電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整装置および方法
【課題】電子または電子ビームの発生タイミングが揺らぐ場合でも、電子ビームとレーザ光の実衝突点を予定衝突点またはその近傍に精度よく位置決めすることができ、これにより、X線の発生出力を高め、かつX線の仮想焦点の変動を防止して、これを用いて撮像した像の解像度を高めることができる電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整装置および方法を提供する。
【解決手段】電子ビーム1の通過時からそれが予定衝突点9aに到達するまでのビーム遅延時間tBが、レーザ光3の発生指令からそれが予定衝突点9aに到達するまでのレーザ遅延時間tLよりも、所定の遅延時間Δt以上に長くなるように、電子ビームの通過経路上に電子ビーム検出装置34を設ける。この装置34により、電子ビームに影響を与えることなくその通過を検出し、その検出後、所定の遅延時間Δt(=tB―tL)の経過後に、レーザ光指令遅延回路36からレーザ光の発生指令を出力する。
【解決手段】電子ビーム1の通過時からそれが予定衝突点9aに到達するまでのビーム遅延時間tBが、レーザ光3の発生指令からそれが予定衝突点9aに到達するまでのレーザ遅延時間tLよりも、所定の遅延時間Δt以上に長くなるように、電子ビームの通過経路上に電子ビーム検出装置34を設ける。この装置34により、電子ビームに影響を与えることなくその通過を検出し、その検出後、所定の遅延時間Δt(=tB―tL)の経過後に、レーザ光指令遅延回路36からレーザ光の発生指令を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆コンプトン散乱によりX線を発生させる際の電子ビームとレーザ光の衝突タイミングを調整する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の装置でX線を発生させる手段として、電子ビームとレーザ光の衝突によって逆コンプトン散乱に起因する準単色X線を得る手段が知られている(例えば、非特許文献1、特許文献1〜3)。
【0003】
非特許文献1の「小型X線発生装置」は、図8に示すように、小型の加速器51(Xバンド加速管)で加速された電子ビーム52をレーザ53と衝突させてX線54を発生させるものである。RF(Radio Frequency)電子銃55(熱RFガン)で生成された電子ビーム52はXバンド加速管51で加速され、パルスレーザ光53と衝突し、コンプトン散乱により、時間幅10nsの硬X線54が生成される。
この装置は、一般に線形加速器で用いられるSバンド(2.856GHz)の4倍の周波数にあたるXバンド(11.424GHz)をRFとして用いて小型化を図っており、例えばX線強度(光子数):約1×109photons/s、パルス幅:約10psの強力な硬X線の発生が予測されている。
【0004】
特許文献1の「高輝度X線又はγ線の発生方法及び装置」は、超高反射率ミラーを用いた光共振器でレーザ光を蓄積し、これを利用して小さな初期レーザからでも強力な高輝度X線又はγ線を得ることを目的とする。
そのため、この発明では、図9に示すように、レーザ61からのレーザ光を光共振器62へ送りそこでレーザ光を蓄積する。光共振器62は超高反射率ミラー63、64を有し、ミラーの反射効率は0.999%以上のものである。この光共振器62へ電子ビームを斜めに入れて衝突させ、その相互作用域でコンプトン散乱によるX線又はγ線を発生させるものである。
【0005】
特許文献2の「X線を発生するためのシステム及び方法」は、逆コンプトン散乱のプロセスを介してX線を発生することを目的とする。
そのため、この発明のシステムは、図10に示すように、レーザ空洞70内で第1の方向71に高エネルギの光パルス73を方向付けるように構成されている高繰返し速度のレーザ72と、レーザ空洞70内で第1の方向とは反対の第2の方向76に電子ビーム78を方向付けるように構成されているパルス状電子ビーム78の源74とを含んでいる。電子ビーム78はレーザ空洞70内で光パルス73中の光子と相互作用して、第2の方向76にX線75を生成するものである。
【0006】
特許文献3の「多色X線発生装置」は、複数(2種または3種以上)の単色硬X線を、血管が動いていないとみなせる程度の短い時間間隔で順次切り換えて発生することができ、かつ血管造影等に適用可能な強力なX線を発生させることを目的とする。
そのため、この発明の装置は、図11に示すように、電子ビームを加速してパルス電子ビーム81を発生し所定の直線軌道82を通過させる電子ビーム発生装置85と、波長の異なる複数のパルスレーザ光83a,83bを順次発生する複合レーザ発生装置86と、複数のパルスレーザ光を直線軌道82上にパルス電子ビーム81に対向して導入するレーザ光導入装置87とを備え、複数のパルスレーザ光83a,83bを直線軌道82上でパルス電子ビーム81に順次正面衝突させ、2種以上の単色硬X線84(84a,84b)を発生させるものである。
【0007】
【非特許文献1】土橋克広、他、「Xバンドリニアックを用いた小型硬X線源の開発」、第27回リニアック技術研究会、2002
【0008】
【特許文献1】特開平7−110400号公報、「高輝度X線又はγ線の発生方法及び装置」
【特許文献2】特開2005−285764号公報、「X線を発生するためのシステム及び方法」
【特許文献3】特開2006−318746号公報、「多色X線発生装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、レーザ光と電子ビームを衝突させ逆コンプトン散乱によりX線を発生させる種々の手段が既に提案されている。これらの従来例では、図5に模式的に示すように、同期装置(Master Osillator)から、遅延回路などを用いて、高周波発生装置とレーザ装置へ適切なタイミングで信号を送り、所望の場所で電子ビームとレーザ光を衝突させることを想定している。
【0010】
図6は、従来の同期装置による衝突タイミング調整方法の模式図である。この図で横軸は時間であり、tRは高周波発生時から電子ビームが衝突点に到達するまでの時間(以下、「高周波遅延時間」という)、teは電子発生時から電子ビームが衝突点に到達するまでの時間(以下、「電子遅延時間」という)、tLはレーザ発振時からレーザ光が衝突点に到達するまでの時間(以下、「レーザ遅延時間」という)である。
上述した従来の方法では、高周波遅延時間tR、電子遅延時間te、レーザ遅延時間tLを予め装置の構成から計算し、高周波発生時から電子が発生するまでの時間dte(=tR−te:電子発生遅延時間)と、高周波発生時からレーザが発振するまでの時間dtL(=tR−tL:レーザ発生遅延時間)を予めそれぞれの遅延回路で設定する。
【0011】
しかし、高周波発生装置が高周波発生信号を受けてから実際に高周波を発生するまでの時間、及び電子発生装置(例えば電子銃)が電子発生信号を受けてから実際に電子を発生するまでの時間は、厳密には0ではなく、高周波発生装置や電子発生装置(電子銃)の状態如何により、実際に発生するタイミングが揺らぐ(変動する)ことがある。
