説明

電動工具および動力工具

【課題】 効果的に送風が可能で、本来の作業とは独立して動作可能な送風機能を備えた電動工具及び動力工具を提供する。
【解決手段】 電動式釘打機1において、モータ7に第1ワンウェイクラッチ72および第2ワンウェイクラッチ73を接続する。トリガ24がオンされた場合には、正逆回転スイッチ115の接続状態によりモータ7は正転し、第1ワンウェイクラッチ72を介してプランジャ8を移動させることにより止め具の打ち込み動作を行う。ブロワスイッチ115がオンされた場合には、正逆回転スイッチ115の接続状態によりモータ7は逆回転し、第2ワンウェイクラッチ73を介してファン機構110を動作させる。ファン機構110は、小型であるが吹き出し効率がよく、打ち込み動作をしていない時に動作が可能である。吹き出した風はマガジン6上を流れ、被作業部材上のごみを効率よく吹き飛ばす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動工具および動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具等の動力工具として、回転する刃や砥石により作業を行う丸鋸やグラインダが知られている。また、バネ付勢させたプランジャをバネ付勢力に抗して押上げた後開放することによって、加速されたプランジャで釘を被打込み材に打込む電動式や燃焼式による打込機が用いられている。例えば、モータで駆動されたフライホイールの慣性力をクラッチを介してプランジャに伝えることにより、加速されたプランジャで釘を被打込み材に打込む電動式打込機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような動力工具による作業においては、被作業部材の表面のごみを除去する必要がある。そのため、丸鋸など、鋸刃を回転駆動する切断機において、鋸刃を収納するカバーの外周部に筒状部材を設け、モータの冷却風をその筒状部材の内部を経て切断方向前方に排出することによって刃先の切り粉を飛ばす送風機構も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−119778号公報(第6―第9頁、第1図)
【特許文献2】特開2005−238822号公報(第18−20頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような電動式打込機においては、モータの駆動時間が短いため送風機を継続して回すことができないので、効果的に風を発生させることができないという問題がある。また、丸鋸の送風機構においては、鋸刃とファンが一体となって回転するため、鋸刃を動かしているときしか風を出すことができない。すなわち、鋸刃とは別に送風機のみを稼動させ、目的の箇所のごみを飛ばすことができないという課題がある。
【0006】
そこで、上記課題を解決するため本発明は、効果的に送風が可能で、本来の作業とは独立して送風を行うことができる送風機能付きの電動工具、及び動力工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ハウジングと、ユーザが操作するスイッチと、ハウジングに設けられたモータと、モータの動力により動作し被作業部材に対して作業する作業部と、モータの動力により動作する送風機と、モータの正転、逆転を制御する制御部と、を有し、制御部は、スイッチの操作に応じてモータの正転、逆転を制御し、モータの正転に応じて作業部または送風機のいずれか一方が動作し、モータの逆転に応じて作業部または送風機のいずれか他方が動作することを特徴とする電動工具である。
【0008】
このような構成によれば、ユーザによるスイッチの操作によってモータは正転または逆転し、モータの回転に応じて作業部または送風機のいずれかが動作する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、モータは動力を出力する駆動軸を有し、作業部と駆動軸との間には、第1のワンウェイクラッチが介在し、送風機とモータの駆動軸との間には、第1のワンウェイクラッチとは逆方向の回転を伝達する第2のワンウェイクラッチが介在することを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、作業部には第1のワンウェイクラッチを介してモータの動力が伝達され、送風機には第2のワンウェイクラッチを介してモータの動力が伝達される。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、作業部は、刃と、砥石と、止め具の打ち込み動作を行う打ち込み動作機構と、のうちのいずれかであることを特徴としている。
