説明

電動弁

【課題】流体に含まれる異物がキャン内に侵入するのを防止して、ロータ或いは減速機構の作動に支障をきたすのを未然に防止することができる電動弁を提供する。
【解決手段】電動弁1は、弁室14及びその内部に形成された弁座62を有する弁本体10と、弁座62に接離して流体の通過流量を調整する弁体61と、ロータ及び該ロータを回転駆動するステータを有する駆動部1aと、ロータの回転を弁体61の弁座62に対する接離動作に変換する送りねじ機構1cと、弁本体10に取り付けられてロータを収容するキャン30と、弁室14とキャン30内とを連通する冷媒通路とを備えている。冷媒通路には異物侵入防止部材82が配設されているので、媒通路を通って異物がキャン30内へ侵入するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、空気調和機の冷媒の流量を制御するのに用いられる電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空気調和機、冷凍機等に組み込まれて使用される電動弁は、冷媒等の流体の流量を調整する機能を有し、通常、弁室及び弁座を備えた弁本体と、弁本体の上部に固着された有底円筒状のキャンとを備えており、キャンの内側にはロータが内蔵され、キャンの外部には中央部に挿通孔を有するステータが外嵌されている。
【0003】
図5は、公知の電動弁100の縦断面図を示している。電動弁100は、弁室121内の弁座122に離接する弁体123により冷媒の通過流量を調整する弁本体120と、弁本体120に固着され弁体123を離接させるロ−タ130を内蔵するキャン140と、キャン140に外嵌されロータ130を回転駆動するステータ143とを備えている。ロータ130とステータ143とはステッピングモータを構成している。また、弁本体120の下部及び側部には、冷媒の流出入管120a,120bが弁室121に連通して連結されている。
【0004】
弁本体120には弁室121を形成し、弁室121の下方には弁座122を形成し、上方にはガイドブッシュ126を固定し、ガイドブッシュ126との間に環状溝を形成する。キャン140との接合は、弁本体120にカシメ固着された且つロー付けされた鍔状板141の段差部にキャン140の端部を突き合わせ溶接することにより行っている。
【0005】
キャン140は有底円筒状をしており、弁本体120の上部に固着された鍔状板141に固着され、内部は気密状態に保たれている。ステータ143は磁性材により構成されるヨーク151と、このヨーク151に1ボビン52を介して巻回される上下のステータコイル153,153とから構成され、キャン140に外嵌する嵌合穴144aが形成されている。ステータ143から、ステータコイル153,153に接続された複数のリード端子154が突出しており、このリード端子154にコネクタ156が連結され、該コネクタ156に複数のリード線155が接続されている。
【0006】
ニードル弁からなる弁体123は弁軸124の下端に形成されている。弁体123を弁座122に離接させる駆動機構は、弁本体120よりロータ130方向に延出して固定され固定ねじ部125が形成される筒状のガイドブッシュ126と、該ガイドブッシュ126の固定ねじ部125に螺合する移動ねじ部131を有する弁軸ホルダ132とから構成される。
【0007】
上記固定ねじ部125はガイドブッシュ126の外周に雄ねじで構成され、移動ねじ部131は弁軸ホルダ132の内周に雌ねじとして形成されている。
【0008】
弁軸ホルダ132はガイドブッシュ126の外側に位置する下方開口の円筒形状であり、内面に移動ねじ部131が形成され、弁軸ホルダ132の中心に弁軸124の上部縮径部が嵌合してプッシュナット133により連結されている。弁体123が下端に形成されている弁軸124は、弁軸ホルダ132の中心に上下動可能に嵌挿されており、弁軸ホルダ132内に縮装された圧縮コイルばね134によって常時下方に付勢されている。
【0009】
弁軸ホルダ132とロータ130とは支持リング136を介して結合されており、支持リング136の内周孔部に弁軸ホルダ132の上部突部が嵌合し、上記突部の外周をカシメ固定してロータ130、支持リング136及び弁軸ホルダ132を結合している。
【0010】
ガイドブッシュ126には、ストッパ機構の一方を構成する下ストッパ体127が固着されており、下ストッパ体127の上方に板状の下ストッパ片127aが突設される。また、弁軸ホルダ132にはストッパ機構の他方を構成する上ストッパ体137が固着され、下方に向けて板状の上ストッパ片137aが突設され下ストッパ片127aと係合可能である。
