説明

電動車

【課題】発電機10の出力でインホイール・モータ4を駆動制御し、必要に応じて発電機10の発電電力で蓄電池6を充電できる電動車を提供する。
【解決手段】蓄電池6から供給される電力により電動車の走行を駆動するインホイール・モータ4を備えると共に、運転者が足で踏んで回転させるペダル9と、このペダル9の回転によって発電を行う発電機10と、この発電機10の出力に応じてインホイール・モータ4を駆動制御する電動モータ速度制御手段12とを備えた電動車において、運転者の操作により、発電機10の発電電力を充電回路15を介して蓄電池6に充電する充電スイッチ14を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が足でペダルを踏んで回転させたペダルの回転速度に応じて駆動を制御する電動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転者が足でペダルを踏んで回転させたペダルの回転速度を検出し、この回転速度に応じた速度で走行するように電動モータを駆動制御する電動車が従来から開発されている(例えば、特許文献1参照。)。そして、このような電動車では、ペダルの回転速度を検出するために発電機を用いることがある。
【0003】
上記電動車は、運転者が足でペダルを踏んで回転させたときのペダルの回転力をチェーン等の伝動装置で駆動輪に伝えて駆動する自転車や電動アシスト自転車とは異なり、蓄電池から供給される電力により電動モータを回転させて駆動輪を駆動するものである。そして、運転者が足でペダルを踏んで回転させたときのペダルの回転速度を発電機の発電電圧等によって検出し、この回転速度に応じて電動モータの速度制御を行うことにより電動車の走行速度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−108881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、電動アシスト自転車であれば、蓄電池の残存容量がなくなってもペダルを漕いで走行することができるが、上記電動車の場合は、蓄電池の残存容量がなくなると、電動モータに電力を供給することができないので、駆動輪を駆動する手段がなくなり走行できなくなる。このため、上記電動車は、蓄電池の残存容量がなくなった場合に、運転者が押し歩き等して蓄電池の充電が可能な自宅等に戻る必要があるため非常に不便であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消するために、発電機の出力で電動モータを駆動制御し、必要に応じて発電機の発電電力で蓄電池を充電できる電動車を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、蓄電池から供給される電力により電動車の走行を駆動する電動モータを備えると共に、運転者が足で踏んで回転させるペダルと、このペダルの回転によって発電を行う発電機と、この発電機の出力に応じて電動モータを駆動制御する電動モータ駆動制御手段とを備えた電動車において、運転者の操作により、発電機の発電電力を充電回路を介して蓄電池に充電する蓄電池充電手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、運転者の操作により、前記蓄電池充電手段が発電機の発電電力を充電回路を介して蓄電池に充電する際の充電電力を調整する充電電力調整手段が設けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、運転者の操作により、及び/又は、自動的に、蓄電池を電動モータから切り離すと共に、発電機の発電電力を電動モータに直接供給するモータ直結手段が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、蓄電池の残存容量が少なくなったような場合に、運転者が特定の操作を行うと、蓄電池充電手段が発電機の発電電力を充電回路を介して蓄電池に供給し充電を行うので、蓄電池の残存容量のそれ以上の減少を防止したり、この残存容量を回復させることができる。従って、蓄電池の残存容量が完全になくなって電動車が出先等で走行できなくなるのを防止することができる。しかも、ペダル回転速度を検出するための発電機を兼用できるので、別途発電機を追加する必要もなくなる。
【0011】
請求項2の発明によれば、発電機の発電電力を蓄電池の充電に用いる際に、充電電力調整手段が充電電力とペダルの重さを調整できるので、その時の気分や体調に合わせて適度な乗り心地が得られる。充電電力調整手段による充電電力の調整の程度は、段階的であってもよいし、無断階で連続的に変更できるようになっていてもよい。ただし、充電電力調整手段が充電電力を抑制することによりペダルが軽くなりすぎると、この充電電力が放電電力よりも少なくなり、蓄電池の残存容量の減少を防ぐことができない場合がある。また、ペダルを踏むことにより電動車を走行させることができたとしても、緩い上り坂も上がれなかったり、加速が思うようにできない場合がある。
