説明

電動送風機およびそれを用いた電気掃除機

【課題】高速回転時のブラシレスモータの軸受冷却を小型でかつ低圧損の構成で実現し、高い送風性能と信頼性を有する電動送風機およびそれを用いた電気掃除機を提供する。
【解決手段】回転軸2aを有するロータ3とロータ3外周に対向配置されたステータ4と回転軸2aの軸受5を保持しステータ4を覆うモータフレーム6とで構成されるブラシレスモータ7と、回転軸2aに固定されたインペラ8と、インペラ8の外周に通風路を形成するエアガイド9と、インペラ8を覆いエアガイド9前面に固定されたファンケース10とを備え、回転軸2aは、放熱軸11aと主軸12aとの二重構造で形成され、軸受5で発生した熱を回転軸2aの放熱軸11aへと伝え、インペラ8から流入する気流に連続的に放熱することができるため、高速回転時においても軸受5を効率よく冷却して過度な温度上昇を抑えて焼付けを防止し、小型で高い送風性能を有する電動送風機を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速回転時のブラシレスモータの軸受冷却を小型でかつ低圧損の構成で実現し、高い送風性能と信頼性を有する電動送風機およびそれを用いた電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動送風機の軸受冷却機構としては、冷却液を軸受に供給して冷却するものや、空気を用いた強制冷却が知られており、軸受の熱を回転軸に伝導させて冷却する機構も多く用いられている。(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
家庭用の電気掃除機の入力電力は限られており、より強い吸引力を得るためには電動送風機の送風性能を向上する必要がある。同時に、掃除のしやすさの視点から掃除機本体の小回りが良いことが望まれており、電動送風機を小型化する必要がある。
【0004】
電動送風機を小型化するにはインペラを高速回転させてインペラの径小化をする必要があるが、回転数の増加に伴ない、インペラのアンバランス量の影響が大きくなり、軸受にかかる荷重が増大するとともに、転動体と内輪・外輪との接触回数が増えて摩擦による軸受の温度が上昇して焼付きを起こしてしまう課題がある。
【0005】
また、モータ内部にインペラで発生した気流を通して軸受を冷却しようとすると、曲がり損失が増えて電動送風機の性能が低下してしまうため、電動送風機の性能と小型化との両立が困難である。
【0006】
図11は、特許文献1に記載された従来の軸受冷却機構を用いた送風機の断面構成を示す図である。軸受34が外嵌される有底筒状の回転軸35と、回転軸35に挿入されるパイプ36と、回転軸35の内周面とパイプ36の外周面との間に介装される螺旋状の吸排気用フィン37とを有し、回転軸35に随伴して吸排気用フィン37を回転させることにより、パイプ36の内部又はパイプ36の外周面と回転軸35の内周面との間に形成される通気路38のうちいずれか一方側から吸い込んだ冷却用の気体を他方側から排気して回転軸35及び軸受34を冷却するように構成したことを特徴とする高速回転軸35の軸受34の冷却機構を用いた送風機39が開示されている。
【0007】
図12は、特許文献2に記載された従来の軸受冷却機構を用いた高温ガス用ブロワの断面構成を示す図である。固定軸40に回転可能に設けた回転子41と、回転子41に対設された固定子42とからなるモータで固定軸40に装備したインペラ43をブロワケーシング44内で回転自在に備えたブロワ45において、インペラ43をセラミックス焼結体、耐熱合金などの耐熱材料製として回転子41に連結して、モータの回転子41の両端部においてスパイラル溝ラジアル動圧軸受部46を形成して支承すると共に、固定軸40中に冷却用の冷却パイプ47を内装したことを特徴とする高温ガス用ブロワ45が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−192265号公報
