説明

電動圧縮機用リラクタンスモータ

【課題】同じ仕様のロータコアを用いても段階的に要求されるモータ出力を満足させることのできる電動圧縮機用のリラクタンストルクを利用する同期モータの提供。
【解決手段】ステータ30と、ステータ30の内部に配置され、磁極に対応して磁石保持スリット43が形成されるロータ40とを備えるモータ部に関する。ロータ40には、磁極に対応して、点対称な内側スリット43aと外側スリット43bが径方向に沿って配置される。内側スリット43aは、平面形状が矩形状の第1保持部431aと、第2保持部432aと、第3保持部433aとが連なって形成され、各保持部は平面方向の磁石収容長さL1a、L2a、L3aが等しく設定されている。外側スリット43bは、第1保持部431bと、第2保持部432bと、第3保持部433bとが連なって形成され、各保持部は平面方向の磁石収容長さL1b、L2b、L3bが等しく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載される空気調和装置を構成する電動圧縮機用リラクタンスモータ(リラクタンストルクを利用する同期モータを表す。以後、リラクタンスモータと表記。)に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機用モータは、永久磁石が埋設されたロータ(Rotor、回転子)と、ロータの周囲に配置されるステータ(Stator、固定子)とを備えている。ロータに圧縮機の回転軸を固定することで、圧縮機の駆動を実現する。ロータには、当該モータの極数(例えば4極)に応じて永久磁石が保持される。
永久磁石としては、コストを重視する場合には安価なフェライト磁石を用い、モータ出力あるいは小型化を重視する場合には強い磁力を発生する希土類磁石を用いることになる。
ロータコアに保持される永久磁石に関して特許文献1は、磁極毎に3つ以上で構成し、かつ磁極毎の3つ以上の永久磁石を少なくとも2種類の磁石材料で構成することを提案している。この提案によると、リラクタンストルクおよび磁束密度の選択幅を広げることができ、しかも磁束密度の低い磁石材料(例えばフェライト磁石)を併用することで、低コスト化を図ることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−000000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気調和装置の能力に応じて電動圧縮機用モータに要求される出力は多様であり、特許文献1の提案では、ステータに埋設される永久磁石の寸法、ロータの積層数、あるいはモータを収容するハウジングの寸法、といった仕様を出力に応じて設定する必要がある。そうすると、モータに要求される段階的な出力に応じて、異なる仕様のロータ、あるいはハウジングを用意しなければならず、電動圧縮機用モータのコストを上昇させる。
本発明は、この課題に基づいてなされたもので、同じ仕様のロータコアを用いても段階的に要求されるモータ出力を満足させることのできる電動圧縮機用リラクタンスモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明の電動圧縮機用リラクタンスモータは、ステータと、ロータと、を備える。ロータは、ステータの内部に配置され、かつ、磁極に対応して磁石保持スリットが形成される。本発明は、この磁石保持スリットが以下の特徴的な構成を備えている。
(1)複数の磁石保持スリットは、磁極に対応して、径方向に沿って形成される。
(2)各々の磁石保持スリットは、平面方向の磁石収容長さの等しい3つの直方体状の第1保持部、第2保持部、第3保持部の組合せによって形成される。
(3)各々の磁石保持スリットは、平面視して、ロータの中心に対して点対称であり、径方向の外側に開口する凹状に形成される。
【0006】
