電動ベーンポンプ
【課題】 ドレーン油路を容易に形成できる上に、ポンプ性能を向上させる際の制約にならないようにドレーン油路を形成できるようにする。
【解決手段】 電動ベーンポンプ1のハウジング2と、該ハウジング2に取り付けられるカバー3とで空間が形成されると共に、該空間内にはベーンを備えたロータ10と、該ロータ10の軸方向の前後から該ロータ10を挟むように第1、第2サイドプレート7、11が配置され、前記カバー3と第1サイドプレート7との当接面にドレーン油路13を設けたことを特徴とする。
【解決手段】 電動ベーンポンプ1のハウジング2と、該ハウジング2に取り付けられるカバー3とで空間が形成されると共に、該空間内にはベーンを備えたロータ10と、該ロータ10の軸方向の前後から該ロータ10を挟むように第1、第2サイドプレート7、11が配置され、前記カバー3と第1サイドプレート7との当接面にドレーン油路13を設けたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ベーンポンプに関するものであって、特に、ドレーン油路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図11は、特許文献1に記載されている背景技術によるベーンポンプ100の縦断面図を示す。
【0003】
【特許文献1】特開2002−98066
【0004】
該ベーンポンプ100は、リヤハウジング101とフロントハウジング102とで形成された空間内に、駆動軸103が取り付けられたロータ104と該ロータ104の軸方向の前後から該ロータ104を挟むように設けられた2つのサイドプレート105,106と、カムリング107を配置した構成である。該ロータ104は前記駆動軸103に回転駆動されてカムリング107内で回転することによって、吸い込まれた作動油に対してポンプ作用を施すものである。
【0005】
前記サイドプレート106には、吐出ポートが形成され、ポンプ作用によって高圧化した作動油を高圧室108へ導くようになっている。該高圧室108は吐出口113によって外部へ連通している。
【0006】
前記駆動軸103は、フロントハウジング102に設けられた軸受109によって回転自在に支持されていると共に、該駆動軸103にはプーリ110が設けられている。該プーリ110と、別途設けられたエンジン(図示せず)との間には、ベルト(図示せず)が巻回されることによって、駆動軸103に、エンジンから回転力が伝達される。
【0007】
ところで、前記エンジンを駆動した場合、前記ベルトにはテンションが付与され、該テンションによって、前記駆動軸103にはエンジン側へ向けた力が常に付与された状態にあって、駆動軸103と軸受109との間の摩擦が増加する。このため、該駆動軸103と軸受109との間の摩擦を低減させ、駆動軸103の焼付きの防止等を図るために、内部リークした作動油で該軸受109を潤滑するべく、該軸受109と吸込通路111との間にドレーン油路112を形成することによって、内部リークした作動油が充満している駆動軸103の周囲から軸受109を介して吸込通路111に至る油路を形成している。ここで、内部リークした作動油とは、ベーンポンプを構成する各部位のクリアランス等から洩れた作動油を意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前述の背景技術においては、内部リークした作動油で軸受109を潤滑させた後に、該作動油を吸込通路111側へ戻すためのドレーン油路112を、該軸受109とフロントハウジング102との間に形成しなければならないため、フロントハウジング102に複雑な形状のドレーン油路112を形成することになって、製造工程が複雑であるという問題あった。
【0009】
又、フロントハウジング102内にこのような形状のドレーン油路112を形成しなければならないため、フロントハウジング102が大型化するという問題があった。又、該ハウジング102を小型化させようとする場合には、前記ドレーン油路112を形成するスペース分だけ、ロータ104等を配置するための空間や、高圧室108等の大きさや形状等が制限されてしまって、ポンプ性能を向上させる際の制約になるといった問題あった。
【0010】
又、前記ドレーン油路112は、ドリルによってフロントハウジング102に穿設されるため、ドリルによる加工工程が別途必要になって製造過程が複雑であり、又、ドリルによる切削の際にバリが発生し、該バリの存在が作動油の流れを悪化させるといった問題もあった。
【0011】
図12は、特許文献2に記載されている背景技術によるベーンポンプ200の縦断面図を示す。
【0012】
【特許文献2】特開2004−28014
【0013】
当該特許文献2に記載のベーンポンプ200は、有底の孔201を有するハウジング202と、該孔201の開口側に設けられたカバー203とを備えている。該孔201内には、該孔201の孔底側からサイドプレート204とカムリング205が順に配置され、該サイドプレート204と該孔の底との間は、高圧室206になっている。又、前記カムリング205内には、ベーンを備えたロータ207が回転自在に配置されている。
【0014】
又、前記ハウジング202の孔底側から該ハウジング202を貫通するように駆動軸208が設けられている。該駆動軸208には、前記ロータ207が取り付けられ、該ロータ207は該駆動軸208の回転によって回転するものである。該駆動軸208は、ハウジング202に設けられた軸受209によって回転自在に支持されると共に、該駆動軸208の先端側はカバー203に設けられた軸受210で回転自在に支持されている。
【0015】
そして、前記駆動軸208のプーリ(図示せず)にベルト(図示せず)を巻回させ、該ベルトによってエンジンの回転力が前記駆動軸208に伝達されて前記駆動軸208が回転するようになっているため、当該特許文献2に記載のベーンポンプ200においても、特許文献1に記載の現象と同様に、駆動軸208にはベルトの巻回によるテンションによって曲げ方向の力が作用するため、このように曲げ方向の力が作用する駆動軸208と軸受209との間の摩擦を低減させるべく、内部リークした作動油を軸受209に供給して該軸受を潤滑できるように、軸受209と吸込通路211との間にドレーン油路212を設けることによって、内部リークした作動油が充満している駆動軸208の周囲から軸受209を経て、吸込通路211に至る流路Aを形成している。
【0016】
しかし、このように構成された特許文献2においても、特許文献1に記載のベーンポンプ100と同様にハウジング102内にドレーン油路212を形成することによって、ハウジング102内が狭小化するといった問題等がある上に、当該特許文献2においては、特に、以下の問題があった。
【0017】
即ち、前述のように、軸受209と吸込通路211との間にドレーン油路212を形成した場合、該ドレーン油路212の近傍に位置する、高圧室206の上の部分206aは、該ドレーン油路212との干渉を避けるために、該高圧室206の下の部分206bよりも狭い容積や形状に形成されることになる。その結果、高圧室206内における作動油の円滑な流れが阻害されてキャビテーションが発生し易くなるという問題があった。
【0018】
