電子パッド
【課題】 電子パッドにおけるフレームとカバーとの間に設置されたシートセンサの検出感度を良好にできる電子パッドを提供すること。
【解決手段】 フレーム10を表面カバー20で覆って上面を打撃面にした電子パッドAを構成した。そして、表面カバー20によって覆われたフレーム10の上面に圧力を検出するシートセンサ14を配置して、シートセンサ14と表面カバー20との間の空間部に押圧部材15を配置した。また、押圧部材15を、表面カバー20が備える弾性と異なる弾性を備えた材料で構成した。そして、押圧部材15を、打撃方向に対して垂直に延びる複数のリブ15bが打撃方向に直交する方向に間隔を保って配置された部材で構成した。
【解決手段】 フレーム10を表面カバー20で覆って上面を打撃面にした電子パッドAを構成した。そして、表面カバー20によって覆われたフレーム10の上面に圧力を検出するシートセンサ14を配置して、シートセンサ14と表面カバー20との間の空間部に押圧部材15を配置した。また、押圧部材15を、表面カバー20が備える弾性と異なる弾性を備えた材料で構成した。そして、押圧部材15を、打撃方向に対して垂直に延びる複数のリブ15bが打撃方向に直交する方向に間隔を保って配置された部材で構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子打楽器に使用される電子パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子シンバルやハイハット形電子シンバルのように円板状のパッドで打撃面が構成された電子打楽器が用いられている(例えば、特許文献1参照)。この電子打楽器は、円板状のパッドで打撃面が構成された電子パッドを備えており、電子パッドの打撃面が打撃された際に電子パッドに発生する振動を、電子パッドの裏面側に設置された打撃センサや打撃面側に設置されたシートセンサ(メンブレンスイッチ)が検出し、打撃センサやシートセンサの検出値に応じてスピーカーから打音を発生するように構成されている。また、電子パッドは、上方に凸曲面をなす円板状のフレーム(金属製基体)の上面に、打感や消音効果を高めるためのゴム製のカバーを被着して構成されており、シートセンサはフレームとカバーとの間に設置されている。
【特許文献1】特開2003−316355号公報
【発明の開示】
【0003】
前述した電子パッドでは、フレームは、中央側が外周側よりも上方に向ってやや盛り上がった凸曲面の円板状に形成されている。そして、カバーは、フレームの上面に沿えるように外周側よりも上方に向ってやや盛り上がった凸曲面の円板状に形成され、カバーの中央側部分は、カップ部を形成するために、さらに上方に盛り上がった形状になっている。このため、シートセンサを電子パッドの中央側のカップ部に設置する場合には、比較的平らなフレームの上面にシートセンサを配置し、シートセンサの上面側を上面が盛り上がった曲面に形成されたカバーで覆うようになる。
【0004】
この結果、カバーにおけるシートセンサの上方に位置する部分は、内周側の肉厚が外周側の肉厚よりも大きくなるように形成しなければシートセンサの内周側部部分と外周側部分とを均等に押圧することができなくなる。このため、カバーの下面でシートセンサを均等に押圧するためにはカバーを精度よく成形することが必要になるが、これが製造上難しいという問題が生じていた。そして、カバーの成形精度が良くない場合には、シートセンサの検出感度が低下するという問題が生じる。さらに、カバーをフレームに取り付けたり、取り外したりする場合に、シートセンサに手やカバーが接触してシートセンサにしわや位置ずれが生じてシートセンサの検出感度が低下し易くなるという問題も生じる。
【0005】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、電子パッドにおけるフレームとカバーとの間に設置されたシートセンサの検出感度を良好にできる電子パッドを提供することである。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係る電子パッドの構成上の特徴は、略円板状のフレームにおける上面から下面の外周側部分を弾性を備えたカバーで覆い、上面を打撃面にした電子パッドであって、カバーによって覆われたフレームの上面に圧力を検出するシートセンサを配置して、シートセンサとカバーとの間に空間部を設けるとともに、空間部に押圧部材を配置し、打撃面が打撃されたときに押圧部材を介してシートセンサが押圧されるようにしたことにある。
【0007】
前述したように構成した本発明に係る電子パッドでは、カバーで覆われたフレームの上面に圧力を検出するシートセンサを配置している。そして、シートセンサとカバーとの間に空間部を設け、その空間部にシートセンサを押圧するための押圧部材を配置している。このため、カバーの肉厚は全体にわたって略同一にして、カバーが打撃を受けたときに、押圧部材によってその打撃力が適正にシートセンサに伝達されるようにすることができる。すなわち、カバーで直接シートセンサを押圧するのではなく、カバーとは別体の押圧部材を介してシートセンサを押圧するため、押圧部材の形状をシートセンサの押圧に適した形状にしたり、押圧部材の材質として適正なものを選択したりすることにより、シートセンサの適正な押圧が可能になる。
【0008】
この結果、カバーの成形が容易になるとともに、シートセンサは感度よく打撃による圧力を検出できるようになる。また、シートセンサが押圧部材によって、覆われているため、カバーをフレームに取り付けたり、取り外したりするときに、シートセンサに手やカバーが接触することもなくなる。なお、押圧部材の下面には、シートセンサを収容できる凹部を形成して、押圧部材がカバーに押圧されたときに下方に撓んでシートセンサを押圧するようにすることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る電子パッドの他の構成上の特徴は、押圧部材を、カバーが備える弾性と異なる弾性を備えた材料で構成したことにある。これによると、カバーには、電子パッドを打撃した際の打感を良好にできるとともに、消音効果を発揮できる材料を用い、押圧部材には、シートセンサを押圧するために適した材料を用いることができる。
【0010】
また、本発明に係る電子パッドのさらに他の構成上の特徴は、押圧部材を、打撃方向に対して垂直に延びる複数のリブが打撃方向に直交する方向に間隔を保って配置された部材で構成したことにある。これによると、各リブ間に空間が形成されるため、打撃によって押圧部材が撓み易くなるとともに、打撃力が分散されるようになり、大きな打撃が加わってもシートセンサに局部的な押圧力がかかってその部分が破損することがなくなる。また、リブの厚さ、高さ、間隔を変更することによってシートセンサにかかる押圧力を変更することができるため、押圧部材によるシートセンサの押圧を適正にすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る電子パッドを図面を用いて説明する。図1ないし図3は、本発明の一実施形態に係る電子パッドAを支持部30に取り付けた状態を示している。この電子パッドAは、図4および図5に示したフレーム10と、図6および図7に示した本発明に係るカバーとしての表面カバー20とを組み付けることにより本体部分が構成されており、支持部30に略水平でかつ揺動可能な状態で取り付けられている。フレーム10は、表面カバー20を一定の形状にして保持できるとともに、表面カバー20を介して打撃を受け止めることができるように、硬質のポリプロピレンからなる成形体で構成されており、中央側が外周側よりも上方に向ってやや盛り上がった凸曲面の円板状に形成されている。
【0012】
そして、フレーム10の中心にフレーム10の上面から下面に貫通する貫通孔11が形成されている。図4は、フレーム10の上面を示している。図4に示したように、フレーム10の上面における貫通孔11の周囲には、上方に突出した略円錐台形の被支持部12(図8参照)が形成されている。そして、被支持部12の後部(演奏者(使用者)の位置から見た後部であり、以下、図1ないし図7においては、図示の左側を前部、右側を後部として説明する。)には、後方に延びる後方突出部12aが形成され、その後方突出部12aの上面に上下に貫通し、前後に長い楕円状の回転防止孔11aが設けられている。また、被支持部12の周囲における後方突出部12aが位置する部分を除いた部分には、係合溝部13が形成されている。
【0013】
すなわち、図8に示したように、被支持部12の外周側には、被支持部12と間隔を保って平面視が略環状の係合壁部13aが形成されており、被支持部12の傾斜面になった外周面と係合壁部13aとの間に係合溝部13が形成されている。そして、フレーム10の上面における係合壁部13aの外周側に、平面視がC字状の本発明に係るシートセンサとしてのシートセンサ14が、図8に示したように設置され、その上面に弾性を備えたシリコンゴムからなる押圧部材15が設置されている。シートセンサ14および押圧部材15は、係合壁部13aの外周部分における後方突出部12aおよびその近傍部分を除いた部分に係合壁部13aを囲むように配置されている。
【0014】
押圧部材15は、図4および図9に示したように、平面視がC字状に形成された板状の底面部15aと、底面部15aの上面に円周方向に一定の間隔で配置された複数のリブ15bと、底面部15aの下面に間隔を保って形成された複数の差込固定部15eとを一体にして構成されている。各リブ15bは、底面部15aの内周側に位置する部分の高さが高く、底面部15aの外周側に位置する部分の高さが低くなった略三角形の板状に形成されており、底面部15aの径方向に放射状に配置されている。このため、各リブ15b間には、空間が形成され、この空間が形成されることによって各リブ15bは、垂直方向の押圧に対して撓み易くなっているとともに、押圧力は各リブ15bに分散され易くなる。
