電動リニアアクチュエータ
【課題】過剰仕様を避けながら現実的に要求される性能を満足できる電動リニアアクチュエータを提供する。
【解決手段】小形DCモータ1でネジ棒2を回転させ、ネジ棒2に螺合させたナット4を直線移動させる電動リニアアクチュエータであって、モータ1の出力軸とネジ軸2の入力端とがカップリング3で結合されており、カップリング3の内部には、磁石6が内蔵され、カップリングの外周に沿わせて、リードスイッチ7が配置されているカップリング3は、ネジ棒側端面に円錐形穴の支持凹部3aが形成されており、ネジ棒は、そのカップリング側端面が円錐形突部の支持凸部2aが形成され、その他端面に円錐形穴の受け凹部2cが形成されており、受け凹部2cに押し付け付勢されるボールプランジャ9がアクチュエータフレームに取付けられている。
【解決手段】小形DCモータ1でネジ棒2を回転させ、ネジ棒2に螺合させたナット4を直線移動させる電動リニアアクチュエータであって、モータ1の出力軸とネジ軸2の入力端とがカップリング3で結合されており、カップリング3の内部には、磁石6が内蔵され、カップリングの外周に沿わせて、リードスイッチ7が配置されているカップリング3は、ネジ棒側端面に円錐形穴の支持凹部3aが形成されており、ネジ棒は、そのカップリング側端面が円錐形突部の支持凸部2aが形成され、その他端面に円錐形穴の受け凹部2cが形成されており、受け凹部2cに押し付け付勢されるボールプランジャ9がアクチュエータフレームに取付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動リニアアクチュエータに関する。さらに詳しくは、低速で動き、位置決め精度が1mm以内であれば許容される状況に好適な電動リニアアクチュエータに関する。また、本発明の電動リニアアクチュエータは、あらゆる技術分野で利用でき、特定の分野に制限されない。
【背景技術】
【0002】
往復動作する電動リニアアクチュエータの開発トレンドは、高度成長期の規格品大量生産から多品種小量生産を経て、今日の適応型複合生産に至るまで、制御の多様化と高精度化を可能とする試みの連続であった。
主な技術開発項目を列挙すると、以下のようである。
(イ)制御性の高いサーボモータやステッピングモータの適用による制御内容の複雑化、高度化の達成。
(ロ)制御プログラムの開発と機械部品の組立精度の精細化による位置制御の高精度化。
(ハ)移動部分におけるガタのない嵌め合いと高精度ベアリングの適用による機械装置の強度と位置制御の高精度化。
【0003】
上記のトレンドは、産業界も学会も含めた世の中全体の開発方向に沿ったものであり、このような高度化は疑いなく善とされているのが、現時点での技術常識である。
したがって、通常は、上記のような高度化設計が意識するとしないとに拘らずなされるのであり、それゆえ高精度部品(サーボモータや高精度ベアリング)を当たり前のように採用している。そして、それが仮に高コストを招いたとしても、それは許容すべきものと考えるか、あるいは高コスト化した原因であるとの認識さえもないまま放置されているのが現状である。
【0004】
ところで、モータにより部材を直動させる往復動機構は、技術分野を問わず多用されており、電動リニアアクチュエータの基本構成は、モータでネジ棒を回転させ、ネジ棒に螺合させたナットまたは筒部材を往復動させるものである。
これらの電動リニアアクチュエータの先行技術も、上記トレンドに沿ったものであり、多数あるなかの幾つかは、次のような内容を特徴としている。
【0005】
特許文献1、2は、制御性が高く、回転数検出機能を内蔵しているサーボモータを用い、高い位置決め精度を保証するため、ねじ軸の支持にベアリングを用いたものである。
特許文献3は回転数制御機能により高い位置決め精度を得るためステッピングモータを用いている。ねじ軸はベアリングで支持されている。
【0006】
特許文献4、5はDCモータを用いたもので、サーボモータ等を用いるものよりは制御性は劣るものの、ねじ軸等の支持にはベアリングを用いており、特許文献1、2の機構よりは低いランクながら高度化トレンドに合うものである。
【0007】
また、上記従来技術は、いずれも回転部分や直動部分が高い組立精度で組付けられたものである。したがって、本質的に粉塵が排除された環境で使うことが想定されており、ケーシングあるいはハウジングで厳重に保護されている。このため、小型の装置として使用する場合は大きな支障はないが、ストローク等を長大化した装置ではハウジングも大きく長くなるので重量が嵩張り裾付けに余分なスペースが必要となる。しかるに、粉塵の多い環境下では、ハウジングを装備しないままであると、少しでも粉塵が混入すると回転部分は動作不良となるので使用に耐えることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−222228号公報
【特許文献2】特開2010−223277号公報
【特許文献3】特開2000−92811号公報
【特許文献4】特開2005−261029号公報
【特許文献5】特開2008−84235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、現在の技術トレンドの中では非常識ともいうべき発想の転換により完成されたものである。その課題は、過剰仕様を避けながら現実的に要求される性能を満足できる電動リニアアクチュエータを提供することを目的とする。また、現状ではさほど注目されていない製造コストを大幅に下げることも可能な電動リニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の電動リニアアクチュエータは、モータでネジ棒を回転させ、該ネジ棒に螺合させたナットを直線移動させる電動リニアアクチュエータであって、前記モータが、小形直流モータであり、該モータの出力軸と前記ネジ軸の入力端とがカップリングで結合されており、該カップリングの内部には、磁石が内蔵され、該カップリングの外周に沿わせて、リードスイッチが配置されていることを特徴とする。
第2発明の電動リニアアクチュエータは、第1発明において、前記カップリングは、ネジ棒側端面に円錐形穴の支持凹部が形成されており、前記ネジ棒は、そのカップリング側端面が円錐形突部の支持凸部が形成され、その他端面に円錐形穴の受け凹部が形成されており、前記受け凹部に押し付け付勢されるボールプランジャがアクチュエータフレームに取付けられていることを特徴とする。
