説明

電子カメラ

【課題】 モアレを抑制しつつ鮮鋭度の高い画像を容易に撮影できる電子カメラを提供する。
【解決手段】 カットオフ周波数を変更可能な可変光学ローパスフィルタと、前記可変光学ローパスフィルタを通過した入射光束を光電変換する撮像素子と、前記カットオフ周波数を変化させて複数回の撮影を行い、前記カットオフ周波数を前記撮像素子のナイキスト周波数以下に設定した基準画像と、前記カットオフ周波数を前記ナイキスト周波数よりも高く設定した撮影画像とを生成する制御部と、前記基準画像および前記撮影画像の空間周波数成分を比較し、前記撮影画像のモアレ発生を判定するモアレ判定部と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学ローパスフィルタのカットオフ周波数を変更可能な電子カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCDやCMOS等の撮像素子によって被写体像を光電変換して画像データを生成する電子カメラが急速に普及している。かかる電子カメラでは、撮像素子の受光画素の配列パターンと被写体像のパターンとが生み出すモアレ(輝度モアレ、色モアレ)を抑制するため、撮像素子の撮像面の前方に光学ローパスフィルタを配置するのが一般的である。
【0003】
ここで、光学ローパスフィルタは入射光束から所定周波数以上の周波数成分を除去するため、画像のモアレが抑制される一方で画像の鮮鋭度は低下することとなる。この点に関し、特許文献1から特許文献3には光学ローパスフィルタのカットオフ周波数を変更することで、モアレを抑制しつつ鮮鋭度の高い画像を撮影することができる電子カメラが開示されている。
【特許文献1】特開平11−160758号公報
【特許文献2】特開2003−167123号公報
【特許文献3】特開2004−94131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献に開示された電子カメラでは光学ローパスフィルタのカットオフ周波数を撮影者が設定する必要がある。そして、適切なカットオフ周波数は撮影する被写体ごとに異なるので、現実にはカットオフ周波数の設定が煩雑となる点で改善の余地があった。すなわち、上記特許文献の電子カメラにおいて適切なカットオフ周波数での撮影を行う場合には、撮影者は撮影後に画像を確認してカットオフ周波数を調整する手順を繰り返す必要が生じるので、効率的な撮影を行うのが非常に困難である。
【0005】
本発明は上記従来技術の課題を解決するためにされたものであり、その目的は、モアレを抑制しつつも鮮鋭度の高い画像を容易に撮影できる電子カメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る電子カメラは、カットオフ周波数を変更可能な可変光学ローパスフィルタと、前記可変光学ローパスフィルタを通過した入射光束を光電変換する撮像素子と、前記カットオフ周波数を変化させて複数回の撮影を行い、前記カットオフ周波数を前記撮像素子のナイキスト周波数以下に設定した基準画像と、前記カットオフ周波数を前記ナイキスト周波数よりも高く設定した撮影画像とを生成する制御部と、前記基準画像および前記撮影画像の空間周波数成分を比較し、前記撮影画像のモアレ発生を判定するモアレ判定部と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記制御部は、撮影画面内でモアレ発生の判定対象となる指定点を設定し、前記モアレ判定部は、前記基準画像および前記撮影画像の空間周波数成分を前記指定点に対応する領域からそれぞれ抽出して比較することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記モアレ判定部は、本撮影に使用する前記カットオフ周波数の設定または前記撮影画像から選択される記録画像の決定を、前記モアレ発生の判定結果に基づいて行うことを特徴とする。
【0008】
(作用)
請求項1の発明では、制御部が可変光学ローパスフィルタのカットオフ周波数を段階的に変化させて複数回の撮影を行い、モアレ判定部が撮影画像の空間周波数成分をモアレのない基準画像の空間周波数成分と比較して撮影画像のモアレ発生を自動的に判定する。
請求項2の発明では、撮影画面内の指定点に対応する領域から空間周波数成分をそれぞれ抽出して比較することで、モアレ発生が予想される部分について確実にモアレを防止しつつも鮮鋭度の高い画像が得られる。また、撮影画面全体から空間周波数成分を抽出する場合と比べてモアレ判定部の演算処理量を大幅に軽減できる。