【0015】
また、リブ15bは、押圧力に対して敏感に反応して撓むとともに、押圧力が解除されたときには素早く元の状態に復帰する性質を備えている。底面部15aの下面における内周縁部と外周縁部との間には円周に沿ってC字状の溝状凹部15dが形成されており、押圧部材15は、この溝状凹部15d内にシートセンサ14を位置させた状態でフレーム10の上面に設置されている。溝状凹部15dの内周縁部と外周縁部とには、それぞれ上方に向って延びるスリット状の凹部15fが形成されており、この凹部15fによって溝状凹部15dの天井部は下方に向って撓み易くなっている。
【0016】
また、差込固定部15eは、底面部15aの下面における内周縁部と外周縁部とには所定間隔を保って複数(本実施形態では11個)設けられている。この差込固定部15eは、円柱状の基部側部分と先細りになった先端側部分との間に大径部を形成した形状になっている。また、図10に示したようにフレーム10におけるシートセンサ14が設置される部分には、押圧部材15の差込固定部15eと同じ間隔を保って差込固定部15eと同じ個数の差込穴10bが形成されている。この差込穴10bの直径は、差込固定部15eの基部側部分の直径と略同じに設定されている。
【0017】
また、図11に示したように、シートセンサ14にも押圧部材15の差込固定部15eと同じ間隔を保って差込固定部15eと同じ個数の挿通穴14fが形成されている。なお、図11は、シートセンサ14の挿通穴14fに押圧部材15の差込固定部15eを挿し込んだ状態を示している。押圧部材15等は、このように構成されているため、シートセンサ14および押圧部材15をフレーム10に取り付ける場合には、まず、フレーム10の差込穴10bに挿通穴14fを合わせて、シートセンサ14をフレーム10上に設置する。つぎに、押圧部材15の各差込固定部15eを先端側部分からシートセンサ14の挿通穴14fおよびフレーム10の差込穴10b内に挿し込んでいき、各差込固定部15eの先端側部分をフレーム10の裏面側に突出させる。
【0018】
そして、各差込固定部15eの先端側部分をフレーム10の裏面側に引っ張って各差込固定部15eの大径部を差込穴10bにおけるフレーム10の裏面側の開口縁部から突出させる。これによって、図12に示したように、シートセンサ14はフレーム10と押圧部材15によって挟まれた状態で固定される。また、押圧部材15をフレーム10から外す場合には、押圧部材15をフレーム10から引き剥がすようにして引っ張ることによりフレーム10から取り外すことができる。
【0019】
そして、フレーム10の上面における係合壁部13aおよび後方突出部12aの外周部分で押圧部材15が配置されていない部分には、フレーム10の本体部分と一体になった複数のリブ15cが形成されている。このリブ15cの上部側部分は、押圧部材15のリブ15bと略同一の形状でかつ同間隔に形成されており、リブ15bとリブ15cとで一定間隔で配置され、高さが同じになった環状のリブが構成されている。また、フレーム10の上面における押圧部材15およびリブ15cの外周部分に、円周方向に一定間隔を保って3個の位置ずれ防止凹部16が形成されている。各位置ずれ防止凹部16は、平面視が円弧状で断面の縁部形状が半円状に形成されている。
【0020】
この位置ずれ防止凹部16のうちの一つは、リブ15cの後部側に配置され、他の二つは、各位置ずれ防止凹部16の間隔が貫通孔11を中心として120度になるように配置されている。また、フレーム10の上面における外周側部分には円周に沿って環状の位置ずれ防止凹部16aが形成されている。位置ずれ防止凹部16aの断面の縁部は半円状に形成されている。また、フレーム10の上面における外周縁部には、図13に示したように、上方に向って僅かに突出した位置決め用突部10aが形成されている。
【0021】
そして、フレーム10の上面における位置決め用突部10aに沿った部分に、位置ずれ防止凹部16aから僅かな間隔を保って、シートセンサ14aと、シートセンサ14bとが設置されている。なお、図13は、シートセンサ14aが設置された部分の断面を示しているが、シートセンサ14a,14bともに、フレーム10の上面に位置決め用突部10aに沿って形成されている。シートセンサ14aは、フレーム10の上面における前部側から左右両側にかけて配置された平面視がC字形の細長いセンサで構成され、シートセンサ14bは、フレーム10の上面における後部側に配置された平面視が円弧状の細長いシートセンサで構成されている。
【0022】
シートセンサ14aとシートセンサ14bとは、互いの端部間に僅かな間隔を設けた状態で両面テープによってフレーム10に貼り付けられている。シートセンサ14aの長さは、シートセンサ14bの長さの2倍よりもやや長くなっており、シートセンサ14aとシートセンサ14bとで略環状のシートセンサが形成されている。また、シートセンサ14aとシートセンサ14bとの対向する右側(演奏者側から見て右側で図4では下側)の端部近傍には、それぞれフレーム10の中心側に延びるセンサ導出部14c,14dが接続されている。
【0023】
なお、図示していないが、フレーム10におけるセンサ導出部14c,14dの基端部と係合壁部13aとの間の所定部分には二つの挿通穴が形成されており、センサ導出部14c,14dの先端部は、この挿通穴を挿通してフレーム10の下面側に延びている。また、フレーム10における前述したシートセンサ14が設置された部分にも挿通穴が形成されており、このシートセンサ14に接続されたセンサ導出部14e(図11参照)は、この挿通穴を挿通してフレーム10の下面側に延びている。
【0024】
フレーム10の下面には、図5に示したように、信号出力部17とピエゾセンサ18とが設置されており、シートセンサ14のセンサ導出部14eの先端部およびセンサ導出部14c,14dの先端部は信号出力部17に接続されている。また、信号出力部17は接続線17aを介してピエゾセンサ18に接続されている。シートセンサ14、シートセンサ14a,14bおよびピエゾセンサ18は、打撃を受けたときの衝撃やフレーム10が振動したときの振動に基づく圧力変化を検出して検出信号を出力する圧力センサ等のセンサで構成されている。
【0025】
そして、信号出力部17は、センサ導出部14eを介して送られるシートセンサ14からの検出信号を出力端子から外部に出力するとともに、センサ導出部14c,14dを介して送られるシートセンサ14a,14bからの検出信号を出力端子から外部に出力する。さらに、信号出力部17は、接続線17aを介してピエゾセンサ18から送られる検出信号を出力端子から外部に出力する。
【0026】
また、フレーム10の下面における外周側部分には、円周に沿って環状のめくれ防止片部19が形成されている。このめくれ防止片部19は、図13に示したように下方に延びる垂下片と垂下片の下端部から外周側に延びる水平片とからなる断面形状が略L字状の突部で構成されている。また、フレーム10の下面におけるめくれ防止片部19の外周側部分には、めくれ防止片部19と間隔を保って円周に沿って延びる細い環状の位置ずれ防止凹部19aが形成されている。
【0027】
表面カバー20は、弾性を備えたエチレン−プロピレンゴムの成形体からなっており、フレーム10の上面における中央の被支持部12および後方突出部12aを除いた部分とフレーム10の下面の周縁部近傍部分とを被覆できる略円板状の上面側部分とリング状の下面側部分とで構成されている。すなわち、表面カバー20の上面側部分は、フレーム10の上面に沿えるように、中央側が外周側よりも上方に向ってやや盛り上がった凸曲面を備えた形状になっており、その中心には、フレーム10の被支持部12および後方突出部12aが嵌合可能な嵌合穴21が形成されている。
【0028】
そして、嵌合穴21の外周側には、フレーム10の上面に設置された押圧部材15の上面を覆うことのできる大きさで、押圧部材15の上部に沿えるように中心側が盛り上がったカップ表面部22が形成されている。すなわち、カップ表面部22は、略一定の厚みに形成された凸曲面部で構成され、フレーム10における略平面に形成された部分に押圧部材15を配置することにより、表面で受ける打撃を押圧部材15を介して押圧部材15の下方のシートセンサ14に伝達できる。
【0029】
また、表面カバー20におけるカップ表面部22の外周側部分は、表面に複数の浅い凹みが形成されたディンプル形成部23で構成され、さらにその外周側部分は、表面にレコードの溝のような同心円状の複数の溝が形成されたレイジング形成部24で構成されている。ディンプル形成部23は、表面カバー20をフレーム10に取り付けたときに、フレーム10を介してピエゾセンサ18の上方に位置し、レイジング形成部24は、シートセンサ14a,14bの上方に位置する。
【0030】
そして、図7に示したように、表面カバー20の外周側部分の下部側に形成されたリング状の下面側部分は、レイジング形成部24とで、フレーム10の周縁部を挟み込むことのできる挟持部25で構成されている。挟持部25の下面における後部には、他の部分よりも薄肉になった円弧状の薄肉部25aが形成されている。挟持部25は、図13に示したように、外周側部分よりも内周側部分の方が厚みが大きくなっており、上面が略水平面で下面がやや下方に膨らんだ滑らかな曲面に形成されている。
【0031】
