説明

電動モータ

【課題】 発熱による問題が少なく、軽量化、コスト低減が可能な電動ポンプユニットを提供する。
【解決手段】 電動モータ3は、ステータコア23の歯部23aに線材28が巻きつけられて複数層の巻線部25が形成されているステータ22を備えている。巻線部25の線材28の一部がアルミニウム線28aで、残りが銅線28bである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動車の油圧ポンプとして使用される電動ポンプユニットなどにおける電動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の油圧ポンプとして、その起動・停止をきめ細かく制御して省エネルギを図るため、また、アイドリングストップによりエンジンが停止しているときにもトランスミッションなどの駆動系への油圧供給を確保するために、電動ポンプユニットが使用されるようになっている。
【0003】
自動車用電動ポンプユニットは、車体の限られたスペースに搭載されるため、コンパクト化が要求され、また、軽量化およびコスト低減も要求される。この要求に応える電動ポンプユニットとして、共通のユニットハウジング内にポンプ、ポンプ駆動用電動モータおよびモータのコントローラが一体に組み込まれたものが提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
この電動モータは、ユニットハウジング側のステータとポンプ駆動モータ軸側のロータを備えている。ステータは、ステータの歯部に線材が巻きつけられて複数層の巻線部(コイル)が形成されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−353536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような電動モータにおいて、ステータの巻線部を構成する線材には、従来、銅線が用いられていた。
【0007】
電動モータのステータの巻線部に使用できる線材として、アルミニウム線がある。アルミニウム線は、銅線に比べて、軽量で安価であるが、導電率が低いという特徴を有する。
【0008】
自動車用電動ポンプユニットの電動モータには、上記の軽量化およびコスト低減の他に、発熱量の少ないことあるいは放熱性の良いことが要求される。
【0009】
従来のように巻線部全体を銅線で構成した場合、軽量化およびコスト低減という要求を十分に満たすことができない。
【0010】
これに対し、アルミニウム線は銅線より導電率が低いことから、巻線部全体をアルミニウム線で構成した場合、体格が大きくなり、発熱量が増えるという問題がある。
【0011】
この発明の目的は、上記の問題を解決し、発熱による問題が少なく、軽量化、コスト低減が可能な電動ポンプユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明による電動モータは、ステータコアの歯部に線材が巻きつけられて複数層の巻線部が形成されているステータを備えている電動モータにおいて、巻線部の線材の一部がアルミニウム線で、残りが銅線であることを特徴とするものである。
【0013】
好ましくは、巻線部のステータコア歯部側の部分がアルミニウム線である。
【0014】
線材は、通常、ステータコア歯部にインシュレータを介して巻きつけられる。
【0015】
巻線部の線材の一部がアルミニウム線であるから、ステータ全体を軽量化し、コストを低減することができる。また、アルミニウム線が巻線部の線材の一部だけに用いられているので、体格と発熱量の増加を抑えることができる。
【0016】
巻線部のステータコア歯部側の部分がアルミニウム線である場合、アルミニウム線で発生した熱はステータコア歯部から容易に放熱され、ステータ全体における発熱むらを小さくすることができる。
【0017】
さらに好ましくは、ステータコア歯部に隣接する1層を含む1または複数の相がアルミニウム線である。たとえば、ステータコア歯部に隣接する1層がアルミニウム線で、残りの層が銅線である。
【発明の効果】
【0018】
この発明の電動モータによれば、上記のように、発熱による問題を少なくして、軽量化、コスト低減を図ることが可能である。とくに、アルミニウム線を放熱に有利なステータコア歯部側に配置することにより、放熱を容易にして、ステータ全体における発熱むらを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、この発明の実施形態を示す電動ポンプユニットの縦断面図である。
【図2】図2は、図1の電動ポンプユニットのモータステータにおける3相の巻線の1例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、この発明を自動車の油圧ポンプに使用される電動ポンプユニットに適用した実施形態について説明する。
【0021】
図1はこの発明の実施形態を示す電動ポンプユニットの縦断面図である。なお、以下の説明において、図面の左側を前、同右側を後とする。
【0022】
電動ポンプユニットは、ユニットハウジング(1)内に、ポンプ(2)と、ポンプ(2)を回転駆動する電動モータ(3)が一体に組み込まれたものである。モータ(3)のコントローラ(4)も、ハウジング(1)内に組み込まれている。この例では、ポンプ(2)はトロコイドポンプ、モータ(3)は3相巻線を有するDCブラシレスセンサレスモータである。
【0023】
ユニットハウジング(1)は、ポンプハウジング(5)、ポンププレート(6)、モータハウジング(7)および蓋(8)よりなり、ポンプハウジング(5)、モータハウジング(7)および蓋(8)により防水ハウジング(9)が構成されている。
【0024】
ポンプハウジング(5)は、前後方向と直交する方向に広がりを持つ厚肉板状のものであり、その中心に、前部が開口したポンプ室(10)が形成されている。ポンプハウジング(5)の前面に、ポンププレート(6)がOリング(11)を介して固定され、ポンプ室(10)の前面が塞がれている。ポンプ室(10)内に、ポンプ(2)を構成するアウタギヤ(12)が回転自在に収容され、アウタギヤ(12)の内側に、これとかみ合うインナギヤ(13)が配置されている。図示は省略したが、ポンププレート(6)には、油入口と油出口が設けられている。
【0025】
モータハウジング(7)は、円筒状をなし、その前端が、シール(14)を介してポンプハウジング(5)の後面外周寄りの部分に固定されている。モータハウジング(7)の後端開口が、蓋(8)により塞がれている。