【0012】
請求項3の発明によれば、モータ直結手段が発電機の発電電力を電動モータに直接供給するので、運転者が足でペダルを踏むことにより効率よく電動モータを駆動させて電動車を走行させることができる。しかも、蓄電池は、電動モータから切り離されるので、この蓄電池が過放電によって損傷するのを防止することができる。モータ直結手段が発電機と電動モータを自動的に直結するのは、例えば蓄電池の保護回路によって過放電が検出されたとき等である。なお、モータ直結手段が発電機と電動モータを直結した場合、ペダルを足で踏む力は一旦電力を介して駆動力に変換されるので、エネルギの伝達効率が悪くなるが、平坦地の定速走行であれば、それほどペダルが重くなることなく走行できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであって、電動車の構成を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すものであって、電動車の速度制御部と電源供給部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態を示すものであって、電動車の電源供給部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図1〜図3を参照して説明する。
【0015】
本実施形態は、図1に示すような電動車について説明する。この電動車は、操舵輪である一輪の前輪1と駆動輪である一輪の後輪2を備えると共に、この後輪2の左右に一対の補助輪3、3を備えた四輪車である。各補助輪3は、後輪2よりも少し径の小さい従動輪であり、電動車のフレームに対して下方に付勢された状態で上下動自在に取り付けられている。
【0016】
この電動車は、後輪2の車軸に直結されたインホイール・モータ4を、荷台5の下に収納された蓄電池6からの電力供給によって駆動することにより、この後輪2を回転させるようになっている。また、運転者は、この電動車のサドル7に跨がってハンドル8を両手で握ることにより前輪1の操舵を行いながらペダル9を足で踏んで回転させる。そして、運転者がペダル9を足で踏んで回転させたときのペダル回転速度を発電機10を介して検出し、この検出したペダル回転速度に応じてインホイール・モータ4の速度制御を行うようになっている。
【0017】
インホイール・モータ4は、本実施形態ではブラシレスDCモータを用いている。また、このブラシレスDCモータが内蔵するモータ駆動回路は、蓄電池6から電力の供給を受けると共に、トルク制御電圧も入力するようになっていて、このトルク制御電圧の電圧値に比例した出力トルクを得るように駆動制御を行うようなものを用いる。
【0018】
発電機10は、本実施形態では直流発電機を用いている。この発電機10が発電した電力は、図2に示すように、ペダル回転速度検出器11に送られるようになっている。ペダル回転速度検出器11は、本実施形態では、図3に示すように、高抵抗の抵抗器11aでの電圧降下を検出する電圧検出器11bからなる。電圧検出器11bは、OPアンプ等により入力インピーダンスを高めて抵抗器11aでの電圧降下を検出する回路であり、本実施形態ではA−D変換器を用いている。従って、ペダル回転速度検出器11は、ペダル9のペダル回転速度を検出してディジタル信号として出力することになる。また、このペダル回転速度検出器11の入力インピーダンスは十分に高く、ここでの電力損失はほとんど生じない。
【0019】
上記ペダル回転速度検出器11から出力されるペダル回転速度のディジタル信号は、図2に示すように、電動モータ速度制御手段12に入力されるようになっている。また、後輪2のモータケース(ハブ部分)の円周端縁部分に対向するフレーム部分には、モータ端縁部分の磁性体の凹凸を検知して後輪2の回転を検出する電磁ピックアップップ式の近接センサである後輪回転速度検出器13が取り付けられている。そして、この後輪回転速度検出器13が検出した後輪2の後輪回転速度も、電動モータ速度制御手段12に入力されるようになっている。ただし、この後輪回転速度検出器13は、近接センサからのパルス信号を出力するだけなので、実際には、電動モータ速度制御手段12がパルス信号のパルス間隔等から後輪回転速度を検出する。
【0020】
なお、この後輪回転速度検出器13は、後輪2の車軸(インホイール・モータ4の回転軸)に直接又は伝動装置を介して取り付けた直流発電機やロータリ・エンコーダ等を用いることもできる。また、インホイール・モータ4のモータ駆動回路が回転速度を外部に出力できる場合には、この後輪回転速度検出器13に代えて、モータ駆動回路の回転速度の出力を用いてもよい。
【0021】
電動モータ速度制御手段12は、本実施形態ではマイクロコンピュータからなり、インホイール・モータ4のモータ駆動回路にトルク制御電圧を出力することにより、インホイール・モータ4の速度制御を行うものである。即ち、この電動モータ速度制御手段12は、ペダル回転速度検出器11が検出したペダル回転速度に対応する走行速度(目標となる走行速度)に、後輪回転速度検出器13が検出した後輪回転速度に対応する走行速度(実際の走行速度)が一致するように、トルク制御電圧をインホイール・モータ4のモータ駆動回路に出力するようになっている。
