電圧変換装置
【課題】昇圧コンバータの昇圧比を大きくすることが困難なこと。
【解決手段】スイッチング素子Saがオンとなることで、入力電圧VinがコイルW1に印加され、コイルW1を鎖交する直流磁束(磁束φ1)が漸増することでコア20にエネルギが蓄えられる。スイッチング素子Saがオフとなる場合、コイルW1には、出力電圧Voutと入力電圧Vinとの差圧が印加されるため、コイルW1を鎖交する直流磁束は漸減する。ここで、スイッチング素子Saがオフであって且つスイッチング素子Sbがオンとなる場合、コイルW1,W3の直列接続体に上記差圧が印加されるようになる。このため、この期間における直流磁束の漸減速度を他の期間と比較して小さくすることができる。
【解決手段】スイッチング素子Saがオンとなることで、入力電圧VinがコイルW1に印加され、コイルW1を鎖交する直流磁束(磁束φ1)が漸増することでコア20にエネルギが蓄えられる。スイッチング素子Saがオフとなる場合、コイルW1には、出力電圧Voutと入力電圧Vinとの差圧が印加されるため、コイルW1を鎖交する直流磁束は漸減する。ここで、スイッチング素子Saがオフであって且つスイッチング素子Sbがオンとなる場合、コイルW1,W3の直列接続体に上記差圧が印加されるようになる。このため、この期間における直流磁束の漸減速度を他の期間と比較して小さくすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電圧の大きさを変換して出力電圧として出力する電圧変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車などで2次電池(バッテリ)を利用したモータ駆動装置が普及するようになり、バッテリの電圧を、モータ駆動装置が求める電圧に昇圧する昇圧DCDCコンバータが広く用いられるようになっている。この種の昇圧DCDCコンバータには、小型・軽量化と高昇圧比の二つが強く求められる。
【0003】
小型・軽量化が重要なのは、車載環境においては限られたスペースに装置を収める必要があるからである。また高昇圧比が重要なのは、電気自動車等のモータでは動作領域が高速回転から低速回転まで広く存在するためである。広い動作領域でのモータ駆動を実現するためには低圧から高圧まで広い幅で発生する逆起電圧に打ち勝つ電圧をモータに印加する必要があるため、逆起電圧に応じて印加電圧を大きく変更できなくてはならないこととなる。一方、一般に昇圧コンバータにおいては低昇圧比の実現は容易である一方、高昇圧比の実現は困難であることが多いため、広範囲な駆動電圧を生成する上では、高昇圧比をいかに実現するかが問題となる。以下、これについて、図14に示す周知のDCDCコンバータを用いて説明する。
【0004】
図14に示される昇圧DCDCコンバータは、バッテリ10に並列接続されたリアクトルLおよびスイッチング素子SWの直列接続体と、直列接続体の接続点から出力用コンデンサ12へと進む方向を順方向とするダイオードDとを備えて構成されている。このコンバータの昇圧動作は、次のようなものとなる。
【0005】
まずスイッチング素子SWをオン状態とすることで、リアクトルLにエネルギを蓄える。ここで、リアクトルLを流れる電流は、インダクタンスLと入力電圧Vinとを用いて、Vin/Lの速度で漸増する。その後、スイッチング素子SWをオフ状態とすることで、リアクトルLに蓄えられたエネルギがダイオードDを介して出力用コンデンサ12に出力される。この際、リアクトルLを流れる電流は、出力電圧Vout等を用いて、|Vin−Vout|/Lの速度で漸減する。ここで、スイッチング素子SWのオン・オフの一周期に対するオン時間の時比率Dを用い、スイッチング素子SWの一周期におけるリアクトルLの電流の漸増量と漸減量とが一致するとして「D・Vin/L+{(1−D)・(Vin−Vout)/L}=0」が成立する。そしてこれにより、出力電圧Voutが「Vin/(1−D)」に定まる。
【0006】
この場合、理論的には、時比率Dを大きくすることで、出力電圧Voutをいくらでも大きくすることができるものの、実際には、出力電圧Voutを大きくするほど効率が低下する。これは、時比率Dが大きくなるほど、リアクトルLに蓄えられたエネルギの出力期間に対するスイッチング状態の切替期間の割合が大きくなるためである。このため、上記昇圧DCDCコンバータを用いる場合、出力電圧を大きくすることには大きな制約がある。
【0007】
そこで従来、たとえば下記特許文献1に見られるように、リアクトルに加えて、3つのコイルを有するトランスを追加することで、高昇圧比を実現するものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−95146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ただし、上記従来技術には、小型・軽量化に関して次のような問題がある。
【0010】
まず第1に、先の図14に示した周知のコンバータに比べて、トランスが追加されるという問題である。一般に電力変換装置を構成する電子部品の体格・重量の大部分は、コンデンサやリアクトルのような受動部品が占める。したがって、受動部品であるトランスの追加は、必然的に無視できない体格増加を生み出し、小型・軽量化を阻む問題となる。
【0011】
第2に、トランスの3つのコイルのうちの1つに大きなターン数が要求されることである。すなわち、たとえば時比率D=0.5付近で先の図14に示した周知のコンバータの2倍の昇圧比を得るためには、上記コイルのターン数を、他のコイルのターン数の2倍とする必要がある。これにより、トランスに周回されるターン線が増加し、トランスの磁心の体格増加になるのみならず、コイルの銅損が増加し電力変換効率が低下することから、トランスを放熱する強力な冷却器が必要となり、冷却器の体格増加にもつながりかねない。
【0012】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、入力電圧の大きさを変換して出力電圧として出力する新たな電圧変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0014】
請求項1記載の発明は、入力電圧の大きさを変換して出力電圧として出力する電圧変換装置において、前記入力電圧が印加される端子および前記出力電圧が印加される端子のうちの一対の端子であって且つ、前記入力電圧、前記出力電圧、ならびに前記入力電圧および前記出力電圧の差圧の3つの電圧のうちのいずれか1つの電圧である第1電圧を一対の端子間の差圧とする一対の第1電圧印加用端子と、前記入力電圧が印加される端子および前記出力電圧が印加される端子のうちの一対の端子であって且つ、前記入力電圧、前記出力電圧、ならびに前記入力電圧および前記出力電圧の差圧の3つの電圧のうちの前記第1電圧以外のいずれか一方の電圧である第2電圧を一対の端子間の差圧とする一対の第2電圧印加用端子と、互いに磁気結合されて且つ互いに直列接続された一対のコイルのうちの一方のコイルの両端に前記第1電圧印加用端子を介して前記第1電圧を印加するに際し、前記一対のコイルの接続点を介して前記一対のコイルの一方および他方間に電流が流れることを回避する分離手段と、前記一対のコイルの直列接続体の両端に前記第2電圧印加用端子を介して前記第2電圧を印加する結合手段とを備え、前記一方のコイルに第1電圧を印加する期間および前記一対のコイルに前記第2電圧を印加する期間の一対の期間について、そのいずれか一方の期間において前記一方のコイルを鎖交する直流磁束を増加させ、他方の期間において前記直流磁束を減少させるように設定し、前記一対のコイルを2組備えて且つ、それぞれの組についての前記一方のコイルを第1コイル、第2コイルとした場合、前記他方のコイルが、前記2組によって共有される第3コイルであり、前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交して且つ磁心によって案内されたループ経路と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交して且つ磁心によって案内されたループ経路として、互いに相違するものが存在することを特徴とする。
【0015】
上記直流磁束を増加させる期間にループ経路に蓄えられたエネルギは直流磁束を減少させる期間に外部に放出される。こうした現象を利用した電圧変換回路では、直流磁束の増加量と減少量とが等しいという関係に基づき、出力電圧の大きさが定まる。ここで、直流磁束の増加速度や減少速度は、第1電圧や第2電圧の絶対値に加えて、電圧が印加されるコイルのターン数に応じて変化する。上記発明では、この点に鑑み、分離手段と結合手段とを備えることで、直流磁束を増加させる期間の少なくとも一部の期間と減少させる期間の少なくとも一部の期間とで、上記直流磁束を変化させるために電圧が印加されるコイルのターン数を変化させる。これにより、直流磁束の増加速度や減少速度の調節の自由度を向上させることができ、ひいては出力電圧を調節するための自由度を向上させることができる。
【0016】
さらに、上記発明では、一対のコイルを少なくとも2組備え、それら2組の他方のコイルを第3コイルとして共有化した。これにより、2組のコイルのそれぞれによって生じるリップルを互いに相殺するような設定も可能なことから、部品点数の増加を抑制しつつも、1組の場合と比較して電流のリップルを低減することを容易とすることなどができる。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記一対のコイルに前記第2電圧が印加されることで前記一対のコイルに電流が流れる場合、前記一対のコイルのそれぞれによって誘起される磁束についての前記一対のコイルの双方を鎖交するループ経路における方向が互いに等しくなるように設定したことを特徴とする。
【0018】
第2電圧を印加することで一対のコイルの双方に電流を流すに際し、上記方向が互いに逆となる場合、一対のコイルの両端に電圧を印加することによって生じるループ経路内の磁束変化は、一対のコイルよりもターン数を減少させた単一のコイルに第2電圧を印加した際に生じる磁束変化と同一となる。これは、第1電圧の印加時には一方のコイルを利用して、また、第2電圧の印加時には一対のコイルの合計ターン数よりも小さいターン数のコイルを利用して、それぞれ直流磁束を変化させるのと等価となる。このため、用途によっては、ターン数を稼ぐために多数の巻線が必要となるおそれがある。これに対し、上記発明では、第1電圧の印加時には一方のコイルによって、また、第2電圧の印加時には一対のコイルの合計のターン数を有したコイルを利用して、それぞれ直流磁束を変化させるため、余分にターン数を稼ぐ必要がなく、各コイル材料の消費量を低減しやすい。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記第1コイルに前記第1電圧を印加した場合に前記第1コイルに生じる磁束が前記第3コイルを鎖交する方向と、前記第2コイルに前記第1電圧を印加した場合に前記第2コイルに生じる磁束が前記第3コイルを鎖交する方向とが逆となるように設定したことを特徴とする。。
【0020】
上記発明では、第1コイルおよび第3コイルの双方を鎖交するループ経路と、第2コイルおよび第3コイルの双方を鎖交するループ経路とについて、これら双方を構成する磁心を一体とする場合等において、磁心を小型化することができる。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記結合手段によって前記第2コイルおよび前記第3コイルに前記第2電圧が印加されて且つ前記第1コイルに前記第1電圧が印加される状態と、前記結合手段によって前記第1コイルおよび前記第3コイルに前記第2電圧が印加されて且つ前記第2コイルに前記第1電圧が印加される状態とを有することを特徴とすることを特徴とする。
【0022】
第1コイルに第1電圧が印加される際に、第2コイルおよび第3コイルに第2電圧が印加される場合、第1コイルに流れる電流は、第1コイルのターン数や第1電圧のみからは定まらず、第3コイルを流れる電流の影響を受ける。このためたとえば、第1コイルに第1電圧を印加することで第1コイルを鎖交する直流磁束が漸増する場合において、第3コイルに流れる電流によって誘起される磁束が第1コイルを鎖交する方向を直流磁束と逆方向とするなら、第1コイルに流れる電流を増加させ、ひいては入力エネルギの蓄積速度を増大させる設定も可能となる。またたとえば第1コイルおよび第3コイルに第2電圧を印加することで第1コイルを鎖交する直流磁束が漸増する場合、第3コイルに流れる電流によって誘起される磁束が第1コイルを鎖交する方向を直流磁束と同一方向とするなら、第1コイルに流れる電流を減少させ、ひいては入力エネルギの蓄積速度を減少させることが容易となる。
【0023】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記分離手段および前記結合手段は、前記第1コイルおよび前記第3コイルの接続手段であって且つ前記第1コイルから前記第3コイルへの電流の流れを許容して且つ逆方向の電流の流れを阻止する第1整流手段と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの接続手段であって且つ前記第2コイルから前記第3コイルへの電流の流れを許容して且つ逆方向の電流の流れを阻止する第2整流手段と、前記第1整流手段の出力側から前記第2電圧印加用端子への電流の流れを許容して且つ逆方向の電流の流れを阻止する第3整流手段と、前記第2整流手段の出力側から前記第2電圧印加用端子への電流の流れを許容して且つ逆方向の電流の流れを阻止する第4整流手段と、前記第1コイルおよび前記第1電圧印加用端子間を開閉する第1コイル用開閉手段と、前記第2コイルおよび前記第1電圧印加用端子間を開閉する第2コイル用開閉手段と、を備えることを特徴とする。
【0024】
請求項6記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記分離手段および前記結合手段は、前記第1コイルおよび前記第3コイル間を電気的に開閉する第1開閉手段と、前記第2コイルおよび前記第3コイル間を電気的に開閉する第2開閉手段と、前記第3コイルの一方の端部および前記第2電圧印加用端子の間を開閉する第3開閉手段と、前記第3コイルの他方の端部および前記第2電圧印加用端子間を開閉する第4開閉手段と、前記第1コイル経由で前記第1電圧印加用端子のうち低電位側から高電位側へと電流が流れることを許容して且つ逆方向に流れることを阻止する第1コイル用整流手段と、前記第2コイル経由で前記第1電圧印加用端子のうち低電位側から高電位側へと電流が流れることを許容して且つ逆方向に流れることを阻止する第2コイル用整流手段と、を備えることを特徴とする。
【0025】
請求項7記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記分離手段および前記結合手段は、前記第1コイルおよび前記第3コイル間を電気的に開閉する第1開閉手段と、前記第2コイルおよび前記第3コイル間を電気的に開閉する第2開閉手段と、前記第3コイルの一方の端部および前記第2電圧印加用端子の間を開閉する第3開閉手段と、前記第3コイルの他方の端部および前記第2電圧印加用端子間を開閉する第4開閉手段と、前記第1コイルおよび前記第1電圧印加用端子間を開閉する第1コイル用開閉手段と、前記第2コイルおよび前記第1電圧印加用端子間を開閉する第2コイル用開閉手段と、を備えることを特徴とする。
【0026】
請求項8記載の発明は、請求項3〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路とのそれぞれは、磁心を備えて構成されて且つ、他の部分と比較して透磁率の低い箇所を備えることを特徴とする。
【0027】
直流磁束を増加させることでエネルギを蓄えて且つ、直流磁束を減少させることでエネルギを放出する磁心には、大きなエネルギを蓄えることが要求されることから、磁気飽和を生じやすい。上記発明では、この点に鑑み、透磁率の低い箇所を備えた。
【0028】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記第1コイルおよび前記第3コイルを鎖交するループ経路を構成する磁心と、前記第2コイルおよび前記第3コイルを鎖交するループ経路を構成する磁心とが一体的に形成され、前記透磁率の低い部分は、前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路と前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路との共通部分以外の部分に構成されていることを特徴とする。
【0029】
たとえば、第1コイルを鎖交する直流磁束が増加する際にこの磁束が第3コイルを鎖交する方向と、第2コイルを鎖交する直流磁束が増加する際にこの磁束が第3コイルを鎖交する方向とが逆に設定されている場合等には、上記共通部分において磁束は相殺されるため、ここに透磁率が低い部分を設けたとしても、蓄えることのできるエネルギを大きくすることが困難である。上記発明では、こうした点に鑑み、上記設定とした。
【0030】
請求項10記載の発明は、請求項3〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記第1コイルおよび前記第2コイルのターン数が互いに等しく設定されており、前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路とについて、それらの磁気抵抗を同一としたことを特徴とする。
【0031】
上記発明では、第1コイルを鎖交する直流磁束と第2コイルを鎖交する直流磁束との対称性の実現や、第1コイルを流れる電流と第2コイルを流れる電流との対称性の実現が容易となる。