又、特許文献2においては、加工の制約上、ハウジング202の内側から斜めにドリルを前進させるようにしてドレーン油路212を加工するため、バリやカエリが発生し易く、コンタミ等の原因になっていた。
【0019】
本発明は、前記背景技術の問題に鑑みてなされたもので、その目的は、ドレーン油路を容易に形成できる上に、ポンプ性能を向上させる際の制約にならないようにドレーン油路を形成できるようにした電動ベーンポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1に記載の発明は、ハウジングと、該ハウジングに取り付けられるカバーとで空間が形成されると共に、該カバーには、作動油を該空間内に導くための吸込通路が形成され、該空間内にはベーンを備えたロータと、該ロータの軸方向の前後から該ロータを挟むように第1、第2サイドプレートが配置され、該第1サイドプレートは前記カバーに当接すると共に該第1サイドプレートには前記吸込通路の下流端に連通する吸込ポートが形成され、前記第2サイドプレートには前記ロータのポンプ作用によって高圧化された作動油を高圧室に導くための吐出ポートが形成され、電動モータによって駆動される駆動軸が前記ロータに連結されると共に前記第1、第2サイドプレートには該駆動軸が貫通する軸孔が形成され、
前記カバーと第1サイドプレートとの当接面にドレーン油路を設けたことを特徴とする電動ベーンポンプである。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動ベーンポンプにおいて、ドレーン油路が、前記第1サイドプレートに溝状に形成され、該ドレーン油路の上流端は前記第1サイドプレートに設けられた軸孔に連通し、下流端は前記カバーの吸込通路に連通することを特徴とするものである。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電動ベーンポンプにおいて、ドレーン油路が、前記カバーに溝状に形成され、該ドレーン油路の上流端は前記第1サイドプレートの軸孔に連通し、下流端は前記カバーの吸込通路に連通することを特徴とするものである。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の電動ベーンポンプにおいて、前記ドレーン通路の下流端は、前記吸込通路の下流端に連通することを特徴とするものである。
【0024】
請求項5に記載の発明は、ハウジングと、該ハウジングに取り付けられるカバーとで空間が形成されると共に、該カバーには、作動油を該空間内に導くための吸込通路が形成され、該空間内にはベーンを備えたロータと、サイドプレートが配置され、該サイドプレートには前記ロータのポンプ作用によって高圧化された作動油を高圧室に導くための吐出ポートが形成されると共に、電動モータによって駆動される駆動軸が前記ロータに連結され、
前記カバーにドレーン油路が形成されたことを特徴とする電動ベーンポンプである。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電動ベーンポンプにおいて、前記ドレーン油路の下流端は、前記吸込通路の下流端に連通することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に記載の発明によれば、サイドプレートを2枚設けた電動ベーンポンプにおいて、内部リークした作動油は、第1サイドプレートと、カバーとの当接面に設けられたドレーン油路を通って吸込通路側へ戻されるものであって、ドレーン油路を容易に構成できるだけでなく、ドレーン油路がハウジング内には形成されないため、該ドレーン油路の存在によってハウジング内が狭小化することがない。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、第1サイドプレートに設けられたドレーン油路を通って吸込通路側へ戻されるものであって、ドレーン油路を容易に構成できるだけでなく、ドレーン油路がハウジング内には形成されないため、該ドレーン油路の存在によってハウジング内が狭小化することがない。
【0028】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、カバーに設けられたドレーン油路を通って吸込通路側へ戻されるものであって、ドレーン油路を容易に構成できるだけでなく、ドレーン油路がハウジング内には形成されないため、該ドレーン油路の存在によってハウジング内が狭小化することがない。
【0029】
請求項4に記載の発明によれば、吸込通路の下流端は、吸込ポートに連通している箇所であって、作動油が効果的に吸い込まれていく箇所に相当することから負圧になり易い。このため、ドレーン油路の下流端を吸込通路の下流端に連通させることによって、ドレーン油を圧力差によって吸込通路、即ち、低圧側へ効果的に戻すことができる。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、サイドプレートを1枚設けた電動ベーンポンプにおいて、内部リークした作動油は、カバーに設けられたドレーン油路を通って吸込通路側へ戻されるものであって、ドレーン油路を容易に構成できるだけでなく、ドレーン油路がハウジング内には形成されないため、該ドレーン油路の存在によってハウジング内が狭小化することがない。
【0031】
請求項6に記載の発明によれば、吸込通路の下流端は、吸込ポートに連通している箇所であって、作動油が効果的に吸い込まれていく箇所に相当することから負圧になり易い。このため、ドレーン油路の下流端を吸込通路の下流端に連通させることによって、ドレーン油を圧力差によって吸込通路、即ち、低圧側へ効果的に戻すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1乃至図6は第1実施形態を示す。図1はベーンポンプの縦断面図を示す。図2は、ベーンポンプのハウジングからカバーを外すことによって、該ハウジング内を図1中、右側から観た状態を示す。尚、図2においては、第1サイドプレートの一部を破断している。図3は、カバーの内面を示す。図4は、ベーンポンプの構成要素としてのサイドプレートを正面から観た状態を示す。図5、図6は、第1サイドプレートの断面を示す図である。
【0033】
図1に示すように、ベーンポンプ1は、ハウジング2とカバー3を備えている。該ハウジング2は有底の孔4を有し、該孔4をカバー3が閉塞することによって、後述のように、ロータ等が配置される空間が形成される。
【0034】
図1,図3に示すように、前記カバー3の内面は、凹状に形成されることによって、吸込通路5が形成されている。図3に示すように、該吸込通路5は、上流側から下流側へ向けて、二股状に形成されている。該吸込通路5の上流端5aは、オイルタンク(図示せず)に連通して作動油が供給可能な状態に設けられている。
【0035】
図1に示すように、前記ハウジング2の孔底には軸孔2aが形成され、該軸孔2aに駆動軸6が挿入されている。該駆動軸6は前記空間を貫通するように設けられ、該駆動軸6の先端側は、前記カバー3に設けられている軸受凹部3aに回転自在に支持されている。又、該駆動軸6は、図1に示すように、ハウジング2に設けられた軸受Rによって回転自在に支持されている。該駆動軸6は、電動モータ(図示せず)によって回転駆動されるものである。又、ハウジング2から駆動軸6を突出させている箇所には、シールSが設けられている。
