説明

電動リール用バッテリー

【課題】電解液のアウターケース内部への流出を抑えることができる電動リール用バッテリーを提供する。
【解決手段】電動リール用バッテリー1は、ラミネート型の複数のセル2と、セル2を収納するインナーケース3と、インナーケース3を収納するアウターケース5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動リール用バッテリーに関する
【背景技術】
【0002】
近年、電動リールの電源として、持ち運びの容易な電動リール用バッテリーが利用されている。この電動リール用バッテリーは、例えばリチウムイオン電池などの複数のセルがアウターケースの内部に収納されたものであり、充電することによって繰り返し使用することができる(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−276764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、セルの外装容器としては、従来の金属缶型に代わり薄型のラミネート型がよく用いられるようになっている。このラミネート型のセルは、薄型化、軽量化において利点を有するが、不適切に使用された場合など取り扱いによっては、電解液漏れが生じる恐れがある。この場合、上記のような電動リール用バッテリーでは、アウターケースの内部に電解液が流出する恐れがある。
【0004】
本発明の課題は、電解液のアウターケース内部への流出を抑えることができる電動リール用バッテリーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明の電動リール用バッテリーは、ラミネート型の複数のセルと、セルを収納するインナーケースと、インナーケースを収納するアウターケースとを備える。
【0006】
この電動リール用バッテリーでは、アウターケースの内部に、セルを収納するインナーケースが収納されている。このため、もし、ラミネート型のセルから電解液が漏れたとしても、インナーケースによってアウターケースへの電解液の流出を抑えることができる。これにより、この電動リール用バッテリーでは、電解液のアウターケース内部への流出を抑えることができる。
【0007】
第2発明の電動リール用バッテリーは、第1発明の電動リール用バッテリーであって、インナーケースは密閉構造を有する。
【0008】
この電動リール用バッテリーでは、インナーケースが密閉構造を有するため、電解液のアウターケース内部への流出をより抑えることができる。
【0009】
第3発明の電動リール用バッテリーは、第1発明または第2発明の電動リール用バッテリーであって、インナーケースの外部に配置される回路基板をさらに備える。そして、アウターケースは、インナーケースと回路基板とを収納する。
【0010】
この電動リール用バッテリーでは、回路基板はインナーケースの外部に配置されており、インナーケースと共にアウターケースの内部に収納される。このため、セルから電解液が漏れたとしても、回路基板が電解液に接触することを抑えることができる。
【0011】
第4発明の電動リール用バッテリーは、第1発明から第3発明のいずれかの電動リール用バッテリーであって、セルは平坦な板状の外形を有する。
【0012】
この電動リール用バッテリーでは、セルが平坦な板状の外形を有するため、複数のセルをコンパクトにインナーケース内に収納することができる。
【0013】
第5発明の電動リール用バッテリーは、第4発明の電動リール用バッテリーであって、インナーケースの内面の少なくとも一部は、セルの中央部と対向する部分ほどセルとの隙間が大きくなるように形成されている。
【0014】
この電動リール用バッテリーでは、インナーケースの内面の少なくとも一部において、セルの中央部とインナーケースの内面との間に隙間が確保されている。このため、セルが膨張した場合でも、セルやインナーケースに過剰な負荷が掛かることを防止することができる。
【0015】
第6発明の電動リール用バッテリーは、第1発明から第5発明のいずれかの電動リール用バッテリーであって、セルは、リチウムイオン電池である。
【0016】
リチウムイオン電池では、電解液として可燃性の有機溶剤が用いられるため、不適切な使用等によって電解液漏れが生じた場合には、漏れ出した電解液によって短絡を起こし、短絡による温度上昇によって発火する恐れがある。
【0017】