【特許文献2】特開平1−249991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の軸受冷却機構を用いた送風機の構成では、回転軸の内周面とパイプの外周面との間に螺旋状の吸排気用フィンを有しているため、ファンを回すために必要なトルクに加え、吸気用フィンを回すために必要なトルクが必要になり、高速回転時の軸受冷却は可能であるが、回転軸に必要なトルクは一般に回転数の自乗に比例して増加するため、必要とされるトルクが大幅に大きくなり、送風機の性能が落ちてしまうという課題を有していた。
【0010】
また、特許文献2に記載の従来の軸受冷却機構を用いた高温ガス用ブロワの構成では、回転軸に内装した冷却パイプの熱を放熱させるために熱交換器が必要であり、サイズが大きくなるため、家庭用の電気掃除機へ収納することが難しく、実質的に適用が困難であるという課題を有していた。
【0011】
つまり、特許文献1、2に記載の従来の軸受冷却機構では、いずれも電動送風機の性能と小型化を実現することができないという課題を有していた。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、高速回転時のブラシレスモータの軸受冷却を小型でかつ低圧損の構成で実現し、高い送風性能と信頼性を有する電動送風機およびそれを用いた電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電動送風機は、回転軸を有するロータと前記ロータ外周に対向配置されたステータと前記回転軸の軸受を保持し前記ステータを覆うモータフレームとで構成されるブラシレスモータと、前記回転軸に固定されたインペラと、前記インペラの外周に通風路を形成するエアガイドと、前記インペラを覆い前記エアガイド前面に固定されたファンケースとを備え、前記回転軸は材質の異なる放熱軸と主軸との二重構造で形成され、前記放熱軸は前記主軸の中空部に当接した状態で内装され、前記放熱軸の熱伝導率は前記主軸よりも大きく、前記放熱軸の端部は前記主軸の端部よりも突出して前記インペラの内部流路もしくはその上流に位置する構成をしている。
【0014】
これによって、ブラシレスモータを高速で駆動させた際に、インペラに流入する気流が常に主軸の端部より突出した放熱軸の周囲を通過し、また軸受の熱は内輪と当接している回転軸へと伝導するため、放熱軸の端部と軸受当接部とで温度差が生じて軸受の熱は温度の低い端部へと放熱軸内部を伝導していき、気流と接する端部周辺より放熱することができるようになり、高速回転中の軸受の温度上昇を抑え、小型で高い送風性能を有する電動送風機を実現することができる。
【0015】
また、本発明の電気掃除機は、軸受の信頼性が高く小型で高い送風性能を有する電動送風機を搭載しているので、強い吸引力を有しゴミ取れ性が良好であり、小回りの利く使い勝手がよい電気掃除機となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電動送風機は、回転軸を放熱軸と主軸の二重構造で形成し、軸受で発生した熱を回転軸の放熱軸へと伝え、インペラから流入する気流に連続的に放熱することができるため、高速回転時においても軸受を効率よく冷却して過度な温度上昇を抑えて焼付けを防止し、小型で高い送風性能を有する電動送風機を実現することができる。
また、このような電動送風機を用いた電気掃除機は、強い吸引力を有し、ゴミ取れ性が良好であり、かつ電動送風機が軽量なので、小回りが利いて使い勝手がよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態における電動送風機の一部断面図
【図2】同、電動送風機の回転軸の一部断面斜視図
【図3】同、電動送風機の展開図
【図4】同、電動送風機のインペラの一部断面斜視図
【図5】同、電動送風機を用いた電気掃除機の構成を表す断面図
【図6】本発明の第2の実施の形態における電動送風機の一部断面図
【図7】同、電動送風機の回転軸の一部断面斜視図
【図8】同、電動送風機の回転軸の一部断面斜視図
【図9】本発明の第3の実施の形態における電動送風機の一部断面図
【図10】同、電動送風機の回転軸の一部断面斜視図