そして、図14に示したように、挟持部25の下面後部に外周側から表面カバー20の中心に向って略水平に延びる水平面と水平面の端部から下方に滑らかに曲がりながら延びる曲面とからなる切欠き部が形成されその切欠き部が形成された部分が薄肉部25aを構成している。薄肉部25aの周縁部と、挟持部25の他の部分とのそれぞれの境界部は、角を備えた段差が生じないように滑らかな曲面に形成されている。また、薄肉部25aは、薄肉部25aの両端部と表面カバー20の中心とを結ぶ両仮想線間の角度が20度から70度の間になる範囲に形成される。
【0032】
挟持部25の薄肉部25aは肉厚を薄くすることにより伸びやすくなっており、挟持部25における薄肉部25a以外の部分は、適度な肉厚にされて表面カバー20としての十分な強度を備えている。また、挟持部25の下面内周縁部には、フレーム10のめくれ防止片部19が係合できる係合凹部25bが形成されている。この係合凹部25bにめくれ防止片部19が係合したときに、挟持部25の下面とめくれ防止片部19の下端面とは同じ高さになって連なった面を形成する。さらに、挟持部25の上面には、フレーム10の位置ずれ防止凹部19aに係合できる位置ずれ防止凸部25cが形成されている。
【0033】
また、レイジング形成部24の下面には、凹部29が形成されており、この凹部29を形成したことによって、その部分は、レイジング形成部24の他の部分やディンプル形成部23よりも薄肉になっている。そして、レイジング形成部24の薄肉部分の下面における位置ずれ防止凸部25cに対向する部分から内周側にかけての部分には押圧用凸部24aが形成されている。この押圧用凸部24aの下面は、凹部29の天井面よりも低く、レイジング形成部24の下面における押圧用凸部24aに隣接する部分よりもやや上方に位置している。
【0034】
押圧用凸部24aは、シートセンサ14a,14bを押圧するためのものであり、表面カバー20をフレーム10に取り付けたときに、シートセンサ14a,14bの上面に位置する。このとき、レイジング形成部24の下面における凹部29とフレーム10(シートセンサ14a,14b)の上面との間には空間部が形成される。また、押圧用凸部24aを含めた凹部29の幅(内周側縁部と外周側縁部との間の長さ)はシートセンサ14a,14bの幅よりも大きくなっている。
【0035】
このため、電子パッドAにおけるレイジング形成部24の部分を打撃すると、レイジング形成部24の薄肉部分が撓んでシートセンサ14a,14bは、押圧用凸部24aによって押圧される。また、レイジング形成部24の下面におけるディンプル形成部23との境界部近傍には、フレーム10の位置ずれ防止凹部16aに係合できる位置ずれ防止凸部24bが円周に沿って形成されている。そして、レイジング形成部24と挟持部25との連結部における内面は角部のない滑らかな曲面に形成されている。
【0036】
さらに、凹部29と押圧用凸部24aとの境界部分も滑らかな曲面に形成されている。また、表面カバー20の下面における嵌合穴21の周縁部には下方に突出してフレーム10の係合溝部13に係合できるC字状の係合突条26が形成されている。この係合突条26は、嵌合穴21の周縁部におけるフレーム10の後方突出部12aに対応する後方凹部21aを除いた部分に形成されている。
【0037】
そして、係合突条26の外周面に上下に延びる複数の滑り止め用の突部26aが円周方向に一定間隔で設けられている。係合突条26は、表面カバー20をフレーム10に取り付けるときに、被支持部12の傾斜になった外周面に押し付けられながら係合溝部13内に入り込む。その際、各突部26aの外周端部は、係合壁部13aの内周面に圧接して、係合突条26が係合溝部13から外れることを防止するとともに、表面カバー20がフレーム10に対して回転方向にずれることを防止する。
【0038】
また、ディンプル形成部23の下面におけるカップ表面部22との境界部近傍には、円周方向に一定間隔を保って3個の円弧状の位置ずれ防止凸部27が形成されている。この位置ずれ防止凸部27のうちの一つは、後方凹部21aの後部側に配置され、他の二つは、各位置ずれ防止凸部27の間隔が嵌合穴21を中心として120度になるように配置されている。この3個の位置ずれ防止凸部27は、表面カバー20をフレーム10に取り付けたときに、フレーム10の各位置ずれ防止凹部16内に入り込み、表面カバー20がフレーム10に対してずれることを防止する。
【0039】
また、表面カバー20が備える弾性の大きさは、押圧部材15が備える弾性よりも大きくなっておいる。このため、表面カバー20が大きな力で打撃された場合でも、押圧部材15がその打撃力を緩衝して打撃を和らげてシートセンサ14を押圧する。このように構成されたフレーム10と表面カバー20との組み付けは、係合溝部13と係合突条26、位置ずれ防止凹部16と位置ずれ防止凸部27、位置ずれ防止凹部16aと位置ずれ防止凸部24b、めくれ防止片部19と係合凹部25b、位置ずれ防止凹部19aと位置ずれ防止凸部25cをそれぞれ係合させ、フレーム10の外周縁部をレイジング形成部24と挟持部25とで挟み込むことにより行われる。
【0040】
このとき、表面カバー20の挟持部25を引っ張って変形させながら組み付けが行われるが、挟持部25を大きく変形させる場合には、その変形部分が薄肉部25aになるようにする。これによって、表面カバー20をフレーム10に組み付ける際に、表面カバー20に亀裂が生じることを防止できる。また、電子パッドAの修理等を行う場合に、表面カバー20をフレーム10から捲る場合があるが、このときにも、挟持部25の薄肉部25a側から表面カバー20を捲っていく。なお、挟持部25の薄肉部25aは、上方に引っ張って反転したときにその反転した状態を維持できるように構成されている。また、表面カバー20は、伸縮可能な弾性を備えており、その収縮力によってフレーム10に密着するように取り付けられる。
【0041】
フレーム10の下面の一部は、裏面カバー28で覆われている。裏面カバー28は、フレーム10よりも軟質のエチレン酢酸ビニル等の樹脂材料からなる成形体で構成されており、フレーム10の下面中央に位置する中央部28aと中央部28aから外周側三方に一定角度を保って延びる3個の腕部28bとで構成されている。この裏面カバー28は、中央部に挿通穴が設けられており、信号出力部17、ピエゾセンサ18および接続線17aを覆った状態でフレーム10の下面に配置され複数のねじ28cによってフレーム10に固定されている。
【0042】
支持部30は、図8に示したように、フレーム10の貫通孔11および裏面カバー28の挿通穴を貫通して電子パッドAを支持する支持柱31、支持柱31の外周に取り付けられてフレーム10の上面と下面とに配置された一対のフェルト部材32a,32bおよび支持柱31の上端部に取り付けられた締付調節ねじ33を備えている。支持柱31は、金属製の棒で構成されており、シンバルスタンド(図示せず)の上部に設けられた回転支持部34に連結されている。そして、支持柱31の軸方向の略中央部に、下面が水平面に形成され上面が中央側が上方に凸状になった凸曲面に形成されたフランジ状のフェルト支持部31aが形成されている。また、支持柱31の上端部には、ねじ(図示せず)が形成されている。
【0043】
一対のフェルト部材32a,32bは、多少の伸縮が可能な弾性を備えた部材で構成されており、ともに、やや軸方向の長さが長いリング状に形成されている。フェルト部材32a,32bは、軸方向の長さと内径は同じに設定されているが、外径はフェルト部材32aがフェルト部材32bよりも大きくなっている。そして、一対のフェルト部材32a,32bのうちのフェルト部材32bは、支持柱31の外周におけるフェルト支持部31aとフレーム10の被支持部12との間に設置されている。
【0044】
また、フェルト部材32aは、支持柱31の外周における被支持部12の上面に位置する部分に設置されている。そして、支持柱31の上端に形成されたねじに締付調節ねじ33が締結力を変更可能に螺合している。電子パッドAは、揺動可能な状態で支持部30に取り付けられており、締付調節ねじ33の締結力を変更することにより、電子パッドAの揺れ具合を調節することができる。電子パッドAは、打撃されたときに揺動することで衝撃を和らげることができ、これによって、フレーム10や表面カバー20が破損することが防止される。
【0045】
また、支持柱31の外周におけるフェルト支持部31aの下方には、フェルト支持部31aと間隔を保って、軸方向の長さが短い円筒状のピン支持部35が固定されている。そして、このピン支持部35の外周面における後部には、後方水平方向に延びたのちに屈曲して上方に延びるL形の回転防止ピン35aが連結されている。回転防止ピン35aの上端部は、回転防止孔11aを貫通して、電子パッドAの上面から突出しており、これによって、電子パッドAは、支持柱31の軸周り方向への回転を防止される。
【0046】
回転支持部34は、図2および図8に示したように、操作片36aを備えたねじ軸部36を介してシンバルスタンドに接続された基部37に上下方向に回転可能に連結されている。このため、操作片36aの操作によりねじ軸部36を緩めることにより回転支持部34を介して支持柱31の角度を調節することができ、操作片36aの操作によりねじ軸部36を締めることにより、支持柱31をその調節した位置に固定することができる。
【0047】
また、電子パッドAの信号出力部17は、配線によって音調節装置(図示せず)に接続されており、さらに音調節装置は、アンプやスピーカー等からなるサウンドシステムに接続されている。音調節装置は、CPU,ROM,RAM、音源回路、効果回路等を備えている。ROMには、制御プログラムや各種のデータ等が記憶されており、RAMには、演奏データ等の各種の入力情報が一時的に記憶される。そして、CPUは、RAMに記憶された各種の入力情報に応じてROMに記憶された制御プログラムを実行する。
