説明

電動式圧着機

【課題】 圧着ダイスが直進運動する、いわゆるストレートアクションタイプのダイスの動きを自動化し、省力化、手間暇の軽減化、作業能率の向上を図る。
【解決手段】 電線1と端子2とを圧着する圧着ダイス3をモータ5で駆動する。圧着ダイス3を、圧着溝61a、63aを下面に有するクリンパー6と、このクリンパー6の下側に配置して圧着溝61a、63aに嵌入可能な圧着用突起7aを上面に有するアンビル7とを備えて形成する。このアンビル7と上記のモータ5とを、モータ5の回転力を上下方向の直線運動に変換しアンビル7を押し上げて電線1と端子2とを圧着させる動作機構14を介して接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の芯線及び被覆部と、端子とを圧着する装置に関し、更に詳しくはこの種の圧着作業を自動化できるよう形成した電動式圧着機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置としては、例えば圧着溝を下面に有するクリンパーと、上記の圧着溝に嵌入可能な圧着用突起を上面に有するアンビルとが上下に対向して配置されており、上記のアンビルは一対の操作レバーの開閉動作により上下動可能に構成され、上記一対の操作レバーの閉動作によりアンビルが上昇して圧着用突起がクリンパーの圧着溝に嵌入される構成を備えているものがある(例えば特許文献1参照)。
この従来品を使用して、電線の芯線及び被覆部と、端子とを圧着する場合は、先ず作業者は端子を所定位置にセットする。この場合、端子は、通常、アンビルより後方位置に設けられている端子位置決め保持部材の端子挿入穴に端子のコンタクト部が挿入されて位置決め保持され、端子の圧着部がアンビルの圧着用突起に載置される。次に作業者は、電線の芯線と被覆部を、端子の圧着部に挿入する。そしてこの状態で、一対の操作レバーを握り締めると、アンビルが上昇し、アンビルの圧着用突起がクリンパーの圧着溝に嵌入することによって、電線の芯線及び被覆部と、端子とが圧着される。
【特許文献1】特開平11−297446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしこの種の従来品は、上記の通り、一対の操作レバーの開閉操作によって圧着作業を行なうものであった。従って従来品によると、圧着作業に労力がかかり、作業能率が上がらない、という問題点があった。
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、提案されたものである。
従って本発明の解決しようとする技術的課題は、圧着ダイスが直進運動する、いわゆるストレートアクションタイプのダイスの動きを自動化し、省力化、手間暇の軽減化、作業能率の向上を図ることができるよう形成した電動式圧着機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような技術的手段を採る。
即ち本発明は、図1等に示されるように、電線1と端子2とを圧着する圧着ダイス3がモータ5で駆動される電動式圧着機であって、上記の圧着ダイス3が、圧着溝61a、63aを下面に有するクリンパー6と、このクリンパー6の下側に配置されて上記の圧着溝61a、63aに嵌入可能な圧着用突起7aを上面に有するアンビル7とを備えて形成され、このアンビル7と上記のモータ5とが、モータ5の回転力を上下方向の直線運動に変換しアンビル7を押し上げて電線1と端子2とを圧着させる動作機構14を介して接続されていることを特徴とする(請求項1)。
【0005】
この本発明の場合、動作機構14は、モータ5を収納した装置本体4の前面に付設されているブラケット141と、このブラケット141に横ピン142で枢着されている支持腕143と、この支持腕143の装置本体4内の内端を下方に押し下げ横ピン142を中心に支持腕143の外端を上方に回動させるカム機構144と、また支持腕143の外端に枢着されて支持腕143の外端が上方に回動すると押し上げられる垂直棒145とを備えて形成され、この垂直棒145の上端にアンビル7が接続されているのが好ましい(請求項2)。
【0006】
なぜならこれによると、動作機構14を比較的簡単な構成で、安価に実現できるからである。
【0007】
またこの本発明の場合は、アンビル7の押し上げ高さを調節するため垂直棒145と支持腕143との枢着位置が、変更自在に形成されているのが好ましい(請求項3)。
【0008】
なぜならこれによれば、端子2の種類や電線1の径に合わせてアンビル7の押し上げ高さを最適な状態に調節でき、使い勝手が良くなるからである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、このように端子の圧着部の両側を均等に押圧して電線に圧着する、いわゆるストレートアクションタイプの圧着ダイスを自動化できるよう形成しているものである。
従ってこれよれば、この種の圧着作業に係る手間暇を軽減でき、作業の能率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な一実施形態を、添付図面に従って説明する。
本発明の電動式圧着機は、図1、図2等に示されるように、電線1と端子2とを圧着する圧着ダイス3が、装置本体4に収納されたモータ5で駆動するよう形成されている。