【0011】
下ストッパ体127はガイドブッシュ126の外周に形成された螺旋溝部分126aに固着され、上ストッパ体137は弁軸ホルダ132の外周に形成された螺旋溝部分132bに固着されている。また、ガイドブッシュ126の側面には、弁室121とキャン140内の空間との均圧を図る目的で均圧孔126bが固定ねじ部125の直下部に設けられ、該均圧孔126bを通じて冷媒の流通が容易となるように構成されている。
【0012】
上記の構造において、キャン140の内部と弁室121との間をシールして、弁室121を通る冷媒等の流体がキャン140の内部にまで浸入するのを防止しようとすると、両者間に圧力差が生じ、固定ねじ部125と移動ねじ部131には上下方向に負荷が掛かり、ねじ作動部にロックが生じる可能性がある。こうしたキャン140の内部と弁室121との間の圧力差を軽減するために、例えば、弁軸124とガイドブッシュ126との間に圧力を通じさせる均圧孔を1個所又は2個所程度、形成することが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、均圧孔126bを形成すると、弁室121を流れる流体中の異物が均圧孔126bを通じてキャン140の内部に侵入するおそれがある。特に、ビル用のマルチエアコンのように、取付け工事の工事期間が長くなるときに冷媒用配管の取り付け口の封止が不十分であると、配管内にスラッジ等の異物が入り込みやすい。取付け工事終了後にエアコンを運転したときに、入り込んだ異物が冷媒流れに乗って電動弁100のキャン140の内部に侵入すると、ねじ作動部に異物が付着し、円滑なねじ作動を妨げることがある。特許文献1では、ねじ螺合部(固定ねじ部125及び移動ねじ部131)と均圧孔126bの形成位置との間に距離を取って、ねじ螺合部へのスラッジ等の異物の付着の防止を図っているが、上記問題点を確実に防止できるとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−172467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、流体に含まれる異物がキャン内に侵入して、ロータ或いは減速機構の作動に支障をきたすのを確実に防止することができる電動弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、この発明による電動弁は、弁室及びその内部に形成された弁座を有する弁本体と、前記弁座に接離して流体の通過流量を調整する弁体と、ロータ及び該ロータを回転駆動するステータを有する駆動部と、前記ロータの回転を前記弁体の前記弁座に対する接離動作に変換する送りねじ機構と、前記弁本体に取り付けられて前記ロータを収容するキャンと、前記弁室と前記キャン内とを連通する冷媒通路とを備え、該冷媒通路を通って異物が前記キャン内へ侵入するのを防止する異物侵入防止部材を配設した電動弁であって、前記送りねじ機構に内在するバックラッシュ除去のため前記弁体の周囲に巻装して配設されており且つ前記弁体を前記弁座から離れる方向に付勢するばね部材と、前記ばね部材の外側を覆うばね覆い部材とを備え、前記異物侵入防止部材は、前記ばね覆い部材の一端から前記弁体の軸方向に延びるとともに前記弁体の表面との間に微小な隙間を形成する延長ガイド部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この電動弁によれば、弁室とキャン内とを連通する冷媒通路を通ってキャン内へ異物が侵入するのを防止する異物侵入防止部材を配設したので、冷媒に含まれる異物が冷媒通路を流れることがあっても、異物侵入防止部材によってキャン内への侵入が防止され、電動弁の作動に支障を来すことを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電動弁の例を示す断面図である。
【図2】電動弁の別の例を示す部分断面図である。
【図3】本発明の電動弁の実施例を示す断面図である。
【図4】電動弁の他の例を示す断面図である。
【図5】従来の電動弁の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、電動弁の全体構造を示す断面図である。全体を符号1で示す電動弁は、励磁機能で作用しステータとロータとから成るモータを備える駆動部1aと、当該駆動部1aによる回転駆動力が入力されて歯車減速を行い減速した回転を出力するギア減速機部1bと、当該ギア減速機部1bからの減速回転をねじ作用によってねじ軸方向の変位に変換して出力する送りねじ機構部1cと、ねじ機構部1cの作動によって流体流路の開閉を行う弁本体部1dとを備えている。