【0022】
上記発電機10が発電した電力は、常開接点の充電スイッチ14を介して充電回路15にも送られるようになっている。充電スイッチ14は、運転者が操作によって開閉を切り替えることができるスイッチであり、通常時は開放されている。充電回路15は、発電機10が発電した電力に基づいて蓄電池6の充電を行う回路であり、充電スイッチ14が閉じると、発電機10からの電力の供給を受けて蓄電池6の充電を行う。この充電回路15は、本実施形態では、図3に示すように、充電スイッチ14が閉じるとペダル回転速度検出器11と並列に接続され、発電機10からの電圧が変動する直流電力をDC−DCコンバータによって定電圧の直流電力に変換し、定電流回路によって蓄電池6に定電流を供給することにより充電を行う。なお、充電回路15と蓄電池6の間の整流器16は、充電電流の逆流を防止するためのものである。
【0023】
また、上記充電回路15は、図2及び図3に示すように、充電電力調整手段17によって、蓄電池6に充電を行う際の充電電力が調整されるようになっている。充電電力調整手段17は、運転者の操作によって段階的に又は無段階で連続的に充電電力を変更するものである。この充電電力調整手段17は、例えば充電スイッチ14と連動したレバーによって構成することができ、このレバーを一方に倒した場合には充電スイッチ14が開いて充電電力も0Wとなるが、このレバーを他方側に動かすと、充電スイッチ14が閉じて、他方側に移動するほど充電電力が大きくなるようにする。
【0024】
充電回路15では、上記充電電力調整手段17からの指示に応じて蓄電池6への充電電力を変更する。具体的には、例えば定電圧定電流充電において定電流の値の大きさを変更して充電電力を調整する。この充電回路15で充電電力が変化すると、図3に示す充電回路15の入力インピーダンスが変化するので、発電機10の発電電力も変化する。そして、充電電力が大きくなるほど、充電回路15の入力インピーダンスが小さくなって発電機10から流入する電流が大きくなるので、発電電力も大きくなりペダル9が重くなる。しかしながら、充電電力が大きければ、蓄電池6の残存容量の減少を防止し増加させることもできるので、この蓄電池6の残存容量がなくなって電動車が走行できなくなるのを防止することができる。
【0025】
ただし、発電機10の発電電力は常時変動するものであるため、上記充電電力調整手段17が指示する充電電力は、蓄電池6に供給する電力の絶対値ではなく、相対的な充電電力の大きさである。即ち、例えば電動車の走行状況や運転者によるペダル9の踏み方を同じにして一定期間ずつ走行した場合に、充電電力調整手段17がより大きい充電電力を指示したときの電力量(Wh)の方が大きければ足りる。
【0026】
上記発電機10が発電した電力は、図2に示すように、常開接点のモータ直結スイッチ18を介してインホイール・モータ4にも供給されるようになっている。ここで、蓄電池6からの電力は、実際には常閉接点のモータ切離スイッチ19を介してインホイール・モータ4に供給されるようになっている。そして、モータ直結スイッチ18は、このモータ切離スイッチ19と連動し、このモータ直結スイッチ18が閉じると、同時にモータ切離スイッチ19が開くようになっている。モータ切離スイッチ19が開くと蓄電池6がインホイール・モータ4から切り離され、モータ直結スイッチ18が閉じると、このインホイール・モータ4が発電機10の発電電力によって直接駆動されることになる。
【0027】
発電機10の発電電力によってインホイール・モータ4を直接駆動する場合、ペダル9を足で踏む力は一旦電力を介して駆動力に変換されるので、チェーン等の伝動装置を介して駆動する場合に比べエネルギの伝達効率が悪くなるが、平坦地の定速走行であれば走行負荷がほとんどないため、それほどペダルが重くなることなく走行することができる。
【0028】
上記モータ直結スイッチ18とモータ切離スイッチ19は、運転者の操作によって開閉するようにしてもよいし、例えば蓄電池6の保護回路が過放電を検出した場合に自動的にモータ直結スイッチ18を閉じると共にモータ切離スイッチ19を開いて、蓄電池6を保護するようにしてもよい。充電スイッチ14が閉じているときに、これらモータ直結スイッチ18が閉じてモータ切離スイッチ19が開いた場合には、この充電スイッチ14も連動して開き、蓄電池6への充電を停止することが好ましい。過放電の蓄電池6に充電を行うことは好ましいことではあるが、このような場合は電動車が蓄電池6で走行できない非常時であり、速やかに外部電源による充電が可能な場所まで発電機10の発電電力だけで走行する必要があるので、充電も行うことによりペダル9がさらに重くなり運転者に負担が掛かるのを防止すべきだからである。
【0029】