本発明による電動圧縮機用リラクタンスモータは、永久磁石を保持させることなく磁石保持スリットが磁気的な空隙を構成して使用に供することができるし、磁石保持スリットに永久磁石が挿入されて使用に供することができる。前者はリラクタンストルクのみで駆動されるシンクロナスリラクタンスモータを構成し、後者はリラクタンストルクに加えて永久磁石によるトルクにより駆動される埋込磁石型モータを構成する。本発明による電動圧縮機用リラクタンスモータは、磁石保持スリットの一部に永久磁石が保持され、他の磁石保持スリットには永久磁石が保持されることなく磁気的な空隙として使用に供することができる。このように、磁石保持スリット43に保持される永久磁石の量(数)を調整することにより、本発明の電動圧縮機用リラクタンスモータは、多段階の出力を実現できる。
また、本発明の電動圧縮機用リラクタンスモータは、複数の磁石保持スリットを、径方向の内側に配置される内側スリットと、径方向の外側に配置される外側スリットと、から構成することができる。この場合、内側スリットで保持できる永久磁石の数を、外側スリットで保持できる永久磁石の数の整数倍とすることができる。この場合、同じ仕様の永久磁石を用いると、磁石保持スリットを漏れなく使い切りながら、最大量の永久磁石をロータに保持させることができる。
さらに、本発明による電動圧縮機用リラクタンスモータは、仕様が同じでしかも製造の容易な直方体状の永久磁石を用いれば、低減に寄与する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、同じ仕様のロータコアを用いながらも、永久磁石を用いることのないリラクタンスモータとして機能する場合をも含め、永久磁石の数を調整することにより、出力を多段階に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施の形態における電動圧縮機の縦断面図である。
【図2】本実施の形態におけるリラクタンスモータのステータ及びロータを示し、(a)は平面図、(b)は磁石保持スリット(内側スリット、外側スリット)の拡大図を示す。
【図3】本実施の形態におけるリラクタンスモータのステータ及びロータを示し、(a)は永久磁石がない場合を、(b)は最小の永久磁石の数の場合を、(c)は中間の永久磁石の数の場合を、(d)は最大の永久磁石の数の場合を示す。
【図4】本実施の形態におけるリラクタンスモータのステータと、磁石保持スリットに永久磁石が保持されたロータを示し、(a)はフェライト磁石を用いた場合を、(b)は希土類磁石を用いた場合を、(c)は希土類磁石とフェライト磁石を用いた場合を示す。
【図5】本実施の形態に用いられる永久磁石を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1に示すように、電動圧縮機10は、ハウジング11内にモータ部20およびスクロール式の圧縮部50が収容されている。この電動圧縮機10は、例えば自動車に搭載される空気調和装置に用いられる。
【0010】
図1に示したように、ハウジング11のモータ部20が設けられた側の端部に形成された冷媒導入ポート(図示無し)からハウジング11内に冷媒が導入され、圧縮部50が設けられた側の端部に形成された冷媒吐出ポート(図示無し)から、圧縮部50によって圧縮された冷媒を吐出する。
【0011】
モータ部20は、ハウジング11に固定されたステータ(stator、固定子)30と、ステータ30の内側で回転自在に設けられたロータ(rotor、回転子)40とを備える。ロータ40は、主軸23の外周部に嵌合され、主軸23は、その両端がハウジング11に回転自在に支持されている。モータ部20は、極数が4の電動圧縮機用埋込磁石型モータである。
【0012】
圧縮部50は、ハウジング11に固定された固定スクロール51と、主軸23の回転に伴って回転する旋回スクロール52と、を備える。
固定スクロール51、旋回スクロール52は、それぞれ円板状の端板51a、52aの一面側に、渦巻状のスクロール壁51b、52bが立設されている。これら固定スクロール51と旋回スクロール52は、スクロール壁51b、52bを互いに組み合わせて、双方のスクロール壁51b、52b間に圧縮室を形成している。
【0013】
このような電動圧縮機10の外殻を形成するハウジング11は、モータ部20および主軸23を収容するモータハウジング11Aと、主軸23および圧縮部50を収容する圧縮部ハウジング11Bと、図示を省略するインバータを収容するインバータハウジング11Cとから構成されている。これらモータハウジング11A、圧縮部ハウジング11B、インバータハウジング11Cは、それぞれ、ボルトやノックピンにより一体に締結されて内部が封止される。