【0019】
符号30は受け部材68を介して弁本体10に固着された気密容器である有頂円筒状のキャンであり、駆動部1aは、キャン30の外周部に配設されており且つボビンに巻き付けられて電動モータのステータを構成するコイル3が樹脂と一体にモールドされたモータ励磁装置2と、キャン30の内部に回転自在に支持されており且つモータ励磁装置2によって回転駆動される永久磁石型のロータ組立体8とを有している。モータ励磁装置2とロータ組立体8とは、電動モータの一例としてのステッピングモータを構成している。
【0020】
モータ励磁装置2は、板ばねにより形成された取付具5によりキャン30に対して着脱自在に嵌装される。この例では、キャン30に形成された凸部6が取付具5に形成された係合孔7に弾性的に嵌合して位置決めされている。モータ励磁装置2は、ステータを励磁するため、コイル3がコネクタ4及びリードを介して外部の電源に接続されて給電を受ける。弁本体10は、その内部に弁室14が形成されるとともに、その底部15には弁本体10の底面に開口するオリフィス16が形成されている。弁本体10には、弁室14の側面に連通するパイプ22、及びオリフィス16の下端に連通するパイプ20が固着されている。
【0021】
ギア減速機部1bは、ロータ組立体8の回転を減速する遊星歯車式減速機構(以下、「減速機構」と略す)40から成っている。減速機構40は、ロータ組立体8と一体のサンギア41、キャリア42に回転自在に支持され且つサンギア41と噛み合う複数の遊星ギア43と、弁本体10にギアケース39を介して固定支持されており且つ遊星ギア43の一部と噛み合うリングギア44と、リングギア44の歯数と僅かに歯数が異なる出力内歯ギア45とを備えている。減速機構40によって減速されたロータ組立体8の回転は、出力内歯ギア45を介して送りねじ機構1cの出力軸46に伝達される。なお、本例では減速機構40として遊星歯車式減速機構を設けたが、遊星歯車式減速機構の代わりに直列に噛み合い配置された歯車列機構であってもよい。或いは、減速機構40は必ずしも必要ではなく、ロータの回転を直接にねじ機構に入力させてもよい。なお、キャン30の上部内部には、減速機構40のシャフト47を回転支持するため、金属板加工で形成された軸受48が嵌合して取り付けられており、ロータ組立体8とリングギア44との間にはロータ組立体8を軸受48に向かって付勢する皿ばね49が配置されている。
【0022】
送りねじ機構部1cは、遊星歯車式減速機構40を介して出力軸46に伝達されたロータ組立体8の回転を、弁軸60の弁体61を弁座62に対し接離させる直線運動に変換する。送りねじ機構部1cは、弁本体10に支持されており且つ上側で出力軸46を回転自在に支持するとともに下側内周に雌ねじ部51が形成されている筒状軸受50と、筒状軸受50の雌ねじ部51に螺合する雄ねじ部53が形成されているねじ軸52とを有している。筒状軸受50は、弁本体10に形成された弁穴63の上部に嵌まり込む状態で固定支持されている。即ち、筒状軸受50が固定ねじ部であり、ねじ軸52が移動ねじ部である。出力軸46の下端に形成された凸部54は、ねじ軸52の上端に形成されている凹部55に係合しており、出力軸46の回転をねじ軸52に伝達する。出力軸46の上端はロータ組立体8の回転軸に連結固定されている。
【0023】
ねじ軸52の軸方向変位は、ボール65及びボール受け部材66を介して弁軸60へ伝達される。送りねじ機構1cにおいてねじ軸52を開弁方向へ移動させるときには、雌ねじ部51と雄ねじ部53の間のバックラッシュを除去するため、弁本体10には、弁軸60を開弁方向に付勢するコイルばね70が設けられている。
【0024】
コイルばね70を支持するため、弁室14には金属製の有底筒状のばね受け73(ばね覆い部材)が配設されている。このばね受け73は、弁軸60の外周面をその下端部を残して覆う筒状の周壁74と、その上端に外側に屈曲する態様で形成された外向きフランジ部75と、周壁74の下端に内側に屈曲し且つ弁軸60が貫通可能な孔77を残す態様で形成された内向きフランジ部76とを有している。コイルばね70は、上端部71が弁軸60の大径部67に当接しており、下端部72がばね受け73の内向きフランジ部76に当接することによって、圧縮された状態に支持されている。周壁74の外向きフランジ部75は、弁本体10の弁穴63の下端に形成されている段差部64と、弁穴63に装着された筒状軸受50の下端部との間に挟み込まれて固定されている。
【0025】