【0009】
請求項3の発明では、カットオフ周波数を段階的に変化させて複数回の撮影を行うことでカットオフ周波数をモアレがないように最適化し、その後に本撮影を実行する電子カメラや、カットオフ周波数を段階的に変化させて複数回の撮影を行って、撮影した画像からモアレのない記録画像を選択する電子カメラを実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では可変光学ローパスフィルタのカットオフ周波数を撮影者自身が撮影毎に調整することなく、モアレを抑制しつつも鮮鋭度の高い画像を容易に撮影することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1実施形態の説明)
図1は第1実施形態の電子カメラの機能ブロック図である(請求項1から請求項3の電子カメラに対応する)。第1実施形態の電子カメラは、撮影光学系1と、撮像素子2と、A/D変換部3と、可変光学ローパスフィルタ4と、アクチュエータドライバ5と、入力部6と、制御部7と、画像処理部(「モアレ判定部」に対応する)8と、メモリ9および記録媒体9aと、再生画像等を表示する表示部10とを有している。
【0012】
撮像素子2は撮影光学系1の像空間側に配置される。撮像素子2の受光面には、被写体像を光電変換する受光画素が2次元配列されている。そして、撮影光学系1を介して撮像素子2の受光面に投影された被写体像は、受光画素により光電変換されてアナログ画像信号として出力される。また、A/D変換部3はアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換して画像処理部8に出力する。
【0013】
可変光学ローパスフィルタ4は、撮影光学系1から撮像素子2の受光面に至る光路上に配置されており、撮影光学系1を透過した被写体光束からカットオフ周波数以上の空間周波数成分を除去する。可変光学ローパスフィルタ4は、図2に示すように、平行平板11と、支持枠12と、可撓性支持部材13およびアクチュエータ14とを有しており、基板15に実装された撮像素子2の前面に配置されている。
【0014】
平行平板11は複屈折性を有しない光学ガラスで構成されている。平行平板11の全体形状は撮像素子2の受光面に対応した形状(例えば、長方形)に形成されている。平行平板11の周縁は支持枠12で保持されており、平行平板11と支持枠12との間は密閉状態となっている。
可撓性支持部材13は、例えば黒色のシリコンゴム等で構成された環状部材である。この可撓性支持部材13の一端は、平行平板11を透過する被写体光束を妨げないように、平行平板11の周囲で支持枠12に接着されている。また、可撓性支持部材13の他端は、撮像素子2の受光面に入射する被写体光束を妨げないように、受光面の周囲で撮像素子2に接着されている。そのため、支持枠12は、可撓性支持部材13によって支持される構造となっている。そして、平行平板11および支持枠12と、可撓性支持部材13と、撮像素子2で囲まれた空間は気密性が保たれ、外部からのゴミや水蒸気が侵入しないようになっている。
【0015】
アクチュエータ14は平行平板11の上下左右の四辺に対応して4箇所に配置されている(図2では垂直方向の2つのアクチュエータの図示を省略する)。各アクチュエータ14は積層型圧電素子などで構成され、アクチュエータドライバ5から供給される駆動信号に応じて伸縮するようになっている。また、各アクチュエータ14の一端は基板15に固着される一方で、その他端は支持枠12に固着されている。なお、アクチュエータ14は、ボイスコイルモータや、作動量増加機構が付加された単層圧電素子や、モノモルフ/バイモルフ型圧電素子等であってもよい。
【0016】
ここで、第1実施形態の可変光学ローパスフィルタ4では、アクチュエータ14を伸縮させると支持枠12が傾いて、撮像素子2に対する平行平板11の傾角が変化する。このとき、撮像素子2の受光面に結像する被写体像は平行平板11の屈折率、厚さ、撮像素子2に対する傾角などに応じて移動する。また、垂直方向または水平方向のアクチュエータ14が繰り返し伸縮すると、平行平板11は垂直方向または水平方向に振動することとなる。
【0017】