また、発生直後の電子は、加速管による加速前であり、光速と比較するとわずかに遅い(例えば、光速の90%程度)。
そのため、上述した従来の方法では、電子ビームとレーザ光の衝突点に到達する時間がわずかに異なり、実際に衝突する位置(実衝突点)が予定衝突点からずれてしまい、その結果,衝突断面積が小さくなって発生するX線の量が減少し、かつX線の仮想焦点(発生点)が変動し、これを用いて撮像した像がぼやけてしまうという問題点があった。
【0012】
図7は、電子ビームとレーザ光の衝突状況を模式的に示す図である。この図において、1は電子ビーム、3はレーザ光、4はX線、8は許容衝突領域、9aは予定衝突点、9bは実衝突点である。
予定衝突点9aは、レーザ光3と電子ビーム1の共通する軌道(光路)上に予め設定される。レーザ光3は、この例で左から右に入射するパルスレーザ光であり、予定衝突点9aに集光して最小集光径(例えば1μm以下)となる。
電子ビーム1は、この例で右から左に入射する電子ビームバンチであり、レーザ光3と同時に予定衝突点9aに到達するときに両者の衝突率が最大となり最大量のX線4を発生する。また、予定衝突点9aの前後、例えば集光面積が予定衝突点9aの2倍以下の範囲は、衝突率が十分高いため、許容衝突領域8とされる場合がある。許容衝突領域8は、例えば予定衝突点9aの前後数10mmの範囲である。
【0013】
電子ビームの衝突時の速度は実質的に光速(真空中で約30万km/s=3×108m/s)に達していいる。そのため、電子ビーム1の予定衝突点9aに到達する時間がレーザ光3に対して、仮に1ns(=10−9s)だけ遅い場合でも実衝突点9bは予定衝突点9aに対してΔL(=約300mm)ずれてしまう。このため、許容衝突領域8からも大きく外れ、パルスレーザ光3が最小集光径に比べて大きく広がっているため、衝突率が極端に低下し(実質的に0に近い)、上述した問題点が生じる。
【0014】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、電子または電子ビームの発生タイミングが揺らぐ(変動する)場合でも、電子ビームとレーザ光の実際の衝突点を予定衝突点またはその近傍に精度よく位置決めすることができ、これにより、両者の衝突率を高めてX線の発生出力を高め、かつX線の仮想焦点(発生点)の変動を防止して、これを用いて撮像した像の解像度を高めることができる電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、電子ビームとレーザ光を衝突させて逆コンプトン散乱によりX線を発生させるX線発生装置における電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整装置であって、
電子ビームの通過経路上に設けられ、電子ビームに影響を与えることなくその通過を検出する電子ビーム検出装置と、
前記電子ビームの通過を検出後、所定の遅延時間経過後に、レーザ光の発生指令を出力するレーザ光指令遅延回路とを備え、
前記電子ビーム検出装置の設置位置は、電子ビームの通過時から該電子ビームが予定衝突点に到達するまでのビーム遅延時間が、レーザ光の発生指令から該レーザ光が予定衝突点に到達するまでのレーザ遅延時間よりも、前記遅延時間以上に長く設定されている、ことを特徴とする電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整装置提供される。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記電子ビーム検出装置は、電子ビームが通過するダクトの外側に設けられ、電子ビームの経路を囲む導電性の巻線と、該巻線に発生する誘導電流を計測する電流検出器からなる。
前記レーザ光を発生させるレーザ発生装置は、Q−スイッチ方式のパルスレーザであり、前記電流検出器の検出により、Q−スイッチのタイミングを調整する。
【0017】
また本発明によれば、電子ビームとレーザ光を衝突させて逆コンプトン散乱によりX線を発生させるX線発生装置における電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整方法であって、
電子ビームの通過時から該電子ビームが予定衝突点に到達するまでのビーム遅延時間が、レーザ光の発生指令から該レーザ光が予定衝突点に到達するまでのレーザ遅延時間よりも、前記所定の遅延時間以上に長い設置位置を電子ビームの通過経路上に設定し、
前記設定位置において、電子ビームに影響を与えることなく電子ビームの通過を検出し、
前記電子ビームの通過を検出後、所定の遅延時間経過後に、レーザ光の発生指令を出力する、ことを特徴とする電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整方法が提供される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、電子ビームが通過するダクトの外側に、電子ビームの経路を囲むように導電性の巻線を設け、該巻線に発生する誘導電流を計測して、電子ビームに影響を与えることなくその通過を検出する。
【発明の効果】
【0019】
上記本発明の装置及び方法によれば、電子ビーム検出装置の設置位置が、電子ビームの通過時から該電子ビームが予定衝突点に到達するまでのビーム遅延時間(tB)が、レーザ光の発生指令から該レーザ光が予定衝突点に到達するまでのレーザ遅延時間(tL)よりも、所定の遅延時間以上に長く電子ビームの通過経路上に設定される。
また、所定の遅延時間(Δt)は、遅延回路により、0.1ns以下の高精度で可変調整可能である。
従って、高周波発生装置や電子発生装置(電子銃)の状態如何により、実際に電子または電子ビームの発生タイミングが揺らぐ(変動する)場合でも、ビーム遅延時間tB、レーザ遅延時間tL、およびその差(遅延時間)Δtは、変動がほとんどなくかつ予め高精度に求めることができる。
【0020】
従って、電子ビームの通過経路上に設定した設定位置において、電子ビームに影響を与えることなく電子ビームの通過を検出し、この検出後、所定の遅延時間経過後に、レーザ光の発生指令を出力することにより、発生指令に対して電子または電子ビームの発生タイミングが変動する場合でも、電子ビームの上記検出位置の通過時から該電子ビームが予定衝突点に到達するまでのビーム遅延時間の揺らぎ(変動)を小さく抑えることができる。
その結果、電子ビームとレーザ光の衝突断面積がほぼ一定となり、発生X線の強度の時間的揺らぎを小さくすることができ、再現性が良くなることが期待できる。また,X線の仮想焦点も変わらないため,より高精細なX線画像を撮像可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0022】
図1は、本発明による衝突タイミング調整装置を備えたX線発生装置の全体構成図である。このX線発生装置は、電子ビーム発生装置10、レーザ光周回装置20およびレーザ発生装置30を備え、電子ビーム1とパルスレーザ光3とを正面衝突させて逆コンプトン散乱によりX線4を発生させる装置である。