第3発明の電動リニアアクチュエータは、第2発明において、前記ナットが、ナット体に、その半径方向の割りを入れたものであることを特徴とする。
第4発明の電動リニアアクチュエータは、第2発明において、前記ネジ棒に沿って配置されたガイド板と、前記ナットに係合し、前記ガイド板で案内されて直線移動する移動台とを備えており、前記移動台において、前記ガイド板に対面する部位には、ボール付ネジを取付けており、該ボール付ネジのボールが前記ガイド板に接触した状態で、該移動台が走行することを特徴とする。
第5発明の電動リニアアクチュエータは、第4発明において、前記ボール付ネジおよび前記ボールプランジャの代りに、ピン付ネジを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、モータの回転に応じて磁石がリードスイッチに対面した時のタイミングでパルス信号を発生させることができる。このため、安価な小形直流モータを用いても、パルス信号をカウントすることによりモータによって回転されるネジ棒上を移動するナットの移動位置を制御することができる。よって、高価なサーボモータを用いることなく、位置決め制御が可能なリニアアクチュエータを構成できる。
第2発明によれば、ボールプランジャの押し付け付勢力でネジ棒をモータ側に押し付けると、ボールプランジャのボールはネジ棒の受け凹部に嵌り、ネジ棒のカップリング側の支持凸部がカップリングの支持凹部に嵌ってネジ棒が支持される。そしてネジ棒の受け凹部とボールプランジャ間の相対回転はボールプランジャのボールが回転することで吸収される。このためベアリングを用いることなくネジ軸を回転自在に支持できるので、安価な装置となる。また、ボールプランジャのボールがネジ棒の受け凹部に嵌ることで、ネジ棒の回転軸としての芯出しが簡単に行える。このため、製造コストを安価に抑えながら動作精度の高いアクチュエータが得られる。
第3発明によれば、ナットに半径方向の割りが入っていることにより、ナットのネジ溝とネジ棒のネジ溝との間の隙間が広がるので、塵挨等が浮遊する悪環境下でも詰りが生じない。また、既存のナットを使えるので、安価な装置となる。
第4発明によれば、ボール付ネジのボールがガイド板の表面に接触していることで、ガイド板の外表面と移動台の内表面との間に隙間が確保され、粉塵の堆積によっても詰りが生じない。また、ボール付ネジのボールは移動台の内表面に対し点接触なので走行抵抗が小さくなり、駆動源であるモータに対し大きな負荷をかけない。
第5発明により、ボール付ネジの代りにピン付ネジを用いても、移動台の走行時の摩擦低減および上下左右方向の位置決めが行え、またボールプランジャの代りにピン付ネジを用いてもネジ棒の回転軸としての芯出しを容易に行い、かつその回転を支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動リニアアクチュエータAの側面図である。
【図2】(A)は図1の電動リニアアクチュエータAの底面図、(B)は同右側面図である。
【図3】図1の電動リニアアクチュエータAの分解図である。
【図4】(A)はカップリング3とネジ軸2の斜視図、(B)はカップリングの縦断面斜視図である。
【図5】(A)はボールブランジャ9とネジ棒2の斜視図、(B)はネジ軸2の他端部の断面図である。
【図6】ナット4と移動台5の斜視図である。
【図7】(A)は移動台5の組立て前の状態説明図、(B)は組立て状態での正面図である。
【図8】ピン付きネジ8の側面図である。
【図9】電動リニアアクチュエータAの一利用形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1および図2に基づき、本実施形態に係る電動リニアアクチュエータAの基本構造を説明する。
【0014】
1はモータ、2はネジ軸で、モータ1の出力軸とネジ軸2とはカップリング3で連結されている。ネジ軸2にはナット4が螺合されており、ナット4には移動台5が係合している。10は、ガイド板でネジ軸2の長手方向に延びている。ガイド板10の適所には、ネジ棒等を支持する基板11が2枚取付けられている。
上記の構造に基づき、モータ1を回転させると、ネジ棒2が回転し、ネジ棒2の回転に基づきナット4がネジ棒2の軸方向に移動して、移動台5を直線移動させることができる。これが、本発明における基本構造である。
【0015】
なお、図2において、12は基板11の両側面に取付けられた取付板である。この取付板12は各種の機械設備に電動リニアアクチュエータAを取付けるための部材である。
また、17はナット4の移動ストロークを規制するスペーサである。14は、ゴム製のストッパである。図ではスペーサ13側の1個のみ示しているが、反対側の端部にも取付けることがある。
【0016】
上記電動リニアアクチュエータAにおいて、モータ1は小形直流モータが用いられている。本明細書にいう直流モータには、(イ)整流子・ブラシ付きと(ロ)整流子・ブラシなしの2タイプがあり、前者(イ)には巻線界磁形と永久磁石形とがある。これらの直流モータの中で小形のモータは界磁に永久磁石を用いており、寸法が小さく、起動トルクが大きいという利点があり、制御用に多く用いられているが、とくに安価な点で利用価値が高いものである。
【0017】
図3および図4に示すように、カップリング3は、その外周面に永久磁石6を1個または2個を取付けている。カップリング3の外側空間であって、取付板12やガイド板10等の適宜のフレームには、リードスイッチ7が取付けられている。永久磁石6とリードスイッチ7は一種の近接スイッチを構成しており、リードスイッチ7は永久磁石6が接近して通過する度に1回のスイッチング動作を行う。図示の本実施形態では、カップリングの外周面における中心対称の位置に2個の永久磁石6を取付けているので、1回転につき、リードスイッチ7が2回のスイッチング動作を行うことができる。
【0018】
永久磁石6とリードスイッチ7によるスイッチング動作は、カップリング3が回転する度に、パルス信号を発信できる。このため、高価なサーボモータを用いなくても、安価な小形直流モータで、パルス信号数に基づく位置制御を行うことができる。
【0019】