【0036】
図1、図2に示すように、前記空間内には、第1サイドプレート7と、カムリング8と、ベーン9を備えたロータ10と、第2サイドプレート11とが設けられている。該ロータ10は前記駆動軸6に取り付けられて、カムリング8内で回転するようになっている。図2に示すように、該ロータ10と、ベーン9と、カムリング8内面とで囲まれたポンプ室Pが形成される。
【0037】
図1に示すように、第1サイドプレート7と第2サイドプレート11は、前記ロータ10の軸方向の前後からロータ10を挟むように配置されている。これら第1サイドプレート7と第2サイドプレート11には、軸孔7a、11aが形成されて、これら軸孔7a、11a内に前記駆動軸6が回転自在に貫通している。
【0038】
図2、図3に示すように、前記第1サイドプレート7には、2つの吸込ポート12、12が形成されている。これら吸込ポート12、12が第1サイドプレート7の軸孔7aを挟んで互いに対面するように、該第1サイドプレート7の外周から内側へ凹むように設けられることによって、該第1サイドプレート7は、図4に示すように、中央においてくびれた板状に形成されている。このように、第1サイドプレート7に吸込ポート12、12が形成されることによって、図2に示すように、該第1サイドプレート7をカバー5側から観た状態において、ポンプ室Pが該カバー3側に露出するようになっている。又、図示しないが、第2サイドプレート11には、ロータ10側に2つの吸込ポートが形成されており、駆動軸6の軸方向から観て、第1サイドプレート7の吸込ポート12、12と重なる様な位置関係になっている。
【0039】
前記吸込ポート12、12は、図1に示すように、前記ハウジング2に対してカバー3を取り付けた際に、前記吸込通路5の下流端5b、5b(図3に示す)に対面する位置に設けられている。従って、前記吸込通路5から吸い込まれた作動油は、前記吸込ポート12、12から前記ポンプ室Pに導入されてポンプ作用を受けるようになっている。
【0040】
図1に示すように、前記第1サイドプレート7と前記カバー3との当接面には、ドレーン油路13が設けられている。該ドレーン油路13は、カバー3に形成しても良いが、この第1実施形態では、第1サイドプレート7に形成されている。このように、ドレーン油路13を、第1サイドプレート7に形成した場合、図5に示すように、該ドレーン油路13は、該第1サイドプレート7の表面に断面が三角形の溝状に形成されると共に、図4に示すように、その上流端13aが該第1サイドプレート7の軸孔7aに連通し、その下流端13b側が、前記カバー3の吸込通路5に連通するように形成されている。図1に示すように、前記ハウジング2に前記カバー3を組み付けた際に、第1サイドプレート7がカバー3に当接することによって、前記溝状のドレーン油路13の表面は、該カバー3によって閉塞されることになる。
【0041】
図6は前記ドレーン油路13の横断面を示している。図6(a)に示すように、ドレーン油路は、断面形状が長方形状に形成しても良く、図6(b)に示すように、断面形状が円弧状に形成しても良く、或いは、図6(c)に示すように、楕円形に形成しても良い。
【0042】
又、図1に示すように、前記第2サイドプレート11と、前記ハウジング2の孔4内面との間は、高圧室14になっている。第2サイドプレート11には吐出ポート15が形成され、該吐出ポート15によって、前記ポンプ室P(図2に示す)内と高圧室14内とが連通している。該高圧室14は、ハウジング2に設けられた吐出口(図示せず)に連通している。
【0043】
次に、作用について説明する。図1に示す状態において、電動モータ(図示せず)を駆動して、駆動軸6を作動させることによって、ロータ10を回転させる。
【0044】
そして、前記駆動軸6が回転し、ロータ10が回転することによって、作動油は、図示しない吸込口から吸込通路5内に吸い込まれた後、図2に示すように、第1サイドプレート7の吸込ポート12,12からポンプ室P内へ吸い込まれる。該ポンプ室P内においては、ロータ10が回転することによって、作動油に対してポンプ作用を施して、作動油が高圧化する。高圧化した作動油は、図1に示すように、第2サイドプレート11の吐出ポート15から高圧室14へ導かれた後、吐出口からポンプ外へ吐出される。
【0045】
そして、ハウジング2とカバー3とで密封された前記駆動軸6の周囲には、ベーンポンプを構成する各部位のクリアランス等から内部リークした作動油が充満しているが、当該作動油は、第1サイドプレート7に設けられているドレーン油路13を流通して低圧側の吸込通路5へ戻される。
【0046】
ところで、本実施形態においては、駆動軸6は、電動モータによって回転駆動されるため、背景技術のように、駆動軸6には、その径方向の一方へ押圧する力が作用しないため、背景技術のように、内部リークした作動油で軸受Rを潤滑させる必要がなく、当該内部リークした作動油を軸受Rへ向けて導くように迂回させることなく、第1サイドプレト7に形成されたドレーン油路13を流通させて吸込通路5へ戻す。
【0047】
図11に示すように、背景技術においては、フロントハウジング102にドレーン油路112をドリルによって穿設する構成であるのに対して、この実施形態では、図1、図2,図4に示すように、第1サイドプレート7の表面にドレーン油路13を形成する構成であるため、ドレーン油路13の形状が簡単である上に、該ドレーン油路13は、第1サイドプレート7を鋳造によって形成すると同時に形成することが可能となるため、ドレーン油路13を形成するための特別の工程が不要であって、ドレーン油路13の成型が容易である。
【0048】
又、図11に示すように、背景技術においては、ロータ104等が配置されているフロントハウジング102の空間を避けるように、該ハウジング102にドレーン油路112を形成していたため、該ハウジング102は大型化せざるを得なかったが、図1に示すように、この実施形態においては、第1サイドプレート7の面に溝状のドレーン油路13を形成する構成のため、背景技術のように、ハウジング102を大型化させる必要性は全くなく、全体が小形化する。
【0049】
又、図12に示すように、背景技術においては、高圧室206をドレーン油路212に干渉しないように形成しなければならないため、該高圧室206は、小さな容積の部分206aと大きな容積の部分206bとを有することになり、その結果、該高圧室206内の作動油の流れのバランスが悪化して、キャビテーションの発生の原因になっていたが、この実施形態においては、図1に示すように、ドレーン油路13は、高圧室14の近傍に形成されずに、第1サイドプレート7とカバー3との当接面に形成されるため、該ドレーン油路13と高圧室14とが干渉することがなく、ベーンポンプとしての性能を悪化させる虞がない。
【0050】
更に、この実施形態においては、第1サイドプレート7を成型する鋳造型に突起を形成するだけで、該第1サイドプレート7を成型すると同時にドレーン油路13を形成することができる上に、該突起の幅や高さを自在に調節するだけで、幅や深さの異なるドレーン油路13を自在に形成することができて、作動油の流路抵抗を自在に調節することができるる。又、背景技術のように、ドレーン油路112をドリルで切削した場合と比較して、この実施形態においては、加工の際のバリやカエリの発生や、コンタミ等の原因に成るおそれが可及的に少ない。