【0032】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明において、前記第1コイルへの前記第1電圧印加用端子による前記第1電圧の印加期間と、前記第2コイルへの前記第1電圧印加用端子による前記第1電圧の印加期間とを同一として且つ、前記第1コイルへの前記第2電圧印加用端子による前記第2電圧の印加期間と、前記第2コイルへの前記第2電圧印加用端子による前記第2電圧の印加期間とを同一としたことを特徴とする。
【0033】
上記発明では、第1コイルおよび第2コイルのそれぞれに流れる電流を同一のものとすることができる。また、第1コイルを鎖交する直流磁束が増加する際にこの磁束が第3コイルを鎖交する方向と、第2コイルを鎖交する直流磁束が増加する際にこの磁束が第3コイルを鎖交する方向とが逆に設定されている場合等には、第3コイルを鎖交する磁束を交流磁束とすることができるため、磁心のこの部分を小型化することも可能となる。
【0034】
請求項12記載の発明は、請求項11記載の発明において、第1コイルへの前記第1電圧印加用端子による前記第1電圧の印加期間と、前記第2コイルへの前記第1電圧印加用端子による前記第1電圧の印加期間との位相をπだけずらすことを特徴とする。
【0035】
上記発明では、第1コイルを鎖交する直流磁束および第2コイルを鎖交する直流磁束のそれぞれの変化速度の絶対値を極力低減でき、ひいては磁心による電力損失を低減することができる。また、上記発明では、第1コイルの磁束と第2コイルの磁束との合成磁束の変化を極力低減することができるため、電流のリプルを低減することも可能となる。
【0036】
請求項13記載の発明は、請求項3〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路を構成する磁心と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路を構成する磁心とが一体的に形成されていることを特徴とする。
【0037】
上記発明では、上記一対のループ経路を構成する磁心を一体的に形成することで、磁気部品の小型化を図ることができる。
【0038】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の発明において、前記磁心は、前記第1コイル、前記第2コイルおよび前記第3コイルを鎖交しないループ経路であって且つ、一対のコイルを鎖交するループ経路をさらに備え、該一対のコイルは、それらを鎖交する前記ループ経路上における方向および大きさが互いに等しい磁束を誘起することを特徴とする。
【0039】
上記発明では、電圧変換処理用のコイルの磁心と、それ以外の別の処理を行う一対のコイルの磁心とを一体的に形成することで、磁気部品の小型化を図ることができる。
【0040】
請求項15記載の発明は、請求項14記載の発明において、前記磁心は、コイルを鎖交しないループ経路であって且つ、前記第1コイル、前記第2コイルおよび前記第3コイルを挟むループ経路を構成することを特徴とする。
【0041】
上記発明では、前記第1コイル、前記第2コイルおよび前記第3コイルを挟むループ経路に、磁気シールドの機能を持たせることができる。
【0042】
請求項16記載の発明は、請求項3〜8,10〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路を構成する磁心と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路を構成する磁心とが、各別の磁心であることを特徴とする。
【0043】
上記発明では、一対の磁心をトロイダルコア等によって構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるスイッチング制御を示すタイムチャート。
【図3】同実施形態にかかる昇圧動作を示す回路図。
【図4】第2の実施形態にかかるコンバータを示す回路図。
【図5】第3の実施形態にかかるコンバータを示す回路図。
【図6】第4の実施形態にかかるコンバータを示す回路図。
【図7】第5の実施形態にかかるコンバータを示す回路図。
【図8】同実施形態にかかるスイッチング制御を示すタイムチャート。
【図9】第6の実施形態にかかるシステム構成図。
【図10】同実施形態にかかるスイッチング制御を示すタイムチャート。
【図11】第7の実施形態にかかるシステム構成図。
【図12】上記実施形態にかかる変形例を説明するための図。
【図13】上記各実施形態の変形例にかかるコンバータを示す回路図。
【図14】従来のコンバータを示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる電力変換装置を車載高電圧バッテリの電圧を変換する電力変換装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0046】
図示される高電圧バッテリ10は、車載主機に電力を供給するものであり、たとえば端子電圧が100V以上となるものである。非絶縁型のコンバータCNVは、高電圧バッテリ10の端子電圧(入力電圧Vin)を変換して出力用コンデンサ12の端子電圧(出力電圧Vout)として出力するものである。なお、コンバータCNVの実際の入力電圧は、高電圧バッテリ10に並列接続された平滑コンデンサ14の端子電圧となる。ここで平滑コンデンサ14は、高電圧バッテリ10からコンバータCNVまでの配線が長い場合等において、入力電圧の変動を抑制するための手段である。なお、図中、接地の記号は、車体ボディとは絶縁された高電圧システム系の基準電位であってもよい。
【0047】
本実施形態にかかるコンバータCNVは、平滑コンデンサ14(高電圧バッテリ10)の正極側および負極側(接地側)の一対の端子を入力電圧が印加される入力端子としており、出力用コンデンサ12の正極側および負極側(接地側)の一対の端子を出力電圧が印加される出力端子としている。以下、コンバータCNVの構成について詳述する。
【0048】
平滑コンデンサ14の正極側には、一対のコイルW1,W2が接続されており、コイルW1およびコイルW2のそれぞれは、スイッチング素子Saおよびスイッチング素子Sbのそれぞれを介して接地されている(負極側の入力端子および出力端子に接続されている)。また、コイルW1およびコイルW2のそれぞれは、ダイオードD1,D3およびダイオードD2,D4のそれぞれを介して出力用コンデンサ12の正極側に接続されている。また、コイルW1は、ダイオードD1を介してコイルW3の一方の端子に接続されており、コイルW2は、ダイオードD2を介してコイルW3の他方の端子に接続されている。
【0049】
コイルW1,W2,W3には、磁心(コア20)が鎖交している。コア20は、互いに平行な3本の磁心(足21,22,23)と、これらの両端部にそれぞれ接続される接続部24,25とを備えるEEコアである。詳しくは、接続部24のうち足22よりも図中左側の部分がコイルW1を鎖交し、右側の部分がコイルW2を鎖交しており、コイルW3には、コア20の足22が鎖交している。
【0050】
上記コア20の足21,23のそれぞれには、コア20よりも透磁率が低い低透磁率部材Lμが挟み込まれている。ここで、低透磁率部材Lμは、たとえば樹脂やプラスチックで形成すればよい。一方、上記足21,23は、互いに同一形状、同一寸法であり、各足21,23の低透磁率部材Lμも同一形状、同一寸法である。これは、コイルW1およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路と、コイルW2およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路との磁気抵抗を等しくするための設定である。また、コイルW1の巻数(ターン数N1)とコイルW2のターン数N2とを、互いに同一(ターン数N)としている。なお、ターン数とは、コイルの鎖交磁束をコイル内の磁束で割った値である。
【0051】
制御装置30は、操作信号msa,msbのそれぞれをスイッチング素子Sa,Sbのそれぞれに出力することで、これらスイッチング素子Sa,Sbを操作し、昇圧処理を行う。図2に、本実施形態にかかるスイッチング制御を示す。
【0052】
詳しくは、図2(a1)および図2(a2)は、操作信号msaの推移を示し、図2(b1)および図2(b2)は、操作信号msbの推移を示す。また、図2(a1)および図2(b1)は、各スイッチング素子Sa,Sbが1度ずつオン操作される周期Tに対する各スイッチング素子Sa,Sbがオンとなる時間の比率(時比率D)を「0.5」以下とする場合であり、図2(a2)および図2(b2)は、時比率Dを「0.5」よりも大きくする場合である。ちなみに、本実施形態では、スイッチング素子Saとスイッチング素子Sbとで時比率Dを互いに等しく設定している。また、本実施形態では、スイッチング素子Saとスイッチング素子Sbとを交互にオン操作することで、昇圧処理を行う。
【0053】
以下、図3を参照しつつ、時比率Dが0.5以下である場合における時比率Dと出力電圧Voutとの関係を導く。なお、図3において、磁束φ1,φ2,φ3は、図に示す方向を正と定義している。このため、下記の式(c1)が成立する。
【0054】
φ1=φ2+φ3 …(c1)
図3(a)は、スイッチング素子Saがオン且つスイッチング素子Sbがオフとなる状態を示す。この場合、コイルW1に入力電圧Vinが印加されることで、図中、破線にて示すように、正極側の入力端子(平滑コンデンサ14の端子)、コイルW1およびスイッチング素子Saの経路で電流が流れる。これにより、コイルW1を鎖交する磁束φ1は、入力電圧Vinに比例しコイルW1のターン数N1に反比例しつつ漸増する。
【0055】
磁束φ1が漸増すると、コイルW3を鎖交する磁束φ3についても漸増する。これにより、レンツの規則により、コイルW3には、この磁束φ3の増加を妨げる向きに電流を流そうとする起電力が生じる。このため、ダイオードD2,D3がオン状態となり、図中、一点鎖線にて示すように、正極側の入力端子(平滑コンデンサ14の端子)、コイルW2、ダイオードD2、コイルW3、ダイオードD3、および正極側の出力端子(出力用コンデンサ12の端子)の経路で電流が流れる。なお、この際、コイルW2に流れる電流によって生じる磁束とコイルW3に流れる電流によって生じる磁束とは、コイルW2およびコイルW3を鎖交するループ経路(足22,23および、接続部24,25のうち足22,23間に対応する部分を備えて構成される経路)において同一方向となるように設定されている。なお、ここでいう「コイルW3に流れる電流によって生じる磁束」とは、図示される磁束φ3とは逆向きの磁束のことである。
【0056】
ここで、上述したようにコイルW1,W2のターン数N1,N2が共通のターン数Nであることに鑑み、また、コイルW3のターン数N3を用いると、以下の式が成立する。
【0057】
Ndφ1/dt=Vin …(c2)
−N3dφ3/dt+Ndφ2/dt=−Vout+Vin …(c3)
上記の式(c1)〜(c3)により、以下の式が得られる。
【0058】
dφ1/dt=Vin/N …(c4)
dφ2/dt={−Vout/(N+N3)}+Vin/N …(c5)
dφ3/dt=Vout/(N+N3) …(c6)
図3(b)は、スイッチング素子Sa,Sbの双方がオフとなる状態を示す。この場合、対称性より、コイルW3に電流は流れない。そして、コイルW1には、図中、破線にて示すように、正極側の入力端子(平滑コンデンサ14の端子)、コイルW1、ダイオードD1、ダイオードD3、および正極側の出力端子(出力用コンデンサ12の端子)の経路で電流が流れる。また、コイルW2には、図中、一点鎖線にて示すように、正極側の入力端子(平滑コンデンサ14の端子)、コイルW2、ダイオードD2、ダイオードD4、および正極側の出力端子(出力用コンデンサ12の端子)の経路で電流が流れる。
【0059】
この場合、以下の式が成立する。
【0060】
dφ1/dt=dφ2/dt=(−Vout+Vin)/N …(c7)
dφ3/dt=0 …(c8)
図3(c)は、スイッチング素子Sbがオン且つスイッチング素子Saがオフとなる状態を示す。この場合、コイルW2に入力電圧Vinが印加されることで、図中、一点鎖線にて示すように、正極側の入力端子(平滑コンデンサ14の端子)、コイルW2およびスイッチング素子Sbの経路で電流が流れる。これにより、コイルW2を鎖交する磁束φ2は、入力電圧Vinに比例しコイルW2のターン数N2に反比例しつつ漸増する。
【0061】
磁束φ2が漸増すると、コイルW3を鎖交する磁束φ3は漸減する。これにより、レンツの規則により、コイルW3には、この磁束φ3の減少を妨げる向きに電流を流そうとする起電力が生じる。このため、ダイオードD1,D4がオン状態となり、図中、破線にて示すように、正極側の入力端子(平滑コンデンサ14の端子)、コイルW1、ダイオードD1、コイルW3、ダイオードD4、および正極側の出力端子(出力用コンデンサ12の端子)の経路で電流が流れる。なお、この際、コイルW1に流れる電流によって生じる磁束とコイルW3に流れる電流によって生じる磁束とは、コイルW1およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路において同一方向となるように設定されている。なお、ここでいう「コイルW3に流れる電流によって生じる磁束」とは、図示される磁束φ3と同じ向きの磁束のことである。
【0062】
ここで、上述したようにコイルW1,W2のターン数N1,N2が共通のターン数Nであることに鑑み、また、コイルW3のターン数N3を用いると、以下の式が成立する。
【0063】
Ndφ2/dt=Vin …(c9)
N3dφ3/dt+Ndφ1/dt=−Vout+Vin …(c10)
上記の式(c1)、(c9)、(c10)により、以下の式が得られる。
【0064】
dφ1/dt={−Vout/(N+N3)}+Vin/N …(c11)
dφ2/dt=Vin/N …(c12)
dφ3/dt=−Vout/(N+N3) …(c13)
ここで、エネルギ保存則より、周期TにおいてコイルW1を鎖交する直流磁束に蓄えられるエネルギと直流磁束から放出されるエネルギとが等しくなることに鑑みれば、周期Tの間で磁束φ1の変動量がゼロとなることから、以下の式が成立する。
【0065】
DVin/N
+D[{−Vout/(N+N3)}+Vin/N]
+(1−2D)(−Vout+Vin)/N
=0 …(c14)
以上より、「N3/N=n」として以下の式が導かれる。
【0066】
Vout/Vin=1+[D(1+2n)/{(1+n)−D(1+2n)}]
…(c15)
次に、時比率Dが0.5よりも大きい場合について、時比率Dと出力電圧Voutとの関係を導出する。
【0067】
スイッチング素子Sa,Sbの双方ともオン状態となる場合、コイルW1を流れる電流の経路は、図3(a)に示したものとなり、コイルW2を流れる電流の経路は、図3(c)に示したものとなることから、上記の式(c2)、(c12)が成立する。ちなみに、この場合、コイルW3に電圧が印加されないため、「dφ3/dt=0」である。
【0068】
以上より、周期Tの間で磁束φ1の変動量がゼロとなることに鑑みれば、以下の式が成立する。
【0069】
DVin/N+(1−D)[{−Vout/(N+N3)}+Vin/N]=0
…(c17)
したがって、以下の式が成立する。
【0070】
Vout/Vin=(1+n)/(1−D) …(c18)
上記(c15)、(c18)に示す昇圧比(Vout/Vin)は、先の図14に示した周知の昇圧チョッパ回路の昇圧比よりも大きくなっている。これは、コイルW3を利用することで、コイルW1,W2を鎖交する直流磁束を漸増させる期間において漸増させるために利用されるコイルのターン数と、同直流磁束を漸減させる期間の少なくとも一部の期間において漸減させるために利用されるコイルのターン数とを相違させることで実現したものである。以下、これについて、コイルW1を鎖交する直流磁束(磁束φ1)を例にとって説明する。
【0071】
磁束φ1を漸増させる期間は、図3(a)に示した期間であり、この期間において、磁束φ1を漸増させるために利用されるコイルのターン数は、上記の式(c2)に示したように、コイルW1のターン数Nに等しい。これに対し、コイル磁束φ1を漸減させる期間である図3(b)に示す期間と図3(c)に示す期間のうち、図3(c)に示す期間においては、上記の式(c11)からわかるように、磁束φ1を漸減させるために利用されるコイルのターン数が、コイルW1のターン数Nとは一致しない。このターン数は、仮に磁束φ1を漸減させるために利用される単一のコイルに「Vin−Vout」の電圧が印加されると想定した場合の値として定義すると、ターン数Nよりも大きい値となっている。これは、コイルW1、W3に電流が流れる際に生じる磁束の方向を、コイルW1,W3の双方を鎖交するループ経路において同一に定めた結果である。
【0072】
上記のように、先の図3(c)に示した状態において直流磁束を漸減させるのに利用されるコイルの仮想的なターン数が大きくなることで、磁束φ1を漸減させる全期間が先の図3(b)に示した状態となる場合と比較して、磁束φ1の平均減少速度は、入力電圧Vinと出力電圧Voutとの差圧が同一なら小さくなる。ただし、磁束φ1の漸増量については、図3(c)の状態の有無に関わらず時比率Dによって定まる値に固定されるため、周期Tにおける磁束φ1の漸増量と漸減量とが同一となるとの要請から、図3(c)の状態がある場合にはない場合と比較して上記差圧の絶対値が拡大する。これが、昇圧比が大きくなる理由である。
【0073】
ちなみに、上記の式(c5),(c11)に示されるように、本実施形態において磁束φ1、φ2を漸減すべく「−Vout+Vin」の電圧が印加される単一のコイルを想定できないのは、コイルW3を、コイルW1およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路と、コイルW2およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路とで共有したためである。
【0074】
しかも、本実施形態では、平滑コンデンサ14からコンバータCNVに入力される電流のリプルを低減することができる。これは次の理由による。
