説明

電子キーシステム

【課題】電子キーのID照合に要する時間を短縮することができる電子キーシステムを提供する。
【解決手段】照合ECU9からのウェイク信号16によって電子キー2が起動すると、電子キー2はその応答としてアック信号17を返信する。アック信号17は、電子キー2ごとに「1」のビット位置が変えられたキー固有の信号となっている。照合ECU9は、アック信号17を受信すると、アック信号17のビット位置から、現在通信相手となっている電子キー2がどの登録キーであるかを把握する。そして、照合ECU9は、アック受信後、チャレンジレスポンス認証のためにチャレンジ18を送信しつつ、その後に現在通信相手の電子キー2のキー番号19のみを続けて送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーから無線送信されたIDコードにより電子キーのID照合を行う電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の電子キーシステムとして、車両から送信されるリクエスト信号によって電子キーからID信号を返信させ、このID信号に含まれるIDコードにより電子キーのID照合を実行するキー操作フリーシステムが広く普及してきている。このキー操作フリーシステムでは、ID照合の照合成立性を高める、つまり照合をより正しく成立させるために、IDコードの照合だけでなく、チャレンジレスポンス認証も同時に実行して、電子キーが正規キーか否かを確認する形式(特許文献1等参照)を使用する場合が多い。
【0003】
この通信シーケンスは、図6に示すように、まず車両からウェイク信号81を送信する。電子キーは、ウェイク信号81を受信して起動すると、アック信号82を車両に返信する。車両は、ウェイク信号81を送信した後にアック信号82を受信すると、車両周囲に電子キーが存在すると認識して、以降の通信動作を継続する。このとき、車両は、送信の度にコードが毎回異なる乱数をチャレンジ83として送信する。そして、このチャレンジ83の後に、車両に登録された何番目のキーかを確認するキー番号84を連続して送信する。このとき、電子キーが1番目の登録キーであるとすると、電子キーはキー番号84の照合が一致するので、受信したチャレンジ83を自身の暗号鍵に通してレスポンス85を演算し、このレスポンス85を電子キーのIDコード86とともに車両に返信する。
【0004】
なお、一般的に車両には、例えばマスターキーの他に複数のサブキーが登録されるように、1台の車両に複数の電子キーが登録される。このため、車両は、図7に示すように、1番目のキー番号84aを送信した後、一定時間内にレスポンス85を受信することができないと、次に登録順位の高い2番目のキー番号84bを送信し、レスポンス85を受け付けるまで、キー番号84を登録順位の高いものから順番に送信する。
【0005】
車両は、電子キーにチャレンジ83を送信した際、自らも自身の暗号鍵にチャレンジ83を通してレスポンス85を演算する。よって、車両は、電子キーからレスポンス85を受信すると、電子キーのレスポンス85と、自身が演算したレスポンス85とを照らし合わせてレスポンス照合を実行する。そして、車両は、このレスポンス照合が成立し、かつ電子キーから取得したIDコードのIDコード照合も成立することを確認すると、電子キーが正規の通信相手と認識し、ID照合を成立として処理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−302848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、登録順位の低い電子キーを使用した場合には、電子キーにレスポンス動作をとらせる際、この電子キーより順位の高い電子キーのキー番号が送信されるのを待たなくてはならない現状がある。このため、登録順位の低い電子キーを使用した際には、自分のキー番号84が送信されるまで、レスポンス85を返信することができず、その分だけ通信時間を長く必要となる問題があった。
【0008】