【0051】
更に、ドレーン油路13は、ブッシュを通らない位置に形成されるため、コンタミによるブッシュの焼付を防止することができる。
【0052】
図7は第2実施形態を示す。第1実施形態と比較して、この第2実施形態の特徴は、ドレーン油路13の下流端13bを、吸込通路5の内の下流側5bの位置、即ち、吸込ポート12の位置に連通するように設けた点にある。図2に示すように、吸込ポート12は、ロータ10、カムリング8によって形成されるポンプ室Pに直接連通する箇所であって、ロータ10の回転によって作動油が積極的に吸い込まれていく箇所に相当することから負圧になり易く、ドレーン油路13から流出する作動油をこの部分に導くことで、ドレーン油を抵抗無く吸込通路5側へ吸い込ませることができる。
【0053】
又、図2中、ロータ10が仮に、反時計方向へ回転する場合には、吸込ポート12の内でも、ロータ10の回転方向の手前側に行くに従い、前記ポンプ室Pの容量の増加率が大きくなる傾向にあることから、より好ましくは吸込ポート12の内であって、ロータ13の回転方向手前側に相当する吸込通路5内に、ドレーン油路13の下流端13b側を連通させる。即ち、例えば、ロータ10が図7中、反時計方向へ回転する場合には、図中、一点鎖線で示すように、ドレーン油路13の下流端13b側を、吸込ポート12内であって、ロータ10の回転方向の手前側の位置Yに連通させることが好ましい。
【0054】
しかし、機能上、ドレーン油路13の下流端13b側が、低圧側に連通していれば内部リークした作動油を確実に低圧側へ戻すことができるため、ドレーン油路13の下流端13b側は、吸込通路5の何れの位置に連通していても、本発明の課題を解決することができるものである。又、この場合、ドレーン油路13を左右に2つ設けることによって、左右のドレーン油の流れのバランスを保つことができる。
【0055】
図8は第3実施形態を示す。この第3実施形態の特徴は、ドレーン油路13を、軸孔7aの反対側にも設けた点にある。この実施形態においては、第1サイドプレート7を組み付ける際に、該第1サイドプレート7は上下の向きに関係なく、2つのドレーン油路13の内のいずれかのドレーン油路13が吸込通路5に連通することになるため、組付が容易である。
【0056】
図9は第4実施形態を示す。この第4実施形態の特徴は、ドレーン油路13をカバー3内面に設けた点にある。該ドレーン油路13の上流端13aは、支持凹部3aに連通し、下流端13bは吸込通路5に連通している。この第4実施形態においても、内部リークした作動油を吸込通路5へ戻すことが可能である。
【0057】
図10は第5実施形態を示す。この第5実施形態の特徴は、カバー3の内面に軸受凹部3aが形成されていないタイプのベーンポンプに適用した場合を示す。この第5実施形態においては、カバー3の内面にドレーン油路13を形成し、該ドレーン油路13の下流端13bは、吸込通路5に連通させるが、上流端13aは、図1に示すように、カバー3を組み付けた際に、第1サイドプレート7の軸孔7aに連通させるようにしたものである。即ち、図1に示すように、カバー3をハウジング2に取り付けた際に、ドレーン油路13の上流端13aが第1サイドプレート7の軸孔7aに連通する位置に設けられている。この第5実施形態においても、内部リークした作動油を吸込通路5に戻すことが可能である。
【0058】
又、以上の実施形態においては、第1サイドプレート7が存在するタイプのベーンポンプに適用した場合について説明したが、図9に示す第4実施形態や、図10に示す第5実施形態のように、カバー3の内面にドレーン油路13を形成する場合には、第1サイドプレート7が存在しないタイプのベーンポンプにも適用することができる。即ち、内部リークした駆動軸6の周囲の作動油は、カバー3内面に設けられているドレーン油路13によって吸込通路5側へ戻されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ベーンポンプの縦断面図である。(第1実施形態)
【図2】ベーンポンプからカバーを取り外して、図1中、右側から観た状態の図である。(第1実施形態)
【図3】カバー内面を示す図である。(第1実施形態)
【図4】第1サイドプレート7の正面図である。(第1実施形態)
【図5】第1サイドプレートの断面図である。(第1実施形態)
【図6】第1サイドプレートの断面図である。(第1実施形態)
【図7】第2実施形態を示す第1サイドプレートの正面図である。(第2実施形態)
【図8】第3実施形態を示す第1サイドプレートの正面図である。(第3実施形態)
【図9】第4実施形態を示すカバーの内面図である。(第4実施形態)
【図10】第5実施形態を示すカバーの内面図である。(第5実施形態)
【図11】背景技術によるベーンポンプの縦断面図である。(背景技術)
【図12】背景技術によるベーンポンプの縦断面図である。(背景技術)
【符号の説明】
【0060】
1 電動ベーンポンプ
2 ハウジング
3 カバー
5 吸込通路
6 駆動軸
7 第1サイドプレート
8 カムリング
10 ロータ
11 第2サイドプレート
12 吸込ポート
13 ドレーン油路
14 高圧室
15 吐出ポート
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ベーンポンプに関するものであって、特に、ドレーン油路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図11は、特許文献1に記載されている背景技術によるベーンポンプ100の縦断面図を示す。
【0003】
【特許文献1】特開2002−98066
【0004】
該ベーンポンプ100は、リヤハウジング101とフロントハウジング102とで形成された空間内に、駆動軸103が取り付けられたロータ104と該ロータ104の軸方向の前後から該ロータ104を挟むように設けられた2つのサイドプレート105,106と、カムリング107を配置した構成である。該ロータ104は前記駆動軸103に回転駆動されてカムリング107内で回転することによって、吸い込まれた作動油に対してポンプ作用を施すものである。
【0005】
前記サイドプレート106には、吐出ポートが形成され、ポンプ作用によって高圧化した作動油を高圧室108へ導くようになっている。該高圧室108は吐出口113によって外部へ連通している。
【0006】
前記駆動軸103は、フロントハウジング102に設けられた軸受109によって回転自在に支持されていると共に、該駆動軸103にはプーリ110が設けられている。該プーリ110と、別途設けられたエンジン(図示せず)との間には、ベルト(図示せず)が巻回されることによって、駆動軸103に、エンジンから回転力が伝達される。
【0007】
