説明

電圧監視装置

【課題】変圧器内の共振部を直接測定することなく、時間の経過に伴う共振部の電圧を算出ことが可能な電圧監視装置を提供する。
【解決手段】電圧監視装置は、変圧器の1次コイルに印加される入力電圧をフーリエ変換する変換部と、変換部の変換結果に対し、入力電圧と変圧器において電圧共振が生じる部位の電圧とに基づいて予め算出された変圧器の周波数伝達関数を乗算する乗算部と、部位の電圧を監視すべく、乗算部の乗算結果を逆フーリエ変換して時間の経過に伴う部位の電圧を算出する算出部と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
雷等によるサージが変圧器に入力されると、例えば変圧器内のコイル等の共振現象により非常に高い共振電圧が変圧器内に発生することがある。このような共振電圧が発生すると、変圧器内で絶縁破壊が生じる場合がある。したがって、変圧器内の絶縁破壊の可能性等を判定するために、共振部の電圧を把握することが重要となる。しかしながら、共振部の電圧を直接測定することは、共振部が破壊され易くなるため難しい。このため、例えば、算出した変圧器のアドミタンスに基づいて、共振電圧の応答倍率(電圧レベル)が求められることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−319065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に共振電圧により共振部の部位間に絶縁破壊が生じるか否かは、その共振部に生じる共振電圧のレベルと、共振電圧の発生期間とに基づいて定まる。しかしながら、特許文献1に開示されている方法では、共振電圧が発生する期間を知ることはできない。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、変圧器内の共振部を直接測定することなく、時間の経過に伴う共振部の電圧を算出ことが可能な電圧監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一つの側面に係る電圧監視装置は、変圧器の1次コイルに印加される入力電圧をフーリエ変換する変換部と、前記変換部の変換結果に対し、前記入力電圧と前記変圧器において電圧共振が生じる部位の電圧とに基づいて予め算出された前記変圧器の周波数伝達関数を乗算する乗算部と、前記部位の電圧を監視すべく、前記乗算部の乗算結果を逆フーリエ変換して時間の経過に伴う前記部位の電圧を算出する算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
変圧器内の共振部を直接測定することなく、時間の経過に伴う共振部の電圧を算出ことが可能な電圧監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態である変圧器10及び電圧監視装置15の構成を示した図である。
【図2】マイコン82が実現する機能ブロックの構成を示す図である。
【図3】伝達関数F(ω)を求める際の測定システム100の構成を示す図である。
【図4】タップt1とタップt2との間のV−t曲線の波形を示す図である。
【図5】出力電圧Vout(t)の時間変化の一例を示す図である。
【図6】出力電圧Vout(t)の時間変化の一例を示す図である。
【図7】電圧監視装置15の動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】電圧監視装置15の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態である変圧器10及び電圧監視装置15の構成を示した図である。なお、図1における変圧器10は、主要な構成のみを示している。
【0011】
変圧器10は、例えば変電所に配置された三相用の変圧器であり、1次コイル20〜22、及びハンドホール70を含んで構成される。
【0012】