しかし、この電動リール用バッテリーでは、インナーケースによって電解液がアウターケース内に流出することを抑えることがでるため、リチウムイオン電池が用いられる場合であっても、安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電動リール用バッテリーでは、アウターケースの内部に、セルを収納するインナーケースが収納されている。このため、もし、ラミネート型のセルから電解液が漏れたとしても、インナーケースによってアウターケースへの電解液の流出を抑えることができる。これにより、この電動リール用バッテリーでは、電解液のアウターケース内部への流出を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<構成>
本発明の一実施形態に係る電動リール用バッテリー1を図1に示す。この電動リール用バッテリー1は、電気ケーブル等によって電動リールと接続され、電動リールの電源として用いられる。電動リール用バッテリー1は、充電によって繰り返し使用可能であり、持ち運び自在な小型のものである。この電動リール用バッテリー1は、図2に示すように、複数のセル2、インナーケース3、回路基板4、アウターケース5を備える。
【0020】
〔セル2〕
セル2は、アルミラミネートフィルムを外装とするラミネート型のリチウムイオン電池である。セル2は、図3及び図4に示すように、長方形の平坦な薄板状の外形を有しており、ここでは8つのセル2が設けられている。
【0021】
これらのセル2は、4つずつ2つのセルユニット(以下、「第1セルユニット21」、「第2セルユニット22」と呼ぶ)に分けられている。第1セルユニット21のセル2は、最大面積を有する面が互いに接触するように組み合わされて一体とされており、水平方向に積層して配置されている。第2セルユニット22についても同様である。第1セルユニット21と第2セルユニット22とは、セル2の積層方向に、すなわち水平方向に、セル2が膨張しても接触しない程度の距離を隔てて互いに平行に配置されている。
【0022】
また、各セル2の側面からは電極端子23が側方に突出している。なお、図2から図4においては、1つの電極端子23についてのみ符号を付して他は省略している。
【0023】
〔インナーケース3〕
インナーケース3は、セル2を収納する筐体であり、ABSやPPなどの樹脂で形成されている。インナーケース3は、図3および図4に示すように、別体の2つの筐体(以下、「第1筐体31」、「第2筐体32」と呼ぶ)によって構成されている。
【0024】
第1筐体31と第2筐体とは、セル2の積層方向に並んで組み合わされている。第1筐体31と第2筐体32とは概ね対称な形状を有しており、第1筐体31には第1セルユニット21が収納され、第2筐体32には第2セルユニット22が収納されている。第2筐体32の開口の縁部には縁部に沿って山型の凸部33が設けられており、第1筐体31の開口の縁部には縁部に沿って谷形の凹部34が設けられている。この凸部33と凹部34とが嵌合して接着剤等によって接合されることによって、インナーケース3の内部が密閉されている。
【0025】
また、図3に示すように、インナーケース3の内面のうち、セル2の最大面積を有する面と対向する面は、傾斜したテーパ面35となっている。このテーパ面35は、セル2の高さ方向における中央部に対向する部分(以下、単に「セル2の中央部」と呼ぶ)に向かうほどセル2との隙間が大きくなるように形成されている。また、セル2の上端部と下端部とはインナーケース3の内面に近接している。このため、インナーケース3の内側面は、セル2の中央部に対向する部分が外側に膨出した形状となっている。このテーパ面35は、第1筐体31と第2筐体32とにそれぞれ設けられている。また、インナーケース3の内面のうちセル2の最大面積を有する面と対向する面以外の面も僅かに外側に膨出した形状となっている。
【0026】
なお、セル2の上端部とインナーケース3の内面との間、および、セル2の下端部とインナーケース3の内面との間には、セル2を支持する弾性部材(図示せず)が設けられている。
【0027】
さらに、インナーケース3の側面には、複数の開口36が設けられており、各開口36からセル2の電極端子23がインナーケース3の外部に突出している。これらの開口36の縁部と電極端子23との間には樹脂が充填されており、開口36と電極端子23との隙間が封止されている。
【0028】
〔回路基板4〕
回路基板4は、図2に示すように、インナーケース3の外部に配置されており、インナーケース3の側面から突出する電極端子23と電気ケーブル(図示せず)を介して接続されている。回路基板4は、インナーケース3と共にアウターケース5の内部に収納されている。この回路基板4は、セル2の充電容量を制御する充電制御回路や電動リールへの出力を制御する出力制御回路などを有しており、セル2の過充電や過放電を防止することができる。回路基板4は、インナーケース3の上方に配置されている。