【0012】
このような構成によれば、丸鋸、グラインダ、打込機において、被作業部材に対する作業とは独立して動作する送風機を備えることになる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、スイッチとは別の送風機スイッチを設け、制御部は、送風機スイッチの入力に基づいて送風機の動作を制御することを特徴としている。
【0014】
このような構成によれば、送風機は、作業部を動作させるスイッチとは別の送風機スイッチによってオンオフされる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、送風機は遠心ファンであることを特徴としている。
【0016】
このような構成によれば、送風機は、外部から吸い込んだ風を外周部の吹き出し口が向いている方向ヘ吹き出すことになる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、被作業部材に対して作業する作業部と、作業部を駆動する第1の動力と、作業部の動作を制御する第1の制御部と、送風機と、送風機を駆動する第2の動力と、送風機の動作を制御する第2の制御部と、を有し、第2の制御部は、第1の制御部とは独立して送風機を制御することを特徴とする動力工具である。
【0018】
このような構成によれば、作業部と送風機はそれぞれ別の制御部によって制御されるので、同時にも、いずれか一方のみでも動作する。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、第1の動力は、電力および燃焼力のいずれかであることを特徴としている。
【0020】
このような構成によれば、作業部は電力または燃焼力によって動作する。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項6または請求項7に記載の発明において、作業部は、刃と、砥石と、止め具の打ち込み動作を行う打ち込み動作機構と、のうちのいずれかであることを特徴としている。
【0022】
このような構成によれば、丸鋸、グラインダ、打込機において、被作業部材に対して作業を行っているか否かに拘わらず動作する送風機を備えることになる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の発明において、スイッチとは別の送風機スイッチを設け、第2の制御部は、送風機スイッチの入力に基づいて送風機の動作を制御することを特徴としている。
【0024】
このような構成によれば、送風機は、作業部を動作させるスイッチとは別の送風機スイッチによって作業部の動作とは独立してオンオフされる。
【0025】
請求項10に記載の発明は、請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の発明において、送風機は遠心ファンであることを特徴としている。
【0026】
このような構成によれば、送風機は、外部から吸い込んだ風を外周部の吹き出し口が向いている方向へ吹き出すことになる。
【0027】
請求項11に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、作業部は打ち込み動作機構から構成されると共に、止め具を収容するマガジンを更に有し、送風機はマガジンに取り付けられていることを特徴としている。
【0028】
このような構成によれば、送風機から吹き出す風は、マガジン表面に導かれるように吹くことになる。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の構成によると、制御部によりモータの正転または逆転が制御され、1つのモータの正転、逆転に応じて作業部または送風機のいずれかを動作させることができる。このように、動力は1系統を備えればよいので装置が大型化することを防止できる。
【0030】
請求項2の構成によると、請求項1による効果に加え、第1のワンウェイクラッチによって作業部にモータの所定方向の回転を伝達し、第2のワンウェイクラッチによって送風機に所定方向とは逆の方向のモータの回転を伝達することができる。よって、作業部と送風機は、モータの動力を効率よく利用して動作することが可能である。
【0031】
請求項3の構成によると、請求項1または請求項2による効果に加え、作業部を刃とする丸鋸、砥石とするグラインダ、止め具を打ち込む打込機などを構成することが可能である。
【0032】