1次コイル20は、U相の電圧が印加される1次側のコイルであり、主コイル30、転位コイル31、転位切換器32、タップコイル33、タップ切換器34を含んで構成される。主コイル30の一端にはU相の電圧が印加され、他端は転位コイル31に接続される。転位切換器32は、主コイル30または転位コイル31の何れかを選択し、転位コイル31を使用するか否かを切り換える切換器である。転位切換器32が主コイル30を選択している場合、主コイル30はタップコイル33に接続される。一方、転位切換器32が転位コイル31を選択している場合、主コイル30及び転位コイル31は、タップコイル33に接続される。このため、転位切換器32が転位コイル31を選択している場合の方が、1次コイル20の巻数は多くなる。タップコイル33は、例えば10個のタップt1〜t10を含むコイルである。タップ切換器34は、タップt1〜t10のうち何れかを選択することにより1次コイル20の実質的な巻数を変更する。また、タップ切換器34が選択したタップは1次側の中性点へと接続される。
【0013】
1次コイル21は、V相の電圧が印加される1次側のコイルであり、主コイル40、転位コイル41、転位切換器42、タップコイル43、タップ切換器44を含んで構成される。1次コイル22は、W相の電圧が印加される1次側のコイルであり、主コイル50、転位コイル51、転位切換器52、タップコイル53、タップ切換器54を含んで構成される。1次コイル21,22は、1次コイル20と同様の構成であるため、詳細は割愛する。
【0014】
ハンドホール70は、例えば、変圧器10の絶縁油を交換する際に用いられるプレートである。
【0015】
電圧監視装置15は、電圧測定器80、メモリ81、及びマイコン82を含んで構成され、変圧器10に入力される電圧に基づいて、変圧器10の内部で共振現象が生じる共振部の電圧の時間波形を算出する。なお、ここで変圧器10の内部の共振現象は、例えば、1次コイル20〜22における誘導性リアクタンスと容量性リアクタンスとに基づいて生じる。
【0016】
ところで、一般的な変圧器においては、特許文献1に記載されているように、タップコイル等のタップ間で共振現象が発生することが多い。このため、変圧器10においても他の一般的な変圧器と同様に、例えば、U相、V相の入力端子間にサージ等が発生すると、タップコイル33のタップt1とタップt2との間に共振現象が生じることとする。以下、本実施形態では、変圧器10のU相、V相の入力端子間にサージが発生すると、タップコイル33のタップt1とタップt2との間に共振現象が生じることとして説明する。
【0017】
電圧測定器80は、変圧器10のU相、V相の入力端子間に生じる入力電圧Vinを測定し、デジタルデータに変換する。
【0018】
メモリ81は、マイコン82が実行するプログラムデータや、各種データを記憶する。
【0019】
マイコン82は、メモリ81に記憶されたプログラムデータを実行することにより、図2に示すような変換部90、乗算部91、算出部92、検出部93,94、及び判定部95を実現する。なお、マイコン82は、マイコン82が処理等するデータを適宜記憶する図示しないRAM(Random Access Memory)を含む。
【0020】
変換部90は、電圧測定器80から出力され、デジタル化された入力電圧Vinをフーリエ変換する。つまり、変換部90は、時間領域の入力電圧Vin(t)を周波数領域の入力電圧Vin(ω)へと変換する。
【0021】
乗算部91は、変換部90でフーリエ変換された入力電圧Vin(ω)に対し、U相、V相の夫々の入力端子と、タップt1及びタップt2との間の周波数領域の伝達関数F(ω)を乗算する。具体的には乗算部91は、
Vout(ω)=Vin(ω)×F(ω)・・・(1)
を実行する。なお、ここで出力電圧Vout(ω)は、変圧器10の共振部、つまりタップt1及びタップt2の周波数領域における電圧である。また、伝達関数F(ω)は、例えば、図3に示すような測定システム100により予め求められ、例えばメモリ81に記憶されている。
【0022】
図3は、変圧器10の伝達関数F(ω)を求めるための測定システム100であり、変圧器11、入力電圧印加装置110、及び出力電圧測定装置120を含んで構成される。
【0023】
変圧器11は、変圧器10のハンドホール70を測定用ハンドホール75に変更した以外は変圧器10と同じである。測定用ハンドホール75は、変圧器11の内部の電圧を測定できるよう、測定ポートが2つ設けられたプレートである。なお、変圧器11には変圧器10と同様に絶縁油が入っている。