【0026】
ポンプハウジング(5)の後端面の中心に、モータハウジング(7)より小径の円筒部(5a)が一体に形成され、円筒部(5a)内の後部に設けられた軸受装置(15)により、前後方向にのびるポンプ駆動モータ軸(16)が片持ち支持されている。この例では、軸受装置(15)は、前後に隣接する2個の転がり軸受である玉軸受(17)よりなり、各軸受(17)の内輪(17a)がモータ軸(16)に固定され、外輪(17b)が円筒部(5a)に固定されている。モータ軸(16)の前部は、ポンプハウジング(5)の後壁に形成された穴(18)の部分を貫通してポンプ室(10)内に進入し、その前端がインナギヤ(13)に連結されている。円筒部(5a)内の軸受装置(15)より前側の部分とモータ軸(16)の間に、シール(19)が設けられている。
【0027】
円筒部(5a)より後方に突出したモータ軸(16)の後端部に、モータ(3)を構成するモータロータ(20)が固定されている。ロータ(20)は、モータ軸(16)の後端から半径方向にのびかつ軸受装置(15)の外周を囲む円筒状のものであり、その外周に永久磁石(21)が設けられている。モータ軸(16)、ロータ(20)およびポンプ(2)のインナギヤ(13)を含む回転部分の重心の軸方向位置が、軸受装置(15)の軸方向範囲内にある。この例では、上記重心の軸方向位置が、軸受装置(15)を構成する2個の玉軸受(17)の間にある。
【0028】
ロータ(20)に対向するモータハウジング(7)の内周に、モータ(3)を構成するモータステータ(22)が固定状に設けられている。ステータ(22)は、積層鋼板よりなるコア(23)にインシュレータ(合成樹脂製絶縁体)(24)が組み込まれ、インシュレータ(24)の部分に巻線部(コイル)(25)が形成されたものである。この例では、ステータ(22)は、コア(23)の外周において接着などの適宜な手段によりモータハウジング(7)の内周に固定されている。
【0029】
インシュレータ(24)の後端に、コントローラ(4)の基板(26)が固定され、基板(26)に、コントローラ(4)を構成する部品(27)が取り付けられている。部品は基板(26)の前面および後面の少なくとも一方の所定位置に配置されるが、図面には、基板(26)の後面に取り付けられた部品(27)が1個示されている。
【0030】
詳細な図示は省略したが、ステータコア(23)は、環状体の内周を周方向に等分する複数箇所(たとえば6箇所)に径方向内側に突出した歯部(23a)が一体に形成されたものであり、各歯部(23a)にインシュレータ(24)を介して線材(28)が巻きつけられて、複数層(この例では6層)の巻線部(25)が形成されている。
【0031】
図2は、このようにして形成されたU、V、W3相の巻線を模式的に表わしたものである。
【0032】
ステータコア(23)の各歯部(23a)における巻線部(25)を構成する線材(28)のうち一部はアルミニウム線(28a)で、残りは銅線(28b)である。好ましくは、放熱に有利な歯部(23a)側の1層または複数の層を構成する線材(28)がアルミニウム線(28a)である。この例では、最も歯部(23a)側の最内側の1層がアルミニウム線(28a)で、残りの外側の5層が銅線(28b)である。アルミニウム線(28a)と銅線(28b)は、たとえばはんだ付けにより結線して1本の巻線とする。
【0033】
上記のモータ(3)では、ステータ(22)の巻線部(25)の線材(28)の一部がアルミニウム線(28a)であるから、ステータ(22)全体を軽量化し、コストを低減することができる。また、アルミニウム線(28a)が巻線部(25)の線材(28)の一部だけに用いられているので、体格と発熱量の増加を抑えることができる。さらに、アルミニウム線(28a)を放熱に有利なステータコア歯部(23a)側に配置されているので、放熱を容易にして、ステータ(22)全体における発熱むらを小さくすることができる。
【0034】
上記の電動ポンプユニットでは、モータ軸(16)の軸方向1箇所が軸受装置(15)により片持ち支持され、その軸受装置(15)の外周を囲むようにモータロータ(20)が設けられている構造であるから、モータ軸(16)の長さが短くてすみ、さらなるコンパクト化が可能である。また、モータ軸(16)、モータロータ(20)およびポンプ(2)のインナギヤ(13)を含む回転部分の重心の軸方向位置が、軸受装置(15)の軸方向範囲内にあるから、回転部分を安定良く回転支持することができる。さらに、上記重心の軸方向位置が、軸受装置(15)を構成する2個の玉軸受(17)の間にあるから、回転部分をより安定良く回転支持することができる。また、ポンプハウジング(5)に一体に形成された円筒部(5a)だけで軸受装置(15)を支持することができ、他に軸受装置(15)を支持するための部材が不要である。このため、さらなる部品点数の低減が可能であり、さらなる軽量化およびコスト低減が可能である。
【0035】
電動ポンプユニットの全体構成および各部の構成は、上記実施形態のものに限らず、適宜変更可能である。
【0036】
たとえば、上記実施形態では、軸受装置が転がり軸受で構成されているが、軸受装置はすべり軸受で構成されてもよい。
【0037】
また、この発明は、自動車用電動ポンプユニット以外の電動モータにも適用できる。
【符号の説明】
【0038】
(3) 電動モータ
(22) ステータ
(23) ステータコア
(25) 巻線部
(23a) 歯部
(28) 線材
(28a) アルミニウム線
(28b) 銅線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアの歯部に線材が巻きつけられて複数層の巻線部が形成されているステータを備えている電動モータにおいて、
巻線部の線材の一部がアルミニウム線で、残りが銅線であることを特徴とする電動モータ。
【請求項2】
巻線部のステータコア歯部側の部分がアルミニウム線であることを特徴とする請求項1の電動モータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−183788(P2010−183788A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26940(P2009−26940)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】