上記構成の電動車によれば、蓄電池6の残存容量が少なくなったような場合に、運転者が操作により充電スイッチ14を閉じると、発電機10の発電電力を充電回路15に送って蓄電池6の充電が行われるので、ペダル9を足で踏む際の力は重くなるが、蓄電池6の残存容量のそれ以上の減少を防止したり、この残存容量を回復させることができる。従って、蓄電池6の残存容量が完全になくなって電動車が出先等で走行できなくなるのを防止することができる。
【0030】
また、充電電力調整手段17が運転者の操作によって充電回路15の充電電力を調整できるので、例えば自宅に戻るまでに上り坂があるような場合には、この充電電力を抑制してペダル9を軽くしたり、また、例えば下り坂等でペダル9が重くても良い場合には、この充電電力を大きくして蓄電池6の残存容量の回復を促進させることができる。ただし、充電電力を抑制してペダル9を軽くした場合には、この充電電力が放電電力よりも少なくなり、蓄電池6の残存容量の減少を防ぐことができない場合がある。しかも、ペダル9を踏むことにより電動車を走行させることができたとしても、緩い上り坂も上がれなかったり、加速が思うようにできない場合がある。
【0031】
また、モータ直結スイッチ18が閉じてモータ切離スイッチ19が開くと、蓄電池6を切り離して、発電機10の発電電力をインホイール・モータ4に直接供給するので、運転者が足でペダル9を踏むことによりインホイール・モータ4を駆動させて電動車を走行させることができる。例えば蓄電池6が過放電になって、インホイール・モータ4に全く電力を供給することができず、電動車がこの蓄電池6では走行できなくなったような非常時でも、運転者の操作により、又は、例えば蓄電池6の保護回路が過放電を検出した場合に自動的に、モータ直結スイッチ18を閉じてモータ切離スイッチ19を開けることにより、運転者が足でペダル9を踏んで電動車を走行させて例えば自宅等に戻ることができる。ただし、ペダル回転速度検出器11が検出したペダル回転速度に対応する走行速度を出すための出力トルクを得るには発電機10の発電電力が足りない場合には、思い通りの走行速度が出なかったり、緩い上り坂も上がれなかったりする場合がある。
【0032】
以上のように、本実施形態では、発電機10の発電電力によって蓄電池6を充電する場合も、インホイール・モータ4を直接駆動する場合も、通常の運転時よりはペダル9が重くなったり上り坂が登れなくなる等の不都合が生じるおそれは生じる。しかしながら、これらは蓄電池6の残存容量が少なくなったり完全になくなった場合の緊急避難的なものであるため、この蓄電池6を外部電源によって充電することができる場所までの移動のために電動車を押し歩きしたり他の車両で運搬する必要がなくなるだけでも十分に有用なものとなる。
【0033】
なお、上記実施形態では、ペダル回転速度検出器11が発電機10の出力に基づいてペダル9のペダル回転速度を検出する場合を示したが、例えば発電機10の出力を直接電動モータ速度制御手段12であるマイクロコンピュータのアナログ入力端子に入力し、ここでA−D変換を行うようにすることもできるので、このペダル回転速度検出器11は必ずしも用いる必要はない。
【0034】
また、上記実施形態では、インホイール・モータ4として用いるブラシレスDCモータのモータ駆動回路がトルク制御電圧を入力して出力トルクを制御するものである場合を示したが、このような電圧値が変化するトルク制御電圧に代えて、例えばパルスのデューティ比が変化するPWM信号を入力するものであってもよく、この信号の種類は限定されない。そして、電動モータ速度制御手段12も、このようなブラシレスDCモータのモータ駆動回路に応じた信号を出力することになる。
【0035】
また、上記インホイール・モータ4として用いるブラシレスDCモータは、モータ駆動回路に入力された信号に応じて出力トルクが制御されるものに限らない。例えばブラシレスDCモータのモータ駆動回路が速度制御機能を備えている場合には、上記電動モータ速度制御手段12や後輪回転速度検出器13を用いることなく、発電機10の出力又はペダル回転速度検出器11の出力を、ペダル回転速度に対応する走行速度を指示する信号として、インホイール・モータ4のモータ駆動回路に直接送るだけでよい。
【0036】
また、上記実施形態では、電動モータ速度制御手段12をマイクロコンピュータによって構成する場合を示したが、これらの構成は任意であり、通常のディジタル回路やアナログ回路、その他の制御手段によって構成することもできる。
【0037】
また、上記実施形態では、電動モータ速度制御手段12やインホイール・モータ4における速度制御機能を備えたモータ駆動回路によって電動モータ駆動制御手段を構成する場合を示したが、この電動モータ駆動制御手段は、必ずしも速度制御を行う必要はなく、他の駆動制御を行うものであってもよい。例えば発電機10の出力又はペダル回転速度検出器11の出力をトルク制御電圧として直接インホイール・モータ4のモータ駆動回路に入力し、これによってブラシレスDCモータの出力トルクを制御するようにしてもよい。この場合、電動車は、ペダル9のペダル回転速度に応じた出力トルクによって駆動され、電動モータ駆動制御手段は、インホイール・モータ4として用いるブラシレスDCモータのモータ駆動回路によって構成される。