請求項4の構成によると、請求項1から請求項3による効果に加え、送風スイッチを操作することによって必要に応じて適宜送風機を動作させることが可能であり、作業及び動力の効率化を図ることができる。
【0033】
請求項5の構成によると、請求項1から請求項4による効果に加え、送風の効率がよく、小型で省スペース化や配置箇所の自由度大きくすることが可能である。
【0034】
請求項6の構成によると、作業部と送風機は互いに別の動力によって駆動するので、互いに独立して制御することが可能である。作業部のみによる動作や、作業部による作業中に送風を行うこと、また、作業部が動作していない時に送風機のみを動作させることも可能である。さらに、作業部と送風機とを同時に動作させる際にパワー不足になることも防止できる。
【0035】
請求項7の構成によると、請求項6による効果に加え、電力または燃焼力のいずれか作業に適した方式の動力を採用することができる。
【0036】
請求項8の構成によると、請求項6または請求項7による効果に加え、作業部を刃とする丸鋸、砥石とするグラインダ、止め具を打ち込む打込機などを構成することが可能である。
【0037】
請求項9の構成によると、請求項6から請求項8による効果に加え、送風スイッチを操作することによって必要に応じて適宜送風機を動作させることが可能であり、作業及び動力の効率化を図ることができる。
【0038】
請求項10の構成によると、請求項6から請求項9による効果に加え、送風の効率がよく、小型で省スペース化や配置箇所の自由度大きくすることが可能である。
【0039】
請求項11の構成によると、請求項8による効果に加え、マガジン上を送風された気体が被作業部材方向に向かって流れることになり、送風機による風を効率よく利用することが可能になる。
【0040】
以上のように、本発明の電動工具及び動力工具によれば、被作業部材に対して作業を行う作業機構を動作させなくても送風機構を使用することが可能であり、送風機構の使用により塵を吹き飛ばすことができる。また、送風機構の使用時に作業機構を動作させなくてもいいので、省エネルギー化を実現できる。さらには、電動釘打機のように瞬間作動の工具においても、送風機能を実現できる。よって、工具の使い勝手や作業効率が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施の形態による電動式釘打機を示す部分透視側面図。
【図2】図1のA−A部断面を示す図。
【図3】第1の実施の形態による電動式釘打機の駆動回路を示すブロック図。
【図4】本発明の第2の実施の形態による電動式釘打機を示す部分透視側面図。
【図5】第2の実施の形態による電動式釘打機の駆動回路を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の第1の実施の形態による電動式釘打機について、図1〜図3を参照して説明する。図1に示すように、釘打機1は電動式であり、止め具である釘23を不図示の被打ち込み材に打ち込む作業を行う動力工具である。釘打機1は、外殻となるハウジング2と、ハンドル3と、電池4と、ハウジング2の打込方向である先端側に設けられたノーズ5と、マガジン6と、ファン機構110とから、主に構成されている。以下、後述するプランジャ8が移動する方向を上下方向と定義し、釘23を打撃する方向を下方向と定義して説明する。
【0043】
ハウジング2は、ナイロンまたはポリカーボネイト等の樹脂から構成されており、内部には、モータ7と、プランジャ8、バネ9等を内蔵している。
【0044】
プランジャ8は、バネ9に付勢され、通常はダンパ12に接触する最も下方の下死点に位置している。プランジャ8が、ワイア係止点16aで接続されたワイア16に牽引されて、最も上方に移動した位置を上死点という。プランジャ8は、ハウジング2の上死点側と下死点側との間で移動可能に配置されている。プランジャ8はブレード8aを有し、ブレード8a先端は、打ち込み時にはノーズ5内に画成された通路位置まで延びる。バネ9は、プランジャ8とハウジング2の後端との間に設置されている。プランジャ8とワイア16とはバネ9の伸縮方向である図中矢印方向に移動可能に、かつワイア16の径方向に回動自在に係止されている。
【0045】
ハンドル3は、ハウジング2の上側部分に設けられており、ハウジング2の側面を基端部としてハウジング2表面から延出している。ハンドル3の基端部には、トリガ10が設けられ、モータ7の駆動を制御する。トリガ10には、トリガスイッチ24が連動している。コントローラ100は、電動式釘打機1の動作を制御する回路であり、ハウジング2内に設置されている。電池4は、ハンドル3に着脱可能に設けられており、ハンドル3内に配された配線により、コントローラ100を介してモータ7に電力を供給している。
