説明

電動圧縮機における電動機制御装置

【課題】電動圧縮機におけるインバータ損失を低減し、且つ漏電の可能性を低減する。
【解決手段】インバータ27は、モータ駆動回路28と、モータ駆動回路28を制御する主制御コンピュータC1とから構成されている。起動指令が入力されると、主制御コンピュータC1は、三相変調制御を行なうと共に、三相変調制御の遂行開始時点から以後のモータハウジング18内から排出される液冷媒排出量Qxを算出し、算出された液冷媒排出量Qxが予め設定された基準量Qoに満たない場合、主制御コンピュータC1は、三相変調制御を継続する。算出された液冷媒排出量Qxが予め設定された基準量Qo以上である場合、主制御コンピュータC1は、三相変調制御から二相変調制御に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機によって駆動される回転軸の回転に基づく圧縮動作体の圧縮動作によって圧縮室内の冷媒を圧縮して吐出する電動圧縮機における電動機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動圧縮機では、電動機の冷却のために吸入冷媒の存在領域に電動機のコイルが配設される(例えば特許文献1参照)。電動機が長時間にわたって停止状態にあると、冷媒がコイルの配設領域内で液化し、溜まった液冷媒が電動機のコイルに接触する。そのため、電動機を起動したときには、液冷媒に接触するコイルから漏電を生じるおそれがある。特に、コイルに印加される電圧の変動が大きいと、漏電が起こりやすい。
【0003】
電動機の駆動を制御するためにインバータが用いられるが、特許文献1では、インバータに印加される電圧を変更するための変圧回路が用いられており、変圧回路は、電圧制御部の変圧制御を受けるようになっている。電圧制御部は、ハウジング内に液冷媒が溜まっているときには低電圧をインバータに印加するように変圧回路を制御し、ハウジング内に液冷媒が溜まっていないと判断したときには低電圧から高電圧へ切り換える制御を行なう。このような電圧制御を行なうことにより液冷媒がコイルの配設領域内に溜まっているときの電圧が低電圧に制御され、漏電発生が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−250123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インバータの制御には三相変調制御と二相変調制御とがある。二相変調制御では、三相変調制御に比べてインバータ損失(インバータのスイッチング損失)を低減することができるという利点がある。
【0006】
しかし、二相変調制御は、三相変調制御に対し、モータの中性点の電圧を変動させることで実現させている。そのため、ハウジング内に液冷媒が溜まってハウジングとコイルとの間の浮遊容量が低下したときの漏電のおそれが大きい。
【0007】
本発明は、電動圧縮機におけるインバータ損失を低減し、且つ漏電の可能性を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電動機と圧縮動作体とを備え、前記電動機によって駆動される回転軸の回転に基づく前記圧縮動作体の圧縮動作によって圧縮室内の冷媒を圧縮して吐出する電動圧縮機であり、前記電動機のコイルが前記電動圧縮機内の冷媒存在領域にある電動圧縮機における電動機制御装置を対象とし、請求項1の発明では、前記冷媒存在領域内の液冷媒の有無を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づいて、前記電動機の駆動を三相変調制御又は二相変調制御にて行なう変調制御手段とを備えている。
【0009】
液冷媒の有無に応じて三相変調制御と二相変調制御とを切り換えることができ、インバータ損失を低減し、且つ漏電の可能性を低減することができる。
好適な例では、前記変調制御手段は、前記電動機の起動時点から前記判定手段によって液冷媒の有無を判定するまでの間は、前記電動機の駆動を三相変調制御にて行なう。
【0010】
電動機の起動時に三相変調制御を行なうため、起動前に冷媒存在領域内に液冷媒が溜まっていても、漏電の可能性を低減することができる。
好適な例では、前記判定手段は、前記電動機の起動時に液冷媒の有無を判定する。
【0011】
起動時に液冷媒が無い場合には、起動時から二相変調制御を行なって電動圧縮機におけるインバータ損失を起動時から低減することができる。
好適な例では、前記判定手段は、前記電動機の駆動中に液冷媒の有無を判定する。
【0012】
電動機の駆動中における液冷媒有無の判定の実行は、電動機への通電中における液冷媒の存在の有無を確実に把握する上で好ましい。
好適な例では、前記変調制御手段は、前記判定手段によって液冷媒無しと判定された場合は、前記電動機の駆動を二相変調制御にて行ない、前記判定手段によって液冷媒無しと判定されなかった場合は、前記電動機の駆動を三相変調制御にて行なう。