【0023】
電子ビーム発生装置10は、電子ビームを加速してパルス電子ビーム1を発生し所定の直線軌道2を通過させる機能を有する。
この例において、電子ビーム発生装置10は、RF電子銃11、α‐磁石12、加速管13、ベンディング磁石14、Q−磁石15、減速管16、およびビームダンプ17を備える。
【0024】
RF電子銃11と加速管13は、Xバンド(11.424GHz)の高周波電源18により駆動される。RF電子銃11から引き出された電子ビームは、α‐磁石12により軌道を変えて加速管13に入射する。加速管13は、小型のXバンド加速管であり、電子ビームを加速し、好ましくは約50MeV前後の高エネルギの電子ビームを形成する。
【0025】
ベンディング磁石14は、パルス電子ビーム1の軌道を磁場で曲げて所定の直線軌道2を通過させ、通過後のパルス電子ビーム1をビームダンプ17まで導く。Q−磁石15はパルス電子ビーム1の収束具合を調整する。減速管16は、パルス電子ビーム1を減速する。ビームダンプ17は、直線軌道2を通過した後のパルス電子ビーム1を捕捉して、放射線の漏洩を防止する。
【0026】
上述した電子ビーム発生装置10により、例えば、約50MeV前後、約1μs前後のパルス電子ビーム1を発生し、これを所定の直線軌道2を通過させることができる。
【0027】
レーザ光周回装置20は、パルスレーザ光3(p偏光)を外部のレーザ発生装置30から偏光ビームスプリッタ22を介して周回路5内に導入し、このパルスレーザ光3を周回する周回路5内に閉じ込めて、周回路内の衝突点9を繰り返し通過させるようになっている。
【0028】
この図において、レーザ光周回装置20は、偏光ビームスプリッタ22、複数(この図で3枚)の反射ミラー24a,24b,24c、複数(この図で4枚)のレンズ25a,25b,25c,25d、ポッケルスセル26、および制御装置(図示せず)を備える。
【0029】
偏光ビームスプリッタ22は、第1直線偏光3a(p偏光)をそのまま通し、これに直交する第2直線偏光3b(S偏光)を直角に反射する。
3枚の反射ミラー24a,24b,24cは、偏光ビームスプリッタ22を出たパルスレーザ光3を複数回(この例では3回)反射して、偏光ビームスプリッタ22に周回させ周回路5を構成する。
【0030】
ポッケルスセル26は、周回路5内の偏光ビームスプリッタ22の下流側に位置し、電圧の印加時に通過する偏光の偏光方向を90度回転する。ポッケルスセルは、光ビームの偏光方向を素早くスイッチングできる非線形光学結晶である。
制御装置(図示せず)は、偏光ビームスプリッタ22に周回して入るパルスレーザ光3が常に第2直線偏光3b(S偏光)となるようにポッケルスセル24を制御する。
【0031】
上述した構成により、レーザ光周回装置20により、パルスレーザ光3を周回する周回路5内に閉じ込めて、周回路内の衝突点9を繰り返し通過させ、電子ビームとレーザ光の衝突率を高めてX線の発生出力を高めることができる。
なお、本発明において、上述したレーザ光周回装置20は不可欠ではなく、これを省略し、パルスレーザ光3をワンスルーで用いてもよい。
【0032】
本発明の衝突タイミング調整装置32は、電子ビーム発生装置10とレーザ発生装置30の同期をとり、パルス電子ビーム1の発生タイミングとパルスレーザ光3との発生タイミングを制御し、パルス電子ビーム1とパルスレーザ光3を所定の直線軌道2上の衝突点9で正面衝突させる機能を有する。
【0033】
図2は、本発明による衝突タイミング調整装置の全体構成図である。
図1において、レーザ発生装置30は、パルスレーザ発生装置であり、衝突タイミング調整装置32からのレーザ光の発生指令信号に対応してパルスレーザ光3を発振し出射するようになっている。このレーザ光の出射は、Q−スイッチによるのがよい。
また、レーザ光3と電子ビーム1の共通する直線軌道2(光路)上に予定衝突点9aが予め設定される。さらに、パルスレーザ光3の光路上に設置されたレンズ25aは、パルスレーザ光3が予定衝突点9aを焦点としてここに集光して最小集光径となるように設定されている。最小集光径は、電子ビームとの衝突確率を高めるように、できるだけ細くするのがよく、例えば最小集光径が1μm以下となるように、レーザの光学系を設計する。
【0034】
図1及び図2に示すように、本発明の衝突タイミング調整装置32は、電子ビーム検出装置34とレーザ光指令遅延回路36とを備える。
電子ビーム検出装置34は、電子ビーム1の通過経路上に設けられ、電子ビーム1に影響を与えることなくその通過を検出する機能を有する。
電子ビーム検出装置34は、この例では、導電性巻線34aと電流検出器34bからなる。導電性巻線34aは、電子ビーム1の通過するダクトの外側に設けられ電子ビーム1の経路を囲む。電流検出器34bは、導電性巻線34aに発生する誘導電流を計測し、所定の閾値を超えたときに検出信号を出力する。
【0035】
図3は、本発明による衝突タイミング調整装置の具体例である。この例において、レーザ発生装置30は、レーザ光3を励起させるためのフラッシュランプ30aとQ−スイッチ30bを有し、衝突タイミング調整装置32からのレーザ光の発生指令信号に対応してQ−スイッチ30bによりパルスレーザ光3を出射するようになっている。
すなわち、レーザ光3を発生させるレーザ発生装置30は、Q−スイッチ方式のパルスレーザであり、電流検出器34bの検出により、Q−スイッチのタイミングを調整する。
【0036】
上述の構成において、衝突タイミング調整装置32によりレーザ光の発生指令信号を出力した時点から、パルスレーザ光3が発生し予定衝突点9aに到達するまでの時間を本出願において「レーザ遅延時間tL」とする。
Q−スイッチ30bの作動からパルスレーザ光3の出射までの遅延時間は極めて短く(例えば、数ns以下)かつ安定している。また、レーザ光3の光路長は、変動がほとんどなくかつ予め高精度に計測又は計算できる。従って、このレーザ遅延時間tLは、変動がほとんどなくかつ予め高精度に求めることができる。
【0037】
また上述した電子ビーム検出装置34により電子ビーム1の通過検出時から、電子ビーム1が予定衝突点9aに到達するまでの時間を本出願において「ビーム遅延時間tB」とする。
本発明では、電子ビーム検出装置34の設置位置は、ビーム遅延時間tBがレーザ遅延時間tLよりも、後述する遅延時間Δt以上に長く設定されている。この設定位置は、好ましくは加速器の下流側であり、上述した条件を満たす限りで、予定衝突点9aに近い位置に設定する。
電子ビーム1が電子ビーム検出装置34による検出位置を通過した後に予定衝突点9aに到達する時間(すなわちビーム遅延時間tB)は、この設置位置において電子ビーム1の速度が実質的に光速に達しているため、変動がほとんどなく、容易かつ厳密に計算可能である。
【0038】
本発明において、レーザ光指令遅延回路36は、電子ビーム検出装置34により電子ビーム1の通過を検出後、所定の遅延時間Δtの経過後に、レーザ光3の発生指令を出力するようになっている。レーザ光指令遅延回路36による遅延時間Δtの設定は、0.1ns以下の高精度で可変調整可能であるのがよい。