そして、撮像素子2の露光中において、水平方向および垂直方向に少なくとも1周期分ずつの振動を平行平板11に加えると、水平方向および垂直方向に像ズレが発生して光学ローパスフィルタの効果が生じる。また、平行平板11に加える振幅を大きくすると、カットオフ周波数を低下させた場合に相当する光学ローパスフィルタの効果が得られる。すなわち、第1実施形態の可変光学ローパスフィルタ4では、平行平板11に加える振動を調整することでカットオフ周波数を変更することができる。
【0018】
図3は可変光学ローパスフィルタ4のカットオフ周波数特性の概要図である。図3中、fnは撮像素子2のナイキスト周波数を示し、ナイキスト周波数fnより周波数の低い像は歪みなく再現することができる。このナイキスト周波数は、撮像素子2の画素ピッチに応じて規定される。例えば、撮像素子2の画素を所定比率で間引きして低解像度で撮影する場合には、撮像素子2の画素ピッチが見かけ上粗くなるので上記のナイキスト周波数も変化することとなる。
【0019】
また、可変光学ローパスフィルタ4のカットオフ周波数をナイキスト周波数fn以上に設定し(f2,f3)、高い周波数を透過させると撮影した画像にモアレが生じることとなる。しかし、現実にはモアレを顕著に発生する被写体は限られる。そのため、第1実施形態では、カットオフ周波数を段階的に変化させて複数回の撮影を行い、画面にモアレが発生しない高域側のカットオフ周波数を検出するものである。
【0020】
アクチュエータドライバ5は、平行平板11を制御する信号に応じてアクチュエータ14の駆動信号を生成し、該駆動信号をアクチュエータ14に出力する。なお、平行平板11を制御する信号は制御部7から出力され、平行平板11を振動させる場合の振動方向、振幅および周波数を示すデータが含まれる。
入力部6は、例えばコマンドダイヤルや十字状のカーソルキーなどで構成される。この入力部6は、電子カメラのモード切り替え入力や、撮影画面内でモアレ発生の判定対象となる指定点の入力や、カットオフ周波数のステップ数およびステップ幅の入力などに使用される。なお、撮影画面中での指定点の位置は、AFエリアやAEエリアの位置に対応し、撮影者はAFエリア等の選択と同様の操作で指定点(空間周波数成分の抽出領域)を選択できるようになっている(図4参照)。
【0021】
制御部7は、画像データの画素数の設定や、可変光学ローパスフィルタ4のカットオフ周波数の制御(制御信号の出力)や、表示部10の表示制御など、電子カメラの各部の制御に必要な演算処理を実行する。
また、制御部7は、撮影者の入力によって電子カメラの「通常撮影モード」、「ブラケティング撮影モード」等のモード切り替えを実行する。「通常撮影モード」での電子カメラは、撮影者のシャッタレリーズに応じて1回の撮影を行う。
【0022】
一方、「ブラケティング撮影モード」での電子カメラは、可変光学ローパスフィルタ4のカットオフ周波数を段階的に変化させて複数回の撮影を行う。この撮影により、カットオフ周波数を撮像素子2のナイキスト周波数以下に設定した基準画像と、カットオフ周波数をナイキスト周波数よりも高く設定した撮影画像とが生成される。そして、制御部7は、画像処理部8による基準画像および撮影画像の空間周波数成分の比較結果に基づいて、可変光学ローパスフィルタ4のカットオフ周波数を最適化する。なお、基準画像および撮影画像において空間周波数成分を抽出する領域は、入力された指定点に基づいて制御部7が設定する。
【0023】
画像処理部8は、1フレームを構成するデジタル画像信号に対して輪郭補償やガンマ補正、ホワイトバランス調整、輝度信号および色信号の生成などの各種画像処理を行って画像データを生成する。また、画像処理部8は、画像データを所定の規格に従って圧縮し、あるいは圧縮された画像データを所定の規格に従って伸張して復元する。
さらに、第1実施形態の画像処理部8は、基準画像および撮影画像の画像データに含まれる空間周波数成分を高速フーリエ変換(FFT)などで分析して比較することで、撮影画像にモアレが発生したか否かを判定する。
【0024】
メモリ9には画像処理部8の出力した画像データが一時待避される。また、メモリ9には、「ブラケティング撮影モード」において基準画像の空間周波数成分の情報が記録される。記録媒体9aは電子カメラに対して着脱自在な半導体メモリ等であって、圧縮後の画像データが最終的に格納される。
第1実施形態の電子カメラは上記のように構成され、以下、第1実施形態の「ブラケティング撮影モード」における電子カメラの動作を図5の流れ図に従って説明する。
【0025】