【0013】
液冷媒無しと判定されなかった(液冷媒有りの判定)ときには、中性点の電圧変動が小さい三相変調制御が行なわれ、液冷媒有りのときの漏電が回避される。液冷媒無しの判定のときには二相変調制御が行なわれてインバータ損失が低減される。
【0014】
好適な例では、前記判定手段は、前記電動圧縮機の吐出容量と回転数とに基づいて液冷媒排出量を推定し、前記液冷媒排出量が所定値に達した場合に、液冷媒無しと判定する。
吐出容量と回転数とに基づく液冷媒排出完了の判定精度は高く、三相変調制御の期間を可及的に短くすることができる。
【0015】
好適な例では、前記判定手段は、前記電動機の起動時点からの経過時間を計測し、前記経過時間が所定値に達した場合に、液冷媒無しと判定する。
所定値(所定時間)の適正設定により液冷媒無しの状態で三相変調制御から二相変調制御へ切り換えることができる。
【0016】
好適な例では、前記判定手段は、前記電動機の停止時間を計測し、前記停止時間に基づいて、前記所定値を設定する。
停止時間によって液冷媒の溜まる量が変化するため、停止時間を計測することによって液冷媒の溜まる量を推定することができる。計測した停止時間に基づいて所定値(所定時間)を設定することにより、三相変調制御から二相変調制御への切り換えを適切なタイミングで行なうことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、電動圧縮機におけるインバータ損失を低減し、且つ漏電の可能性を低減することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態を示す電動圧縮機の全体側断面図。
【図2】(a)は、インバータを示す回路図。(b)は、三相変調制御を説明するためのグラフ。(c)は、二相変調制御を説明するためのグラフ。
【図3】相変調制御プログラムを表すフローチャート。
【図4】第2の実施形態を示すフローチャート。
【図5】第3の実施形態を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をスクロール型の電動圧縮機に具体化した第1の実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
スクロール型の電動圧縮機10を構成する可動スクロール11は、電動機Mを構成する回転軸12の回転によって旋回し、圧縮動作体としての可動スクロール11と固定スクロール13との間の圧縮室14が容積減少する。圧縮室14内の冷媒は、吐出ポート15から吐出弁16を押し退けて吐出室17へ吐出される。
【0020】
吐出室17とモータハウジング18内の吸入室181とは、外部冷媒回路19によって接続されている。外部冷媒回路19上には、冷媒から熱を奪うための熱交換器20、膨張弁21、及び周囲の熱を冷媒に移すための熱交換器22が介在されている。吐出室17の冷媒は、外部冷媒回路19へ流出し、外部冷媒回路19へ流出した冷媒は、吸入室181へ還流する。吸入室181へ導入された冷媒は、吸入ポート23を経由して圧縮室14へ吸入される。吸入室181は、電動圧縮機10内の冷媒存在領域である。
【0021】
電動機Mを構成するロータ24は、回転軸12に止着されており、電動機Mを構成するステータ25は、モータハウジング18の内周面に固定されている。ロータ24は、回転軸12に止着されたロータコア241と、ロータコア241の周面に設けられた複数の永久磁石242とからなる。ロータコア241の周方向に隣り合う永久磁石242同士は、ステータ25に対向する側の磁極が異なるようにしてある。
【0022】
電動機Mを構成するステータ25は、円環状のステータコア251と、ステータコア251に巻き付けられたコイル252とからなる。ロータ24は、コイル252への通電によって回転し、回転軸12は、ロータ24と一体的に回転する。電動機Mのコイル252は、電動圧縮機10内の冷媒存在領域(吸入室181)にある。
【0023】
モータハウジング18の外周面にはインバータハウジング26が組み付けられており、インバータハウジング26内にはインバータ27が設けられている。コイル252への通電は、インバータ27を介して行われる。
【0024】
図2(a)に示すように、インバータ27は、モータ駆動回路28と、モータ駆動回路28を制御する主制御コンピュータC1とから構成されている。モータ駆動回路28は、半導体スイッチング素子である複数のトランジスタ29A1,29A2,29A3,29B1,29B2,29B3と、電流平滑化用のコンデンサ30とを備えている。トランジスタ29A1,29A2,29A3,29B1,29B2,29B3にはダイオード31が接続されている。ダイオード31は、電動機Mで発生する逆起電力を直流電源32に還流させるためのものである。
【0025】