【0039】
図4は、本発明の衝突タイミング調整方法の模式図である。この図で横軸は時間であり、tRは高周波発生時から電子ビームが衝突点に到達するまでの時間(「高周波遅延時間」)、teは電子発生時から電子ビームが衝突点に到達するまでの時間(「電子遅延時間」)、tLはレーザ発振時からレーザ光が衝突点に到達するまでの時間(「レーザ遅延時間」)である。
さらに、tBは、電子ビーム検出装置34により電子ビーム1の通過検出時から電子ビーム1が予定衝突点9aに到達するまでの時間(ビーム遅延時間)、Δtは、レーザ光指令遅延回路36による電子ビーム1の通過検出時からレーザ発振までの遅延時間である。
【0040】
図4において、本発明の衝突タイミング調整方法では、第1ステップとして、電子ビーム1の通過時から電子ビームが予定衝突点9aに到達するまでのビーム遅延時間tBが、レーザ光3の発生指令からレーザ光が予定衝突点9aに到達するまでのレーザ遅延時間tLよりも、所定の遅延時間Δt以上に長い設置位置を電子ビーム1の通過経路上に設定する。
次いで、第2ステップとして、この設定位置において、電子ビーム検出装置34により、電子ビーム1に影響を与えることなくその通過を検出する。
次いで、第3ステップとして、電子ビーム1の通過を検出後、所定の遅延時間Δt(=tB―tL)の経過後に、レーザ光3の発生指令を出力する。
【0041】
また、本発明の方法では、電子ビームが通過する真空チャンバの外側に、電子ビームの経路を囲むように導電性の巻線34aを設け、巻線34aに発生する誘導電流を電流検出器34bで計測して、電子ビーム1に影響を与えることなくその通過を検出する。
【0042】
上述したように、レーザ遅延時間tLは、変動がほとんどなくかつ予め高精度に求めることができる。また、ビーム遅延時間tBも、上述した設置位置において電子ビーム1の速度が実質的に光速に達しているため、変動がほとんどなく、容易かつ厳密に計算可能である。また、ビーム遅延時間tBとレーザ遅延時間tLとの差Δtは、レーザ光指令遅延回路36により、0.1ns以下の高精度で可変調整可能である。
従って、高周波発生装置や電子発生装置(電子銃)の状態如何により、実際に電子または電子ビームの発生タイミングが揺らぐ(変動する)場合でも、ビーム遅延時間tB、レーザ遅延時間tL、およびその差(遅延時間)Δtは、変動がほとんどなくかつ予め高精度に求めることができる。
【0043】
従って、本発明の装置及び方法により、発生指令に対して電子または電子ビームの発生タイミングが変動する場合でも、電子ビーム1の検出位置の通過時から電子ビームが予定衝突点9aに到達するまでのビーム遅延時間tBの揺らぎ(変動)を小さく抑えることができる。その結果、電子ビーム1とレーザ光3の衝突断面積がほぼ一定となり、発生X線の強度の時間的揺らぎを小さくすることができ、X線の発生出力を高めることができる。また,X線の仮想焦点(発生点)も変わらないため,より高精細なX線画像を撮像可能となる。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による衝突タイミング調整装置を備えたX線発生装置の全体構成図である。
【図2】本発明による衝突タイミング調整装置の全体構成図である。
【図3】本発明による衝突タイミング調整装置の具体例である。
【図4】本発明の衝突タイミング調整方法の模式図である。
【図5】従来の衝突タイミング調整装置の模式図である。
【図6】従来の衝突タイミング調整方法の模式図である。
【図7】電子ビームとレーザ光の衝突状況を模式的に示す図である。
【図8】非特許文献1の「小型X線発生装置」の構成図である。
【図9】特許文献1の「高輝度X線又はγ線の発生方法及び装置」の構成図である。
【図10】特許文献2の「X線を発生するためのシステム及び方法」の構成図である。
【図11】特許文献3の「多色X線発生装置」の構成図である。
【符号の説明】
【0046】
1 電子ビーム(パルス電子ビーム)、2 直線軌道、
3 レーザ光(パルスレーザ光)、4 X線(硬X線)、
5 周回路、8 許容衝突領域、9 衝突点、
9a 予定衝突点、9b 実衝突点、
10 電子ビーム発生装置、11 RF電子銃、
12 α‐磁石、13 加速管、14 ベンディング磁石、
15 Q−磁石、16 減速管、17 ビームダンプ、
20 レーザ光周回装置、22 偏光ビームスプリッタ、
24a,24b,24c 反射ミラー、
25a,25b,25c,25d レンズ、
26 ポッケルスセル、30 レーザ発生装置、
30a フラッシュランプ、30b Q−スイッチ、
32 衝突タイミング調整装置、
34 電子ビーム検出装置、34a 導電性巻線、
34b 電流検出器、36 レーザ光指令遅延回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆コンプトン散乱によりX線を発生させる際の電子ビームとレーザ光の衝突タイミングを調整する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の装置でX線を発生させる手段として、電子ビームとレーザ光の衝突によって逆コンプトン散乱に起因する準単色X線を得る手段が知られている(例えば、非特許文献1、特許文献1〜3)。
【0003】
非特許文献1の「小型X線発生装置」は、図8に示すように、小型の加速器51(Xバンド加速管)で加速された電子ビーム52をレーザ53と衝突させてX線54を発生させるものである。RF(Radio Frequency)電子銃55(熱RFガン)で生成された電子ビーム52はXバンド加速管51で加速され、パルスレーザ光53と衝突し、コンプトン散乱により、時間幅10nsの硬X線54が生成される。
この装置は、一般に線形加速器で用いられるSバンド(2.856GHz)の4倍の周波数にあたるXバンド(11.424GHz)をRFとして用いて小型化を図っており、例えばX線強度(光子数):約1×109photons/s、パルス幅:約10psの強力な硬X線の発生が予測されている。
【0004】
特許文献1の「高輝度X線又はγ線の発生方法及び装置」は、超高反射率ミラーを用いた光共振器でレーザ光を蓄積し、これを利用して小さな初期レーザからでも強力な高輝度X線又はγ線を得ることを目的とする。
そのため、この発明では、図9に示すように、レーザ61からのレーザ光を光共振器62へ送りそこでレーザ光を蓄積する。光共振器62は超高反射率ミラー63、64を有し、ミラーの反射効率は0.999%以上のものである。この光共振器62へ電子ビームを斜めに入れて衝突させ、その相互作用域でコンプトン散乱によるX線又はγ線を発生させるものである。
【0005】
特許文献2の「X線を発生するためのシステム及び方法」は、逆コンプトン散乱のプロセスを介してX線を発生することを目的とする。
そのため、この発明のシステムは、図10に示すように、レーザ空洞70内で第1の方向71に高エネルギの光パルス73を方向付けるように構成されている高繰返し速度のレーザ72と、レーザ空洞70内で第1の方向とは反対の第2の方向76に電子ビーム78を方向付けるように構成されているパルス状電子ビーム78の源74とを含んでいる。電子ビーム78はレーザ空洞70内で光パルス73中の光子と相互作用して、第2の方向76にX線75を生成するものである。