ところで、前記エンジンを駆動した場合、前記ベルトにはテンションが付与され、該テンションによって、前記駆動軸103にはエンジン側へ向けた力が常に付与された状態にあって、駆動軸103と軸受109との間の摩擦が増加する。このため、該駆動軸103と軸受109との間の摩擦を低減させ、駆動軸103の焼付きの防止等を図るために、内部リークした作動油で該軸受109を潤滑するべく、該軸受109と吸込通路111との間にドレーン油路112を形成することによって、内部リークした作動油が充満している駆動軸103の周囲から軸受109を介して吸込通路111に至る油路を形成している。ここで、内部リークした作動油とは、ベーンポンプを構成する各部位のクリアランス等から洩れた作動油を意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前述の背景技術においては、内部リークした作動油で軸受109を潤滑させた後に、該作動油を吸込通路111側へ戻すためのドレーン油路112を、該軸受109とフロントハウジング102との間に形成しなければならないため、フロントハウジング102に複雑な形状のドレーン油路112を形成することになって、製造工程が複雑であるという問題あった。
【0009】
又、フロントハウジング102内にこのような形状のドレーン油路112を形成しなければならないため、フロントハウジング102が大型化するという問題があった。又、該ハウジング102を小型化させようとする場合には、前記ドレーン油路112を形成するスペース分だけ、ロータ104等を配置するための空間や、高圧室108等の大きさや形状等が制限されてしまって、ポンプ性能を向上させる際の制約になるといった問題あった。
【0010】
又、前記ドレーン油路112は、ドリルによってフロントハウジング102に穿設されるため、ドリルによる加工工程が別途必要になって製造過程が複雑であり、又、ドリルによる切削の際にバリが発生し、該バリの存在が作動油の流れを悪化させるといった問題もあった。
【0011】
図12は、特許文献2に記載されている背景技術によるベーンポンプ200の縦断面図を示す。
【0012】
【特許文献2】特開2004−28014
【0013】
当該特許文献2に記載のベーンポンプ200は、有底の孔201を有するハウジング202と、該孔201の開口側に設けられたカバー203とを備えている。該孔201内には、該孔201の孔底側からサイドプレート204とカムリング205が順に配置され、該サイドプレート204と該孔の底との間は、高圧室206になっている。又、前記カムリング205内には、ベーンを備えたロータ207が回転自在に配置されている。
【0014】
又、前記ハウジング202の孔底側から該ハウジング202を貫通するように駆動軸208が設けられている。該駆動軸208には、前記ロータ207が取り付けられ、該ロータ207は該駆動軸208の回転によって回転するものである。該駆動軸208は、ハウジング202に設けられた軸受209によって回転自在に支持されると共に、該駆動軸208の先端側はカバー203に設けられた軸受210で回転自在に支持されている。
【0015】
そして、前記駆動軸208のプーリ(図示せず)にベルト(図示せず)を巻回させ、該ベルトによってエンジンの回転力が前記駆動軸208に伝達されて前記駆動軸208が回転するようになっているため、当該特許文献2に記載のベーンポンプ200においても、特許文献1に記載の現象と同様に、駆動軸208にはベルトの巻回によるテンションによって曲げ方向の力が作用するため、このように曲げ方向の力が作用する駆動軸208と軸受209との間の摩擦を低減させるべく、内部リークした作動油を軸受209に供給して該軸受を潤滑できるように、軸受209と吸込通路211との間にドレーン油路212を設けることによって、内部リークした作動油が充満している駆動軸208の周囲から軸受209を経て、吸込通路211に至る流路Aを形成している。
【0016】
しかし、このように構成された特許文献2においても、特許文献1に記載のベーンポンプ100と同様にハウジング102内にドレーン油路212を形成することによって、ハウジング102内が狭小化するといった問題等がある上に、当該特許文献2においては、特に、以下の問題があった。
【0017】
即ち、前述のように、軸受209と吸込通路211との間にドレーン油路212を形成した場合、該ドレーン油路212の近傍に位置する、高圧室206の上の部分206aは、該ドレーン油路212との干渉を避けるために、該高圧室206の下の部分206bよりも狭い容積や形状に形成されることになる。その結果、高圧室206内における作動油の円滑な流れが阻害されてキャビテーションが発生し易くなるという問題があった。
【0018】
又、特許文献2においては、加工の制約上、ハウジング202の内側から斜めにドリルを前進させるようにしてドレーン油路212を加工するため、バリやカエリが発生し易く、コンタミ等の原因になっていた。
【0019】
本発明は、前記背景技術の問題に鑑みてなされたもので、その目的は、ドレーン油路を容易に形成できる上に、ポンプ性能を向上させる際の制約にならないようにドレーン油路を形成できるようにした電動ベーンポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1に記載の発明は、ハウジングと、該ハウジングに取り付けられるカバーとで空間が形成されると共に、該カバーには、作動油を該空間内に導くための吸込通路が形成され、該空間内にはベーンを備えたロータと、該ロータの軸方向の前後から該ロータを挟むように第1、第2サイドプレートが配置され、該第1サイドプレートは前記カバーに当接すると共に該第1サイドプレートには前記吸込通路の下流端に連通する吸込ポートが形成され、前記第2サイドプレートには前記ロータのポンプ作用によって高圧化された作動油を高圧室に導くための吐出ポートが形成され、電動モータによって駆動される駆動軸が前記ロータに連結されると共に前記第1、第2サイドプレートには該駆動軸が貫通する軸孔が形成され、
前記カバーと第1サイドプレートとの当接面にドレーン油路を設けたことを特徴とする電動ベーンポンプである。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動ベーンポンプにおいて、ドレーン油路が、前記第1サイドプレートに溝状に形成され、該ドレーン油路の上流端は前記第1サイドプレートに設けられた軸孔に連通し、下流端は前記カバーの吸込通路に連通することを特徴とするものである。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電動ベーンポンプにおいて、ドレーン油路が、前記カバーに溝状に形成され、該ドレーン油路の上流端は前記第1サイドプレートの軸孔に連通し、下流端は前記カバーの吸込通路に連通することを特徴とするものである。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の電動ベーンポンプにおいて、前記ドレーン通路の下流端は、前記吸込通路の下流端に連通することを特徴とするものである。
【0024】
請求項5に記載の発明は、ハウジングと、該ハウジングに取り付けられるカバーとで空間が形成されると共に、該カバーには、作動油を該空間内に導くための吸込通路が形成され、該空間内にはベーンを備えたロータと、サイドプレートが配置され、該サイドプレートには前記ロータのポンプ作用によって高圧化された作動油を高圧室に導くための吐出ポートが形成されると共に、電動モータによって駆動される駆動軸が前記ロータに連結され、