【0048】
音源回路は、CPUの制御により、電子パッドAから入力される検出信号による演奏データや予め設定された演奏データを楽音信号に変換して効果回路に出力し、効果回路は、音源回路から入力される楽音信号に効果を付与して、サウンドシステムに出力する。そして、サウンドシステムは、楽音信号を音に変換して発音する。この場合に、電子パッドAから出力される検出信号は、シートセンサ14、シートセンサ14a,14bおよびピエゾセンサ18の検出によるものである。すなわち、演奏者がスティック等で電子パッドAの打撃面を打撃すると、打撃面がその打撃に応じて振動する。
【0049】
そして、打撃面における打撃部分と打撃力の大きさに応じて、シートセンサ14、シートセンサ14a,14bおよびピエゾセンサ18が、打撃面から伝わる打撃力または打撃面の振動を検出する。電子パッドAにおけるカップ表面部22を打撃した場合には、シートセンサ14が表面カバー20および押圧部材15を介して伝わる打撃力を検出するとともに、ピエゾセンサ18がフレーム10の振動を検出する。ディンプル形成部23を打撃した場合には、ピエゾセンサ18だけがフレーム10の振動を検出する。
【0050】
また、レイジング形成部24の前部から両側部に係る部分を打撃した場合には、シートセンサ14aが表面カバー20を介して伝わる打撃力を検出するとともに、ピエゾセンサ18がフレーム10の振動を検出する。そして、レイジング形成部24の後部を打撃した場合には、シートセンサ14bが表面カバー20を介して伝わる打撃力を検出するとともに、ピエゾセンサ18がフレーム10の振動を検出する。このように打撃される電子パッドAにおける打撃面の打撃部分および打撃力の強弱等によって、それぞれ異なる音がサウンドシステムのスピーカーから発音される。
【0051】
この場合、フレーム10は、表面カバー20を介して受ける打撃を打撃力または振動として、シートセンサ14,14a,14bおよびピエゾセンサ18に伝達するとともに、その打撃力を吸収して余分な振動を抑制する。また、表面カバー20は、打撃の際の演奏者の感触を良くするとともに、フレーム10の振動を抑制して消音させる機能を有する。裏面カバー28は打撃によって生じるフレーム10の撓みに沿って変形しながらフレーム10の振動を抑制する。さらに、電子パッドAにおける周縁部のレイジング形成部24と挟持部25との部分を手で掴むことによりミュート操作ができる。これによって、フレーム10の振動が吸収されて消音する。また、スピーカーに代えてヘッドホーンをサウンドシステムに含め、消音した状態でヘッドホーンからその音を聞くこともできる。
【0052】
以上のように構成された電子パッドAは、例えば、ドラムセットにシンバルとして組み込んで用いることができる。そして、ドラムセットに組み込まれた電子パッドAを演奏する場合には、まず、操作片36aを操作することによりねじ軸部36を緩めて支持柱31が略垂直になるように調節してねじ軸部36を締める。ついで、締付調節ねじ33の締結力を調節することにより、電子パッドAの揺れ具合を調節する。これによって、電子パッドAは略水平の状態になるとともに、打撃を受けたときに適度な角度で揺動するようになる。そして、ドラムセットの前に椅子を置き、演奏者は、椅子に座った状態で、電子パッドA等をスティックで打撃することにより演奏することができる。
【0053】
この場合、電子パッドAは、打撃される各部分や打撃力の強弱によって、発音する音を変化させることができるとともに、その音にさらに効果を付与することにより音を変化させることができる。すなわち、アコースティックのシンバルと同様の音を発生できるとともに、さらにその音をこもった音にしたり、高音の金属音にしたり種々の音色にして発生することができる。また、電子パッドAはスティックで打撃されることにより、適度に揺動するが、回転防止ピン35aの上部が、前後に長い楕円形の回転防止孔11aを貫通して、電子パッドAの上面から突出しているため、電子パッドAが、支持柱31の軸周り方向に回転してその回転方向の位置が変更することはない。
【0054】
このように、本実施形態に係る電子パッドAでは、表面カバー20におけるカップ表面部22の肉厚を略一定にしている。そして、フレーム10の上面におけるカップ表面部22で覆われる部分にシートセンサ14を配置し、シートセンサ14とカップ表面部22との間に形成される空間部にシートセンサ14を押圧するための押圧部材15を配置している。また、表面カバー20は、打感を良好にできるとともに消音効果を発揮できるエチレン−プロピレンゴムで構成し、押圧部材15は表面カバー20が受ける打撃力をシートセンサ14に伝える介在部材に適したシリコンゴムで構成している。さらに、押圧部材15を、平面状の底面部15aと、底面部15aの上面に一定間隔で配置された複数のリブ15bと、底面部15aの下面に間隔を保って形成された複数の差込固定部15eとを一体にして構成している。
【0055】
このため、表面カバー20の成形が容易になるとともに、シートセンサ14は感度よく打撃による圧力を検出できるようになる。また、押圧部材15のフレーム10への着脱操作が容易になる。さらに、シートセンサ14が押圧部材15によって、覆われているため、表面カバー20をフレーム10に取り付けたり、取り外したりするときに、シートセンサ14に手や表面カバー20が接触することもなくなる。このため、シートセンサ14が引っ張られたり、位置ずれしたりして検出感度が低下することがなくなる。また、押圧部材15の各リブ15b間には空間が形成されているため、打撃によってこのリブ15bが撓み易くなるとともに、打撃力が分散されるようになる。この結果、大きな打撃が加わってもシートセンサ14に局部的な押圧力がかかってその部分が破損することがなくなる。
【0056】
さらに、フレーム10と表面カバー20とは、位置ずれ防止凹部16等と位置ずれ防止凸部27等によって種々の部分で係合しており、その係合に加えて、さらに、表面カバー20は収縮力によってフレーム10に密着している。このため、電子パッドAが激しく打撃されても表面カバー20がフレーム10から位置ずれすることが防止される。これによって、シートセンサ14a,14bにも位置ずれが生じなくなり、シートセンサ14a,14bの検出感度を良好な状態に維持できる。また、表面カバー20がフレーム10からずれた場合には、表面カバー20が部分的に浮き上がるようになるため、表面カバー20に位置ずれが生じた場合にはその位置ずれをすぐに見つけることができる。
【0057】
また、本発明に係る電子パッドは、前述した実施形態に限定するものでなく本発明の技術的範囲で適宜変更実施が可能である。例えば、前述した実施形態では、押圧部材15をシリコンゴムで構成しているが、この押圧部材15は、シリコンゴム以外の材料で構成してもよい。また、押圧部材15は、底面部15aとリブ15bに限らず、他の形状を備えた部材で構成してもよい。さらに、前述した実施形態では、シートセンサ14および押圧部材15のフレーム10への取り付けを、押圧部材15の差込固定部15eをシートセンサ14の挿通穴14fおよびフレーム10の差込穴10b内に挿し込むことによって行っているが、これに代えて両面テープや接着剤等を用いて接着固定してもよい。
【0058】
さらに、前述した実施形態では、電子パッドAを電子シンバルとしているが、支持柱をパイプ状の部材で構成するとともに、この支持柱に、フットペダルの操作によりシンバルスタンドに対して上下に移動する移動軸を用いたハイハット形の電子シンバルに用いることもできる。この場合、電子パッドの下方にハイハットベースを設けるとともに、裏面カバーの中央側に、ハイハットベースに当接することによりオンになるスイッチを備えたハイハットアクチュエータを設ける。また、それ以外の各部分の構成や材料等についても本発明の技術的範囲内で適宜変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子パッドが支持部に取り付けられた状態を示した平面図である。
【図2】図1に示した支持部に取り付けられた電子パッドの右側面図である。
【図3】図1に示した支持部に取り付けられた電子パッドの底面図である。
【図4】電子パッドが備えるフレームを示した平面図である。
【図5】電子パッドが備えるフレームを示した底面図である。
【図6】電子パッドが備える表面カバーを示した平面図である。
【図7】電子パッドが備える表面カバーを示した底面図である。
【図8】支持部に取り付けられた電子パッドを示した縦断面図である。
【図9】押圧部材を示した斜視図である。
【図10】フレームにおける押圧部材が取り付けられる部分を示した斜視図である。
【図11】押圧部材とシートセンサとを組み付けた状態を示した斜視図である。
【図12】シートセンサの固定状態を示した断面図である。
【図13】電子パッドの前部外周側部分を示した縦断面図である。
【図14】表面カバーの後部外周側部分を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10…フレーム、14…シートセンサ、15…押圧部材、15b…リブ、20…表面カバー、22…カップ表面部、A…電子パッド。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子打楽器に使用される電子パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子シンバルやハイハット形電子シンバルのように円板状のパッドで打撃面が構成された電子打楽器が用いられている(例えば、特許文献1参照)。この電子打楽器は、円板状のパッドで打撃面が構成された電子パッドを備えており、電子パッドの打撃面が打撃された際に電子パッドに発生する振動を、電子パッドの裏面側に設置された打撃センサや打撃面側に設置されたシートセンサ(メンブレンスイッチ)が検出し、打撃センサやシートセンサの検出値に応じてスピーカーから打音を発生するように構成されている。また、電子パッドは、上方に凸曲面をなす円板状のフレーム(金属製基体)の上面に、打感や消音効果を高めるためのゴム製のカバーを被着して構成されており、シートセンサはフレームとカバーとの間に設置されている。