つぎに、ネジ軸2の支持構造を説明する。
図3および図4に示すように、ネジ棒2の一端、つまりカップリング側端面は円錐形の突部に形成されており、これが支持凸部2aとなっている。一方、カップリング3のネジ棒側端部には円錐形の穴が形成されており、これが支持凹部3aとなっている。
【0020】
ネジ棒2の支持凸部2aはカップリング3の支持凹部3aに嵌って支持される。
支持凹部3aの円錐角度は45°が好ましく、支持凸部2aの円錐角度は40°が好ましい。このように、支持凹部3aの円錐角が少し大きいと、支持凸部2aと支持凹部3aの嵌め合いは、軸線の多少の交差を許容するので、ユニバーサルジョイントとしての機能を代替することができる。
【0021】
ネジ棒2の支持凸部2aの近傍には、ピン2eが直径方向に貫通させて取付けられている。カップリング3のネジ棒端面には、前記ピン2eが嵌る横溝3eが形成されている。支持凸部2aが支持凹部3aに嵌っている状態で、ネジ軸2側のピン2eがカップリング3側の横溝3eに嵌ると、カップリング3の回転トルクをネジ軸2に伝達して、ネジ軸2を回転させることができる。
【0022】
カップリング3のモータ側端面には、モータ1の主軸を貫入させる軸孔3cが形成され、軸孔3cには半径方向からの小さなネジ孔3dが形成されている。主軸と軸孔3cは一般的によくある平坦面を有する非円形なので、トルク伝達可能であるが、抜け止め防止のために、このネジ孔3dに止めネジを螺合させることができるようになっている。
【0023】
図1および図3に示すように、ネジ棒2の他端はボールプランジャ9で支えられるようになっている。ボールプランジャ9は図5に示すように、短い円筒体のネジ体9aとその内部に挿入れたボール9bからなる。ボール9bはネジ体9a内に形成された凹所に嵌められ、飛び出ないように挿入されている。そして、ボール体9bの一部(半分以下の部分)がボール体9bの端面から飛び出ている。
【0024】
ボール体9bは外周に雄ネジが形成されているので、図1に示すように、基板11に形成された雌ネジ孔に螺合させ、かつナット13で締め付けると落下不能に固定される。また、ボールプランジャ9の軸方向の取付け位置、すなわちネジ棒2の長軸方向における取付位置は、ボール体9bの雌ネジ孔に対するねじ込み量を可減することで調整できる。
【0025】
ネジ棒2の他端、すなわちボールプランジャ側端部には円錐形の穴に形成されており、これが受け凹部2bとなっている。
組立て状態においては、図1および図2に示すように、ボールプランジャ9のボール9bがネジ棒2の受け凹部2bに押し込まれ、その押し込み力によって、ネジ軸2の一端側の支持凸部2aがカップリング3の支持凹部3aに押し込まれる。このような状態で、ネジ棒2は落下不能、かつ回転自在に支持される。このように、ボールプランジャ9の押し込みのみで、ネジ棒2とカップリング3の軸芯合わせを行えるので、ネジ棒2の回転軸としての芯出しと組立て作業が容易に行える。このため、製造コストも安く抑えることもできる。
【0026】
ネジ棒2の一端側における支持凸部2aとカップリング3の支持凹部3aによる支持はベアリングを用いない支持構造である。また、ネジ棒2の他端における受け凹部2bとボールプランジャ9による支持もベアリングを用いない支持構造である。
この支持構造において、カップリング3の支持凹部3aとネジ軸2の支持凸部2aの間には相対回転はない。ピン2eと横溝3eで回転方向には拘束された状態である。このためカップリング3からネジ軸2に回転トルクが伝わるのであるが、ネジ軸2の他端側では、プランジャ9のボール9bが回転することでネジ軸2の回転が許容される。プランジャ9のボール9bの回転は、ネジ軸2の受け凹部2bに対する回転とプランジャ9内での回転とがあるが、両方の回転によってネジ軸2の回転が許容されている。
このため、本実施形態の電動リニアアクチュエータAにおいては、高価なベアリングを用いる必要がなく、この点からも製造コストを安く抑えることができる。
【0027】
ネジ棒2は、どのようなネジの種類を用いてもよいが、台形ネジであると安価となる。なお、ネジのリードは、1回転で1〜3mm程度であると、リードスイッチ7による制御精度とマッチするので好ましい。
【0028】
図1〜図3に示すナット4は、工業用品として汎用されているナットを用いたものである。ナット4の外形は、丸でも四角でも六角でもよい。このナット4は、図6に示すように、ナット体4aに半径方向の割り4bを入れたものである。割り4bを入れたことで、ナット4の雌ネジ溝とネジ棒2の雄ネジ溝との間に適度な大きさの隙間ができる。この隙間は、微細粉が浮遊する環境下でも目詰まりせずに使用できる耐性を与えることができる。
【0029】
図3および図6に示すように、ナット4の両側には、溝4cが形成されている。移動台5のベース部材は、基板5aと係止片5bからなる1枚物の板材である。側面視において、基板5aは水平に位置し、係止片5bは基板5aの一端から下垂している。係止片5bは2枚の舌片からなり、この係止片5bがナット4の溝4cに係合する。このため、ナット4の移動に伴って移動台5が移動することとなる。
したがって、図1〜2に示すように、係止片5bがナット4に係合した状態で、ネジ棒2の正逆回転によりナット4が往復移動すると、移動台5もナット4と共に往復移動する。
【0030】
図6および図7(A)に基づき、移動台5の詳細を説明する。
移動台5の基板5aの4隅には雌ネジ孔5cが形成されている。基板5aの上面には2本のピアノ線14が渡し掛けられており、後述する横ガイド15と共にネジ結合されるようになっている。
このピアノ線14は、ガイド板10の底面との間に隙間を確保すると共に、ガイド板10の底面に接触して摩擦抵抗を低減させる部材である。このピアノ線を用いて隙間を作ると、粉塵の堆積による詰りを防止し、かつ移動台5の上面がガイド板10の底面に接触する場合よりも摩擦を小さくすることができる。
【0031】
横ガイド15は角棒状の部材であって、2本が移動台5の基板5aにおいて左右両側面に取付けられる(図6では横ガイド15は1本のみ図示)。
2本の横ガイド15には、横向きにボール付ネジ16が取付けられている。このボール付ネジ16はネジ体とボールからなる。ボールは、横ガイド15の内側の側面から少し突出するようになっている。このボールは球状面がガイド板10の端面に接触して、移動台5の左右方向の振れを防止すると共に走行中の摩擦抵抗を低減する。