【0046】
モータ7には出力軸71が設けられており、出力軸71の一端には、第1ワンウェイクラッチ72を介してプーリ74と接続されている。第1ワンウェイクラッチは、モータ7の出力軸71が後述の減速機構11、ギヤ14、圧縮解放機構18およびドラム13を介してワイア16を巻き上げる方向に回転(以下、正転という)する時には、出力軸71の回転をプーリ74へ伝え、モータ7の出力軸71が正転とは逆の方向に回転(以下、逆転という)する時には出力軸71の回転をプーリ74へ伝えないように構成されている。減速機構11、ギヤ14および圧縮解放機構18は、プーリ74に伝えられたモータ7の正転方向の回転をドラム13に伝え、回転させる。ドラム13は、回転によりワイア16を巻き上げてプランジャ8を牽引する。プランジャ8は、ワイア16に牽引されることにより、バネ9を圧縮しながら上死点へ移動していくように構成されている。
【0047】
マガジン6は、ノーズ5とハウジング2の先端部分とに跨って設けられている。マガジン6内には釘23が束状に複数本内蔵されており、ノーズ5の通路内に釘を供給している。ブレード8aがプランジャ8の下死点側への移動により先端側に移動した際には、ブレード8a先端に押されることよりノーズ5の通路内にある釘はノーズ5先端の射出口55より射出され、被打込部材に打ち込まれる。また、ノーズ5内の通路の距離は釘長さより大きく形成され、釘23が被打込み部材と接触するまでにプランジャ8を加速するための助走区間となっている。
【0048】
次に、送風機であるファン機構110の構成について、図1と図1のA−A部断面図である図2を用いて説明する。モータ71の出力軸71の他端には、第2ワンウェイクラッチ73を介してファン機構110のファン回転部111が接続されている。第2ワンウェイクラッチ73は、モータ7の出力軸71が逆転する時に出力軸71の回転をファン回転部111へ伝え、モータ7の出力軸71が正転する時には出力軸71の回転をファン回転部111へ伝えないように構成されているので、モータ7の逆転方向の回転は、第2ワンウェイクラッチ73によりファン回転部111に伝えられる。なお、ファン機構110は、略円筒形をなし内部にファン回転部111が設けられている。ファン回転部111は複数の翼列が設置されて構成される遠心ファンであり、ファン機構110に形成された吸い込み部112から空気を吸い込み、吹き出し口113から風が出るように構成されている。ハウジング2の吸い込み部112の位置に対応する位置には吸い込み口114が設けられ、外気を吸引可能に構成されている。
【0049】
吹き出し口113は、マガジン6の平坦な表面の上端部と近接するように設置され、吹き出し口113から出た風はマガジン6の表面を通って射出口と平行な方向へ、すなわち図1の下方へ進み、粉塵を散らすことができる。吹き出し口113から風が送風される方向は釘を打ち込む方向と同一なので、作業者も意識しやすく、使いやすい。さらには、第1の実施の形態による電動釘打機1では、モータ7近傍が製品の重心となっており、ハンドル3を持っている場合、マガジン6側が図1のように下向きになることが多い。また、粉塵は床面などの低い位置にたまることが多いので、下向きに風が出ることにより、容易に作業が可能となる。
【0050】
次に、電動式釘打機1の駆動回路について、ブロック図である図3を用いて説明する。電動式釘打機1は、動力源となる電池4に、トリガスイッチ24と、制御回路102とが直列に接続されている。また、電動式釘打機1は、ブロワスイッチ115を有している。ブロワスイッチ115は、オンオフスイッチ115b、正逆転切替スイッチ115a、および制御回路102が逆転を検知するための逆転検知スイッチ115cから構成されている。正逆転切替スイッチ115aは、さらにスイッチ116a、116bより構成されている。ブロワスイッチ115を構成するこれらのスイッチは、連動して接続が切り替わるように一体で動作する。
【0051】
モータ7は、正逆転切替スイッチ115aを介してトリガスイッチ24およびオンオフスイッチ115bとFET101のドレインとの間に接続されている。モータ7は、正逆転切替スイッチ115aの開閉により回転方向が逆転するように正逆転切替スイッチ115aに接続されている。なお、図3の正逆転切替スイッチ115aの接続状態は、ブロワスイッチ115を押していない状態を示している。このとき、スイッチ115bおよびスイッチ115cが開、スイッチ116aおよびスイッチ116bは共に端子f側に接続されており、モータ7は正転する接続状態となっている。FET101のゲートは制御回路102と接続され、ソースは基準電位に接続されている。また、制御回路102には圧縮解放機構18の図示せぬ動作信号が入力されている。制御回路102は、トリガスイッチ24の動作および圧縮解放機構18からの動作信号に応じてFET101のゲートに動作信号を入力することによりFET101をオンオフし、モータ7を制御する。