【0075】
コイルW1〜W3のそれぞれに流れる電流をI1〜I3とし、コイルW1,W3の双方を鎖交するループ経路と、コイルW2,W3の双方を鎖交するループ経路とのそれぞれにおいてアンペールの法則を適用すると、以下の式が成立する。
【0076】
N・I1−N3・I3=R1・φ1+R3・φ3 …(c19)
N・I2+N3・I3=R2・φ2−R3・φ3 …(c20)
ここで、磁気抵抗R1は、コイルW1,W3の双方を鎖交する経路のうちコイルW2,W3の双方を鎖交するループ経路との共通部分が除かれた部分の磁気抵抗であり、磁気抵抗R2は、コイルW2,W3の双方を鎖交する経路のうち上記共通部分を除いた部分の磁気抵抗である。また、磁気抵抗R3は、上記共通部分の磁気抵抗である。
【0077】
上記の式(c19)、(c20)から、以下の式(c21)が成立する。
【0078】
Iin=I1+I2=(R1・φ1+R2・φ2)/N …(c21)
上記の式(c21)により、磁束φ1,φ2が連続量であることに鑑みれば、入力電流Iinは、連続量であることがわかる。特に、本実施形態のように、スイッチング素子Saをオンとする期間とスイッチング素子Sbをオンとする期間との位相がπだけずれる設定の場合、磁束φ1の漸増期間と磁束φ2の漸増期間とを極力離間させることができ、入力電流Iinのリプルを抑制することができる。さらに、本実施形態では、コイルW1,W3の双方を鎖交する経路の磁気抵抗とコイルW2、W3の双方を鎖交するループ経路の磁気抵抗とを同一としたため、磁束φ1の変化と磁束φ2の変化とが極力相殺するようになることから、入力電流Iinのリプルをよりいっそう低減することができる。
【0079】
また、上記の式(c6),(c13)によれば、先の図3(a)に示した状態と図3(c)に示した状態とで磁束φ3の変化速度の絶対値が同一且つ符号が逆であり、また、上記の式(c8)によれば、先の図3(b)に示した状態において磁束φ3が変化しない。このため、先の図3(a)に示した状態と先の図3(b)に示した状態との継続時間を互いに等しくする本実施形態によれば、コイルW1,W2のターン数を等しくする設定との協働で、磁束φ3の直流成分をゼロとすることができる。そしてこれにより、足22が直流偏磁しないため、足22を小型化することが可能となる。
【0080】
さらに、本実施形態では、上述したようにスイッチング素子Saがオンとなる位相とスイッチング素子Sbがオンとなる位相とを互いにπだけずらしており、これにより、損失を極力抑制することができる。すなわち、上記の式(c2),(c7),(c11)等に鑑みれば、スイッチング素子Sa,Sbの双方がオンとなる状態や双方がオフとなる状態における磁束φ1,φ2の変化速度の絶対値は、スイッチング素子Sa,Sbのいずれか一方のみがオンとなる状態におけるオンに対応する側の磁束の変化速度の絶対値よりも大きい。そして、コア20における損失が大きくは磁束の変化速度の2乗に比例することに鑑みれば、スイッチング素子Sa,Sbの双方のオン期間や双方のオフ期間を極力短縮することが上記損失低減の上では望ましいため、上記位相の設定は、上記損失を低減する上では最適なものとなる。
【0081】
以下、上記本実施形態における代表的な効果を列挙する。
【0082】
(1)コイルW1,W2のそれぞれを鎖交する直流磁束を、コイルW1,W2のそれぞれによって漸増させた後、コイルW1およびコイルW3、コイルW2およびコイルW3の協働で漸減させた。これにより、直流磁束の増加速度や減少速度の調節の自由度を向上させることができ、ひいては出力電圧を調節するための自由度が向上する。
【0083】
(2)コイルW1,W3(コイルW2,W3)の一方から他方へと電流を流すに際し、コイルW1,W3(コイルW2,W3)のそれぞれによって誘起される磁束についてのそれら一対のコイルW1,W3(コイルW2,W3)を鎖交するループ経路における方向が互いに等しくなるようにした。これにより、昇圧比を向上させることができる。
【0084】
(3)コイルW1,W3とコイルW2,W3との2組を用いて昇圧処理を行った。これにより、コイルW1,W3のみを用いる場合と比較して、コンバータCNVの入力電流のリプルを低減することが容易となる。また、コイルW1のみを用いてコイルW1を鎖交する直流磁束を漸増させるに際して、コイルW3が、流通規制要素(スイッチング素子Sa,Sb、ダイオードD1〜D4)の要求耐圧を上昇させるような電圧を印加することを回避することができる。
【0085】
(4)コイルW1に入力電圧Vinを印加した場合にコイルW1に生じる磁束がコイルW3を鎖交する方向と、コイルW2に入力電圧Vinを印加した場合にコイルW2に生じる磁束がコイルW3を鎖交する方向とが逆となるように設定した。これにより、コイルW1とコイルW2とでコア20を共有するに際し、コア20を小型化することが容易となる。
【0086】
(5)低透磁率部材Lμを、コイルW1,W3の双方を鎖交するループ経路とコイルW2,W3の双方を鎖交するループ経路との共通部分以外の部分に設けた。これにより、コイルW3に誘起される電圧の極性設定を上記としたこととの協働で、コア20に蓄えることが可能なエネルギを大きくしつつもコア20を好適に小型化することができる。すなわち、コア20に蓄えられるエネルギ密度は、磁束密度Bと透磁率μとを用いてB・B/(2・μ)となる。このため、コア20の透磁率よりも低透磁率部材Lμの透磁率を十分に小さくすることで、低透磁率部材Lμにエネルギが集中する。ここで、低透磁率部材Lμを上記共通部分に設ける場合には、磁束φ3が磁束φ1と磁束φ2とによって相殺されたものであることから、低透磁率部材Lμに蓄えられるエネルギは小さくなる。このため、コア20に蓄えられるエネルギを大きくする上では、上記共通部分以外の部分の体格を大きくすることが要求されることとなる。
【0087】
(6)先の図3(a)に示した状態において、コイルW1のみを用いてコイルW1を鎖交する直流磁束を漸増させるに際して、この磁束の増加を打ち消す側の電流がコイルW3に流れることで、この間にコイルW1に流れる電流を、コイルW1のみを用いる場合と比較して大きくできる。すなわち、コイルW1の直流磁束を漸増させる期間においては、以下の式が成立する。
【0088】
R1・φ1+R3・φ3=N1・I1−N3・I3
ここで、φ1、φ3は、コイルW1,W3のそれぞれに印加される電圧およびターン数によって定まるものであるため、左辺は、印加電圧とターン数のみに依存する。一方、コイルW1のみを用いる場合には、以下の式が成立する。
【0089】
(R1+R3)・φ1=N1・I1
ここで、本実施形態にかかる「N1・I1」からコイルW1のみを用いた場合のそれを減算した値は、「R3・(φ3−φ1)+N3・I3」である。ここで、本実施形態では、コイルW1,W3の双方を鎖交するループ経路とコイルW2,W3の双方を鎖交するループ経路との共通部分以外の部分に低透磁率部材Lμを設けることで共通部分の磁気抵抗R3を小さくすることができ、ひいては「R3・(φ3−φ1)」を、「N3・I3」と比較して小さくすることができる。このため、上記の式の電流の符号が磁束φ1の方向を正とした際のアンペールの法則によるものであることに注意すると、電流I3>0であることから、「R3・(φ3−φ1)+N3・I3>0」となる。したがって、コイルW1のみを用いた場合と比較して、入力エネルギ「Vin・I1」を増大させることができ、ひいては昇圧比を大きくすることができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0090】
図4に、本実施形態にかかるコンバータCNVの構成を示す。なお、図4において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0091】
図示されるように、本実施形態では、コイルW1およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路を構成するコア20aと、コイルW2およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路を構成するコア20bとが各別の部材とされる。特に本実施形態では、コア20a,20bとして、トロイダルコアを採用している。この場合、コア20a,20bが円環状であることにより、発熱が起こりやすい角部が存在しないため、コンバータCNVの放熱性を向上させることができる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0092】
図5に、本実施形態にかかるコンバータCNVの構成を示す。なお、図5において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0093】
図示されるように、本実施形態では、出力用コンデンサ12に出力される電流を平滑化するための平滑用インダクタ(コイルW4,W5)を備え、これを鎖交する磁心と、コイルW1,W2,W3を鎖交する磁心とを、一体形成した。これは、コア20に、コイルW4,W5のそれぞれを鎖交する足26,27を追加することで行うことができる。
【0094】
ここで、コイルW4,W5によって生じる磁束とコイルW1,W2,W3の磁束とが干渉しないためには、第1に、コイルW4,W5の双方を鎖交するループ経路におけるコイルW4によって生じる磁束の方向および大きさとコイルW5によって生じる磁束の方向および大きさとを同一とすることが必要である。第2に、コイルW4,W5の双方を鎖交するループ経路とコイルW1,W2の双方を鎖交するループ経路との共通領域に、低透磁率部材Lμを設けないことが必要である。上記第1の条件は、コイルW4,W5のターン数を互いに等しくするとともに、コイルW4,W5の巻き方によって実現されている。ここでは、コイルW4,W5に印加される電圧の絶対値が互いに等しいことを利用している。また、第2の条件は、低透磁率部材Lμを、足21,23,26,27に設けることで実現されている。
【0095】
特に、本実施形態では、コイルW4,W5に電流が流れることで生じる磁束の方向と、コイルW1、W2に電圧が印加されることで生じる磁束の方向とが、コイルW1,W2の双方を鎖交するループ経路上で逆方向となるように設定している。これにより、接続部24,25の磁束を低減することできるため、コア20を小型化することができる。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0096】
図6に、本実施形態にかかるコンバータCNVの構成を示す。なお、図6において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0097】
本実施形態では、コイルW1を鎖交する足21とコイルW2を鎖交する足23との双方によってコイルW3が鎖交されるようにして且つ、コイルを鎖交しない足28,29をさらに備えた。ここで、足28,29は、コイルW3を鎖交するループ経路を構成する要素である。こうした構成によればコイルW1〜W3が足28,29によって挟まれることとなり、足28,29を、コイルW1〜W3等からの電磁ノイズをシールドする電磁シールドとして用いることができる。
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0098】
図7に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図7において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0099】
本実施形態にかかるコンバータCNVは、高電圧バッテリ10の端子電圧(入力電圧Vin)を降圧して出力電圧Voutとして出力するものである。これは、上記ダイオードD1〜D4にスイッチング素子S1〜S4を並列接続して且つ、上記スイッチング素子Sa,SbをダイオードDa,Dbとすることで実現することができる。なお、本実施形態では、スイッチング素子S1〜S4として、NチャネルMOS電界効果トランジスタを想定している。このため、ダイオードD1〜D4は、トランジスタのボディダイオードであってもよい。
【0100】
一方、制御装置30は、スイッチング素子S1〜S4のそれぞれに、操作信号ms1〜ms4を出力することで、降圧処理を行う。図8に、本実施形態にかかる降圧処理のためのスイッチング操作手法を示す。詳しくは、図8(a1)および図8(a2)は、操作信号ms1の推移を示し、図8(b1)および図8(b2)は、操作信号ms2の推移を示し、図8(c1)および図8(c2)は、操作信号ms3の推移を示し、図8(d1)および図8(d2)は、操作信号ms4の推移を示す。なお、図8(a1)〜図8(d1)は、スイッチング素子S1〜S4のオン・オフの周期Tに対するスイッチング素子S1,S4(S2,S3)のオン時間の時比率Dが「0.5」以下である場合を示し、図8(a2)〜図8(d2)は、時比率Dが「0.5」よりも大きい場合を示す。
【0101】
ここで、スイッチング素子S1,S4がオンとなる期間には、正極側の入力端子(平滑コンデンサ14の端子)からコイルW3,W1を介して正極側の出力端子(出力用コンデンサ12の端子)に電流が流れる。この期間は、コイルW1を鎖交する直流磁束が漸増することでエネルギを蓄える期間である。
【0102】
これに対し、スイッチング素子S2,S3がオンとなる期間や、スイッチング素子S1〜S4が全てオフまたはオンとなる期間には、負極側の入力(出力)端子からダイオードDaおよびコイルW1を介して正極側の出力端子(出力用コンデンサ12の端子)に電流が流れる。この期間は、コイルW1を鎖交する直流磁束が漸減することでエネルギを放出する期間である。
【0103】
ここで、エネルギ保存則により、周期Tにおける上記直流磁束の増加量と減少量とが等しいことに鑑みれば、出力電圧Voutが定まる。特に、本実施形態では、エネルギを蓄える際に、コイルW1に加えてコイルW3を利用する。このため、磁束φ1の増加速度がコイルW1のみを用いた場合よりも小さくなる。したがって、コイルW1のみを用いて磁束φ1を増減させる場合と比較して、出力電圧Voutが小さくなる。
【0104】
実際、本実施形態では、D=0.5以下の場合、下記の式(c22)が成立し、D>0.5の場合、下記の式(c23)が成立する。
【0105】
Vout/Vin=D/(1+n) …(c22)
Vout/Vin=D−[(1−D)・n/(1+n)] …(c23)
これらは、周知の降圧チョッパ回路の降圧比Dと比較して小さくなっている。さらに、本実施形態では、直流磁束(磁束φ1)を漸増させる期間において以下の式が成立し、入力エネルギを低減することができることも、降圧比をいっそう下げることに寄与している。
【0106】
R1・φ1+R3・φ3=N1・I1+N3・I3
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0107】
図9に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図9において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0108】
本実施形態にかかるコンバータCNVは、入力電圧Vinを昇圧する機能と、出力電圧Voutを降圧する機能との双方を兼ね備えている。これは、第1の実施形態(図1)の構成と、第5の実施形態(図7)の構成とを併せることで実現することができる。すなわち、スイッチング素子Sa,Sb,S1〜S4と、ダイオードDa,Db,D1〜D4とを備えることで実現することができる。
【0109】
一方、制御装置30は、スイッチング素子Sa,Sb,S1〜S4のそれぞれに、操作信号msa,msb,ms1〜ms4を出力することで、昇圧処理や降圧処理を行う。ここで、昇圧処理を行う場合、先の第1の実施形態の要領でスイッチング素子Sa,Sbを操作すればよく、スイッチング素子S1〜S4についてはこれをオフ状態としこれに逆並列接続されたダイオードD1〜D4が利用される。一方、降圧処理を行う場合、スイッチング素子S1〜S4を操作し、スイッチング素子Sa,Sbについてはオフ状態としこれに逆並列接続されたダイオードDa,Dbが利用される。
【0110】
図10に、降圧処理に際してのスイッチング操作を示す。図10(a)は、操作信号ms1の推移を示し、図10(b)は、操作信号ms2の推移を示し、図10(c)は、操作信号ms3の推移を示し、図10(d)は、操作信号ms4の推移を示す。なお、図10に示すスイッチング操作は、「D<0.5」において利用可能なものであるため、本実施形態では「D<0.5」に制限することを想定している。また、本実施形態でも、リプル電流を最大限抑制すべく、スイッチング素子S1,S4をオンする期間とスイッチング素子S2,S3をオンする期間との位相をπだけずらす設定を行っている。これは、スイッチング素子S1〜S4をオンとする期間を「0.5×T」とすることで実現することができる。
【0111】
図示されるように、本実施形態では、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S4をオン状態とすることでエネルギを蓄えた後、スイッチング素子S1をオフとするとともに、スイッチング素子S3をオンとする。その後、スイッチング素子S4をオフするとともにスイッチング素子S2およびスイッチング素子S3をオン状態とすることでエネルギを蓄えた後、スイッチング素子S3をオフとするとともにスイッチング素子S1をオンとする。なお、スイッチング素子S3、S4がオンとなる期間や、スイッチング素子S1,S2がオンとなる期間は、スイッチング素子S1〜S4がオフとなる期間と、磁束の変化は同じである。
<第7の実施形態>
以下、第7の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0112】
図11に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図11において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0113】