ステップS101:撮影者は、入力部6により撮影画面中の指定点の位置、カットオフ周波数のステップ数、ナイキスト周波数を基準とした比率等で示されるステップ幅を入力する。これらの条件は、被写体や撮影の目的に応じて撮影者が自由に設定することができる。
そして、制御部7は入力された指定点に基づいて基準画像および撮影画像において空間周波数成分を抽出する領域を設定する。また、制御部7は入力されたカットオフ周波数のステップ数に基づいて撮影画像の撮影フレーム数の上限値を設定する。さらに、制御部7は入力されたカットオフ周波数のステップ幅に基づいて、撮影毎のカットオフ周波数の変更量を設定する。
【0026】
ステップS102:制御部7は、画素の間引きの有無や間引きの度合いを示す撮影設定の情報に基づいて、可変光学ローパスフィルタ4のカットオフ周波数を撮像素子2のナイキスト周波数以下に設定する。
ステップS103:制御部7は撮像素子2を駆動させて、カットオフ周波数が撮像素子2のナイキスト周波数以下である基準画像を撮影する。そして、画像処理部8は、基準画像の指定点に対応する領域について、基準画像の画像データに含まれる空間周波数成分を分析する。画像処理部8が分析した空間周波数成分のデータはメモリ9に記録される。
【0027】
ステップS104:制御部7は、可変光学ローパスフィルタ4のカットオフ周波数をステップ幅に基づく変更量(S101)の分だけ高域側にシフトさせる。
ステップS105:制御部7は撮像素子2を駆動させて、カットオフ周波数をナイキスト周波数よりも高く設定した撮影画像を撮影する。そして、画像処理部8は、撮影画像の指定点に対応する領域について、撮影画像の画像データに含まれる空間周波数成分を分析する。
【0028】
ステップS106:画像処理部8は、基準画像および撮影画像の指定点に対応する領域からそれぞれ抽出した空間周波数成分(S103、S105)を比較する。具体的には、画像処理部8は以下の処理を実行する。
(1)第1に画像処理部8は、基準画像および撮影画像の輝度成分の空間周波数分布を比較する。撮影画像の輝度成分に閾値以上の周期的変化(折り返しによる低周波成分の増加)が生じている場合には、画像処理部8は撮影画像に輝度モアレが発生していると判定し、輝度モアレの発生を示す信号を制御部7に出力する。なお、被写体のパターンの方向(例えば、縦縞、横縞など)によっては輝度モアレの方向が異なる場合があるので、画像処理部8は垂直方向および水平方向でそれぞれ輝度成分の空間周波数分布を比較する。
【0029】
(2)第2に画像処理部8は、基準画像および撮影画像の色成分の空間周波数分布を比較する。基準画像のRGB各成分に基づいて撮影画像のRGB各成分に閾値以上の変化がある場合には、画像処理部8は撮影画像に色モアレが発生していると判定し、色モアレの発生を示す信号を制御部7に出力する。
ステップS107:制御部7は、画像処理部8からの出力(S106)に基づいて、撮影画像の指定点に対応する領域でモアレが発生したか否かを判定する。モアレが発生した場合(YES側)にはステップS108に移行する。一方、モアレが発生しない場合(NO側)にはステップS109に移行する。
【0030】
ステップS108:制御部7は、モアレが発生した撮影画像の1回前に撮影された撮影画像のカットオフ周波数(撮影画像にモアレが生じていない最も高域側のカットオフ周波数)を本撮影時のカットオフ周波数に決定する。なお、1回目の撮影画像でモアレが発生した場合には、制御部7はナイキスト周波数を本撮影時のカットオフ周波数に決定する。その後、ステップS111に移行する。
【0031】
ステップS109:制御部7は、撮影画像の撮影フレーム数がステップ数に基づく上限値(S101)に達しているか否かを判定する。撮影フレーム数が上限値に達した場合(YES側)にはステップS110に移行する。一方、撮影フレーム数が上限値未満の場合(NO側)にはステップS104に戻って、制御部7は可変光学ローパスフィルタ4のカットオフ周波数を変更し、ステップS104からS107までの動作を再度繰り返す。
【0032】
ステップS110:制御部7は、一番最後に撮影された撮影画像のカットオフ周波数を本撮影時のカットオフ周波数に決定する。その後、ステップS111に移行する。
ステップS111:制御部7は、可変光学ローパスフィルタ4のカットオフ周波数を本撮影時のカットオフ周波数(S108,S110)に変更して最適化する。その後、撮影者によるシャッタレリーズに基づいて制御部7が本撮影を実行する。
【0033】