【0052】
次に、第1の実施の形態による電動式釘打機1による止め具の打ち込み動作について、図1から図3を参照しながら説明する。トリガスイッチ24をオンすると、制御回路102に電池4の電圧が印加され、制御回路102によりFET101がオンして、モータ7に通電される。図3に示すように、ブロワスイッチ115が押されておらず、正逆転切替スイッチ115aの接続が端子f側に接続されてモータ7を正転させる状態である場合には、モータ7は正転し、モータ7の出力軸71は第1ワンウェイクラッチ72を介してプーリ74を回転させる。このとき、第2ワンウェイクラッチ73は空転して動力を伝えないので、ファン回転部111は回転しない。
【0053】
一方、プーリ74の回転により減速機構11と圧縮解放機構18を介してドラム13が回転し、プランジャ8がワイア16に牽引されることによりバネ9を圧縮させながら上死点方向へ移動していく。ドラム13がワイヤ16を介してプランジャ8を上死点まで巻き上げると、圧縮解放機構18の作用によりドラム13と減速機構11の接続が開放される。これにより、プランジャ8はバネ9の付勢力によって射出口55方向へ移動する。このとき、マガジン6内からノーズ5へ供給された釘23は、ブレード8aにより、被打込み部材へ打ち込まれる。これらの圧縮解放機構18の動作を動作信号により感知した制御回路102はFET101をオフさせて、モータ7を停止させる。これにより、一発の打ち込みが終了する。
【0054】
次に、第1の実施の形態による電動式釘打機1におけるブロワ動作について説明する。ブロワ動作の際には、トリガスイッチ24はオフ状態である。このとき、ブロワスイッチ115をオンすることによりファン機構110を動作させる。すなわち、ブロワスイッチ115をオンすると、まず正逆転切替スイッチ115aのスイッチ116a、116bが共に端子r側に接続されるため、図3に示す正転状態からモータ7が逆回転する状態へ切り替わる。そして、オンオフスイッチ115bと逆転検知スイッチ115cがオンし、オンオフスイッチ115bを介して制御回路102には電池電圧が印加される。このとき制御回路102には逆転検知スイッチ115cが接続されており、基準電位が入力されることによって制御回路102が逆転を検知すると、制御回路102は圧縮解放機構18の動作信号の検知をやめ、連続的にFET101をオンし続ける。このように制御回路102がFET101をオンすると、モータ7はオンオフスイッチ115b、正逆転スイッチ115aおよびFET101を介して電池4に接続され逆転方向へ回転する。
【0055】
モータ7の出力軸71が逆転すると、第2ワンウェイクラッチ73を介してファン回転部111は回転し、吸い込み口114、112から吸い込んだ空気を吹き出し口113から吹き出して風を発生させる。一方、第1ワンウェイクラッチ72は空転し、プーリ74へ動力を伝えないので、打ち込み動作は行わない。
【0056】
以上詳細に説明したように、本発明の第1の実施の形態による電動式釘打機1によれば、モータ7に第1ワンウェイクラッチ72および第2ワンウェイクラッチ73を接続する。トリガ24がオンされた場合には、正逆回転スイッチ115のスイッチ116a、116bが共にf端子に接続されているのでモータ7は正転し、第1ワンウェイクラッチ72を介してプランジャ8を移動させることにより釘23の打ち込み動作を行う。ブロワスイッチ115がオンされた場合には、正逆回転スイッチ115のスイッチ116a、116bが共にr端子に接続されるのでモータ7は逆回転し、第2ワンウェイクラッチ73を介してファン機構110を動作させる。
【0057】
以上のように電動式釘打機1によれば、トリガ24をオンしていない状態でファン機構110を動作させることができるので、節電効果があるとともに、電力をファン機構110のみに用いることができ、風量を十分確保できる。このようなファン機構110から出る風によりごみが散って、釘23を打ち込むべき場所をはっきり視認することができ、狙いを定めやすくすることができる。また、ファン機構110の吹き出し口113は、マガジン6側に向いているとともに、重心の位置がモータ7付近にあるため、電動式釘打機1を手に持った場合には、吹き出し口113が自然に被打ち込み部材方向に向きやすい。このため、ごみや塵を飛ばす作業も容易となる。さらに、吹き出し口113から吹き出した風は、マガジン6の表面によって導かれて被作業部材に容易に達することができ、効率よく送風することが可能である。