【0024】
入力電圧印加装置110は、所定の電圧Va(t)を生成し、変圧器11のU相、V相の入力端子へと印加する。
【0025】
出力電圧測定装置120は、測定用ハンドホール75の測定ポートを介し、タップコイル33のタップt1と,タップt2との間の電圧Vb(t)を測定する。
【0026】
このため、測定システム100では、電圧Va(t)がU相、V相の入力端子に印加された際のタップt1と,タップt2との間の電圧Vb(t)が得られる。また、得られた電圧Va(t),Vb(t)は、例えば計算機(不図示)がフーリエ変換し、周波数領域の電圧Va(ω),Vb(ω)を求める。そして、計算機は、電圧Va(ω),Vb(ω)からVb(ω)/Va(ω)を計算し、変圧器11のU相、V相の夫々の入力端子間と、タップt1,t2間との間の伝達関数F(ω)(=Vb(ω)/Va(ω))を算出する。このように、本実施形態では、予め伝達関数F(ω)を算出しておき、メモリ81に記憶させる。この結果、前述の乗算部91は、入力電圧Vin(ω)に対して予めメモリ81に記憶された伝達関数F(ω)を取得して乗算することができる。
【0027】
算出部92は、乗算部91の乗算結果である出力電圧Vout(ω)を逆フーリエ変換して時間の経過に伴う出力電圧Vout(t)(算出電圧)を算出する。この結果、直接タップt1,t2間の電圧を測定することなく、タップt1,t2間の出力電圧Vout(t)を得ることができる。なお、算出された出力電圧Vout(t)は、例えばRAM(不図示)に順次記憶される。また、以下に説明する検出部93,94、判定部95は、RAMに記憶された出力電圧Vout(t)を適宜使用する。
【0028】
検出部93(第1検出部)は、算出部92が算出した出力電圧Vout(t)が時間の経過に伴い増加しているか否かを検出する。なお、出力電圧Vout(t)が時間の経過に伴い増加しているか否かは、例えば、出力電圧Vout(t)の時間微分が所定の値より大きくなるか否かに基づいて定められる。
【0029】
検出部94(第2検出部)は、出力電圧Vout(t)が時間の経過に伴い増加していることを検出部93が検出すると、出力電圧Vout(t)が所定レベルの電圧Vxを超えたか否かを検出する。電圧Vxは、絶縁されているタップt1,t2間にレベルの異なる複数のインパルス電圧を印加した際に、インパルス電圧と放電が開始されるまでの期間との関係を示すいわゆるV−t曲線に基づいて定められる値である。ここで、図4を参照しつつ、タップt1,t2間のV−t曲線及び電圧Vxについて説明する。なお、図4のV−t曲線は、例えば工場等で実際にタップt1,t2間にインパルス電圧が印加された際に取得された波形である。
【0030】
例えば、タップt1,t2間にインパルス電圧Vp1を印加すると、印加開始から期間T1だけ経過するとタップt1,t2間に放電が生じる。また、インパルス電圧Vp1より波高値のレベルの低いインパルス電圧Vp2をタップt1,t2間に印加すると、期間T1より長い期間T2が経過した際にタップt1,t2間の放電は開始される。さらに、インパルス電圧Vp2よりレベルの低いインパルス電圧Vp3をタップt1,t2間に印加すると、期間T2より長い期間T3が経過した際にタップt1,t2間の放電は開始される。このように、タップt1,t2間に印加するインパルス電圧の波高値のレベルを低下させると、タップt1,t2間に放電が開始されるまでの期間は長くなる。そして、レベルの異なる複数のインパルス電圧をタップt1,t2間に印加し、タップt1,t2間に放電が開始されるまでの期間と、放電開始期間内におけるインパルス電圧の最大値とで定まる点を結ぶことによりV−t曲線が得られる。図4から明らかなように、インパルス電圧のレベルが低下して所定のレベルより低くなると、タップt1,t2間に放電は発生しなくなる。本実施形態では、タップt1,t2間の放電が発生しなくなる所定のレベルの電圧を、前述の電圧Vxとする。なお、タップt1,t2間のV−t曲線と、電圧Vxとは、メモリ81に予め記憶されていることとする。
【0031】