【0014】
さて、図2に示されるように、モータ部20を構成するステータ30は、ロータ40の外周を囲むように設けられたステータコア31と、このステータコア31に取り付けられる電線から構成される巻線(図示を省略)と、を備えている。
ステータコア31は、略円環状をなし、導電材料である薄肉の磁性鋼板を積層して構成されている。ステータコア31は、その内周壁において周方向に所定の間隔を隔てて設けられた複数の巻線スロット33が形成されており、この巻線スロット33に巻線が施される。この巻線スロット33は、巻線の形態として分布型を想定しているが、本発明はこれに限定されず、集中巻きにより巻線を施すものにも適用できる。ステータコア31は、電源から巻線へ通電することにより、ステータコア31の内側に回転磁界を発生させる。ステータコア31は、例えば磁性鋼板をプレス加工、レーザ加工などの加工によって形成される。以下説明する、磁石保持スリット43、軸貫通孔45も同様である。
【0015】
モータ部20を構成するロータ40は、ロータコア41と、ロータコア41に形成される複数(本例では4つ)の磁石保持スリット43と、主軸23が貫通される軸貫通孔45と、を備えている。後述する永久磁石MGは、磁石保持スリット43に圧入され、必要に応じて接着剤を用いることにより、磁石保持スリット43を介してロータコア41に保持される。なお、本願では便宜上、単に磁石保持スリット43に保持される、ということがある。
ロータコア41は、略円環状をなし、薄肉の磁性鋼板を積層して構成されている。ロータコア41の中心部には、前述した電動圧縮機10の主軸23が挿通される軸貫通孔45が形成されている。軸貫通孔45に主軸23が圧入されることにより、ロータコア41は主軸23に固定される。
【0016】
軸貫通孔45の周囲には、周方向に等間隔を隔てて、極数に対応して4つの磁石保持スリット43が形成されている。各磁石保持スリット43は、内側スリット43aと外側スリット43bの組から構成される。内側スリット43aは径方向の内側に配置され、外側スリット43bは径方向の外側に配置される。
【0017】
各組の磁石保持スリット43(内側スリット43a、外側スリット43b)は、永久磁石MGが保持されていない状態で、ロータコア41の中心軸側から外周側への磁束の通過の障害となる。一方、ロータコア41の周方向において、隣接する磁石保持スリット43に挟まれる部分は、それぞれ、ロータコア41の中心軸側から外周側への磁束の通過が容易であり、突極部となる。
【0018】
内側スリット43a、外側スリット43bはともに、平面視した形状が、ロータ40の径方向の外側に開口を有する凹状とされており、より具体的には以下のとおりである。
内側スリット43aは、第1保持部431aと、第2保持部432aと、第3保持部433aとから構成される。いずれの保持部もロータコア41を厚さ方向に貫通する直方体状の空隙からなる。外側スリット43bも同様である。
以上の第1保持部431aと、第2保持部432aと、第3保持部433aとが連なって内側スリット43aが形成される。第1保持部431aと、第2保持部432aと、第3保持部433aとは、各々の平面方向の磁石収容長さL1a、L2a、L3aが等しく設定されている(図2(b))。ここで、磁石収容長さが等しい、とは誤差の違いを許容することは当然である。
【0019】
内側スリット43aは、その両端部がロータコア41の外周面にまでは達していない。そのため、対をなす第2保持部432aと第3保持部433aのそれぞれとロータコア41の外周面との間に連結部44aが設けられる。この連結部44aが設けられていることにより、ロータ40の機械的強度を確保することができる。このことは外側スリット43bについても同様に連結部44bが設けられる。そして、内側スリット43aの連結部44a、外側スリット43bの連結部44bとは、径方向の寸法が等しく設定されている。つまり、内側スリット43a及び外側スリット43bは、同一円周上に各々の両端部が位置する。
【0020】
次に、第1保持部431aは、ロータ40の径方向に直交して配置される。
第2保持部432aは、一方端が第1保持部431aの一方端に連なるとともに、他方端が第1保持部431aよりも径方向の外側に位置される。
