説明

電子ペーパー用印刷機及び被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機

【課題】印刷後の電子ペーパーの画像の乱れを防ぎ、着色帯電粒子が基板に固着することを防止することが可能な電子ペーパー用印刷機を提供する。
【解決手段】相対する基板間に封入された着色帯電粒子を有する電子ペーパー50の表面に転写するために形成された静電気的な潜像を保持する潜像保持体102を有する電子ペーパー用印刷機130であって、潜像保持体102の下流側に、電子ペーパー50と接触して除電する除電手段123、124と、電子ペーパー50が通過し、電位が保たれた帯電安定部120を設ける。帯電安定部120の相対向する部材の電位は等電位に保たれているので、帯電安定部120内では、不必要な電界が発生せず、内部を通過する電子ペーパー50の画像が乱れることがない。また更に、除電手段123、124が、電子ペーパー50表面と接触するので、当該表面が確実に除電され、着色帯電粒子が基板に固着することを確実に防止している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰り返し書き換え可能な電子ペーパーを印刷するための電子ペーパー用印刷機及び被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1に示されるような、電気泳動方式/粒子移動方式の原理を利用する、繰り返し書き換え可能な電子ペーパーが実用化されつつある。この電気泳動方式/粒子移動方式の原理を利用する電子ペーパー50は、図6に示されるように、相対する基板50a、50bの間に複数色の着色帯電粒子50c、50dを封入したものであり、基板50aに電荷を印加すると、着色帯電粒子50c、50dが移動(泳動)し、基板50a表面に画像が生成される画像形成媒体である。例えば、プラスの電荷を持った着色帯電粒子50cが黒色であり、マイナスの電荷を持っている着色帯電粒子50dが白色である場合には、基板50a表面にマイナスの電荷を印加した場合には、黒色の着色帯電粒子50cが基板50a表面に引き寄せられ(移動・泳動し)、当該基板50a表面部分が黒く表示される。逆に、基板50a表面にプラスの電荷を印加した場合には、白色の着色帯電粒子50dが基板50a表面に引き寄せられ、当該部分が白く表示される。このように、電子ペーパー50は、基板50a表面にプラス、若しくはマイナスの電荷を印加することにより、当該基板50a表面に画素を表現することができ、当該画素を集合させることにより、基板50aの表面に画像を表現することができるようになっている。なお、着色帯電粒子には、黒以外にC(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)等の色素で着色し、それぞれの色素の着色帯電粒子を基板50a表面に引き寄せることにより、電子ペーパー50に表示される画像を多色で表示することも可能である。
【0003】
一度、電子ペーパー50に形成された画像は、電子ペーパー50に電荷等により電界を印加させない限り、半永久的に保持されるようになっている(メモリー性)。一方で、一度画像が形成された電子ペーパー50であっても、電子ペーパー50に電界を再度印加することにより、再び、電子ペーパー50表面に画像を書き換えて表示することができるようになっている(書き換え性)。このように、電子ペーパー50は、何度も書き換えることができるため、例えば、繰り返し使用できるリライタブルペーパーや、定期的に変更される、価格表、バス等の時刻表等に利用することができ、資源が無駄にならず、地球環境に良いという利点がある。
【0004】
しかしながら、電子ペーパー50は電界の作用で表示が書き換わるため、電子ペーパー用印刷機を構成する部品から発せられる様々な電界が、画像を印刷した後の電子ペーパー50に印加され、画像が乱れてしまうという問題があった。また、画像を生成した後の電子ペーパー50の表面は帯電しているので、着色帯電粒子50c、50dが基板50a、50bに引きつけられ続け、着色帯電粒子50c、50dが基板50a、50bに固着し、書き換え性が悪化したり、電子ペーパー50に生成される画像にムラが発生したり、コントラストが低下してしまうという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−312225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、印刷後の電子ペーパーの画像の乱れを防ぎ、着色帯電粒子が基板に固着することによる書き換え性の悪化や、ムラの発生や、コントラストの低下を防止することが可能な電子ペーパー用印刷機及び被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、相対する基板間に封入された着色帯電粒子を有する電子ペーパーの表面に転写するために、静電気的な潜像を形成し保持する潜像保持体を有する電子ペーパー用印刷機であって、
電子ペーパー表面に潜像を転写する前記潜像保持体の下流側の電子ペーパー搬送路上に、電子ペーパーと接触して、前記電子ペーパーに帯電した静電気を除電する除電手段と、前記電子ペーパーが通過し、その内部の電位差が所定値以下に保たれた帯電安定部とを設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、除電手段を、潜像保持体が配設されている側に設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、除電手段を、更に潜像保持体に対向する側に設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3に記載の発明において、除電手段を、帯電安定部の潜像保持体側の端部、若しくは前記端部の近傍に設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4に記載の発明において、除電手段を、帯電安定部と同電位に構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、シート状記録媒体表面に転写するために、静電気的な潜像を形成し保持する潜像保持体と、
前記潜像保持体の表面に均一電荷を印加する帯電手段と、
前記帯電手段により均一電荷が印加された潜像保持体を露光し、静電気的な潜像を生成する露光手段と、
トナーを収納し、前記潜像保持体にトナーを供給するトナー収納部と、
前記潜像保持体にシート状記録媒体を当接させて潜像、若しくはトナーを転写する転写ローラと、
前記潜像保持体によりトナーが転写された被記録媒体を加熱・加圧して、前記トナーを前記被記録媒体に定着させる、対向配置された加熱ローラと加圧ローラからなる定着手段を有し、
シート状記録媒体として、トナーを転写させる被記録媒体と、潜像を転写して相対する基板間に封入された着色帯電粒子を移動させる電子ペーパーとを選択できる印刷機であって、