【0038】
また、上記実施形態では、インホイール・モータ4がブラシレスDCモータである場合を示したが、この電動モータの種類も任意である。また、このように駆動輪である後輪2の車軸に直結されたインホイール・モータ4に限らず、伝動装置を介して後輪2を駆動する他の駆動用の電動モータを用いることもできる。
【0039】
また、上記実施形態では、発電機10が直流発電機である場合を示したが、この発電機の種類は任意であり、例えば直流電力に限らず交流電力を発生するものでもよく、回転運動を電力に変換する回転−電力変換装置であればどのようなものであってもよい。さらに、上記実施形態では、発電機10の発電電圧の変化によってペダル回転速度を検出する場合を示したが、このペダル回転速度は、発電電圧に限らず、発電機10の発電電流や発電電力、発電周波数等の他の出力によって検出するものであってもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、充電スイッチ14によって発電機10と充電回路15との間の回路の開閉を切り替える蓄電池充電手段を示したが、必ずしもこのようなスイッチを用いる必要はなく、例えば、通常時は、充電電力調整手段17が充電電力を極めて0に近くし、充電回路15の入力インピーダンスを極めて高くすることにより、実質的に蓄電池6への充電を行わせないようにするものであってもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、充電電力調整手段17を用いる場合を示したが、ペダル9の重さを調整する必要がなければ、この充電電力調整手段17は不要である。この場合、充電回路15は、適宜の充電電力(一定である必要もない)で蓄電池6を充電する。
【0042】
また、上記実施形態では、モータ直結スイッチ18とモータ切離スイッチ19によるモータ直結手段を設ける場合を示したが、蓄電池6の残留容量が少なくなった場合に蓄電池充電手段を確実に用いれば、残留容量がなくなるのを防ぐことは可能であるため、このモータ直結手段は必ずしも設ける必要はない。
【0043】
また、上記実施形態で示した蓄電池6は、必ずしも化学電池に限らず、電気を蓄積し充電と放電が可能な蓄電池であればよいので、電気二重層キャパシタ等であってもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、電動車が前輪1と後輪2と左右の補助輪3、3からなる四輪車である場合を示したが、この電動車は、電動モータによって駆動される駆動輪がどこかに少なくとも1輪ある車両であればよく、例えば補助輪3、3のない二輪車や、前後二輪ずつの四輪車、前後いずれかが二輪の三輪車等、どのような車両であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の電動車は、出先等で蓄電池の残留容量がなくなるのを防いだり、この残留容量がなくなった場合でも運転者がペダルを足で踏んで走行できるので、非常時の場合に極めて有用なものである。
【符号の説明】
【0046】
1 前輪
2 後輪
3 補助輪
4 インホイール・モータ
5 荷台
6 蓄電池
7 サドル
8 ハンドル
9 ペダル
10 発電機
11 ペダル回転速度検出器
11a 抵抗器
11b 電圧検出器
12 電動モータ速度制御手段
13 後輪回転速度検出器
14 充電スイッチ
15 充電回路
16 整流器
17 充電電力調整手段
18 モータ直結スイッチ
19 モータ切離スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池から供給される電力により電動車の走行を駆動する電動モータを備えると共に、運転者が足で踏んで回転させるペダルと、このペダルの回転によって発電を行う発電機と、この発電機の出力に応じて電動モータを駆動制御する電動モータ駆動制御手段とを備えた電動車において、
運転者の操作により、発電機の発電電力を充電回路を介して蓄電池に充電する蓄電池充電手段を備えたことを特徴とする電動車。
【請求項2】
運転者の操作により、前記蓄電池充電手段が発電機の発電電力を充電回路を介して蓄電池に充電する際の充電電力を調整する充電電力調整手段が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の電動車。
【請求項3】
運転者の操作により、及び/又は、自動的に、蓄電池を電動モータから切り離すと共に、発電機の発電電力を電動モータに直接供給するモータ直結手段が設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−187479(P2010−187479A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30326(P2009−30326)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】