上記第1実施形態の電子カメラによれば、可変光学ローパスフィルタ4のカットオフ周波数を被写体に合わせて自動的に最適化することができ、可変光学ローパスフィルタ4の特性を撮影者が調整する労力が著しく軽減される。そして、本撮影時には指定点近傍にモアレの発生がなく鮮鋭度の高い画像を撮影することができる。
(第2実施形態の説明)
図6は、第2実施形態の電子カメラの「ブラケティング撮影モード」の動作を示す流れ図である(請求項1から請求項3の電子カメラに対応する)。第2実施形態は第1実施形態の変形例であって、本撮影を行うことなく撮影画像の中から記録する画像を選択する例である。この第2実施形態によっても、第1実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0034】
ここで、第2実施形態の電子カメラの構成は、図1に示す第1実施形態の電子カメラと共通するので対応する構成には同一符号を付して説明を省略する。また、第2実施形態のステップS201、S202は、上記第1実施形態のステップS101、S102にそれぞれ対応するので説明を省略する。
ステップS203:制御部7は撮像素子2を駆動させて、カットオフ周波数が撮像素子2のナイキスト周波数以下である基準画像を撮影する。そして、画像処理部8は、基準画像の指定点に対応する領域について、基準画像の画像データに含まれる空間周波数成分を分析する。基準画像の画像データと、画像処理部8が分析した空間周波数成分のデータとはメモリ9に一時的に記録される。
【0035】
ステップS204:制御部7は、可変光学ローパスフィルタ4のカットオフ周波数をステップ幅に基づく変更量(S201)の分だけ高域側にシフトさせる。
ステップS205:制御部7は撮像素子2を駆動させて、カットオフ周波数をナイキスト周波数よりも高く設定した撮影画像を撮影する。そして、画像処理部8は、撮影画像の指定点に対応する領域について、撮影画像の画像データに含まれる空間周波数成分を分析する。なお、撮影画像の画像データはメモリ9に一時的に記録される。
【0036】
ステップS206:画像処理部8は、基準画像および撮影画像の指定点に対応する領域からそれぞれ抽出した空間周波数成分(S203、S205)を比較する。画像処理部8の具体的な処理は第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
ステップS207:制御部7は、画像処理部8からの出力(S206)に基づいて、撮影画像の指定点に対応する領域でモアレが発生したか否かを判定する。モアレが発生した場合(YES側)にはステップS208に移行する。一方、モアレが発生しない場合(NO側)にはステップS209に移行する。
【0037】
ステップS208:制御部7は、モアレが発生した撮影画像の1回前に撮影された撮影画像(最も高域側のカットオフ周波数で撮影されたモアレのない撮影画像)を選択する。そして、制御部7は選択された撮影画像の画像データを記録媒体9aに最終的に記録し、一連の撮影動作を終了する。なお、1回目の撮影画像でモアレが発生した場合には、制御部7は基準画像の画像データを記録媒体9aに最終的に記録する。
【0038】
ステップS209:制御部7は、撮影画像の撮影フレーム数がステップ数に基づく上限値(S201)に達しているか否かを判定する。撮影フレーム数が上限値に達した場合(YES側)にはステップS210に移行する。一方、撮影フレーム数が上限値未満の場合(NO側)にはステップS204に戻って、制御部7は可変光学ローパスフィルタ4のカットオフ周波数を変更し、ステップS204からS207までの動作を再度繰り返す。
【0039】
ステップS210:制御部7は、一番最後に撮影された撮影画像を選択する。そして、制御部7は選択された撮影画像の画像データを記録媒体9aに最終的に記録し、一連の撮影動作を終了する。
(実施形態の補足事項)
以上、本発明を上記の実施形態によって説明してきたが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に限定されるものではない。
【0040】
(1)本発明の可変光学ローパスフィルタの構成は上記実施形態に限定されることはなく、他の公知の可変光学ローパスフィルタを適用することも可能である。例えば、上記の特許文献1のように、複数枚の位相板の相対位置の変更でカットオフ周波数を変化させる可変光学ローパスフィルタであってもよい。また、上記の特許文献2のように、光弾性部材に加える応力を変更することでカットオフ周波数を変化させる可変光学ローパスフィルタであってもよい。さらに、上記の特許文献3のように、楔状断面の透過性基板を組み合わせて可変光学ローパスフィルタを構成してもよい。なお、本発明の可変光学ローパスフィルタは撮像素子の受光面の直前に配置されている必要はなく、例えば、可変光学ローパスフィルタが撮影レンズ間に配置されるような構成であってもよい。