【0006】
特許文献3の「多色X線発生装置」は、複数(2種または3種以上)の単色硬X線を、血管が動いていないとみなせる程度の短い時間間隔で順次切り換えて発生することができ、かつ血管造影等に適用可能な強力なX線を発生させることを目的とする。
そのため、この発明の装置は、図11に示すように、電子ビームを加速してパルス電子ビーム81を発生し所定の直線軌道82を通過させる電子ビーム発生装置85と、波長の異なる複数のパルスレーザ光83a,83bを順次発生する複合レーザ発生装置86と、複数のパルスレーザ光を直線軌道82上にパルス電子ビーム81に対向して導入するレーザ光導入装置87とを備え、複数のパルスレーザ光83a,83bを直線軌道82上でパルス電子ビーム81に順次正面衝突させ、2種以上の単色硬X線84(84a,84b)を発生させるものである。
【0007】
【非特許文献1】土橋克広、他、「Xバンドリニアックを用いた小型硬X線源の開発」、第27回リニアック技術研究会、2002
【0008】
【特許文献1】特開平7−110400号公報、「高輝度X線又はγ線の発生方法及び装置」
【特許文献2】特開2005−285764号公報、「X線を発生するためのシステム及び方法」
【特許文献3】特開2006−318746号公報、「多色X線発生装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、レーザ光と電子ビームを衝突させ逆コンプトン散乱によりX線を発生させる種々の手段が既に提案されている。これらの従来例では、図5に模式的に示すように、同期装置(Master Osillator)から、遅延回路などを用いて、高周波発生装置とレーザ装置へ適切なタイミングで信号を送り、所望の場所で電子ビームとレーザ光を衝突させることを想定している。
【0010】
図6は、従来の同期装置による衝突タイミング調整方法の模式図である。この図で横軸は時間であり、tRは高周波発生時から電子ビームが衝突点に到達するまでの時間(以下、「高周波遅延時間」という)、teは電子発生時から電子ビームが衝突点に到達するまでの時間(以下、「電子遅延時間」という)、tLはレーザ発振時からレーザ光が衝突点に到達するまでの時間(以下、「レーザ遅延時間」という)である。
上述した従来の方法では、高周波遅延時間tR、電子遅延時間te、レーザ遅延時間tLを予め装置の構成から計算し、高周波発生時から電子が発生するまでの時間dte(=tR−te:電子発生遅延時間)と、高周波発生時からレーザが発振するまでの時間dtL(=tR−tL:レーザ発生遅延時間)を予めそれぞれの遅延回路で設定する。
【0011】
しかし、高周波発生装置が高周波発生信号を受けてから実際に高周波を発生するまでの時間、及び電子発生装置(例えば電子銃)が電子発生信号を受けてから実際に電子を発生するまでの時間は、厳密には0ではなく、高周波発生装置や電子発生装置(電子銃)の状態如何により、実際に発生するタイミングが揺らぐ(変動する)ことがある。
また、発生直後の電子は、加速管による加速前であり、光速と比較するとわずかに遅い(例えば、光速の90%程度)。
そのため、上述した従来の方法では、電子ビームとレーザ光の衝突点に到達する時間がわずかに異なり、実際に衝突する位置(実衝突点)が予定衝突点からずれてしまい、その結果,衝突断面積が小さくなって発生するX線の量が減少し、かつX線の仮想焦点(発生点)が変動し、これを用いて撮像した像がぼやけてしまうという問題点があった。
【0012】
図7は、電子ビームとレーザ光の衝突状況を模式的に示す図である。この図において、1は電子ビーム、3はレーザ光、4はX線、8は許容衝突領域、9aは予定衝突点、9bは実衝突点である。
予定衝突点9aは、レーザ光3と電子ビーム1の共通する軌道(光路)上に予め設定される。レーザ光3は、この例で左から右に入射するパルスレーザ光であり、予定衝突点9aに集光して最小集光径(例えば1μm以下)となる。
電子ビーム1は、この例で右から左に入射する電子ビームバンチであり、レーザ光3と同時に予定衝突点9aに到達するときに両者の衝突率が最大となり最大量のX線4を発生する。また、予定衝突点9aの前後、例えば集光面積が予定衝突点9aの2倍以下の範囲は、衝突率が十分高いため、許容衝突領域8とされる場合がある。許容衝突領域8は、例えば予定衝突点9aの前後数10mmの範囲である。
【0013】
電子ビームの衝突時の速度は実質的に光速(真空中で約30万km/s=3×108m/s)に達していいる。そのため、電子ビーム1の予定衝突点9aに到達する時間がレーザ光3に対して、仮に1ns(=10−9s)だけ遅い場合でも実衝突点9bは予定衝突点9aに対してΔL(=約300mm)ずれてしまう。このため、許容衝突領域8からも大きく外れ、パルスレーザ光3が最小集光径に比べて大きく広がっているため、衝突率が極端に低下し(実質的に0に近い)、上述した問題点が生じる。
【0014】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、電子または電子ビームの発生タイミングが揺らぐ(変動する)場合でも、電子ビームとレーザ光の実際の衝突点を予定衝突点またはその近傍に精度よく位置決めすることができ、これにより、両者の衝突率を高めてX線の発生出力を高め、かつX線の仮想焦点(発生点)の変動を防止して、これを用いて撮像した像の解像度を高めることができる電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、電子ビームとレーザ光を衝突させて逆コンプトン散乱によりX線を発生させるX線発生装置における電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整装置であって、
電子ビームの通過経路上に設けられ、電子ビームに影響を与えることなくその通過を検出する電子ビーム検出装置と、
前記電子ビームの通過を検出後、所定の遅延時間経過後に、レーザ光の発生指令を出力するレーザ光指令遅延回路とを備え、
前記電子ビーム検出装置の設置位置は、電子ビームの通過時から該電子ビームが予定衝突点に到達するまでのビーム遅延時間が、レーザ光の発生指令から該レーザ光が予定衝突点に到達するまでのレーザ遅延時間よりも、前記遅延時間以上に長く設定されている、ことを特徴とする電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整装置提供される。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記電子ビーム検出装置は、電子ビームが通過するダクトの外側に設けられ、電子ビームの経路を囲む導電性の巻線と、該巻線に発生する誘導電流を計測する電流検出器からなる。
前記レーザ光を発生させるレーザ発生装置は、Q−スイッチ方式のパルスレーザであり、前記電流検出器の検出により、Q−スイッチのタイミングを調整する。