ばね受け73に圧縮状態に保持されたコイルばね70のばね力によって弁軸60は常に開弁方向(ねじ機構部1cの方向)に付勢されており、送りねじ機構1cからの力によって弁軸60を閉弁方向に押し下げるときには、コイルばね70のばね力に抗して弁軸60を下げ、弁軸60の先端に形成されている弁体61を弁座62に座着させてオリフィス16を閉じる。弁軸60の弁座62に対する位置は、ギア減速部1bによって高い分解能で位置決めできるので、弁体61とオリフィス16の間の流路面積は高精度に制御され、通過する冷媒流量を高精度で調節することができる。送りねじ機構1cを開弁方向に作動させるときには、コイルばね70のばね力によって、弁軸60はねじ軸52の上昇に追従して移動する。
【0026】
コイルばね70がそのばね力によって送りねじ機構1cを開弁方向に付勢しているので、筒状軸受50の雌ねじ部51とねじ軸52の雄ねじ部53との間に存在するガタは、筒状軸受50に対してねじ軸52が上方に寄せられることで吸収されている。閉弁の際には、弁体61が弁座62に当接したとき、雄ねじ部53からは、ねじガタを吸収する無効な行程を経ることなく直ちに反力が雌ねじ部51に伝達される。また、開弁の際には、弁体61が弁座62から離れたときに、雄ねじ部53は雌ねじ部51に追従して移動する。本実施例では、コイルばね70を弁室14内に設けたことで、コイルばねを弁室14の上方に設ける場合よりも電動弁の上下方向の寸法を小さくすることができる。
【0027】
図1に示す例においては、送りねじ機構部1cを構成している軸受筒部50の外周面は弁本体10の上部筒部の内周面に嵌合している。軸受筒部50には環状溝81とこれに連通した縦穴90とが形成されている。弁本体10の上部筒部には径方向に貫通して均圧孔80が形成されている。均圧孔80の内側開口は軸受筒部50の環状溝81及び縦穴90に臨んでおり、外側開口はキャン30内部空間に開いている。したがって、上記の環状溝81、縦穴90、均圧孔80は、弁室14側とキャン30の内部とを連通し冷媒が通過可能な流体通路の一部を形成している。なお、従来の電動弁には、弁軸60の外側にベローズを取り付けて、弁室14に導入される冷媒がキャン30内に浸入するのを防止するとともに、ベローズに作用する流体圧やベローズ自身の弾性力で弁軸60には上方向への付勢力を与えている形式のものがある。本実施例においては、高価で溶接等の工程が必要なベローズを用いておらず、冷媒は均圧孔80を通じてキャン30内への浸入を可能としている。その結果、筒状軸受50とねじ軸52とのねじ作動部に圧力差に起因した荷重が作用せず、ねじ作動部にロックが生じることがない。
【0028】
本例においては、筒状軸受50の外周面には、均圧孔80の開口が臨む位置を含んで環状溝81が形成されている。そして、環状溝81には、リング状の異物侵入防止部材82が嵌まり合う形態で配設されている。異物侵入防止の機能を果たすには、均圧孔80の開口が臨む位置にのみ異物侵入防止部材82を配置させればよいが、異物侵入防止部材82をリング状に構成することで、弁本体10と筒状軸受50とがどの角度位置で嵌合しても均圧孔80の開口が臨む位置に異物侵入防止部材82が存在することになり、組立時における位置合わせ作業負担の軽減が図られる。
【0029】
異物侵入防止部材82は、発泡金属のような、流体通過性のある多孔質体とすることが好ましい。異物侵入防止部材82をこのような多孔質体とすることで、冷媒は通過可能であるが、異物はそのフィルタ作用によって捕捉されるのでキャン30内に流入することがない。また、そのような流体通過性を備えつつ異物を捕捉するフィルタ作用を備えるものであれば、発泡金属に限ることなく、金網等のフィルタでもよい。
【0030】
電動弁の別の例が図2に示されている。図2に示す電動弁1Aにおいては、異物侵入防止部材83が均圧孔80内に配設されている。異物侵入防止部材83は、先の例と同様の発泡金属等の材料から円柱状に成形され、均圧孔80内に嵌入されている。他の構成要素は図1に示す実施例と同様であるので、同じ符号を用いることで再度の説明を省略する。
【0031】
本発明の電動弁の実施例が図3に示されている。図3に示す電動弁1Bにおいても、図1に示す例と同等の部品及び部位には同じ符号を付すことで再度の説明を省略する。電動弁1Bにおいては、ばね受け(ばね覆い部材)73bは、その下側フランジ部76から弁軸60に沿って弁体61方向に延びる延長ガイド部としてのガイド筒部78を備えている。ガイド筒部78は、弁軸60を軸方向にガイドするのに充分な長さを有しており、弁軸60の外周面とガイド筒部78の内周面との間に形成される隙間が、弁室14からキャン30の内部へ冷媒が流れる流体通路の一部を形成している。この狭い隙間から成る流体通路は、冷媒に含まれ得る異物が通過しにくくしており、送りねじ機構1cやキャン内に異物が侵入するのを防止する異物侵入防止部材としての働きをしている。ガイド筒部78は、また、弁軸60の軸方向のガイド性を向上しており、弁座62に対する弁体61の着座性(同心性)を向上している。