【図11】従来の電動送風機の断面図
【図12】従来の電動送風機の断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の発明は、回転軸を有するロータと前記ロータ外周に対向配置されたステータと前記回転軸の軸受を保持し前記ステータを覆うモータフレームとで構成されるブラシレスモータと、前記回転軸に固定されたインペラと、前記インペラの外周に通風路を形成するエアガイドと、前記インペラを覆い前記エアガイド前面に固定されたファンケースとを備え、前記回転軸は材質の異なる放熱軸と主軸との二重構造で形成され、前記放熱軸は前記主軸の中空部に当接した状態で内装され、前記放熱軸の熱伝導率は前記主軸よりも大きく、前記放熱軸の上端部は前記主軸の上端部よりも突出して前記インペラの内部流路もしくはその上流に位置する構成とした電動送風機としたものである。
これによって、ブラシレスモータを高速で駆動させた際に、インペラが回転することによって発生する気流は、常に主軸の上端部より突出している放熱軸の上端部周囲を通過してインペラ内部へと流入するため、放熱軸の上端部の温度は低くなり、放熱軸の上端部と軸受当接部との間で温度差が生じるため、放熱軸内部に温度勾配ができて、軸受の熱は温度の低い放熱軸の上端部へと放熱軸内部を伝導していき、放熱軸の上端部周辺より放熱することができる。
これにより、高速回転中の軸受の過度な温度上昇を抑え、軸受の焼付けを防止することができる。また、軸受の熱を回転軸の放熱軸を通じて気流へ放熱させるというシンプルな軸受冷却構成であるため、熱交換器などを必要とせず、小型で高い送風性能を有する電動送風機を実現することができる。
【0019】
第2の発明は、特に第1の発明において、主軸は、軸受と当接する面に放射状の複数の孔を有し、主軸よりも熱伝導率の高い放熱体を複数の孔に充填させた構成をしているので、軸受と対向する放熱軸との間の熱抵抗が小さくなり、軸受から放熱軸に伝わる熱流量が大きくなるため、軸受の熱を放熱しやすくなり、軸受冷却をより効率的に行うことができ、軸受の信頼性を向上することができる。
【0020】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、放熱軸は、その両端部が主軸の両端部より突出し、かつその下端部がモータフレーム下端よりも突出する構成をしているので、インペラに流入する気流に接する放熱軸の上端部だけでなく、モータフレーム下端から突出した放熱軸の下端部と軸受当接部との間でも温度差が生じ、放熱軸内部に温度勾配ができて、放熱軸の両端部から放熱することができるようになる。
【0021】
第4の発明は、特に第1〜3のいずれか1つの発明において、放熱軸は、その外周面に複数の溝を有し、主軸の内周面に設けた複数の溝と互いに嵌め合う構成をしているので、放熱軸の外周面と主軸の内周面との接触面積が増えて接触熱抵抗が小さくなり、軸受からの熱流量がより大きくなるため、軸受の熱を放熱しやすくなり、軸受冷却をより効率的に行うことができる。
【0022】
第5の発明は、特に第1〜4のいずれか1つの発明において、主軸は、ロータと当接する面に放射状の複数の孔を有し、主軸よりも熱伝導率の高い放熱体を複数の孔に充填させた構成をしているので、ロータと対向する放熱軸との間の熱抵抗が小さくなり、ロータから放熱軸に伝わる熱流量が大きくなるため、ロータの熱を放熱しやすくなり、軸受だけでなくロータも冷却することが可能になり、ロータの過度な温度上昇による熱減磁を防止することができる。
【0023】
第6の発明は、特に第1〜5のいずれか1つの発明の電動送風機を搭載した電気掃除機とすることにより、強い吸引力を有しゴミ取れ性がよく、本体サイズが小さいので小回りの利く使い勝手がよい電気掃除機となる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1〜図5は、本発明の実施の形態1における電動送風機の構成を示すものである。図1は同電動送風機の一部断面図であり、図2は同電動送風機の回転軸の一部断面斜視図であり、図3は同電動送風機の展開図であり、図4は同電動送風機のインペラの一部断面斜視図であり、図5は同電動送風機を用いた電気掃除機の構成を表す断面図である。