前記潜像保持体の下流側に、被記録媒体を使用する場合の搬送路と、電子ペーパーを使用する場合の搬送路とにシート状記録媒体の搬送路を切り替える搬送路切替手段を設け、
前記電子ペーパーを使用する場合の搬送路上に、電子ペーパーと接触して、前記電子ペーパーに帯電した静電気を除電する除電手段と、前記電子ペーパーが通過し、その内部の電位差が所定値以下に保たれた帯電安定部を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明の搬送路切替手段は、請求項6に記載の発明において、
帯電安定部を揺動自在に軸支し、
電子ペーパー印刷時には、前記帯電安定部を電子ペーパーの搬送路に進出させ、
被記録媒体印刷時には、前記帯電安定部を、前記搬送路から退避するように構成したことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、被記録媒体と電子ペーパーとを識別して検出する媒体検出手段を設け、
前記媒体検出手段が、電子ペーパーを検出した場合には、前記帯電安定部を電子ペーパーの搬送路に進出させ、
前記媒体検出手段が、被記録媒体を検出した場合には、前記帯電安定部を、前記搬送路から退避させるように構成したことを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、被記録媒体であるか電子ペーパーであるかを入力する入力手段を設け、
前記入力手段による入力結果が、電子ペーパーの場合には、前記帯電安定部を電子ペーパーの搬送路に進出させ、
前記入力手段による入力結果が、被記録媒体の場合には、前記帯電安定部を、前記搬送路から退避させるように構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項6〜請求項9に記載の発明において、被記録媒体と電子ペーパーとを識別して検出する媒体検出手段を設け、
前記媒体検出手段が電子ペーパーを検出した場合には、トナー収納部を潜像保持体から離間させる構造にしたことを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項6〜請求項9に記載の発明において、被記録媒体であるか電子ペーパーであるかを入力する入力手段を設け、
前記入力手段による入力結果が、電子ペーパーの場合には、トナー収納部を潜像保持体から離間させる構造にしたことを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項6〜請求項11に記載の発明において、電子ペーパーと接触して除電する除電手段を、潜像保持体が配設されている側に設けたことを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の発明において、電子ペーパーと接触して除電する除電手段を、更に潜像保持体に対向する側に設けたことを特徴とする。
【0020】
請求項14に記載の発明は、請求項6〜請求項13に記載の発明において、電子ペーパーと接触して除電する除電手段を、帯電安定部の潜像保持体側の端部、若しくは前記端部の近傍に設けたことを特徴とする。
【0021】
請求項15に記載の発明は、請求項6〜請求項14に記載の発明において、電子ペーパーと接触して除電する除電手段を、帯電安定部と同電位に構成したことを特徴とする。
【0022】
請求項16に記載の発明は、請求項6〜請求項15に記載の発明において、潜像保持体と帯電安定部の間の潜像保持体に対向する側に、電子ペーパー及び被記録媒体と接触して除電する除電手段を設けたことを特徴とする。
【0023】
請求項17に記載の発明は、請求項6〜請求項16に記載の発明において、加熱ローラを、電子ペーパーが通過する搬送面の上側に配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の発明は、相対する基板間に封入された着色帯電粒子を有する電子ペーパーの表面に転写するために、静電気的な潜像を形成し保持する潜像保持体を有する電子ペーパー用印刷機であって、電子ペーパー表面に潜像を転写する前記潜像保持体の下流側の電子ペーパー搬送路上に、電子ペーパーと接触して、前記電子ペーパーに帯電した静電気を除電する除電手段と、前記電子ペーパーが通過し、その内部の電位差が所定値以下に保たれた帯電安定部とを設けたことを特徴とする。
このため、内部の電位差が所定値以下に保たれた帯電安定部内に電子ペーパーを通過させることにより、電子ペーパー用印刷機の部品が発する電界から電子ペーパーを保護し、電子ペーパーに生成された画像が乱れることを防止することが可能となる。また、前記除電手段で印刷後に帯電した電子ペーパー表面が除電され、着色帯電粒子が基板に固着することを防止し、書き換え性が悪化することを防止し、電子ペーパーに生成される画像のムラの発生を防止し、また、コントラストの低下を防止することが可能となる。
【0025】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、除電手段を、潜像保持体が配設されている側に設けたことを特徴とする。
このため、除電手段で、帯電した側の電子ペーパーの表面を除電することが可能となり、電子ペーパーの基板に着色帯電粒子が固着することを防止し、書き換え性が悪化することを防止し、電子ペーパーに生成される画像のムラの発生を防止し、また、コントラストの低下を防止することが可能となる。
【0026】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、除電手段を、更に潜像保持体に対向する側に設けたことを特徴とする。
このため、除電手段で、潜像保持体に対向する側からも、帯電した電子ペーパーを除電することにより、帯電した電子ペーパーを確実に除電することが可能となる。
【0027】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3に記載の発明において、除電手段を、帯電安定部の潜像保持体側の端部若しくは前記端部の近傍に設けたことを特徴とする。
このため、帯電安定部に侵入する前に、電子ペーパーを除電することにより、帯電安定部に不必要な電界が発生することを防止し、電子ペーパーに生成された画像が乱れることを防止することが可能となる。
【0028】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4に記載の発明において、除電手段を、帯電安定部と同電位に構成したことを特徴とする。
このため、電荷が除電部に滞ることがないため、電子ペーパーの表面を確実に除電することが可能となる。
【0029】