第3保持部433aは、一方端が第1保持部431aの一方端に連なるとともに、他方端が第1保持部431aよりも径方向の外側に位置される。
以上のように構成される各々の内側スリット43aは、ロータ40の中心に対して点対称である。
【0021】
外側スリット43bは、第1保持部431bと、第2保持部432bと、第3保持部433bとから構成される。
平面形状が矩形状の第1保持部431bと、第2保持部432bと、第3保持部433bとが連なって外側スリット43bが形成される。第1保持部431bと、第2保持部432bと、第3保持部433bとは、各々の平面方向の磁石収容長さL1b、L2b、L3bが等しく設定されている(図2(b))。磁石収容長さL1b、L2b、L3bは前述した内側スリット43aの磁石収容長さL1a、L2a、L3aと、以下の関係を有している。つまり、内側スリット43aのほうが外側スリット43bに比べてより多く(2倍)の量の永久磁石MGを収容、保持することができる。
L1a=2×L1b、L2a=2×L2b、L3a=2×L3b、
【0022】
次に、第1保持部431bは、ロータ40の径方向に直交して配置される。したがって、第1保持部431bは、内側スリット43aの第1保持部431aと平行である。
第2保持部432bは、一方端が第1保持部431bの一方端に連なるとともに、他方端が第1保持部431bよりも径方向の外側に位置される。第2保持部432bは、内側スリット43aの第2保持部432aと平行である。
第3保持部433bは、一方端が第1保持部431bの一方端に連なるとともに、他方端が第1保持部431bよりも径方向の外側に位置される。第3保持部433bは、内側スリット43aの第3保持部433aと平行である。
以上のように構成される外側スリット43bも、ロータ40の中心に対して点対称である。また、内側スリット43aと外側スリット43bの間隔Labは、一方端から他方端に掛けて均等に設定されている。
【0023】
内側スリット43a、外側スリット43bは電動圧縮機10の仕様に基づいて適宜設定されるものであるが、概ね以下の範囲から設定されるのがよい。
内側スリット43a両端の角度θ1:極角度(360°/極数)の0.5〜0.6倍
外側スリット43b両端の角度θ2:極角度(360°/極数)の0.8〜0.9倍
内側スリット43aの埋込深さD1:ロータ40半径の2/4〜2/3
外側スリット43bの埋込深さD2:ロータ40半径の1/4〜1/3
【0024】
さて、以上の内側スリット43a及び外側スリット43bを備えるロータ40は、ロータ40の径方向の外側に開口を有する凹状とされる内側スリット43a及び外側スリット43bがフラックスバリアとして機能する。したがって、永久磁石MGを保持することなく磁石保持スリット43が空隙のままであれば、モータ部20はリラクタンストルクのみで駆動されるシンクロナスリラクタンスモータとして機能する。また、磁石保持スリット43に磁石が保持されれば、リラクタンストルクに加えて、永久磁石と電流によるトルクを動力源とする埋込磁石型モータとして機能する。以下、図3を参照しながら説明するように、シンクロナスリラクタンスモータも含め、本実施の形態によるモータ部20は、ロータ40が単一の形状でありながら、多様な出力に対応することができる。
【0025】
図3(a)は、永久磁石MGを保持することなく磁石保持スリット43を空隙のままとしているので、磁石保持スリット43がフラックスバリアの役割を果たし、隣接する磁石保持スリット43の間の部分が突極部となり、このロータ40を備えるモータ部20は、リラクタンスモータとして働く。この場合のモータ部20は、永久磁石MGによるトルクが得られないので、最小出力に対応する。
【0026】
次に、永久磁石MGを用いる埋込磁石型モータとしてモータ部20が機能する場合について説明する。
ここで用いられる永久磁石MGは、形状が図5(a)に示されるように直方体(幅W×厚さT×長さL)をなしている。永久磁石MGとしては、フェライト磁石、希土類磁石など各種材質を用いることができる。
また、後述するように、モータ部20は、モータ部20に要求される出力に応じて、磁石保持スリット43で保持する永久磁石MGの量(個数)を調整することができるが、これに加えて永久磁石MGの材質を選択することができる。