【0032】
図6に示すように、2本の横ガイド15の上面には取付板21が取付けられる。取付板21は平板部21aと垂直に立上った取付部21bとからなる。平板部21aには4ヵ所のビス孔21cが形成され、4本のビス22が挿入できるようになっている。
この平板部21aにも、ボール付ネジ16が取付けられ、そのボールは下面に突出している。
【0033】
これらのボール付ネジ16はガイド板10の表面に接触して、移動台5の内面、すなわち横ガイド15の内面と取付台21の内面との間に隙間を確保しつつ、粉塵の堆積による詰りを防止することができる。
【0034】
図7(B)に示すように、移動台5は組立てられた状態では、ガイド板10の下面にはピアノ線14が接触し、ガイド板10の両側面と上面にはボール付ネジ16のボールが接触するので、走行抵抗が小さく非常にスムースな移動が可能となる。また、上下方向も左右方向もブレが生じないようにガイドされているので、移動台5の走行姿勢が安定する。
【0035】
取付板21の取付部21bには、どのような機器でも取付けることができるが、たとえばセンサCなども代表的な取付け例である。センサCを使う場合、使用位置に移動させた状態での設置位置が重要であるが、本実施形態では、移動位置精度が実用上充分に高いので、センサの検出精度が安定する。
【0036】
図1に戻って、本実施形態に係る電動リニアアクチュエータAの使用方法を説明する。モータ1を正逆回転させると、ナット4が右または左に動いて移動台5上のセンサCも同方向に移動する。一方の端に動いてナット4がストッパ4に当るとモータ1に過電流が流れるので、その過電流を検出としてモータ1を停止させるか逆転すると、停止制御も往復動制御も行える。また、過電流の検出位置をスタート位置とすることもできる。
さらに、移動途中での任意の場所での停止は、リードスイッチ7のパルス信号をカウントすることで移動距離を把握できるので、実用上充分な精度での位置制御が行える。
【0037】
(他の実施形態)
前記実施形態では、ネジ棒2の支持部材としてボールプランジャ9を用い、移動台5の摩擦低減部材としてピアノ線14、ボール付ネジ16を用いたが、これらの代りに、図8に示すピン付ネジを用いてもよい。
同図に示すピン付ネジ8は、ネジ体8aと、その一端に形成された円錐形のピン8bとが一体に形成された部材である。
このピン付ネジ8のピン8bをネジ棒2の受け凹部2bに押し込んで、ネジ棒2を支することができ、また、ピン付ネジ8のピン8bをガイド板10に接触させて、移動台5を低摩擦で移動でき、かつガイド板10に対し上下左右の嵌め合い位置を不動に規制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
図8は、本発明の電動リニアアクチュエータAをウエブガイド用のセンサとして使用した使用例を示している。
W1はウエブで、図では一部しか示していないが、原反ロールから引き出されて、帯状に長く延びている。このウエブW1には走行途中で印刷その他の処置が施され、最終的には製品ロールに巻き取られるか枚葉紙として切断され積み重ねられる。
【0039】
このような工程の間、ウエブが幅方向に片寄ると、ウエブ走行中の処置にズレが生じたり、最終巻取り等に支障が生ずるので、ウエブの片寄りの補正を行わなければならない。このような片寄り補正には、まずウエブW1の片寄りを検出する必要がある。図中のCはそのような目的で使用するウエブ端検出センサである。
【0040】
ところで、ウエブは幅広のものW1も幅狭のものW2のものもあり、ウエブの幅員が変る度にセンサCの位置を変更しなければならない。
本発明の電動リニアアクチュエータAは、このようなセンサCの移動用に適している。
上記のようなウエブ走行設備では、ウエブの幅変えは、数日〜数週間に一度のパターンであり、幅変えがあったときのセンサCの移動も低速で足りる。本発明の電動リニアアクチュエータAは、このような時々作動し、走行速度も低速で足りる環境に好適である。
【0041】
またウエブが紙である場合は、微細な紙粉が浮遊するが、このような微細粉がふり積もっても、本発明の電動リニアアクチュエータAでは、ナット4はネジ溝間の隙間が大きく、ベアリングを用いてないので、詰りも生じない。
さらに、センサCの取付台5の内側も上下左右に隙間があるので、紙粉の堆積によっても詰りが生ずることもない。
【符号の説明】
【0042】
1 モータ
2 ネジ軸
3 カップリング
4 ナット
5 移動台
9 ボールブランジャ
10 ガイド板
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動リニアアクチュエータに関する。さらに詳しくは、低速で動き、位置決め精度が1mm以内であれば許容される状況に好適な電動リニアアクチュエータに関する。また、本発明の電動リニアアクチュエータは、あらゆる技術分野で利用でき、特定の分野に制限されない。
【背景技術】
【0002】
往復動作する電動リニアアクチュエータの開発トレンドは、高度成長期の規格品大量生産から多品種小量生産を経て、今日の適応型複合生産に至るまで、制御の多様化と高精度化を可能とする試みの連続であった。
主な技術開発項目を列挙すると、以下のようである。
(イ)制御性の高いサーボモータやステッピングモータの適用による制御内容の複雑化、高度化の達成。
(ロ)制御プログラムの開発と機械部品の組立精度の精細化による位置制御の高精度化。
(ハ)移動部分におけるガタのない嵌め合いと高精度ベアリングの適用による機械装置の強度と位置制御の高精度化。
【0003】
上記のトレンドは、産業界も学会も含めた世の中全体の開発方向に沿ったものであり、このような高度化は疑いなく善とされているのが、現時点での技術常識である。
したがって、通常は、上記のような高度化設計が意識するとしないとに拘らずなされるのであり、それゆえ高精度部品(サーボモータや高精度ベアリング)を当たり前のように採用している。そして、それが仮に高コストを招いたとしても、それは許容すべきものと考えるか、あるいは高コスト化した原因であるとの認識さえもないまま放置されているのが現状である。
【0004】