本発明の目的は、電子キーの認証合に要する時間を短縮することができる電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記問題点を解決するために、本発明では、通信マスタからの応答要求を電子キーが受信すると、その応答としてアック信号を前記通信マスタに返信し、続いて前記通信マスタから、送信の度にコードが毎回異なるチャレンジと、このときの通信相手の前記電子キーが前記通信マスタのどの登録キーかを確認するためのキー番号とを前記電子キーに送信し、前記電子キーにおいて前記キー番号が一致すると、前記チャレンジの演算結果であるレスポンスを前記電子キーから前記通信マスタに送信し、前記通信マスタが当該レスポンスにより前記電子キーの正否を認証する電子キーシステムにおいて、前記アック信号をそれぞれのキー固有の信号で送信させるアック信号設定手段と、前記通信マスタが前記アック信号を受信した際、そのとき通信相手となっている前記電子キーがどの登録キーかを当該アック信号から確認するキー種類判定手段と、前記通信マスタが前記電子キーに前記キー番号を送信する際、前記キー種類判定手段の判定結果から分かる該キー番号を指定して送信するキー番号送信手段とを備えたことを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、通信マスタからの応答要求に対して電子キーがアック信号を送信する際、このアック信号をそれぞれのキー固有の信号で送信する。通信マスタは、応答要求の送信の後にアック信号を受信すると、自身の周囲に電子キーが存在すると認識し、受信したアック信号から、このとき通信相手となっている電子キーが通信マスタのどの登録キーなのかを把握する。続いて、通信マスタは、チャレンジレスポンス認証を実行すべくチャレンジを送信し、チャレンジ送信の後、このとき通信相手となっている電子キーが、通信マスタのどの登録キーかを確認するためにキー番号も送信する。このとき、キー番号は、現在通信相手となっている電子キーの番号のみが、最初から1つ送信される。
【0011】
よって、通信マスタに例えばマスターキーや複数のサブキーのように複数キーが登録されていても、従来技術のように登録キーのキー番号を登録順に順番に送信して、どの登録キーが通信相手となっているのか確認する動作をとらずに済む。このため、キー番号を通信相手の電子キーのものだけ送信することが可能となるので、電子キーの認証が終了するまでに要する時間を短く済ますことが可能となる。
【0012】
本発明では、前記アック信号設定手段は、前記アック信号を各キー固有の信号とすべく、それぞれの前記電子キーごとに該信号のビット位置を切り換えて当該アック信号を送信させることを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、アック信号のビット位置を変更することによりアック信号を電子キーごとに分別するので、記号的な位置付けのビットを位置変更するだけという簡単な方式により、アック信号を電子キーごとに種類分けすることが可能となる。
【0014】
本発明では、前記認証が車両のどのエリアで成立するのかを確認することにより、前記電子キーが車外及び車内のどちらに位置するのかを判定するキー位置判定手段を備えたことを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、電子キーが車外及び車内のどちらに位置しているのかを把握することが可能となるので、例えば車外照合が成立したときにドアロックの施解錠を許可又は実行し、車内照合が成立したときにエンジン始動操作を許可するような制御態様をとることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子キーの認証に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態における電子キーシステムの構成を示すブロック図。
【図2】電子キーのID照合の通信シーケンスを示すタイムチャート。
【図3】アック信号のデータ構成を示す信号図。
【図4】第1電子キー使用時のID照合の通信シーケンスを示すタイムチャート。
【図5】第2電子キー使用時のID照合の通信シーケンスを示すタイムチャート。
【図6】従来における電子キーのID照合の通信シーケンスを示すタイムチャート。