【0017】
また本発明によれば、電子ビームとレーザ光を衝突させて逆コンプトン散乱によりX線を発生させるX線発生装置における電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整方法であって、
電子ビームの通過時から該電子ビームが予定衝突点に到達するまでのビーム遅延時間が、レーザ光の発生指令から該レーザ光が予定衝突点に到達するまでのレーザ遅延時間よりも、前記所定の遅延時間以上に長い設置位置を電子ビームの通過経路上に設定し、
前記設定位置において、電子ビームに影響を与えることなく電子ビームの通過を検出し、
前記電子ビームの通過を検出後、所定の遅延時間経過後に、レーザ光の発生指令を出力する、ことを特徴とする電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整方法が提供される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、電子ビームが通過するダクトの外側に、電子ビームの経路を囲むように導電性の巻線を設け、該巻線に発生する誘導電流を計測して、電子ビームに影響を与えることなくその通過を検出する。
【発明の効果】
【0019】
上記本発明の装置及び方法によれば、電子ビーム検出装置の設置位置が、電子ビームの通過時から該電子ビームが予定衝突点に到達するまでのビーム遅延時間(tB)が、レーザ光の発生指令から該レーザ光が予定衝突点に到達するまでのレーザ遅延時間(tL)よりも、所定の遅延時間以上に長く電子ビームの通過経路上に設定される。
また、所定の遅延時間(Δt)は、遅延回路により、0.1ns以下の高精度で可変調整可能である。
従って、高周波発生装置や電子発生装置(電子銃)の状態如何により、実際に電子または電子ビームの発生タイミングが揺らぐ(変動する)場合でも、ビーム遅延時間tB、レーザ遅延時間tL、およびその差(遅延時間)Δtは、変動がほとんどなくかつ予め高精度に求めることができる。
【0020】
従って、電子ビームの通過経路上に設定した設定位置において、電子ビームに影響を与えることなく電子ビームの通過を検出し、この検出後、所定の遅延時間経過後に、レーザ光の発生指令を出力することにより、発生指令に対して電子または電子ビームの発生タイミングが変動する場合でも、電子ビームの上記検出位置の通過時から該電子ビームが予定衝突点に到達するまでのビーム遅延時間の揺らぎ(変動)を小さく抑えることができる。
その結果、電子ビームとレーザ光の衝突断面積がほぼ一定となり、発生X線の強度の時間的揺らぎを小さくすることができ、再現性が良くなることが期待できる。また,X線の仮想焦点も変わらないため,より高精細なX線画像を撮像可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0022】
図1は、本発明による衝突タイミング調整装置を備えたX線発生装置の全体構成図である。このX線発生装置は、電子ビーム発生装置10、レーザ光周回装置20およびレーザ発生装置30を備え、電子ビーム1とパルスレーザ光3とを正面衝突させて逆コンプトン散乱によりX線4を発生させる装置である。
【0023】
電子ビーム発生装置10は、電子ビームを加速してパルス電子ビーム1を発生し所定の直線軌道2を通過させる機能を有する。
この例において、電子ビーム発生装置10は、RF電子銃11、α‐磁石12、加速管13、ベンディング磁石14、Q−磁石15、減速管16、およびビームダンプ17を備える。
【0024】
RF電子銃11と加速管13は、Xバンド(11.424GHz)の高周波電源18により駆動される。RF電子銃11から引き出された電子ビームは、α‐磁石12により軌道を変えて加速管13に入射する。加速管13は、小型のXバンド加速管であり、電子ビームを加速し、好ましくは約50MeV前後の高エネルギの電子ビームを形成する。
【0025】
ベンディング磁石14は、パルス電子ビーム1の軌道を磁場で曲げて所定の直線軌道2を通過させ、通過後のパルス電子ビーム1をビームダンプ17まで導く。Q−磁石15はパルス電子ビーム1の収束具合を調整する。減速管16は、パルス電子ビーム1を減速する。ビームダンプ17は、直線軌道2を通過した後のパルス電子ビーム1を捕捉して、放射線の漏洩を防止する。
【0026】
上述した電子ビーム発生装置10により、例えば、約50MeV前後、約1μs前後のパルス電子ビーム1を発生し、これを所定の直線軌道2を通過させることができる。
【0027】
レーザ光周回装置20は、パルスレーザ光3(p偏光)を外部のレーザ発生装置30から偏光ビームスプリッタ22を介して周回路5内に導入し、このパルスレーザ光3を周回する周回路5内に閉じ込めて、周回路内の衝突点9を繰り返し通過させるようになっている。
【0028】
この図において、レーザ光周回装置20は、偏光ビームスプリッタ22、複数(この図で3枚)の反射ミラー24a,24b,24c、複数(この図で4枚)のレンズ25a,25b,25c,25d、ポッケルスセル26、および制御装置(図示せず)を備える。
【0029】
偏光ビームスプリッタ22は、第1直線偏光3a(p偏光)をそのまま通し、これに直交する第2直線偏光3b(S偏光)を直角に反射する。
3枚の反射ミラー24a,24b,24cは、偏光ビームスプリッタ22を出たパルスレーザ光3を複数回(この例では3回)反射して、偏光ビームスプリッタ22に周回させ周回路5を構成する。
【0030】
ポッケルスセル26は、周回路5内の偏光ビームスプリッタ22の下流側に位置し、電圧の印加時に通過する偏光の偏光方向を90度回転する。ポッケルスセルは、光ビームの偏光方向を素早くスイッチングできる非線形光学結晶である。
制御装置(図示せず)は、偏光ビームスプリッタ22に周回して入るパルスレーザ光3が常に第2直線偏光3b(S偏光)となるようにポッケルスセル24を制御する。
【0031】
上述した構成により、レーザ光周回装置20により、パルスレーザ光3を周回する周回路5内に閉じ込めて、周回路内の衝突点9を繰り返し通過させ、電子ビームとレーザ光の衝突率を高めてX線の発生出力を高めることができる。
なお、本発明において、上述したレーザ光周回装置20は不可欠ではなく、これを省略し、パルスレーザ光3をワンスルーで用いてもよい。
【0032】
本発明の衝突タイミング調整装置32は、電子ビーム発生装置10とレーザ発生装置30の同期をとり、パルス電子ビーム1の発生タイミングとパルスレーザ光3との発生タイミングを制御し、パルス電子ビーム1とパルスレーザ光3を所定の直線軌道2上の衝突点9で正面衝突させる機能を有する。
【0033】
図2は、本発明による衝突タイミング調整装置の全体構成図である。
図1において、レーザ発生装置30は、パルスレーザ発生装置であり、衝突タイミング調整装置32からのレーザ光の発生指令信号に対応してパルスレーザ光3を発振し出射するようになっている。このレーザ光の出射は、Q−スイッチによるのがよい。
