説明

電圧制御型液晶フィルタを用いた照明装置

【課題】電圧制御型液晶フィルタを用いた照明装置において、調色の切り替りを速くすると共に、安全性を向上する。
【解決手段】照明装置10は、光源19と電圧制御型液晶フィルタ11とを備える。フィルタ11は、透明基板121と、その上に設けられる透明電極122と、その上に設けられる配向膜123と、を有するフィルタ用基板12を、配向膜123同士が対向するように重ねて、配向膜123相互の隙間に色素13を混合した液晶14を充填して成る。フィルタ11は、そのフィルタ11に充電された電荷を放電する抵抗部15を備えた。これにより、フィルタ11に充電された電荷が抵抗部15によって放電される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収分光特性の異なる二色性色素を含む液晶が透明電極付の透明基板間に充填され、透明電極に印加する電圧によって調色制御される電圧制御型液晶フィルタを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光学フィルタと、光源と、を備えた照明装置にあって、光学フィルタとして、波長域及び分子配列に応じて吸収分光特性の異なる二色性色素が混合された液晶が透明電極付の透明基板間に挟設されて成る液晶セルを用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。図5は、このような照明装置の光学フィルタの構成を示す。光学フィルタ50は、偏光フィルタ51と、少なくとも一つの液晶セル52a、52bとを備え、各液晶セル52a、52bは、二色性色素53(以下、色素という)が混合された液晶54を挟み込むように並置された透明電極55付の透明基板56を備える。液晶54と色素53は、制御回路57から透明電極55に印加される駆動電圧に応じて配向し、色素53の分子配列が変化する。そのため、光学フィルタ50への入射光58は、それによる色温度が制御された照明光59とされる。この液晶セル52a、52bは、駆動電圧によって調色制御される電圧制御型の液晶フィルタである。
【0003】
しかしながら、上述したような液晶セル52a、52bは、いわゆる液晶シャッタと異なり、透明電極55が連続する1枚で形成され、ワンセルとしてのサイズ(対角長)が大きく、例えば125mm程度にもなる。このため、電圧制御型の液晶セル52a、52bは、キャパシタ成分が大きく、印加する駆動電圧を切り替えた場合に、透明電極55に電荷が残存し、調色の切り替りが遅れる。また、制御回路57の動作時に液晶セル52a、52bのみを取り外した際に、大きなキャパシタ成分に電荷が充電された状態が保持され、不安全である。
【特許文献1】特開2004−61828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決するものであり、電圧制御型液晶フィルタを用いた照明装置において、調色の切り替りを速くすると共に、安全性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、透明基板と、前記透明基板上に設けられる透明電極と、前記透明電極上に設けられる配向膜と、を有するフィルタ用基板を、前記配向膜同士が対向するように重ねて、前記配向膜相互の隙間に色素を混合した液晶を充填して成る電圧制御型液晶フィルタと、光源と、を備え、前記光源からの光が前記電圧制御型液晶フィルタによって調色制御される照明装置において、前記電圧制御型液晶フィルタは、該フィルタに充電された電荷を放電する抵抗部を備えたものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の照明装置において、前記抵抗部は、前記対向する透明電極間に配置されているものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、電圧制御型液晶フィルタに充電された電荷が抵抗部によって放電されるので、電荷が残存する期間が短くなり、調色の切り替りが速くなる。また、電荷が確実に放電されるので、安全性が向上する。
【0008】
請求項2の発明によれば、抵抗部が透明電極間に配置されるので、電圧制御型液晶フィルタの透明電極のキャパシタに見合った抵抗を容易に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る照明装置10を図1乃至図3を参照して説明する。図1(a)は本実施形態の照明装置10を示し、図1(b)は同照明装置10の電圧制御型液晶フィルタ11(以下、フィルタという)の電気的な接続を示し、図1(c)はフィルタ11の断面構成を示す。図1(a)に示すように、照明装置10は、フィルタ11と、光源19とを備える。光源19は、交流又は直流等の電力で点灯される。フィルタ11は、光源19からの光がフィルタ11を透過するように配設される。図1(b)に示すように、フィルタ11は、対を成すフィルタ用基板12を有する。図1(c)に示すように、フィルタ用基板12は、透明基板121と、透明基板121上に設けられる透明電極122と、透明電極122上に設けられる配向膜123とを有する。フィルタ11は、フィルタ用基板12を、配向膜123同士が対向するように重ねて、スペーサ16と配向膜123相互の隙間に色素13を混合した液晶14が充填される。フィルタ11は、そのフィルタ11に充電された電荷を放電する抵抗部15を備える。