【特許文献1】特開2003−316355号公報
【発明の開示】
【0003】
前述した電子パッドでは、フレームは、中央側が外周側よりも上方に向ってやや盛り上がった凸曲面の円板状に形成されている。そして、カバーは、フレームの上面に沿えるように外周側よりも上方に向ってやや盛り上がった凸曲面の円板状に形成され、カバーの中央側部分は、カップ部を形成するために、さらに上方に盛り上がった形状になっている。このため、シートセンサを電子パッドの中央側のカップ部に設置する場合には、比較的平らなフレームの上面にシートセンサを配置し、シートセンサの上面側を上面が盛り上がった曲面に形成されたカバーで覆うようになる。
【0004】
この結果、カバーにおけるシートセンサの上方に位置する部分は、内周側の肉厚が外周側の肉厚よりも大きくなるように形成しなければシートセンサの内周側部部分と外周側部分とを均等に押圧することができなくなる。このため、カバーの下面でシートセンサを均等に押圧するためにはカバーを精度よく成形することが必要になるが、これが製造上難しいという問題が生じていた。そして、カバーの成形精度が良くない場合には、シートセンサの検出感度が低下するという問題が生じる。さらに、カバーをフレームに取り付けたり、取り外したりする場合に、シートセンサに手やカバーが接触してシートセンサにしわや位置ずれが生じてシートセンサの検出感度が低下し易くなるという問題も生じる。
【0005】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、電子パッドにおけるフレームとカバーとの間に設置されたシートセンサの検出感度を良好にできる電子パッドを提供することである。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係る電子パッドの構成上の特徴は、略円板状のフレームにおける上面から下面の外周側部分を弾性を備えたカバーで覆い、上面を打撃面にした電子パッドであって、カバーによって覆われたフレームの上面に圧力を検出するシートセンサを配置して、シートセンサとカバーとの間に空間部を設けるとともに、空間部に押圧部材を配置し、打撃面が打撃されたときに押圧部材を介してシートセンサが押圧されるようにしたことにある。
【0007】
前述したように構成した本発明に係る電子パッドでは、カバーで覆われたフレームの上面に圧力を検出するシートセンサを配置している。そして、シートセンサとカバーとの間に空間部を設け、その空間部にシートセンサを押圧するための押圧部材を配置している。このため、カバーの肉厚は全体にわたって略同一にして、カバーが打撃を受けたときに、押圧部材によってその打撃力が適正にシートセンサに伝達されるようにすることができる。すなわち、カバーで直接シートセンサを押圧するのではなく、カバーとは別体の押圧部材を介してシートセンサを押圧するため、押圧部材の形状をシートセンサの押圧に適した形状にしたり、押圧部材の材質として適正なものを選択したりすることにより、シートセンサの適正な押圧が可能になる。
【0008】
この結果、カバーの成形が容易になるとともに、シートセンサは感度よく打撃による圧力を検出できるようになる。また、シートセンサが押圧部材によって、覆われているため、カバーをフレームに取り付けたり、取り外したりするときに、シートセンサに手やカバーが接触することもなくなる。なお、押圧部材の下面には、シートセンサを収容できる凹部を形成して、押圧部材がカバーに押圧されたときに下方に撓んでシートセンサを押圧するようにすることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る電子パッドの他の構成上の特徴は、押圧部材を、カバーが備える弾性と異なる弾性を備えた材料で構成したことにある。これによると、カバーには、電子パッドを打撃した際の打感を良好にできるとともに、消音効果を発揮できる材料を用い、押圧部材には、シートセンサを押圧するために適した材料を用いることができる。
【0010】
また、本発明に係る電子パッドのさらに他の構成上の特徴は、押圧部材を、打撃方向に対して垂直に延びる複数のリブが打撃方向に直交する方向に間隔を保って配置された部材で構成したことにある。これによると、各リブ間に空間が形成されるため、打撃によって押圧部材が撓み易くなるとともに、打撃力が分散されるようになり、大きな打撃が加わってもシートセンサに局部的な押圧力がかかってその部分が破損することがなくなる。また、リブの厚さ、高さ、間隔を変更することによってシートセンサにかかる押圧力を変更することができるため、押圧部材によるシートセンサの押圧を適正にすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る電子パッドを図面を用いて説明する。図1ないし図3は、本発明の一実施形態に係る電子パッドAを支持部30に取り付けた状態を示している。この電子パッドAは、図4および図5に示したフレーム10と、図6および図7に示した本発明に係るカバーとしての表面カバー20とを組み付けることにより本体部分が構成されており、支持部30に略水平でかつ揺動可能な状態で取り付けられている。フレーム10は、表面カバー20を一定の形状にして保持できるとともに、表面カバー20を介して打撃を受け止めることができるように、硬質のポリプロピレンからなる成形体で構成されており、中央側が外周側よりも上方に向ってやや盛り上がった凸曲面の円板状に形成されている。
【0012】
そして、フレーム10の中心にフレーム10の上面から下面に貫通する貫通孔11が形成されている。図4は、フレーム10の上面を示している。図4に示したように、フレーム10の上面における貫通孔11の周囲には、上方に突出した略円錐台形の被支持部12(図8参照)が形成されている。そして、被支持部12の後部(演奏者(使用者)の位置から見た後部であり、以下、図1ないし図7においては、図示の左側を前部、右側を後部として説明する。)には、後方に延びる後方突出部12aが形成され、その後方突出部12aの上面に上下に貫通し、前後に長い楕円状の回転防止孔11aが設けられている。また、被支持部12の周囲における後方突出部12aが位置する部分を除いた部分には、係合溝部13が形成されている。
【0013】
すなわち、図8に示したように、被支持部12の外周側には、被支持部12と間隔を保って平面視が略環状の係合壁部13aが形成されており、被支持部12の傾斜面になった外周面と係合壁部13aとの間に係合溝部13が形成されている。そして、フレーム10の上面における係合壁部13aの外周側に、平面視がC字状の本発明に係るシートセンサとしてのシートセンサ14が、図8に示したように設置され、その上面に弾性を備えたシリコンゴムからなる押圧部材15が設置されている。シートセンサ14および押圧部材15は、係合壁部13aの外周部分における後方突出部12aおよびその近傍部分を除いた部分に係合壁部13aを囲むように配置されている。
【0014】
押圧部材15は、図4および図9に示したように、平面視がC字状に形成された板状の底面部15aと、底面部15aの上面に円周方向に一定の間隔で配置された複数のリブ15bと、底面部15aの下面に間隔を保って形成された複数の差込固定部15eとを一体にして構成されている。各リブ15bは、底面部15aの内周側に位置する部分の高さが高く、底面部15aの外周側に位置する部分の高さが低くなった略三角形の板状に形成されており、底面部15aの径方向に放射状に配置されている。このため、各リブ15b間には、空間が形成され、この空間が形成されることによって各リブ15bは、垂直方向の押圧に対して撓み易くなっているとともに、押圧力は各リブ15bに分散され易くなる。
【0015】
また、リブ15bは、押圧力に対して敏感に反応して撓むとともに、押圧力が解除されたときには素早く元の状態に復帰する性質を備えている。底面部15aの下面における内周縁部と外周縁部との間には円周に沿ってC字状の溝状凹部15dが形成されており、押圧部材15は、この溝状凹部15d内にシートセンサ14を位置させた状態でフレーム10の上面に設置されている。溝状凹部15dの内周縁部と外周縁部とには、それぞれ上方に向って延びるスリット状の凹部15fが形成されており、この凹部15fによって溝状凹部15dの天井部は下方に向って撓み易くなっている。
【0016】
また、差込固定部15eは、底面部15aの下面における内周縁部と外周縁部とには所定間隔を保って複数(本実施形態では11個)設けられている。この差込固定部15eは、円柱状の基部側部分と先細りになった先端側部分との間に大径部を形成した形状になっている。また、図10に示したようにフレーム10におけるシートセンサ14が設置される部分には、押圧部材15の差込固定部15eと同じ間隔を保って差込固定部15eと同じ個数の差込穴10bが形成されている。この差込穴10bの直径は、差込固定部15eの基部側部分の直径と略同じに設定されている。
【0017】