【0011】
上記の圧着ダイス3は、圧着溝61a、63aを下面に有するクリンパー6と、このクリンパー6の下側に配置されて上記の圧着溝61a、63aに嵌入可能な圧着用突起7aを上面に有するアンビル7とを備えて形成されている。
【0012】
クリンパー6は、図5等に示されるように、後から前方に順次配置されている芯線クリンパー61、ロケータ62、及び被覆クリンパー63から構成されている。芯線クリンパー61は下面に芯線圧着溝61aを有し、前面にスプリング収容溝61bを有している板部材である。ロケータ62は、逆L字形の板部材で、上片部が芯線クリンパー61のスプリング収容溝61bの下面に保持され、リターンスプリング64がスプリング収容溝61b内に収容されている。被覆クリンパー63は、下面に被覆圧着溝63aを有している板部材である。ロケータ62の下面には、端子2(図1B参照)の中間部を圧着時に保持するための端子保持溝62aが形成されており、この端子保持溝62aは芯線圧着溝61a及び被覆圧着溝63aよりも浅く形成されている。上記芯線クリンパー61、ロケータ62、及び被覆クリンパー63は、逆U字ヘッド8の内側空間部に配置され、フロントプレート9とリヤプレート10に挟まれ、芯線クリンパー61と被覆クリンパー63を貫通する連結ピン11で逆U字ヘッド8内に固定されている。逆U字ヘッド8の前後には、フロントプレート9とリヤプレート10がねじ12で固定されている。
【0013】
またアンビル7は、図2、図5等に示されるように、上下に長い板部材であり、下端部が垂直棒145の上端とピン13(図2等参照)で接続され、圧着用突起7aがクリンパー6の圧着溝61a、63aに対向するようにして上面に形成されている。
【0014】
この実施形態に係る電動式圧着機の場合、クリンパー6の芯線圧着溝61a、端子保持溝62a、及び被覆圧着溝63aと、アンビル7の圧着用突起7aは、2種類の端子サイズのどちらにも対応できるよう、左右に2個形成されている。従って圧着作業を行う場合は、端子2の種類に合わせて、左右どちらかが選択される。
【0015】
而して上記のモータ5とアンビル7とは、図1等に示されるように、モータ5の回転力を上下方向の直線運動に変換しアンビル7を押し上げて電線1と端子2とを圧着させる動作機構14を介して接続されている。5aは、モータ5の回転軸である。また15は、この回転軸5aに接続されてモータ5の回転力を伝達するための歯車である。
【0016】
上記の動作機構14は、図1〜図4に示されるように、モータ5を収納した装置本体4の前面に付設されているブラケット141と、このブラケット141に横ピン142で枢着されている支持腕143と、この支持腕143の装置本体4内の内端を下方に押し下げ横ピン142を中心に支持腕143の外端を上方に回動させるカム機構144と、また支持腕143の外端に枢着されて支持腕143の外端が上方に回動すると押し上げられる垂直棒145とを備えて形成されている。
【0017】
上記のブラケット141は、その上部に、圧着ダイス3が起立状にネジ16で固定されている。支持腕143の内端と外端は、平行一対の2片状に形成され、内端にはローラ17が横軸18で回転自在に設けられている。カム機構144は、断面略コの字状の係合部材19と、この係合部材19の下片19aの上面(内面)に係合するカム20とを備えて形成されている。上記のローラ17は、カム20の作用で係合部材19が押し下げられたときは係合部材19の上片19bの下面(内面)に周面が当接するよう、位置決めされている。カム20は、歯車15の軸に偏心して設けられている。垂直棒145は、上端にアンビル7が接続され、下端は径が拡大されて摘み部21に形成されている。22は、支持腕143の外端を常時上方に牽引し、圧着用突起7aにセットされる端子2をクリンパー6の下面に押し付けて保持するためのコイルスプリングである。
【0018】
而して垂直棒145と支持腕143との枢着位置は、アンビル7の押し上げ高さを調節するため、変更自在に形成されている。23(図1、図2等参照)は、垂直棒145と支持腕143との枢着位置を変更するための高さ調節部材である。この高さ調節部材23は、図6に示されるように、円板状のヘッド部23aと、このヘッド部23aと同心状の大径部23bと、ヘッド部23a及び大径部23bから偏心されている小径部23cと、またヘッド部23a及び大径部23bと同心状の雄ネジ部23dとで形成されている。ヘッド部23aは、その周辺部に、回転角の確認と回転操作に使用する孔23eを、軸方向に貫通して且つヘッド部23aの周方向に一定間隔をあけて複数有して形成されている。大径部23bは、支持腕143の外端の一方の片に通されて配置される。小径部23cは、垂直棒145の板状の箇所に通されて配置される。また雄ネジ部23dは、支持腕143の外端の他方の片に通され、ナット24(図7参照)で締め付けられる。高さ調節部材23は、このように小径部23cが偏心しているため、ヘッド部23aを回すと、垂直棒145が小径部23cによって高さ調節部材23の軸心から上下方向にずらされ、これによりアンビル7の押し上げ高さが調節されるものである。
【0019】
次に本発明の作用を説明する。