【0010】
透明基板121は、透光性を有する絶縁物等から成る基板であり、例えば、ガラス基板である。透明電極122は、液晶14の配向を調節する電界を発生する電極であり、例えば、酸化インジウムスズが用いられる。配向膜123は、樹脂等から成る薄い膜であり、その表面に液晶14を配向するための配向処理が施される。配向処理は、例えば、ローラ状の樹脂繊維を配向膜123上の一方向に摩擦するラビング処理である。対向する配向膜123相互の隙間は、隙間に分散されるスペーサ粒子・柱(図示せず)と共に外周のスペーサ16によって設定される。透明電極122は、電極ピン17a、17bを端部に有し、電極ピン17a、17bを介して制御回路18に接続される。制御回路18は、フィルタ11を調色制御するための電気回路であり、透明電極122に駆動電圧を供給する制御電源181と、駆動電圧の印加を入切するスイッチSWとを備える。
【0011】
色素13は、波長域及び分子配列に応じて吸収分光特性の異なる二色性色素であり、固有の分子構造に起因する吸光ピークを持ち、長波長域から短波長域にかけて吸収分光特性が連続的に増加するものや、短波長域から長波長域にかけて吸収分光特性が連続的に増加するもの等がある。なお、吸収分光特性とは、各々の物質が有する波長ごとの光の吸収特性を言う。一般的な二色性色素としては、アゾ系色素、アントラキノン系色素等が挙げられ、本実施形態においては、例えば、退色性が少ない蛍光性ベンゾチアジアゾール系二色性色素が用いられる。液晶14は、ネマティック液晶、コレステリック液晶、スメクティック液晶のいずれを用いてもよく、スメクティック液晶の一種である強誘電性液晶を用いてもよい。
【0012】
フィルタ11は、対向する透明電極122と、それらの間に充填されている色素13及び液晶14とによって、等価的に平行板キャパシタを構成する。平行板キャパシタのキャパシタ成分(キャパシタンス)は、平行板電極の面積に略比例するので、フィルタ11は、ワンセルのサイズが大きい程、そのキャパシタ成分は大きい。
【0013】
抵抗部15は、対向する透明電極122間に接続された高抵抗材料である。高抵抗材料は、例えば、導電性ポリマー(導電性高分子)である。図2(a)(b)は、抵抗部15に用いられる導電性ポリマーの例を示す。図2(a)はポリチオフェン誘導体、図2(b)は「自己ドープ型」ポリイソチアナフテン誘導体(いずれもティーエーケミカル株式会社製)である。抵抗部15は、このような導電性ポリマーを、例えば、スペーサ16の内面に塗布して構成される。
【0014】
次に、上記のように構成された照明装置10の動作を図1(b)(c)及び図3(a)(b)を参照して説明する。図1(b)(c)はスイッチSWがONの場合、図3(a)(b)はスイッチSWがOFFの場合を示す。図1(b)に示すように、スイッチSWがONにされると、電極ピン17a−17b間に制御電源181から矩形波交流の駆動電圧が印加される。図1(c)に示すように、対向する透明電極122間に駆動電圧によって電界が発生し、細長い分子構造の液晶14及び色素13は、電界方向に配向して、フィルタ用基板12に対して垂直に立ち上がる。そのため、色素13による光吸収は少なくなり、フィルタ11の光の透過率は高い状態が保たれる。このとき、フィルタ11は、駆動電圧によって電荷が充電される。
【0015】
図3(a)に示すように、スイッチSWがOFFにされると、駆動電圧は電極ピン17a−17b間に印加されない。図3(b)に示すように、フィルタ11に充電されていた電荷が抵抗部15によって放電され、対向する透明電極122間の電界が消滅する。そのため、細長い分子構造の液晶14及び色素13は、配向膜123に対して平行に配向し、色素13は、その長軸方向に振動する偏光を強く吸収する。従って、例えば、長波長域に対する吸収分光特性を有する色素13を含むフィルタ11は、透過光の色温度を増加させ、他方、短波長域に対する吸収分光特性を有する色素13を含むフィルタ11は、透過光の色温度を減少させる。すなわち、照明装置10において、フィルタ11の調色がスイッチSWによって切り替わる。
【0016】
このように、本実施形態の照明装置10は、制御回路18のスイッチSWをONからOFFにしたとき、フィルタ11に充電された電荷が抵抗部15によって放電されるので、電荷が残存する期間が短くなり、調色の切り替りが速くなる。また、制御回路18の動作時にフィルタ11のみを取り外した際に、フィルタ11の大きなキャパシタ成分に充電された電荷が確実に放電されるので、電極ピン17a,17b等の充電部に誤って手を触れた場合の安全性がより向上する。