本実施形態にかかるコンバータCNVは、入力電圧Vinに対して出力電圧の極性が反転するものである。これは、上記第6の実施形態(図9)の構成において、スイッチング素子Sa,Sbの一端を接地する代わりに、高電圧バッテリ10の負極側に接続することで実現する。
【0114】
一方、制御装置30は、スイッチング素子Sa,Sb,S1〜S4のそれぞれに、操作信号msa,msb,ms1〜ms4を出力することで、昇圧処理や降圧処理を行う。ここで、入力電圧Vinの絶対値を大きくして出力電圧Voutとする昇圧処理を行う場合、先の第1の実施形態の要領でスイッチング素子Sa,Sbを操作すればよく、スイッチング素子S1〜S4についてはこれをオフ状態としこれに逆並列接続されたダイオードD1〜D4が利用される。一方、出力電圧Voutの絶対値を小さくして入力電圧Vinとする降圧処理を行う場合、スイッチング素子S1〜S4を操作し、スイッチング素子Sa,Sbについてはオフ状態としこれに逆並列接続されたダイオードDa,Dbが利用される。この際のスイッチング素子S1〜S4の操作は、先の図10に示したものと同様とすればよい。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0115】
「コイルW3の鎖交磁束の方向について」
たとえば、上記第1の実施形態について、コイルW1に入力電圧Vinが印加された場合にコイルW1に生じる磁束がコイルW3を鎖交する方向と、コイルW2に入力電圧Vinが印加された場合にコイルW2に生じる磁束がコイルW3を鎖交する方向とを同一としてもよい。ここで、たとえばコイルW1の巻き方を変更してこうした設定を実現する場合、ダイオードD1のカソード側をダイオードD2のカソード側に接続すればよい。
【0116】
「第1〜第4整流手段、第1コイル用整流手段、第2コイル用整流手段について」
ダイオードD1〜D4や、ダイオードDa,Dbに限らない。たとえばサイリスタ等であってもよい。
【0117】
「第1〜第4開閉手段について」
NチャネルMOS電界効果トランジスタに限らず、PチャネルMOS電界効果トランジスタ等、任意の電界効果トランジスタであってよい。また、電界効果トランジスタに限らず、たとえばIGBT等であってもよい。
【0118】
「結合手段について」
結合手段が、コイルW1に接続されるコイルW3の端部とコイルW2に接続されるコイルW3の端部とを相違させるものに限らないことについては、「コイルW3の鎖交磁束の方向について」の欄に記載したとおりである。
【0119】
「力行、回生制御について」
たとえば先の第6の実施形態(図9)の構成において、スイッチング素子Saとスイッチング素子S1,S4とを交互にオン操作(相補駆動)して且つ、スイッチング素子Sbとスイッチング素子S2,S3とを相補駆動してもよい。詳しくは、先の図8(a1)〜図8(d1)に示したようにスイッチング素子S1〜S4を操作するに際し、スイッチング素子S1,S4のオフ期間をスイッチング素子Saのオン期間とし、スイッチング素子S2,S3のオフ期間をスイッチング素子Sbのオン期間としてもよい。これにより、入力電圧Vinと出力電圧Voutとの大小関係に応じて力行制御、回生制御が成り行きで行われることとなる。これが可能であるのは、上記の式(c15)、(c18)にそれぞれにおいて、時比率Dを「1−D」に置き換えると、上記の式(c23)、(c22)のそれぞれとなるためである。ちなみに、図10(a)〜図10(d)に示したようにスイッチング素子S1〜S4を操作するに際し、スイッチング素子S1のオフ期間をスイッチング素子Saのオン期間とし、スイッチング素子S2のオフ期間をスイッチング素子Sbのオン期間としてもよい。
【0120】
なお、このように力行、回生制御を成り行きに任せる手法は、上記第7の実施形態(図11)の構成においても可能である。
【0121】
「低透磁率部材Lμについて」
低透磁率部材Lμの配置としては、上記第1の実施形態等に例示したものに限らない。ただし、コイルW1とコイルW2とで磁心を共有化して且つコイルW3に誘起される磁束が交流となる設定の場合、大きなエネルギを蓄えるうえでは、低透磁率部材Lμを、図12の領域LA,LBのそれぞれに設けることが望ましい。ただし、上記第3の実施形態(図5)の構成においては、接続部24,25には、低透磁率部材Lμを設けないことが望ましい。これにより、入力電流と出力電流との挙動が互いに干渉しあうことを回避することができる。
【0122】
上記第4〜第7の実施形態では、コア20が低透磁率部材Lμを備えない構成を例示したが、備えてもよい。
【0123】
なお、コイルW3を鎖交する部分にも低透磁率部材Lμを設けることも可能である。また、コイルW1に入力電圧Vinが印加される場合にコイルW1に生じる磁束がコイルW3を鎖交する方向と、コイルW2に入力電圧Vinが印加される場合にコイルW2に生じる磁束がコイルW3を鎖交する方向とを同一とする場合には、低透磁率部材LμをコイルW3に鎖交する部分に限って設けるなどしても、コア20に大きなエネルギを蓄えることができる。
【0124】
低透磁率部材Lμを備える代わりに、これが形成される部分を空間(ギャップ)としてもよい。
【0125】
「一対のループ経路の磁気抵抗について」
コイルW1,W3を鎖交するループ経路と、コイルW2,W3を鎖交するループ経路との磁気抵抗が互いに等しくなる設定が望ましいものの、磁気抵抗が等しくなる設定は必須ではない。
【0126】
「コイルの数について」
コイルW1,W2,W3からなるものに限らない。たとえば図13に示すように、コイルWa,Wb,Wc,Wd,We,Wfからなるものであってもよい。ここで、コイルWa,Wb,Wdのそれぞれは、第1の実施形態のコイルW1,W2,W3に対応しており、コイルWb,Wc,Wfのそれぞれは、第1の実施形態のコイルW1,W2,W3に対応しており、コイルWc,Wa,Weのそれぞれは、第1の実施形態のコイルW1,W2,W3に対応している。
【0127】
「直列接続される一対のコイルそれぞれによって誘起される磁束の方向について」
直列接続される一対のコイル(コイルW1およびW3等)に電流が流れる際に誘起される磁束としては、一対のコイルを鎖交するループ経路における方向が同一となるものに限らず、逆となる場合であってもよい。
【0128】
「直列接続される一対のコイルの利用目的について」
昇圧比を高めたり降圧比を下げたりするために利用するものにも限らない。昇圧比を下げたり降圧比を高めたりする設定とすることで、時比率Dに対する出力電圧の変化速度を低下させるなら、出力電圧の微調整が容易となるため、この目的での利用も考えられる。
【0129】
「入力電圧について」
たとえば上記第1の実施形態(図1)において、コイルW1に印加される入力電圧とコイルW2に印加される入力電圧とが互いに相違するように、各別のバッテリの端子電圧を印加するようにしてもよい。
【0130】
また、直流電圧源の端子電圧を直接の入力電圧とするものに限らず、直流電圧源とコンバータCNVの入力端子との間にフィルタとしてのインダクタを備える等してもよい。
【0131】
「回路、動作の対称性について」
コイルW1,W2のターン数を同一とするものに限らない。また、コイルW1およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路とコイルW2およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路との磁気抵抗が同一とされるものに限らない。特に、「入力電圧について」の欄に記載したように、コイルW1,W2の印加電圧が相違する場合には、ターン数や磁気抵抗を同一とすることによっては、電気的な状態の対称性を保つことができないため、これらをずらしたり、時比率Dを相違させたりすることで電気的な状態の対称性を極力回復するようにしてもよい。
【0132】
「そのほか」
・上記第5の実施形態(図7、図8)において、「D<0.5」とするなら、上記第6の実施形態(図10)のスイッチング操作を行ってもよい。
【0133】
・上記第6の実施形態(図9、図10)や上記第7の実施形態(図11)において、上記第5の実施形態(図7、図8)のスイッチング操作を行ってもよい。
【0134】
・一対のコイルW1,W2への電圧印加期間の位相については、πだけずれたものとするものに限らない。
【0135】
・上記第3の実施形態において、磁束φ4,φ5の向きを逆とする設定としてもよい。この場合、低透磁率部材Lμを、コイルW1およびコイルW2を鎖交するループ経路とコイルW4およびコイルW5を鎖交するループ経路との共通部分に設けても、大きなエネルギを蓄えることは可能となる。ただし、入力電流の挙動と出力電流の挙動との干渉を回避する上では、この場合であっても、低透磁率部材Lμを共通部分以外に設けることが望ましい。
【0136】
・上記第3の実施形態において、コイルW4,W5は、平滑用インダクタに限らず、別の回路において利用されるコイルであってもよい。
【0137】
・入力電圧としては、高電圧バッテリ10の端子電圧に限らない。たとえば燃料電池の端子電圧であってもよい。
【0138】
・電力変換装置としては、車両に搭載されるものにも限らない。
【符号の説明】
【0139】
Sa…スイッチング素子(第1コイル用開閉手段の一実施形態)、Sb…スイッチング素子(第2コイル用開閉手段の一実施形態)、W1…コイル(第1コイルの一実施形態)、W2…コイル(第2コイルの一実施形態)、W3…コイル(第3コイルの一実施形態)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電圧の大きさを変換して出力電圧として出力する電圧変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車などで2次電池(バッテリ)を利用したモータ駆動装置が普及するようになり、バッテリの電圧を、モータ駆動装置が求める電圧に昇圧する昇圧DCDCコンバータが広く用いられるようになっている。この種の昇圧DCDCコンバータには、小型・軽量化と高昇圧比の二つが強く求められる。
【0003】
小型・軽量化が重要なのは、車載環境においては限られたスペースに装置を収める必要があるからである。また高昇圧比が重要なのは、電気自動車等のモータでは動作領域が高速回転から低速回転まで広く存在するためである。広い動作領域でのモータ駆動を実現するためには低圧から高圧まで広い幅で発生する逆起電圧に打ち勝つ電圧をモータに印加する必要があるため、逆起電圧に応じて印加電圧を大きく変更できなくてはならないこととなる。一方、一般に昇圧コンバータにおいては低昇圧比の実現は容易である一方、高昇圧比の実現は困難であることが多いため、広範囲な駆動電圧を生成する上では、高昇圧比をいかに実現するかが問題となる。以下、これについて、図14に示す周知のDCDCコンバータを用いて説明する。
【0004】
図14に示される昇圧DCDCコンバータは、バッテリ10に並列接続されたリアクトルLおよびスイッチング素子SWの直列接続体と、直列接続体の接続点から出力用コンデンサ12へと進む方向を順方向とするダイオードDとを備えて構成されている。このコンバータの昇圧動作は、次のようなものとなる。
【0005】
まずスイッチング素子SWをオン状態とすることで、リアクトルLにエネルギを蓄える。ここで、リアクトルLを流れる電流は、インダクタンスLと入力電圧Vinとを用いて、Vin/Lの速度で漸増する。その後、スイッチング素子SWをオフ状態とすることで、リアクトルLに蓄えられたエネルギがダイオードDを介して出力用コンデンサ12に出力される。この際、リアクトルLを流れる電流は、出力電圧Vout等を用いて、|Vin−Vout|/Lの速度で漸減する。ここで、スイッチング素子SWのオン・オフの一周期に対するオン時間の時比率Dを用い、スイッチング素子SWの一周期におけるリアクトルLの電流の漸増量と漸減量とが一致するとして「D・Vin/L+{(1−D)・(Vin−Vout)/L}=0」が成立する。そしてこれにより、出力電圧Voutが「Vin/(1−D)」に定まる。
【0006】
この場合、理論的には、時比率Dを大きくすることで、出力電圧Voutをいくらでも大きくすることができるものの、実際には、出力電圧Voutを大きくするほど効率が低下する。これは、時比率Dが大きくなるほど、リアクトルLに蓄えられたエネルギの出力期間に対するスイッチング状態の切替期間の割合が大きくなるためである。このため、上記昇圧DCDCコンバータを用いる場合、出力電圧を大きくすることには大きな制約がある。
【0007】
そこで従来、たとえば下記特許文献1に見られるように、リアクトルに加えて、3つのコイルを有するトランスを追加することで、高昇圧比を実現するものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−95146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ただし、上記従来技術には、小型・軽量化に関して次のような問題がある。
【0010】
まず第1に、先の図14に示した周知のコンバータに比べて、トランスが追加されるという問題である。一般に電力変換装置を構成する電子部品の体格・重量の大部分は、コンデンサやリアクトルのような受動部品が占める。したがって、受動部品であるトランスの追加は、必然的に無視できない体格増加を生み出し、小型・軽量化を阻む問題となる。
【0011】
第2に、トランスの3つのコイルのうちの1つに大きなターン数が要求されることである。すなわち、たとえば時比率D=0.5付近で先の図14に示した周知のコンバータの2倍の昇圧比を得るためには、上記コイルのターン数を、他のコイルのターン数の2倍とする必要がある。これにより、トランスに周回されるターン線が増加し、トランスの磁心の体格増加になるのみならず、コイルの銅損が増加し電力変換効率が低下することから、トランスを放熱する強力な冷却器が必要となり、冷却器の体格増加にもつながりかねない。
【0012】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、入力電圧の大きさを変換して出力電圧として出力する新たな電圧変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0014】
請求項1記載の発明は、入力電圧の大きさを変換して出力電圧として出力する電圧変換装置において、前記入力電圧が印加される端子および前記出力電圧が印加される端子のうちの一対の端子であって且つ、前記入力電圧、前記出力電圧、ならびに前記入力電圧および前記出力電圧の差圧の3つの電圧のうちのいずれか1つの電圧である第1電圧を一対の端子間の差圧とする一対の第1電圧印加用端子と、前記入力電圧が印加される端子および前記出力電圧が印加される端子のうちの一対の端子であって且つ、前記入力電圧、前記出力電圧、ならびに前記入力電圧および前記出力電圧の差圧の3つの電圧のうちの前記第1電圧以外のいずれか一方の電圧である第2電圧を一対の端子間の差圧とする一対の第2電圧印加用端子と、互いに磁気結合されて且つ互いに直列接続された一対のコイルのうちの一方のコイルの両端に前記第1電圧印加用端子を介して前記第1電圧を印加するに際し、前記一対のコイルの接続点を介して前記一対のコイルの一方および他方間に電流が流れることを回避する分離手段と、前記一対のコイルの直列接続体の両端に前記第2電圧印加用端子を介して前記第2電圧を印加する結合手段とを備え、前記一方のコイルに第1電圧を印加する期間および前記一対のコイルに前記第2電圧を印加する期間の一対の期間について、そのいずれか一方の期間において前記一方のコイルを鎖交する直流磁束を増加させ、他方の期間において前記直流磁束を減少させるように設定し、前記一対のコイルを2組備えて且つ、それぞれの組についての前記一方のコイルを第1コイル、第2コイルとした場合、前記他方のコイルが、前記2組によって共有される第3コイルであり、前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交して且つ磁心によって案内されたループ経路と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交して且つ磁心によって案内されたループ経路として、互いに相違するものが存在することを特徴とする。
【0015】
上記直流磁束を増加させる期間にループ経路に蓄えられたエネルギは直流磁束を減少させる期間に外部に放出される。こうした現象を利用した電圧変換回路では、直流磁束の増加量と減少量とが等しいという関係に基づき、出力電圧の大きさが定まる。ここで、直流磁束の増加速度や減少速度は、第1電圧や第2電圧の絶対値に加えて、電圧が印加されるコイルのターン数に応じて変化する。上記発明では、この点に鑑み、分離手段と結合手段とを備えることで、直流磁束を増加させる期間の少なくとも一部の期間と減少させる期間の少なくとも一部の期間とで、上記直流磁束を変化させるために電圧が印加されるコイルのターン数を変化させる。これにより、直流磁束の増加速度や減少速度の調節の自由度を向上させることができ、ひいては出力電圧を調節するための自由度を向上させることができる。
【0016】
さらに、上記発明では、一対のコイルを少なくとも2組備え、それら2組の他方のコイルを第3コイルとして共有化した。これにより、2組のコイルのそれぞれによって生じるリップルを互いに相殺するような設定も可能なことから、部品点数の増加を抑制しつつも、1組の場合と比較して電流のリップルを低減することを容易とすることなどができる。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記一対のコイルに前記第2電圧が印加されることで前記一対のコイルに電流が流れる場合、前記一対のコイルのそれぞれによって誘起される磁束についての前記一対のコイルの双方を鎖交するループ経路における方向が互いに等しくなるように設定したことを特徴とする。
【0018】