前記カバーにドレーン油路が形成されたことを特徴とする電動ベーンポンプである。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電動ベーンポンプにおいて、前記ドレーン油路の下流端は、前記吸込通路の下流端に連通することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に記載の発明によれば、サイドプレートを2枚設けた電動ベーンポンプにおいて、内部リークした作動油は、第1サイドプレートと、カバーとの当接面に設けられたドレーン油路を通って吸込通路側へ戻されるものであって、ドレーン油路を容易に構成できるだけでなく、ドレーン油路がハウジング内には形成されないため、該ドレーン油路の存在によってハウジング内が狭小化することがない。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、第1サイドプレートに設けられたドレーン油路を通って吸込通路側へ戻されるものであって、ドレーン油路を容易に構成できるだけでなく、ドレーン油路がハウジング内には形成されないため、該ドレーン油路の存在によってハウジング内が狭小化することがない。
【0028】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、カバーに設けられたドレーン油路を通って吸込通路側へ戻されるものであって、ドレーン油路を容易に構成できるだけでなく、ドレーン油路がハウジング内には形成されないため、該ドレーン油路の存在によってハウジング内が狭小化することがない。
【0029】
請求項4に記載の発明によれば、吸込通路の下流端は、吸込ポートに連通している箇所であって、作動油が効果的に吸い込まれていく箇所に相当することから負圧になり易い。このため、ドレーン油路の下流端を吸込通路の下流端に連通させることによって、ドレーン油を圧力差によって吸込通路、即ち、低圧側へ効果的に戻すことができる。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、サイドプレートを1枚設けた電動ベーンポンプにおいて、内部リークした作動油は、カバーに設けられたドレーン油路を通って吸込通路側へ戻されるものであって、ドレーン油路を容易に構成できるだけでなく、ドレーン油路がハウジング内には形成されないため、該ドレーン油路の存在によってハウジング内が狭小化することがない。
【0031】
請求項6に記載の発明によれば、吸込通路の下流端は、吸込ポートに連通している箇所であって、作動油が効果的に吸い込まれていく箇所に相当することから負圧になり易い。このため、ドレーン油路の下流端を吸込通路の下流端に連通させることによって、ドレーン油を圧力差によって吸込通路、即ち、低圧側へ効果的に戻すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1乃至図6は第1実施形態を示す。図1はベーンポンプの縦断面図を示す。図2は、ベーンポンプのハウジングからカバーを外すことによって、該ハウジング内を図1中、右側から観た状態を示す。尚、図2においては、第1サイドプレートの一部を破断している。図3は、カバーの内面を示す。図4は、ベーンポンプの構成要素としてのサイドプレートを正面から観た状態を示す。図5、図6は、第1サイドプレートの断面を示す図である。
【0033】
図1に示すように、ベーンポンプ1は、ハウジング2とカバー3を備えている。該ハウジング2は有底の孔4を有し、該孔4をカバー3が閉塞することによって、後述のように、ロータ等が配置される空間が形成される。
【0034】
図1,図3に示すように、前記カバー3の内面は、凹状に形成されることによって、吸込通路5が形成されている。図3に示すように、該吸込通路5は、上流側から下流側へ向けて、二股状に形成されている。該吸込通路5の上流端5aは、オイルタンク(図示せず)に連通して作動油が供給可能な状態に設けられている。
【0035】
図1に示すように、前記ハウジング2の孔底には軸孔2aが形成され、該軸孔2aに駆動軸6が挿入されている。該駆動軸6は前記空間を貫通するように設けられ、該駆動軸6の先端側は、前記カバー3に設けられている軸受凹部3aに回転自在に支持されている。又、該駆動軸6は、図1に示すように、ハウジング2に設けられた軸受Rによって回転自在に支持されている。該駆動軸6は、電動モータ(図示せず)によって回転駆動されるものである。又、ハウジング2から駆動軸6を突出させている箇所には、シールSが設けられている。
【0036】
図1、図2に示すように、前記空間内には、第1サイドプレート7と、カムリング8と、ベーン9を備えたロータ10と、第2サイドプレート11とが設けられている。該ロータ10は前記駆動軸6に取り付けられて、カムリング8内で回転するようになっている。図2に示すように、該ロータ10と、ベーン9と、カムリング8内面とで囲まれたポンプ室Pが形成される。
【0037】
図1に示すように、第1サイドプレート7と第2サイドプレート11は、前記ロータ10の軸方向の前後からロータ10を挟むように配置されている。これら第1サイドプレート7と第2サイドプレート11には、軸孔7a、11aが形成されて、これら軸孔7a、11a内に前記駆動軸6が回転自在に貫通している。
【0038】
図2、図3に示すように、前記第1サイドプレート7には、2つの吸込ポート12、12が形成されている。これら吸込ポート12、12が第1サイドプレート7の軸孔7aを挟んで互いに対面するように、該第1サイドプレート7の外周から内側へ凹むように設けられることによって、該第1サイドプレート7は、図4に示すように、中央においてくびれた板状に形成されている。このように、第1サイドプレート7に吸込ポート12、12が形成されることによって、図2に示すように、該第1サイドプレート7をカバー5側から観た状態において、ポンプ室Pが該カバー3側に露出するようになっている。又、図示しないが、第2サイドプレート11には、ロータ10側に2つの吸込ポートが形成されており、駆動軸6の軸方向から観て、第1サイドプレート7の吸込ポート12、12と重なる様な位置関係になっている。
【0039】
前記吸込ポート12、12は、図1に示すように、前記ハウジング2に対してカバー3を取り付けた際に、前記吸込通路5の下流端5b、5b(図3に示す)に対面する位置に設けられている。従って、前記吸込通路5から吸い込まれた作動油は、前記吸込ポート12、12から前記ポンプ室Pに導入されてポンプ作用を受けるようになっている。
【0040】
図1に示すように、前記第1サイドプレート7と前記カバー3との当接面には、ドレーン油路13が設けられている。該ドレーン油路13は、カバー3に形成しても良いが、この第1実施形態では、第1サイドプレート7に形成されている。このように、ドレーン油路13を、第1サイドプレート7に形成した場合、図5に示すように、該ドレーン油路13は、該第1サイドプレート7の表面に断面が三角形の溝状に形成されると共に、図4に示すように、その上流端13aが該第1サイドプレート7の軸孔7aに連通し、その下流端13b側が、前記カバー3の吸込通路5に連通するように形成されている。図1に示すように、前記ハウジング2に前記カバー3を組み付けた際に、第1サイドプレート7がカバー3に当接することによって、前記溝状のドレーン油路13の表面は、該カバー3によって閉塞されることになる。
【0041】
図6は前記ドレーン油路13の横断面を示している。図6(a)に示すように、ドレーン油路は、断面形状が長方形状に形成しても良く、図6(b)に示すように、断面形状が円弧状に形成しても良く、或いは、図6(c)に示すように、楕円形に形成しても良い。