【0026】
図1に示すように、電動送風機1aは、回転軸2aを有するロータ3とロータ3外周に対向配置されたステータ4と回転軸2aの軸受5を保持しステータ4を覆うモータフレーム6とで構成されるブラシレスモータ7と、回転軸2aに固定されたインペラ8と、インペラ8の外周に通風路を形成するエアガイド9と、インペラ8を覆いエアガイド9前面に固定されたファンケース10とを備え、回転軸2aは、図2に示すように、アルミニウム製の放熱軸11aと鋼製の主軸12aとの二重構造で形成され、主軸12aは中空部を有し放熱軸11aは主軸12aに圧入固定され、放熱軸11aの外周面は中空部に当接しており、放熱軸11aの上端部は主軸12aの上端部よりも突出し、さらにインペラ8上部よりも上流側に位置している。
【0027】
また、図3に示すように、エアガイド9は複数の案内翼13を有し、その上面にファンケース10が当接する状態で固定され、各々の案内翼13間に独立風路14が形成されており、各々の独立風路14はインペラ8外周からエアガイド9外周にかけて流路断面積が連続的に大きくなっている。
【0028】
また、図4に示すように、インペラ8は、板金製の前シュラウド15とこれに対向する後シュラウド16とで3次元翼を有するインデューサ17および複数のブレード18を挟持することで構成されている。また、図1に示すように、軸受5には摩擦トルクが少ない特徴を有するころがり軸受5を使用した。ころがり軸受5は、内輪19と外輪20を有し、その間に転動体21が介在しており、転動体21の転がりによって回転荷重を支えている。インペラ8入口先端部は、インペラ8が回転駆動可能な状態でPTFE樹脂製リング22を接触させて動的にシールされている。
【0029】
図5において、電気掃除機23は、本体吸気口24に連通した集塵室25と本体排気口26を備えた送風室27とを有する掃除機本体28と、集塵室25に本体吸気口24と気密に装着された集塵袋29と、送風室27に設置された電動送風機1aと、電動送風機1aを覆う難燃樹脂製の防音カバー30と、送風室27の上下に配置された吸音材31とから構成されている。なお、図示していないが、本体吸気口24には、ホース、延長管(図示せず)が順次接続され、延長管の先端には床面上の塵埃を吸引するノズル(図示せず)
が取りつけられている。
【0030】
以上のように構成された電動送風機1aおよびそれを用いた電気掃除機23について、以下その動作、作用を説明する。
【0031】
まず、電動送風機1aの動作について説明する。図1において、巻線32を励磁することで回転磁界が発生し、回転磁界と同期してロータ3が回転し、回転軸2aに固定されたインペラ8が回転する。インペラ8が回転することで、3次元翼と複数のブレード18によってインペラ8内部の空気がインペラ8内部の外周へと押しやられ、インペラ8内部が負圧になり、インペラ8内部へ流れ込む気流が発生する。気流はインペラ8の入口から軸方向に流入し、インデューサ17、複数のブレード18、前シュラウド15、後シュラウド16とで形成された複数の内部流路に沿って流れた後、インペラ8外周へ流出する。
【0032】
インペラ8から流出した気流は、エアガイド9に複数の案内翼13で形成された各々の独立風路14に流入し、エアガイド9外周へかけて流れる。その際、各々の独立風路14の流路断面積はインペラ8外周からエアガイド9外周にかけて大きくなるため、独立風路14を流れる気流の流速は減速されながら、動圧が静圧へと変換される。
【0033】
電動送風機1aの送風性能は、インペラ8を回転駆動するために入力した電力と、電動送風機1aが行う仕事(インペラ8が回転することで発生する真空度と流量の積で求まる空気出力)との比であらわされる。そのため、実際に使用する流量において電動送風機1aが発生する真空度(静圧)を大きくすることが、電動送風機1aの送風性能をあげる上で大変重要となる。また、電動送風機1aを小型化するためには、インペラ8を高速回転させて径小化する必要がある。従来の電動送風機1aでは50,000rpm未満で駆動させているが、更なる小型化には50,000rpm以上の高速回転が必要であり、ブラシの摺動損失がないブラシレスモータ7が適している。