ところで、モータにより部材を直動させる往復動機構は、技術分野を問わず多用されており、電動リニアアクチュエータの基本構成は、モータでネジ棒を回転させ、ネジ棒に螺合させたナットまたは筒部材を往復動させるものである。
これらの電動リニアアクチュエータの先行技術も、上記トレンドに沿ったものであり、多数あるなかの幾つかは、次のような内容を特徴としている。
【0005】
特許文献1、2は、制御性が高く、回転数検出機能を内蔵しているサーボモータを用い、高い位置決め精度を保証するため、ねじ軸の支持にベアリングを用いたものである。
特許文献3は回転数制御機能により高い位置決め精度を得るためステッピングモータを用いている。ねじ軸はベアリングで支持されている。
【0006】
特許文献4、5はDCモータを用いたもので、サーボモータ等を用いるものよりは制御性は劣るものの、ねじ軸等の支持にはベアリングを用いており、特許文献1、2の機構よりは低いランクながら高度化トレンドに合うものである。
【0007】
また、上記従来技術は、いずれも回転部分や直動部分が高い組立精度で組付けられたものである。したがって、本質的に粉塵が排除された環境で使うことが想定されており、ケーシングあるいはハウジングで厳重に保護されている。このため、小型の装置として使用する場合は大きな支障はないが、ストローク等を長大化した装置ではハウジングも大きく長くなるので重量が嵩張り裾付けに余分なスペースが必要となる。しかるに、粉塵の多い環境下では、ハウジングを装備しないままであると、少しでも粉塵が混入すると回転部分は動作不良となるので使用に耐えることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−222228号公報
【特許文献2】特開2010−223277号公報
【特許文献3】特開2000−92811号公報
【特許文献4】特開2005−261029号公報
【特許文献5】特開2008−84235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、現在の技術トレンドの中では非常識ともいうべき発想の転換により完成されたものである。その課題は、過剰仕様を避けながら現実的に要求される性能を満足できる電動リニアアクチュエータを提供することを目的とする。また、現状ではさほど注目されていない製造コストを大幅に下げることも可能な電動リニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の電動リニアアクチュエータは、モータでネジ棒を回転させ、該ネジ棒に螺合させたナットを直線移動させる電動リニアアクチュエータであって、前記モータが、小形直流モータであり、該モータの出力軸と前記ネジ軸の入力端とがカップリングで結合されており、該カップリングの内部には、磁石が内蔵され、該カップリングの外周に沿わせて、リードスイッチが配置されていることを特徴とする。
第2発明の電動リニアアクチュエータは、第1発明において、前記カップリングは、ネジ棒側端面に円錐形穴の支持凹部が形成されており、前記ネジ棒は、そのカップリング側端面が円錐形突部の支持凸部が形成され、その他端面に円錐形穴の受け凹部が形成されており、前記受け凹部に押し付け付勢されるボールプランジャがアクチュエータフレームに取付けられていることを特徴とする。
第3発明の電動リニアアクチュエータは、第2発明において、前記ナットが、ナット体に、その半径方向の割りを入れたものであることを特徴とする。
第4発明の電動リニアアクチュエータは、第2発明において、前記ネジ棒に沿って配置されたガイド板と、前記ナットに係合し、前記ガイド板で案内されて直線移動する移動台とを備えており、前記移動台において、前記ガイド板に対面する部位には、ボール付ネジを取付けており、該ボール付ネジのボールが前記ガイド板に接触した状態で、該移動台が走行することを特徴とする。
第5発明の電動リニアアクチュエータは、第4発明において、前記ボール付ネジおよび前記ボールプランジャの代りに、ピン付ネジを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、モータの回転に応じて磁石がリードスイッチに対面した時のタイミングでパルス信号を発生させることができる。このため、安価な小形直流モータを用いても、パルス信号をカウントすることによりモータによって回転されるネジ棒上を移動するナットの移動位置を制御することができる。よって、高価なサーボモータを用いることなく、位置決め制御が可能なリニアアクチュエータを構成できる。
第2発明によれば、ボールプランジャの押し付け付勢力でネジ棒をモータ側に押し付けると、ボールプランジャのボールはネジ棒の受け凹部に嵌り、ネジ棒のカップリング側の支持凸部がカップリングの支持凹部に嵌ってネジ棒が支持される。そしてネジ棒の受け凹部とボールプランジャ間の相対回転はボールプランジャのボールが回転することで吸収される。このためベアリングを用いることなくネジ軸を回転自在に支持できるので、安価な装置となる。また、ボールプランジャのボールがネジ棒の受け凹部に嵌ることで、ネジ棒の回転軸としての芯出しが簡単に行える。このため、製造コストを安価に抑えながら動作精度の高いアクチュエータが得られる。
第3発明によれば、ナットに半径方向の割りが入っていることにより、ナットのネジ溝とネジ棒のネジ溝との間の隙間が広がるので、塵挨等が浮遊する悪環境下でも詰りが生じない。また、既存のナットを使えるので、安価な装置となる。
第4発明によれば、ボール付ネジのボールがガイド板の表面に接触していることで、ガイド板の外表面と移動台の内表面との間に隙間が確保され、粉塵の堆積によっても詰りが生じない。また、ボール付ネジのボールは移動台の内表面に対し点接触なので走行抵抗が小さくなり、駆動源であるモータに対し大きな負荷をかけない。
第5発明により、ボール付ネジの代りにピン付ネジを用いても、移動台の走行時の摩擦低減および上下左右方向の位置決めが行え、またボールプランジャの代りにピン付ネジを用いてもネジ棒の回転軸としての芯出しを容易に行い、かつその回転を支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動リニアアクチュエータAの側面図である。
【図2】(A)は図1の電動リニアアクチュエータAの底面図、(B)は同右側面図である。