判定部95は、出力電圧Vout(t)が電圧Vxを超えていることを検出部94が検出すると、V−t曲線と出力電圧Vout(t)とに基づいて、タップt1,t2間に放電が生じているか否かを判定する。なお、出力電圧Vout(t)及びV−t曲線は、ともに時間の経過に伴い変化する。また、V−t曲線では、タップt1,t2間にインパルス電圧の印加が開始されるタイミングを時間軸の原点としている。このため、判定部95は、出力電圧Vout(t)とV−t曲線とを適切に比較すべく、例えば図5、図6に示すように、出力電圧Vout(t)の増加が開始してから電圧Vxを超えるまでの間のうち、出力電圧Vout(t)の増加が開始したタイミングを原点(基準)として出力電圧Vout(t)とV−t曲線とを比較する。なお、出力電圧Vout(t)の増加が開始したタイミングは、例えば、検出部93,94の検出結果に基づいて求められる。
【0032】
ところで、前述のようにV−t曲線上の電圧のレベルは、タップt1,t2間に放電が開始される際の電圧レベルを示す。したがって、図5に示すように、タップt1,t2間に生じる出力電圧Vout(t)がV−t曲線上の電圧より高くなる場合、タップt1,t2間に放電は生じる。一方、タップt1,t2間に生じる出力電圧Vout(t)がV−t曲線上の電圧より低い場合、原則的にはタップt1,t2間に放電は生じない。しかしながら、実際には、例えば図6に示すように、出力電圧Vout(t)の最初のピーク電圧と次のピーク電圧とを結ぶ包絡線の電圧レベルが、期間Ta内に電圧Vxより低下しない場合、タップt1,t2間に放電が生じる場合があることが経験的に知られている。なお、ここで、期間Taは、最初のピーク電圧が発生するタイミングからV−t曲線上の電圧のレベルが最初のピーク電圧のレベルに一致するタイミングまでの期間である。
【0033】
このため判定部95は、出力電圧Vout(t)のレベルがV−t曲線上の電圧より高くなる場合、また、出力電圧Vout(t)のレベルがV−t曲線上の電圧より低い場合あっても、期間Ta内に包絡線の電圧レベルが電圧Vxより低下しない場合には、タップt1,t2間に放電が生じると判定する。
【0034】
==電圧監視装置15の動作==
ここで、電圧監視装置15の動作を、図7に示すフローチャートを参照しつつ説明する。なお、図7に示すフローチャートの処理の主体は、マイコン82の各機能ブロックである。
【0035】
まず、電圧監視装置15が起動されると、変換部90は、電圧測定器80から順次出力される入力電圧Vin(t)をフーリエ変換する(S100)。そして、乗算部91は、メモリ81に格納された伝達関数F(ω)を取得し、フーリエ変換された入力電圧Vin(ω)に乗算する(S101)。この結果、タップt1,t2間の電圧と周波数との関係を示す出力電圧Vout(ω)が求められる。算出部92は、出力電圧Vout(ω)を逆フーリエ変化し、時間の経過に伴う出力電圧Vout(t)を算出する(S102)。そして、検出部93は、出力電圧Vout(t)が時間の経過とともに増加しているかを検出する(S103)。出力電圧Vout(t)が時間の経過とともに増加している場合(S103:YES)、すなわち、サージ等が変圧器10のU相、V相の入力端子間に発生した可能性がある場合、検出部94は、出力電圧Vout(t)が電圧Vxを超えたか否かを検出する(S104)。一方、出力電圧Vout(t)が増加しない場合(S103:NO)、すなわち出力電圧Vout(t)の時間微分が前述の所定の値より小さい場合、処理S103が繰り返される。そして、出力電圧Vout(t)が電圧Vxを超えた場合(S104:YES)、タップt1,t2間に放電が生じ可能性があるため、判定部95は、メモリ81に格納されたV−t曲線を取得し、V−t曲線と出力電圧Vout(t)とを比較する(S105)。一方、出力電圧Vout(t)が電圧Vxを超えていないことが検出部94で検出された場合(S104:NO)、処理S103が繰り替えされる。
【0036】
ここで、ステップS105におけるV−t曲線と出力電圧Vout(t)との比較処理の一例を、図8に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0037】