【図7】同じく電子キーのID照合の通信シーケンスを示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した電子キーシステムの一実施形態を図1〜図5に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、電子キー2が車両1に近づくと自動でID(Identification)照合を実行するキー操作フリーシステム3が設けられている。このキー操作フリーシステム3には、実際のキー操作を行うことなくドア開閉の一連の操作過程の中でドアロックの施解錠が実行されるスマートエントリーシステムと、車内に設置されたプッシュ式のエンジンスイッチ4を押し操作するのみでエンジンを始動することが可能なワンプッシュエンジンスタートシステムとがある。なお、キー操作フリーシステム3が電子キーシステムに相当する。
【0019】
この場合、車両1には、電子キー2との間でID照合を実行するキー照合装置5と、ドアロック動作を管理するドアロック装置6と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置7とが設けられ、これらが車内バス8によって接続されている。キー照合装置5には、同装置5のコントロールユニットとして照合ECU(Electronic Control Unit)9が設けられている。照合ECU9のメモリ(図示略)には、車両1と組みをなす電子キー2のIDコードが登録されている。照合ECU9には、車外にLF(Low Frequency)帯の電波を発信する車外発信機10と、車内にLF帯の電波を発信する車内発信機11と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信する車両チューナ12とが接続されている。車外発信機10及び車内発信機11は、電子キー2へのID送信要求(リクエスト)としてリクエスト信号SrqをLF帯の電波によって送信し、いわゆるスマート通信の成立可否を試みる。なお、照合ECU9が通信マスタに相当する。
【0020】
一方、電子キー2には、電子キー2の動作を統括制御する通信制御部13が設けられている。通信制御部13のメモリ(図示略)には、キー固有のIDとしてIDコードが登録されている。通信制御部13には、LF帯の電波を受信可能なLF受信機14と、UHF帯の電波を送信可能なUHF送信機15とが接続されている。
【0021】
電子キー2が車外に位置する際、車外発信機10からリクエスト信号Srqが断続的に送信される。このとき、リクエスト信号Srqの車外通信エリアに電子キー2が進入すると、電子キー2はこのリクエスト信号Srqに応答して、ID信号SidをUHF帯の電波で返信する。ID信号Sidには、電子キー2のIDコードが含まれている。照合ECU9は、ID信号Sidを車両チューナ12で受信して車外のスマート通信(車外通信)が確立すると、ID照合(スマート照合)として車外照合を実行する。そして、この車外照合が成立すると、ドアロック装置6によるドアロック施解錠が許可又は実行される。
【0022】
また、運転者が乗車したことが例えばカーテシスイッチ等により検出されると、車外発信機10に代えて今度は車内発信機11がリクエスト信号Srqの送信を開始する。このとき、車内発信機11の車内通信エリアに進入して車内のスマート通信(車内通信)が確立すると、照合ECU9はID照合(スマート照合)として車内照合を実行する。そして、この車内照合が成立すると、エンジンスイッチ4(エンジン始動装置7)による電源遷移操作及びエンジン始動操作が許可される。
【0023】
また、キー操作フリーシステム3の認証には、電子キー2のIDコードを確認するコード照合の他に、例えばチャレンジレスポンス認証も実行されている。チャレンジレスポンス認証としては、例えばAES(Advanced Encryption Standard)やDES(Data Encryption Standard)が使用されている。この認証では、図2に示すように、まず照合ECU9は、待機状態をとっている電子キー2を起動状態に切り換えるために、車外発信機10(車内発信機11)からウェイク信号16をLF帯の電波で断続的に送信する。
【0024】
電子キー2は、ウェイク信号16の通信エリアに進入してウェイク信号16を受信すると、待機状態から起動状態に切り換わる。電子キー2は、起動状態に切り換わると、その旨を通知すべくアック信号17をUHF帯の電波で送信する。
【0025】