【0029】
〔アウターケース5〕
アウターケース5は、インナーケース3と回路基板4とを収納する筐体であり、電動リール用バッテリー1の外装を構成している。アウターケース5は、インナーケース3と同様に樹脂で形成されている。アウターケース5の上面には、図1に示すように、2つの凹部51が設けられており、各凹部51には外部電極端子52が設けられている。外部電極端子52は、屈曲した形状を有する金属棒であり、充電器や電動リールと接続された電気ケーブルが着脱自在に接続される。外部電極端子52は、アウターケース5の内部において上述した回路基板4と接続されている。
【0030】
なお、アウターケース5は、図2に示すように、別体の2つの筐体(以下、「上部筐体53」、「下部筐体54」と呼ぶ)を有しており、上部筐体53と下部筐体54とは、螺子55によってパッキン59を抑えながら一体的に固定され、防水構造を形成している。
【0031】
<特徴>
(1)
この電動リール用バッテリー1では、アウターケース5の内部に、セル2を収納するインナーケース3が設けられており、インナーケース3はセル2からの電解液漏れ防止のために密閉構造となっている。このため、セル2において電解液漏れが生じた場合でもアウターケース5の内部に電解液が流出することを抑えることができ、安全性が向上している。
【0032】
(2)
この電動リール用バッテリー1では、インナーケース3の内面とセル2との間にセル2の膨張分の隙間が設けられている。このため、セル2が膨張した場合にインナーケース3やセル2に過剰な負荷が加わることを防止することができ、セル2の破損を防止することができる。
【0033】
<他の実施形態>
(A)
上記の実施形態では、リチウムイオン電池のセル2が用いられているが、本発明の対象となる電池はこれに限られるものではなく、ラミネート型のセルであって電解液漏れによる危険性の高いものに対して有効である。
【0034】
(B)
上記の実施形態では、インナーケース3の内面にテーパ面35が設けられることによって、セル2との間に隙間が設けられているが、テーパ面35ではなく湾曲面によってセルとの間に隙間が設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、電解液のアウターケース内部への流出を抑えることができる効果を有し、電動リール用バッテリーとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】電動リール用バッテリーの外観斜視図。
【図2】電動リール用バッテリーの断面図。
【図3】インナーケースの側面図。
【図4】インナーケースの断面図。
【符号の説明】
【0037】
1 電動リール用バッテリー
2 セル
3 インナーケース
4 回路基板
5 アウターケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネート型の複数のセルと、
前記セルを収納するインナーケースと、
前記インナーケースを収納するアウターケースと、
を備える電動リール用バッテリー。
【請求項2】
前記インナーケースは密閉構造を有する、
請求項1に記載の電動リール用バッテリー。
【請求項3】
前記インナーケースの外部に配置される回路基板をさらに備え、
前記アウターケースは、前記インナーケースと前記回路基板とを収納する、
請求項1または2に記載の電動リール用バッテリー。
【請求項4】
前記セルは平坦な板状の外形を有する、
請求項1から3のいずれかに記載の電導リール用バッテリー。
【請求項5】
前記インナーケースの内面の少なくとも一部は、前記セルの中央部と対向する部分ほど前記セルとの隙間が大きくなるように形成されている、
請求項4に記載の電動リール用バッテリー。
【請求項6】
前記セルは、リチウムイオン電池である、
請求項1から5のいずれかに記載の電動リール用バッテリー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−227172(P2007−227172A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47349(P2006−47349)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】