第2電圧を印加することで一対のコイルの双方に電流を流すに際し、上記方向が互いに逆となる場合、一対のコイルの両端に電圧を印加することによって生じるループ経路内の磁束変化は、一対のコイルよりもターン数を減少させた単一のコイルに第2電圧を印加した際に生じる磁束変化と同一となる。これは、第1電圧の印加時には一方のコイルを利用して、また、第2電圧の印加時には一対のコイルの合計ターン数よりも小さいターン数のコイルを利用して、それぞれ直流磁束を変化させるのと等価となる。このため、用途によっては、ターン数を稼ぐために多数の巻線が必要となるおそれがある。これに対し、上記発明では、第1電圧の印加時には一方のコイルによって、また、第2電圧の印加時には一対のコイルの合計のターン数を有したコイルを利用して、それぞれ直流磁束を変化させるため、余分にターン数を稼ぐ必要がなく、各コイル材料の消費量を低減しやすい。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記第1コイルに前記第1電圧を印加した場合に前記第1コイルに生じる磁束が前記第3コイルを鎖交する方向と、前記第2コイルに前記第1電圧を印加した場合に前記第2コイルに生じる磁束が前記第3コイルを鎖交する方向とが逆となるように設定したことを特徴とする。。
【0020】
上記発明では、第1コイルおよび第3コイルの双方を鎖交するループ経路と、第2コイルおよび第3コイルの双方を鎖交するループ経路とについて、これら双方を構成する磁心を一体とする場合等において、磁心を小型化することができる。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記結合手段によって前記第2コイルおよび前記第3コイルに前記第2電圧が印加されて且つ前記第1コイルに前記第1電圧が印加される状態と、前記結合手段によって前記第1コイルおよび前記第3コイルに前記第2電圧が印加されて且つ前記第2コイルに前記第1電圧が印加される状態とを有することを特徴とすることを特徴とする。
【0022】
第1コイルに第1電圧が印加される際に、第2コイルおよび第3コイルに第2電圧が印加される場合、第1コイルに流れる電流は、第1コイルのターン数や第1電圧のみからは定まらず、第3コイルを流れる電流の影響を受ける。このためたとえば、第1コイルに第1電圧を印加することで第1コイルを鎖交する直流磁束が漸増する場合において、第3コイルに流れる電流によって誘起される磁束が第1コイルを鎖交する方向を直流磁束と逆方向とするなら、第1コイルに流れる電流を増加させ、ひいては入力エネルギの蓄積速度を増大させる設定も可能となる。またたとえば第1コイルおよび第3コイルに第2電圧を印加することで第1コイルを鎖交する直流磁束が漸増する場合、第3コイルに流れる電流によって誘起される磁束が第1コイルを鎖交する方向を直流磁束と同一方向とするなら、第1コイルに流れる電流を減少させ、ひいては入力エネルギの蓄積速度を減少させることが容易となる。
【0023】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記分離手段および前記結合手段は、前記第1コイルおよび前記第3コイルの接続手段であって且つ前記第1コイルから前記第3コイルへの電流の流れを許容して且つ逆方向の電流の流れを阻止する第1整流手段と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの接続手段であって且つ前記第2コイルから前記第3コイルへの電流の流れを許容して且つ逆方向の電流の流れを阻止する第2整流手段と、前記第1整流手段の出力側から前記第2電圧印加用端子への電流の流れを許容して且つ逆方向の電流の流れを阻止する第3整流手段と、前記第2整流手段の出力側から前記第2電圧印加用端子への電流の流れを許容して且つ逆方向の電流の流れを阻止する第4整流手段と、前記第1コイルおよび前記第1電圧印加用端子間を開閉する第1コイル用開閉手段と、前記第2コイルおよび前記第1電圧印加用端子間を開閉する第2コイル用開閉手段と、を備えることを特徴とする。
【0024】
請求項6記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記分離手段および前記結合手段は、前記第1コイルおよび前記第3コイル間を電気的に開閉する第1開閉手段と、前記第2コイルおよび前記第3コイル間を電気的に開閉する第2開閉手段と、前記第3コイルの一方の端部および前記第2電圧印加用端子の間を開閉する第3開閉手段と、前記第3コイルの他方の端部および前記第2電圧印加用端子間を開閉する第4開閉手段と、前記第1コイル経由で前記第1電圧印加用端子のうち低電位側から高電位側へと電流が流れることを許容して且つ逆方向に流れることを阻止する第1コイル用整流手段と、前記第2コイル経由で前記第1電圧印加用端子のうち低電位側から高電位側へと電流が流れることを許容して且つ逆方向に流れることを阻止する第2コイル用整流手段と、を備えることを特徴とする。
【0025】
請求項7記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記分離手段および前記結合手段は、前記第1コイルおよび前記第3コイル間を電気的に開閉する第1開閉手段と、前記第2コイルおよび前記第3コイル間を電気的に開閉する第2開閉手段と、前記第3コイルの一方の端部および前記第2電圧印加用端子の間を開閉する第3開閉手段と、前記第3コイルの他方の端部および前記第2電圧印加用端子間を開閉する第4開閉手段と、前記第1コイルおよび前記第1電圧印加用端子間を開閉する第1コイル用開閉手段と、前記第2コイルおよび前記第1電圧印加用端子間を開閉する第2コイル用開閉手段と、を備えることを特徴とする。
【0026】
請求項8記載の発明は、請求項3〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路とのそれぞれは、磁心を備えて構成されて且つ、他の部分と比較して透磁率の低い箇所を備えることを特徴とする。
【0027】
直流磁束を増加させることでエネルギを蓄えて且つ、直流磁束を減少させることでエネルギを放出する磁心には、大きなエネルギを蓄えることが要求されることから、磁気飽和を生じやすい。上記発明では、この点に鑑み、透磁率の低い箇所を備えた。
【0028】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記第1コイルおよび前記第3コイルを鎖交するループ経路を構成する磁心と、前記第2コイルおよび前記第3コイルを鎖交するループ経路を構成する磁心とが一体的に形成され、前記透磁率の低い部分は、前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路と前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路との共通部分以外の部分に構成されていることを特徴とする。
【0029】
たとえば、第1コイルを鎖交する直流磁束が増加する際にこの磁束が第3コイルを鎖交する方向と、第2コイルを鎖交する直流磁束が増加する際にこの磁束が第3コイルを鎖交する方向とが逆に設定されている場合等には、上記共通部分において磁束は相殺されるため、ここに透磁率が低い部分を設けたとしても、蓄えることのできるエネルギを大きくすることが困難である。上記発明では、こうした点に鑑み、上記設定とした。
【0030】
請求項10記載の発明は、請求項3〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記第1コイルおよび前記第2コイルのターン数が互いに等しく設定されており、前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路とについて、それらの磁気抵抗を同一としたことを特徴とする。
【0031】
上記発明では、第1コイルを鎖交する直流磁束と第2コイルを鎖交する直流磁束との対称性の実現や、第1コイルを流れる電流と第2コイルを流れる電流との対称性の実現が容易となる。
【0032】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明において、前記第1コイルへの前記第1電圧印加用端子による前記第1電圧の印加期間と、前記第2コイルへの前記第1電圧印加用端子による前記第1電圧の印加期間とを同一として且つ、前記第1コイルへの前記第2電圧印加用端子による前記第2電圧の印加期間と、前記第2コイルへの前記第2電圧印加用端子による前記第2電圧の印加期間とを同一としたことを特徴とする。
【0033】
上記発明では、第1コイルおよび第2コイルのそれぞれに流れる電流を同一のものとすることができる。また、第1コイルを鎖交する直流磁束が増加する際にこの磁束が第3コイルを鎖交する方向と、第2コイルを鎖交する直流磁束が増加する際にこの磁束が第3コイルを鎖交する方向とが逆に設定されている場合等には、第3コイルを鎖交する磁束を交流磁束とすることができるため、磁心のこの部分を小型化することも可能となる。
【0034】
請求項12記載の発明は、請求項11記載の発明において、第1コイルへの前記第1電圧印加用端子による前記第1電圧の印加期間と、前記第2コイルへの前記第1電圧印加用端子による前記第1電圧の印加期間との位相をπだけずらすことを特徴とする。
【0035】
上記発明では、第1コイルを鎖交する直流磁束および第2コイルを鎖交する直流磁束のそれぞれの変化速度の絶対値を極力低減でき、ひいては磁心による電力損失を低減することができる。また、上記発明では、第1コイルの磁束と第2コイルの磁束との合成磁束の変化を極力低減することができるため、電流のリプルを低減することも可能となる。
【0036】
請求項13記載の発明は、請求項3〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路を構成する磁心と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路を構成する磁心とが一体的に形成されていることを特徴とする。
【0037】
上記発明では、上記一対のループ経路を構成する磁心を一体的に形成することで、磁気部品の小型化を図ることができる。
【0038】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の発明において、前記磁心は、前記第1コイル、前記第2コイルおよび前記第3コイルを鎖交しないループ経路であって且つ、一対のコイルを鎖交するループ経路をさらに備え、該一対のコイルは、それらを鎖交する前記ループ経路上における方向および大きさが互いに等しい磁束を誘起することを特徴とする。
【0039】
上記発明では、電圧変換処理用のコイルの磁心と、それ以外の別の処理を行う一対のコイルの磁心とを一体的に形成することで、磁気部品の小型化を図ることができる。
【0040】
請求項15記載の発明は、請求項14記載の発明において、前記磁心は、コイルを鎖交しないループ経路であって且つ、前記第1コイル、前記第2コイルおよび前記第3コイルを挟むループ経路を構成することを特徴とする。
【0041】
上記発明では、前記第1コイル、前記第2コイルおよび前記第3コイルを挟むループ経路に、磁気シールドの機能を持たせることができる。
【0042】
請求項16記載の発明は、請求項3〜8,10〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路を構成する磁心と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路を構成する磁心とが、各別の磁心であることを特徴とする。
【0043】
上記発明では、一対の磁心をトロイダルコア等によって構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるスイッチング制御を示すタイムチャート。
【図3】同実施形態にかかる昇圧動作を示す回路図。
【図4】第2の実施形態にかかるコンバータを示す回路図。
【図5】第3の実施形態にかかるコンバータを示す回路図。
【図6】第4の実施形態にかかるコンバータを示す回路図。
【図7】第5の実施形態にかかるコンバータを示す回路図。
【図8】同実施形態にかかるスイッチング制御を示すタイムチャート。
【図9】第6の実施形態にかかるシステム構成図。
【図10】同実施形態にかかるスイッチング制御を示すタイムチャート。
【図11】第7の実施形態にかかるシステム構成図。
【図12】上記実施形態にかかる変形例を説明するための図。
【図13】上記各実施形態の変形例にかかるコンバータを示す回路図。
【図14】従来のコンバータを示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる電力変換装置を車載高電圧バッテリの電圧を変換する電力変換装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0046】
図示される高電圧バッテリ10は、車載主機に電力を供給するものであり、たとえば端子電圧が100V以上となるものである。非絶縁型のコンバータCNVは、高電圧バッテリ10の端子電圧(入力電圧Vin)を変換して出力用コンデンサ12の端子電圧(出力電圧Vout)として出力するものである。なお、コンバータCNVの実際の入力電圧は、高電圧バッテリ10に並列接続された平滑コンデンサ14の端子電圧となる。ここで平滑コンデンサ14は、高電圧バッテリ10からコンバータCNVまでの配線が長い場合等において、入力電圧の変動を抑制するための手段である。なお、図中、接地の記号は、車体ボディとは絶縁された高電圧システム系の基準電位であってもよい。
【0047】
本実施形態にかかるコンバータCNVは、平滑コンデンサ14(高電圧バッテリ10)の正極側および負極側(接地側)の一対の端子を入力電圧が印加される入力端子としており、出力用コンデンサ12の正極側および負極側(接地側)の一対の端子を出力電圧が印加される出力端子としている。以下、コンバータCNVの構成について詳述する。
【0048】
平滑コンデンサ14の正極側には、一対のコイルW1,W2が接続されており、コイルW1およびコイルW2のそれぞれは、スイッチング素子Saおよびスイッチング素子Sbのそれぞれを介して接地されている(負極側の入力端子および出力端子に接続されている)。また、コイルW1およびコイルW2のそれぞれは、ダイオードD1,D3およびダイオードD2,D4のそれぞれを介して出力用コンデンサ12の正極側に接続されている。また、コイルW1は、ダイオードD1を介してコイルW3の一方の端子に接続されており、コイルW2は、ダイオードD2を介してコイルW3の他方の端子に接続されている。
【0049】
コイルW1,W2,W3には、磁心(コア20)が鎖交している。コア20は、互いに平行な3本の磁心(足21,22,23)と、これらの両端部にそれぞれ接続される接続部24,25とを備えるEEコアである。詳しくは、接続部24のうち足22よりも図中左側の部分がコイルW1を鎖交し、右側の部分がコイルW2を鎖交しており、コイルW3には、コア20の足22が鎖交している。
【0050】
上記コア20の足21,23のそれぞれには、コア20よりも透磁率が低い低透磁率部材Lμが挟み込まれている。ここで、低透磁率部材Lμは、たとえば樹脂やプラスチックで形成すればよい。一方、上記足21,23は、互いに同一形状、同一寸法であり、各足21,23の低透磁率部材Lμも同一形状、同一寸法である。これは、コイルW1およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路と、コイルW2およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路との磁気抵抗を等しくするための設定である。また、コイルW1の巻数(ターン数N1)とコイルW2のターン数N2とを、互いに同一(ターン数N)としている。なお、ターン数とは、コイルの鎖交磁束をコイル内の磁束で割った値である。
【0051】
制御装置30は、操作信号msa,msbのそれぞれをスイッチング素子Sa,Sbのそれぞれに出力することで、これらスイッチング素子Sa,Sbを操作し、昇圧処理を行う。図2に、本実施形態にかかるスイッチング制御を示す。
【0052】
詳しくは、図2(a1)および図2(a2)は、操作信号msaの推移を示し、図2(b1)および図2(b2)は、操作信号msbの推移を示す。また、図2(a1)および図2(b1)は、各スイッチング素子Sa,Sbが1度ずつオン操作される周期Tに対する各スイッチング素子Sa,Sbがオンとなる時間の比率(時比率D)を「0.5」以下とする場合であり、図2(a2)および図2(b2)は、時比率Dを「0.5」よりも大きくする場合である。ちなみに、本実施形態では、スイッチング素子Saとスイッチング素子Sbとで時比率Dを互いに等しく設定している。また、本実施形態では、スイッチング素子Saとスイッチング素子Sbとを交互にオン操作することで、昇圧処理を行う。
【0053】
以下、図3を参照しつつ、時比率Dが0.5以下である場合における時比率Dと出力電圧Voutとの関係を導く。なお、図3において、磁束φ1,φ2,φ3は、図に示す方向を正と定義している。このため、下記の式(c1)が成立する。
【0054】
φ1=φ2+φ3 …(c1)
図3(a)は、スイッチング素子Saがオン且つスイッチング素子Sbがオフとなる状態を示す。この場合、コイルW1に入力電圧Vinが印加されることで、図中、破線にて示すように、正極側の入力端子(平滑コンデンサ14の端子)、コイルW1およびスイッチング素子Saの経路で電流が流れる。これにより、コイルW1を鎖交する磁束φ1は、入力電圧Vinに比例しコイルW1のターン数N1に反比例しつつ漸増する。
【0055】