照合ECU9は、ウェイク信号16を送信してから一定時間内にアック信号17を受信すると、続いて送信の度に毎回異なる乱数としてチャレンジ18をLF帯の電波で送信する。そして、照合ECU9は、アック信号17を返信してきた電子キー2が、車両1の登録キーの何番目のキーであるのかを確認するために、キー番号19をLF帯の電波で送信する。即ち、車両1には、マスターキーや複数のサブキーのように複数のキーが登録可能であるので、これら登録キーのうちどのキーが現在の通信相手になっているのかを確認するために、キー番号19が送信される。
【0026】
電子キー2は、車両1からチャレンジ18及びキー番号19を受信すると、まずキー番号19が一致するか否かを見るキー番号照合を実行する。電子キー2は、このキー番号照合が成立することを確認すると、チャレンジ18を自身の暗号鍵に通してレスポンス20を演算する。そして、電子キー2は、演算したレスポンス20と、自身に登録されたIDコード21とを、レスポンス信号22としてUHF帯の電波によって送信する。
【0027】
照合ECU9は、電子キー2にチャレンジ18を送信する際、自らも自身の暗号鍵にチャレンジ18を通してレスポンス20を演算する。照合ECU9は、電子キー2からレスポンス信号22を受信すると、電子キー2のレスポンス20と、自ら演算したレスポンス20とを照らし合わせて、レスポンス照合を実行する。また、照合ECU9は、電子キー2から取得したIDコード21が車両1と一致するかを見るIDコード照合を実行する。そして、照合ECU9は、レスポンス照合及びIDコード照合の両方が成立することを確認すると、スマート照合を成立として処理する。
【0028】
図1に示すように、キー操作フリーシステム3には、電子キー2のアック信号17から、そのとき通信相手となっている電子キー2が何番目の登録キーかを判定し、車両1からキー番号19を送信する際、そのとき通信相手となっている電子キー2のキー番号19のみを最初から送信させる通信順序設定装置23が設けられている。本例の通信順序設定装置23は、電子キー2から受け付けるアック信号17の「0」「1」の2値情報において、「1」のビット位置から電子キー2を識別し、チャレンジ18の後にキー番号19を送信する際、このとき通信相手となっている電子キー2のキー番号19を最初から送信させるものである。
【0029】
この場合、通信制御部13には、電子キー2がアック信号17を返信する際、それぞれの電子キー2の種類ごとに種類を変えて切り換えて送信させるアック信号設定部24が設けられている。本例のアック信号設定部24は、図3に示すように、各電子キー2の登録番号順に応じて、アック相当のビット位置が変更されている。例えば、アック信号17に割り当てたビット数を4ビットとした場合、登録番号が1番目の第1電子キー2aは、先頭のビットが「1」となったアック信号17a、つまり「1000」を送信し、登録番号が2番目の第2電子キー2bは、先頭から2番目のビットが「1」となったアック信号17b、つまり「0100」を送信する。なお、アック信号設定部24がアック信号設定手段に相当する。
【0030】
照合ECU9には、電子キー2から受信するアック信号17の信号内容を確認することで、通信相手となっている電子キー2の種類を判定するキー種類判定部25が設けられている。キー種類判定部25は、アック信号17のビット位置が何番目にあるのかを見ることにより、そのとき通信相手となっている電子キー2が、何番目の登録キーであるのかを確認することでキー種別を判定する。なお、キー種類判定部25がキー種類判定手段に相当する。
【0031】
照合ECU9には、電子キー2にキー番号19を送信する際、そのとき通信相手となっている電子キー2のキー番号19のみを最初から送信させるキー番号送信部26が設けられている。キー番号送信部26は、キー種類判定部25の判定結果を基に、そのとき通信相手となっている電子キー2が何番目の登録キーかを把握し、電子キー2にチャレンジ18を送信した後、その登録キーのキー番号19のみを最初から電子キー2に送信させる。なお、キー番号送信部26がキー番号送信手段に相当する。
【0032】
照合ECU9には、電子キー2との照合が車外及び車内のどちらで成立するか否かを見ることにより、電子キー2が車外及び車内のどちらに位置しているのかを判定するキー位置判定部27が設けられている。キー位置判定部27は、車外発信機10からのリクエスト信号Srqにより電子キー2が応答して電子キー2とスマート照合が行われると、このときの照合を車外照合として処理する。また、キー位置判定部27は、車内発信機11からのリクエスト信号Srqにより電子キー2が応答して電子キー2とスマート照合が行われると、このときの照合を車内照合として処理する。キー位置判定部27がキー位置判定手段に相当する。