【0034】
一方、回転数が増加することで、インペラ8のアンバランスが回転軸2aへ及ぼす影響が大きくなるため、回転軸2aの振れ回りが起こりやすくなって軸受5にかかる荷重が増大するとともに、転動体21と内輪19・外輪20との接触回数が増えて、摩擦によって軸受5の温度が過度に上昇して軸受5が焼付けを起こしてしまうという課題がある。
【0035】
そのため、高速回転時には、軸受5を効率よく冷却して温度上昇を抑えることが大変重要となる。一方、インペラ8からの気流をブラシレスモータ7内部に流して軸受5を冷却しようとすると、気流が曲がる曲率半径が小さく、曲がり損失が増えて電動送風機1aの性能が大幅に低下してしまうため、電動送風機1aの性能と小型化を両立するためには、軸受5の熱を効率的にブラシレスモータ7外部へ放熱できる構成が必要である。
【0036】
軸受5の温度上昇は、上述した転動体21と内輪19・外輪20との摩擦による熱と、ブラシレスモータ7内部における軸受5周辺の熱が軸受5に伝わることによって起こる。軸受5の熱は、内輪19と当接する主軸12aへと伝導し、次に放熱軸11aへと伝導する。
【0037】
インペラ8が回転することによって発生する気流は、常に主軸12aの上端部より突出している放熱軸11aの上端部周囲を通過してインペラ8内部へと流入するため、放熱軸11aの上端部の温度は低くなり、放熱軸11aの上端部と軸受5当接部との間で温度差が生じるため、放熱軸11a内部に温度勾配ができて、軸受5の熱は温度の低い放熱軸11aの上端部へと放熱軸11a内部を伝導していき、放熱軸11aの上端部周辺より放熱することができる。
【0038】
これにより、高速回転中の軸受5の過度な温度上昇を抑え、軸受5の焼付けを防止することができる。また、軸受5の熱を回転軸2aの放熱軸11aを通じて気流へ放熱させるというシンプルな軸受冷却構成であり、熱交換器などを必要とせず、インペラ8に流入する気流に対して圧損にもならないため、小型で高い送風性能を有する電動送風機1aを実現することができる。
なお、放熱軸11aに使用する材料としては、アルミニウム以外にも、銅、銀、金、黄銅などの金属がある他、ベリリア、珪素、窒化アルミなどの無機材料が考えられる。
【0039】
次に、電気掃除機23の動作について説明する。図5において、電動送風機1aのインペラ8が回転すると、集塵室25が負圧状態になり、ノズル(図示せず)から吸引された塵埃を含む気流が本気吸気口を通過して集塵室25へ流入する。集塵袋29で塵埃を濾過分離した清潔な気流は、電動送風機1aのインペラ8へ流入し、通気路に設けられた複数の風路を通過した後、防音カバー30の排気口から流出し、本体排気口26を通じて掃除機本体28外部へと放出される。電気掃除機23は、小型で送風性能の高い電動送風機1aを搭載しているため、強い吸引力を有し、ゴミ取れ性がよく、電動送風機1aの本体サイズが小さくて、小回りが利いて使い勝手がよい。また、掃除機本体28内の吸音面積や排気通路の延長を行うことで、運転音の小さな電気掃除機23にすることも可能である。
【0040】
以上のように、本実施の形態においては、回転軸2aをアルミニウム製の放熱軸11aと鋼製の主軸12aとの二重構造とし、高速回転時の軸受5の熱を放熱軸11aへ伝導させて、放熱軸11aの上端部周辺からインペラ8に流入する気流へ放熱させる構成とすることで、放熱軸11aの上端部と軸受5当接部との間に温度差を発生させて熱伝導を促進し絶えず軸受5を冷却することができるため、軸受5の過度な温度上昇を抑え、軸受5の焼付けを防止することができる。
【0041】
(実施の形態2)
図6、図7は、本発明の実施の形態2における電動送風機1bの構成を示すものである。図6は同、電動送風機1bの一部断面図であり、図7は同、電動送風機1bの回転軸2bの一部断面斜視図である。なお、実施の形態1と同一要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0042】