磁束φ1が漸増すると、コイルW3を鎖交する磁束φ3についても漸増する。これにより、レンツの規則により、コイルW3には、この磁束φ3の増加を妨げる向きに電流を流そうとする起電力が生じる。このため、ダイオードD2,D3がオン状態となり、図中、一点鎖線にて示すように、正極側の入力端子(平滑コンデンサ14の端子)、コイルW2、ダイオードD2、コイルW3、ダイオードD3、および正極側の出力端子(出力用コンデンサ12の端子)の経路で電流が流れる。なお、この際、コイルW2に流れる電流によって生じる磁束とコイルW3に流れる電流によって生じる磁束とは、コイルW2およびコイルW3を鎖交するループ経路(足22,23および、接続部24,25のうち足22,23間に対応する部分を備えて構成される経路)において同一方向となるように設定されている。なお、ここでいう「コイルW3に流れる電流によって生じる磁束」とは、図示される磁束φ3とは逆向きの磁束のことである。
【0056】
ここで、上述したようにコイルW1,W2のターン数N1,N2が共通のターン数Nであることに鑑み、また、コイルW3のターン数N3を用いると、以下の式が成立する。
【0057】
Ndφ1/dt=Vin …(c2)
−N3dφ3/dt+Ndφ2/dt=−Vout+Vin …(c3)
上記の式(c1)〜(c3)により、以下の式が得られる。
【0058】
dφ1/dt=Vin/N …(c4)
dφ2/dt={−Vout/(N+N3)}+Vin/N …(c5)
dφ3/dt=Vout/(N+N3) …(c6)
図3(b)は、スイッチング素子Sa,Sbの双方がオフとなる状態を示す。この場合、対称性より、コイルW3に電流は流れない。そして、コイルW1には、図中、破線にて示すように、正極側の入力端子(平滑コンデンサ14の端子)、コイルW1、ダイオードD1、ダイオードD3、および正極側の出力端子(出力用コンデンサ12の端子)の経路で電流が流れる。また、コイルW2には、図中、一点鎖線にて示すように、正極側の入力端子(平滑コンデンサ14の端子)、コイルW2、ダイオードD2、ダイオードD4、および正極側の出力端子(出力用コンデンサ12の端子)の経路で電流が流れる。
【0059】
この場合、以下の式が成立する。
【0060】
dφ1/dt=dφ2/dt=(−Vout+Vin)/N …(c7)
dφ3/dt=0 …(c8)
図3(c)は、スイッチング素子Sbがオン且つスイッチング素子Saがオフとなる状態を示す。この場合、コイルW2に入力電圧Vinが印加されることで、図中、一点鎖線にて示すように、正極側の入力端子(平滑コンデンサ14の端子)、コイルW2およびスイッチング素子Sbの経路で電流が流れる。これにより、コイルW2を鎖交する磁束φ2は、入力電圧Vinに比例しコイルW2のターン数N2に反比例しつつ漸増する。
【0061】
磁束φ2が漸増すると、コイルW3を鎖交する磁束φ3は漸減する。これにより、レンツの規則により、コイルW3には、この磁束φ3の減少を妨げる向きに電流を流そうとする起電力が生じる。このため、ダイオードD1,D4がオン状態となり、図中、破線にて示すように、正極側の入力端子(平滑コンデンサ14の端子)、コイルW1、ダイオードD1、コイルW3、ダイオードD4、および正極側の出力端子(出力用コンデンサ12の端子)の経路で電流が流れる。なお、この際、コイルW1に流れる電流によって生じる磁束とコイルW3に流れる電流によって生じる磁束とは、コイルW1およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路において同一方向となるように設定されている。なお、ここでいう「コイルW3に流れる電流によって生じる磁束」とは、図示される磁束φ3と同じ向きの磁束のことである。
【0062】
ここで、上述したようにコイルW1,W2のターン数N1,N2が共通のターン数Nであることに鑑み、また、コイルW3のターン数N3を用いると、以下の式が成立する。
【0063】
Ndφ2/dt=Vin …(c9)
N3dφ3/dt+Ndφ1/dt=−Vout+Vin …(c10)
上記の式(c1)、(c9)、(c10)により、以下の式が得られる。
【0064】
dφ1/dt={−Vout/(N+N3)}+Vin/N …(c11)
dφ2/dt=Vin/N …(c12)
dφ3/dt=−Vout/(N+N3) …(c13)
ここで、エネルギ保存則より、周期TにおいてコイルW1を鎖交する直流磁束に蓄えられるエネルギと直流磁束から放出されるエネルギとが等しくなることに鑑みれば、周期Tの間で磁束φ1の変動量がゼロとなることから、以下の式が成立する。
【0065】
DVin/N
+D[{−Vout/(N+N3)}+Vin/N]
+(1−2D)(−Vout+Vin)/N
=0 …(c14)
以上より、「N3/N=n」として以下の式が導かれる。
【0066】
Vout/Vin=1+[D(1+2n)/{(1+n)−D(1+2n)}]
…(c15)
次に、時比率Dが0.5よりも大きい場合について、時比率Dと出力電圧Voutとの関係を導出する。
【0067】
スイッチング素子Sa,Sbの双方ともオン状態となる場合、コイルW1を流れる電流の経路は、図3(a)に示したものとなり、コイルW2を流れる電流の経路は、図3(c)に示したものとなることから、上記の式(c2)、(c12)が成立する。ちなみに、この場合、コイルW3に電圧が印加されないため、「dφ3/dt=0」である。
【0068】
以上より、周期Tの間で磁束φ1の変動量がゼロとなることに鑑みれば、以下の式が成立する。
【0069】
DVin/N+(1−D)[{−Vout/(N+N3)}+Vin/N]=0
…(c17)
したがって、以下の式が成立する。
【0070】
Vout/Vin=(1+n)/(1−D) …(c18)
上記(c15)、(c18)に示す昇圧比(Vout/Vin)は、先の図14に示した周知の昇圧チョッパ回路の昇圧比よりも大きくなっている。これは、コイルW3を利用することで、コイルW1,W2を鎖交する直流磁束を漸増させる期間において漸増させるために利用されるコイルのターン数と、同直流磁束を漸減させる期間の少なくとも一部の期間において漸減させるために利用されるコイルのターン数とを相違させることで実現したものである。以下、これについて、コイルW1を鎖交する直流磁束(磁束φ1)を例にとって説明する。
【0071】
磁束φ1を漸増させる期間は、図3(a)に示した期間であり、この期間において、磁束φ1を漸増させるために利用されるコイルのターン数は、上記の式(c2)に示したように、コイルW1のターン数Nに等しい。これに対し、コイル磁束φ1を漸減させる期間である図3(b)に示す期間と図3(c)に示す期間のうち、図3(c)に示す期間においては、上記の式(c11)からわかるように、磁束φ1を漸減させるために利用されるコイルのターン数が、コイルW1のターン数Nとは一致しない。このターン数は、仮に磁束φ1を漸減させるために利用される単一のコイルに「Vin−Vout」の電圧が印加されると想定した場合の値として定義すると、ターン数Nよりも大きい値となっている。これは、コイルW1、W3に電流が流れる際に生じる磁束の方向を、コイルW1,W3の双方を鎖交するループ経路において同一に定めた結果である。
【0072】
上記のように、先の図3(c)に示した状態において直流磁束を漸減させるのに利用されるコイルの仮想的なターン数が大きくなることで、磁束φ1を漸減させる全期間が先の図3(b)に示した状態となる場合と比較して、磁束φ1の平均減少速度は、入力電圧Vinと出力電圧Voutとの差圧が同一なら小さくなる。ただし、磁束φ1の漸増量については、図3(c)の状態の有無に関わらず時比率Dによって定まる値に固定されるため、周期Tにおける磁束φ1の漸増量と漸減量とが同一となるとの要請から、図3(c)の状態がある場合にはない場合と比較して上記差圧の絶対値が拡大する。これが、昇圧比が大きくなる理由である。
【0073】
ちなみに、上記の式(c5),(c11)に示されるように、本実施形態において磁束φ1、φ2を漸減すべく「−Vout+Vin」の電圧が印加される単一のコイルを想定できないのは、コイルW3を、コイルW1およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路と、コイルW2およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路とで共有したためである。
【0074】
しかも、本実施形態では、平滑コンデンサ14からコンバータCNVに入力される電流のリプルを低減することができる。これは次の理由による。
【0075】
コイルW1〜W3のそれぞれに流れる電流をI1〜I3とし、コイルW1,W3の双方を鎖交するループ経路と、コイルW2,W3の双方を鎖交するループ経路とのそれぞれにおいてアンペールの法則を適用すると、以下の式が成立する。
【0076】
N・I1−N3・I3=R1・φ1+R3・φ3 …(c19)
N・I2+N3・I3=R2・φ2−R3・φ3 …(c20)
ここで、磁気抵抗R1は、コイルW1,W3の双方を鎖交する経路のうちコイルW2,W3の双方を鎖交するループ経路との共通部分が除かれた部分の磁気抵抗であり、磁気抵抗R2は、コイルW2,W3の双方を鎖交する経路のうち上記共通部分を除いた部分の磁気抵抗である。また、磁気抵抗R3は、上記共通部分の磁気抵抗である。
【0077】
上記の式(c19)、(c20)から、以下の式(c21)が成立する。
【0078】
Iin=I1+I2=(R1・φ1+R2・φ2)/N …(c21)
上記の式(c21)により、磁束φ1,φ2が連続量であることに鑑みれば、入力電流Iinは、連続量であることがわかる。特に、本実施形態のように、スイッチング素子Saをオンとする期間とスイッチング素子Sbをオンとする期間との位相がπだけずれる設定の場合、磁束φ1の漸増期間と磁束φ2の漸増期間とを極力離間させることができ、入力電流Iinのリプルを抑制することができる。さらに、本実施形態では、コイルW1,W3の双方を鎖交する経路の磁気抵抗とコイルW2、W3の双方を鎖交するループ経路の磁気抵抗とを同一としたため、磁束φ1の変化と磁束φ2の変化とが極力相殺するようになることから、入力電流Iinのリプルをよりいっそう低減することができる。
【0079】
また、上記の式(c6),(c13)によれば、先の図3(a)に示した状態と図3(c)に示した状態とで磁束φ3の変化速度の絶対値が同一且つ符号が逆であり、また、上記の式(c8)によれば、先の図3(b)に示した状態において磁束φ3が変化しない。このため、先の図3(a)に示した状態と先の図3(b)に示した状態との継続時間を互いに等しくする本実施形態によれば、コイルW1,W2のターン数を等しくする設定との協働で、磁束φ3の直流成分をゼロとすることができる。そしてこれにより、足22が直流偏磁しないため、足22を小型化することが可能となる。
【0080】
さらに、本実施形態では、上述したようにスイッチング素子Saがオンとなる位相とスイッチング素子Sbがオンとなる位相とを互いにπだけずらしており、これにより、損失を極力抑制することができる。すなわち、上記の式(c2),(c7),(c11)等に鑑みれば、スイッチング素子Sa,Sbの双方がオンとなる状態や双方がオフとなる状態における磁束φ1,φ2の変化速度の絶対値は、スイッチング素子Sa,Sbのいずれか一方のみがオンとなる状態におけるオンに対応する側の磁束の変化速度の絶対値よりも大きい。そして、コア20における損失が大きくは磁束の変化速度の2乗に比例することに鑑みれば、スイッチング素子Sa,Sbの双方のオン期間や双方のオフ期間を極力短縮することが上記損失低減の上では望ましいため、上記位相の設定は、上記損失を低減する上では最適なものとなる。
【0081】
以下、上記本実施形態における代表的な効果を列挙する。
【0082】
(1)コイルW1,W2のそれぞれを鎖交する直流磁束を、コイルW1,W2のそれぞれによって漸増させた後、コイルW1およびコイルW3、コイルW2およびコイルW3の協働で漸減させた。これにより、直流磁束の増加速度や減少速度の調節の自由度を向上させることができ、ひいては出力電圧を調節するための自由度が向上する。
【0083】
(2)コイルW1,W3(コイルW2,W3)の一方から他方へと電流を流すに際し、コイルW1,W3(コイルW2,W3)のそれぞれによって誘起される磁束についてのそれら一対のコイルW1,W3(コイルW2,W3)を鎖交するループ経路における方向が互いに等しくなるようにした。これにより、昇圧比を向上させることができる。
【0084】
(3)コイルW1,W3とコイルW2,W3との2組を用いて昇圧処理を行った。これにより、コイルW1,W3のみを用いる場合と比較して、コンバータCNVの入力電流のリプルを低減することが容易となる。また、コイルW1のみを用いてコイルW1を鎖交する直流磁束を漸増させるに際して、コイルW3が、流通規制要素(スイッチング素子Sa,Sb、ダイオードD1〜D4)の要求耐圧を上昇させるような電圧を印加することを回避することができる。
【0085】
(4)コイルW1に入力電圧Vinを印加した場合にコイルW1に生じる磁束がコイルW3を鎖交する方向と、コイルW2に入力電圧Vinを印加した場合にコイルW2に生じる磁束がコイルW3を鎖交する方向とが逆となるように設定した。これにより、コイルW1とコイルW2とでコア20を共有するに際し、コア20を小型化することが容易となる。
【0086】
(5)低透磁率部材Lμを、コイルW1,W3の双方を鎖交するループ経路とコイルW2,W3の双方を鎖交するループ経路との共通部分以外の部分に設けた。これにより、コイルW3に誘起される電圧の極性設定を上記としたこととの協働で、コア20に蓄えることが可能なエネルギを大きくしつつもコア20を好適に小型化することができる。すなわち、コア20に蓄えられるエネルギ密度は、磁束密度Bと透磁率μとを用いてB・B/(2・μ)となる。このため、コア20の透磁率よりも低透磁率部材Lμの透磁率を十分に小さくすることで、低透磁率部材Lμにエネルギが集中する。ここで、低透磁率部材Lμを上記共通部分に設ける場合には、磁束φ3が磁束φ1と磁束φ2とによって相殺されたものであることから、低透磁率部材Lμに蓄えられるエネルギは小さくなる。このため、コア20に蓄えられるエネルギを大きくする上では、上記共通部分以外の部分の体格を大きくすることが要求されることとなる。
【0087】
(6)先の図3(a)に示した状態において、コイルW1のみを用いてコイルW1を鎖交する直流磁束を漸増させるに際して、この磁束の増加を打ち消す側の電流がコイルW3に流れることで、この間にコイルW1に流れる電流を、コイルW1のみを用いる場合と比較して大きくできる。すなわち、コイルW1の直流磁束を漸増させる期間においては、以下の式が成立する。
【0088】
R1・φ1+R3・φ3=N1・I1−N3・I3
ここで、φ1、φ3は、コイルW1,W3のそれぞれに印加される電圧およびターン数によって定まるものであるため、左辺は、印加電圧とターン数のみに依存する。一方、コイルW1のみを用いる場合には、以下の式が成立する。
【0089】
(R1+R3)・φ1=N1・I1
ここで、本実施形態にかかる「N1・I1」からコイルW1のみを用いた場合のそれを減算した値は、「R3・(φ3−φ1)+N3・I3」である。ここで、本実施形態では、コイルW1,W3の双方を鎖交するループ経路とコイルW2,W3の双方を鎖交するループ経路との共通部分以外の部分に低透磁率部材Lμを設けることで共通部分の磁気抵抗R3を小さくすることができ、ひいては「R3・(φ3−φ1)」を、「N3・I3」と比較して小さくすることができる。このため、上記の式の電流の符号が磁束φ1の方向を正とした際のアンペールの法則によるものであることに注意すると、電流I3>0であることから、「R3・(φ3−φ1)+N3・I3>0」となる。したがって、コイルW1のみを用いた場合と比較して、入力エネルギ「Vin・I1」を増大させることができ、ひいては昇圧比を大きくすることができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0090】
図4に、本実施形態にかかるコンバータCNVの構成を示す。なお、図4において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0091】
図示されるように、本実施形態では、コイルW1およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路を構成するコア20aと、コイルW2およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路を構成するコア20bとが各別の部材とされる。特に本実施形態では、コア20a,20bとして、トロイダルコアを採用している。この場合、コア20a,20bが円環状であることにより、発熱が起こりやすい角部が存在しないため、コンバータCNVの放熱性を向上させることができる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0092】
図5に、本実施形態にかかるコンバータCNVの構成を示す。なお、図5において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0093】
図示されるように、本実施形態では、出力用コンデンサ12に出力される電流を平滑化するための平滑用インダクタ(コイルW4,W5)を備え、これを鎖交する磁心と、コイルW1,W2,W3を鎖交する磁心とを、一体形成した。これは、コア20に、コイルW4,W5のそれぞれを鎖交する足26,27を追加することで行うことができる。
【0094】
ここで、コイルW4,W5によって生じる磁束とコイルW1,W2,W3の磁束とが干渉しないためには、第1に、コイルW4,W5の双方を鎖交するループ経路におけるコイルW4によって生じる磁束の方向および大きさとコイルW5によって生じる磁束の方向および大きさとを同一とすることが必要である。第2に、コイルW4,W5の双方を鎖交するループ経路とコイルW1,W2の双方を鎖交するループ経路との共通領域に、低透磁率部材Lμを設けないことが必要である。上記第1の条件は、コイルW4,W5のターン数を互いに等しくするとともに、コイルW4,W5の巻き方によって実現されている。ここでは、コイルW4,W5に印加される電圧の絶対値が互いに等しいことを利用している。また、第2の条件は、低透磁率部材Lμを、足21,23,26,27に設けることで実現されている。