判定部95は、まず、出力電圧Vout(t)のレベルがV−t曲線上の電圧より高くなるか否かを比較する(S200)。そして、例えば図5に示すように、出力電圧Vout(t)のレベルがV−t曲線上の電圧より高くなる場合(S200:YES)、タップt1,t2間に放電が生じていると判定する(S201)。一方、例えば、図6に示すように、出力電圧Vout(t)のレベルがV−t曲線上の電圧より低い場合(S200:NO)、判定部95は、出力電圧Vout(t)の最初のピーク電圧と次のピーク電圧とに基づいて包絡線を算出する(S202)。また、判定部95は、前述の期間Taを算出する(S203)。そして、判定部95は、期間Ta内に包絡線の電圧レベルと電圧Vxとを比較する(S204)。期間Ta内に包絡線の電圧レベルが電圧Vxより低くならない場合(S204:YES)には、判定部95は、タップt1,t2間に放電が生じていると判定する(S201)。一方、期間Ta内に包絡線の電圧レベルが電圧Vxより低くなる場合(S204:NO)には、判定部95は、タップt1,t2間に放電が生じていないと判定する(S205)。
【0038】
以上、本実施形態の電圧監視装置15について説明した。変換部90は、入力電圧Vin(t)をフーリエ変化し、乗算部91は、フーリエ変換されたVin(ω)に伝達関数F(ω)を乗算する。また、算出部92は、乗算部91の乗算結果を逆フーリエ変化し、共振部であるタップt1,t2間の出力電圧Vout(t)を算出する。出力電圧Vout(t)は、時間の経過に伴い変化するタップt1,t2間の電圧を示している。したがって、本実施形態ではタップt1,t2間の電圧を直接測定することなく、時間の経過に伴うタップt1,t2間の電圧を得ることができる。
【0039】
また、V−t曲線は、タップt1,t2間の絶縁特性を評価する際に指標となる曲線であり、判定部95は、V−t曲線と出力電圧Vout(t)とに基づいて、放電の有無を判定する。このため、判定部95は、タップt1,t2間に絶縁破壊が生じるか否かを精度良く判定することができる。
【0040】
また、判定部95は、出力電圧Vout(t)が増加し、電圧Vxより高くなると、V−t曲線と出力電圧Vout(t)とに基づいて、タップt1,t2間に放電が生じているか否かを判定する。図4から明らかなように、出力電圧Vout(t)のレベルが電圧Vxより低い場合、タップt1,t2間に放電が生じることは無い。したがって、判定部95は、タップt1,t2間の絶縁破壊が生じる可能性の高い場合にのみ判定処理(処理S105)を実行する。このため、本実施形態では、マイコン82に不要な処理を実行させることを防ぐことができる。
【0041】
また、判定部95は、例えば図5、図6に示すように、出力電圧Vout(t)の増加が開始してから電圧Vxを超えるまでの間のうち、出力電圧Vout(t)の増加が開始したタイミングを原点として、出力電圧Vout(t)とV−t曲線とを比較する。つまり、本実施形態では、V−t曲線を得る際のインパルス電圧の印加開始のタイミングと、出力電圧Vout(t)の増加が開始したタイミングとを一致させて両者を比較している。このため、判定部95は、絶縁破壊が生じるか否かを精度良く判定することができる。
【0042】
また、一般に、出力電圧Vout(t)のレベルがV−t曲線上の電圧より高くなる場合、タップt1,t2間には放電が発生して絶縁破壊が生じる。判定部95は、このような場合に確実に放電が生じていることを判定できる。
【0043】
また、出力電圧Vout(t)のレベルがV−t曲線上の電圧より低い場合であっても、例えば、図6のように包絡線のレベルが電圧Vxより高い場合、放電が発生して絶縁破壊が生じる。判定部95は、このような場合に確実に放電が生じていることを判定できる。
【0044】
なお、上記実施例は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0045】
本実施形態における変圧器10の共振部は、例えばタップt1,t2間であることとしたが、上記に限られる訳ではない。例えは、転位切換器32の端子間、すなわち、主コイル30及び転位コイル31が接続されたノードが接続される端子と、タップコイル33が接続される端子との間が共振部となる場合もある。
【符号の説明】
【0046】
10,11 変圧器
15 電圧監視装置
20〜22 1次コイル
30,40,50 主コイル
31,41,51 転位コイル
32,42,52 転位切換器
33,43,53 タップコイル