請求項6に記載の発明は、シート状記録媒体表面に転写するために、静電気的な潜像を形成し保持する潜像保持体と、前記潜像保持体の表面に均一電荷を印加する帯電手段と、前記帯電手段により均一電荷が印加された潜像保持体を露光し、静電気的な潜像を生成する露光手段と、トナーを収納し、前記潜像保持体にトナーを供給するトナー収納部と、前記潜像保持体にシート状記録媒体を当接させて潜像、若しくはトナーを転写する転写ローラと、前記潜像保持体によりトナーが転写された被記録媒体を加熱・加圧して、前記トナーを前記被記録媒体に定着させる、対向配置された加熱ローラと加圧ローラからなる定着手段を有し、シート状記録媒体として、トナーを転写させる被記録媒体と、潜像を転写して相対する基板間に封入された着色帯電粒子を移動させる電子ペーパーとを選択できる印刷機であって、前記潜像保持体の下流側に、被記録媒体を使用する場合の搬送路と、電子ペーパーを使用する場合の搬送路とにシート状記録媒体の搬送路を切り替える搬送路切替手段を設け、前記電子ペーパーを使用する場合の搬送路上に、電子ペーパーと接触して、前記電子ペーパーに帯電した静電気を除電する除電手段と、前記電子ペーパーが通過し、その内部の電位差が所定値以下に保たれた帯電安定部を設けたことを特徴とする。
このため、内部の電位差が所定値以下に保たれた帯電安定部内に電子ペーパーを通過させることにより、被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機の部品が発する電界から電子ペーパーを保護し、電子ペーパーに生成された画像が乱れることを防止することが可能となる。また、前記除電手段で印刷後に帯電した電子ペーパー表面が除電され、着色帯電粒子が基板に固着することを防止し、書き換え性が悪化することを防止し、電子ペーパーに生成される画像のムラの発生を防止し、また、コントラストの低下を防止することが可能となる。
【0030】
請求項7に記載の発明の搬送路切替手段は、請求項6に記載の発明において、帯電安定部を揺動自在に軸支し、電子ペーパー印刷時には、前記帯電安定部を電子ペーパーの搬送路に進出させ、被記録媒体印刷時には、前記帯電安定部を、前記搬送路から退避するように構成したことを特徴とする。
このため、電子ペーパー印刷時には、前記帯電安定部で、被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機の部品が発する電界から電子ペーパーを保護するとともに、被記録媒体印刷時には、前記帯電安定部を、電子ペーパーの搬送路から退避させて被記録媒体の搬送路を形成することにより、電子ペーパーと被記録媒体の両方を印刷することができる印刷機を提供することが可能となる。
【0031】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、被記録媒体と電子ペーパーとを識別して検出する媒体検出手段を設け、前記媒体検出手段が、電子ペーパーを検出した場合には、前記帯電安定部を電子ペーパーの搬送路に進出させ、前記媒体検出手段が、被記録媒体を検出した場合には、前記帯電安定部を、前記搬送路から退避させるように構成したことを特徴とする。
このため、被記録媒体と電子ペーパーを媒体検出手段が自動的に識別するので、電子ペーパー印刷時には、自動的に帯電安定部が電子ペーパーの搬送路に進出し、また、被記録媒体印刷時には、自動的に帯電安定部が電子ペーパーの搬送路から退避するので、ユーザーフレンドリーな被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機を提供することが可能となる。
【0032】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、被記録媒体であるか電子ペーパーであるかを入力する入力手段を設け、
前記入力手段による入力結果が、電子ペーパーの場合には、前記帯電安定部を電子ペーパーの搬送路に進出させ、
前記入力手段による入力結果が、被記録媒体の場合には、前記帯電安定部を、前記搬送路から退避させるように構成したことを特徴とする。
このため、電子ペーパーと被記録媒体の両方を印刷することが可能となる。なお、前記入力手段を、印刷データを送信するホスト側からの信号を受信する受信装置で構成した場合には、加熱ローラへの電力供給を精密にすることが可能となり、消費電力を低減することが可能となる。
【0033】
請求項10に記載の発明は、請求項6〜請求項9に記載の発明において、被記録媒体と電子ペーパーとを識別して検出する媒体検出手段を設け、前記媒体検出手段が電子ペーパーを検出した場合には、トナー収納部を潜像保持体から離間させる構造にしたことを特徴とする。
このため、電子ペーパー印刷時には、潜像保持体にトナーが付着することを防止できるので、電子ペーパーにトナーが付着することを防止することが可能となる。
【0034】
請求項11に記載の発明は、請求項6〜請求項9に記載の発明において、被記録媒体であるか電子ペーパーであるかを入力する入力手段を設け、
前記入力手段による入力結果が、電子ペーパーの場合には、トナー収納部を潜像保持体から離間させる構造にしたことを特徴とする。
このため、電子ペーパー印刷時には、潜像保持体にトナーが付着することを防止できるので、電子ペーパーにトナーが付着することを防止することが可能となる。なお、前記入力手段を、印刷データを送信するホスト側からの信号を受信する受信装置で構成した場合には、加熱ローラへの電力供給を精密にすることが可能となり、消費電力を低減することが可能となる。
【0035】
請求項12に記載の発明は、請求項6〜請求項11に記載の発明において、電子ペーパーと接触して除電する除電手段を、潜像保持体が配設されている側に設けたことを特徴とする。
このため、除電手段で、帯電した側の電子ペーパーの表面を除電することが可能となり、電子ペーパーの基板に着色帯電粒子が固着することを防止し、書き換え性が悪化することを防止し、電子ペーパーに生成される画像のムラの発生を防止し、また、コントラストの低下を防止することが可能となる。
【0036】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の発明において、電子ペーパーと接触して除電する除電手段を、更に潜像保持体に対向する側に設けたことを特徴とする。
このため、除電手段で、潜像保持体に対向する側からも、帯電した電子ペーパーを除電することにより、帯電した電子ペーパーを確実に除電することが可能となる。
【0037】
請求項14に記載の発明は、請求項6〜請求項13に記載の発明において、電子ペーパーと接触して除電する除電手段を、帯電安定部の潜像保持体側の端部、若しくは前記端部の近傍に設けたことを特徴とする。
このため、帯電安定部に侵入する前に、電子ペーパーを除電することにより、帯電安定部に電界が発生することを防止し、電子ペーパーに生成された画像が乱れることを防止することが可能となる。
【0038】
請求項15に記載の発明は、請求項6〜請求項14に記載の発明において、電子ペーパーと接触して除電する除電手段を、帯電安定部と同電位に構成したことを特徴とする。
このため、電荷が除電部に滞ることがないため、電子ペーパーの表面を確実に除電することが可能となる。
【0039】