【0058】
なお、第1の実施の形態による電動式釘打機1において、プランジャ8、ワイア16、ドラム13、減速機構11、ギヤ14、圧縮解放機構18は本発明の作業部に相当し、ファン機構110は、本発明の送風機に相当する。また、正逆転切替スイッチ115aおよびコントローラ100が本発明の制御部に相当する。
【0059】
以下、本発明の第2の実施の形態による電動式釘打機300について、図4、図5を用いて説明する。第1の実施の形態と重複する部分は同一の番号を付し、構成動作についての重複説明は省略する。
【0060】
図4に示すように、電動式釘打機300においては、ファン機構120がマガジン6に取り付けられている。電動式釘打機300のその他の構成は、第1ワンウェイクラッチ72、第2ワンウェイクラッチ73、およびファン機構120の構成以外の電動式釘打機1の構成と同様である。ファン機構120は、翼列を備えた遠心ファンであるファン回転部121、吹き出し口123を有し、中央部にはファンモータ124が内蔵されている。ファンモータ124の回転によりファン回転部121が回転して、吹き出し口123から風が吹き出す。吹き出し口123は射出口55方向へ指向している。
【0061】
以下、電動式釘打機300の動作について説明する。図5のブロック図に示すように、電動式釘打機300は、コントローラ200として、制御回路202およびFET101を有している。電動式釘打機300において、動力源となる電池4と、トリガスイッチ24と、制御回路202は互いに直列に接続されている。モータ7は、トリガスイッチ24と、FET101のドレインとの間に接続されている。FET101のゲートは制御回路202と接続され、ソースは基準電位に接続されている。制御回路202には、圧縮解放機構18の図示せぬ動作信号が入力されている。制御回路202は、トリガスイッチ24の動作や圧縮解放機構18からの動作信号に応じてFET101のゲートに動作信号を入力することによりFET101をオンオフし、モータ7を制御する。
【0062】
また、ブロワスイッチ125とファン機構120は、電池4に互いに直列に接続されている。ブロワスイッチ125を押すとファンモータ124が回転してファン機構120が動作し、吹き出し口123から風が出る。この風により射出口55近傍のごみが散って、釘を打ち込むべき場所をはっきり視認することができ、狙いを定めやすくすることができる。
【0063】
以上詳細に説明したように、本発明の第2の実施の形態による電動式釘打機300によれば、ファン機構120はマガジン6上に設けられ、吹き出し口123は、電動式釘打機300の射出口55方向に向いている。トリガ24及びモータ7とは独立してブロワスイッチ125とファン機構120を設け、ブロワスイッチ125をオンすることによりファン機構120を駆動する。
【0064】
以上のように、電動式釘打機300によれば、トリガ24をオンしていない状態で、独立してファン機構120を動作させることができるので、節電効果がある。また、トリガ24のオンオフに拘わらず独立してファン機構120を動作させることができるので、作業の前に被作業部材を清浄化することも可能である。このようなファン機構120から出る風によりごみが散って、釘を打ち込むべき場所をはっきり視認することができ、狙いを定めやすくすることができる。また、ファン機構120は、マガジン6に備えられているともに、重心の位置がモータ7付近にあるため、電動式釘打機300を手に持った場合には、吹き出し口123が自然に被打ち込み部材方向に向きやすい。このため、ごみや塵を飛ばす作業も容易となる。
【0065】
なお、第2の実施の形態による電動式釘打機300において、プランジャ8、ワイア16、ドラム13、減速機構11、ギヤ14、圧縮解放機構18は本発明の作業部に相当し、ファン機構120は、本発明の送風機に相当する。また、電力が本発明の第1の動力及び第2の動力に相当し、コントローラ200が本発明の第1の制御部に相当し、モータ124が本発明の第2の制御部に相当している。
【0066】
本発明による電動工具及び動力工具は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、2つのワンウェイクラッチ、または独立のモータとスイッチを用いて止め具の打ち込み動作とブロワ動作をおこなうようにしたが、他の作業、例えば丸鋸による切削やグラインダによる研磨を行う工具において独立して動作が可能なブロワ機構を設ける際にも、本発明は適用が可能である。このように、工具の被作業部材に対する作業を行う作業部の構成については上記に限定されず、他の構成動作の工具でもよい。