また、レーザ光3と電子ビーム1の共通する直線軌道2(光路)上に予定衝突点9aが予め設定される。さらに、パルスレーザ光3の光路上に設置されたレンズ25aは、パルスレーザ光3が予定衝突点9aを焦点としてここに集光して最小集光径となるように設定されている。最小集光径は、電子ビームとの衝突確率を高めるように、できるだけ細くするのがよく、例えば最小集光径が1μm以下となるように、レーザの光学系を設計する。
【0034】
図1及び図2に示すように、本発明の衝突タイミング調整装置32は、電子ビーム検出装置34とレーザ光指令遅延回路36とを備える。
電子ビーム検出装置34は、電子ビーム1の通過経路上に設けられ、電子ビーム1に影響を与えることなくその通過を検出する機能を有する。
電子ビーム検出装置34は、この例では、導電性巻線34aと電流検出器34bからなる。導電性巻線34aは、電子ビーム1の通過するダクトの外側に設けられ電子ビーム1の経路を囲む。電流検出器34bは、導電性巻線34aに発生する誘導電流を計測し、所定の閾値を超えたときに検出信号を出力する。
【0035】
図3は、本発明による衝突タイミング調整装置の具体例である。この例において、レーザ発生装置30は、レーザ光3を励起させるためのフラッシュランプ30aとQ−スイッチ30bを有し、衝突タイミング調整装置32からのレーザ光の発生指令信号に対応してQ−スイッチ30bによりパルスレーザ光3を出射するようになっている。
すなわち、レーザ光3を発生させるレーザ発生装置30は、Q−スイッチ方式のパルスレーザであり、電流検出器34bの検出により、Q−スイッチのタイミングを調整する。
【0036】
上述の構成において、衝突タイミング調整装置32によりレーザ光の発生指令信号を出力した時点から、パルスレーザ光3が発生し予定衝突点9aに到達するまでの時間を本出願において「レーザ遅延時間tL」とする。
Q−スイッチ30bの作動からパルスレーザ光3の出射までの遅延時間は極めて短く(例えば、数ns以下)かつ安定している。また、レーザ光3の光路長は、変動がほとんどなくかつ予め高精度に計測又は計算できる。従って、このレーザ遅延時間tLは、変動がほとんどなくかつ予め高精度に求めることができる。
【0037】
また上述した電子ビーム検出装置34により電子ビーム1の通過検出時から、電子ビーム1が予定衝突点9aに到達するまでの時間を本出願において「ビーム遅延時間tB」とする。
本発明では、電子ビーム検出装置34の設置位置は、ビーム遅延時間tBがレーザ遅延時間tLよりも、後述する遅延時間Δt以上に長く設定されている。この設定位置は、好ましくは加速器の下流側であり、上述した条件を満たす限りで、予定衝突点9aに近い位置に設定する。
電子ビーム1が電子ビーム検出装置34による検出位置を通過した後に予定衝突点9aに到達する時間(すなわちビーム遅延時間tB)は、この設置位置において電子ビーム1の速度が実質的に光速に達しているため、変動がほとんどなく、容易かつ厳密に計算可能である。
【0038】
本発明において、レーザ光指令遅延回路36は、電子ビーム検出装置34により電子ビーム1の通過を検出後、所定の遅延時間Δtの経過後に、レーザ光3の発生指令を出力するようになっている。レーザ光指令遅延回路36による遅延時間Δtの設定は、0.1ns以下の高精度で可変調整可能であるのがよい。
【0039】
図4は、本発明の衝突タイミング調整方法の模式図である。この図で横軸は時間であり、tRは高周波発生時から電子ビームが衝突点に到達するまでの時間(「高周波遅延時間」)、teは電子発生時から電子ビームが衝突点に到達するまでの時間(「電子遅延時間」)、tLはレーザ発振時からレーザ光が衝突点に到達するまでの時間(「レーザ遅延時間」)である。
さらに、tBは、電子ビーム検出装置34により電子ビーム1の通過検出時から電子ビーム1が予定衝突点9aに到達するまでの時間(ビーム遅延時間)、Δtは、レーザ光指令遅延回路36による電子ビーム1の通過検出時からレーザ発振までの遅延時間である。
【0040】
図4において、本発明の衝突タイミング調整方法では、第1ステップとして、電子ビーム1の通過時から電子ビームが予定衝突点9aに到達するまでのビーム遅延時間tBが、レーザ光3の発生指令からレーザ光が予定衝突点9aに到達するまでのレーザ遅延時間tLよりも、所定の遅延時間Δt以上に長い設置位置を電子ビーム1の通過経路上に設定する。
次いで、第2ステップとして、この設定位置において、電子ビーム検出装置34により、電子ビーム1に影響を与えることなくその通過を検出する。
次いで、第3ステップとして、電子ビーム1の通過を検出後、所定の遅延時間Δt(=tB―tL)の経過後に、レーザ光3の発生指令を出力する。
【0041】
また、本発明の方法では、電子ビームが通過する真空チャンバの外側に、電子ビームの経路を囲むように導電性の巻線34aを設け、巻線34aに発生する誘導電流を電流検出器34bで計測して、電子ビーム1に影響を与えることなくその通過を検出する。
【0042】
上述したように、レーザ遅延時間tLは、変動がほとんどなくかつ予め高精度に求めることができる。また、ビーム遅延時間tBも、上述した設置位置において電子ビーム1の速度が実質的に光速に達しているため、変動がほとんどなく、容易かつ厳密に計算可能である。また、ビーム遅延時間tBとレーザ遅延時間tLとの差Δtは、レーザ光指令遅延回路36により、0.1ns以下の高精度で可変調整可能である。
従って、高周波発生装置や電子発生装置(電子銃)の状態如何により、実際に電子または電子ビームの発生タイミングが揺らぐ(変動する)場合でも、ビーム遅延時間tB、レーザ遅延時間tL、およびその差(遅延時間)Δtは、変動がほとんどなくかつ予め高精度に求めることができる。
【0043】
従って、本発明の装置及び方法により、発生指令に対して電子または電子ビームの発生タイミングが変動する場合でも、電子ビーム1の検出位置の通過時から電子ビームが予定衝突点9aに到達するまでのビーム遅延時間tBの揺らぎ(変動)を小さく抑えることができる。その結果、電子ビーム1とレーザ光3の衝突断面積がほぼ一定となり、発生X線の強度の時間的揺らぎを小さくすることができ、X線の発生出力を高めることができる。また,X線の仮想焦点(発生点)も変わらないため,より高精細なX線画像を撮像可能となる。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による衝突タイミング調整装置を備えたX線発生装置の全体構成図である。
【図2】本発明による衝突タイミング調整装置の全体構成図である。
【図3】本発明による衝突タイミング調整装置の具体例である。
【図4】本発明の衝突タイミング調整方法の模式図である。
【図5】従来の衝突タイミング調整装置の模式図である。
【図6】従来の衝突タイミング調整方法の模式図である。
【図7】電子ビームとレーザ光の衝突状況を模式的に示す図である。
【図8】非特許文献1の「小型X線発生装置」の構成図である。
【図9】特許文献1の「高輝度X線又はγ線の発生方法及び装置」の構成図である。
【図10】特許文献2の「X線を発生するためのシステム及び方法」の構成図である。
【図11】特許文献3の「多色X線発生装置」の構成図である。
【符号の説明】
【0046】