1)先ず作業者は、装置本体4の前面に設けられているスイッチ25(図3参照)をオンにし、電源を入れる。次に作業者は、垂直棒145の下端の摘み部21を、コイルスプリング22の牽引力に抗して引き下げ、端子2をアンビル7の圧着用突起7aに載置し、摘み部21から手指を放す。これにより垂直棒145がコイルスプリング22で引き上げられ、端子2がクリンパー6の下面に押し当てられ、一時的に固定される。
2)次に作業者は、仮固定されている端子2の圧着部2a(図1B参照)に、電線1の先端部の芯線1a(図1B参照)及び被覆部1bを挿入する。そして電線1を指で保持したまま、装置本体4の前面に設けられている作動スイッチ26(図3参照)を入れる。
3)作動スイッチ26を入れると、モータ5が駆動し歯車15を介してカム20が回転し、係合部材19が押し下げられる(図8参照)。これにより、係合部材19の上片19bで支持腕143の内端が押し下げられ、支持腕143の内端は下方に、外端は上方に回動する。従って支持腕143の外端に枢着されている垂直棒145が押し上げられ、アンビル7が上昇する。そしてアンビル7の圧着用突起7aが、クリンパー6の芯線圧着溝61a、保持溝、及び被覆圧着溝63aに嵌入し、更にアンビル7が上昇すると、アンビル7の圧着用突起7aとクリンパー6の保持溝で端子2を保持した状態でロケータ62が上昇しながら、アンビル7の圧着用突起7aがクリンパー6の芯線圧着溝61aと被覆圧着溝63a内を上昇し、電線1の芯線1a及び被覆部1bと、端子2の圧着部2aとを圧着する。
4)本発明の場合、カム20が更に回動すると、カム20と係合部材19の下片19aとの係合が解かれる(図9参照)。従って支持腕143の外端は、上方への回動が停止し、垂直棒145には押し上げ力が働かないため、圧着作用が終了する。なおこの場合、支持腕143の外端には、コイルスプリング22の牽引力が上方に働くため、垂直棒145は降下することなく、ほぼ押し上げられた位置に保持される。従って作業者は、垂直棒145の摘み部21を引き下げることにより、圧着ダイス3から圧着済みの製品を取り出して回収する。なお作業者が、適用端子2を間違えたり、端子2や電線1を正確にセットしなかった場合は、圧着動作が工程途中で停止する。この場合は、リバースボタン27(図3参照)を押してモータ5を逆回転させ遣り直す。
5)而して端子2の大きさ等に合わせて垂直棒145の押し上げ高さを変更する場合は、先ず作業者はナット24を緩め、高さ調節部材23を任意の角度だけ回してナット24を締め直し、小径部23cの位置をずらすことにより行なう。小径部23cは、上記の通り、偏心しているため、高さ調節部材23の軸心位置より小径部23cの位置が高くなると、垂直棒145の上昇する距離が短くなり、例えば端子2が小さい場合、最適な力で圧着できる。また小径部23cの位置をずらすことにより、小径部23cの位置が高さ調節部材23の軸心位置より低くなると、垂直棒145の上昇する距離が長くなる。従ってこの場合は、例えば大きな端子2や太い電線1のとき、最適な力で圧着できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の電動式圧着機の一実施形態を示す側面図である。
【図2】同上圧着機の要部斜視図である。
【図3】同上圧着機の正面図である。
【図4】同上圧着機の要部拡大側面図である。
【図5】圧着ダイスの分解斜視図である。
【図6】高さ調節部材を示し、Aは背面図、Bは側面図、Cは正面図である。
【図7】ナットを示し、Aは正面図、BはAのB−B線断面図である。
【図8】同上圧着機の作用を説明するための要部縦断面図である。
【図9】同上圧着機の作用を説明するための要部縦断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 電線
2 端子
3 圧着ダイス
5 モータ
6 クリンパー
61a、63a 圧着溝
7 アンビル
7a 圧着用突起
14 動作機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と端子とを圧着する圧着ダイスがモータで駆動される電動式圧着機であって、上記の圧着ダイスが、圧着溝を下面に有するクリンパーと、このクリンパーの下側に配置されて上記の圧着溝に嵌入可能な圧着用突起を上面に有するアンビルとを備えて形成され、このアンビルと上記のモータとが、モータの回転力を上下方向の直線運動に変換しアンビルを押し上げて電線と端子とを圧着させる動作機構を介して接続されていることを特徴とする電動式圧着機。
【請求項2】
請求項1記載の電動式圧着機であって、動作機構が、モータを収納した装置本体の前面に付設されているブラケットと、このブラケットに横ピンで枢着されている支持腕と、この支持腕の装置本体内の内端を下方に押し下げ横ピンを中心に支持腕の外端を上方に回動させるカム機構と、また支持腕の外端に枢着されて支持腕の外端が上方に回動すると押し上げられる垂直棒とを備えて形成され、この垂直棒の上端にアンビルが接続されていることを特徴とする電動式圧着機。
【請求項3】
請求項2記載の電動式圧着機であって、アンビルの押し上げ高さを調節するため垂直棒と支持腕の外端との枢着位置が、変更自在に形成されていることを特徴とする電動式圧着機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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