【0095】
特に、本実施形態では、コイルW4,W5に電流が流れることで生じる磁束の方向と、コイルW1、W2に電圧が印加されることで生じる磁束の方向とが、コイルW1,W2の双方を鎖交するループ経路上で逆方向となるように設定している。これにより、接続部24,25の磁束を低減することできるため、コア20を小型化することができる。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0096】
図6に、本実施形態にかかるコンバータCNVの構成を示す。なお、図6において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0097】
本実施形態では、コイルW1を鎖交する足21とコイルW2を鎖交する足23との双方によってコイルW3が鎖交されるようにして且つ、コイルを鎖交しない足28,29をさらに備えた。ここで、足28,29は、コイルW3を鎖交するループ経路を構成する要素である。こうした構成によればコイルW1〜W3が足28,29によって挟まれることとなり、足28,29を、コイルW1〜W3等からの電磁ノイズをシールドする電磁シールドとして用いることができる。
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0098】
図7に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図7において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0099】
本実施形態にかかるコンバータCNVは、高電圧バッテリ10の端子電圧(入力電圧Vin)を降圧して出力電圧Voutとして出力するものである。これは、上記ダイオードD1〜D4にスイッチング素子S1〜S4を並列接続して且つ、上記スイッチング素子Sa,SbをダイオードDa,Dbとすることで実現することができる。なお、本実施形態では、スイッチング素子S1〜S4として、NチャネルMOS電界効果トランジスタを想定している。このため、ダイオードD1〜D4は、トランジスタのボディダイオードであってもよい。
【0100】
一方、制御装置30は、スイッチング素子S1〜S4のそれぞれに、操作信号ms1〜ms4を出力することで、降圧処理を行う。図8に、本実施形態にかかる降圧処理のためのスイッチング操作手法を示す。詳しくは、図8(a1)および図8(a2)は、操作信号ms1の推移を示し、図8(b1)および図8(b2)は、操作信号ms2の推移を示し、図8(c1)および図8(c2)は、操作信号ms3の推移を示し、図8(d1)および図8(d2)は、操作信号ms4の推移を示す。なお、図8(a1)〜図8(d1)は、スイッチング素子S1〜S4のオン・オフの周期Tに対するスイッチング素子S1,S4(S2,S3)のオン時間の時比率Dが「0.5」以下である場合を示し、図8(a2)〜図8(d2)は、時比率Dが「0.5」よりも大きい場合を示す。
【0101】
ここで、スイッチング素子S1,S4がオンとなる期間には、正極側の入力端子(平滑コンデンサ14の端子)からコイルW3,W1を介して正極側の出力端子(出力用コンデンサ12の端子)に電流が流れる。この期間は、コイルW1を鎖交する直流磁束が漸増することでエネルギを蓄える期間である。
【0102】
これに対し、スイッチング素子S2,S3がオンとなる期間や、スイッチング素子S1〜S4が全てオフまたはオンとなる期間には、負極側の入力(出力)端子からダイオードDaおよびコイルW1を介して正極側の出力端子(出力用コンデンサ12の端子)に電流が流れる。この期間は、コイルW1を鎖交する直流磁束が漸減することでエネルギを放出する期間である。
【0103】
ここで、エネルギ保存則により、周期Tにおける上記直流磁束の増加量と減少量とが等しいことに鑑みれば、出力電圧Voutが定まる。特に、本実施形態では、エネルギを蓄える際に、コイルW1に加えてコイルW3を利用する。このため、磁束φ1の増加速度がコイルW1のみを用いた場合よりも小さくなる。したがって、コイルW1のみを用いて磁束φ1を増減させる場合と比較して、出力電圧Voutが小さくなる。
【0104】
実際、本実施形態では、D=0.5以下の場合、下記の式(c22)が成立し、D>0.5の場合、下記の式(c23)が成立する。
【0105】
Vout/Vin=D/(1+n) …(c22)
Vout/Vin=D−[(1−D)・n/(1+n)] …(c23)
これらは、周知の降圧チョッパ回路の降圧比Dと比較して小さくなっている。さらに、本実施形態では、直流磁束(磁束φ1)を漸増させる期間において以下の式が成立し、入力エネルギを低減することができることも、降圧比をいっそう下げることに寄与している。
【0106】
R1・φ1+R3・φ3=N1・I1+N3・I3
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0107】
図9に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図9において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0108】
本実施形態にかかるコンバータCNVは、入力電圧Vinを昇圧する機能と、出力電圧Voutを降圧する機能との双方を兼ね備えている。これは、第1の実施形態(図1)の構成と、第5の実施形態(図7)の構成とを併せることで実現することができる。すなわち、スイッチング素子Sa,Sb,S1〜S4と、ダイオードDa,Db,D1〜D4とを備えることで実現することができる。
【0109】
一方、制御装置30は、スイッチング素子Sa,Sb,S1〜S4のそれぞれに、操作信号msa,msb,ms1〜ms4を出力することで、昇圧処理や降圧処理を行う。ここで、昇圧処理を行う場合、先の第1の実施形態の要領でスイッチング素子Sa,Sbを操作すればよく、スイッチング素子S1〜S4についてはこれをオフ状態としこれに逆並列接続されたダイオードD1〜D4が利用される。一方、降圧処理を行う場合、スイッチング素子S1〜S4を操作し、スイッチング素子Sa,Sbについてはオフ状態としこれに逆並列接続されたダイオードDa,Dbが利用される。
【0110】
図10に、降圧処理に際してのスイッチング操作を示す。図10(a)は、操作信号ms1の推移を示し、図10(b)は、操作信号ms2の推移を示し、図10(c)は、操作信号ms3の推移を示し、図10(d)は、操作信号ms4の推移を示す。なお、図10に示すスイッチング操作は、「D<0.5」において利用可能なものであるため、本実施形態では「D<0.5」に制限することを想定している。また、本実施形態でも、リプル電流を最大限抑制すべく、スイッチング素子S1,S4をオンする期間とスイッチング素子S2,S3をオンする期間との位相をπだけずらす設定を行っている。これは、スイッチング素子S1〜S4をオンとする期間を「0.5×T」とすることで実現することができる。
【0111】
図示されるように、本実施形態では、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S4をオン状態とすることでエネルギを蓄えた後、スイッチング素子S1をオフとするとともに、スイッチング素子S3をオンとする。その後、スイッチング素子S4をオフするとともにスイッチング素子S2およびスイッチング素子S3をオン状態とすることでエネルギを蓄えた後、スイッチング素子S3をオフとするとともにスイッチング素子S1をオンとする。なお、スイッチング素子S3、S4がオンとなる期間や、スイッチング素子S1,S2がオンとなる期間は、スイッチング素子S1〜S4がオフとなる期間と、磁束の変化は同じである。
<第7の実施形態>
以下、第7の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0112】
図11に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図11において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0113】
本実施形態にかかるコンバータCNVは、入力電圧Vinに対して出力電圧の極性が反転するものである。これは、上記第6の実施形態(図9)の構成において、スイッチング素子Sa,Sbの一端を接地する代わりに、高電圧バッテリ10の負極側に接続することで実現する。
【0114】
一方、制御装置30は、スイッチング素子Sa,Sb,S1〜S4のそれぞれに、操作信号msa,msb,ms1〜ms4を出力することで、昇圧処理や降圧処理を行う。ここで、入力電圧Vinの絶対値を大きくして出力電圧Voutとする昇圧処理を行う場合、先の第1の実施形態の要領でスイッチング素子Sa,Sbを操作すればよく、スイッチング素子S1〜S4についてはこれをオフ状態としこれに逆並列接続されたダイオードD1〜D4が利用される。一方、出力電圧Voutの絶対値を小さくして入力電圧Vinとする降圧処理を行う場合、スイッチング素子S1〜S4を操作し、スイッチング素子Sa,Sbについてはオフ状態としこれに逆並列接続されたダイオードDa,Dbが利用される。この際のスイッチング素子S1〜S4の操作は、先の図10に示したものと同様とすればよい。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0115】
「コイルW3の鎖交磁束の方向について」
たとえば、上記第1の実施形態について、コイルW1に入力電圧Vinが印加された場合にコイルW1に生じる磁束がコイルW3を鎖交する方向と、コイルW2に入力電圧Vinが印加された場合にコイルW2に生じる磁束がコイルW3を鎖交する方向とを同一としてもよい。ここで、たとえばコイルW1の巻き方を変更してこうした設定を実現する場合、ダイオードD1のカソード側をダイオードD2のカソード側に接続すればよい。
【0116】
「第1〜第4整流手段、第1コイル用整流手段、第2コイル用整流手段について」
ダイオードD1〜D4や、ダイオードDa,Dbに限らない。たとえばサイリスタ等であってもよい。
【0117】
「第1〜第4開閉手段について」
NチャネルMOS電界効果トランジスタに限らず、PチャネルMOS電界効果トランジスタ等、任意の電界効果トランジスタであってよい。また、電界効果トランジスタに限らず、たとえばIGBT等であってもよい。
【0118】
「結合手段について」
結合手段が、コイルW1に接続されるコイルW3の端部とコイルW2に接続されるコイルW3の端部とを相違させるものに限らないことについては、「コイルW3の鎖交磁束の方向について」の欄に記載したとおりである。
【0119】
「力行、回生制御について」
たとえば先の第6の実施形態(図9)の構成において、スイッチング素子Saとスイッチング素子S1,S4とを交互にオン操作(相補駆動)して且つ、スイッチング素子Sbとスイッチング素子S2,S3とを相補駆動してもよい。詳しくは、先の図8(a1)〜図8(d1)に示したようにスイッチング素子S1〜S4を操作するに際し、スイッチング素子S1,S4のオフ期間をスイッチング素子Saのオン期間とし、スイッチング素子S2,S3のオフ期間をスイッチング素子Sbのオン期間としてもよい。これにより、入力電圧Vinと出力電圧Voutとの大小関係に応じて力行制御、回生制御が成り行きで行われることとなる。これが可能であるのは、上記の式(c15)、(c18)にそれぞれにおいて、時比率Dを「1−D」に置き換えると、上記の式(c23)、(c22)のそれぞれとなるためである。ちなみに、図10(a)〜図10(d)に示したようにスイッチング素子S1〜S4を操作するに際し、スイッチング素子S1のオフ期間をスイッチング素子Saのオン期間とし、スイッチング素子S2のオフ期間をスイッチング素子Sbのオン期間としてもよい。
【0120】
なお、このように力行、回生制御を成り行きに任せる手法は、上記第7の実施形態(図11)の構成においても可能である。
【0121】
「低透磁率部材Lμについて」
低透磁率部材Lμの配置としては、上記第1の実施形態等に例示したものに限らない。ただし、コイルW1とコイルW2とで磁心を共有化して且つコイルW3に誘起される磁束が交流となる設定の場合、大きなエネルギを蓄えるうえでは、低透磁率部材Lμを、図12の領域LA,LBのそれぞれに設けることが望ましい。ただし、上記第3の実施形態(図5)の構成においては、接続部24,25には、低透磁率部材Lμを設けないことが望ましい。これにより、入力電流と出力電流との挙動が互いに干渉しあうことを回避することができる。
【0122】
上記第4〜第7の実施形態では、コア20が低透磁率部材Lμを備えない構成を例示したが、備えてもよい。
【0123】
なお、コイルW3を鎖交する部分にも低透磁率部材Lμを設けることも可能である。また、コイルW1に入力電圧Vinが印加される場合にコイルW1に生じる磁束がコイルW3を鎖交する方向と、コイルW2に入力電圧Vinが印加される場合にコイルW2に生じる磁束がコイルW3を鎖交する方向とを同一とする場合には、低透磁率部材LμをコイルW3に鎖交する部分に限って設けるなどしても、コア20に大きなエネルギを蓄えることができる。
【0124】
低透磁率部材Lμを備える代わりに、これが形成される部分を空間(ギャップ)としてもよい。
【0125】
「一対のループ経路の磁気抵抗について」
コイルW1,W3を鎖交するループ経路と、コイルW2,W3を鎖交するループ経路との磁気抵抗が互いに等しくなる設定が望ましいものの、磁気抵抗が等しくなる設定は必須ではない。
【0126】
「コイルの数について」
コイルW1,W2,W3からなるものに限らない。たとえば図13に示すように、コイルWa,Wb,Wc,Wd,We,Wfからなるものであってもよい。ここで、コイルWa,Wb,Wdのそれぞれは、第1の実施形態のコイルW1,W2,W3に対応しており、コイルWb,Wc,Wfのそれぞれは、第1の実施形態のコイルW1,W2,W3に対応しており、コイルWc,Wa,Weのそれぞれは、第1の実施形態のコイルW1,W2,W3に対応している。
【0127】
「直列接続される一対のコイルそれぞれによって誘起される磁束の方向について」
直列接続される一対のコイル(コイルW1およびW3等)に電流が流れる際に誘起される磁束としては、一対のコイルを鎖交するループ経路における方向が同一となるものに限らず、逆となる場合であってもよい。
【0128】
「直列接続される一対のコイルの利用目的について」
昇圧比を高めたり降圧比を下げたりするために利用するものにも限らない。昇圧比を下げたり降圧比を高めたりする設定とすることで、時比率Dに対する出力電圧の変化速度を低下させるなら、出力電圧の微調整が容易となるため、この目的での利用も考えられる。
【0129】
「入力電圧について」
たとえば上記第1の実施形態(図1)において、コイルW1に印加される入力電圧とコイルW2に印加される入力電圧とが互いに相違するように、各別のバッテリの端子電圧を印加するようにしてもよい。
【0130】
また、直流電圧源の端子電圧を直接の入力電圧とするものに限らず、直流電圧源とコンバータCNVの入力端子との間にフィルタとしてのインダクタを備える等してもよい。
【0131】
「回路、動作の対称性について」
コイルW1,W2のターン数を同一とするものに限らない。また、コイルW1およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路とコイルW2およびコイルW3の双方を鎖交するループ経路との磁気抵抗が同一とされるものに限らない。特に、「入力電圧について」の欄に記載したように、コイルW1,W2の印加電圧が相違する場合には、ターン数や磁気抵抗を同一とすることによっては、電気的な状態の対称性を保つことができないため、これらをずらしたり、時比率Dを相違させたりすることで電気的な状態の対称性を極力回復するようにしてもよい。
【0132】
「そのほか」
・上記第5の実施形態(図7、図8)において、「D<0.5」とするなら、上記第6の実施形態(図10)のスイッチング操作を行ってもよい。
【0133】
・上記第6の実施形態(図9、図10)や上記第7の実施形態(図11)において、上記第5の実施形態(図7、図8)のスイッチング操作を行ってもよい。
【0134】
・一対のコイルW1,W2への電圧印加期間の位相については、πだけずれたものとするものに限らない。
【0135】
・上記第3の実施形態において、磁束φ4,φ5の向きを逆とする設定としてもよい。この場合、低透磁率部材Lμを、コイルW1およびコイルW2を鎖交するループ経路とコイルW4およびコイルW5を鎖交するループ経路との共通部分に設けても、大きなエネルギを蓄えることは可能となる。ただし、入力電流の挙動と出力電流の挙動との干渉を回避する上では、この場合であっても、低透磁率部材Lμを共通部分以外に設けることが望ましい。
【0136】
・上記第3の実施形態において、コイルW4,W5は、平滑用インダクタに限らず、別の回路において利用されるコイルであってもよい。
【0137】
・入力電圧としては、高電圧バッテリ10の端子電圧に限らない。たとえば燃料電池の端子電圧であってもよい。
【0138】
・電力変換装置としては、車両に搭載されるものにも限らない。
【符号の説明】
【0139】
Sa…スイッチング素子(第1コイル用開閉手段の一実施形態)、Sb…スイッチング素子(第2コイル用開閉手段の一実施形態)、W1…コイル(第1コイルの一実施形態)、W2…コイル(第2コイルの一実施形態)、W3…コイル(第3コイルの一実施形態)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧の大きさを変換して出力電圧として出力する電圧変換装置において、
前記入力電圧が印加される端子および前記出力電圧が印加される端子のうちの一対の端子であって且つ、前記入力電圧、前記出力電圧、ならびに前記入力電圧および前記出力電圧の差圧の3つの電圧のうちのいずれか1つの電圧である第1電圧を一対の端子間の差圧とする一対の第1電圧印加用端子と、