【0042】
又、図1に示すように、前記第2サイドプレート11と、前記ハウジング2の孔4内面との間は、高圧室14になっている。第2サイドプレート11には吐出ポート15が形成され、該吐出ポート15によって、前記ポンプ室P(図2に示す)内と高圧室14内とが連通している。該高圧室14は、ハウジング2に設けられた吐出口(図示せず)に連通している。
【0043】
次に、作用について説明する。図1に示す状態において、電動モータ(図示せず)を駆動して、駆動軸6を作動させることによって、ロータ10を回転させる。
【0044】
そして、前記駆動軸6が回転し、ロータ10が回転することによって、作動油は、図示しない吸込口から吸込通路5内に吸い込まれた後、図2に示すように、第1サイドプレート7の吸込ポート12,12からポンプ室P内へ吸い込まれる。該ポンプ室P内においては、ロータ10が回転することによって、作動油に対してポンプ作用を施して、作動油が高圧化する。高圧化した作動油は、図1に示すように、第2サイドプレート11の吐出ポート15から高圧室14へ導かれた後、吐出口からポンプ外へ吐出される。
【0045】
そして、ハウジング2とカバー3とで密封された前記駆動軸6の周囲には、ベーンポンプを構成する各部位のクリアランス等から内部リークした作動油が充満しているが、当該作動油は、第1サイドプレート7に設けられているドレーン油路13を流通して低圧側の吸込通路5へ戻される。
【0046】
ところで、本実施形態においては、駆動軸6は、電動モータによって回転駆動されるため、背景技術のように、駆動軸6には、その径方向の一方へ押圧する力が作用しないため、背景技術のように、内部リークした作動油で軸受Rを潤滑させる必要がなく、当該内部リークした作動油を軸受Rへ向けて導くように迂回させることなく、第1サイドプレト7に形成されたドレーン油路13を流通させて吸込通路5へ戻す。
【0047】
図11に示すように、背景技術においては、フロントハウジング102にドレーン油路112をドリルによって穿設する構成であるのに対して、この実施形態では、図1、図2,図4に示すように、第1サイドプレート7の表面にドレーン油路13を形成する構成であるため、ドレーン油路13の形状が簡単である上に、該ドレーン油路13は、第1サイドプレート7を鋳造によって形成すると同時に形成することが可能となるため、ドレーン油路13を形成するための特別の工程が不要であって、ドレーン油路13の成型が容易である。
【0048】
又、図11に示すように、背景技術においては、ロータ104等が配置されているフロントハウジング102の空間を避けるように、該ハウジング102にドレーン油路112を形成していたため、該ハウジング102は大型化せざるを得なかったが、図1に示すように、この実施形態においては、第1サイドプレート7の面に溝状のドレーン油路13を形成する構成のため、背景技術のように、ハウジング102を大型化させる必要性は全くなく、全体が小形化する。
【0049】
又、図12に示すように、背景技術においては、高圧室206をドレーン油路212に干渉しないように形成しなければならないため、該高圧室206は、小さな容積の部分206aと大きな容積の部分206bとを有することになり、その結果、該高圧室206内の作動油の流れのバランスが悪化して、キャビテーションの発生の原因になっていたが、この実施形態においては、図1に示すように、ドレーン油路13は、高圧室14の近傍に形成されずに、第1サイドプレート7とカバー3との当接面に形成されるため、該ドレーン油路13と高圧室14とが干渉することがなく、ベーンポンプとしての性能を悪化させる虞がない。
【0050】
更に、この実施形態においては、第1サイドプレート7を成型する鋳造型に突起を形成するだけで、該第1サイドプレート7を成型すると同時にドレーン油路13を形成することができる上に、該突起の幅や高さを自在に調節するだけで、幅や深さの異なるドレーン油路13を自在に形成することができて、作動油の流路抵抗を自在に調節することができるる。又、背景技術のように、ドレーン油路112をドリルで切削した場合と比較して、この実施形態においては、加工の際のバリやカエリの発生や、コンタミ等の原因に成るおそれが可及的に少ない。
【0051】
更に、ドレーン油路13は、ブッシュを通らない位置に形成されるため、コンタミによるブッシュの焼付を防止することができる。
【0052】
図7は第2実施形態を示す。第1実施形態と比較して、この第2実施形態の特徴は、ドレーン油路13の下流端13bを、吸込通路5の内の下流側5bの位置、即ち、吸込ポート12の位置に連通するように設けた点にある。図2に示すように、吸込ポート12は、ロータ10、カムリング8によって形成されるポンプ室Pに直接連通する箇所であって、ロータ10の回転によって作動油が積極的に吸い込まれていく箇所に相当することから負圧になり易く、ドレーン油路13から流出する作動油をこの部分に導くことで、ドレーン油を抵抗無く吸込通路5側へ吸い込ませることができる。
【0053】
又、図2中、ロータ10が仮に、反時計方向へ回転する場合には、吸込ポート12の内でも、ロータ10の回転方向の手前側に行くに従い、前記ポンプ室Pの容量の増加率が大きくなる傾向にあることから、より好ましくは吸込ポート12の内であって、ロータ13の回転方向手前側に相当する吸込通路5内に、ドレーン油路13の下流端13b側を連通させる。即ち、例えば、ロータ10が図7中、反時計方向へ回転する場合には、図中、一点鎖線で示すように、ドレーン油路13の下流端13b側を、吸込ポート12内であって、ロータ10の回転方向の手前側の位置Yに連通させることが好ましい。
【0054】
しかし、機能上、ドレーン油路13の下流端13b側が、低圧側に連通していれば内部リークした作動油を確実に低圧側へ戻すことができるため、ドレーン油路13の下流端13b側は、吸込通路5の何れの位置に連通していても、本発明の課題を解決することができるものである。又、この場合、ドレーン油路13を左右に2つ設けることによって、左右のドレーン油の流れのバランスを保つことができる。
【0055】
図8は第3実施形態を示す。この第3実施形態の特徴は、ドレーン油路13を、軸孔7aの反対側にも設けた点にある。この実施形態においては、第1サイドプレート7を組み付ける際に、該第1サイドプレート7は上下の向きに関係なく、2つのドレーン油路13の内のいずれかのドレーン油路13が吸込通路5に連通することになるため、組付が容易である。
【0056】
図9は第4実施形態を示す。この第4実施形態の特徴は、ドレーン油路13をカバー3内面に設けた点にある。該ドレーン油路13の上流端13aは、支持凹部3aに連通し、下流端13bは吸込通路5に連通している。この第4実施形態においても、内部リークした作動油を吸込通路5へ戻すことが可能である。
【0057】
図10は第5実施形態を示す。この第5実施形態の特徴は、カバー3の内面に軸受凹部3aが形成されていないタイプのベーンポンプに適用した場合を示す。この第5実施形態においては、カバー3の内面にドレーン油路13を形成し、該ドレーン油路13の下流端13bは、吸込通路5に連通させるが、上流端13aは、図1に示すように、カバー3を組み付けた際に、第1サイドプレート7の軸孔7aに連通させるようにしたものである。即ち、図1に示すように、カバー3をハウジング2に取り付けた際に、ドレーン油路13の上流端13aが第1サイドプレート7の軸孔7aに連通する位置に設けられている。この第5実施形態においても、内部リークした作動油を吸込通路5に戻すことが可能である。