【図3】図1の電動リニアアクチュエータAの分解図である。
【図4】(A)はカップリング3とネジ軸2の斜視図、(B)はカップリングの縦断面斜視図である。
【図5】(A)はボールブランジャ9とネジ棒2の斜視図、(B)はネジ軸2の他端部の断面図である。
【図6】ナット4と移動台5の斜視図である。
【図7】(A)は移動台5の組立て前の状態説明図、(B)は組立て状態での正面図である。
【図8】ピン付きネジ8の側面図である。
【図9】電動リニアアクチュエータAの一利用形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1および図2に基づき、本実施形態に係る電動リニアアクチュエータAの基本構造を説明する。
【0014】
1はモータ、2はネジ軸で、モータ1の出力軸とネジ軸2とはカップリング3で連結されている。ネジ軸2にはナット4が螺合されており、ナット4には移動台5が係合している。10は、ガイド板でネジ軸2の長手方向に延びている。ガイド板10の適所には、ネジ棒等を支持する基板11が2枚取付けられている。
上記の構造に基づき、モータ1を回転させると、ネジ棒2が回転し、ネジ棒2の回転に基づきナット4がネジ棒2の軸方向に移動して、移動台5を直線移動させることができる。これが、本発明における基本構造である。
【0015】
なお、図2において、12は基板11の両側面に取付けられた取付板である。この取付板12は各種の機械設備に電動リニアアクチュエータAを取付けるための部材である。
また、17はナット4の移動ストロークを規制するスペーサである。14は、ゴム製のストッパである。図ではスペーサ13側の1個のみ示しているが、反対側の端部にも取付けることがある。
【0016】
上記電動リニアアクチュエータAにおいて、モータ1は小形直流モータが用いられている。本明細書にいう直流モータには、(イ)整流子・ブラシ付きと(ロ)整流子・ブラシなしの2タイプがあり、前者(イ)には巻線界磁形と永久磁石形とがある。これらの直流モータの中で小形のモータは界磁に永久磁石を用いており、寸法が小さく、起動トルクが大きいという利点があり、制御用に多く用いられているが、とくに安価な点で利用価値が高いものである。
【0017】
図3および図4に示すように、カップリング3は、その外周面に永久磁石6を1個または2個を取付けている。カップリング3の外側空間であって、取付板12やガイド板10等の適宜のフレームには、リードスイッチ7が取付けられている。永久磁石6とリードスイッチ7は一種の近接スイッチを構成しており、リードスイッチ7は永久磁石6が接近して通過する度に1回のスイッチング動作を行う。図示の本実施形態では、カップリングの外周面における中心対称の位置に2個の永久磁石6を取付けているので、1回転につき、リードスイッチ7が2回のスイッチング動作を行うことができる。
【0018】
永久磁石6とリードスイッチ7によるスイッチング動作は、カップリング3が回転する度に、パルス信号を発信できる。このため、高価なサーボモータを用いなくても、安価な小形直流モータで、パルス信号数に基づく位置制御を行うことができる。
【0019】
つぎに、ネジ軸2の支持構造を説明する。
図3および図4に示すように、ネジ棒2の一端、つまりカップリング側端面は円錐形の突部に形成されており、これが支持凸部2aとなっている。一方、カップリング3のネジ棒側端部には円錐形の穴が形成されており、これが支持凹部3aとなっている。
【0020】
ネジ棒2の支持凸部2aはカップリング3の支持凹部3aに嵌って支持される。
支持凹部3aの円錐角度は45°が好ましく、支持凸部2aの円錐角度は40°が好ましい。このように、支持凹部3aの円錐角が少し大きいと、支持凸部2aと支持凹部3aの嵌め合いは、軸線の多少の交差を許容するので、ユニバーサルジョイントとしての機能を代替することができる。
【0021】
ネジ棒2の支持凸部2aの近傍には、ピン2eが直径方向に貫通させて取付けられている。カップリング3のネジ棒端面には、前記ピン2eが嵌る横溝3eが形成されている。支持凸部2aが支持凹部3aに嵌っている状態で、ネジ軸2側のピン2eがカップリング3側の横溝3eに嵌ると、カップリング3の回転トルクをネジ軸2に伝達して、ネジ軸2を回転させることができる。
【0022】
カップリング3のモータ側端面には、モータ1の主軸を貫入させる軸孔3cが形成され、軸孔3cには半径方向からの小さなネジ孔3dが形成されている。主軸と軸孔3cは一般的によくある平坦面を有する非円形なので、トルク伝達可能であるが、抜け止め防止のために、このネジ孔3dに止めネジを螺合させることができるようになっている。
【0023】
図1および図3に示すように、ネジ棒2の他端はボールプランジャ9で支えられるようになっている。ボールプランジャ9は図5に示すように、短い円筒体のネジ体9aとその内部に挿入れたボール9bからなる。ボール9bはネジ体9a内に形成された凹所に嵌められ、飛び出ないように挿入されている。そして、ボール体9bの一部(半分以下の部分)がボール体9bの端面から飛び出ている。
【0024】
ボール体9bは外周に雄ネジが形成されているので、図1に示すように、基板11に形成された雌ネジ孔に螺合させ、かつナット13で締め付けると落下不能に固定される。また、ボールプランジャ9の軸方向の取付け位置、すなわちネジ棒2の長軸方向における取付位置は、ボール体9bの雌ネジ孔に対するねじ込み量を可減することで調整できる。
【0025】
ネジ棒2の他端、すなわちボールプランジャ側端部には円錐形の穴に形成されており、これが受け凹部2bとなっている。
組立て状態においては、図1および図2に示すように、ボールプランジャ9のボール9bがネジ棒2の受け凹部2bに押し込まれ、その押し込み力によって、ネジ軸2の一端側の支持凸部2aがカップリング3の支持凹部3aに押し込まれる。このような状態で、ネジ棒2は落下不能、かつ回転自在に支持される。このように、ボールプランジャ9の押し込みのみで、ネジ棒2とカップリング3の軸芯合わせを行えるので、ネジ棒2の回転軸としての芯出しと組立て作業が容易に行える。このため、製造コストも安く抑えることもできる。
【0026】
ネジ棒2の一端側における支持凸部2aとカップリング3の支持凹部3aによる支持はベアリングを用いない支持構造である。また、ネジ棒2の他端における受け凹部2bとボールプランジャ9による支持もベアリングを用いない支持構造である。