【0033】
次に、本例の通信順序設定装置23の動作を図4及び図5に従って説明する。
まず、図4に示すように、例えば車外発信機10の通信エリアに第1電子キー2aが進入した場合を想定する。第1電子キー2aは、ウェイク信号16を受信すると、停止状態から起動状態に切り換わる。このとき、第1電子キー2aのアック信号設定部24は、第1電子キー2aが起動状態に切り換わったことを通知すべく、「1」のビットが先頭に立った「1000」の第1アック信号17aを送信する。
【0034】
照合ECU9は、この第1アック信号17aを車両チューナ12で受信すると、キー種類判定部25で第1アック信号17aを解読する。このとき、キー種類判定部25は、先頭に「1」のビットが立つアック信号17aを読み取るので、現在通信相手となっている電子キー2が第1電子キー2aであることを把握する。
【0035】
照合ECU9は、ウェイク信号16の送信の後に第1アック信号17aを受信したので、車両周辺に第1電子キー2aが存在することを認識し、続いてチャレンジレスポンス認証を実行すべくチャレンジ18を送信する。チャレンジ18の送信後、今度はキー番号送信部26がキー番号19の送信に移行する。このとき、キー番号送信部26は、現在の通信相手が第1電子キー2aであることを認識しているので、第1電子キー2aのキー番号19として第1キー番号19aを送信する。つまり、照合ECU9がキー番号19を送信する際、第1電子キー2aのキー番号19aのみが、最初から電子キー2に送信される。
【0036】
第1電子キー2aは、チャレンジ18及びキー番号19aを受信すると、まずキー番号19aでキー番号照合を行い、このキー番号照合が成立すれば、チャレンジ18を演算してレスポンス20を求める。そして、第1電子キー2aは、演算したレスポンス20と自身のIDコード21とを車両1に返信する。
【0037】
照合ECU9は、第1電子キー2aからレスポンス20及びIDコード21を受信すると、レスポンス照合及びIDコード照合を実行する。なお、キー位置判定部27は、このときのスマート照合が車外発信機10によるものであることを認識するので、このときの照合を車外照合として処理する。そして、照合ECU9は、レスポンス照合及びIDコード照合がともに成立することを確認すると、このときの車外照合を照合成立として処理する。
【0038】
また、図5に示すように、例えば車外発信機10の通信エリアに、第1電子キー2aよりも登録順位の低い第2電子キー2bが進入した場合を想定する。第2電子キー2bのアック信号設定部24は、第2電子キー2bがウェイク信号16により起動したことを確認すると、その旨を通知すべく、先頭から2番目のビットが「1」となった「0100」の第2アック信号17bを送信する。
【0039】
照合ECU9は、この第2アック信号17bを車両チューナ12で受信すると、キー種類判定部25で第2アック信号17bを解読する。このとき、キー種類判定部25は、先頭から2番目に「1」のビットが立つアック信号17bを読み取るので、現在通信相手となっている電子キー2が第2電子キー2bであることを確認する。
【0040】
続いて、照合ECU9は、ウェイク信号16の送信の後に第2アック信号17bを受信したので、車両周辺に第2電子キー2bが存在することを認識し、この後、チャレンジレスポンス認証を実行すべくチャレンジ18及びキー番号19を送信する。このとき、キー番号送信部26は、第2電子キー2bにキー番号19を送信する際、第2電子キー2bのキー番号19として第2キー番号19bを送信する。つまり、照合ECU9がキー番号19を送信する際、第2電子キー2bのキー番号19bのみが、最初から電子キー2に送信される。
【0041】
第2電子キー2bは、チャレンジ18及びキー番号19bを受信すると、キー番号19bでキー番号照合を行い、このキー番号照合が成立すれば、チャレンジ18を演算してレスポンス20を求める。そして、第2電子キー2bは、演算したレスポンス20と自身のIDコード21とを車両1に返信する。照合ECU9は、第2電子キー2bとレスポンス照合及びIDコード照合がともに成立することを確認すると、このときの車外照合を成立として処理する。
【0042】