34,44,54 タップ切換器
70 ハンドホール
75 測定用ハンドホール
80 電圧測定器
81 メモリ
82 マイコン
90 変換部
91 乗算部
92 算出部
93,94 検出部
95 判定部
100 測定システム
110 入力電圧印加装置
120 出力電圧測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器の1次コイルに印加される入力電圧をフーリエ変換する変換部と、
前記変換部の変換結果に対し、前記入力電圧と前記変圧器において電圧共振が生じる部位の電圧とに基づいて予め算出された前記変圧器の周波数伝達関数を乗算する乗算部と、
前記部位の電圧を監視すべく、前記乗算部の乗算結果を逆フーリエ変換して時間の経過に伴う前記部位の電圧を算出する算出部と、
を含むことを特徴とする電圧監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電圧監視装置であって、
前記部位にレベルの異なる複数のインパルス状の電圧の夫々が印加されてから前記部位に放電が開始されるまでの前記複数の期間と前記複数の期間の夫々において前記複数の期間の夫々に対する前記複数のインパルス状の電圧の最大値との関係を示す曲線上の電圧と、前記算出部が算出した前記部位の電圧とに基づいて、前記部位に放電が生じているか否かを判定する判定部を更に含むこと、
を特徴する電圧監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電圧監視装置であって、
前記部位には、
前記インパルス状の電圧のレベルが所定レベル以下の場合には放電が生じず、
前記算出部が算出した前記部位の電圧である算出電圧が時間の経過に伴い増加しているか否かを検出する第1検出部と、
前記算出電圧が時間の経過に伴い増加していることを前記第1検出部が検出すると、前記算出電圧が前記所定レベルを超えたか否かを検出する第2検出部と、
を更に備え、
前記判定部は、
前記算出電圧が前記所定レベルを超えていることを前記第2検出部が検出すると、前記曲線上の電圧と前記算出電圧とに基づいて、前記部位に放電が生じているか否かを判定すること、
を特徴とする電圧監視装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電圧監視装置であって、
前記判定部は、
前記算出電圧が前記所定レベルを超えていることを前記第2検出部が検出すると、前記算出電圧の増加が開始してから前記算出電圧が前記所定レベルを超えるまでの間のうち、前記算出電圧の増加が開始したタイミングを基準として、前記曲線上の電圧と前記算出電圧とを比較し、前記部位に放電が生じているか否かを判定すること、
を特徴とする電圧監視装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電圧監視装置であって、
前記判定部は、
前記曲線上の電圧と前記算出電圧とを比較し、前記算出電圧のレベルが前記曲線上の電圧より高くなる場合、前記部位に放電が生じていると判定すること、
を特徴する電圧監視装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の電圧監視装置であって、
前記判定部は、
前記曲線上の電圧と前記算出電圧とを比較し、前記算出電圧のレベルが前記曲線上の電圧より低い場合、前記算出電圧における複数のピーク電圧のうち最大となる第1ピーク電圧と前記第1ピーク電圧の次にレベルの高い第2ピーク電圧とで定まる直線上の電圧のレベルが、前記第1ピーク電圧が生じるタイミングから前記曲線上の電圧のレベルが前記第1ピーク電圧のレベルに一致するタイミングまでの期間内に前記所定レベルより低下しない場合、前記部位に放電が生じていると判定すること、
を特徴とする電圧監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−169694(P2011−169694A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32763(P2010−32763)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】