この支持構造において、カップリング3の支持凹部3aとネジ軸2の支持凸部2aの間には相対回転はない。ピン2eと横溝3eで回転方向には拘束された状態である。このためカップリング3からネジ軸2に回転トルクが伝わるのであるが、ネジ軸2の他端側では、プランジャ9のボール9bが回転することでネジ軸2の回転が許容される。プランジャ9のボール9bの回転は、ネジ軸2の受け凹部2bに対する回転とプランジャ9内での回転とがあるが、両方の回転によってネジ軸2の回転が許容されている。
このため、本実施形態の電動リニアアクチュエータAにおいては、高価なベアリングを用いる必要がなく、この点からも製造コストを安く抑えることができる。
【0027】
ネジ棒2は、どのようなネジの種類を用いてもよいが、台形ネジであると安価となる。なお、ネジのリードは、1回転で1〜3mm程度であると、リードスイッチ7による制御精度とマッチするので好ましい。
【0028】
図1〜図3に示すナット4は、工業用品として汎用されているナットを用いたものである。ナット4の外形は、丸でも四角でも六角でもよい。このナット4は、図6に示すように、ナット体4aに半径方向の割り4bを入れたものである。割り4bを入れたことで、ナット4の雌ネジ溝とネジ棒2の雄ネジ溝との間に適度な大きさの隙間ができる。この隙間は、微細粉が浮遊する環境下でも目詰まりせずに使用できる耐性を与えることができる。
【0029】
図3および図6に示すように、ナット4の両側には、溝4cが形成されている。移動台5のベース部材は、基板5aと係止片5bからなる1枚物の板材である。側面視において、基板5aは水平に位置し、係止片5bは基板5aの一端から下垂している。係止片5bは2枚の舌片からなり、この係止片5bがナット4の溝4cに係合する。このため、ナット4の移動に伴って移動台5が移動することとなる。
したがって、図1〜2に示すように、係止片5bがナット4に係合した状態で、ネジ棒2の正逆回転によりナット4が往復移動すると、移動台5もナット4と共に往復移動する。
【0030】
図6および図7(A)に基づき、移動台5の詳細を説明する。
移動台5の基板5aの4隅には雌ネジ孔5cが形成されている。基板5aの上面には2本のピアノ線14が渡し掛けられており、後述する横ガイド15と共にネジ結合されるようになっている。
このピアノ線14は、ガイド板10の底面との間に隙間を確保すると共に、ガイド板10の底面に接触して摩擦抵抗を低減させる部材である。このピアノ線を用いて隙間を作ると、粉塵の堆積による詰りを防止し、かつ移動台5の上面がガイド板10の底面に接触する場合よりも摩擦を小さくすることができる。
【0031】
横ガイド15は角棒状の部材であって、2本が移動台5の基板5aにおいて左右両側面に取付けられる(図6では横ガイド15は1本のみ図示)。
2本の横ガイド15には、横向きにボール付ネジ16が取付けられている。このボール付ネジ16はネジ体とボールからなる。ボールは、横ガイド15の内側の側面から少し突出するようになっている。このボールは球状面がガイド板10の端面に接触して、移動台5の左右方向の振れを防止すると共に走行中の摩擦抵抗を低減する。
【0032】
図6に示すように、2本の横ガイド15の上面には取付板21が取付けられる。取付板21は平板部21aと垂直に立上った取付部21bとからなる。平板部21aには4ヵ所のビス孔21cが形成され、4本のビス22が挿入できるようになっている。
この平板部21aにも、ボール付ネジ16が取付けられ、そのボールは下面に突出している。
【0033】
これらのボール付ネジ16はガイド板10の表面に接触して、移動台5の内面、すなわち横ガイド15の内面と取付台21の内面との間に隙間を確保しつつ、粉塵の堆積による詰りを防止することができる。
【0034】
図7(B)に示すように、移動台5は組立てられた状態では、ガイド板10の下面にはピアノ線14が接触し、ガイド板10の両側面と上面にはボール付ネジ16のボールが接触するので、走行抵抗が小さく非常にスムースな移動が可能となる。また、上下方向も左右方向もブレが生じないようにガイドされているので、移動台5の走行姿勢が安定する。
【0035】
取付板21の取付部21bには、どのような機器でも取付けることができるが、たとえばセンサCなども代表的な取付け例である。センサCを使う場合、使用位置に移動させた状態での設置位置が重要であるが、本実施形態では、移動位置精度が実用上充分に高いので、センサの検出精度が安定する。
【0036】
図1に戻って、本実施形態に係る電動リニアアクチュエータAの使用方法を説明する。モータ1を正逆回転させると、ナット4が右または左に動いて移動台5上のセンサCも同方向に移動する。一方の端に動いてナット4がストッパ4に当るとモータ1に過電流が流れるので、その過電流を検出としてモータ1を停止させるか逆転すると、停止制御も往復動制御も行える。また、過電流の検出位置をスタート位置とすることもできる。
さらに、移動途中での任意の場所での停止は、リードスイッチ7のパルス信号をカウントすることで移動距離を把握できるので、実用上充分な精度での位置制御が行える。
【0037】
(他の実施形態)
前記実施形態では、ネジ棒2の支持部材としてボールプランジャ9を用い、移動台5の摩擦低減部材としてピアノ線14、ボール付ネジ16を用いたが、これらの代りに、図8に示すピン付ネジを用いてもよい。
同図に示すピン付ネジ8は、ネジ体8aと、その一端に形成された円錐形のピン8bとが一体に形成された部材である。
このピン付ネジ8のピン8bをネジ棒2の受け凹部2bに押し込んで、ネジ棒2を支することができ、また、ピン付ネジ8のピン8bをガイド板10に接触させて、移動台5を低摩擦で移動でき、かつガイド板10に対し上下左右の嵌め合い位置を不動に規制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
図8は、本発明の電動リニアアクチュエータAをウエブガイド用のセンサとして使用した使用例を示している。
W1はウエブで、図では一部しか示していないが、原反ロールから引き出されて、帯状に長く延びている。このウエブW1には走行途中で印刷その他の処置が施され、最終的には製品ロールに巻き取られるか枚葉紙として切断され積み重ねられる。