トランジスタ29A1,29A2,29A3,29B1,29B2,29B3のベース側は、主制御コンピュータC1に信号接続されている。トランジスタ29A1,29A2,29A3のエミッタ側は、直流電源32に接続されており、トランジスタ29A1,29A2,29A3のコレクタ側は、電動機Mのコイル252に接続されている。トランジスタ29B1,29B2,29B3のコレクタ側は、直流電源32に接続されており、トランジスタ29B1,29B2,29B3のエミッタ側は、電動機Mのコイル252に接続されている。主制御コンピュータC1は、トランジスタ29A1,29A2,29A3,29B1,29B2,29B3のスイッチング動作を制御して電動機Mの回転数を制御する。
【0026】
図2(b)のグラフは、三相変調制御の一例を示し、図2(c)のグラフは、二相変調制御の一例を示す。主制御コンピュータC1は、図2(b),(c)にグラフで示す相変調制御を行なう。
【0027】
図2(b)のグラフにおける波形U3は、三相変調制御における入力電圧に対するU相の出力電圧の割合を表す。波形V3は、三相変調制御における入力電圧に対するV相の出力電圧の割合を表し、波形W3は、三相変調制御における入力電圧に対するW相の出力電圧の割合を表す。波形N3は、三相変調制御における入力電圧に対する中性点の出力電圧の割合を表す。
【0028】
図2(c)のグラフにおける波形U2は、二相変調制御における入力電圧に対するU相の出力電圧の割合を表す。波形V2は、二相変調制御における入力電圧に対するV相の出力電圧の割合を表し、波形W2は、二相変調制御における入力電圧に対するW相の出力電圧の割合を表す。波形N2は、二相変調制御における入力電圧に対する中性点の出力電圧の割合を表す。
【0029】
三相変調制御では、全てのトランジスタ29A1,29A2,29A3,29B1,29B2,29B3のスイッチング動作がロータ24の360°常時行なわれる。二相変調制御では、トランジスタ29A1,29A2,29A3,29B1,29B2,29B3のうちのいずれかのスイッチング動作がロータ24の60°回転毎に停止される。即ち、三相のうちのいずれか一相を順次停止させると同時に、他の二相のみスイッチング動作を行なう。よって、二相変調制御は、三相変調制御に比べて、インバータ損失が少ない。又、図2(b),(c)のグラフからわかるように、二相変調制御時の中性点の電圧変動は、三相変調制御時の中性点の電圧変動よりも大きい。
【0030】
主制御コンピュータC1には副制御コンピュータC2が信号接続されている。副制御コンピュータC2には空調装置作動スイッチ33、室温検出器34及び室温設定器35が信号接続されている。空調装置作動スイッチ33がON状態にある場合、副制御コンピュータC2は、室温設定器35によって設定された目標室温Θoと、室温検出器34によって検出された検出室温Θxとの差(Θo−Θx)の情報に応じた指定回転数Nxを主制御コンピュータC1に指定する。この指定回転数Nxは、検出室温Θxを目標室温Θoに収束させるように設定された回転数である。
【0031】
図3は、電動機Mのコイル252に対する相変調制御プログラムを表すフローチャートであり、主制御コンピュータC1は、図3のフローチャートで示す相変調制御を遂行する。以下、主制御コンピュータC1による相変調制御を説明する。
【0032】
主制御コンピュータC1は、空調装置作動スイッチ33のONに伴う起動指令の入力に待機している(ステップS1)。起動指令が入力されると(ステップS1においてYES)、主制御コンピュータC1は、図2(b)のグラフで示す三相変調制御を行なう(ステップS2)。主制御コンピュータC1は、三相変調制御の遂行開始時点(電動機Mの起動時点)から以後(電動機Mの起動時点以後)のモータハウジング18内の吸入室181から排出される液冷媒の排出量、つまり液冷媒排出量Qxを算出(推定)する(ステップS3)。液冷媒排出量Qxの算出(推定)は、指定回転数Nxを変数とし、且つ吐出容量を定数とする所定の計算式に基づいて算出される。指定回転数Nxは、電動圧縮機10の回転数である。
【0033】
主制御コンピュータC1は、算出された液冷媒排出量Qxと、所定値である予め設定された基準量Qoとの大小比較を判断する(ステップS4)。算出された液冷媒排出量Qxが予め設定された基準量Qoに満たない場合(ステップS4においてNOであって、液冷媒有りの判定)、主制御コンピュータC1は、三相変調制御を継続する。三相変調制御時の中性点の電圧変動が小さいため、液冷媒がモータハウジング18内の吸入室181に溜まっていても、漏電の可能性が低減する。
【0034】
算出された液冷媒排出量Qxが予め設定された基準量Qo以上である場合(ステップS4においてYESであって、液冷媒無しの判定)、主制御コンピュータC1は、三相変調制御から図2(c)に示す二相変調制御に切り換える(ステップS5)。基準量Qoは、モータハウジング18内の吸入室181に溜まっている液冷媒の最大量以上の値に設定されている。つまり、基準量Qoは、算出された液冷媒排出量Qxが基準量Qoに達しているときには吸入室181内の液冷媒無しと見なし得る量である。
【0035】