【0067】
また、上記実施の形態においては、電動式釘打機を例にして説明したが、別の動力、例えば燃焼力を動力とする工具にも本発明は適用が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1:釘打機 2:ハウジング 3:ハンドル 4:電池 5:ノーズ 6:マガジン 7:モータ 8:プランジャ 8a:ブレード 9:バネ 10:トリガ 11:減速機構 13:ドラム 14:ギヤ 16:ワイア 16a:ワイア係止部 23:釘 24:トリガスイッチ 25:停止スイッチ 100:コントローラ 101:FET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
ユーザが操作するスイッチと、
前記ハウジングに設けられたモータと、
前記モータの動力により動作し被作業部材に対して作業する作業部と、
前記モータの動力により動作する送風機と、
前記モータの正転、逆転を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記スイッチの操作に応じて前記モータの正転、逆転を制御し、
前記モータの正転に応じて前記作業部または前記送風機のいずれか一方が動作し、前記モータの逆転に応じて前記作業部または前記送風機のいずれか他方が動作することを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記モータは動力を出力する駆動軸を有し、
前記作業部と前記駆動軸との間には、第1のワンウェイクラッチが介在し、
前記送風機と前記モータの駆動軸との間には、第1のワンウェイクラッチとは逆方向の回転を伝達する第2のワンウェイクラッチが介在することを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記作業部は、
刃と、砥石と、止め具の打ち込み動作を行う打ち込み動作機構と、のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項4】
前記スイッチとは別の送風機スイッチを設け、
前記制御部は、前記送風機スイッチの入力に基づいて前記送風機の動作を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項5】
前記送風機は遠心ファンであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項6】
被作業部材に対して作業する作業部と、
前記作業部を駆動する第1の動力と、
前記作業部の動作を制御する第1の制御部と
送風機と、
前記送風機を駆動する第2の動力と、
前記送風機の動作を制御する第2の制御部と、
を有し、
前記第2の制御部は、前記第1の制御部とは独立して前記送風機を制御することを特徴とする動力工具。
【請求項7】
前記第1の動力は、電力および燃焼力のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の動力工具。
【請求項8】
前記作業部は、
刃と、砥石と、止め具の打ち込み動作を行う打ち込み動作機構と、のうちのいずれかであることを特徴とする請求項6または請求項7のいずれかに記載の動力工具。
【請求項9】
前記スイッチとは別の送風機スイッチを設け、
前記第2の制御部は、前記送風機スイッチの入力に基づいて前記送風機の動作を制御することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の動力工具。
【請求項10】
前記送風機は遠心ファンであることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の動力工具。
【請求項11】
前記作業部は前記打ち込み動作機構から構成されると共に、前記止め具を収容するマガジンを更に有し、
前記送風機は前記マガジンに取り付けられていることを特徴とする請求項8に記載の動力工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−201529(P2010−201529A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47527(P2009−47527)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】