【0027】
図3(b)〜図3(d)は、各々、モータ部20に要求される出力が最小(永久磁石MGを保持する場合)、中間、最大に対応した数の永久磁石MGが磁石保持スリット43に保持されている。
ここで、図3(b)〜図3(d)からも明らかなように、内側スリット43aには外側スリット43bの2倍の数の永久磁石MGを保持することができる。そして、一つの磁石保持スリット43(内側スリット43aと外側スリット43bの組合せ)には、最小で1個から最大で9個までの数の永久磁石MGを段階的に保持することができる。以下には、磁石保持スリット43で保持できる永久磁石MGの数の例を示しておく。なお、永久磁石MGの寸法は同じものとする。
【0028】
内側スリット43a:
2個(第1保持部431aに2個)
4個(第1保持部431aに2個、第2保持部432aと第3保持部433aに1個ずつ)
6個(第1保持部431a、第2保持部432a、第3保持部433aに2個ずつ)
外側スリット43b:
1個(第1保持部431b)
3個(第1保持部431b、第2保持部432b、第3保持部433bに1個ずつ)
【0029】
以上説明したとおりであって、モータ部20は、永久磁石MGを用いることのないリラクタンスモータとして機能する場合をも含め、永久磁石MGの数を調整することにより、出力を多段階に調整することができる。
このモータ部20は、磁石保持スリット43で保持できる永久磁石MGの数を多段階に調整することを、同じ仕様のロータコア41で実現することができるので、打ち抜き用の金型が一種類で足りるなど、ロータコア41の製造効率の向上及び製造コストの低減に寄与する。また、同じ仕様のロータコア41を用いることができるということは、モータ部20の出力を多段階に調整できることを前提としながらも、ハウジング11も同じ仕様のものを用意すればよいので、ハウジング11の製造効率の向上及び製造コストの低減がなされる。加えて、永久磁石MGについても同じ仕様(形状、寸法、材質)でしかもアーク状に比べて製造の容易な直方体状のものを用いることができるので、この観点からも、製造効率の向上及び製造コストの低減がなされる。要するに、本実施の形態によると、電動圧縮機10の製造効率が向上するとともに、製造コストが低減される。
【0030】
以上では、永久磁石MGの数によりモータ部20の出力を調整する例を説明したが、本発明は、永久磁石MGの材質を替えることによりモータ部20の出力を調整することができる。例えば、図4(a)はフェライト磁石からなる永久磁石FMGが内側スリット43aに保持された例を示し、図4(b)は希土類磁石からなる永久磁石RMGが内側スリット43aに保持された例を示している。希土類磁石の方がフェライト磁石に比べて磁力が大きいので、モータ部20の出力を大きくすることができる。
【0031】
図4(a)、(b)に示した永久磁石MGは、図5(b)に示すように図5(a)に示した永久磁石MGの2倍(2W)の幅を有しており、したがって、内側スリット43aに一つの永久磁石MGを挿入し保持させればよい。ただし、この場合でも、外側スリット43bに保持される永久磁石MGは図5(a)に示した幅Wの永久磁石MGとされる。この場合、2種類の幅が異なる永久磁石MGを用意することにより、内側スリット43aに挿入する永久磁石MGの数が1つで足りるので、幅がWの2つの永久磁石MGを内側スリット43aに保持させるのに比べて、永久磁石MGの挿入作業が簡略化できる。
【0032】
永久磁石MGの材質の選択は、フェライト磁石と希土類磁石からのみに限るわけではない。例えば、同じ希土類磁石でもSmCo系磁石とNdFeB系磁石とでは磁気特性が相違するので、これらを選択の対象とすることができる。フェライト磁石についても同様である。
また、本発明は、複数材質の永久磁石MGを用いることもできる。図4(c)はその一例を示しており、内側スリット43aにフェライト磁石からなる永久磁石FMGを配置し、外側スリット43bに希土類磁石からなる永久磁石RMGを配置することで、モータ部20の出力を調整することができる。なお、フェライト磁石と希土類磁石を用いる場合、図4(c)に示すように、希土類磁石を外側スリット43bに配置することが好ましい。コイルから印加される磁界(逆磁界)の強さがロータコア41の外側ほど強いので、そこには保磁力の強い希土類磁石を配置するのである。