【0041】
(2)本発明の電子カメラでは、上記実施形態のように指定点を選択することなく、撮影画面全体から空間周波数成分を抽出してモアレの発生を判定するようにしても勿論かまわない。また、指定点の位置は上記実施形態のようにAFエリアやAEエリアと必ずしも一致していなくてもよい。例えば、撮影画面を格子状の複数領域に分割し、該領域の中から撮影者が指定点を含む領域を選択するようにしてもよい。
【0042】
(3)上記第1実施形態の基準画像および撮影画像の撮影において、撮像素子の受光面の画素全体から画像信号を読み出すことなく、指定点に対応する領域を含む部分からのみ画像信号を読み出すようにしてもよい。例えば、順次読み出し式の撮像素子(CCD等)では、指定点に対応する領域を含む水平ラインの画像信号のみを読み出すようにしてもよい。また、XYアドレス方式の撮像素子(CMOS等)では、指定点に対応する領域を指定して画像信号を読み出すことが可能である。
【0043】
(4)上記第2実施形態では、モアレの発生していない撮影画像の中から一番カットオフ周波数が高い画像を1枚選択して記録しているが、これに限定されることはない。例えば、上記第2実施形態において、モアレの発生していない撮影画像および基準画像の画像データを全部または所定枚数分だけ記録媒体に記録して、撮影者が撮影画像を取捨選択できるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、可変光学ローパスフィルタを備えた電子カメラに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1実施形態の電子カメラの機能ブロック図
【図2】第1実施形態の可変光学ローパスフィルタの一例を示す図
【図3】可変光学ローパスフィルタのカットオフ周波数特性の概要図
【図4】撮影画面での指定点の選択例を示す概要説明図
【図5】第1実施形態の「ブラケティング撮影モード」における電子カメラの動作を示す流れ図
【図6】第2実施形態の「ブラケティング撮影モード」における電子カメラの動作を示す流れ図
【符号の説明】
【0046】
1 撮影光学系
2 撮像素子
3 A/D変換部
4 可変光学ローパスフィルタ
5 アクチュエータドライバ
6 入力部
7 制御部
8 画像処理部
9 メモリ
9a 記録媒体
10 表示部
11 平行平板
12 支持枠
13 可撓性支持部材
14 アクチュエータ
15 基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カットオフ周波数を変更可能な可変光学ローパスフィルタと、
前記可変光学ローパスフィルタを通過した入射光束を光電変換する撮像素子と、
前記カットオフ周波数を変化させて複数回の撮影を行い、前記カットオフ周波数を前記撮像素子のナイキスト周波数以下に設定した基準画像と、前記カットオフ周波数を前記ナイキスト周波数よりも高く設定した撮影画像とを生成する制御部と、
前記基準画像および前記撮影画像の空間周波数成分を比較し、前記撮影画像のモアレ発生を判定するモアレ判定部と、
を有することを特徴とする電子カメラ。
【請求項2】
前記制御部は、撮影画面内でモアレ発生の判定対象となる指定点を設定し、
前記モアレ判定部は、前記基準画像および前記撮影画像の空間周波数成分を前記指定点に対応する領域からそれぞれ抽出して比較することを特徴とする請求項1に記載の電子カメラ。
【請求項3】
前記モアレ判定部は、本撮影に使用する前記カットオフ周波数の設定または前記撮影画像から選択される記録画像の決定を、前記モアレ発生の判定結果に基づいて行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子カメラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−80845(P2006−80845A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262171(P2004−262171)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】