図6、図7において、電動送風機1bの回転軸2bは、軸受5との当接面に放射状に複数の孔を設けた鋼製の主軸12bの中空部内に高温のアルミニウムを流し込み、主軸12bの中空部と全ての放射状の孔にアルミニウムを充填させたダイキャスト成形で作製された二重構造を有している。複数の孔に充填されたアルミニウムの外周面は主軸12bの外周面と略同一面を有し、軸受5の内輪19が当接している。また、放熱軸11bの両端部が主軸12bの両端部より突出し、放熱軸11bの上端部はインペラ8上部より突出した位置にあり、一方、放熱軸11bの下端部はモータフレーム6下端より突出した構成をしている。なお、放射状に設けられた複数の孔に充填されたアルミニウムを簡易的に説明するため、以下では、放熱体33と呼ぶことにする。
【0043】
以上のように構成された電動送風機について、以下その動作、作用を説明する。
【0044】
まず、電動送風機1bの動作について説明する。図6において、巻線32を励磁することで回転磁界が発生し、回転磁界と同期してロータ3が回転し、回転軸2bに固定されたインペラ8が回転する。インペラ8が回転することで、3次元翼と複数のブレード18によってインペラ8内部の空気がインペラ8内部の外周へと押しやられ、インペラ8内部が負圧になり、インペラ8内部へ流れ込む気流が発生する。気流はインペラ8の入口から軸方向に流入し、インペラ8の複数の内部流路に沿って流れた後、インペラ8外周へ流出する。
【0045】
軸受5の温度上昇は、転動体21と内輪19・外輪20との摩擦による熱と、ブラシレスモータ7内部における軸受5周辺の熱が軸受5に伝わることで起こる。放熱体33はアルミニウムであるため、主軸12bに比べて熱伝導率が大きく、軸受5の熱は軸受5の内輪19と当接している複数の放熱体33を伝導して放熱軸11bへと伝わる。
【0046】
インペラ8が回転することによって発生する気流は、常にインペラ8上部より突出している放熱軸11bの上端部周辺を通過してインペラ8内部へ流入するため、放熱軸11bの上端部の温度は低くなり、放熱軸11bの上端部と軸受5当接部とで温度差が生じる。また、放熱軸11bの下端部はモータフレーム6下端より突出して常温の空気に触れているため、軸受5当接部よりも温度は低く、放熱軸11bの下端部と間で温度差が生じる。
【0047】
これにより、放熱軸11bの内部において、両端部と軸受5当接部との間に温度勾配が生じて、軸受5の熱が放熱軸11b内部を伝導して両端部からインペラ8に流入する気流および空気中へと放熱される。放熱軸11bの上端部の周辺は、インペラ8に流入する気流によって絶えず強制冷却されるため、モータフレーム6下端より突出している放熱軸11bの端部よりも温度が低くなるため、軸受5の熱の大半は、放熱軸11bの端部から気流へと放熱されることになる。軸受5と放熱軸11bとの間には放熱体33が存在するため、軸受5と対向する放熱軸11bとの間の熱抵抗が大幅に小さくなり、軸受5から放熱軸11bに伝わる熱流量が大きくなるので、軸受5の熱を放熱しやすくなる。
【0048】
これにより、高速回転中の軸受5およびロータ3の過度な温度上昇を抑え、高速回転中の軸受5の過度な温度上昇を抑え、軸受5の焼付けを防止して軸受5の信頼性を向上することができる。また、軸受5の熱を回転軸2bの放熱軸11bを通じて放熱させるというシンプルな軸受冷却構成であり、熱交換器などを必要とせず、インペラ8に流入する気流に対して圧損にもならないため、小型で高い送風性能を有する電動送風機1bにすることができる。
【0049】