【0017】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る照明装置を図4を参照して説明する。図4は本実施形態の照明装置におけるフィルタ21の断面構成を示す。本実施形態の照明装置は、第1の実施形態における抵抗部15を設けることに代えて、液晶14に溶解された導電性ポリマーを抵抗部25として用いるようにした。
【0018】
対向するフィルタ用基板12間に充填される液晶14には、導電性ポリマーが溶解されている。この導電性ポリマーは、高抵抗材料であり、対向する透明電極122間を高抵抗で接続することになり、フィルタ21に充電された電荷を放電する抵抗部25として機能する。導電性ポリマーは、例えば、ポリチオフェン誘導体、又は「自己ドープ型」ポリイソチアナフテン誘導体である(図2(a)(b)参照)。なお、抵抗部25は、配向膜123を介して透明電極122と電気的に接続されるが、配向膜123は薄い膜であり、電気的な接続は確保される。
【0019】
ここで、対向する透明電極122間のキャパシタ成分をC、透明電極122間の抵抗部25による抵抗をRとすると、キャパシタ成分Cは透明電極122の面積に略比例し、抵抗Rはその面積に略反比例する。このため、透明電極122に充電された電荷の放電の時定数をTとすると、T=C×Rであるので、時定数Tは、透明電極122の面積に関わらない。一方、抵抗Rは、液晶14に溶解される導電性ポリマーの濃度に依存する。従って、時定数Tは、導電性ポリマーの濃度の増減によって調節可能であり、所望の時定数Tが得られる導電性ポリマーの濃度は、透明電極122の大きさに関わらずフィルタ21に適用される。
【0020】
このように、本実施形態の照明装置は、第1の実施形態と同様に、フィルタ21に充電された電荷が抵抗部25によって放電されるので、調色の切り替りが速くなり、フィルタ21に手を触れた場合の安全性が向上する。また、透明電極122に充電された電荷の放電の時定数は、透明電極122の面積に関わらないので、フィルタ21の透明電極122のキャパシタに見合った抵抗を容易に設定することができる。
【0021】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、抵抗部15として、固定抵抗器或いは可変抵抗器又は半固定抵抗器を電極ピン17a−17b間に外付けしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る照明装置の構成図、(b)は同照明装置における電圧制御型液晶フィルタの駆動電圧印加時の接続図、(c)は同フィルタの駆動電圧印加時の断面図。
【図2】(a)(b)は同フィルタの抵抗部に用いられる導電性ポリマーの例の構造式。
【図3】(a)は同フィルタの駆動電圧無印加時の接続図、(b)は同フィルタの駆動電圧無印加時の断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る照明装置における電圧制御型液晶フィルタの断面図。
【図5】従来の電圧制御型液晶フィルタを用いた照明装置の構成図。
【符号の説明】
【0023】
10 照明装置
11、21 電圧制御型液晶フィルタ
12 フィルタ用基板
121 透明基板
122 透明電極
123 配向膜
13 色素
14 液晶
15、25 抵抗部
19 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、前記透明基板上に設けられる透明電極と、前記透明電極上に設けられる配向膜と、を有するフィルタ用基板を、前記配向膜同士が対向するように重ねて、前記配向膜相互の隙間に色素を混合した液晶を充填して成る電圧制御型液晶フィルタと、光源と、を備え、前記光源からの光が前記電圧制御型液晶フィルタによって調色制御される照明装置において、
前記電圧制御型液晶フィルタは、該フィルタに充電された電荷を放電する抵抗部を備えたことを特徴とする電圧制御型液晶フィルタを用いた照明装置。
【請求項2】
前記抵抗部は、前記対向する透明電極間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電圧制御型液晶フィルタを用いた照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−48907(P2010−48907A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211130(P2008−211130)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】