主制御コンピュータC1は、冷媒存在領域内の液冷媒の有無を判定する判定手段である。インバータ27は、液冷媒無しと判定されなかった(液冷媒有りと判定された)場合には、電動機Mの駆動を三相変調制御にて行ない、液冷媒無しと判定された場合には、電動機Mの駆動を二相変調制御にて行なう変調制御手段である。
【0036】
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
(1)液冷媒有りの判定のときには三相変調制御が行なわれて中性点の電圧変動が小さく、吸入室181内に液冷媒が有るときの漏電が回避される。液冷媒無しの判定のときには二相変調制御が行なわれてインバータ27の損失が低減される。
【0037】
(2)電動機Mの起動時に三相変調制御が行なわれるため、起動前に冷媒存在領域内に液冷媒が溜まっていても、漏電の可能性が低減する。
(3)電動機Mの駆動中において液冷媒有りの状態から液冷媒無しの状態への移行の有無の判定が行なわれる(ステップS4)。液冷媒有りの状態から液冷媒無しの状態への移行有りの判定が行なわれた場合には、三相変調制御が二相変調制御へ切り換えられる。電動機Mの駆動中における液冷媒有無の判定の実行は、電動機Mへの通電中における液冷媒の存在の有無を確実に把握する上で好ましい。
【0038】
(4)本実施形態では、吐出容量が一定であるが、回転数(指定回転数Nx)が変動する。回転数が大きくなるほど単位時間当たりの液冷媒の排出量が多くなる。吸入室181からの液冷媒の単位時間当たりの排出量は、吐出容量と回転数とに基づいて、高い精度で推測できる。従って、液冷媒排出完了の判定精度は高く、三相変調制御の期間を可及的に短くして二相変調制御に切り換えることができる。これは、インバータ27の損失の低減に寄与する。
【0039】
次に、図4のフローチャートで示す第2の実施形態を説明する。装置構成は、第1の実施形態と同じである。図4のフローチャートにおいて第1の実施形態におけるフローチャートと同じ制御ステップには同じ符合を付し、その詳細説明は省略する。
【0040】
ステップS2に移行後、主制御コンピュータC1は、電動機Mの起動時点からの経過時間Txを計測し、経過時間Txと所定値である予め設定された所定時間Toとの大小比較を行なう(ステップS6)。経過時間Txが所定時間Toに満たない場合(ステップS6においてNOであって、液冷媒有りの判定)、主制御コンピュータC1は、三相変調制御を継続する。経過時間Txが所定時間To以上である場合(ステップS6においてYESであって、液冷媒無しの判定)、主制御コンピュータC1は、三相変調制御から二相変調制御に切り換える(ステップS5)。所定時間Toは、経過時間Txが所定時間Toに達しているときには吸入室181内の液冷媒無しと見なし得る時間(例えば3秒)である。
【0041】
第2の実施形態では第1の実施形態における(1)〜(3)項と同様の効果が得られる。
次に、図5のフローチャートで示す第3の実施形態を説明する。装置構成は、第1の実施形態と同じである。図5のフローチャートにおいて第1の実施形態におけるフローチャートと同じ制御ステップには同じ符合を付し、その詳細説明は省略する。
【0042】
起動指令が入力されると(ステップS1においてYES)、主制御コンピュータC1は、電動機Mが停止していた時間Dxを計測する(ステップS7)。主制御コンピュータC1は、計測された停止時間Dxと、予め設定された基準時間Doとの大小比較を判断する(ステップS8)。計測された停止時間Dxが予め設定された基準時間Doに達した場合(ステップS8においてYESであって、液冷媒有りの判定)、主制御コンピュータC1は、三相変調制御を行なう(ステップS2)。
【0043】
計測された停止時間Dxが予め設定された基準時間Doに達しない場合(ステップS8においてNOであって、液冷媒無しの判定)、主制御コンピュータC1は、二相変調制御を行なう。基準時間Doは、電動機Mの停止後に液冷媒が吸入室181内に生成可能な最短時間である。
【0044】
第3の実施形態では、起動指令の入力と同時に液冷媒有無の判定が行なわれるため、起動時に液冷媒が無い場合には起動時から二相変調制御が行なわれる。従って、起動時に液冷媒が無い場合には、起動時から二相変調制御を行なって電動圧縮機10におけるインバータ損失を起動時から低減することができる。
【0045】
本発明では以下のような実施形態も可能である。
○電動機Mの停止時間を計測し、計測された停止時間に基づいて、所定値(基準量Qoあるいは所定時間To)を設定してもよい。電動機Mの停止時間が短いほど、吸入室181内に溜まる液冷媒の量は少なくなる。よって、停止時間を計測することで、三相変調制御の期間を可及的に短くして二相変調制御に切り換えることができる。
【0046】
○電動機Mの実際の起動開始を起動指令の入力時点から遅らせ、この遅れ時間の間に液冷媒有無の判定を行なうようにしてもよい。