以上のように、本実施の形態においては、回転軸2bをアルミニウム製の放熱軸11bと鋼製の主軸12bとの二重構造とし、軸受5と対向する主軸12bに放射状に設けられた複数の孔に熱伝導率の高い放熱体33を充填させたことにより、軸受5と対向する放熱軸11bとの間の熱抵抗を小さくして軸受5から放熱軸11bに伝わる熱流量を大きくして軸受5の温度上昇をさらに抑え、軸受5の信頼性を向上することができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、放熱軸11bと主軸12bの当接面が円筒状である回転軸2bを用いた電動送風機1bの事例で説明したが、図8に示すように、軸方向に溝形状を設けて二重構造にした回転軸2cでもよく、放熱軸11cの外周面と主軸12cの内周面との接触面積が増えて接触熱抵抗が小さくなり、軸受5からの熱流量がより大きくなるため、軸受5の熱を放熱しやすくなり軸受冷却をより効率的に行うことができる。
【0051】
(実施の形態3)
図9、図10は、本発明の実施の形態3における電動送風機1cの構成を示すものである。図9は同、電動送風機1cの一部断面図であり、図10は同、電動送風機1cの回転軸2dの一部断面斜視図である。なお、実施の形態1、2と同一要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図9、図10において、電動送風機1cの回転軸2dは、軸受5およびロータ3との当接面に放射状に複数の孔を設けた鋼製の主軸12dの中空部内に高温加熱したアルミニウムを流し込み、主軸12dの中空部と全ての放射状の孔にアルミニウムを充填させたダイキャスト成形で作製された二重構造を有している。複数の放射状の孔に充填されたアルミ
ニウムの外周面は主軸12dの外周面と略同一面を有し、軸受5の内輪19およびロータ3が当接している。以下では、複数の放射状の孔に充填されているアルミニウムを簡易的に説明するため、放熱体33と呼ぶことにする。
【0053】
以上のように構成された電動送風機について、以下その動作、作用を説明する。
【0054】
まず、電動送風機1cの動作について説明する。図9において、インペラ8が回転することで、3次元翼と複数のブレード18によってインペラ8内部の空気がインペラ8内部の外周へと押しやられ、インペラ8内部が負圧になり、インペラ8内部へ流れ込む気流が発生する。気流はインペラ8の入口から軸方向に流入し、インペラ8の複数の内部流路に沿って流れた後、インペラ8外周へ流出する。
【0055】
放熱体33はアルミニウムであるため、主軸12dに比べて熱伝導率が大きく、軸受5の熱は軸受5の内輪19と当接している複数の放熱体33を伝導して放熱軸11dへと伝わる。また、高速回転するロータ3においても渦電流による発熱が起こるが、軸受5と同様、ロータ3の熱はロータ3と当接している放熱体33を伝導して放熱軸11dへと伝わる。
【0056】
インペラ8が回転することによって発生する気流は、常にインペラ8上部より突出している放熱軸11dの上端部周辺を通過してインペラ8内部へ流入するため、放熱軸11dの上端部の温度は低くなり、放熱軸11dの上端部と軸受5当接部、ロータ3当接部とで温度差が生じる。また、放熱軸11dの下端部はモータフレーム6下端より突出して常温の空気に触れているため、軸受5当接部、ロータ3当接部よりも温度は低く、放熱軸11dの下端部と間で温度差が生じる。
【0057】
これにより、放熱軸11dの内部において、両端部と軸受5当接部、ロータ3当接部との間に温度勾配が生じて、軸受5およびロータ3の熱が放熱軸11d内部を伝導して両端部からインペラ8に流入する気流および空気中へと放熱される。放熱軸11dの上端部の周辺はインペラ8に流入する気流によって絶えず強制冷却されるため、モータフレーム6下端より突出している放熱軸11dの端部よりも温度が低くなるため、軸受5およびロータ3の熱の大半は、放熱軸11dの端部から気流へと放熱されることになる。
【0058】
軸受5およびロータ3と放熱軸11dとの間には放熱体33が存在するため、軸受5およびロータ3と対向する放熱軸11dとの間の熱抵抗が大幅に小さくなり、軸受5およびロータ3から放熱軸11dに伝わる熱流量が大きくなるので、軸受5およびロータ3の熱を放熱しやすくなる。これにより、高速回転中の軸受5およびロータ3の過度な温度上昇を抑え、軸受5の焼付けとロータ3の熱減磁を防止してブラシレスモータ7の信頼性を向上することができる。
【0059】