【0032】
図4には、電動弁の他の例が示されている。図4に示す電動弁1Cにおいても、図1に示す実施例と同等の部品及び部位には同じ符号を付すことで再度の説明を省略する。電動弁1Cにおいては、ばね受け(ばね覆い部材)73cは、その下側の絞り部84から弁軸60に沿って弁体61方向に延びる延長部としての延長筒部85を備えており、延長筒部85の最下端は外周面側に屈曲した内側フランジ部86に形成されている。内側フランジ部86と弁軸60との間には弁軸60の移動や冷媒の通過を許容する隙間87が形成されている。延長筒部85の筒状内面の径は弁軸60の外径よりも大きく、そのため、両者の間には環状スペース88が形成されている。環状スペース88内には、冷媒に含まれ得る異物を捕捉可能な円筒状の異物捕捉部材89が装着されている。異物捕捉部材89は内側フランジ部86によって支えられており、環状スペース88から脱落することはない。異物捕捉部材87は既に説明した実施例と同様に、発泡金属から形成されているが、流体通過性と異物捕捉性を備えていれば他の材料でも用いることができる。延長筒部85内に配設された異物捕捉部材87は、弁軸60のガイド性を向上させる機能も有しており、弁座62に対する弁体61の着座性を向上させている。なお、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記の各実施形態に種々の改変を施すことができる。
【符号の説明】
【0033】
1,1A,1B,1C 電動弁
1a 駆動部 1b ギア減速機部
1c 送りねじ機構 1d 弁本体部
2 モータ励磁装置 3 コイル
8 ロータ組立体
10 弁本体 14 弁室
16 オリフィス 20,22 配管
30 キャン 39 ギアケース
40 遊星歯車式減速機構
41 サンギア 42 キャリア
43 遊星ギア 44 リングギア
45 出力内歯ギア 46 出力軸
47 シャフト 48 軸受
49 皿ばね
50 筒状軸受 51 雌ねじ部
52 ねじ軸 53 雄ねじ部
60 弁軸 61 弁体
62 弁座 63 弁穴
65 ボール 66 ボール受け部材
70 コイルばね 73,73b,73c ばね受け(覆い部材)
78 ガイド筒部(延長ガイド部)
80 均圧孔 81 環状溝
82,83 異物侵入防止部材 85 延長筒部(延長部)
88 環状スペース 89 異物捕捉部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室及びその内部に形成された弁座を有する弁本体と、前記弁座に接離して流体の通過流量を調整する弁体と、ロータ及び該ロータを回転駆動するステータを有する駆動部と、前記ロータの回転を前記弁体の前記弁座に対する接離動作に変換する送りねじ機構と、前記弁本体に取り付けられて前記ロータを収容するキャンと、前記弁室と前記キャン内とを連通する冷媒通路とを備え、該冷媒通路を通って異物が前記キャン内へ侵入するのを防止する異物侵入防止部材を配設した電動弁であって、
前記送りねじ機構に内在するバックラッシュ除去のため前記弁体の周囲に巻装して配設されており且つ前記弁体を前記弁座から離れる方向に付勢するばね部材と、前記ばね部材の外側を覆うばね覆い部材とを備え、
前記異物侵入防止部材は、前記ばね覆い部材の一端から前記弁体の軸方向に延びるとともに前記弁体の表面との間に微小な隙間を形成する延長ガイド部であることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記ロータの回転を前記送りねじ機構に減速して伝達させるため、前記ロータと前記送りねじ機構との間を伝動連結する歯車列機構又は遊星歯車機構等から成るギア減速機部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電動弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−127504(P2012−127504A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−29229(P2012−29229)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【分割の表示】特願2007−122189(P2007−122189)の分割
【原出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】