【0039】
このような工程の間、ウエブが幅方向に片寄ると、ウエブ走行中の処置にズレが生じたり、最終巻取り等に支障が生ずるので、ウエブの片寄りの補正を行わなければならない。このような片寄り補正には、まずウエブW1の片寄りを検出する必要がある。図中のCはそのような目的で使用するウエブ端検出センサである。
【0040】
ところで、ウエブは幅広のものW1も幅狭のものW2のものもあり、ウエブの幅員が変る度にセンサCの位置を変更しなければならない。
本発明の電動リニアアクチュエータAは、このようなセンサCの移動用に適している。
上記のようなウエブ走行設備では、ウエブの幅変えは、数日〜数週間に一度のパターンであり、幅変えがあったときのセンサCの移動も低速で足りる。本発明の電動リニアアクチュエータAは、このような時々作動し、走行速度も低速で足りる環境に好適である。
【0041】
またウエブが紙である場合は、微細な紙粉が浮遊するが、このような微細粉がふり積もっても、本発明の電動リニアアクチュエータAでは、ナット4はネジ溝間の隙間が大きく、ベアリングを用いてないので、詰りも生じない。
さらに、センサCの取付台5の内側も上下左右に隙間があるので、紙粉の堆積によっても詰りが生ずることもない。
【符号の説明】
【0042】
1 モータ
2 ネジ軸
3 カップリング
4 ナット
5 移動台
9 ボールブランジャ
10 ガイド板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータでネジ棒を回転させ、該ネジ棒に螺合させたナットを直線移動させる電動リニアアクチュエータであって、
前記モータが、小形直流モータであり、
該モータの出力軸と前記ネジ軸の入力端とがカップリングで結合されており、
該カップリングの内部には、磁石が内蔵され、
該カップリングの外周に沿わせて、リードスイッチが配置されている
ことを特徴とする電動リニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記カップリングは、ネジ棒側端面に円錐形穴の支持凹部が形成されており、
前記ネジ棒は、そのカップリング側端面が円錐形突部の支持凸部が形成され、その他端面に円錐形穴の受け凹部が形成されており、
前記受け凹部に押し付け付勢されるボールプランジャがアクチュエータフレームに取付けられている
ことを特徴とする請求項1記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記ナットが、ナット体に、その半径方向の割りを入れたものである
ことを特徴とする請求項2記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記ネジ棒に沿って配置されたガイド板と、
前記ナットに係合し、前記ガイド板で案内されて直線移動する移動台とを備えており、
前記移動台において、前記ガイド板に対面する部位には、ボール付ネジを取付けており、該ボール付ネジのボールが前記ガイド板に接触した状態で、該移動台が走行する
ことを特徴とする請求項2記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記ボール付ネジおよび前記ボールプランジャの代りに、ピン付ネジを用いた
ことを特徴とする請求項4記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項1】
モータでネジ棒を回転させ、該ネジ棒に螺合させたナットを直線移動させる電動リニアアクチュエータであって、
前記モータが、小形直流モータであり、
該モータの出力軸と前記ネジ軸の入力端とがカップリングで結合されており、
該カップリングの内部には、磁石が内蔵され、
該カップリングの外周に沿わせて、リードスイッチが配置されている
ことを特徴とする電動リニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記カップリングは、ネジ棒側端面に円錐形穴の支持凹部が形成されており、
前記ネジ棒は、そのカップリング側端面が円錐形突部の支持凸部が形成され、その他端面に円錐形穴の受け凹部が形成されており、
前記受け凹部に押し付け付勢されるボールプランジャがアクチュエータフレームに取付けられている
ことを特徴とする請求項1記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記ナットが、ナット体に、その半径方向の割りを入れたものである
ことを特徴とする請求項2記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記ネジ棒に沿って配置されたガイド板と、
前記ナットに係合し、前記ガイド板で案内されて直線移動する移動台とを備えており、
前記移動台において、前記ガイド板に対面する部位には、ボール付ネジを取付けており、該ボール付ネジのボールが前記ガイド板に接触した状態で、該移動台が走行する
ことを特徴とする請求項2記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記ボール付ネジおよび前記ボールプランジャの代りに、ピン付ネジを用いた
ことを特徴とする請求項4記載の電動リニアアクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−2627(P2013−2627A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138225(P2011−138225)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(304008474)ウィンテック株式会社 (5)
【出願人】(598147835)ジャスティン株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(304008474)ウィンテック株式会社 (5)
【出願人】(598147835)ジャスティン株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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