1 電子ビーム(パルス電子ビーム)、2 直線軌道、
3 レーザ光(パルスレーザ光)、4 X線(硬X線)、
5 周回路、8 許容衝突領域、9 衝突点、
9a 予定衝突点、9b 実衝突点、
10 電子ビーム発生装置、11 RF電子銃、
12 α‐磁石、13 加速管、14 ベンディング磁石、
15 Q−磁石、16 減速管、17 ビームダンプ、
20 レーザ光周回装置、22 偏光ビームスプリッタ、
24a,24b,24c 反射ミラー、
25a,25b,25c,25d レンズ、
26 ポッケルスセル、30 レーザ発生装置、
30a フラッシュランプ、30b Q−スイッチ、
32 衝突タイミング調整装置、
34 電子ビーム検出装置、34a 導電性巻線、
34b 電流検出器、36 レーザ光指令遅延回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームとレーザ光を衝突させて逆コンプトン散乱によりX線を発生させるX線発生装置における電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整装置であって、
電子ビームの通過経路上に設けられ、電子ビームに影響を与えることなくその通過を検出する電子ビーム検出装置と、
前記電子ビームの通過を検出後、所定の遅延時間経過後に、レーザ光の発生指令を出力するレーザ光指令遅延回路とを備え、
前記電子ビーム検出装置の設置位置は、電子ビームの通過時から該電子ビームが予定衝突点に到達するまでのビーム遅延時間が、レーザ光の発生指令から該レーザ光が予定衝突点に到達するまでのレーザ遅延時間よりも、前記遅延時間以上に長く設定されている、ことを特徴とする電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整装置。
【請求項2】
前記電子ビーム検出装置は、電子ビームが通過するダクトの外側に設けられ、電子ビームの経路を囲む導電性の巻線と、該巻線に発生する誘導電流を計測する電流検出器からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の衝突タイミング調整装置。
【請求項3】
前記レーザ光を発生させるレーザ発生装置は、Q−スイッチ方式のパルスレーザであり、前記電流検出器の検出により、Q−スイッチのタイミングを調整する、ことを特徴とする請求項2に記載の衝突タイミング調整装置。
【請求項4】
電子ビームとレーザ光を衝突させて逆コンプトン散乱によりX線を発生させるX線発生装置における電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整方法であって、
電子ビームの通過時から該電子ビームが予定衝突点に到達するまでのビーム遅延時間が、レーザ光の発生指令から該レーザ光が予定衝突点に到達するまでのレーザ遅延時間よりも、前記所定の遅延時間以上に長い設置位置を電子ビームの通過経路上に設定し、
前記設定位置において、電子ビームに影響を与えることなく電子ビームの通過を検出し、
前記電子ビームの通過を検出後、所定の遅延時間経過後に、レーザ光の発生指令を出力する、ことを特徴とする電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整方法。
【請求項5】
電子ビームが通過するダクトの外側に、電子ビームの経路を囲むように導電性の巻線を設け、該巻線に発生する誘導電流を計測して、電子ビームに影響を与えることなくその通過を検出する、ことを特徴とする請求項3に記載の衝突タイミング調整方法。
【請求項1】
電子ビームとレーザ光を衝突させて逆コンプトン散乱によりX線を発生させるX線発生装置における電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整装置であって、
電子ビームの通過経路上に設けられ、電子ビームに影響を与えることなくその通過を検出する電子ビーム検出装置と、
前記電子ビームの通過を検出後、所定の遅延時間経過後に、レーザ光の発生指令を出力するレーザ光指令遅延回路とを備え、
前記電子ビーム検出装置の設置位置は、電子ビームの通過時から該電子ビームが予定衝突点に到達するまでのビーム遅延時間が、レーザ光の発生指令から該レーザ光が予定衝突点に到達するまでのレーザ遅延時間よりも、前記遅延時間以上に長く設定されている、ことを特徴とする電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整装置。
【請求項2】
前記電子ビーム検出装置は、電子ビームが通過するダクトの外側に設けられ、電子ビームの経路を囲む導電性の巻線と、該巻線に発生する誘導電流を計測する電流検出器からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の衝突タイミング調整装置。
【請求項3】
前記レーザ光を発生させるレーザ発生装置は、Q−スイッチ方式のパルスレーザであり、前記電流検出器の検出により、Q−スイッチのタイミングを調整する、ことを特徴とする請求項2に記載の衝突タイミング調整装置。
【請求項4】
電子ビームとレーザ光を衝突させて逆コンプトン散乱によりX線を発生させるX線発生装置における電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整方法であって、
電子ビームの通過時から該電子ビームが予定衝突点に到達するまでのビーム遅延時間が、レーザ光の発生指令から該レーザ光が予定衝突点に到達するまでのレーザ遅延時間よりも、前記所定の遅延時間以上に長い設置位置を電子ビームの通過経路上に設定し、
前記設定位置において、電子ビームに影響を与えることなく電子ビームの通過を検出し、
前記電子ビームの通過を検出後、所定の遅延時間経過後に、レーザ光の発生指令を出力する、ことを特徴とする電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整方法。
【請求項5】
電子ビームが通過するダクトの外側に、電子ビームの経路を囲むように導電性の巻線を設け、該巻線に発生する誘導電流を計測して、電子ビームに影響を与えることなくその通過を検出する、ことを特徴とする請求項3に記載の衝突タイミング調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−16123(P2009−16123A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175190(P2007−175190)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立法人科学技術振興機構革新技術開発研究事業、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立法人科学技術振興機構革新技術開発研究事業、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
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