また、図11に示したように、シートセンサ14にも押圧部材15の差込固定部15eと同じ間隔を保って差込固定部15eと同じ個数の挿通穴14fが形成されている。なお、図11は、シートセンサ14の挿通穴14fに押圧部材15の差込固定部15eを挿し込んだ状態を示している。押圧部材15等は、このように構成されているため、シートセンサ14および押圧部材15をフレーム10に取り付ける場合には、まず、フレーム10の差込穴10bに挿通穴14fを合わせて、シートセンサ14をフレーム10上に設置する。つぎに、押圧部材15の各差込固定部15eを先端側部分からシートセンサ14の挿通穴14fおよびフレーム10の差込穴10b内に挿し込んでいき、各差込固定部15eの先端側部分をフレーム10の裏面側に突出させる。
【0018】
そして、各差込固定部15eの先端側部分をフレーム10の裏面側に引っ張って各差込固定部15eの大径部を差込穴10bにおけるフレーム10の裏面側の開口縁部から突出させる。これによって、図12に示したように、シートセンサ14はフレーム10と押圧部材15によって挟まれた状態で固定される。また、押圧部材15をフレーム10から外す場合には、押圧部材15をフレーム10から引き剥がすようにして引っ張ることによりフレーム10から取り外すことができる。
【0019】
そして、フレーム10の上面における係合壁部13aおよび後方突出部12aの外周部分で押圧部材15が配置されていない部分には、フレーム10の本体部分と一体になった複数のリブ15cが形成されている。このリブ15cの上部側部分は、押圧部材15のリブ15bと略同一の形状でかつ同間隔に形成されており、リブ15bとリブ15cとで一定間隔で配置され、高さが同じになった環状のリブが構成されている。また、フレーム10の上面における押圧部材15およびリブ15cの外周部分に、円周方向に一定間隔を保って3個の位置ずれ防止凹部16が形成されている。各位置ずれ防止凹部16は、平面視が円弧状で断面の縁部形状が半円状に形成されている。
【0020】
この位置ずれ防止凹部16のうちの一つは、リブ15cの後部側に配置され、他の二つは、各位置ずれ防止凹部16の間隔が貫通孔11を中心として120度になるように配置されている。また、フレーム10の上面における外周側部分には円周に沿って環状の位置ずれ防止凹部16aが形成されている。位置ずれ防止凹部16aの断面の縁部は半円状に形成されている。また、フレーム10の上面における外周縁部には、図13に示したように、上方に向って僅かに突出した位置決め用突部10aが形成されている。
【0021】
そして、フレーム10の上面における位置決め用突部10aに沿った部分に、位置ずれ防止凹部16aから僅かな間隔を保って、シートセンサ14aと、シートセンサ14bとが設置されている。なお、図13は、シートセンサ14aが設置された部分の断面を示しているが、シートセンサ14a,14bともに、フレーム10の上面に位置決め用突部10aに沿って形成されている。シートセンサ14aは、フレーム10の上面における前部側から左右両側にかけて配置された平面視がC字形の細長いセンサで構成され、シートセンサ14bは、フレーム10の上面における後部側に配置された平面視が円弧状の細長いシートセンサで構成されている。
【0022】
シートセンサ14aとシートセンサ14bとは、互いの端部間に僅かな間隔を設けた状態で両面テープによってフレーム10に貼り付けられている。シートセンサ14aの長さは、シートセンサ14bの長さの2倍よりもやや長くなっており、シートセンサ14aとシートセンサ14bとで略環状のシートセンサが形成されている。また、シートセンサ14aとシートセンサ14bとの対向する右側(演奏者側から見て右側で図4では下側)の端部近傍には、それぞれフレーム10の中心側に延びるセンサ導出部14c,14dが接続されている。
【0023】
なお、図示していないが、フレーム10におけるセンサ導出部14c,14dの基端部と係合壁部13aとの間の所定部分には二つの挿通穴が形成されており、センサ導出部14c,14dの先端部は、この挿通穴を挿通してフレーム10の下面側に延びている。また、フレーム10における前述したシートセンサ14が設置された部分にも挿通穴が形成されており、このシートセンサ14に接続されたセンサ導出部14e(図11参照)は、この挿通穴を挿通してフレーム10の下面側に延びている。
【0024】
フレーム10の下面には、図5に示したように、信号出力部17とピエゾセンサ18とが設置されており、シートセンサ14のセンサ導出部14eの先端部およびセンサ導出部14c,14dの先端部は信号出力部17に接続されている。また、信号出力部17は接続線17aを介してピエゾセンサ18に接続されている。シートセンサ14、シートセンサ14a,14bおよびピエゾセンサ18は、打撃を受けたときの衝撃やフレーム10が振動したときの振動に基づく圧力変化を検出して検出信号を出力する圧力センサ等のセンサで構成されている。
【0025】
そして、信号出力部17は、センサ導出部14eを介して送られるシートセンサ14からの検出信号を出力端子から外部に出力するとともに、センサ導出部14c,14dを介して送られるシートセンサ14a,14bからの検出信号を出力端子から外部に出力する。さらに、信号出力部17は、接続線17aを介してピエゾセンサ18から送られる検出信号を出力端子から外部に出力する。
【0026】
また、フレーム10の下面における外周側部分には、円周に沿って環状のめくれ防止片部19が形成されている。このめくれ防止片部19は、図13に示したように下方に延びる垂下片と垂下片の下端部から外周側に延びる水平片とからなる断面形状が略L字状の突部で構成されている。また、フレーム10の下面におけるめくれ防止片部19の外周側部分には、めくれ防止片部19と間隔を保って円周に沿って延びる細い環状の位置ずれ防止凹部19aが形成されている。
【0027】
表面カバー20は、弾性を備えたエチレン−プロピレンゴムの成形体からなっており、フレーム10の上面における中央の被支持部12および後方突出部12aを除いた部分とフレーム10の下面の周縁部近傍部分とを被覆できる略円板状の上面側部分とリング状の下面側部分とで構成されている。すなわち、表面カバー20の上面側部分は、フレーム10の上面に沿えるように、中央側が外周側よりも上方に向ってやや盛り上がった凸曲面を備えた形状になっており、その中心には、フレーム10の被支持部12および後方突出部12aが嵌合可能な嵌合穴21が形成されている。
【0028】
そして、嵌合穴21の外周側には、フレーム10の上面に設置された押圧部材15の上面を覆うことのできる大きさで、押圧部材15の上部に沿えるように中心側が盛り上がったカップ表面部22が形成されている。すなわち、カップ表面部22は、略一定の厚みに形成された凸曲面部で構成され、フレーム10における略平面に形成された部分に押圧部材15を配置することにより、表面で受ける打撃を押圧部材15を介して押圧部材15の下方のシートセンサ14に伝達できる。
【0029】
また、表面カバー20におけるカップ表面部22の外周側部分は、表面に複数の浅い凹みが形成されたディンプル形成部23で構成され、さらにその外周側部分は、表面にレコードの溝のような同心円状の複数の溝が形成されたレイジング形成部24で構成されている。ディンプル形成部23は、表面カバー20をフレーム10に取り付けたときに、フレーム10を介してピエゾセンサ18の上方に位置し、レイジング形成部24は、シートセンサ14a,14bの上方に位置する。
【0030】
そして、図7に示したように、表面カバー20の外周側部分の下部側に形成されたリング状の下面側部分は、レイジング形成部24とで、フレーム10の周縁部を挟み込むことのできる挟持部25で構成されている。挟持部25の下面における後部には、他の部分よりも薄肉になった円弧状の薄肉部25aが形成されている。挟持部25は、図13に示したように、外周側部分よりも内周側部分の方が厚みが大きくなっており、上面が略水平面で下面がやや下方に膨らんだ滑らかな曲面に形成されている。
【0031】
そして、図14に示したように、挟持部25の下面後部に外周側から表面カバー20の中心に向って略水平に延びる水平面と水平面の端部から下方に滑らかに曲がりながら延びる曲面とからなる切欠き部が形成されその切欠き部が形成された部分が薄肉部25aを構成している。薄肉部25aの周縁部と、挟持部25の他の部分とのそれぞれの境界部は、角を備えた段差が生じないように滑らかな曲面に形成されている。また、薄肉部25aは、薄肉部25aの両端部と表面カバー20の中心とを結ぶ両仮想線間の角度が20度から70度の間になる範囲に形成される。
【0032】
挟持部25の薄肉部25aは肉厚を薄くすることにより伸びやすくなっており、挟持部25における薄肉部25a以外の部分は、適度な肉厚にされて表面カバー20としての十分な強度を備えている。また、挟持部25の下面内周縁部には、フレーム10のめくれ防止片部19が係合できる係合凹部25bが形成されている。この係合凹部25bにめくれ防止片部19が係合したときに、挟持部25の下面とめくれ防止片部19の下端面とは同じ高さになって連なった面を形成する。さらに、挟持部25の上面には、フレーム10の位置ずれ防止凹部19aに係合できる位置ずれ防止凸部25cが形成されている。
【0033】
また、レイジング形成部24の下面には、凹部29が形成されており、この凹部29を形成したことによって、その部分は、レイジング形成部24の他の部分やディンプル形成部23よりも薄肉になっている。そして、レイジング形成部24の薄肉部分の下面における位置ずれ防止凸部25cに対向する部分から内周側にかけての部分には押圧用凸部24aが形成されている。この押圧用凸部24aの下面は、凹部29の天井面よりも低く、レイジング形成部24の下面における押圧用凸部24aに隣接する部分よりもやや上方に位置している。
【0034】