前記入力電圧が印加される端子および前記出力電圧が印加される端子のうちの一対の端子であって且つ、前記入力電圧、前記出力電圧、ならびに前記入力電圧および前記出力電圧の差圧の3つの電圧のうちの前記第1電圧以外のいずれか一方の電圧である第2電圧を一対の端子間の差圧とする一対の第2電圧印加用端子と、
互いに磁気結合されて且つ互いに直列接続された一対のコイルのうちの一方のコイルの両端に前記第1電圧印加用端子を介して前記第1電圧を印加するに際し、前記一対のコイルの接続点を介して前記一対のコイルの一方および他方間に電流が流れることを回避する分離手段と、
前記一対のコイルの直列接続体の両端に前記第2電圧印加用端子を介して前記第2電圧を印加する結合手段とを備え、
前記一方のコイルに第1電圧を印加する期間および前記一対のコイルに前記第2電圧を印加する期間の一対の期間について、そのいずれか一方の期間において前記一方のコイルを鎖交する直流磁束を増加させ、他方の期間において前記直流磁束を減少させるように設定し、
前記一対のコイルを2組備えて且つ、それぞれの組についての前記一方のコイルを第1コイル、第2コイルとした場合、前記他方のコイルが、前記2組によって共有される第3コイルであり、
前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交して且つ磁心によって案内されたループ経路と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交して且つ磁心によって案内されたループ経路として、互いに相違するものが存在することを特徴とする電圧変換装置。
【請求項2】
前記一対のコイルに前記第2電圧が印加されることで前記一対のコイルに電流が流れる場合、前記一対のコイルのそれぞれによって誘起される磁束についての前記一対のコイルの双方を鎖交するループ経路における方向が互いに等しくなるように設定したことを特徴とする請求項1記載の電圧変換装置。
【請求項3】
前記第1コイルに前記第1電圧を印加した場合に前記第1コイルに生じる磁束が前記第3コイルを鎖交する方向と、前記第2コイルに前記第1電圧を印加した場合に前記第2コイルに生じる磁束が前記第3コイルを鎖交する方向とが逆となるように設定したことを特徴とする請求項1または2記載の電圧変換装置。
【請求項4】
前記結合手段によって前記第2コイルおよび前記第3コイルに前記第2電圧が印加されて且つ前記第1コイルに前記第1電圧が印加される状態と、前記結合手段によって前記第1コイルおよび前記第3コイルに前記第2電圧が印加されて且つ前記第2コイルに前記第1電圧が印加される状態とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電圧変換装置。
【請求項5】
前記分離手段および前記結合手段は、
前記第1コイルおよび前記第3コイルの接続手段であって且つ前記第1コイルから前記第3コイルへの電流の流れを許容して且つ逆方向の電流の流れを阻止する第1整流手段と、
前記第2コイルおよび前記第3コイルの接続手段であって且つ前記第2コイルから前記第3コイルへの電流の流れを許容して且つ逆方向の電流の流れを阻止する第2整流手段と、
前記第1整流手段の出力側から前記第2電圧印加用端子への電流の流れを許容して且つ逆方向の電流の流れを阻止する第3整流手段と、
前記第2整流手段の出力側から前記第2電圧印加用端子への電流の流れを許容して且つ逆方向の電流の流れを阻止する第4整流手段と、
前記第1コイルおよび前記第1電圧印加用端子間を開閉する第1コイル用開閉手段と、
前記第2コイルおよび前記第1電圧印加用端子間を開閉する第2コイル用開閉手段と、
を備えることを特徴とする請求項4記載の電圧変換装置。
【請求項6】
前記分離手段および前記結合手段は、
前記第1コイルおよび前記第3コイル間を電気的に開閉する第1開閉手段と、
前記第2コイルおよび前記第3コイル間を電気的に開閉する第2開閉手段と、
前記第3コイルの一方の端部および前記第2電圧印加用端子の間を開閉する第3開閉手段と、
前記第3コイルの他方の端部および前記第2電圧印加用端子間を開閉する第4開閉手段と、
前記第1コイル経由で前記第1電圧印加用端子のうち低電位側から高電位側へと電流が流れることを許容して且つ逆方向に流れることを阻止する第1コイル用整流手段と、
前記第2コイル経由で前記第1電圧印加用端子のうち低電位側から高電位側へと電流が流れることを許容して且つ逆方向に流れることを阻止する第2コイル用整流手段と、
を備えることを特徴とする請求項4記載の電圧変換装置。
【請求項7】
前記分離手段および前記結合手段は、
前記第1コイルおよび前記第3コイル間を電気的に開閉する第1開閉手段と、
前記第2コイルおよび前記第3コイル間を電気的に開閉する第2開閉手段と、
前記第3コイルの一方の端部および前記第2電圧印加用端子の間を開閉する第3開閉手段と、
前記第3コイルの他方の端部および前記第2電圧印加用端子間を開閉する第4開閉手段と、
前記第1コイルおよび前記第1電圧印加用端子間を開閉する第1コイル用開閉手段と、
前記第2コイルおよび前記第1電圧印加用端子間を開閉する第2コイル用開閉手段と、
を備えることを特徴とする請求項4記載の電圧変換装置。
【請求項8】
前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路とのそれぞれは、磁心を備えて構成されて且つ、他の部分と比較して透磁率の低い箇所を備えることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の電圧変換装置。
【請求項9】
前記第1コイルおよび前記第3コイルを鎖交するループ経路を構成する磁心と、前記第2コイルおよび前記第3コイルを鎖交するループ経路を構成する磁心とが一体的に形成され、
前記透磁率の低い部分は、前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路と前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路との共通部分以外の部分に構成されていることを特徴とする請求項8記載の電圧変換装置。
【請求項10】
前記第1コイルおよび前記第2コイルのターン数が互いに等しく設定されており、
前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路とについて、それらの磁気抵抗を同一としたことを特徴とする請求項3〜9のいずれか1項に記載の電圧変換装置。
【請求項11】
前記第1コイルへの前記第1電圧印加用端子による前記第1電圧の印加期間と、前記第2コイルへの前記第1電圧印加用端子による前記第1電圧の印加期間とを同一として且つ、前記第1コイルへの前記第2電圧印加用端子による前記第2電圧の印加期間と、前記第2コイルへの前記第2電圧印加用端子による前記第2電圧の印加期間とを同一としたことを特徴とする請求項10記載の電圧変換装置。
【請求項12】
第1コイルへの前記第1電圧印加用端子による前記第1電圧の印加期間と、前記第2コイルへの前記第1電圧印加用端子による前記第1電圧の印加期間との位相をπだけずらすことを特徴とする請求項11記載の電圧変換装置。
【請求項13】
前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路を構成する磁心と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路を構成する磁心とが一体的に形成されていることを特徴とする請求項3〜12のいずれか1項に記載の電圧変換装置。
【請求項14】
前記磁心は、前記第1コイル、前記第2コイルおよび前記第3コイルを鎖交しないループ経路であって且つ、一対のコイルを鎖交するループ経路をさらに備え、
該一対のコイルは、それらを鎖交する前記ループ経路上における方向および大きさが互いに等しい磁束を誘起することを特徴とする請求項13記載の電圧変換装置。
【請求項15】
前記磁心は、コイルを鎖交しないループ経路であって且つ、前記第1コイル、前記第2コイルおよび前記第3コイルを挟むループ経路を構成することを特徴とする請求項14記載の電圧変換装置。
【請求項16】
前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路を構成する磁心と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路を構成する磁心とが、各別の磁心であることを特徴とする請求項3〜8,10〜12のいずれか1項に記載の電圧変換装置。
【請求項1】
入力電圧の大きさを変換して出力電圧として出力する電圧変換装置において、
前記入力電圧が印加される端子および前記出力電圧が印加される端子のうちの一対の端子であって且つ、前記入力電圧、前記出力電圧、ならびに前記入力電圧および前記出力電圧の差圧の3つの電圧のうちのいずれか1つの電圧である第1電圧を一対の端子間の差圧とする一対の第1電圧印加用端子と、
前記入力電圧が印加される端子および前記出力電圧が印加される端子のうちの一対の端子であって且つ、前記入力電圧、前記出力電圧、ならびに前記入力電圧および前記出力電圧の差圧の3つの電圧のうちの前記第1電圧以外のいずれか一方の電圧である第2電圧を一対の端子間の差圧とする一対の第2電圧印加用端子と、
互いに磁気結合されて且つ互いに直列接続された一対のコイルのうちの一方のコイルの両端に前記第1電圧印加用端子を介して前記第1電圧を印加するに際し、前記一対のコイルの接続点を介して前記一対のコイルの一方および他方間に電流が流れることを回避する分離手段と、
前記一対のコイルの直列接続体の両端に前記第2電圧印加用端子を介して前記第2電圧を印加する結合手段とを備え、
前記一方のコイルに第1電圧を印加する期間および前記一対のコイルに前記第2電圧を印加する期間の一対の期間について、そのいずれか一方の期間において前記一方のコイルを鎖交する直流磁束を増加させ、他方の期間において前記直流磁束を減少させるように設定し、
前記一対のコイルを2組備えて且つ、それぞれの組についての前記一方のコイルを第1コイル、第2コイルとした場合、前記他方のコイルが、前記2組によって共有される第3コイルであり、
前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交して且つ磁心によって案内されたループ経路と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交して且つ磁心によって案内されたループ経路として、互いに相違するものが存在することを特徴とする電圧変換装置。
【請求項2】
前記一対のコイルに前記第2電圧が印加されることで前記一対のコイルに電流が流れる場合、前記一対のコイルのそれぞれによって誘起される磁束についての前記一対のコイルの双方を鎖交するループ経路における方向が互いに等しくなるように設定したことを特徴とする請求項1記載の電圧変換装置。
【請求項3】
前記第1コイルに前記第1電圧を印加した場合に前記第1コイルに生じる磁束が前記第3コイルを鎖交する方向と、前記第2コイルに前記第1電圧を印加した場合に前記第2コイルに生じる磁束が前記第3コイルを鎖交する方向とが逆となるように設定したことを特徴とする請求項1または2記載の電圧変換装置。
【請求項4】
前記結合手段によって前記第2コイルおよび前記第3コイルに前記第2電圧が印加されて且つ前記第1コイルに前記第1電圧が印加される状態と、前記結合手段によって前記第1コイルおよび前記第3コイルに前記第2電圧が印加されて且つ前記第2コイルに前記第1電圧が印加される状態とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電圧変換装置。
【請求項5】
前記分離手段および前記結合手段は、
前記第1コイルおよび前記第3コイルの接続手段であって且つ前記第1コイルから前記第3コイルへの電流の流れを許容して且つ逆方向の電流の流れを阻止する第1整流手段と、
前記第2コイルおよび前記第3コイルの接続手段であって且つ前記第2コイルから前記第3コイルへの電流の流れを許容して且つ逆方向の電流の流れを阻止する第2整流手段と、
前記第1整流手段の出力側から前記第2電圧印加用端子への電流の流れを許容して且つ逆方向の電流の流れを阻止する第3整流手段と、
前記第2整流手段の出力側から前記第2電圧印加用端子への電流の流れを許容して且つ逆方向の電流の流れを阻止する第4整流手段と、
前記第1コイルおよび前記第1電圧印加用端子間を開閉する第1コイル用開閉手段と、
前記第2コイルおよび前記第1電圧印加用端子間を開閉する第2コイル用開閉手段と、
を備えることを特徴とする請求項4記載の電圧変換装置。
【請求項6】
前記分離手段および前記結合手段は、
前記第1コイルおよび前記第3コイル間を電気的に開閉する第1開閉手段と、
前記第2コイルおよび前記第3コイル間を電気的に開閉する第2開閉手段と、
前記第3コイルの一方の端部および前記第2電圧印加用端子の間を開閉する第3開閉手段と、
前記第3コイルの他方の端部および前記第2電圧印加用端子間を開閉する第4開閉手段と、
前記第1コイル経由で前記第1電圧印加用端子のうち低電位側から高電位側へと電流が流れることを許容して且つ逆方向に流れることを阻止する第1コイル用整流手段と、
前記第2コイル経由で前記第1電圧印加用端子のうち低電位側から高電位側へと電流が流れることを許容して且つ逆方向に流れることを阻止する第2コイル用整流手段と、
を備えることを特徴とする請求項4記載の電圧変換装置。
【請求項7】
前記分離手段および前記結合手段は、
前記第1コイルおよび前記第3コイル間を電気的に開閉する第1開閉手段と、
前記第2コイルおよび前記第3コイル間を電気的に開閉する第2開閉手段と、
前記第3コイルの一方の端部および前記第2電圧印加用端子の間を開閉する第3開閉手段と、
前記第3コイルの他方の端部および前記第2電圧印加用端子間を開閉する第4開閉手段と、
前記第1コイルおよび前記第1電圧印加用端子間を開閉する第1コイル用開閉手段と、
前記第2コイルおよび前記第1電圧印加用端子間を開閉する第2コイル用開閉手段と、
を備えることを特徴とする請求項4記載の電圧変換装置。
【請求項8】
前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路とのそれぞれは、磁心を備えて構成されて且つ、他の部分と比較して透磁率の低い箇所を備えることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の電圧変換装置。
【請求項9】
前記第1コイルおよび前記第3コイルを鎖交するループ経路を構成する磁心と、前記第2コイルおよび前記第3コイルを鎖交するループ経路を構成する磁心とが一体的に形成され、
前記透磁率の低い部分は、前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路と前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路との共通部分以外の部分に構成されていることを特徴とする請求項8記載の電圧変換装置。
【請求項10】
前記第1コイルおよび前記第2コイルのターン数が互いに等しく設定されており、
前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路とについて、それらの磁気抵抗を同一としたことを特徴とする請求項3〜9のいずれか1項に記載の電圧変換装置。
【請求項11】
前記第1コイルへの前記第1電圧印加用端子による前記第1電圧の印加期間と、前記第2コイルへの前記第1電圧印加用端子による前記第1電圧の印加期間とを同一として且つ、前記第1コイルへの前記第2電圧印加用端子による前記第2電圧の印加期間と、前記第2コイルへの前記第2電圧印加用端子による前記第2電圧の印加期間とを同一としたことを特徴とする請求項10記載の電圧変換装置。
【請求項12】
第1コイルへの前記第1電圧印加用端子による前記第1電圧の印加期間と、前記第2コイルへの前記第1電圧印加用端子による前記第1電圧の印加期間との位相をπだけずらすことを特徴とする請求項11記載の電圧変換装置。
【請求項13】
前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路を構成する磁心と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路を構成する磁心とが一体的に形成されていることを特徴とする請求項3〜12のいずれか1項に記載の電圧変換装置。
【請求項14】
前記磁心は、前記第1コイル、前記第2コイルおよび前記第3コイルを鎖交しないループ経路であって且つ、一対のコイルを鎖交するループ経路をさらに備え、
該一対のコイルは、それらを鎖交する前記ループ経路上における方向および大きさが互いに等しい磁束を誘起することを特徴とする請求項13記載の電圧変換装置。
【請求項15】
前記磁心は、コイルを鎖交しないループ経路であって且つ、前記第1コイル、前記第2コイルおよび前記第3コイルを挟むループ経路を構成することを特徴とする請求項14記載の電圧変換装置。
【請求項16】
前記第1コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路を構成する磁心と、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方を鎖交するループ経路を構成する磁心とが、各別の磁心であることを特徴とする請求項3〜8,10〜12のいずれか1項に記載の電圧変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−51758(P2013−51758A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187009(P2011−187009)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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