なお、車内照合は、車両アンテナが車外発信機10ではなく、車内発信機11となっていることが異なるのみである。よって、車内照合の具体的な通信シーケンスの説明は、車外照合の説明を以て省略する。
【0043】
以上により、本例においては、電子キー2が車両1からのウェイク信号16により起動してアック信号17を返信する際、電子キー2ごとにアックのビット位置を変えて送信する。そして、照合ECU9は、電子キー2からアック信号17を受信すると、アック信号17のビット位置から通信相手の電子キー2が何番目の登録キーかを把握し、チャレンジ18の後にキー番号19を送信する際、このとき通信相手となっている電子キー2のキー番号19のみ送信して認証を実行する。
【0044】
このため、1台の車両1に複数の電子キー2が登録される場合であっても、照合ECU9が電子キー2の認証時にキー番号19を送信するに際して、このとき通信相手になっている電子キー2のキー番号19のみを、最初から1つだけ送信すれば済む。よって、従来技術のように、キー番号19を送信するに際して、車両1の登録キーを例えば登録順に1つずつ送信して、どれが応答するのかを確認する通信をとらずに済むので、その分だけ電子キー2のID照合に要する時間を短く済ますことが可能となる。
【0045】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)電子キー2がウェイク信号16に応答してアック信号17を返信する際、それぞれの電子キー2ごとにアックのビット位置を変えてアック信号17を送信し、このとき通信相手となっている電子キー2がどの登録キーなのかをアック信号17により把握する。そして、車両1からキー番号19を送信する際、現在通信相手の電子キー2のキー番号19のみを最初から送信する。よって、車両1に複数の電子キー2が登録されていても、キー番号19の送信時、これら登録キーのキー番号19を順番に送信していく動作をとらずに済むので、その分だけ電子キー2のID照合時間を短縮することができる。
【0046】
(2)電子キー2ごとにアックのビット位置を変えて、アック信号17のそれぞれに固有IDを持たせる。よって、信号がアックであることを表す記号的な位置付けのビットを位置変更するだけで、各アック信号17に固有IDを持たせることが可能となるので、簡単な方式でアック信号17を電子キー2ごとに種類分けすることができる。
【0047】
(3)車両1に車外発信機10及び車内発信機11を設け、車外発信機10のリクエスト信号Srqを契機とする照合の場合、電子キー2が車外に位置するとして車外照合成立を行い、車内発信機11のリクエスト信号Srqを契機とする照合の場合、電子キー2が車内に位置するとして車内照合を行う。よって、電子キー2が車外及び車内のどちらに存在するのかを把握することが可能となるので、例えば車外照合が成立すればドアロックの施解錠を許可又は実行し、車内照合が成立すればエンジン始動操作を許可する制御態様をとることができる。
【0048】
(4)車外と車内とのそれぞれに専用の発信機を設けて、電子キー2の紗那外判定を行うので、車外発信機10及び車内発信機11のどちらで照合が成立するかを単に見るだけで電子キー2の位置を判定することができる。
【0049】
実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・電子キー2の車内外判定は、例えば運転席と助手席とに発信機を設置し、これら発信機に対する電子キー2の応答の論理判定を使用してもよい。この位置判定では、例えば運転席発信機及び助手席発信機から順にリクエスト信号Srqを送信して電子キー2から応答を受け、これら発信機のどちらか一方で電子キー2から応答を受ければ車外と判定し、これら発信機の両方で電子キー2から応答を受け付ければ車内と判定する。
【0050】
・アック信号17の種類分けは、ビット位置を変えることに限定されず、データそのものの内容を変えるなど、種々の方式が採用可能である。
・応答要求は、ウェイク信号16に限らず、電子キー2に対する問い合せであれば、何でもよい。
【0051】
・ウェイク信号16のアック応答を受けた後、車両1からビークルIDを送信して電子キー2にビークルID照合を課し、ビークルID照合の後に、チャレンジレスポンス認証を実行してもよい。
【0052】
・キー番号は、数字の羅列に限らず、文字や記号など、広義として数字以外の要素を含めたものとする。