請求項16に記載の発明は、請求項6〜請求項15に記載の発明において、潜像保持体と帯電安定部の間の潜像保持体に対向する側に、電子ペーパー及び被記録媒体と接触して除電する除電手段を設けたことを特徴とする。
このため、除電手段で被記録媒体を除電することにより、潜像保持体により印刷された高い電位を有する被記録媒体が、異常放電して、トナーが飛散することを防止して、画質の低下を防ぐことが可能となる。
【0040】
請求項17に記載の発明は、請求項6〜請求項16に記載の発明において、加熱ローラを、電子ペーパーが通過する搬送面の上側に配設したことを特徴とする。
このため、加熱ローラにより発生する熱は、上側に逃げるので、加熱ローラの下側に位置する電子ペーパーが前記熱の影響を受けることがなく、電子ペーパーが熱変形することを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
(被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機の構造)
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。図1に電子ペーパー印刷時の被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機30の断面図を示し、図2に被記録媒体印刷時の被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機30の断面図を示し、以下説明をする。被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機30は、主に、筐体1と、この筐体1内に収納された、潜像保持体2、帯電装置3、露光装置4、転写ローラ5、トナー収納部6、加熱ローラ7、加圧ローラ8、入口側搬送ローラ9、内部側搬送ローラ10、媒体検出手段11、給紙トレイ12、給紙ローラ13、搬送ローラ14、15、排紙ローラ16とから構成されている。本発明では、被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機30は、更に、帯電安定部材20、除電手段23、除電手段24を備えている。被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機30は、シート状の記録媒体として、被記録媒体60と電子ペーパー50とから選択して、これらに印刷する印刷機である。
【0042】
本発明の被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機30で印刷される電子ペーパー50は、図6に示されるように、相対するポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等の光透過性を有する樹脂基板50a、50bの間に複数色の着色帯電粒子50c、50dを封入したものである。例えば、黒色の着色帯電粒子50cがプラスの電荷を持っていて、白色の着色帯電粒子50dがマイナスの電荷を持っている。この電子ペーパー50の基板50a表面にマイナスの電荷を印加した場合には、黒色の着色帯電粒子50cが基板50a表面に引き寄せられ(移動・泳動し)、当該基板50a表面部分が黒く表示される。逆に、電子ペーパー50の基板50a表面にプラスの電荷を印加した場合には、白色の着色帯電粒子50dが基板50a表面に引き寄せられ、当該部分が白く表示されるようになっている。
【0043】
本発明の被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機30で印刷される被記録媒体60は、トナーを熱定着させることで印刷することのできる記録媒体であればよく、例えば、普通紙、光沢紙、各種封筒、OHPシート、フィルムラベルなどが挙げられる。
【0044】
潜像保持体2は、電子ペーパー50の表面に転写される像を、静電気的な潜像として保持するものである。潜像保持体2の表面には、OPC(Organic Photo Conductor:有機光導電体)等から成る感光層が形成されている。図1に示される実施形態では、潜像保持体2は、円筒形状、若しくは円柱形状をしていて、筐体1内に回転可能に軸支されている。
【0045】
帯電装置3は、潜像保持体2の表面に、均一電荷を印加して、当該潜像保持体2の表面を、一様にプラス、若しくはマイナスに帯電させる装置である。
【0046】
露光装置4は、一様に帯電された潜像保持体2表面に、レーザービームを照射する装置である。レーザービームが照射された位置の潜像保持体3の表面は電位が下がるため、潜像保持体3の表面に電位の高低による静電気的な潜像が形成される。
【0047】
トナー収納部6は、樹脂で構成され、トナーを収納している。トナー収納部6内には、潜像保持体2の表面にトナーを供給するトナー供給ローラ6aが回転自在に軸支されている。トナー供給ローラ6aにより、潜像保持体2表面の帯電している部分にトナーが供給されるようになっている。本実施形態では、トナー供給ローラ6aは、互いに対向・密着する2本のローラから構成されている。なお、露光手段4により、潜像保持体2表面の電位が下げられた部分には、トナーが付着しないようになっている。なお、本実施形態では、トナー収納部6は、潜像保持体2と別体となっていて、トナー収納部6のみを着脱することができるようになっている。
【0048】
転写ローラ5は、金属製等のローラの表面に、導電性のゴム材を被覆したものである。転写ローラ5は、潜像保持体2と相対向して、筐体1内に回転自在に軸支されている。転写ローラ5は、潜像保持体2に被記録媒体60や電子ペーパー50を密着させるようになっている。転写ローラ5表面は、潜像保持体2に対して所定の転写バイアス電圧が印加されている。なお、この転写バイアス電圧には、接地電圧(GND、0V)が含まれる。被記録媒体60が、潜像保持体2と転写ローラ5間を通過すると、潜像保持体2表面に付着したトナーが、転写ローラ5の転写バイアス電圧により、被記録媒体60の表面に転写され、被記録媒体60表面に、画像が印刷されるようになっている。また、電子ペーパー50が、潜像保持体2と転写ローラ5間を通過すると、帯電された潜像保持体2により、電子ペーパー50に電界が印加され、この電界により着色帯電粒子が電子ペーパー50表面に移動(泳動)し、画像が生成されるようになっている。
【0049】
なお、潜像を電子ペーパー50や被記録媒体60に転写した後の潜像保持体2に一定電荷を印加するための消去電極、若しくは電荷を低下させるための消去ランプを設けても差し支えない。
【0050】