【0058】
又、以上の実施形態においては、第1サイドプレート7が存在するタイプのベーンポンプに適用した場合について説明したが、図9に示す第4実施形態や、図10に示す第5実施形態のように、カバー3の内面にドレーン油路13を形成する場合には、第1サイドプレート7が存在しないタイプのベーンポンプにも適用することができる。即ち、内部リークした駆動軸6の周囲の作動油は、カバー3内面に設けられているドレーン油路13によって吸込通路5側へ戻されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ベーンポンプの縦断面図である。(第1実施形態)
【図2】ベーンポンプからカバーを取り外して、図1中、右側から観た状態の図である。(第1実施形態)
【図3】カバー内面を示す図である。(第1実施形態)
【図4】第1サイドプレート7の正面図である。(第1実施形態)
【図5】第1サイドプレートの断面図である。(第1実施形態)
【図6】第1サイドプレートの断面図である。(第1実施形態)
【図7】第2実施形態を示す第1サイドプレートの正面図である。(第2実施形態)
【図8】第3実施形態を示す第1サイドプレートの正面図である。(第3実施形態)
【図9】第4実施形態を示すカバーの内面図である。(第4実施形態)
【図10】第5実施形態を示すカバーの内面図である。(第5実施形態)
【図11】背景技術によるベーンポンプの縦断面図である。(背景技術)
【図12】背景技術によるベーンポンプの縦断面図である。(背景技術)
【符号の説明】
【0060】
1 電動ベーンポンプ
2 ハウジング
3 カバー
5 吸込通路
6 駆動軸
7 第1サイドプレート
8 カムリング
10 ロータ
11 第2サイドプレート
12 吸込ポート
13 ドレーン油路
14 高圧室
15 吐出ポート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、該ハウジングに取り付けられるカバーとで空間が形成されると共に、該カバーには、作動油を該空間内に導くための吸込通路が形成され、該空間内にはベーンを備えたロータと、該ロータの軸方向の前後から該ロータを挟むように第1、第2サイドプレートが配置され、該第1サイドプレートは前記カバーに当接すると共に該第1サイドプレートには前記吸込通路の下流端に連通する吸込ポートが形成され、前記第2サイドプレートには前記ロータのポンプ作用によって高圧化された作動油を高圧室に導くための吐出ポートが形成され、電動モータによって駆動される駆動軸が前記ロータに連結されると共に前記第1、第2サイドプレートには該駆動軸が貫通する軸孔が形成され、
前記カバーと第1サイドプレートとの当接面にドレーン油路を設けたことを特徴とする電動ベーンポンプ。
【請求項2】
前記ドレーン油路は、前記第1サイドプレートに溝状に形成され、該ドレーン油路の上流端は前記第1サイドプレートに設けられた軸孔に連通し、下流端は前記カバーの吸込通路に連通することを特徴とする請求項1に記載の電動ベーンポンプ。
【請求項3】
前記ドレーン油路は、前記カバーに溝状に形成され、該ドレーン油路の上流端は前記第1サイドプレートの軸孔に連通し、下流端は前記カバーの吸込通路に連通することを特徴とする請求項1に記載の電動ベーンポンプ。
【請求項4】
前記ドレーン通路の下流端は、前記吸込通路の下流端に連通することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の電動ベーンポンプ。
【請求項5】
ハウジングと、該ハウジングに取り付けられるカバーとで空間が形成されると共に、該カバーには、作動油を該空間内に導くための吸込通路が形成され、該空間内にはベーンを備えたロータと、サイドプレートが配置され、該サイドプレートには前記ロータのポンプ作用によって高圧化された作動油を高圧室に導くための吐出ポートが形成され、電動モータによって駆動される駆動軸が前記ロータに連結され、
前記カバーに、ドレーン油路を設けたことを特徴とする電動ベーンポンプ。
【請求項6】
前記ドレーン油路の下流端は、前記吸込通路の下流端に連通することを特徴とする請求項5に記載の電動ベーンポンプ。
【請求項1】
ハウジングと、該ハウジングに取り付けられるカバーとで空間が形成されると共に、該カバーには、作動油を該空間内に導くための吸込通路が形成され、該空間内にはベーンを備えたロータと、該ロータの軸方向の前後から該ロータを挟むように第1、第2サイドプレートが配置され、該第1サイドプレートは前記カバーに当接すると共に該第1サイドプレートには前記吸込通路の下流端に連通する吸込ポートが形成され、前記第2サイドプレートには前記ロータのポンプ作用によって高圧化された作動油を高圧室に導くための吐出ポートが形成され、電動モータによって駆動される駆動軸が前記ロータに連結されると共に前記第1、第2サイドプレートには該駆動軸が貫通する軸孔が形成され、
前記カバーと第1サイドプレートとの当接面にドレーン油路を設けたことを特徴とする電動ベーンポンプ。
【請求項2】
前記ドレーン油路は、前記第1サイドプレートに溝状に形成され、該ドレーン油路の上流端は前記第1サイドプレートに設けられた軸孔に連通し、下流端は前記カバーの吸込通路に連通することを特徴とする請求項1に記載の電動ベーンポンプ。
【請求項3】
前記ドレーン油路は、前記カバーに溝状に形成され、該ドレーン油路の上流端は前記第1サイドプレートの軸孔に連通し、下流端は前記カバーの吸込通路に連通することを特徴とする請求項1に記載の電動ベーンポンプ。
【請求項4】
前記ドレーン通路の下流端は、前記吸込通路の下流端に連通することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の電動ベーンポンプ。
【請求項5】
ハウジングと、該ハウジングに取り付けられるカバーとで空間が形成されると共に、該カバーには、作動油を該空間内に導くための吸込通路が形成され、該空間内にはベーンを備えたロータと、サイドプレートが配置され、該サイドプレートには前記ロータのポンプ作用によって高圧化された作動油を高圧室に導くための吐出ポートが形成され、電動モータによって駆動される駆動軸が前記ロータに連結され、
前記カバーに、ドレーン油路を設けたことを特徴とする電動ベーンポンプ。
【請求項6】
前記ドレーン油路の下流端は、前記吸込通路の下流端に連通することを特徴とする請求項5に記載の電動ベーンポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−57483(P2008−57483A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237548(P2006−237548)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】
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