また、軸受5およびロータ3の熱を回転軸2dの放熱軸11dを通じて放熱させるというシンプルな冷却構成であり、熱交換器などを必要とせず、インペラ8に流入する気流に対して圧損にもならないため、小型で高い送風性能を有する電動送風機1cにすることができる。
【0060】
以上のように、本実施の形態においては、回転軸2dをアルミニウム製の放熱軸11dと鋼製の主軸12dとの二重構造とし、軸受5およびロータ3と対向する主軸12dに放射状に設けられた複数の孔に熱伝導率の高い放熱体33を充填させたことにより、軸受5およびロータ3と放熱軸11dとの間の熱抵抗を小さくして軸受5から放熱軸11dに伝わる熱流量を大きくして軸受5だけでなくロータ3の熱も効率的に放熱しやすくなり、ブラシレスモータ7の信頼性を向上することができる。
なお、上述した各実施の形態1〜3の構成は、これに限定されるものではなく、必要に応じて適宜組み合わせて構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明にかかる電動送風機は、回転軸を放熱軸と主軸の二重構造で形成し、軸受で発生した熱を回転軸の放熱軸へと伝え、インペラから流入する気流に連続的に放熱することができ、高速回転時においても軸受を効率よく冷却して過度な温度上昇を抑えて焼付けを防止し、小型で高い送風性能を有する電動送風機を実現することができるため、家庭用は勿論のこと、業務用の電気掃除機に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1a,1b,1c 電動送風機
2a,2b,2c,2d 回転軸
3 ロータ
4 ステータ
5 軸受
6 モータフレーム
7 ブラシレスモータ
8 インペラ
9 エアガイド
10 ファンケース
11a,11b,11c,11d 放熱軸
12a,12b,12c,12d 主軸
13 案内翼
14 独立風路
19 内輪
20 外輪
21 転動体
22 樹脂製リング
23 電気掃除機
32 巻線
33 放熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するロータと前記ロータ外周に対向配置されたステータと前記回転軸の軸受を保持し前記ステータを覆うモータフレームとで構成されるブラシレスモータと、
前記回転軸に固定されたインペラと、
前記インペラの外周に通風路を形成するエアガイドと、
前記インペラを覆い前記エアガイド前面に固定されたファンケースとを備え、
前記回転軸は、材質の異なる放熱軸と主軸との二重構造で形成され、
前記放熱軸は、前記主軸の中空部に当接した状態で内装され、
前記放熱軸の熱伝導率は、前記主軸よりも大きく、前記放熱軸の上端部は前記主軸の上端部よりも突出して前記インペラの内部流路もしくはその上流に位置する構成とした電動送風機。
【請求項2】
前記主軸は、軸受と当接する面に放射状の複数の孔を有し、前記主軸よりも熱伝導率の高い放熱体を前記複数の孔に充填させた請求項1に記載の電動送風機。
【請求項3】
前記放熱軸は、その両端部が前記主軸の両端部より突出し、かつその下端部がモータフレーム下端よりも突出する構成とした請求項1または2に記載の電動送風機。
【請求項4】
前記放熱軸は、その外周面に複数の溝を有し、前記主軸の内周面に設けた複数の溝と互いに嵌め合う構成とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項5】
前記主軸は、ロータと当接する面に放射状の複数の孔を有し、前記主軸よりも熱伝導率の高い放熱体を前記複数の孔に充填させた請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電動送風機を搭載した電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−57286(P2013−57286A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195809(P2011−195809)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】