加熱ローラ7と、加圧ローラ8とは、潜像保持体2の下流側の被記録媒体60の搬送路上に、互いに対向・密着して、回転自在に軸支されている。加熱ローラ7は、金属等で構成され、円筒形状、若しくは円柱形状をしている。加熱ローラ7は、加熱されるようになっている。加圧ローラ8は、円筒形状、若しくは円柱形状をしていて、フッ素樹脂等の絶縁性樹脂で外周部を被覆されている。加圧ローラ8は、加熱ローラ7側に加圧されるようになっている。加熱ローラ7と加圧ローラ8との間を被記録媒体60が通過すると、潜像保持体2と転写ローラ5により被記録媒体60に付着させたトナーが、熱定着するようになっている。本実施形態では、加熱ローラ7及び加圧ローラ8は、後述する帯電安定部20aの上方に位置して配設されている。加熱ローラ7により発生する熱は、上側に逃げるので、加熱ローラ7の下側に位置する、帯電安定部20a内を通過する電子ペーパー50が前記熱の影響を受けることがなく、電子ペーパー50が熱変形することがない。
【0051】
図1に示されるように、電子ペーパー50の搬送路は、直線状であり、電子ペーパー50搬送路の入口側から、入口側搬送ローラ9、媒体検出手段11、内部側搬送ローラ10、潜像保持体2及び転写ローラ5、帯電安定部材20、排出ローラ18が配設されている。
【0052】
入口側搬送ローラ9や内側搬送ローラ10は、金属製等のローラの表面に、ゴム材を被覆したものである。入口側搬送ローラ9には、電子ペーパー50や被記録媒体60が供給されるようになっている。一対の入口側搬送ローラ9や内側搬送ローラ10は、電子ペーパー50や被記録媒体60の搬送面を挟むように相対向して、筐体1内に、回転自在に軸支されている。入口側搬送ローラ9には、回転力が付与され、入口側搬送ローラ9で電子ペーパー50や被記録媒体60を挟んで、当該電子ペーパー50や被記録媒体60を、搬送路の入口側から内部側に搬送するようになっている。内部側搬送ローラ10にも、回転力が付与され、この内部側搬送ローラ10で電子ペーパー50や被記録媒体60を挟んで、当該電子ペーパー50や被記録媒体60を、潜像保持体2に搬送するようになっている。
【0053】
媒体検出手段11は、被記録媒体60と電子ペーパー50とを識別して検出する手段である。本実施形態では、媒体検出手段11は、入口側搬送ローラ9と内部側搬送ローラ10の間の電子ペーパー50及び被記録媒体60の搬送面に臨む位置に設けられている。媒体検出手段11は、例えば、赤外線の透過式センサーであり、被記録媒体60の場合には赤外線が検出限界以上透過し、電子ペーパー50の場合には赤外線が検出限界未満しか透過しないので、被記録媒体60と電子ペーパー50とを識別して検出することができるようになっている。
【0054】
多数枚の被記録媒体60が束状に積層されて収納されている給紙トレイ12が、筐体1の下部に着脱自在に取り付けられている。給紙トレイ12の内部には、用紙押圧板12aが揺動可能に軸支されている。用紙押圧板12aは、給紙トレイ12の奥側が高くなるように、上方に付勢され、給紙トレイ12に収納された、被記録媒体60の奥側を上方に持ち上げている。
【0055】
給紙トレイ12の奥の上方には、給紙トレイ12側に露出する給紙ローラ13が回転自在に軸支されている。給紙ローラ13には、回転力が付与されるようになっている。用紙押圧板12aにより上方に持ち上げられた被記録媒体60は、給紙ローラ13に押し付けられ、給紙ローラ13が回転すると、被記録媒体60が一枚ごとに、搬送ローラ14側に給紙されるようになっている。
【0056】
被記録媒体60の搬送路上の、給紙ローラ13の下流側には、搬送ローラ14と搬送ローラ15が回転自在に軸支されている。搬送ローラ14及び搬送ローラ15には、回転力が付与されるようになっている。給紙ローラ13により、搬送ローラ14に給紙された被記録媒体60は、搬送ローラ14及び搬送ローラ15により、内側搬送ローラ10に搬送されるようになっている。
【0057】
筐体1の上部は、凹陥していて、排紙トレイ17となっている。排紙トレイ17の入口側の上部には、排紙ローラ16が、互いに対向・密着して、回転自在に軸支されている。排紙ローラ16には、回転力が付与されるようになっている。加熱ローラ7と加圧ローラ8により、トナーが熱定着され、画像が印刷された被記録媒体60は、排紙ローラ16により、排紙トレイ17に排紙されるようになっている。
【0058】
媒体検出手段11が、入口側搬送ローラ9に供給された媒体が被記録媒体60であることを検出した場合には、或いは、給紙ローラ13が給紙トレイ12に収納されている被記録媒体60を被記録媒体の搬送路に給紙した場合には、図3の(1)に示されるように、トナー収納部6のトナー供給ローラ6aは、潜像保持体2の表面と密着して、潜像保持体2にトナーを供給するようになっている。一方で、媒体検出手段11が、入口側搬送ローラ9に供給された媒体が電子ペーパー50であることを検出した場合には、図3の(2)に示されるように、トナー収納部6(図3の(1)の一点鎖線で囲まれた部分)全体が、潜像保持体2から離間し、トナー収納部6のトナー供給ローラ6aが潜像保持体2表面から自動的に離間し、潜像保持体2にトナーが付着することを防止し、電子ペーパー50にトナーが付着することを防止している。なお、本実施形態では、トナー供給ローラ6aが潜像保持体2表面から離間する距離tは、1〜5mmである。
【0059】
なお、媒体検出手段11の代わりに、被記録媒体であるか電子ペーパーであるかを入力するための入力手段を設けても差し支えない。前記入力手段は、例えば、被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機30に設けられた操作ボタンであり、ユーザが前記操作ボタンを操作することにより、被記録媒体であるか電子ペーパーであるかの情報が入力されるようになっている。或いは、前記入力手段を、印刷データ(被記録媒体・電子ペーパーを印刷するための印刷データ)を送信するホスト側からの信号を受信する受信装置で構成し、当該受信装置が前記ホストから信号を受信することにより、被記録媒体であるか電子ペーパーであるかの情報が入力されるようにしても差し支えない。
【0060】
前記入力手段による入力結果が、被記録媒体60の場合には、トナー収納部6のトナー供給ローラ6aが、潜像保持体2の表面と密着するようになっている。また、前記入力手段による入力結果が、電子ペーパー50の場合には、トナー収納部6全体が、潜像保持体2から離間するようになっている。
【0061】
被記録媒体60及び電子ペーパー50の搬送路上の、潜像保持体2の下流側には、被記録媒体60及び電子ペーパー50の搬送面に突出する除電手段23が設けられている。除電手段23は、潜像保持体2の反対側(つまり、転写ローラ5側)に取り付けられている。除電手段23は、搬送面を横断するように細毛を列設したブラシ状ものであり、除電手段23と接触した被記録媒体60や電子ペーパー50が除電されるようになっている。除電手段23の取付部分を、接地して接地電圧(0V)にすることが好ましい。この場合には、除電手段23で、帯電した被記録媒体60や電子ペーパー50を確実に除電することが可能となる。
【0062】
