のギヤハウジング締結部において前記第1ギヤハウジングハーフの前記シリンダ本体から離反する側に締結され、少なくとも前記減速ギヤ機構を収容するギヤハウジングを当該第1ギヤハウジングハーフとともに構成する第2ギヤハウジングハーフとを有し、
前記電気モータは、前記第1ギヤハウジングハーフと第2ギヤハウジングハーフとのどちらか一方に設けられた複数のモータ締結部に締結され、
前記ギヤハウジング締結部の少なくとも1つは、前記ドライブギヤを挟んで前記ドリブンギヤと反対側に配置された第1ギヤハウジング締結部であることを特徴とする電動ブレーキ用モータシリンダ装置。
【請求項2】
前記第1ギヤハウジングハーフと第2ギヤハウジングハーフとのうち、前記電気モータが締結される方には当該電気モータの端部が嵌入するモータ保持凹部が形成され、
前記第1ギヤハウジング締結部での締結に供されるボルトの頭部は、前記モータ保持凹部内で前記電気モータの端面と対峙することを特徴とする、請求項1に記載された電動ブレーキ用モータシリンダ装置。
【請求項3】
前記ギヤハウジング締結部が前記ギヤハウジングの外周から外側に突出した複数の第2ギヤハウジング締結部を含み、
前記第2ギヤハウジング締結部と前記第1ギヤハウジングハーフにおけるドリブンギヤ収納部位の外周とを繋ぐ連結リブが設けられたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載された電動ブレーキ用モータシリンダ装置。
【請求項4】
前記電気モータは、前記第1ギヤハウジングハーフに設けられた複数のモータ締結部に締結され、
前記モータ締結部は、前記ドライブギヤを挟んで前記ドリブンギヤと反対側で前記第1ギヤハウジングハーフの外周から突出した第1モータ締結部と、当該第1モータ締結部の下方で当該第1ギヤハウジングハーフの外周から突出した第2モータ締結部とを含み、
前記第1ギヤハウジングハーフには、前記第1モータ締結部と前記第2モータ締結部と繋ぐ連結リブが設けられたことを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載された電動ブレーキ用モータシリンダ装置。
【請求項5】
前記第1ギヤハウジングハーフには、前記第2モータ締結部と前記第1ギヤハウジングハーフにおけるドリブンギヤ収納部位の外周とを繋ぐ連結リブが設けられたことを特徴とする、請求項4に記載された電動ブレーキ用モータシリンダ装置。
【請求項6】
前記第2ギヤハウジングハーフは、前記シリンダ本体から離反する側の面に複数の肉抜き凹部を有することを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載された電動ブレーキ用モータシリンダ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−112038(P2013−112038A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257378(P2011−257378)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】