○モータハウジング18あるいは吸入室181内の温度を検出する温度検出器を設け、主制御コンピュータC1が温度検出器によって検出された温度に応じて、所定値(基準量Qoあるいは所定時間To)を変更するようにしてもよい。温度検出器によって検出された温度が高いほど、吸入室181内に溜まる液冷媒の量は少なくなる。温度情報を考慮した液冷媒排出完了の判定精度は高く、三相変調制御の期間を可及的に短くして二相変調制御に切り換えることができる。
【0047】
○前記の温度検出器としてインバータ27の温度を検出する温度検出器を利用してもよい。この温度検出器によって検出された温度情報は、主としてインバータ27の過熱を回避するために用いられる情報である。
【0048】
○電動機の回転数と電動圧縮機の回転数とが異なる電動圧縮機に本発明を適用してもよい。
○本発明をピストン式電動圧縮機に適用してもよい。
【0049】
○可変容量型電動圧縮機に本発を適用してもよい。
前記した実施形態から把握できる技術思想について以下に記載する。
(イ)前記電動圧縮機は、インバータの温度を検出する温度検出手段とを備え、前記判定手段は、前記温度検出手段によって検出された温度に応じて、液冷媒無しの判定の基準を変更する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電動圧縮機における電動機制御装置。
【符号の説明】
【0050】
10…電動圧縮機。11…圧縮動作体である可動スクロール。12…回転軸。14…圧縮室。181…冷媒存在領域である吸入室。252…コイル。27…変調制御手段であるインバータ。M…電動機。C1…判定手段である主制御コンピュータ。Nx…電動圧縮機の回転数である指定回転数。Qo…所定値としての基準量。Qx…液冷媒排出量。To…所定値としての所定時間。Tx…経過時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と圧縮動作体とを備え、前記電動機によって駆動される回転軸の回転に基づく前記圧縮動作体の圧縮動作によって圧縮室内の冷媒を圧縮して吐出する電動圧縮機であり、前記電動機のコイルが前記電動圧縮機内の冷媒存在領域にある電動圧縮機における電動機制御装置において、
前記冷媒存在領域内の液冷媒の有無を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記電動機の駆動を三相変調制御又は二相変調制御にて行なう変調制御手段とを備えた電動圧縮機における電動機制御装置。
【請求項2】
前記変調制御手段は、前記電動機の起動時点から前記判定手段によって液冷媒の有無を判定するまでの間は、前記電動機の駆動を三相変調制御にて行なう請求項1に記載の電動圧縮機における電動機制御装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記電動機の起動時に液冷媒の有無を判定する請求項1に記載の電動圧縮機における電動機制御装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記電動機の駆動中に液冷媒の有無を判定する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電動圧縮機における電動機制御装置。
【請求項5】
前記変調制御手段は、前記判定手段によって液冷媒無しと判定された場合は、前記電動機の駆動を二相変調制御にて行ない、前記判定手段によって液冷媒無しと判定されなかった場合は、前記電動機の駆動を三相変調制御にて行なう請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電動圧縮機における電動機制御装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記電動圧縮機の吐出容量と回転数とに基づいて液冷媒排出量を推定し、前記液冷媒排出量が所定値に達した場合に、液冷媒無しと判定する請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電動圧縮機における電動機制御装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記電動機の起動時点からの経過時間を計測し、前記経過時間が所定値に達した場合に、液冷媒無しと判定する請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電動圧縮機における電動機制御装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記電動機の停止時間を計測し、前記停止時間に基づいて、前記所定値を設定する請求項6及び請求項7のいずれか1項に記載の電動圧縮機における電動機制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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