図4に、帯電安定部材20の取付構造の説明図を示す。帯電安定部材20は、帯電安定部20aと、被記録媒体ガイド20bとから構成されている。帯電安定部20aは、相対向する板状の部材が離間して構成されたものであり、この相対向する板状の部材間が、電子ペーパー50の搬送路となっている。帯電安定部20aの相対向する板状の部材の電位差は、電子ペーパー50の着色帯電粒子が電気泳動しない所定値以下に保たれている。なお、帯電安定部20aの相対向する板状の部材の電位差を等電位にすることが好ましく、この場合には、相対向する板状の部材間で電界が生じないので、確実に、電子ペーパー50の着色帯電粒子が移動することがない。帯電安定部20aの相対向する板状の部材を一体に形成すれば、当該相対向する板状の部位が等電位となる。
【0063】
帯電安定部20aの上方には、板状の被記録媒体ガイド20bが形成されている。被記録媒体ガイド20bは、本実施形態では、被記録媒体60の搬送路に合わせて略円弧形状をしている。被記録媒体ガイド20bの下流側端部は、加熱ローラ7と加圧ローラ8との間の近傍に位置するようになっている。本実施形態では、帯電安定部材20は、金属あるいは導電性の樹脂で構成され、帯電安定部20aと被記録媒体ガイド20bとが一体となって形成されている。
【0064】
図4に示されるように、帯電安定部材20は、帯電安定部20aの排紙口側に形成された支軸20cで、揺動自在に筐体1に軸支されている。図1や図4の(1)に示されるように、電子ペーパー50印刷時には、帯電安定部20aは、上方に揺動して電子ペーパー50の搬送路に進出する。この状態で、入口側搬送ローラ9、内部側搬送ローラ10、潜像保持体2及び転写ローラ5、帯電安定部20aから構成される電子ペーパー50の搬送路は、直線状となっている。
【0065】
図2や図4の(2)に示されるように、被記録媒体60印刷時には、帯電安定部20aは、下方に揺動して電子ペーパー50の搬送路から退避するようになっている。この状態では、潜像保持体2と転写ローラ5の下流には、被記録媒体ガイド20bが進出し、被記録媒体60の搬送路が形成されるようになっている。被記録媒体60印刷時には、潜像保持体2及び転写ローラ5により、トナーが転写された被記録媒体60は、被記録媒体ガイド20bで、下部を保持され、加熱ローラ7と加圧ローラ8との間の被記録媒体60の搬送路に導かれるようになっている。なお、本実施形態では、図4に示されるように、加熱ローラ7及び加圧ローラ8は、支軸20cを支点に、帯電安定部材20と一体に揺動するようになっている。
【0066】
帯電安定部20aの潜像保持体2側の端部、若しくは前記端部の近傍に、電子ペーパー50の搬送面に突出する除電手段24が設けられている。本実施形態では、除電手段24は、帯電安定部20aの入口に設けられ、帯電安定部20aの入口に突出している。除電手段24は、潜像保持体2の側から、電子ペーパー50の搬送面に突出している。除電手段24は、電子ペーパー50の搬送面を横断するように細毛を列設したブラシ状ものである。帯電安定部20aと除電手段24とは同電位となっている。なお、帯電安定部20aを、接地して接地電圧(0V)することが好ましい。この場合には、除電手段24と接触した電子ペーパー50の表面が確実に除電されるようになる。また、帯電安定部20a内に電位差が生じず、電界も生じない。
【0067】
なお、媒体検出手段11が被記録媒体60を検出した場合、前記入力手段による入力結果が被記録媒体60の場合、或いは、給紙ローラ13が給紙トレイ12に収納されている被記録媒体60を被記録媒体60の搬送路に給紙した場合には、帯電安定部材20が下方に揺動して、被記録媒体ガイド20bが、被記録媒体60の搬送路に自動的に進出するようになっている。一方で、媒体検出手段11が電子ペーパー50を検出した場合、或いは、前記入力手段による入力結果が電子ペーパー50の場合には、帯電安定部材20が上方に揺動して、帯電安定部20aが、電子ペーパー50の搬送路に自動的に進出するようになっている。
【0068】
(被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機の作用)
潜像保持体2及び転写ローラ5でトナーが転写された被記録媒体60は、除電手段23と接触して、除電される。このため、潜像保持体2と接触して高い電位を有する被記録媒体60が、異常放電して、トナーが飛散することを防止して、画質の低下を防ぐことが可能となる。なお、除電ブラシ23は、潜像保持体2の反対側から被記録媒体60の搬送路に突出しているので、被記録媒体60上に転写されたトナーと接触することがなく、画質が劣化することがない。また、被記録媒体ガイド20bは、下側から被記録媒体60を保持するので、被記録媒体60上に転写されたトナーと接触することがなく、画質が劣化することがない。
【0069】
潜像保持体2及び転写ローラ5で画像が生成された電子ペーパー50は、除電手段23と接触して除電される。このため、必要以上の電荷が、電子ペーパー50に印加することがなく、着色帯電粒子が基板に固着することを防止している。更に、除電手段24が、潜像保持体2と接触する側の電子ペーパー50表面と接触するので、当該表面が確実に除電され、着色帯電粒子が基板に固着することを確実に防止している。
【0070】
除電手段24で除電された電子ペーパー50は、帯電安定部20a内に侵入する。帯電安定部20a内は、電位差が所定値以下に保たれているので、電子ペーパー50の基板間に封入された着色帯電粒子が移動することなく、電子ペーパー50に生成された画像が乱れることがない。また、被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機30を構成する部品により、筐体1内には、様々な電界が発生しているが、本発明では、潜像保持体2及び転写ローラ5で画像を生成した電子ペーパー50を、帯電安定部20a内を通過させることにしたので、前記部品により発生する電界から、電子ペーパー50を保護して、電子ペーパー50に生成された画像が乱れることを防止している。
【0071】
被記録媒体であるか電子ペーパーであるかを入力するための前記入力手段を、ホスト側からの信号を受信する受信装置で構成した場合には、当該ホストは、印刷データを送信する前に、被記録媒体を印刷するか電子ペーパーを印刷するかを認識しているので、被記録媒体の印刷データを送信する直前に、加熱ローラへの電力供給を開始する制御をすることが可能となり、消費電力を低減することが可能となる。
【0072】
(電子ペーパー用印刷機の構造)
図5に電子ペーパー用印刷機130の断面図を示して、以下、電子ペーパー用印刷機130の構造について説明をする。電子ペーパー用印刷機130は、主に、筐体101と、この筐体101内に収納された、潜像保持体102、帯電装置103、露光装置104、転写ローラ105、帯電用高圧電源107、低圧電源108、入口側搬送ローラ109、内部側搬送ローラ110とから構成されている。本発明では、電子ペーパー用印刷機130は、更に、帯電安定部120、除電手段123、除電手段124を備えている。潜像保持体102、帯電手段103、露光手段104、転写ローラ105、入口側搬送ローラ109、内部側搬送ローラ110は、それぞれ、前述した被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機30の潜像保持体2、帯電装置3、露光装置4、転写ローラ5、入口側搬送ローラ9、内部側搬送ローラ10と同様のものである。