・キー操作フリーシステム3の双方向通信は、往路と復路とで周波数が異なることに限らず、同じとしてもよい。また、使用する周波数は、LFやUHFに限らず、他の帯域を使用してもよい。
【0053】
・キー操作フリーシステム3のドアエントリー機能は、車外ドアハンドルノブを操作することでドアロックの施解錠を切り換えるものに限らず、例えば車両1に近づくと自動でドアロックが解錠され、車両1から離れると自動でドアロックが施錠されるものでもよい。
【0054】
・電子キーシステムは、キー操作フリーシステム3に限らず、例えばIDタグを使用したイモビライザーシステムとしてもよい。
・電子キーシステムは、電子キー2が自ら電源(電池)を持つ構造に限らず、例えば車両1からキー電源になり得る電波を送信し、この電波を電源として電子キー2を動作させてもよい。
【0055】
・通信順序設定装置23は、車両1に使用されることに限定されず、他の機器や装置に応用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0056】
(イ)請求項1〜3のいずれかにおいて、前記応答要求は、待機状態をとっている前記電子キーを起動させるためのウェイク信号であり、前記アック信号は、前記電子キーが起動状態に切り換わったことを前記通信マスタに通知する信号である。この構成によれば、省電力化のために通常は待機状態をとる電子キーをウェイク信号により起動状態に切り換えることが可能となり、かつ電子キーが起動状態になったことをアック信号により通信マスタに通知することが可能となる。
【0057】
(ロ)請求項1〜3,前記技術的思想(イ)のいずれかにおいて、前記通信マスタは、車両であり、前記電子キーは、当該車両のキーである。この構成によれば、本構成の電子キーシステムを車両に応用するので、通信時間の短い車両用の電子キーシステムを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1…車両、2…電子キー、3…電子キーシステムとしてのキー操作フリーシステム、9…通信マスタとしての照合ECU、17(17a,17b)…アック信号、18…チャレンジ、19(19a,19b)…キー番号、20…レスポンス、24…アック信号設定手段としてのアック信号設定部、25…キー種類判定手段としてのキー種類判定部、26…キー番号送信手段としてのキー番号送信部、27…キー位置判定手段としてのキー位置判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信マスタからの応答要求を電子キーが受信すると、その応答としてアック信号を前記通信マスタに返信し、続いて前記通信マスタから、送信の度にコードが毎回異なるチャレンジと、このときの通信相手の前記電子キーが前記通信マスタのどの登録キーかを確認するためのキー番号とを前記電子キーに送信し、前記電子キーにおいて前記キー番号が一致すると、前記チャレンジの演算結果であるレスポンスを前記電子キーから前記通信マスタに送信し、前記通信マスタが当該レスポンスにより前記電子キーの正否を認証する電子キーシステムにおいて、
前記アック信号をそれぞれのキー固有の信号で送信させるアック信号設定手段と、
前記通信マスタが前記アック信号を受信した際、そのとき通信相手となっている前記電子キーがどの登録キーかを当該アック信号から確認するキー種類判定手段と、
前記通信マスタが前記電子キーに前記キー番号を送信する際、前記キー種類判定手段の判定結果から分かる該キー番号を指定して送信するキー番号送信手段と
を備えたことを特徴とする電子キーシステム。
【請求項2】
前記アック信号設定手段は、前記アック信号を各キー固有の信号とすべく、それぞれの前記電子キーごとに該信号のビット位置を切り換えて当該アック信号を送信させる
ことを特徴とする請求項1に記載の電子キーシステム。
【請求項3】
前記認証が車両のどのエリアで成立するのかを確認することにより、前記電子キーが車外及び車内のどちらに位置するのかを判定するキー位置判定手段を備えた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−7437(P2012−7437A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146233(P2010−146233)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】