押圧用凸部24aは、シートセンサ14a,14bを押圧するためのものであり、表面カバー20をフレーム10に取り付けたときに、シートセンサ14a,14bの上面に位置する。このとき、レイジング形成部24の下面における凹部29とフレーム10(シートセンサ14a,14b)の上面との間には空間部が形成される。また、押圧用凸部24aを含めた凹部29の幅(内周側縁部と外周側縁部との間の長さ)はシートセンサ14a,14bの幅よりも大きくなっている。
【0035】
このため、電子パッドAにおけるレイジング形成部24の部分を打撃すると、レイジング形成部24の薄肉部分が撓んでシートセンサ14a,14bは、押圧用凸部24aによって押圧される。また、レイジング形成部24の下面におけるディンプル形成部23との境界部近傍には、フレーム10の位置ずれ防止凹部16aに係合できる位置ずれ防止凸部24bが円周に沿って形成されている。そして、レイジング形成部24と挟持部25との連結部における内面は角部のない滑らかな曲面に形成されている。
【0036】
さらに、凹部29と押圧用凸部24aとの境界部分も滑らかな曲面に形成されている。また、表面カバー20の下面における嵌合穴21の周縁部には下方に突出してフレーム10の係合溝部13に係合できるC字状の係合突条26が形成されている。この係合突条26は、嵌合穴21の周縁部におけるフレーム10の後方突出部12aに対応する後方凹部21aを除いた部分に形成されている。
【0037】
そして、係合突条26の外周面に上下に延びる複数の滑り止め用の突部26aが円周方向に一定間隔で設けられている。係合突条26は、表面カバー20をフレーム10に取り付けるときに、被支持部12の傾斜になった外周面に押し付けられながら係合溝部13内に入り込む。その際、各突部26aの外周端部は、係合壁部13aの内周面に圧接して、係合突条26が係合溝部13から外れることを防止するとともに、表面カバー20がフレーム10に対して回転方向にずれることを防止する。
【0038】
また、ディンプル形成部23の下面におけるカップ表面部22との境界部近傍には、円周方向に一定間隔を保って3個の円弧状の位置ずれ防止凸部27が形成されている。この位置ずれ防止凸部27のうちの一つは、後方凹部21aの後部側に配置され、他の二つは、各位置ずれ防止凸部27の間隔が嵌合穴21を中心として120度になるように配置されている。この3個の位置ずれ防止凸部27は、表面カバー20をフレーム10に取り付けたときに、フレーム10の各位置ずれ防止凹部16内に入り込み、表面カバー20がフレーム10に対してずれることを防止する。
【0039】
また、表面カバー20が備える弾性の大きさは、押圧部材15が備える弾性よりも大きくなっておいる。このため、表面カバー20が大きな力で打撃された場合でも、押圧部材15がその打撃力を緩衝して打撃を和らげてシートセンサ14を押圧する。このように構成されたフレーム10と表面カバー20との組み付けは、係合溝部13と係合突条26、位置ずれ防止凹部16と位置ずれ防止凸部27、位置ずれ防止凹部16aと位置ずれ防止凸部24b、めくれ防止片部19と係合凹部25b、位置ずれ防止凹部19aと位置ずれ防止凸部25cをそれぞれ係合させ、フレーム10の外周縁部をレイジング形成部24と挟持部25とで挟み込むことにより行われる。
【0040】
このとき、表面カバー20の挟持部25を引っ張って変形させながら組み付けが行われるが、挟持部25を大きく変形させる場合には、その変形部分が薄肉部25aになるようにする。これによって、表面カバー20をフレーム10に組み付ける際に、表面カバー20に亀裂が生じることを防止できる。また、電子パッドAの修理等を行う場合に、表面カバー20をフレーム10から捲る場合があるが、このときにも、挟持部25の薄肉部25a側から表面カバー20を捲っていく。なお、挟持部25の薄肉部25aは、上方に引っ張って反転したときにその反転した状態を維持できるように構成されている。また、表面カバー20は、伸縮可能な弾性を備えており、その収縮力によってフレーム10に密着するように取り付けられる。
【0041】
フレーム10の下面の一部は、裏面カバー28で覆われている。裏面カバー28は、フレーム10よりも軟質のエチレン酢酸ビニル等の樹脂材料からなる成形体で構成されており、フレーム10の下面中央に位置する中央部28aと中央部28aから外周側三方に一定角度を保って延びる3個の腕部28bとで構成されている。この裏面カバー28は、中央部に挿通穴が設けられており、信号出力部17、ピエゾセンサ18および接続線17aを覆った状態でフレーム10の下面に配置され複数のねじ28cによってフレーム10に固定されている。
【0042】
支持部30は、図8に示したように、フレーム10の貫通孔11および裏面カバー28の挿通穴を貫通して電子パッドAを支持する支持柱31、支持柱31の外周に取り付けられてフレーム10の上面と下面とに配置された一対のフェルト部材32a,32bおよび支持柱31の上端部に取り付けられた締付調節ねじ33を備えている。支持柱31は、金属製の棒で構成されており、シンバルスタンド(図示せず)の上部に設けられた回転支持部34に連結されている。そして、支持柱31の軸方向の略中央部に、下面が水平面に形成され上面が中央側が上方に凸状になった凸曲面に形成されたフランジ状のフェルト支持部31aが形成されている。また、支持柱31の上端部には、ねじ(図示せず)が形成されている。
【0043】
一対のフェルト部材32a,32bは、多少の伸縮が可能な弾性を備えた部材で構成されており、ともに、やや軸方向の長さが長いリング状に形成されている。フェルト部材32a,32bは、軸方向の長さと内径は同じに設定されているが、外径はフェルト部材32aがフェルト部材32bよりも大きくなっている。そして、一対のフェルト部材32a,32bのうちのフェルト部材32bは、支持柱31の外周におけるフェルト支持部31aとフレーム10の被支持部12との間に設置されている。
【0044】
また、フェルト部材32aは、支持柱31の外周における被支持部12の上面に位置する部分に設置されている。そして、支持柱31の上端に形成されたねじに締付調節ねじ33が締結力を変更可能に螺合している。電子パッドAは、揺動可能な状態で支持部30に取り付けられており、締付調節ねじ33の締結力を変更することにより、電子パッドAの揺れ具合を調節することができる。電子パッドAは、打撃されたときに揺動することで衝撃を和らげることができ、これによって、フレーム10や表面カバー20が破損することが防止される。
【0045】
また、支持柱31の外周におけるフェルト支持部31aの下方には、フェルト支持部31aと間隔を保って、軸方向の長さが短い円筒状のピン支持部35が固定されている。そして、このピン支持部35の外周面における後部には、後方水平方向に延びたのちに屈曲して上方に延びるL形の回転防止ピン35aが連結されている。回転防止ピン35aの上端部は、回転防止孔11aを貫通して、電子パッドAの上面から突出しており、これによって、電子パッドAは、支持柱31の軸周り方向への回転を防止される。
【0046】
回転支持部34は、図2および図8に示したように、操作片36aを備えたねじ軸部36を介してシンバルスタンドに接続された基部37に上下方向に回転可能に連結されている。このため、操作片36aの操作によりねじ軸部36を緩めることにより回転支持部34を介して支持柱31の角度を調節することができ、操作片36aの操作によりねじ軸部36を締めることにより、支持柱31をその調節した位置に固定することができる。
【0047】
また、電子パッドAの信号出力部17は、配線によって音調節装置(図示せず)に接続されており、さらに音調節装置は、アンプやスピーカー等からなるサウンドシステムに接続されている。音調節装置は、CPU,ROM,RAM、音源回路、効果回路等を備えている。ROMには、制御プログラムや各種のデータ等が記憶されており、RAMには、演奏データ等の各種の入力情報が一時的に記憶される。そして、CPUは、RAMに記憶された各種の入力情報に応じてROMに記憶された制御プログラムを実行する。
【0048】
音源回路は、CPUの制御により、電子パッドAから入力される検出信号による演奏データや予め設定された演奏データを楽音信号に変換して効果回路に出力し、効果回路は、音源回路から入力される楽音信号に効果を付与して、サウンドシステムに出力する。そして、サウンドシステムは、楽音信号を音に変換して発音する。この場合に、電子パッドAから出力される検出信号は、シートセンサ14、シートセンサ14a,14bおよびピエゾセンサ18の検出によるものである。すなわち、演奏者がスティック等で電子パッドAの打撃面を打撃すると、打撃面がその打撃に応じて振動する。
【0049】
そして、打撃面における打撃部分と打撃力の大きさに応じて、シートセンサ14、シートセンサ14a,14bおよびピエゾセンサ18が、打撃面から伝わる打撃力または打撃面の振動を検出する。電子パッドAにおけるカップ表面部22を打撃した場合には、シートセンサ14が表面カバー20および押圧部材15を介して伝わる打撃力を検出するとともに、ピエゾセンサ18がフレーム10の振動を検出する。ディンプル形成部23を打撃した場合には、ピエゾセンサ18だけがフレーム10の振動を検出する。
【0050】
また、レイジング形成部24の前部から両側部に係る部分を打撃した場合には、シートセンサ14aが表面カバー20を介して伝わる打撃力を検出するとともに、ピエゾセンサ18がフレーム10の振動を検出する。そして、レイジング形成部24の後部を打撃した場合には、シートセンサ14bが表面カバー20を介して伝わる打撃力を検出するとともに、ピエゾセンサ18がフレーム10の振動を検出する。このように打撃される電子パッドAにおける打撃面の打撃部分および打撃力の強弱等によって、それぞれ異なる音がサウンドシステムのスピーカーから発音される。