【0073】
帯電用高圧電源107は、帯電手段103に高圧電流を供給する電源である。低圧電源108は、帯電手段103以外の電子ペーパー用印刷機130を構成する部品に電流を供給する電源である。図5に示される実施形態では、帯電用高圧電源107は、帯電安定部120の上方に配設され、低圧用電源108は、帯電安定部120の下方に配設されている。言い換えると、帯電安定部120は、帯電用高圧電源107と低圧電源108と挟まれるようにして配設されている。
【0074】
電子ペーパー50の搬送路上の、潜像保持体102の下流側には、電子ペーパー50の搬送面に突出する除電手段123が設けられている。除電手段123は、潜像保持体102の反対側(つまり、転写ローラ105側)に取り付けられている。除電手段123は、電子ペーパー50の搬送面を横断するように細毛を列設したブラシ状ものであり、除電手段123と接触した電子ペーパー50が除電されるようになっている。なお、除電手段123の取付部分を接地させて、接地電圧(0V)とすることが好ましく、この場合には、除電手段123と接触した電子ペーパー50が確実に除電される。
【0075】
図5に示されるように、帯電安定部120は、電子ペーパー50の搬送路上の、除電手段123の下流側に配設されている。帯電安定部120は、相対向する板状の部材が離間して構成されていて、この相対向する板状の部材間が、電子ペーパー50の搬送路となっている。帯電安定部120は、金属あるいは導電性の樹脂で構成されている。帯電安定部120の相対向する板状の部材の電位差は、電子ペーパー50の着色帯電粒子が移動しない所定値以下に保たれている。なお、帯電安定部120の相対向する板状の部材の電位差を等電位にすることが好ましく、この場合には、相対向する板状の部材間で電界が生じないので、確実に、電子ペーパー50の着色帯電粒子が移動することがない。帯電安定部120の相対向する板状の部材を一体に形成すれば、当該相対向する板状の部位が等電位となる。
【0076】
図5に示されるように入口側搬送ローラ109、内部側搬送ローラ110、潜像保持体102及び転写ローラ105、帯電安定部120、排出ローラ118から構成される電子ペーパー50の搬送路は、直線状となっている。
【0077】
帯電安定部120の潜像保持体102側の端部、若しくは、前記端部の近傍に、電子ペーパー50の搬送面に突出する除電手段124が設けられている。本実施形態では、除電手段124は、帯電安定部120の入口に設けられ、帯電安定部120の入口に突出している。なお、除電手段124は、潜像保持体102の側から、電子ペーパー50の搬送面に突出している。除電手段124は、搬送面を横断するように細毛を列設したブラシ状ものである。帯電安定部120と除電手段124とは同電位となっている。除電手段124と接触した電子ペーパー50の印刷面は除電されるようになっている。帯電安定部120を接地して接地電圧(0V)にすることが好ましい。この場合には、除電手段124と接触した電子ペーパー50の表面が確実に除電されるようになる。また、帯電安定部120内に電位差が生じず、電界も生じない。
【0078】
(電子ペーパー用印刷機の作用)
潜像保持体102及び転写ローラ105で画像が生成された電子ペーパー50は、除電手段123と接触して除電される。このため、必要以上の電荷が、電子ペーパー50に印加することを防止して、着色帯電粒子が基板に固着することを防止している。更に、除電手段124が、潜像保持体102と接触する側の電子ペーパー50表面と接触するので、当該表面が確実に除電され、着色帯電粒子が基板に固着することによる書き換え性の悪化や、ムラの発生や、コントラストの低下を確実に防止している。
【0079】
除電手段124で除電された電子ペーパー50は、帯電安定部120内に侵入する。帯電安定部120内は、電位差が所定値以下に保たれているので、電子ペーパー50の基板間に封入された着色帯電粒子が移動することなく、電子ペーパー50に生成された画像が乱れることがない。また、帯電用高圧電源107や低圧電源108等の電子ペーパー用印刷機130を構成する部品により、筐体101内には、様々な電界が発生しているが、本発明では、潜像保持体102及び転写ローラ105で画像を生成した電子ペーパー50を、帯電安定部120内を通過させることにしたので、前記部品により発生する電界から、電子ペーパー50を保護して、電子ペーパー50に生成された画像が乱れることを防止している。
【0080】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電子ペーパー用印刷機及び被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態を示す被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機の断面図である。(電子ペーパー印刷時)
【図2】本発明の実施の形態を示す被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機の断面図である。(被記録媒体印刷時)
【図3】潜像保持体とトナー収納部との離間構造の説明図である。
【図4】帯電安定部材の取付構造の説明図である。
【図5】電子ペーパー用印刷機の断面図である。
【図6】電子ペーパー概略図である。
【符号の説明】
【0082】
1 筐体
2 潜像保持体
3 帯電装置
4 露光装置
5 転写ローラ
6 トナー収納部
6a トナー供給ローラ
7 加熱ローラ
8 加圧ローラ
9 入口側搬送ローラ
10 内部側搬送ローラ
11 媒体検出手段
12 給紙トレイ
12a 用紙押圧板
13 給紙ローラ
14 搬送ローラ
15 搬送ローラ
16 排紙ローラ
17 排紙トレイ
18 排出ローラ
20 帯電安定部材
20a 帯電安定部
20b 被記録媒体ガイド
20c 支軸
23 除電手段
24 除電手段
30 被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機
50 電子ペーパー
50a 基板
50b 基板
50c 着色帯電粒子
50d 着色帯電粒子
60 被記録媒体
101 筐体
102 潜像保持体
103 帯電装置
104 露光装置
105 転写ローラ
107 帯電用高圧電源
108 低圧電源
109 入口側搬送ローラ
110 内部側搬送ローラ
118 排出ローラ
120 帯電安定部
123 除電手段
124 除電手段
130 電子ペーパー用印刷機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対する基板間に封入された着色帯電粒子を有する電子ペーパーの表面に転写するために、静電気的な潜像を形成し保持する潜像保持体を有する電子ペーパー用印刷機であって、