【0033】
以上以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
例えば、ここでは内側スリット43aと外側スリット43bの2つから各組の磁石保持スリットが構成されるが、これに限定されるものではなく、本発明は径方向に沿って形成される3つ以上のスリット群から各磁石保持スリット43を構成することができる。
また、磁石保持スリット43は、永久磁石MGを用いないシンクロナスリラクタンスモータとしてモータ部20を用いる場合には、磁石保持スリット43(内側スリット43a、外側スリット43b)は、通常は空隙のままとされるが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の樹脂材料や、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の非磁性金属等の非磁性材料が充填されていてもよい。
さらに、永久磁石MGを圧入することにより磁石保持スリット43に保持させることができるが、さらに接着剤を用いて永久磁石MGをより強固にロータコア41に保持させることもできる。
さらにまた、永久磁石MGの位置決めをするための係止爪46を磁石保持スリット43内に設けることができる(図2(b))。
【符号の説明】
【0034】
10 電動圧縮機
11 ハウジング
20 モータ部
30 ステータ
31 ステータコア
33 巻線スロット
40 ロータ
41 ロータコア
43 磁石保持スリット
43a 内側スリット
43b 外側スリット
431a、432a、433a 保持部
431b、432b、433b 保持部
45 軸貫通孔
46 係止爪
50 圧縮部
MG、FMG、RMG 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータの内部に配置され、磁極に対応して磁石保持スリットが形成されるロータと、を備え、
複数の前記磁石保持スリットが、前記磁極に対応して、径方向に沿って配置され、
各々の前記磁石保持スリットは、平面方向の磁石収容長さの等しい3つの直方体状の第1保持部、第2保持部、第3保持部の組合せによって形成され、
各々の前記磁石保持スリットは、平面視して、ロータの中心に対して点対称であり、径方向の外側に開口する凹状に形成される、
ことを特徴とする電動圧縮機用リラクタンスモータを利用する同期モータ。
【請求項2】
前記磁石保持スリットが磁気的な空隙を構成して使用に供される、
請求項1に記載の電動圧縮機用リラクタンスモータを利用する同期モータ。
【請求項3】
前記磁石保持スリットに永久磁石が挿入されて使用に供される、
請求項1に記載の電動圧縮機用リラクタンスモータを利用する同期モータ。
【請求項4】
前記磁石保持スリットの一部に永久磁石が保持され、他の前記磁石保持スリットは磁気的な空隙を構成して使用に供される、
請求項3に記載の電動圧縮機用リラクタンスモータを利用する同期モータ。
【請求項5】
複数の前記磁石保持スリットは、
径方向の内側に配置される内側スリットと、径方向の外側に配置される外側スリットと、からなり、
前記内側スリットで保持できる前記永久磁石の数は、前記外側スリットで保持できる前記永久磁石の数の整数倍である、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電動圧縮機用リラクタンスモータを利用する同期モータ。
【請求項6】
仕様が同じ直方体状の前記永久磁石が前記磁石保持スリットに保持される、
請求項3〜5のいずれか一項に記載の電動圧縮機用リラクタンスモータを利用する同期モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−196034(P2012−196034A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57417(P2011−57417)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】