【0051】
この場合、フレーム10は、表面カバー20を介して受ける打撃を打撃力または振動として、シートセンサ14,14a,14bおよびピエゾセンサ18に伝達するとともに、その打撃力を吸収して余分な振動を抑制する。また、表面カバー20は、打撃の際の演奏者の感触を良くするとともに、フレーム10の振動を抑制して消音させる機能を有する。裏面カバー28は打撃によって生じるフレーム10の撓みに沿って変形しながらフレーム10の振動を抑制する。さらに、電子パッドAにおける周縁部のレイジング形成部24と挟持部25との部分を手で掴むことによりミュート操作ができる。これによって、フレーム10の振動が吸収されて消音する。また、スピーカーに代えてヘッドホーンをサウンドシステムに含め、消音した状態でヘッドホーンからその音を聞くこともできる。
【0052】
以上のように構成された電子パッドAは、例えば、ドラムセットにシンバルとして組み込んで用いることができる。そして、ドラムセットに組み込まれた電子パッドAを演奏する場合には、まず、操作片36aを操作することによりねじ軸部36を緩めて支持柱31が略垂直になるように調節してねじ軸部36を締める。ついで、締付調節ねじ33の締結力を調節することにより、電子パッドAの揺れ具合を調節する。これによって、電子パッドAは略水平の状態になるとともに、打撃を受けたときに適度な角度で揺動するようになる。そして、ドラムセットの前に椅子を置き、演奏者は、椅子に座った状態で、電子パッドA等をスティックで打撃することにより演奏することができる。
【0053】
この場合、電子パッドAは、打撃される各部分や打撃力の強弱によって、発音する音を変化させることができるとともに、その音にさらに効果を付与することにより音を変化させることができる。すなわち、アコースティックのシンバルと同様の音を発生できるとともに、さらにその音をこもった音にしたり、高音の金属音にしたり種々の音色にして発生することができる。また、電子パッドAはスティックで打撃されることにより、適度に揺動するが、回転防止ピン35aの上部が、前後に長い楕円形の回転防止孔11aを貫通して、電子パッドAの上面から突出しているため、電子パッドAが、支持柱31の軸周り方向に回転してその回転方向の位置が変更することはない。
【0054】
このように、本実施形態に係る電子パッドAでは、表面カバー20におけるカップ表面部22の肉厚を略一定にしている。そして、フレーム10の上面におけるカップ表面部22で覆われる部分にシートセンサ14を配置し、シートセンサ14とカップ表面部22との間に形成される空間部にシートセンサ14を押圧するための押圧部材15を配置している。また、表面カバー20は、打感を良好にできるとともに消音効果を発揮できるエチレン−プロピレンゴムで構成し、押圧部材15は表面カバー20が受ける打撃力をシートセンサ14に伝える介在部材に適したシリコンゴムで構成している。さらに、押圧部材15を、平面状の底面部15aと、底面部15aの上面に一定間隔で配置された複数のリブ15bと、底面部15aの下面に間隔を保って形成された複数の差込固定部15eとを一体にして構成している。
【0055】
このため、表面カバー20の成形が容易になるとともに、シートセンサ14は感度よく打撃による圧力を検出できるようになる。また、押圧部材15のフレーム10への着脱操作が容易になる。さらに、シートセンサ14が押圧部材15によって、覆われているため、表面カバー20をフレーム10に取り付けたり、取り外したりするときに、シートセンサ14に手や表面カバー20が接触することもなくなる。このため、シートセンサ14が引っ張られたり、位置ずれしたりして検出感度が低下することがなくなる。また、押圧部材15の各リブ15b間には空間が形成されているため、打撃によってこのリブ15bが撓み易くなるとともに、打撃力が分散されるようになる。この結果、大きな打撃が加わってもシートセンサ14に局部的な押圧力がかかってその部分が破損することがなくなる。
【0056】
さらに、フレーム10と表面カバー20とは、位置ずれ防止凹部16等と位置ずれ防止凸部27等によって種々の部分で係合しており、その係合に加えて、さらに、表面カバー20は収縮力によってフレーム10に密着している。このため、電子パッドAが激しく打撃されても表面カバー20がフレーム10から位置ずれすることが防止される。これによって、シートセンサ14a,14bにも位置ずれが生じなくなり、シートセンサ14a,14bの検出感度を良好な状態に維持できる。また、表面カバー20がフレーム10からずれた場合には、表面カバー20が部分的に浮き上がるようになるため、表面カバー20に位置ずれが生じた場合にはその位置ずれをすぐに見つけることができる。
【0057】
また、本発明に係る電子パッドは、前述した実施形態に限定するものでなく本発明の技術的範囲で適宜変更実施が可能である。例えば、前述した実施形態では、押圧部材15をシリコンゴムで構成しているが、この押圧部材15は、シリコンゴム以外の材料で構成してもよい。また、押圧部材15は、底面部15aとリブ15bに限らず、他の形状を備えた部材で構成してもよい。さらに、前述した実施形態では、シートセンサ14および押圧部材15のフレーム10への取り付けを、押圧部材15の差込固定部15eをシートセンサ14の挿通穴14fおよびフレーム10の差込穴10b内に挿し込むことによって行っているが、これに代えて両面テープや接着剤等を用いて接着固定してもよい。
【0058】
さらに、前述した実施形態では、電子パッドAを電子シンバルとしているが、支持柱をパイプ状の部材で構成するとともに、この支持柱に、フットペダルの操作によりシンバルスタンドに対して上下に移動する移動軸を用いたハイハット形の電子シンバルに用いることもできる。この場合、電子パッドの下方にハイハットベースを設けるとともに、裏面カバーの中央側に、ハイハットベースに当接することによりオンになるスイッチを備えたハイハットアクチュエータを設ける。また、それ以外の各部分の構成や材料等についても本発明の技術的範囲内で適宜変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子パッドが支持部に取り付けられた状態を示した平面図である。
【図2】図1に示した支持部に取り付けられた電子パッドの右側面図である。
【図3】図1に示した支持部に取り付けられた電子パッドの底面図である。
【図4】電子パッドが備えるフレームを示した平面図である。
【図5】電子パッドが備えるフレームを示した底面図である。
【図6】電子パッドが備える表面カバーを示した平面図である。
【図7】電子パッドが備える表面カバーを示した底面図である。
【図8】支持部に取り付けられた電子パッドを示した縦断面図である。
【図9】押圧部材を示した斜視図である。
【図10】フレームにおける押圧部材が取り付けられる部分を示した斜視図である。
【図11】押圧部材とシートセンサとを組み付けた状態を示した斜視図である。
【図12】シートセンサの固定状態を示した断面図である。
【図13】電子パッドの前部外周側部分を示した縦断面図である。
【図14】表面カバーの後部外周側部分を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10…フレーム、14…シートセンサ、15…押圧部材、15b…リブ、20…表面カバー、22…カップ表面部、A…電子パッド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円板状のフレームにおける上面から下面の外周側部分を弾性を備えたカバーで覆い、上面を打撃面にした電子パッドであって、
前記カバーによって覆われた前記フレームの上面に圧力を検出するシートセンサを配置して、前記シートセンサと前記カバーとの間に空間部を設けるとともに、前記空間部に押圧部材を配置し、前記打撃面が打撃されたときに前記押圧部材を介して前記シートセンサが押圧されるようにしたことを特徴とする電子パッド。
【請求項2】
前記押圧部材を、前記カバーが備える弾性と異なる弾性を備えた材料で構成した請求項1に記載の電子パッド。
【請求項3】
前記押圧部材を、打撃方向に対して垂直に延びる複数のリブが前記打撃方向に直交する方向に間隔を保って配置された部材で構成した請求項1または2に記載の電子パッド。
【請求項1】
略円板状のフレームにおける上面から下面の外周側部分を弾性を備えたカバーで覆い、上面を打撃面にした電子パッドであって、
前記カバーによって覆われた前記フレームの上面に圧力を検出するシートセンサを配置して、前記シートセンサと前記カバーとの間に空間部を設けるとともに、前記空間部に押圧部材を配置し、前記打撃面が打撃されたときに前記押圧部材を介して前記シートセンサが押圧されるようにしたことを特徴とする電子パッド。
【請求項2】
前記押圧部材を、前記カバーが備える弾性と異なる弾性を備えた材料で構成した請求項1に記載の電子パッド。
【請求項3】
前記押圧部材を、打撃方向に対して垂直に延びる複数のリブが前記打撃方向に直交する方向に間隔を保って配置された部材で構成した請求項1または2に記載の電子パッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−156886(P2009−156886A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331394(P2007−331394)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
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