電子ペーパー表面に潜像を転写する前記潜像保持体の下流側の電子ペーパー搬送路上に、電子ペーパーと接触して、前記電子ペーパーに帯電した静電気を除電する除電手段と、
前記電子ペーパーが通過し、その内部の電位差が所定値以下に保たれた帯電安定部とを設けたことを特徴とする電子ペーパー用印刷機。
【請求項2】
除電手段を、潜像保持体が配設されている側に設けたことを特徴とする請求項1に記載の電子ペーパー用印刷機。
【請求項3】
除電手段を、更に潜像保持体に対向する側に設けたことを特徴とする請求項2に記載の電子ペーパー用印刷機。
【請求項4】
除電手段を、帯電安定部の潜像保持体側の端部、若しくは前記端部の近傍に設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電子ペーパー用印刷機。
【請求項5】
除電手段を、帯電安定部と同電位に構成したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電子ペーパー用印刷機。
【請求項6】
シート状記録媒体表面に転写するために、静電気的な潜像を形成し保持する潜像保持体と、
前記潜像保持体の表面に均一電荷を印加する帯電手段と、
前記帯電手段により均一電荷が印加された潜像保持体を露光し、静電気的な潜像を生成する露光手段と、
トナーを収納し、前記潜像保持体にトナーを供給するトナー収納部と、
前記潜像保持体にシート状記録媒体を当接させて潜像、若しくはトナーを転写する転写ローラと、
前記潜像保持体によりトナーが転写された被記録媒体を加熱・加圧して、前記トナーを前記被記録媒体に定着させる、対向配置された加熱ローラと加圧ローラからなる定着手段を有し、
シート状記録媒体として、トナーを転写させる被記録媒体と、潜像を転写して相対する基板間に封入された着色帯電粒子を移動させる電子ペーパーとを選択できる印刷機であって、
前記潜像保持体の下流側に、被記録媒体を使用する場合の搬送路と、電子ペーパーを使用する場合の搬送路とにシート状記録媒体の搬送路を切り替える搬送路切替手段を設け、
前記電子ペーパーを使用する場合の搬送路上に、電子ペーパーと接触して、前記電子ペーパーに帯電した静電気を除電する除電手段と、前記電子ペーパーが通過し、その内部の電位差が所定値以下に保たれた帯電安定部を設けたことを特徴とする被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機。
【請求項7】
搬送路切替手段は、
帯電安定部を揺動自在に軸支し、
電子ペーパー印刷時には、前記帯電安定部を電子ペーパーの搬送路に進出させ、
被記録媒体印刷時には、前記帯電安定部を、前記搬送路から退避するように構成したことを特徴とする請求項6に記載の被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機。
【請求項8】
被記録媒体と電子ペーパーとを識別して検出する媒体検出手段を設け、
前記媒体検出手段が、電子ペーパーを検出した場合には、前記帯電安定部を電子ペーパーの搬送路に進出させ、
前記媒体検出手段が、被記録媒体を検出した場合には、前記帯電安定部を、前記搬送路から退避させるように構成したことを特徴とする請求項7に記載の被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機。
【請求項9】
被記録媒体であるか電子ペーパーであるかを入力する入力手段を設け、
前記入力手段による入力結果が、電子ペーパーの場合には、前記帯電安定部を電子ペーパーの搬送路に進出させ、
前記入力手段による入力結果が、被記録媒体の場合には、前記帯電安定部を、前記搬送路から退避させるように構成したことを特徴とする請求項7に記載の被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機。
【請求項10】
被記録媒体と電子ペーパーとを識別して検出する媒体検出手段を設け、
前記媒体検出手段が電子ペーパーを検出した場合には、トナー収納部を潜像保持体から離間させる構造にしたことを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれかに記載の被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機。
【請求項11】
被記録媒体であるか電子ペーパーであるかを入力する入力手段を設け、
前記入力手段による入力結果が、電子ペーパーの場合には、トナー収納部を潜像保持体から離間させる構造にしたことを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれかに記載の被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機。
【請求項12】
電子ペーパーと接触して除電する除電手段を、潜像保持体が配設されている側に設けたことを特徴とする請求項6〜請求項11のいずれかに記載の被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機。
【請求項13】
電子ペーパーと接触して除電する除電手段を、更に潜像保持体に対向する側に設けたことを特徴とする請求項12に記載の被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機。
【請求項14】
電子ペーパーと接触して除電する除電手段を、帯電安定部の潜像保持体側の端部、若しくは前記端部の近傍に設けたことを特徴とする請求項6〜請求項13のいずれかに記載の被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機。
【請求項15】
電子ペーパーと接触して除電する除電手段を、帯電安定部と同電位に構成したことを特徴とする請求項6〜請求項14のいずれかに記載の被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機。
【請求項16】
潜像保持体と帯電安定部の間の潜像保持体に対向する側に、電子ペーパー及び被記録媒体と接触して除電する除電手段を設けたことを特徴とする請求項6〜請求項15のいずれかに記載の被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機。
【請求項17】
加熱ローラを、電子ペーパーが通過する搬送面の上側に配設したことを特徴とする請求項6〜請求項16のいずれかに記載の被記録媒体・電子ペーパー兼用印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−288291(P2009−288291A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137777(P2008−137777)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】